(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221965
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20171023BHJP
G01L 9/00 20060101ALI20171023BHJP
B81C 3/00 20060101ALI20171023BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20171023BHJP
G01C 19/5783 20120101ALI20171023BHJP
【FI】
G01P15/08 102A
G01L9/00 303G
B81C3/00
H01L29/84 B
G01C19/5783
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-131289(P2014-131289)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-8935(P2016-8935A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 真和
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5697535(JP,B2)
【文献】
特許第4645028(JP,B2)
【文献】
特許第6034619(JP,B2)
【文献】
特許第5776232(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
G01P15
B81B
B81C
H01L29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(10a)を有する第1基板(10)と、
一面(21a)を有し、前記一面側に窪み部(21c)が形成され、当該一面が前記第1基板の一面と対向する状態で前記第1基板に接合される第2基板(21)と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板の窪み部との間の空間を含んで気密室(30)が構成された半導体装置の製造方法において、
前記第2基板の一面側に前記窪み部を形成する工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを接合することで前記気密室を形成する工程と、
加熱することにより、前記気密室内のデガスを排出するガス抜き工程と、を行い、
前記ガス抜き工程の前に、前記第2基板の一面と反対側の他面(21b)のうちの前記窪み部の底面と対向する部分の少なくとも一部を薄膜化し、前記気密室内のデガスを排出するための薄膜部(21e)を形成する工程を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記薄膜部を形成する工程では、前記第2基板の他面のうちの前記窪み部と対向する部分に凹部(21d)を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜部を形成する工程では、前記第2基板の他面のうちの前記窪み部と対向する部分の全面を薄膜化することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記がス抜き工程の後、前記薄膜部上に補強膜(23)を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1、第2基板を接合する工程の前に、前記第1基板の一面側に物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(14、19)を形成する工程を行い、
前記気密室を形成する工程では、前記センシング部を封止するように前記気密室を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記がス抜き工程の後、前記薄膜部に圧力に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(19)を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
一面(10a)を有する第1基板(10)と、
一面(21a)を有し、前記一面側に窪み部(21c)が形成され、当該一面が前記第1基板の一面と対向する状態で前記第1基板に接合される第2基板(21)と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板の窪み部との間の空間を含んで気密室(30)が構成された半導体装置において、
前記第2基板の一面と反対側の他面(21b)のうちの前記窪み部の底面と対向する部分には、前記気密室内のデガスを排出するために薄膜化された薄膜部(21e)が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記薄膜部上には、補強膜(23)が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1基板の一面側には、物理量に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(14、19)が形成されており、
前記センシング部は、前記気密室に封止されていることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記薄膜部には、圧力に応じたセンサ信号を出力するセンシング部(19)が形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1基板に第2基板が接合され、第1基板と第2基板との間に気密室が構成された半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の半導体装置として、次のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この半導体装置では、第1基板に角速度を検出するセンシング部が形成されている。また、第2基板は、第1基板の一面のうちのセンシング部と対向する部分に窪み部が形成されている。そして、この第2基板は、第1基板と窪み部との間を含む空間にてセンシング部を封止する気密室が構成されるように、第1基板に接合されている。
【0004】
このような半導体装置は、次のように製造される。すなわち、まず、第1基板に角速度を検出するセンシング部を形成すると共に、第2基板に窪み部を形成する。そして、第1基板と窪み部との間を含む空間にてセンシング部を封止する気密室が構成されるように、第1基板と第2基板とを接合することにより、製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−187664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記半導体装置の製造方法では、第1基板と第2基板とを接合する際、デガス(水素ガス等)が発生する。このため、気密室内の圧力が所望の圧力に対して変動し、検出精度が低下するという問題がる。特に、気密室を小型化することによって半導体装置を小型化している場合には、デガスによって気密室内の圧力が大きく変動してしまう。
【0007】
この問題を解決するため、第1基板と第2基板とを接合した後、加熱処理を行うことによってデガスの拡散係数を大きくすることにより、気密室内に存在するデガスを第2基板内を拡散(通過)させて外部に排出するガス抜き工程を行うことが考えられる。しかしながら、このガス抜き工程を単純に行うと、気密室内のデガスを排出する際の時間が長くなるという問題がある。
【0008】
なお、このような問題は、センシング部を封止する気密室のみに発生する問題ではなく、例えば、第1基板と第2基板とを接合して気密室を構成し、当該気密室を基準圧力室とする圧力センサ等においても同様に発生する。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、ガス抜き工程の短縮化を図ることのできる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(10a)を有する第1基板(10)と、一面(21a)を有し、一面側に窪み部(21c)が形成され、当該一面が第1基板の一面と対向する状態で第1基板に接合される第2基板(21)と、を備え、第1基板と第2基板の窪み部との間の空間を含んで気密室(30)が構成された半導体装置の製造方法において、以下の点を特徴としている。
【0011】
すなわち、第2基板の一面側に窪み部を形成する工程と、第1基板と第2基板とを接合することで気密室を形成する工程と、加熱することにより、気密室内のデガスを排出するガス抜き工程と、を行い、ガス抜き工程の前に、第2基板の一面と反対側の他面(21b)のうちの窪み部の底面と対向する部分の少なくとも一部を薄膜化し
、気密室内のデガスを排出するための薄膜部(21e)を形成する工程を行うことを特徴としている。
【0012】
これによれば、第2基板に薄膜部を形成しているため、ガス抜き工程を行う際、デガスが薄膜部を拡散(通過)する場合には拡散する経路が短くなって外部に排出され易くなる。このため、ガス抜き工程の短縮化を図ることができる。
【0013】
この場合、請求項4に記載の発明のように、がス抜き工程の後、薄膜部上に補強膜(23)を形成するようにしてもよい。これによれば、補強膜によって第2基板の強度を高くできるため、ガス抜き工程後に基板が割れたりすることを抑制できる。
【0014】
また、請求項7に記載の発明では、一面(10a)を有する第1基板(10)と、一面(21a)を有し、一面側に窪み部(21c)が形成され、当該一面が第1基板の一面と対向する状態で第1基板に接合される第2基板(21)と、を備え、第1基板と第2基板の窪み部との間の空間を含んで気密室(30)が構成された半導体装置において、第2基板の一面と反対側の他面(21b)のうちの窪み部の底面と対向する部分には、
気密室内のデガスを排出するために薄膜化された薄膜部(21e)が形成されていることを特徴としている。
【0015】
これによれば、第1、第2基板を接合した後にガス抜き工程を行うことにより、デガスが薄膜部を拡散(通過)する場合には拡散する経路が短くなって外部に排出され易くなる。このため、ガス抜き工程の短縮化を図ることができる。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図3】
図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4】
図3に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図6A】本発明の他の実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図6B】本発明の他の実施形態における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、本発明の半導体装置を加速度を検出する加速度センサに適用した例について説明する。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の加速度センサは、一面10aを有するセンサ基板10を備えている。本実施形態では、センサ基板10は、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13が順に積層されたSOI(Silicon on Insulator)基板が用いられる。
【0021】
なお、本実施形態では、センサ基板10が本発明の第1基板10に相当し、半導体層13のうちの絶縁膜12と反対側の一面がセンサ基板10の一面10aを構成している。また、支持基板11および半導体層13はシリコン等で構成され、絶縁膜12は酸化膜等で構成される。
【0022】
そして、センサ基板10には、一面10a側(半導体層13)に物理量としての加速度に応じたセンサ信号を出力するセンシング部14が形成されている。本実施形態では、このセンシング部14は、可動部および固定部が溝部15によって区画形成された周知の構成とされている。簡単に説明すると、可動部は、矩形状の錘部の両端が梁部を介してアンカー部に一体に連結され、当該錘部の側面に可動電極が形成されている。固定部は、可動電極の側面と所定の検出間隔を有するように可動電極と平行に配置された固定電極が形成されている。
【0023】
また、絶縁膜12のうちセンシング部14と対向する部分には、犠牲層エッチング等によって開口部16が形成されている。これにより、可動電極および固定電極は、支持基板11に対して浮遊した状態とされている。
【0024】
このため、センシング部14は、加速度が印加されると、可動電極(錘部)が加速度に応じて変位することで可動電極と固定電極との間隔が変化し、加速度に応じたセンサ信号(容量変化)を出力する。
【0025】
そして、
図1に示されるように、上記センサ基板10の一面10aにはキャップ基板20が接合され、センサ基板10とキャップ基板20との間に気密室30が構成されている。
【0026】
キャップ基板20は、センサ基板10側の一面21aおよび当該一面21aと対向する他面21bを有し、一面21aのうちのセンシング部14と対向する部分に窪み部21cが形成されたシリコン基板等の基板21を有している。そして、基板21は、一面21aに絶縁膜22が形成され、当該絶縁膜22を介して半導体層13と接合されている。これにより、センサ基板10と基板21の窪み部21cとの間の空間を含んで気密室30が構成され、当該気密室30にセンシング部14が封止されている。
【0027】
なお、本実施形態では、基板21が本発明の第2基板に相当しており、窪み部21cは底面が略矩形状となるように形成されている。また、具体的には後述するが、センサ基板10(半導体層13)と基板21(絶縁膜22)とは、いわゆる直接接合によって接合されている。
【0028】
また、基板21には、基板21の他面21b側から凹部21dが形成されている。具体的には、この凹部21dは、基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分に形成され、かつ窪み部21cの底面に達しないように形成されている。つまり、凹部21dは、基板21を貫通しないように形成されている。そして、窪み部21cの底面と凹部21dの底面との間の部分にて、基板21を薄膜化した薄膜部21eが形成されている。
【0029】
本実施形態では、
図2に示されるように、円筒状の5つの凹部21d(薄膜部21e)が形成されている。詳しくは、凹部21d(薄膜部21e)のうちの1つは、基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分の略中心に形成され、残りの凹部21d(残りの薄膜部21e)は当該中心に形成された凹部21d(薄膜部21e)を基準として点対称となるように形成されている。
【0030】
なお、特に限定されるものではないが、基板21は、窪み部21cが形成されていない部分の厚さが数百μm程度とされ、薄膜部21eの厚さが数〜数十μm程度とされている。
【0031】
また、
図1に示されるように、基板21の他面21bには、補強膜23が形成されている。この補強膜23は、凹部21dを形成することによって強度が低下した部分を補強するものであり、凹部21dを埋め込むように形成されている。そして、補強膜23上には、絶縁膜24が形成されている。すなわち、本実施形態のキャップ基板20は、基板21、絶縁膜22、補強膜23、絶縁膜24を有する構成とされている。なお、補強膜23は、酸化膜や窒化膜等で構成され、絶縁膜24はTEOS(Tetra ethyl ortho silicate)等で構成されている。
【0032】
さらに、キャップ基板20には、センサ基板10とキャップ基板20との積層方向に当該キャップ基板20を貫通してセンシング部14の一部を露出させる複数の貫通孔25が形成されている。そして、貫通孔25の壁面には、TEOS等で構成される絶縁膜26を介してAl等で構成される貫通電極27がセンシング部14と電気的に接続されるように形成されている。また、基板21の他面21b側に形成された絶縁膜24上には、貫通電極27と電気的に接続されるパッド部28が形成されている。
【0033】
以上が本実施形態における加速度センサの構成である。次に、上記加速度センサの製造方法について
図3および
図4を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、
図3(a)に示されるように、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13が順に積層されたセンサ基板10を用意する。そして、従来の製造方法と同様に、ドライエッチング等で半導体層に溝部15を形成してセンシング部14を形成すると共に、犠牲層エッチング等で絶縁膜12に開口部16をする。
【0035】
続いて、
図3(b)に示されるように、
図3(a)とは別工程において、基板21を用意し、基板21の一面21aにドライエッチング等で窪み部21cを形成する。そして、基板21の一面21aにCVD(Chemical Vapor Deposition)法等で絶縁膜22を形成する。
【0036】
次に、
図3(c)に示されるように、センサ基板10と基板21(絶縁膜22)とを接合する。本実施形態では、まず、センサ基板10の接合面(半導体層13)および絶縁膜22の接合面にArイオンビーム等を照射し、各接合面を活性化させる。そして、センサ基板10および基板21に適宜設けられたアライメントマーク等を用いて赤外顕微鏡等によるアライメントを行い、室温〜550°の低温で接合するいわゆる直接接合により、センサ基板10と基板21(絶縁膜22)とを接合する。これにより、センサ基板10と基板21の窪み部21cとの間の空間を含んで気密室30が構成され、当該気密室30にセンシング部14が封止される。
【0037】
なお、この工程が終了した後は、センサ基板10と基板21とを接合した際に発生するデガス(水素ガス等)によって気密室30内の圧力が所望の圧力に対して変動した(高くなっている)状態となっている。
【0038】
次に、
図3(d)に示されるように、基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分にドライエッチング等で上記形状の凹部21dを形成し、窪み部21cの底面と凹部21dの底面との間の部分にて構成される薄膜部21eを形成する。
【0039】
続いて、
図4(a)に示されるように、
図3(d)の工程まで行ったものを700〜800°に加熱して気密室30内に存在するデガスを絶縁膜22および基板21内を拡散(通過)させて外部に排出するガス抜き工程を行う。つまり、加熱することによってデガスの拡散係数を大きくして当該デガスを気密室30内から外部に排出する。このとき、本実施形態では、
図3(d)の工程において、薄膜部21eを形成している。このため、薄膜部21eでは、デガスが拡散(通過)する経路が短くなって外部に排出され易くなるため、ガス抜き工程の短縮化を図ることができる。
【0040】
次に、
図4(b)に示されるように、凹部21dが埋め込まれるように、基板21の他面21bにCVD法等で酸化膜や窒化膜等で構成される補強膜23を形成し、基板21のうちの凹部21dを形成した部分の強度を高くする。
【0041】
続いて、
図4(c)に示されるように、センシング部14の一部が露出するように、ドライエッチング等で補強膜23、基板21、絶縁膜22を貫通する貫通孔25を形成する。そして、各貫通孔25の壁面にTEOS等の絶縁膜26を成膜する。このとき、基板21の他面21b側(補強膜23上)に形成された絶縁膜にて上記絶縁膜24が構成される。次に、各貫通孔25の底部に形成された絶縁膜26を除去する。そして、各貫通孔25にスパッタ法や蒸着法等でAlやAl−Si等の金属膜を成膜することにより、センシング部14と電気的に接続される貫通電極27を形成する。その後、絶縁膜24上に形成された金属膜をパターニングして貫通電極27と電気的に接続されるパッド部28を形成することにより、上記
図1に示す加速度センサが製造される。
【0042】
なお、上記では、1つの加速度センサの製造方法について説明したが、ウェハ状のセンサ基板10と基板21とを用意し、ウェハ状のまま上記各工程を行った後にこのものをダイシングカットしてチップ単位に分割するようにしてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、基板21に薄膜部21eを形成している。このため、ガス抜き工程を行う際、デガスが薄膜部21eを拡散(通過)する場合には拡散する経路が短くなって外部に排出され易くなる。したがって、ガス抜き工程の短縮化を図ることができる。
【0044】
また、凹部21dが埋め込まれるように、補強膜23を形成しているため、基板21のうちの凹部21dを形成した部分の強度を高くでき、ガス抜き工程後に基板21が割れたりすることを抑制できる。
【0045】
さらに、本実施形態では、凹部21d(薄膜部21e)のうちの1つが基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分の略中心に形成され、残りの凹部21d(残りの薄膜部21e)が当該中心に形成された凹部21d(薄膜部21e)を基準として点対称となるように形成されている。このため、例えば、基板21の他面21bにおける窪み部21cの底面と対向する部分のうちの中心と異なる部分に1つの凹部21dのみが形成されている場合と比較して、基板21の所定箇所に応力が集中することを抑制でき、基板21が割れることを抑制できる。
【0046】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分の全面を薄くするものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
図5に示されるように、本実施形態の加速度センサは、基板21の他面21bと窪み部21cの底面との間の部分が全体的に薄くされている。そして、この部分の全体が薄膜部21eとされている。
【0048】
このような加速度センサは、
図3(d)の工程において、基板21の他面21bから研削、研磨等で基板21を全体的に薄くした後、
図4以降の工程を行うことによって製造される。
【0049】
このように、基板21の他面21bと窪み部21cの底面との間の部分の全体を薄膜部21eとした場合には、さらにデガスを排出し易くできる。
【0050】
なお、
図5では、基板21の一面21aと他面21bとの間が全て薄くなっているものを図示しているが、基板21の他面21bと窪み部21cの底面との間の部分のみが薄くなっていてもよい。つまり、基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分の全体に上記凹部21dが形成された構成とされていてもよい。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、上記各実施形態において、本発明を
図6A、Bに示されるような圧力センサに適用することもできる。すなわち、
図6Aに示される圧力センサでは、支持基板11に凹部17が形成されることにより、凹部17の底面とセンサ基板10の一面10aとの間に位置する絶縁膜12および半導体層13にて、圧力に応じて変形可能なダイヤフラム18が構成されている。そして、このダイヤフラム18に当該ダイヤフラム18の変形に応じて抵抗値が変化するゲージ抵抗19が形成されている。また、この圧力センサでは、キャップ基板20は、基板21および絶縁膜22にて構成されており、ゲージ抵抗19にてセンシング部が構成されている。
【0053】
この圧力センサでは、凹部17を介してダイヤフラム18に測定媒体の圧力が印加されると、測定媒体の圧力と気密室30との差圧に応じてダイヤフラム18が変形する。そして、当該差圧に応じたセンサ信号がゲージ抵抗19から出力される。つまり、
図6Aでは、気密室30は、ダイヤフラム18に基準圧力を印加する基準圧力室としても機能する。
【0054】
なお、
図6Aでは図示していないが、基板21の他面21bに補強膜23が配置されていてもよい。また、このような圧力センサは、基本的には、上記
図3、
図4と同様の工程にて製造され、
図3(a)の工程においてゲージ抵抗19を形成すればよい。
【0055】
また、
図6Bに示される圧力センサでは、第1基板10は、支持基板11および絶縁膜12にて構成され、第2基板20は基板21のみで構成されている。そして、第2基板20の薄膜部21eに、圧力に応じて抵抗値が変化するゲージ抵抗19が形成されている。つまり、
図6Bでは、薄膜部21eが圧力に応じて変形可能なダイヤフラム18とされ、ゲージ抵抗19にてセンシング部が構成されている。
【0056】
この圧力センサでは、薄膜部21eに測定媒体の圧力が印加されると、測定媒体の圧力と気密室30との差圧に応じてダイヤフラム18が変形する。そして、当該差圧に応じたセンサ信号がゲージ抵抗19から出力される。つまり、
図6Bでは、気密室30は、ダイヤフラム18に基準圧力を印加する基準圧力室としても機能する。
【0057】
なお、
図6Bでは図示していないが、基板21の他面21bに補強膜23が配置されていてもよい。また、このような圧力センサは、第1基板10と第2基板20を接合して薄膜部21eを形成し、デガスを排出した後にゲージ抵抗19を形成することによって製造される。
【0058】
さらに、特に図示しないが、本発明を角速度センサに適用することもできる。
【0059】
また、上記各実施形態において、補強膜23が形成されていなくてもよい。また、補強膜23を形成する場合には、SOG膜等を塗布することによって形成してもよい。そして、上記第1実施形態において、補強膜23は、凹部21dに埋め込まれていなくてもよく、凹部21dの壁面に沿って形成されていてもよい。
【0060】
さらに、上記各実施形態において、センサ基板10と基板21(絶縁膜22)とを直接接合する際には、Arイオンビームを照射して各接合面を活性化させる代わりに、プラズマ処理を行って各接合面を活性化させるようにしてもよい。また、センサ基板10と基板21(絶縁膜22)との接合は、金属接合等によって接合されていてもよいし、はんだを介して接合されていてもよい。すなわち、本発明は、接合時に発生するデガスによって気密室30内の圧力が変動する半導体装置に適用できる。
【0061】
そして、上記第1実施形態において、凹部21d(薄膜部21e)は、基板21の他面21bのうちの窪み部21cの底面と対向する部分の略中心に対して非対称に形成されていてもよい。また、凹部21d(薄膜部21e)の形状や数は適宜変更であり、例えば、凹部21d(薄膜部21e)は1つのみであってもよい。そして、凹部21d(薄膜部21e)を1つのみ形成する場合には、枠状の凹部21d(薄膜部21e)を形成してもよい。
【0062】
さらに、上記各実施形態において、窪み部21cの壁面に絶縁膜22が形成されていなくてもよい。そして、第1基板10としてSOI基板ではなく、シリコン基板等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 センサ基板(第1基板)
10a 一面
14 センシング部
21 基板(第2基板)
21a 一面
21b 他面
21c 窪み部
21d 凹部
21e 薄膜部
30 気密室