(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸は、中空状に形成されて、前記冷却装置より前記冷却液が導入される導入口(16)と、前記導入口から導入された前記冷却液が流通する流通路(17)と、前記流通路から前記冷却液貯留部に前記冷却液を導出する導出口(18)と、を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回転電機。
【背景技術】
【0002】
従来の回転電機として、回転軸の外周に嵌着されたロータコアを有するロータと、ロータコアの少なくとも軸方向一方側に設けられた端板と、ロータに対して径方向に対向して配置されたステータコア、及びステータコアに巻装されてステータコアの軸方向端面から軸方向外方へ突出するコイルエンド部が形成されたステータコイルを有するステータと、コイルエンド部に冷却液を供給して冷却する冷却装置と、を備えたものが一般的に知られている。
【0003】
そして、特許文献1には、エンドプレート(端板)は、冷却液を流入させるための冷却液流入口と、端板の周方向に並設された複数の空間を備え、冷却液流入口から流入した冷却液を貯留させるための冷却液貯留部と、前記空間に貯留する冷却液をステータコイルのコイルエンド部に向けてそれぞれ噴出させるための冷却液噴出口と、を有し、冷却液噴出口は、端板の周方向に複数配置されてなるモータ(電動機)が開示されている。
【0004】
特許文献1のモータの場合には、端板に設けられた冷却液噴出口が端板の周方向に複数配置されていることから、冷却液噴出口から噴出される冷却液の噴出量と噴出圧力が、回転軸とロータコアの回転速度に応じて変化するようにされている。
【0005】
即ち、回転速度が低いときには、冷却液貯留部に供給された冷却液が受ける遠心力は小さいため、コイルエンド部内周面の軸方向内方側(根元側)に向かう軌道で冷却液が噴出される。逆に、回転速度が高いときには、冷却液貯留部に供給された冷却液が受ける遠心力は大きくなるため、コイルエンド部内周面の軸方向外方側(反根元側)に向かう軌道で冷却液が噴出される。また、冷却液貯留部に供給される冷却液の供給量が少ないときは、コイルエンド部内周面の軸方向内方側(根元側)に向かう軌道で冷却液が噴出される。逆に、冷却液貯留部に供給される冷却液の供給量が多いときは、コイルエンド部内周面の軸方向外方側(反根元側)に向かう軌道で冷却液が噴出される。
【0006】
これにより、特許文献1のモータによれば、モータの作動状態、つまり回転速度や冷却液の供給量の変動にかかわらず、少なくともいずれかの冷却液噴出口から冷却液がコイルエンド部内周面に噴出されることで、ステータコアを含むモータの冷却を効率的に行うことが可能とされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0016】
〔実施形態1〕
本実施形態の回転電機1は、車両用モータとして用いられるものであって、
図1〜
図3に示すように、ハウジング10と、回転軸15と、ロータ20と、ステータコア31及びステータコイル36を有するステータ30と、一対の端板40,40と、冷却装置50と、を備えている。
【0017】
ハウジング10は、軸方向両端が開口した円筒状の筒状部材11と、筒状部材11の両端の開口部を封止するように固定された一対の蓋部材12,12とからなる。筒状部材11の軸方向両側の下方部には、冷却装置50よりステータコイル36に供給された冷却液(図示せず)をハウジング10の外部に排出する排出口13が設けられている。
【0018】
回転軸15は、両蓋部材12,12の内面中央部に設けられた一対の軸受け14,14を介して、その両端がハウジング10に回転可能に支持されている。この回転軸15は、内部に冷却装置50より供給される冷却液が流通する流通路17が形成された中空状のものが採用されている。回転軸15の軸方向一端側(
図1の左側)には、冷却装置50より冷却液が導入される導入口16が設けられている。また、回転軸15の軸方向両側の所定部位には、流通路17から各端板40の冷却液貯留部45に冷却液を導出する導出口18が設けられている。
【0019】
回転軸15の軸方向中央部の外周には、ハウジング10の内部において、円環状のロータ20が同軸状に嵌着固定されている。ロータ20は、円環状の複数の鋼板を軸方向に積層してなるロータコア21と、ロータコア21の外周部に周方向に所定距離を隔てて埋設された複数の永久磁石(図示せず)とを有する。このロータコア21の外周部には、複数の永久磁石により周方向に極性が交互に異なる複数の磁極が形成されている。ロータ20の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態では、8極(N極:4、S極:4)のロータが採用されている。
【0020】
ステータ30は、ロータコア21の径方向外側に対向して配置されたステータコア31と、ステータコア31に巻装された3相(U相,V相,W相)のステータコイル36と、ステータコイル36の軸方向両端に形成された一対のコイルエンド部37,37をそれぞれ覆う一対のコイルエンドカバー38,38と、を備えている。
【0021】
ステータコア31は、円環状の複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されている。このステータコア31は、円環状のバックコア部から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース(図示せず)を有し、隣り合うティースの間にはスロット(図示せず)が形成されている。スロットは、ロータの磁極数(8極対)に対し、3相のステータコイル36の1相当たり2個の割合で形成されている。即ち、スロットは、毎極毎相当たり2個の割合で形成されている。本実施形態では、8×3×2=48より、48個のスロットが周方向に等間隔に設けられている。
【0022】
ステータコイル36は、断面形状が矩形で外周面に絶縁皮膜が被覆された平角導線をスロットに所定の巻線方式で巻回することにより、ステータコア31に巻装されている。ステータコイル36の軸方向両端には、ステータコア31の軸方向端面から軸方向外方へ突出したステータコイル36の部分により円環状の一対のコイルエンド部37,37が形成されている。
【0023】
一対のコイルエンドカバー38,38は、それぞれ断面がL字状のリング状に形成されている。各コイルエンドカバー38は、各コイルエンド部37の外周面と軸方向外側端面とを覆うようにして、ステータコイル36の軸方向両側に配置されている。
【0024】
ロータコア21の軸方向両側には、内部に冷却液貯留部45を有する円筒状の端板40がそれぞれ設けられている。各端板40は、
図3に示すように、リング板状の内側板41と、内側板41の内周側端部に軸方向一端部が連結された円筒状の内周壁部42と、内側板41の外周側端部に軸方向一端部が連結された円筒状の外周壁部43と、外周壁部43の軸方向他端部に外周側端部が連結されたリング板状の外側板44とからなる。
【0025】
外側板44は、その径方向幅が内側板41の径方向幅よりも1/3程度に小さくされ、内周壁部42と径方向に離間している。よって、外側板44の内周端と内周壁部42との間には、外側板44の径方向幅よりも2倍程度大きい幅のリング状の空間が形成されている。これら内側板41と外側板44と内周壁部42と外周壁部43とにより区画される端板40の内部空間に、冷却装置50より供給される冷却液を貯留する冷却液貯留部45が形成されている。
【0026】
各端板40は、内側板41がロータコア21の軸方向端面に当接し、且つ外周壁部43がステータコイル36の各コイルエンド部37の内周面と径方向に対向した状態で、内周壁部42が回転軸15の外周に嵌合固定されている。内周壁部42の周方向に180°位相がずれた2箇所には、回転軸15の導入口16と冷却液貯留部45とを連通する連通孔46が設けられている。
【0027】
また、外周壁部43には、冷却液貯留部45の冷却液をロータ20の回転時の遠心力によりステータコイル36の各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射させる複数の冷却液噴射孔47a〜47cが設けられている。冷却液噴射孔47a〜47cは、断面積が異なる複数種類(本実施形態では3種類)のものが互いに軸方向に位相がずれた状態に配置されている。即ち、本実施形態の場合には、内側板41側から外側板44側に向かって、断面積が最も大きい冷却液噴射孔47a、断面積が中位の冷却液噴射孔47b、断面積が最も小さい冷却液噴射孔47cの順に配置されている。これら3種類の冷却液噴射孔47a〜47cは、端板40の中心軸線と平行な直線上で軸方向1列に並んだ状態に配置されている。軸方向1列に並んだ3種類の冷却液噴射孔47a〜47cは、外周壁部43の周方向に30°の角度間隔で合計12列に形成されている。
【0028】
これにより、各コイルエンド部37の内周面に対して、冷却液噴射孔47a〜47cから噴射される冷却液の噴射量が軸方向において異なるようにされている。本実施形態に場合には、各コイルエンド部37の内周面の根元部に最も多くの冷却液が噴射されるように設定されている。即ち、本実施形態のステータ30の構造上から、ステータコイル36は、銅損により自己発熱するとともに、ステータコア31からの鉄損による熱を受けるため、ステータコイル36の各コイルエンド部37の根元部が高温状態になり易い。そのため、最も高温になり易い各コイルエンド部37の根元部に最も多くの冷却液を噴射させて、根元部を重点的に冷却するようにされている。
【0029】
冷却装置50は、
図1に示すように、回転軸15の流通路17に冷却液を搬送するポンプ53と、加熱された冷却液の熱を放出させる放熱器54とを備えている。これらポンプ53及び放熱器54は、冷却液搬送用の配管で接続され、冷却液の循環回路上に設置されている。
【0030】
即ち、本実施形態の冷却装置50では、ポンプ53により回転軸15の流通路17に圧送された冷却液は、導出口18及び連通孔46から冷却液貯留部45に流出する。冷却液貯留部45に流出した冷却液は、ロータ20の回転時の遠心力によって、冷却液噴射孔47a〜47cから各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射され、各コイルエンド部37を冷却しつつ落下する。落下した冷却液は、ハウジング10の底部に設けられた排出口13からポンプ53に戻され、ポンプ53から放熱器54を経由して低温化された後、再び回転軸15の流通路17に圧送されるように循環回路が形成されている。なお、冷却液として、本実施形態ではATFを用いているが、従来の回転電機において使用される公知の冷却液を用いてもよい。
【0031】
次に、上記のように構成された本実施形態の回転電機1の作用について説明する。本実施形態の回転電機1は、通常使用状態において回転軸15が水平方向を向き、ハウジング10の排出口13が最下方部に位置するようにして車両の所定位置に設置される。そして、ステータ30のステータコイル36への通電により運転が開始されると、ロータ20の回転に伴って回転軸15が回転し、回転軸15から他の機器に駆動力が供給される。
【0032】
また、これと同時に、冷却装置50のポンプ53及び放熱器54が作動を開始し、
図1及び
図2に示すように、低温化された冷却液が回転軸15の導入口16から流通路17に圧送された後、導出口18及び連通孔46から冷却液貯留部45に流出する。冷却液貯留部45に流出した冷却液は、回転するロータ20の遠心力によって、冷却液噴射孔47a〜47cから各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射される。
【0033】
このとき、本実施形態では、冷却液噴射孔47a〜47cから噴射される冷却液の噴射量が軸方向において異なるようにされており、軸方向において最も高温になり易い各コイルエンド部37の根元部に最も多くの冷却液を重点的に噴射するようにされている。これにより、各コイルエンド部37の目的とする所定箇所に冷却液が安定して噴出されるので、各コイルエンド部37が効率良く且つ確実に冷却される。
【0034】
また、本実施形態では、ステータコイル36の軸方向両側に、各コイルエンド部37の外周面と軸方向外側端面とを覆うようにして一対のコイルエンドカバー38,38が設けられている。そのため、各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射された冷却液は、各コイルエンド部37を短時間で通過することなく、各コイルエンドカバー38によって各コイルエンド部37の付近に滞留する。これにより、各コイルエンド部37が効率良く且つ確実に冷却される。
【0035】
その後、各コイルエンド部37に噴射されて各コイルエンド部37を冷却した冷却液は、各コイルエンドカバー38から溢れ出しハウジング10の底部に落下する。落下した冷却液は、ハウジング10の底部に設けられた排出口13からポンプ53に戻され、ポンプ53から放熱器54を経由して低温化された後、再び回転軸15の導入口16から流通路17に圧送され、循環回路を循環してステータ30全体を繰り返し冷却する。
【0036】
以上のように、本実施形態の回転電機1によれば、各端板40は、上記のように構成された冷却液貯留部45と複数の冷却液噴射孔47a〜47cとを有し、冷却液噴射孔47a〜47cは、各コイルエンド部37の内周面に対する冷却液の噴射量が軸方向において異なるように設けられている。即ち、本実施形態の場合には、軸方向において最も高温になり易い各コイルエンド部37の根元部に最も多くの冷却液を重点的に噴射するようにされている。そのため、各コイルエンド部37の目的とする所定箇所に冷却液を重点的に且つ安定して噴出させることができるので、各コイルエンド部37を効率良く且つ確実に冷却することができる。
【0037】
また、本実施形態では、各端板40は、各コイルエンド部37の内周面と径方向に対向する位置に配置される円筒状の外周壁部43を有し、この外周壁部43に冷却液噴射孔47a〜47cが設けられている。そのため、各コイルエンド部37の内周面に対する冷却液の噴射量が軸方向において異なるように、冷却液噴射孔47a〜47cを適切に且つ容易に設けることができる。
【0038】
また、本実施形態では、各端板40の外周壁部43に、断面積が異なる複数種類の冷却液噴射孔47a〜47cが軸方向に並んだ状態に配置されているので、各コイルエンド部37の最も高温になり易い目的とする所定箇所に冷却液を重点的に且つ安定して噴出させることができる。
【0039】
また、本実施形態の回転電機1は、各コイルエンド部37の外周面と軸方向外側端面とを覆う一対のコイルエンドカバー38,38を備えている。そのため、冷却液噴射孔47a〜47cから各コイルエンド部37の内周面に向かって噴射された冷却液を、このコイルエンドカバー38によって、各コイルエンド部37の付近に滞留させることができる。これにより、各コイルエンド部37を効率良く且つ確実に冷却することができる。
【0040】
また、本実施形態では、回転軸15は、中空状に形成されて、冷却装置50より冷却液が導入される導入口16と、導入口16から導入された冷却液が流通する流通路17と、流通路17から冷却液貯留部45に冷却液を導出する導出口18とを有するものが採用されている。これにより、冷却装置50より冷却液貯留部45に供給される冷却液の循環回路を、回転軸15を利用して容易に構成することができる。
【0041】
〔実施形態2〕
実施形態2の回転電機2について
図4〜
図6を参照して説明する。実施形態1の回転電機1では、冷却装置50より導入される冷却液の導入口16及び流通路17が回転軸15に設けられていたのに対して、実施形態2の回転電機2では、導入口16A及び流通路17Aがハウジング10Aに設けられている点で異なる。よって、実施形態1と共通する部材や構成についての詳しい説明は省略し、以下、異なる点及び重要な点を中心に説明する。なお、実施形態1と共通する部材や部位には同じ符号を用いる。
【0042】
実施形態2の回転電機2は、
図4〜
図6に示すように、ハウジング10Aと、回転軸15Aと、ロータ20と、ステータコア31及びステータコイル36を有するステータ30と、一対の端板40A,40Aと、冷却装置50と、を備えている。実施形態2の回転軸15Aは、中実のものが採用されており、導入口16、流通路17及び導出口18を有していない点で、実施形態1の回転軸15と異なる。
【0043】
実施形態2のハウジング10Aは、実施形態1と同様に構成されたロータ20やステータ30等を内部に収容している。このハウジング10Aは、軸方向両端が開口した円筒状の筒状部材11Aと、筒状部材11Aの両端の開口部を封止するように固定された蓋部材12A,12Aとからなる。そして、ハウジング10Aは、冷却装置50より冷却液が導入される導入口16Aと、導入口16Aから導入された冷却液が流通する流通路17Aと、流通路17Aから各端板40Aのそれぞれの冷却液貯留部45に冷却液を供給する一対のノズル18A,18Aと、を有する。
【0044】
導入口16Aは、一方(
図4の右側)の蓋部材12Aの軸方向外側端面に開口して外周側端部に設けられている。この導入口16Aは、回転軸15Aが水平方向を向くようにして回転電機2を車両に設置したときに、下方となる位置に設けられている。
【0045】
そして、流通路17Aは、導入口16Aから筒状部材11Aの内部を軸方向に延びて他方の蓋部材12Aに到達した後、回転軸15A側へ略直角に折れ曲がって他方の蓋部材12Aの内部を径方向内方側に向かって延び、その後、軸方向内方側へ略直角に折れ曲がっている。流通路17Aの軸方向内方側の先端出口には、一方の端板40Aの冷却液貯留部45に先端部が進入するようにしてノズル18Aが配設されている。
【0046】
また、一方の蓋部材12Aには、導入口16Aから軸方向に僅かに延びた後、回転軸15A側へ略直角に折れ曲がって一方の蓋部材12Aの内部を径方向内方側に向かって延び、その後、軸方向内方側へ略直角に折れ曲がって軸方向内方に延びる流通路17Aが設けられている。この流通路17Aの軸方向内方側の先端出口にも、他方の端板40Aの冷却液貯留部45に先端部が進入するようにしてノズル18Aが配設されている。
【0047】
なお、筒状部材11Aの軸方向両側の下方部に設けられた排出口13A,13Aは、導入口16Aから筒状部材11Aの内部を軸方向に延びる流通路17Aとは、周方向に位相がずれた位置に設けられている。よって、実施形態2の回転電機2は、排出口13A,13Aが最下方部に位置するように車両に設置される。
【0048】
また、実施形態2の各端板40Aは、
図6に示すように、内側板41と、内周壁部42と、外周壁部43と、外側板44と、冷却液貯留部45とを備え、外周壁部43には、実施形態1と同様に複数の冷却液噴射孔47a〜47cが設けられている。但し、実施形態2の各端板40Aは、実施形態1の各端板40の内周壁部42に設けられていた連通孔46が設けられていない点で、実施形態1の各端板40と異なる。
【0049】
なお、実施形態2の冷却装置50は、実施形態1の冷却装置50と同じであるので詳しい説明は省略する。
【0050】
以上のように構成された実施形態2の回転電機2は、実施形態1の場合と同様に、ステータコイル36への通電により運転が開始されると同時に、冷却装置50のポンプ53及び放熱器54が作動を開始する。これにより、
図4及び
図5に示すように、低温化された冷却液がハウジング10Aの導入口16Aから流通路17Aに圧送された後、ノズル18Aから冷却液貯留部45に供給される。冷却液貯留部45に貯留した冷却液は、回転するロータ20の遠心力によって、冷却液噴射孔47a〜47cから各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射される。
【0051】
このとき、実施形態2の場合にも、冷却液噴射孔47a〜47cから噴射される冷却液の噴射量が軸方向において異なるようにされているので、軸方向において最も高温になり易い各コイルエンド部37の根元部に最も多くの冷却液が重点的に噴射される。これにより、各コイルエンド部37の目的とする所定箇所に冷却液が安定して噴出されるので、各コイルエンド部37が効率良く且つ確実に冷却される。
【0052】
また、実施形態2の場合にも、ステータコイル36の軸方向両側に、各コイルエンド部37の外周面と軸方向外側端面とを覆うようにして一対のコイルエンドカバー38,38が設けられている。そのため、各コイルエンド部37の内周面に向けて噴射された冷却液は、各コイルエンドカバー38によって各コイルエンド部37の付近に滞留するので、各コイルエンド部37が効率良く且つ確実に冷却される。
【0053】
以上のように、実施形態2の回転電機2によれば、各端板40Aは、上記のように構成された冷却液貯留部45と複数の冷却液噴射孔47a〜47cとを有し、冷却液噴射孔47a〜47cは、各コイルエンド部37の内周面に対する冷却液の噴射量が軸方向において異なるように設けられている。そのため、実施形態2の場合にも、各コイルエンド部37の目的とする所定箇所に冷却液を重点的に且つ安定して噴出させることができるので、各コイルエンド部37を効率良く且つ確実に冷却することができる等、実施形態1の場合と同様の作用及び効果を奏する。
【0054】
特に、実施形態2では、冷却装置50より冷却液が導入される導入口16Aや流通路17Aがハウジング10Aに設けられているので、冷却装置50より冷却液貯留部45に供給される冷却液の循環回路を、ハウジング10Aを利用して容易に構成するすることができる。
【0055】
〔変形例1〕
図7に示す変形例1の端板40Bは、実施形態1の端板40と同様に、内側板41と、内周壁部42と、外周壁部43と、外側板44と、冷却液貯留部45とを備えている。そして、端板40Bの外周壁部43には、実施形態1と同様に、断面積が異なる3種類の冷却液噴射孔47a〜47cが互いに軸方向に位相がずれた状態に配置されている。
【0056】
変形例1の場合には、実施形態1と同様に、断面図が最も大きい冷却液噴射孔47aと、断面積が中位の冷却液噴射孔47bと、断面積が最も小さい冷却液噴射孔47cが、内側板41側から外側板44側に向かって順番に配置されている。そして、変形例1の場合には、断面積が異なる冷却液噴射孔47a〜47cは、互いに周方向に位相がずれた状態に配置されている。
【0057】
即ち、実施形態1では、断面積が異なる3種類の冷却液噴射孔47a〜47cが、端板40の中心軸線と平行な直線上で軸方向1列に並んだ状態に配置されていたのに対して、変形例1では、断面積が異なる3種類の冷却液噴射孔47a〜47cが、互いに周方向に位相がずれた状態に配置されている点で、実施形態1と異なる。
【0058】
上記のように構成された
図7に示す変形例1の端板40Bは、実施形態1の回転電機1に用いられるものであり、この端板40Bを実施形態2の回転電機2に用いる場合には、内周壁部42に設けられている連通孔46を除去してもよい。
【0059】
〔変形例2〕
図8に示す変形例2の端板40Cは、変形例1の端板40Bと同様に、内側板41と、内周壁部42と、外周壁部43と、外側板44と、冷却液貯留部45とを備えている。そして、端板40Cの外周壁部43には、断面積が同一の冷却液噴射孔47が軸方向の複数箇所(変形例2では3箇所)に配置され、軸方向の各配置箇所において冷却液噴射孔47の周方向の配置個数が異なるようにされている。
【0060】
即ち、軸方向の内側板41側の配置箇所には、外周壁部43の周方向に30°の角度間隔で合計12個の冷却液噴射孔47が配置されている。また、軸方向の中央部の配置箇所には、外周壁部43の周方向に60°の角度間隔で合計6個の冷却液噴射孔47が配置されている。また、軸方向の外側板44側の配置箇所には、外周壁部43の周方向に90°の角度間隔で合計4個の冷却液噴射孔47が配置されている。
【0061】
上記のように構成された
図8に示す変形例2の端板40Cは、実施形態1の回転電機1に用いられるものであり、この端板40Cを実施形態2の回転電機2に用いる場合には、内周壁部42に設けられている連通孔46を除去してもよい。
【0062】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0063】
例えば、上記の実施形態1,2では、各コイルエンド部37の内周面の根元部に最も多くの冷却液を重点的に噴射するようにされていたが、ステータコア31及びステータコイル36の仕様や構造等の相違によって、最も高温になる部位が軸方向に異なる場合には、その最も高温になる部位に対して最も多くの冷却液を重点的に噴射するように変更することができる。このように変更する場合には、実施形態1,2及び変形例1,2のように、端板40,40A〜40Cに設けられる冷却液噴射孔47,47a〜47cの断面積の大きさや配置個数を適宜変更して、コイルエンド部37の内周面に対する冷却液の噴射量を軸方向において異なるようにすればよい。
【0064】
また、上記の実施形態1,2では、ロータコア21の軸方向両側にそれぞれ端板40,40Aが設けられていたが、回転電機の仕様や構造等に応じて、ロータコア21の軸方向一方側にだけ端板40,40Aを設けるようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、本発明に係る回転電機を車両用モータ(電動機)に適用した例を説明したが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、発電機又は電動機、さらには両者を選択的に使用し得る回転電機にも適用することができる。