特許第6221971号(P6221971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221971
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ルーパ装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 49/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B21C49/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-138688(P2014-138688)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-16410(P2016-16410A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】間宮 太一
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−157119(JP,A)
【文献】 特開2009−233698(JP,A)
【文献】 特開平02−307616(JP,A)
【文献】 特開平07−016637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00−49/00
B21B 39/00−41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定基部と、
前記固定基部に対向する可動基部であるキャリッジと、
前記固定基部に並列された複数の固定デフレクタロールと、前記キャリッジに並列された複数の移動デフレクタロールとからなるデフレクタロール群と、
前記デフレクタロール群の固定デフレクタロールと移動デフレクタロールとにストリップが交互に巻き掛けられて、前記固定基部と前記キャリッジとの間に複数のストランドが形成された状態で、前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更可能なキャリッジ制御部と、
前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更する場合に、前記デフレクタロール群のロール速度に基づいて、前記デフレクタロール群の中に回転が停止しているデフレクタロールが存在するか否かを判定する停止ロール判定部と、
前記停止しているデフレクタロールが存在する場合に、前記複数のストランドの各張力を推定する第1ストランド張力推定部と、を備え、
前記第1ストランド張力推定部は、
前記停止したデフレクタロールに巻き掛けられた両側のストランドをそれぞれルーパ入側からi−1番目とi番目のストランドとし、ルーパ出側の最終ストランドをN番目のストランドとし、N番目のストランドの張力をTNとし、デフレクタロールを通過する前後のストランドの張力差をΔTと定める場合に、
N−1番目からi番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどN番目のストランドの張力TNから張力差ΔTを累積的に減算して各ストランドの張力を計算し、
i−1番目のストランドの張力計算について、i番目のストランドと同一張力とし、
i−2番目から1番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどi−1番目のストランドの張力に張力差ΔTを累積的に加算して各ストランドの張力を計算すること、
を特徴とするルーパ装置。
【請求項2】
前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更する場合に、前記デフレクタロール群のロール速度に基づいて、前記複数のストランドのうち一端のストリップがルーパ入側方向に他端のストリップがルーパ出側方向に搬送されているストランドが存在するか否かを判定する搬送状態判定手段と、
前記ルーパ入側方向と出側方向の両方向にストリップが搬送されているストランドが存在する場合に、前記複数のストランドの各張力を推定する第2ストランド張力推定部と、をさらに備え、
前記第2ストランド張力推定部は、
前記両方向に搬送されているストランドをi番目のストランドとし、ルーパ出側の最終ストランドをN番目のストランドとし、N番目のストランドの張力をTNとし、デフレクタロールを通過する前後のストランドの張力差をΔTと定める場合に、
N−1番目からi番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどN番目のストランドの張力TNから張力差ΔTを累積的に減算して各ストランドの張力を計算し、
i−1番目から1番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどi番目のストランドの張力に張力差ΔTを累積的に加算して各ストランドの張力を計算すること、
を特徴とする請求項1記載のルーパ装置。
【請求項3】
前記キャリッジ制御部は、
前記キャリッジを制御するためのトルク指令値について、運転状態に応じた基準値を取得する手段と、
前記ルーパ入側方向と出側方向の両方向に搬送されているストランドが存在する場合に、該ストランド上の搬送速度が0である位置から該ストランドの一端までの距離を算出する手段と、
該ストランドの一端のデフレクタロールが停止したと仮定して前記第1ストランド張力推定部と同様の計算により算出される前記複数のストランドの総張力および前記第2ストランド張力推定部により算出される前記複数のストランドの総張力に前記算出された距離に応じた重み付けを設定して、該重み付けが設定された両総張力に基づく補正値を算出し、前記基準値と該補正値とに基づいて、補正後のトルク指令値を算出する手段と、
を備えることを特徴とする請求項2記載のルーパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ルーパ装置に関する。特に、帯状の鋼、アルミニウムなどの金属板(以下ストリップと称する)に焼鈍、鍍金、コーティング等の処理を連続的に行うプロセスラインを構成する装置の1つであるルーパ装置における張力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセスラインは、入側部、プロセス部、出側部で構成される。入側部は、コイル状に巻かれたストリップの払い出し、溶接を行う。プロセス部は、焼鈍、鍍金、塗装、表面処理等を行う。出側部は、ストリップの検査、巻取りを行う。
【0003】
特に、プロセス部における速度、張力制御不良は、ストリップの蛇行、緩み、振動を発生し、ヒートバックル、耳伸び、中伸び、メッキ膜厚の不均一といった形状不良や、板破断の原因となる。したがって、プロセス部では、最終製品の形状精度、材質の均一性の向上という点で、ストリップを定速、定張力で搬送することが望まれる。一方、入側部または出側部では、コイル交換、溶接、検査のために、ストリップの停止、逆走がしばしば発生する。
【0004】
そのため、プロセスラインでは、入側部とプロセス部との間、および、プロセス部と出側部との間に、ストリップを一時的に貯蔵可能なルーパ装置を配置し、ラインを区切ることで、プロセス部におけるストリップの定速、定張力搬送を可能としている。
【0005】
一般的なルーパ装置の構成について説明する。ルーパ装置は、固定基部と、固定基部に対向する可動基部であるキャリッジを備える。固定基部は、複数の固定デフレクタロールを備える。キャリッジは、複数の移動デフレクタロールを備える。板材であるストリップは、固定デフレクタロールと移動デフレクタロール間に交互に巻き掛けられて、固定基部とキャリッジとの間に複数のストランドが形成された状態で、ルーパ装置内に貯蔵される。キャリッジは、チェーンあるいはワイヤロープで吊り下げられ、キャリッジモータにより上下方向に並行移動する。移動デフレクタロールはキャリッジと共に上下方向に移動するが、固定デフレクタロールはその中心位置が固定されているため移動しない。固定デフレクタロールは、数本に1本がモータにより駆動される駆動ロール(ヘルパロール)であり、他のロールは非駆動ロールである。ストリップの張力は、ルーパ入側および出側に設置された張力計により測定される。
【0006】
また、プロセス部におけるストリップの定速・定張力搬送のために、キャリッジモータにより、キャリッジの定置制御とストリップの張力制御が行われる。一方で、駆動ロールは、ストリップとの揃速性を保つように速度制御される。
【0007】
ルーパ装置内において、ストリップ速度、張力制御が不十分であるとき、速度、張力指令値と実績値の偏差や、実績値の変動が発生する。ルーパ装置内における、速度、張力の偏差や変動は、プロセス部まで伝播して、プロセス部における速度、張力の偏差や変動を生じるため、ストリップの形状不良が懸念される。
【0008】
ルーパ装置内において、ストリップがデフレクタロールに巻き付きながら通過する際に、ストリップの曲げ伸ばしの塑性変形に伴い、残留応力が生じる。したがって、ストリップがルーパ装置を通過するには、残留応力を相殺するために、デフレクタロール入側(ストリップがデフレクタロールに進入する側)のストリップ張力に対して、出側のストリップ張力が大きくなる必要がある。したがって、ルーパ装置内におけるストリップ張力は、ストリップがデフレクタロールを通過する度に増加するため、図2に示す通り、ストリップの張力分布は、ストリップの進行方向に対して正の張力勾配(以下張力ビルドアップと称する)を有する。
【0009】
デフレクタロール前後のストランド張力差を補正しない制御系では、ルーパ装置内における張力制御の不安定化、応答の劣化、ひいてはプロセス部における張力偏差、変動を生じる。そのため、ルーパ装置の張力制御には、この張力差を補正する機能が求められる。
【0010】
ルーパ装置の張力制御に関して、特許文献1には、ルーパ入側および出側に設置した張力計の実績値の平均から算出した値をストリップ総張力として、キャリッジモータトルクを制御する装置が開示されている。
【0011】
特許文献2には、キャリッジが複数に分割された多連式ルーパが開示されている。近年、生産性向上のためのライン速度の増加により、ルーパ装置におけるストリップ貯蔵量が増加しており、多連式ルーパが多くの設備で採用されている。このような多連式ルーパにおいて、デフレクタロール前後のストランド張力差の補正不良は、分割された2つのキャリッジの位置偏差を発生させうる。特許文献2では、分割されたルーパ装置をマスタ・スレーブ制御とし、マスタ、スレーブ間の位置偏差に比例したトルク補正値をヘルパロールに与えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−31328号公報
【特許文献2】特開2008−284586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1で提案される総張力の算出方法は、ストリップが一方向に搬送される状況しか想定していない。入側逆寸、再溶接、およびストリップ再検査時など、ストリップが逆走してルーパ装置の入側および出側でストリップ進行方向が異なる際、ルーパ装置内の張力ビルドアップが図2のように一方向の勾配にならない。そのため、同制御方法によりデフレクタロール前後のストランド張力差を補正することは出来ない。このとき、プロセス部に設置した張力計により測定した実績値に基づいた、張力フィードバック制御が併用されるが、ルーパ装置出側の張力実績値が所望の値に到達するまでの過渡状態の時間が長く、このような過渡状態では、ルーパ装置内の張力が振動的となり、張力変動がプロセス部に伝播することで、張力指令値と実績値の間に誤差を生じるため、前述したような形状不良が発生する。
【0014】
特許文献2では、デフレクタロール前後のストランド張力差の補正不良により生じるキャリッジの位置偏差により、ヘルパロールモータ電流基準を調整することで、前記張力差を補正してキャリッジ位置偏差を零にする制御方法が提案されている。フィードバック制御により前記張力差を補正するため、前述の通り過渡状態における張力制御が困難となる。また、ヘルパロールで前記張力差を補正するため、ヘルパロールに対する負荷が増加する。ヘルパロールモータは一般的に小容量であるため、前記張力差の補正とストリップの加減速を同時に行うと、過負荷となる恐れがある。
【0015】
プロセス部における張力実績値が所望の値に収束するまでの時間は短い方が好ましい。また、ストリップ張力制御はキャリッジロールにて実施されるため、デフレクタロール前後のストランド張力差の補正も、キャリッジロールにて実施されることが好ましい。そのために、ルーパ装置内において、ルーパ入側および出側でストリップ進行方向が異なり、ルーパ装置内の一部のストリップが逆走する状態における、ルーパ装置内のストリップ張力分布の推定方法が求められる。このとき、ルーパ装置の入側および出側の速度により、所定のデフレクタロールが停止している場合と、回転している場合とが生じる。デフレクタロールが停止している場合、停止しているデフレクタロール前後の張力差は生じない。そのため、所定のデフレクタロールが停止している場合と、回転している場合で張力分布が図4および図6のように異なる。
【0016】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走する際のルーパ装置内の張力分布を推定することのできるルーパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ルーパ装置であって、
固定基部と、
前記固定基部に対向する可動基部であるキャリッジと、
前記固定基部に並列された複数の固定デフレクタロールと、前記キャリッジに並列された複数の移動デフレクタロールとからなるデフレクタロール群と、
前記デフレクタロール群の固定デフレクタロールと移動デフレクタロールとにストリップが交互に巻き掛けられて、前記固定基部と前記キャリッジとの間に複数のストランドが形成された状態で、前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更可能なキャリッジ制御部と、
前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更する場合に、前記デフレクタロール群のロール速度に基づいて、前記デフレクタロール群の中に回転が停止しているデフレクタロールが存在するか否かを判定する停止ロール判定部と、
前記停止しているデフレクタロールが存在する場合に、前記複数のストランドの各張力を推定する第1ストランド張力推定部と、を備え、
前記第1ストランド張力推定部は、
前記停止したデフレクタロールに巻き掛けられた両側のストランドをそれぞれルーパ入側からi−1番目とi番目のストランドとし、ルーパ出側の最終ストランドをN番目のストランドとし、N番目のストランドの張力をTとし、デフレクタロールを通過する前後のストランドの張力差をΔTと定める場合に、
N−1番目からi番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどN番目のストランドの張力Tから張力差ΔTを累積的に減算して各ストランドの張力を計算し、
i−1番目のストランドの張力計算について、i番目のストランドと同一張力とし、
i−2番目から1番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどi−1番目のストランドの張力に張力差ΔTを累積的に加算して各ストランドの張力を計算すること、を特徴とする。
【0018】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記キャリッジと前記固定基部との距離を変更する場合に、前記デフレクタロール群のロール速度に基づいて、前記複数のストランドのうち一端のストリップがルーパ入側方向に他端のストリップがルーパ出側方向に搬送されているストランドが存在するか否かを判定する搬送状態判定手段と、
前記ルーパ入側方向と出側方向の両方向にストリップが搬送されているストランドが存在する場合に、前記複数のストランドの各張力を推定する第2ストランド張力推定部と、をさらに備え、
前記第2ストランド張力推定部は、
前記両方向に搬送されているストランドをi番目のストランドとし、ルーパ出側の最終ストランドをN番目のストランドとし、N番目のストランドの張力をTとし、デフレクタロールを通過する前後のストランドの張力差をΔTと定める場合に、
N−1番目からi番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどN番目のストランドの張力Tから張力差ΔTを累積的に減算して各ストランドの張力を計算し、
i−1番目から1番目までの各ストランドの張力計算について、ルーパ入側のストランドほどi番目のストランドの張力に張力差ΔTを累積的に加算して各ストランドの張力を計算すること、を特徴とする。
【0019】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記キャリッジ制御部は、
前記キャリッジを制御するためのトルク指令値について、運転状態に応じた基準値を取得する手段と、
前記ルーパ入側方向と出側方向の両方向に搬送されているストランドが存在する場合に、該ストランド上の搬送速度が0である位置から該ストランドの一端までの距離を算出する手段と、
該ストランドの一端のデフレクタロールが停止したと仮定して前記第1ストランド張力推定部と同様の計算により算出される前記複数のストランドの総張力および前記第2ストランド張力推定部により算出される前記複数のストランドの総張力に前記算出された距離に応じた重み付けを設定して、該重み付けが設定された両総張力に基づく補正値を算出し、前記基準値と該補正値とに基づいて、補正後のトルク指令値を算出する手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、ルーパ装置において、一部のストリップが逆走する際において、ルーパ装置内の張力分布を推定することができる。第1の発明によれば、特に、ルーパ装置において、一部のストリップが逆走する状態であって、停止しているデフレクタロールが存在する場合において、ストリップの各ストランドの張力を推定することができる。
【0021】
第2の発明によれば、特に、ルーパ装置において、一部のストリップが逆走する状態であって、停止しているデフレクタロールが存在しない場合において、ルーパ入側方向と出側方向の両方向にストリップが搬送されているストランドが存在する場合において、ストリップの各ストランドの張力を推定することができる。
【0022】
第3の発明によれば、速度指令値に基づいて、推定されたルーパ装置内の張力分布を用いて、キャリッジを制御するためのトルク指令値を、実績値のフィードバックによらず、ルーパ装置内の張力分布の推定結果に基づいて補正することができる。これにより、ルーパ張力制御系を高応答化して、ルーパ装置内において、一部のストリップが逆走する状態であっても、ルーパ装置内における張力分布を速やかに好適な状態に収束することで、プロセス部における張力変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係るルーパ装置10を説明するための図である。
図2】ルーパ装置内のストリップ全体が出側方向に搬送されている場合における各ストランドの張力分布を示す図である。
図3】ルーパ装置の入出側のストリップ搬送方向が異なり、停止しているデフレクタロールが無い状態における各デフレクタロールとそのデフレクタロール速度との関係を示す図である。
図4】ルーパ装置の入出側のストリップ搬送方向が異なり、停止しているデフレクタロールが無い状態におけるストリップ20の各ストランドとそのストリップ張力との関係を示す図である。
図5】ルーパ装置の入出側のストリップ搬送方向が異なり、所定のデフレクタロールが停止している状態における各デフレクタロールとそのデフレクタロール速度との関係を示す図である。
図6】ルーパ装置の入出側のストリップ搬送方向が異なり、所定のデフレクタロールが停止している状態におけるストリップ20の各ストランドとそのストリップ張力との関係を示す図である。
図7】本発明の実施の形態1に係るコントローラ30が実行する各ストランドのストリップ張力推定ルーチンのフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係るコントローラ30が実行するトルク指令値TRQrefを算出する処理を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係るルーパ装置10を説明するための図である。図1に示すルーパ装置10は、プロセスラインの入側部とプロセス部の間や、プロセス部と出側部との間に設けられ、ストリップを一時的に貯蔵する。ストリップを一時的に貯蔵することで、プロセス部におけるストリップの定速、定張力搬送が可能となる。
【0026】
図1に示すルーパ装置10は、固定基部12を備える。固定基部12には、ルーパ装置10の入側から出側まで複数の固定デフレクタロール14が並列に配置されている。図1に示す例では、ルーパ装置10の入側から順に、固定デフレクタロール14a、14b、14c、・・・、14gが配置されている。なお、固定デフレクタロールの数はこれに限定されるものではない。以下の説明において、固定デフレクタロール14a、14b、14c、・・・、14gを区別しない場合には、単に固定デフレクタロール14と記す。
【0027】
ルーパ装置10は、固定基部12に対向する可動基部であるキャリッジ16を備える。キャリッジ16には、ルーパ装置10の入側から出側まで複数の移動デフレクタロール18が並列に配置されている。図1に示す例では、ルーパ装置10の入側から順に、移動デフレクタロール18a、18b、18c、・・・、18fが示されている。なお、移動デフレクタロールの数はこれに限定されるものではない。以下の説明において、移動デフレクタロール18a、18b、18c、・・・、18fを区別しない場合には、単に移動デフレクタロール18と記す。
【0028】
以下の説明において、固定デフレクタロール14a、14b、14c、・・・、14gと、移動デフレクタロール18a、18b、18c、・・・、18fとの集合をデフレクタロール群と記す。また、固定デフレクタロール14と移動デフレクタロール18を区別しない場合には、単にデフレクタロールと記す。
【0029】
デフレクタロール群の固定デフレクタロール14と移動デフレクタロール18とには、板材であるストリップ20が交互に巻き掛けられている。具体的には、ストリップ20は、ルーパ装置10の入側から、固定デフレクタロール14a、移動デフレクタロール18a、固定デフレクタロール14b、移動デフレクタロール18b、固定デフレクタロール14c、移動デフレクタロール18c、・・・、移動デフレクタロール18f、固定デフレクタロール14gの順に巻き掛けられている。
【0030】
ストリップ20を通板させた固定デフレクタロール14、移動デフレクタロール18間で区画される各帯部分をストランドと称する。ストリップ20は通常、図1の矢印Aで示す出側方向に搬送される。
【0031】
キャリッジ16は、チェーンあるいはワイヤロープ21により、ドラム22に吊り下げられる。ドラム22はキャリッジモータ24により駆動される。ドラム22が駆動されると、キャリッジ16に固定された移動デフレクタロール18は、キャリッジ16と共に図1の上下方向に移動する。一方、固定基部12に固定された固定デフレクタロール14は、上下方向に移動しない。
【0032】
また、固定デフレクタロール14は、数本に1本が駆動ロール(ヘルパロール)である。具体的には、固定デフレクタロール14aはヘルパロールモータ26aにより駆動される。固定デフレクタロール14dはヘルパロールモータ26dにより駆動される。固定デフレクタロール14gはヘルパロールモータ26gにより駆動される。また、ヘルパロールモータ26a、26d、26gを有しない固定デフレクタロール14を非駆動ロールと称する。以下の説明において、ヘルパロールモータ26a、26d、26gを区別しない場合には、単にヘルパロールモータ26と記す。
【0033】
図1に示す例では、ルーパ装置10は、N本のストランドを貯蔵し、固定デフレクタロール14の3本に1本が、ヘルパロールモータ26により駆動される。
【0034】
駆動ロールであるヘルパロールモータ26a、26d、26gまたは固定デフレクタロール14a、14d、14gの近傍には、各ロールの回転速度に応じた信号を出力する角速度センサ27a、27d、27gがそれぞれ設けられている。以下の説明において、角速度センサ27a、27d、27gを区別しない場合には、単に角速度センサ27と記す。
【0035】
ルーパ入側の固定デフレクタロール14a上流には、固定デフレクタロール14a上流におけるストリップ20の張力に応じた信号を出力する張力計28aが配置されている。ルーパ出側の固定デフレクタロール14g下流には、固定デフレクタロール14g下流におけるストリップ20の張力に応じた信号を出力する張力計28gが配置されている。以下の説明において、張力計28a、28gを区別しない場合には、単に張力計28と記す。
【0036】
ルーパ装置10は、ルーパ装置10の各種アクチュエータを制御するコントローラ30を備えている。コントローラ30は、処理部、記憶部、入出力インタフェースを備えている。処理部、記憶部、入出力インタフェースは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。
【0037】
コントローラ30の入出力インタフェースには、角速度センサ27a、27d、27g、張力計28a、28g等の各種センサが接続されている。また、コントローラ30の入出力インタフェースには、キャリッジモータ24、ヘルパロールモータ26a、26d、26g等の各種アクチュエータが接続されている。さらに、コントローラ30は、入出力インタフェースを介して上位の制御装置に接続されている。
【0038】
コントローラ30の記憶部は、ハードディスク装置や、フラッシュメモリのような不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されている。記憶部には、ルーパ装置10を制御するコンピュータプログラムが格納されている。
【0039】
コントローラ30の処理部は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部は、記憶部からコンピュータプログラムを読み出し、キャリッジ制御部32、搬送状態判定部34、停止ロール判定部36、第1ストランド張力推定部38、第2ストランド張力推定部40として機能する。
【0040】
コントローラ30の入出力インタフェースは、上位の制御装置から送信される制御情報(例えば、材料情報、圧延スケジュール情報、製品情報等)を入力する。また、各種センサから出力された信号を入力する。コントローラ30の処理部は、入力された制御情報や信号に基づいてコンピュータプログラムを実行し、各種アクチュエータの指令値を算出する。入出力インタフェースは、指令値に応じた駆動信号を各種アクチュエータに出力する。
【0041】
コントローラ30は、プロセス部におけるストリップの定速・定張力搬送のために、キャリッジ16の定置制御とストリップ20の張力制御を行う。また、ストリップ20の揃速性を保つように駆動ロールの速度制御を行う。
【0042】
例えば、キャリッジ制御部32は、制御情報や信号に基づいて現在の運転状態に応じたキャリッジモータ24のトルク指令値を算出し、トルク指令値に応じた信号をキャリッジモータ24に出力する。駆動信号に応じてキャリッジモータ24が回転し、ドラム22が駆動され、キャリッジ16が上下移動する。キャリッジ16が上下移動することで、キャリッジ16と固定基部12との距離が変更される。キャリッジ16が固定基部12から遠ざかることでストリップ20がルーパ装置10内に貯蔵される。キャリッジ16が固定基部12に近づくことで貯蔵されたストリップ20がルーパ出側方向に搬送される。
【0043】
[実施の形態1における張力分布の推定]
キャリッジ16が固定基部12に近づく場合、ストリップ20の一端がルーパ出側方向に搬送されると共に、他端がルーパ入側方向に逆走する場合がある。このとき、ルーパ装置内の張力分布は、張力ビルドアップが一方向でなく、停止しているデフレクタロールの前後のストランド、または両端のデフレクタロールの回転方向が異なるストランドにおいて極小値を取るV字またはU字形状となる。このように、デフレクタロールの動作状態によって、ルーパ装置10内の張力分布が変動する。
【0044】
実施の形態1では、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走している状態におけるストリップの張力分布の推定方法について説明する。
【0045】
図3図5は、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走している状態における、各デフレクタロールとそのデフレクタロール速度との関係を示す図である。ルーパ装置10の入側から順に、1番目のデフレクタロールを固定デフレクタロール14a、2番目のデフレクタロールを移動デフレクタロール18a、3番目のデフレクタロールを固定デフレクタロール14b、・・・とする。デフレクタロール速度は、ストリップ20をルーパ出側に搬送する向きを正、ルーパ入側に逆走させる向きを負とする。
【0046】
図4図6は、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走している状態における、ストリップ20の各ストランドとそのストリップ張力との関係を示す図である。ルーパ入側からi番目のストランドとは、ルーパ入側からi番目のデフレクタロールとi+1番目のデフレクタロールとの間のストランドである。一例として、3番目のストランドとは、3番目のデフレクタロール(固定デフレクタロール14b)と4番目のデフレクタロール(移動デフレクタロール18b)との間のストランドである。
【0047】
図3および図4とは対応しており、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走しており、なおかつ、すべてのデフレクタロールが回転している動作状態における、ストリップ20の各ストランドの速度および張力について説明するための図である。
【0048】
図5および図6とは対応しており、ルーパ装置内において、一部ストリップが逆走しており、なおかつ、あるデフレクタロール(図5、6中ではi+2番目のデフレクタロール)が停止している動作状態における、ストリップ20の各ストランドの速度および張力について説明するための図である。
【0049】
n番目のストランドの速度をv、n番目のデフレクタロールの速度をωとする。ヘルパロールモータ26の回転軸に接続する角速度センサ27の出力信号もしくはヘルパロールモータの駆動装置に内蔵された、センサレス速度推定機能により、ヘルパロールのうち回転方向が逆向きの区間を検出する。i番目とi+M番目のヘルパロールで回転方向が逆転していることが検出されるとき、デフレクタロールの速度は図3のようになる。ω、ωi+Mから算出した変数αに式(1A)、式(2)、式(3)の関係が成立する場合、i+j番目のデフレクタロールとi+j+1番目のデフレクタロールとの間で、ストリップ20の搬送方向が逆転する。すわなち、i+j番目のストランドの一端はルーパ入側方向へ、他端はルーパ出側方向に搬送されている。一方で、式(1B)、式(2)、式(3)の関係が成立する場合、i+j番目のデフレクタロールが停止状態となる。
【0050】
【0051】
デフレクタロールを1本通過する際のストランド張力差ΔTは、ストリップ20の幅w、厚みt、デフレクタロール径d、ストリップの巻付角θ、ストリップ20のヤング率Eおよび降伏応力σの関数となる。式(4)の通り、張力差ΔTは、ストリップ20の材料の種類により一義的に決まる関数となり、搬送されるストリップ20の情報を予め入力しておくことで、算出することが可能である。
【0052】
【0053】
したがって、k番目のストランドから、k+1番目のデフレクタロールを通過して、k+1番目のストランドにストリップ20が移動する際、k+1番目のストランドにおけるストリップ張力は式(5)となる。
【0054】
【0055】
一方で、k+1番目のデフレクタロールが停止状態である場合、k番目のストランドとk+1番目のストランドのストリップ張力は式(6)の通り、等しくなる。
【0056】
【0057】
したがって、ルーパ装置10内における張力分布は、図4または図6に示す通りとなる。ただし、図4はi+1番目とi+2番目のデフレクタロールで回転方向が逆転した状態を示し、図6は、i+2番目のデフレクタロールの速度が0となった状態を示す。
【0058】
N番目のストランドにおける張力指令値をTNrefとして、式(4)、式(5)、式(6)より、m番目のストランドにおけるストリップ張力推定値TEST(m)は、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)で表すことができる。
【0059】
【0060】
図7は、上述の動作を実現するために、コントローラ30が実行する各ストランドのストリップ張力推定ルーチンのフローチャートである。本ルーチンはキャリッジ制御中に、所定のサンプリング間隔で繰り返し実行される。
【0061】
図7に示すルーチンでは、まず、ステップS100において、上述したキャリッジ制御部32は、制御情報等に基づいてトルク指令値を算出し、トルク指令値に応じた駆動信号をキャリッジモータ24に出力する。駆動信号に応じてキャリッジモータ24が回転し、ドラム22が駆動され、キャリッジ16が上下移動する。キャリッジ16が上下移動することで、キャリッジ16と固定基部12との距離が変更される。
【0062】
ステップS110において、停止ロール判定部36は、停止しているデフレクタロールが存在するか否かを判定する。具体的には、上述した式(1)、式(2)、式(3)においてαが自然数(α=j)であれば、停止しているデフレクタロールが存在すると判定できる。
【0063】
ステップS110において停止しているデフレクタロールが存在すると判定された場合、ステップS120において、第1ストランド張力推定部38は、ストリップ20の各ストランドの張力を推定する。具体的には、上述した式(4)、式(7)、式(9)、式(10)に基づいて、各ストランドの張力を算出する。その後、本ルーチンの処理は終了される。
【0064】
ステップS110において、停止しているデフレクタロールが存在すると判定されなかった場合、ステップS130において、搬送状態判定部34は、ルーパ入側方向と出側方向の両方向に搬送されているストランドが存在するか否かを判定する。具体的には、上述した式(1)、式(2)、式(3)においてαが小数(j<α<j+1)であれば、ルーパ入側方向と出側方向の両方向に搬送されているストランドが存在すると判定できる。
【0065】
ステップS130において、ルーパ入側方向と出側方向の両方向に搬送されているストランドが存在すると判定された場合、ステップS140において、第2ストランド張力推定部40は、ストリップ20の各ストランドの張力を推定する。具体的には、上述した式(4)、式(7)、式(8)、式(10)に基づいて、各ストランドの張力を算出する。その後、本ルーチンの処理は終了される。
【0066】
以上説明したように、図7に示すルーチンによれば、ストリップ逆走状態において、ヘルパロールの速度、ストリップの材料物性値、N番目のストランドの張力値に基づいて、ルーパ装置内の張力分布を推定することができる。
【0067】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成]
次に、図8を参照して本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1において推定されたルーパ装置10内の張力分布を用いて、キャリッジ16を制御するためのトルク指令値を補正する。これにより、ルーパ装置内の一部のストリップが逆走する状態においても、ルーパ装置内の張力分布を速やかに好適な値に収束し、プロセス部における張力変動を抑制する。
【0068】
[実施の形態2におけるキャリッジモータ制御]
図8は、コントローラ30が実行するトルク指令値TRQrefを算出する処理を説明するためのブロック図である。トルク指令値TRQrefは、キャリッジモータ24に出力する駆動信号に相当する値である。図8に示すようにトルク指令値TRQrefは、第1制御部80と、第1総張力演算部81および第2総張力演算部82と、第2制御部83とを用いて計算される。
【0069】
図8の第1制御部80および第2制御部83は、図1のキャリッジ制御部32により実現される。図8の第1総張力演算部81は、図1のキャリッジ制御部32、搬送状態判定部34、停止ロール判定部36、第1ストランド張力推定部38により実現される。図8の第2総張力演算部82は、図1のキャリッジ制御部32、搬送状態判定部34、停止ロール判定部36、第2ストランド張力推定部40により実現される。
【0070】
第1制御部80は、次回の出側ストリップ張力指令値TNrefを入力する。この出側ストリップ張力指令値TNrefは、図1のキャリッジ制御部32が、現在の制御情報等に応じて算出するキャリッジモータ24のトルク指令値の基準値に相当する。基準値は、マップや計算式で予め定められている。第1制御部80は、ルーパ装置10の出側ストリップ張力の実績値を指令値に一致させるように、現在の出側ストリップ張力指令値TNrefと、張力計28gで測定した出側ストリップ張力実績値Tの偏差から張力指令値TNref’を算出する。
【0071】
第1総張力演算部81および第2総張力演算部82は、張力指令値TNref’、ストランド張力差ΔT等を入力してルーパ装置10内のストリップ総張力を算出する。
【0072】
具体的には、第1総張力演算部81および第2総張力演算部82は、出側ストリップ張力指令値TNrefと出側ストリップ張力実績値Tと第1制御部80より導出した張力指令値TNref’を式(7)、式(8)、式(9)、式(10)のTNrefに代入することで、ルーパ装置10内のストリップ張力分布を算出する。
【0073】
さらに、第1総張力演算部81は、ωi+j≠0の場合に、式(7)、式(9)、式(10)を用いて各ストランドの張力を算出し、式(11)により、ストリップ総張力Tsum(i,j)を演算する。一方で、第2総張力演算部82はωi+j=0の場合に、式(7)、式(8)、式(10)を用いて各ストランドの張力を算出し、式(12)によりストリップ総張力Tsum_s(i,j)を算出する。
【0074】
【0075】
トルク指令値として、式(11)、または式(12)により算出する、ストリップ張力の総和を用いると、停止しているデフレクタロールが無い状態は式(11)、停止しているデフレクタロールがある状態は式(12)を用いるため、デフレクタロールが停止、回転する際に、トルク指令値が不連続に変化する。
【0076】
したがって、トルク指令値を滑らかに変化させるために、任意の係数βを用いて、式(13)、式(14)、式(15)を用いてトルク指令値を算出する。
【0077】
【0078】
:キャリッジモータトルク/ストリップ総張力変換ゲイン
Tsum(i,j):i+j番目のストリップを境にしてデフレクタロール速度が逆転する際のストリップ総張力
Tsum_s(i,j):i+j番目のデフレクタロール速度が零となる際のストリップ総張力
【0079】
式(13)、式(14)、式(15)では、α−jの値に応じてTsum(i,j)およびTsum_s(i,j)に重み付けが設定される。重み付けが設定されたTsum(i,j)およびTsum_s(i,j)に基づく補正値をキャリッジモータトルクKに乗じて補正後のトルク指令値TRQrefを算出する。
【0080】
トルク指令値TRQrefを算出する一例を示す。ここで、第j番目のデフレクタロールはストリップ20をルーパ入側に、第j+1番目のデフレクタロールはストリップ20をルーパ出側に搬送させる方向に回転している。αは、第j番目のストランド上の停止位置(ルーパ入側および出側への搬送速度が0である位置)を示す変数である。βは、張力変動抑制のための変数であり予め設定されている。一例として、j=2、α=2.01、β=0.1とする場合、j番目のデフレクタロールから停止位置までの距離α−jは、0.01であり、j番目のデフレクタロール近傍に停止位置が存在しており、張力変動しやすい状態にある。この例では、0≦α−j≦βが成立するため、式(13)を用いてTRQrefが算出される。
【0081】
以上説明したように、実施の形態2のシステムによれば、ルーパ装置内において、一部のストリップが逆走する状態であっても、ルーパ装置10内の張力分布の推定値により、キャリッジモータ24のトルク指令値を調整することができる。これにより、ルーパ張力制御系を高応答化して、ルーパ装置内の張力分布を速やかに好適状態に収束して、プロセス部における張力変動を抑制することができる。したがって、張力変動がプロセス部に伝播することによる、ストリップの蛇行、弛み、振動を入側、出側部におけるストリップ速度に関わらず、速やかに抑制でき、製品品質の更なる向上が可能となる。
【符号の説明】
【0082】
10 ルーパ装置
12 固定基部
14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g 固定デフレクタロール
16 キャリッジ
18a、18b、18c、18d、18e、18f 移動デフレクタロール
20 ストリップ
21 ワイヤロープ
22 ドラム
24 キャリッジモータ
26a、26d、26g ヘルパロールモータ
27a、27d、27g 角速度センサ
28a、28g 張力計
30 コントローラ
32 キャリッジ制御部
34 搬送状態判定部
36 停止ロール判定部
38 第1ストランド張力推定部
40 第2ストランド張力推定部
80 第1制御部
81 第1総張力演算部
82 第2総張力演算部
83 第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8