特許第6221985号(P6221985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6221985
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】輻射ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B60H1/22 611B
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-154054(P2014-154054)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30534(P2016-30534A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】竹田 弘
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−246091(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289045(US,A1)
【文献】 特開2012−192829(JP,A)
【文献】 特開2010−064681(JP,A)
【文献】 特開2012−157651(JP,A)
【文献】 特開2012−056531(JP,A)
【文献】 特開2010−023533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する第1発熱部(11A)を有し、前記第1発熱部から供給される熱によって輻射熱を放射する第1輻射ヒータ部(10A)と、
通電により発熱する第2発熱部(11B)を有し、前記第2発熱部から供給される熱によって輻射熱を放射する第2輻射ヒータ部(10B)と、を備え、
前記第1輻射ヒータ部および前記第2輻射ヒータ部が、車室内の座席(20)に着座した乗員(21)の足部(211)から膝部(213)までの少なくとも一部の部位に対応して配設された輻射ヒータ装置であって、
前記第1輻射ヒータ部は、前記第2輻射ヒータ部よりも前記乗員の足部側の部位に対応して配設され、前記第2輻射ヒータ部は、前記第1輻射ヒータ部よりも前記乗員の膝部側の部位に対応して配設されており、
前記第1発熱部への通電と前記第2発熱部への通電とを個別に調節する個別調節手段(3)と、
前記乗員の足部から膝部までの少なくとも一部の部位に向かって温風を吹き出すためのフット吹出口(90)と、
前記フット吹出口から吹き出す風量を調節する風量調節手段(50)と、
前記第1発熱部への通電と前記第2発熱部への通電とを個別に制御可能に設けられて、前記個別調節手段を含む制御手段(3)と、を備え、
前記制御手段は、前記風量調節手段が調節する前記風量に応じて、前記第1輻射ヒータ部の輻射熱量である第1輻射熱量に対する前記第2輻射ヒータ部の輻射熱量である第2輻射熱量の比を変更するように、前記第1発熱部および前記第2発熱部への通電を制御することを特徴とする輻射ヒータ装置。
【請求項2】
前記フット吹出口は、吹き出された前記温風が前記乗員の足部から膝部に向かって流れるように設けられており、
前記制御手段は、前記風量調節手段が調節する前記風量が増大するにしたがって、前記第1輻射熱量に対する前記第2輻射熱量の比を減少させるように、前記第1発熱部および前記第2発熱部への通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の輻射ヒータ装置。
【請求項3】
前記車室内における前記乗員の着座位置を検出する着座位置検出手段(204)を備え、
前記制御手段は、前記着座位置検出手段が検出した前記着座位置に応じて、前記第1輻射熱量に対する前記第2輻射熱量の比を変更するように、前記第1発熱部および前記第2発熱部への通電を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の輻射ヒータ装置。
【請求項4】
前記着座位置検出手段は、前記車室内における前記座席の位置を検出する座席位置検出手段(204)であることを特徴とする請求項3に記載の輻射ヒータ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記着座位置検出手段が検出した前記着座位置が所定位置よりも前記第1輻射ヒータ部および前記第2輻射ヒータ部に近い側にある場合には、前記着座位置が前記第1輻射ヒータ部および前記第2輻射ヒータ部に近づくにしたがって、前記第1輻射熱量および前記第2輻射熱量をいずれも低減させるように、前記第1発熱部および前記第2発熱部への通電を制御することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の輻射ヒータ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記着座位置検出手段が検出した前記着座位置が所定位置よりも前記第1輻射ヒータ部および前記第2輻射ヒータ部から遠い側にある場合には、前記着座位置が前記第1輻射ヒータ部および前記第2輻射ヒータ部から遠ざかるにしたがって、前記第1輻射熱量を低減させるとともに、前記第2輻射熱量を増大させるように、前記第1発熱部および前記第2発熱部への通電を制御することを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つに記載の輻射ヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射熱によって乗員を暖める輻射ヒータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば下記特許文献1に開示された装置がある。この装置は、車室内の座席に着座した乗員の膝部から足部の少なくとも一部に対応した場所に配設された面状発熱体を備えている。そして、面状発熱体は、乗員の膝部側に対応した場所よりも足部側に対応した場所のヒータ線の配線密度を稠密にして発熱密度を高くして、乗員の膝部側よりも足部側により大きな輻射熱を印加するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の装置では、乗員が良好な暖房感を得難い場合があるという問題がある。上記従来技術の面状発熱体は、1本の電気ヒータ線を蛇行配線して配線密度の粗密を形成しているため、足部側に対応した場所の輻射熱量に対する乗員の膝部側に対応した場所の輻射熱量の比が固定される。そのため、面状発熱体と乗員との位置関係が大きく変化したり、空調暖房を併用したりする場合等には、足部側の温熱感と膝部側の温熱感とのバランスが崩れ、乗員が良好な暖房感を得難い場合がある。
【0005】
例えば、乗員の着座姿勢が変化して、面状発熱体と乗員の膝部との距離が更に短くなった場合には、足部側の温熱感が適正であっても、膝部側の温熱感が高くなり過ぎ、良好な暖房感を得難い。また、例えば、空調暖房が併用されて、温風が乗員の足部には到達するものの膝部には到達しない場合には、膝部側の温熱感が適正であっても、足部側の温熱感が高くなり過ぎて、良好な暖房感を得難い。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、乗員が良好な暖房感を得ることが可能な輻射ヒータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、
通電により発熱する第1発熱部(11A)を有し、第1発熱部から供給される熱によって輻射熱を放射する第1輻射ヒータ部(10A)と、
通電により発熱する第2発熱部(11B)を有し、第2発熱部から供給される熱によって輻射熱を放射する第2輻射ヒータ部(10B)と、を備え、
第1輻射ヒータ部および第2輻射ヒータ部が、車室内の座席(20)に着座した乗員(21)の足部(211)から膝部(213)までの少なくとも一部の部位に対応して配設された輻射ヒータ装置であって、
第1輻射ヒータ部は、第2輻射ヒータ部よりも乗員の足部側の部位に対応して配設され、第2輻射ヒータ部は、第1輻射ヒータ部よりも乗員の膝部側の部位に対応して配設されており、
第1発熱部への通電と第2発熱部への通電とを個別に調節する個別調節手段(3)と、
乗員の足部から膝部までの少なくとも一部の部位に向かって温風を吹き出すためのフット吹出口(90)と、
フット吹出口から吹き出す風量を調節する風量調節手段(50)と、
第1発熱部への通電と第2発熱部への通電とを個別に制御可能に設けられて、個別調節手段を含む制御手段(3)と、を備え、
制御手段は、風量調節手段が調節する風量に応じて、第1輻射ヒータ部の輻射熱量である第1輻射熱量に対する第2輻射ヒータ部の輻射熱量である第2輻射熱量の比を変更するように、第1発熱部および第2発熱部への通電を制御することを特徴としている。
【0008】
これによると、個別調節手段で、第1発熱部への通電と第2発熱部への通電とを個別に調節して、第1輻射ヒータ部の表面から放射される輻射熱量に対する第2輻射ヒータ部の表面から放射される輻射熱量の比を変更することができる。したがって、乗員の足部側に対応した第1輻射ヒータ部の輻射熱量に対する乗員の膝部側に対応した第2輻射ヒータ部の輻射熱量の比を、乗員の足部側の温熱感と膝部側の温熱感とに応じて変更することが可能である。このようにして、乗員が良好な暖房感を得ることができる。
【0009】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を適用した第1の実施形態における輻射ヒータ装置と乗員との位置関係を表す図である。
図2】第1の実施形態の輻射ヒータ装置の平面図である。
図3】第1の実施形態の輻射ヒータ装置の断面図である。
図4】第1の実施形態の輻射ヒータ装置を含む暖房装置の制御に関するブロック図である。
図5】第1の実施形態のヒータ制御装置の概略制御動作を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態の輻射ヒータ装置制御における仮の目標ヒータ出力の一例を示すグラフである。
図7】第1の実施形態の輻射ヒータ装置制御におけるフット吹出風量に応じた補正係数の一例を示すグラフである。
図8】第1の実施形態の輻射ヒータ装置制御におけるシート位置に応じた補正係数の一例を示すグラフである。
図9】他の実施形態の輻射ヒータ装置の平面図である。
図10】他の実施形態の輻射ヒータ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について、図1図8を参照して説明する。
【0013】
本発明を適用した輻射ヒータ装置1は、道路走行車両、船舶、航空機等の移動体の室内等に設置される。図1に示すように、第1の実施形態に係る輻射ヒータ装置1は、車室内のための暖房装置2の一部を構成している。輻射ヒータ装置1は、移動体に搭載された電池、発電機などの電源から給電されて発熱する電気的なヒータである。輻射ヒータ装置1は、薄い板状に形成されている。輻射ヒータ装置1は、電力が供給されると発熱する。輻射ヒータ装置1は、その表面と垂直な方向に位置付けられた対象物を暖めるために、主としてその表面と垂直な方向へ向けて輻射熱R1、R2を放射する。
【0014】
車室内には、乗員21が着座するための座席20が設置されている。輻射ヒータ装置1は、乗員21の足元に輻射熱R1、R2を放射するように室内に設置されている。輻射ヒータ装置1は、室内の壁面に設置される。室内の壁面は、例えば、インストルメントパネル、ドアトリム、天井等の内装部である。輻射ヒータ装置1は、想定される通常の姿勢の乗員21に対向するように設置される。
【0015】
例えば、道路走行車両は、ステアリングホイールであるハンドル23を支持するためのステアリングコラム22を有している。輻射ヒータ装置1は、ステアリングコラム22の下面に、乗員21に対向するように設置することができる。輻射ヒータ装置1は、座席20に着座した乗員21の足部211から膝部213までの部位に対応して配設されている。輻射ヒータ装置1は、乗員21の足部211、脛部212、および、膝部213に対応して配設されている。
【0016】
図2および図3に示すように、輻射ヒータ装置1は、ほぼ四角形の薄い板状に形成されている。輻射ヒータ装置1は、ヒータ本体を構成する基板部10と、複数の発熱部11と、導電部である複数の端子12とを有する。輻射ヒータ装置1は、主として表面と垂直な方向に向けて輻射熱R1、R2を放射する面状ヒータとも呼ぶことができる。
【0017】
基板部10は、優れた電気絶縁性を提供し、かつ高温に耐える樹脂材料によって作られている。基板部10は、多層基板である。基板部10は、表面層101と、裏面層102と、中間層103とを有する。表面層101は、輻射熱R1、R2の放射方向に面している。換言すると、表面層101は、輻射ヒータ装置1の設置状態において、加熱対象物である乗員21の足部211、脛部212、および、膝部213に対向して配置される面である。
【0018】
裏面層102は、輻射ヒータ装置1の背面をなす。中間層103は、発熱部11と端子12とを支持する。基板部10は、それぞれ線状である複数の発熱部11を支持するための部材である。表面層101、裏面層102、中間層103は、発熱部11、端子12よりも熱伝導率が低い素材からなる絶縁部である。例えば、表面層101、裏面層102、中間層103は、ポリイミド樹脂によって作られている。
【0019】
複数の発熱部11のそれぞれは、通電によって発熱する材料によって作られている。発熱部11は、金属材料によって作ることができる。例えば、発熱部11は、銅、銀、錫、ステンレス、ニッケル、ニクロム等から構成することができる。複数の発熱部11は、それぞれ、基板部10の面に対して平行な線状または板状を呈し、基板部10の表面に対して分散して配置されている。
【0020】
本実施形態のヒータ本体を構成する基板部10は、第1輻射ヒータ部をなす第1ヒータ10Aと、第2輻射ヒータ部をなす第2ヒータ10Bとを有している。第1ヒータ10Aは、基板部10のうち、図2の中央部に示す二点鎖線よりも図示下方の領域からなる。第2ヒータ10Bは、基板部10のうち、図2の中央部に示す二点鎖線よりも図示上方の領域からなる。第1ヒータ10Aと第2ヒータ10Bとは、互いに隣り合うように配置されて、一体的に設けられている。
【0021】
図1にも示すように、第1ヒータ10Aは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち、足部211側に配設される。第2ヒータ10Bは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち、膝部213側に配設される。第1ヒータ10Aは、乗員21の足部211から脛部212までの部位に対応して配設される。第2ヒータ10Bは、乗員21の脛部212から膝部213までの部位に対応して配設される。第1ヒータ10Aは、第2ヒータ10Bよりも乗員21の足部211側の部位に対応して配設される。第2ヒータ10Bは、第1ヒータ10Aよりも膝部213側の部位に対応して配設される。
【0022】
第1ヒータ10Aには、第1発熱部である複数の発熱部11Aが設けられている。第2ヒータ10Bには、第2発熱部である複数の発熱部11Bが設けられている。発熱部11A、発熱部11Bは、いずれも発熱部11からなる。
【0023】
各発熱部11Aは、所定の間隔を設けて配置される一対の端子12に接続されている。発熱部11Aは、一対の端子12の間で間隔を設けて配置されている。複数の発熱部11Aは、一対の端子12間を橋渡しするように一対の端子12に対して並列に接続され、第1ヒータ10Aの延在方向におけるほぼ全域にわたって設けられている。
【0024】
また、各発熱部11Bは、所定の間隔を設けて配置される一対の端子12に接続されている。発熱部11Bは、一対の端子12の間で間隔を設けて配置されている。複数の発熱部11Bは、一対の端子12間を橋渡しするように一対の端子12に対して並列に接続され、第2ヒータ10Bの延在方向におけるほぼ全域にわたって設けられている。
【0025】
複数の発熱部11は、中間層103とともに、表面層101と裏面層102の間に挟まれるように設けられている。複数の発熱部11は、基板部10によって外部から保護されている。各発熱部11は、少なくとも表面層101に熱的に接続され、通電によって発熱する部材である。これにより、発熱部11が発生した熱は、表面層101に伝達される。ひとつの発熱部11が発生した熱は、基板部10などの部材を経由して、表面層101から外部に輻射熱として放射され、対向する乗員21に対して提供される。
【0026】
発熱部11は、所定の発熱量を得るために、所定の長さをもつように設定されている。したがって、各発熱部11は、所定の抵抗値を有するように設定されている。また、各発熱部11は、横方向の熱抵抗が所定値となるように寸法、形状が設定されている。これにより、複数の発熱部11は、所定の電圧が印加されることにより所定の発熱量を発生する。複数の発熱部11は、所定の発熱量を発生して、所定温度に上昇する。所定温度に上昇した複数の発熱部11は、表面層101を所定放射温度に加熱する。そして、輻射ヒータ装置1は、乗員21、すなわち人に対して暖かさを感じさせる輻射熱を放射することができる。
【0027】
複数の発熱部11Aは、所定の電圧が印加されることにより所定の発熱量を発生する。複数の発熱部11Aは、所定の発熱量を発生して、所定温度に上昇する。所定温度に上昇した複数の発熱部11Aは、第1ヒータ10Aの表面層101を所定放射温度に加熱する。そして、第1ヒータ10Aは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち足部211側の部位に向けて、輻射熱R1を放射することができる。
【0028】
一方、複数の発熱部11Bは、所定の電圧が印加されることにより所定の発熱量を発生する。複数の発熱部11Bは、所定の発熱量を発生して、所定温度に上昇する。所定温度に上昇した複数の発熱部11Bは、第2ヒータ10Bの表面層101を所定放射温度に加熱する。そして、第2ヒータ10Bは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち膝部213側の部位に向けて、輻射熱R2を放射することができる。
【0029】
以下に、図4を参照して、輻射ヒータ装置1を含む暖房空調システムの制御に関する構成を説明する。発熱部11の出力、温度、発熱量は、ヒータ制御装置であるヒータECU3により制御される。ヒータECU3は、輻射ヒータ装置1の作動を制御する制御装置である。
【0030】
ヒータECU3は、第1ヒータ10Aの発熱部11Aに印加する電圧値、電流値を制御することにより、発熱部11Aの出力、温度、発熱量等を制御できる。したがって、ヒータECU3は、第1ヒータ10Aから乗員21に対して与える輻射熱R1の熱量を可変する。また、ヒータECU3は、第2ヒータ10Bの発熱部11Bに印加する電圧値、電流値を制御することにより、発熱部11Bの出力、温度、発熱量等を制御できる。したがって、ヒータECU3は、第2ヒータ10Bから乗員21に対して与える輻射熱R2の熱量を可変する。
【0031】
ヒータECU3は、第1ヒータ10Aの発熱部11Aへの通電状態と第2ヒータ10Bの発熱部11Bへの通電状態とを個別に調節することができる。ヒータECU3は、発熱部11Aへの通電と発熱部11Bへの通電とを個別に調節する個別調節手段に相当する。これにより、ヒータECU3は、第1ヒータ10Aの表面から放射される輻射熱R1の熱量と、第2ヒータ10Bの表面から放射される輻射熱R2の熱量とを、個別に調節することができる。すなわち、ヒータECU3は、第1ヒータ10Aの表面から放射される輻射熱R1の熱量に対する第2ヒータ10Bの表面から放射される輻射熱R2の熱量の比を変更することができる。
【0032】
第1ヒータ10Aの表面から放射される輻射熱R1の熱量は、第1輻射熱量に相当する。また、第2ヒータ10Bの表面から放射される輻射熱R2の熱量は、第2輻射熱量に相当する。したがって、ヒータECU3は、第1輻射熱量に対する第2輻射熱量の比を変更可能な輻射熱量比変更手段である。また、ヒータECU3は、第1ヒータ10Aの発熱部11Aへの通電と第2ヒータ10Bの発熱部11Bへの通電とを個別に制御可能な制御手段に相当する。ヒータECU3は、個別調節手段を含む制御手段に相当する。
【0033】
図2に示した例では、第1ヒータ10Aと第2ヒータ10Bとのサイズを同一としているので、輻射熱R1熱量に対する輻射熱R2熱量の比が、第1輻射熱密度である輻射熱R1の密度に対する第2輻射熱密度である輻射熱R2の密度の比と同一である。ヒータECU3は、第1輻射熱密度に対する第2輻射熱密度の比を変更可能な輻射熱密度比変更手段でもある。ここで、輻射熱の密度とは、各輻射ヒータ部から放射される単位表面積当たりの輻射熱量である。
【0034】
ヒータECU3により輻射ヒータ装置1への通電が開始されると、輻射ヒータ装置1の第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの表面温度は、制御する所定放射温度まで急速に上昇する。このため、冬期などにおいても、乗員21に迅速に暖かさを与えることができる。
【0035】
また、輻射ヒータ装置1の表面層101に物体が接触した場合、発熱部11から表面層101に伝達している熱は、接触している物体に急速に伝達される。この結果、表面層101の接触している部分の温度は急速に低下する。よって、物体が接触している部分の輻射ヒータ装置1の表面温度は急速に低下する。物体が接触している部分の熱は、接触している物体に伝わり、接触している物体に拡散する。このため、接触している物体の表面温度の過剰な上昇が抑制される。
【0036】
ヒータECU3には、スイッチ30からの信号が入力される。スイッチ30は、例えば、インストルメントパネル等に一体的に設置された操作パネル上に設けられる。スイッチ30は、輻射ヒータ装置1のオンオフ状態を切り替えるオンオフスイッチである。スイッチ30は、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を許可する状態と、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を禁止する状態とを、選択的に設定する通電状態設定手段である。
【0037】
ヒータECU3は、エンジンの始動および停止を司るイグニッションスイッチのオンオフ状態に関係なく、車両に搭載された車載電源であるバッテリ4から直流電源が供給されて、演算処理や制御処理を行うように構成されている。ヒータECU3は、バッテリ4から得られる電力を輻射ヒータ装置1に供給し、当該供給電力を制御することができる。ヒータECU3は、当該電力制御によって、発熱部11Aおよび発熱部11Bの出力を制御することができる。
【0038】
バッテリ4は、例えば、鉛蓄電池とすることができる。また、バッテリ4は、例えば、複数個の単電池の集合体からなる組電池で構成してもよい。各単電池は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池で構成することができる。バッテリ4は、例えば、充放電可能で、車両走行用のモータ等に電力を供給する用途に用いることができる。
【0039】
ヒータECU3は、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAM等のメモリ、及びI/Oポート(入力/出力回路)等の機能を含んで構成されるマイクロコンピュータを備えている。ヒータECU3には、温度センサ6、着座センサ203、シート位置センサ204からの信号が入力する。
【0040】
温度センサ6は、温度センサ61および温度センサ62からなる。温度センサ61は、基板部10のうち第1ヒータ10Aの部分に接触して電気信号として温度情報を検知する温度検知部と、ヒータECU3に接続され、温度検知部によって検知された電気信号をヒータECU3に通信する信号線と、を備える。温度センサ62は、基板部10のうち第2ヒータ10Bの部分に接触して電気信号として温度情報を検知する温度検知部と、ヒータECU3に接続され、温度検知部によって検知された電気信号をヒータECU3に通信する信号線と、を備える。
【0041】
着座センサ203は、例えば図1に示した座席20のシートクッション部201に設けられている。着座センサ203は、例えば座席20に乗員21が着座した際に押圧されてオフ状態からオン状態となり、信号線を介してオン信号をヒータECU3に出力する。着座センサ203は、座席20に着座した乗員21を検出する乗員検出手段である。
【0042】
シート位置センサ204は、例えば図1に示した座席20の電動スライド機構に設けられている。シート位置センサ204は、座席20の車室内における前後方向の位置を検出し、信号線を介して検出信号をヒータECU3に出力する。シート位置センサ204は、車室内における座席20の位置を検出する座席位置検出手段である。また、シート位置センサ204は、車室内における乗員21の着座位置を検出する着座位置検出手段でもある。
【0043】
温度センサ61、温度センサ62、着座センサ203およびシート位置センサ204からの信号は、例えば、I/Oポート、もしくはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力される。
【0044】
ヒータECU3は、温度センサ61および温度センサ62によって検出されるヒータ本体の温度を用いて輻射ヒータ装置1の第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの運転、出力を制御する。
【0045】
ROMやRAM等のメモリは、ヒータECU3の記憶手段を構成する。記憶手段は、所定の演算プログラム、制御特性グラフの元となる所定の制御特性データを予め記憶している。当該制御特性データは、ヒータECU3による発熱部11Aおよび発熱部11Bの出力制御に用いられる。また、ヒータECU3は、空調制御装置であるエアコンECU5による空調運転と連携した輻射ヒータ装置1の運転を実現できる。
【0046】
ヒータECU3は、エアコンECU5と通信可能に構成される。エアコンECU5は、CPU、ROM及びRAM等のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、バッテリ4から直流電源が供給されて車室内の空調を制御する空調制御装置である。エアコンECU5には、各種の空調用センサ55から各検出信号が入力される。空調用センサ55は、例えば、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、吐出温度センサ、吐出圧力センサ、蒸発器温度センサ、室外熱交換器温度センサ等の空調制御用のセンサ群からなる。
【0047】
エアコンECU5は、これら検出信号と記憶された空調制御プログラムとを用いて各種演算、処理を行い、車室内空調に寄与する各種の空調機能部品50を制御する制御信号を出力する。空調機能部品50には、空調用冷凍サイクルの圧縮機、室内用ブロワ、内外気切替装置(内外気切替ドア)、エアミックスドア、吹出モードドア等が含まれる。エアコンECU5は、例えば、各モードドア用のアクチュエータ、ブロワモータのモータ駆動回路、圧縮機の容量制御弁、電磁クラッチのクラッチ駆動回路等に制御信号を出力する。
【0048】
ROMやRAM等のメモリは、エアコンECU5の記憶手段を構成する。記憶手段は、所定の空調制御プログラム、各種制御特性グラフの元となる所定の制御特性データを予め記憶している。当該制御特性データは、エアコンECU5による車室内の空調制御に用いられる。これにより、エアコンECU5は、車室内空調に寄与する各種の空調機能部品50を制御する。
【0049】
図1に示すように、車両には車室内の壁面に開口したフット吹出口90が設けられている。車両用空調装置のフット吹出口90は、座席20に着座した乗員21の足部211近傍に開口している。フット吹出口90は、座席20よりも前方に配置されている。フット吹出口90は、座席20を基準として、輻射ヒータ装置1が配設されている側に配設されている。
【0050】
フット吹出口90は、空調機能部品50の作用により吹き出された温風が、座席20に着座した乗員21の足部211から膝部213に向かって流れるように設けられている。フット吹出口90から吹き出した温風は、乗員21の足部211に沿って流れた後、脛部212、膝部213へと、乗員21の下腿部に沿って流れる。フット吹出口90から吹き出される温風による乗員21の加熱対象部位は、輻射ヒータ装置1の輻射熱による乗員21の加熱対象部位とほぼ同一となっている。
【0051】
フット吹出口90から吹き出される温風の風量は、図4に示した空調機能部品50のうちのブロワと吹出モードドアとにより決定される。フット吹出口90から吹き出される風量は、ブロワによる空調空気の送風量と、吹出モードドアによって設定される吹出モードにおけるフット吹出口90への配風割合とにより決まる。したがって、空調機能部品50は、フット吹出口90から吹き出す風量を調節する風量調節手段に相当する。
【0052】
ヒータECU3は、エアコンECU5による車両用空調装置の空調運転と連動した、輻射ヒータ装置1の運転出力制御を実施する。
【0053】
次に、ヒータECU3が行なう輻射ヒータ装置1の運転出力制御動作について説明する。図5に示すように、ヒータECU3は、まず、スイッチ30から入力した信号に基づいて、スイッチ30がオン状態に設定されているか否かを判断する(ステップ310)。ステップ310において、スイッチ30がオン状態に設定されていると判断した場合には、着座センサ203から入力した信号に基づいて、座席20に着座している乗員がいるか否かを判断する(ステップ320)。
【0054】
ステップ310においてスイッチ30がオフ状態であると判断した場合、および、ステップ320において座席20に着座している乗員がいないと判断した場合には、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bをいずれも運転停止する(ステップ330)。ステップ330では、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を中止する。発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を行なっていない場合には、非通電状態を継続する。ステップ330を実行したら、ステップ310へリターンする。
【0055】
ステップ320において、座席20に着座している乗員がいると判断した場合には、ヒータECU3は、エアコンECU5から、車室内の空調制御に用いる各種データを取得する(ステップ340)。ステップ340では、車室内へ吹き出す空調空気の目標吹出温度TAO、内気温センサが検出した内気温Tr、吹出モードドアが設定する吹出モードもしくはそれに関連する物理量、ブロワの送風量もしくはそれに関連する物理量等を取得する。
【0056】
ステップ340を実行したら、次に、シート位置センサ204から入力した信号に基づいて、車室内における座席20の前後方向の位置に関する情報を取得する(ステップ350)。
【0057】
ステップ350を実行したら、仮の目標ヒータ出力αを決定する(ステップ360)。ステップ360では、例えば、図6に示すような特性データから、仮の目標ヒータ出力αを決定する。図6に例示するように、仮の目標ヒータ出力αは、ヒータECU3のメモリに、目標吹出温度TAOと内気温Trとの差に対応する値、もしくは、関数式等として記憶されている。
【0058】
図6に示すように、TAO−Trが大きいときほど、仮の目標ヒータ出力αも大きくなる。TAOがTrから大きく乖離して、車室内を速やかに暖房する必要があるときほど、仮の目標ヒータ出力αは大きくなる。ステップ360では、ステップ340で取得したTAOおよびTrを用いて、TAO−Trに対応する仮の目標ヒータ出力αが決定される。
【0059】
ステップ360を実行したら、温風空調による補正係数β1、β2を決定する(ステップ370)。ステップ370では、例えば、図7に示すような特性データから、補正係数β1、β2を決定する。図7に例示するように、補正係数βは、ヒータECU3のメモリに、フット吹出風量に対応する値、もしくは、関数式等として記憶されている。補正係数β1は、第1ヒータ10Aの目標出力の補正係数である。補正係数β2は、第2ヒータ10Bの目標出力の補正係数である。
【0060】
図7に示すように、フット吹出風量が大きいときほど、補正係数β1、β2は小さくなる。フット吹出風量が比較的大きく、温風空調の暖房への寄与が大きくなるほど、β1、β2はいずれも小さくなる。本例では、β1、β2は、いずれも1を下限として設定されている。図1に示すように、標準的な着座姿勢においては、第1ヒータ10Aと乗員21との距離よりも、第2ヒータ10Bと乗員21との距離の方が小さいため、β2はβ1よりも小さくなっている。
【0061】
また、フット吹出風量の増大に伴う補正係数βの減少傾向は、β1よりもβ2の方が大きくなっている。フット吹出風量が比較的大きい場合には、第1ヒータ10Aの目標出力よりも第2ヒータ10Bの目標出力の方が大きく低減補正されるようになっている。これは、以下の理由による。フット吹出風量が比較的小さい場合には、フット吹出口90から吹き出された温風が乗員21の足部211近傍にしか到達せず、膝部213側には流れ難い。一方、フット吹出風量が比較的大きい場合には、フット吹出口90から吹き出された温風が乗員21の足部211近傍ばかりでなく、膝部213近傍にまで到達し易くなるためである。
【0062】
このように、フット吹出風量が大きくなるほど、乗員21が足部211側ばかりでなく膝部213側でも温風による温熱感を得易くなるため、フット吹出風量の増大に伴う補正係数βの減少傾向は、β1よりもβ2の方が大きくなっている。ステップ370では、ステップ340で取得した吹出モードドアが設定する吹出モードおよびブロワの送風量を用いて、フット吹出風量に対応する補正係数β1、β2が決定される。
【0063】
ステップ370を実行したら、シート位置による補正係数γ1、γ2を決定する(ステップ380)。ステップ380では、例えば、図8に示すような特性データから、補正係数γ1、γ2を決定する。図8に例示するように、補正係数γは、ヒータECU3のメモリに、座席20の車室内における前後方向の位置に対応する値、もしくは、関数式等として記憶されている。補正係数γ1は、第1ヒータ10Aの目標出力の補正係数である。補正係数γ2は、第2ヒータ10Bの目標出力の補正係数である。
【0064】
図8に示すように、座席20の位置が基準位置よりも前方の所定位置よりも更に前方である場合には、座席20が前にあるときほど、補正係数γ1、γ2は小さくなる。座席20が比較的前方にあり、輻射ヒータ装置1と乗員21との距離が小さくなるほど、γ1、γ2はいずれも小さくなる。また、座席20が比較的前方にあり、フット吹出口90と乗員21との距離が小さくなるほど、γ1、γ2はいずれも小さくなる。
【0065】
座席20が比較的前方にあり、乗員21の足部211から膝部213までの部位が第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bに近づくほど、γ1、γ2はいずれも小さくなる。また、座席20が比較的前方にあり、乗員21の足部211から膝部213までの部位がフット吹出口90に近づいて温風が到達し易くなるほど、γ1、γ2はいずれも小さくなる。
【0066】
また、座席20の位置が基準位置よりも後方の所定位置よりも更に後方である場合には、座席20が後ろにあるときほど、補正係数γ1は小さくなり、補正係数γ2は大きくなる。座席20が比較的後方にあり、輻射ヒータ装置1と乗員21との距離が大きくなるほど、γ1は小さくなり、γ2は大きくなる。また、座席20が比較的後方にあり、フット吹出口90と乗員21との距離が大きくなるほど、γ1は小さくなり、γ2は大きくなる。
【0067】
座席20が比較的後方にあり、乗員21の足部211から膝部213までの部位が第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bから遠ざかるほど、γ1は小さくなり、γ2は大きくなる。これは、乗員21が比較的後方にいる場合には、乗員21から遠い側に位置する第1ヒータ10Aの放射する輻射熱R1が乗員21に到達し難くなり、乗員21に近い側に位置する第2ヒータ10Bの放射する輻射熱R2が乗員21に効果的に到達するためである。
【0068】
座席20が比較的後方にあり、乗員21の足部211から膝部213までの部位がフット吹出口90から遠ざかり温風が到達し難くなるほど、γ1は小さくなり、γ2は大きくなる。これは、乗員21が比較的後方にいる場合には、フット吹出口90から吹き出された温風が乗員21の膝部213側にまでは到達し難くなるため、温風が到達し易い乗員部位に対応した第1ヒータ10Aの出力を低減補正するためである。また、温風が到達し難い乗員部位に対応した第2ヒータ10Bの出力を増大補正するためである。
【0069】
ステップ380では、ステップ350で取得した車室内における座席20の前後方向の位置情報を用いて、シート位置に対応する補正係数γ1、γ2を決定する。
【0070】
ステップ380を実行したら、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bのそれぞれの目標出力を算出する(ステップ390)。ステップ390では、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの目標出力を、ステップ360、ステップ370およびステップ380で決定した値を用いて算出する。第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの目標出力は、仮の目標ヒータ出力αに、補正係数βおよび補正係数γを乗算して算出される。第1ヒータ10Aの目標出力は、α×β1×γ1の算出式により算出される。また、第2ヒータ10Bの目標出力は、α×β2×γ2の算出式により算出される。
【0071】
ステップ390を実行したら、ステップ390で算出したそれぞれの目標出力となるように、第1ヒータ10Aの発熱部11Aおよび第2ヒータ10Bの発熱部11Bへの通電状態を制御する(ステップ400)。ステップ400を実行したら、ステップ310へリターンする。
【0072】
上述した本実施形態の輻射ヒータ装置の構成および作動によれば、以下に述べる作用効果を得ることができる。
【0073】
輻射ヒータ装置1は、第1ヒータ10Aと第2ヒータ10Bとを備えており、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bが、車室内の座席20に着座した乗員21の足部211から膝部213までの部位に対応して配設されている。第1ヒータ10Aは、通電により発熱する発熱部11Aを有し、発熱部11Aから供給される熱によって輻射熱を放射する。第2ヒータ10Bは、通電により発熱する発熱部11Bを有し、発熱部11Bから供給される熱によって輻射熱を放射する。第1ヒータ10Aは、第2ヒータ10Bよりも乗員21の足部211側の部位に対応して配設され、第2ヒータ10Bは、第1ヒータ10Aよりも乗員21の膝部213側の部位に対応して配設されている。そして、輻射ヒータ装置1は、発熱部11Aへの通電と発熱部11Bへの通電とを個別に調節する個別調節手段であるヒータECU3を備えている。
【0074】
これによると、個別調節手段であるヒータECU3により、第1ヒータ10Aの発熱部11Aへの通電状態と第2ヒータ10Bの発熱部11Bへの通電状態とを個別に調節することができる。そして、第1ヒータ10Aの表面から放射される輻射熱量である第1輻射熱量に対する第2ヒータ10Bの表面から放射される輻射熱量である第2輻射熱量の比を変更することができる。したがって、乗員21の足部211側に対応した第1ヒータ10Aの第1輻射熱量に対する、乗員21の膝部213側に対応した第2ヒータ10Bの第2輻射熱量の比を、乗員21の各部の温熱感に応じて変更することが可能である。このようにして、乗員21が良好な暖房感を得ることができる。
【0075】
また、輻射ヒータ装置1を含む暖房システムは、フット吹出口90から吹き出す風量を調節する風量調節手段となる空調機能部品50を備えている。また、ヒータECU3は、発熱部11Aへの通電と発熱部11Bへの通電とを個別に制御可能に設けられて、個別調節手段を含む制御手段をなしている。そして、ヒータECU3は、風量調節手段が調節するフット吹出口90からの吹出風量に応じて、第1輻射熱量に対する第2輻射熱量の比を変更するように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0076】
これによると、ヒータECU3は、風量調節手段によって調節されるフット吹出口90からの吹出風量に応じて、第1輻射ヒータ部の第1輻射熱量に対する第2輻射ヒータ部の第2輻射熱量の比を変更することができる。したがって、乗員21の足部211側に対応した第1ヒータ10Aの第1輻射熱量に対する乗員21の膝部213側に対応した第2ヒータ10Bの第2輻射熱量の比を、乗員21に向かって吹き出されるフット吹出風量に応じて変更することが可能である。このようにして、フット吹出口90から吹き出される温風による暖房を併用する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0077】
また、フット吹出口90は、吹き出された温風が乗員21の足部211から膝部213に向かって流れるように設けられている。そして、ヒータECU3は、風量調節手段が調節するフット吹出風量が増大するにしたがって、第1輻射熱量に対する第2輻射熱量の比を減少させるように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0078】
これによると、ヒータECU3は、風量調節手段によって調節されるフット吹出口90からの吹出風量が増大するにしたがって、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量に対する第2ヒータ10Bの第2輻射熱量の比を減少させる。したがって、乗員21の足部211から膝部213に向かって流れる温風の風量が増大して膝部213側に到達する温風が増加するにしたがって、足部211側への第1輻射熱量に対する膝部213側への第2輻射熱量の比を減少させることができる。このようにして、フット吹出口90から吹き出される温風が乗員21の足部211から膝部213に向かって流れる暖房を併用する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0079】
また、輻射ヒータ装置1は、車室内における乗員21の着座位置を検出する着座位置検出手段としてシート位置センサ204を備えている。そして、ヒータECU3は、着座位置検出手段が検出した乗員21の着座位置に応じて、第1輻射熱量に対する第2輻射熱量の比を変更するように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0080】
これによると、ヒータECU3は、車室内における乗員21の着座位置に応じて、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量に対する第2ヒータ10Bの第2輻射熱量の比を変更することができる。したがって、乗員21の足部211側に対応した第1ヒータ10Aの第1輻射熱量に対する乗員21の膝部213側に対応した第2ヒータ10Bの第2輻射熱量の比を、輻射ヒータ装置1と乗員21との相対的な位置関係に応じて変更することが可能である。このようにして、フット吹出口90や輻射ヒータ装置1と乗員21との相対的な位置関係が変化した場合にも、良好な暖房感を得ることができる。
【0081】
また、本実施形態における着座位置検出手段は、車室内における座席20の位置を検出する座席位置検出手段としてのシート位置センサ204である。これによると、座席位置検出手段により、車室内における乗員21の着座位置を容易に検出することができる。
【0082】
また、ヒータECU3は、着座位置検出手段が検出した着座位置が所定位置よりも第1、第2ヒータ10A、10Bに近い側にある場合には、下記のように通電制御を行なう。ヒータECU3は、着座位置が第1、第2ヒータ10A、10Bに近づくにつれて、第1、第2輻射熱量をいずれも低減させるように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0083】
これによると、ヒータECU3は、乗員21の着座位置が輻射ヒータ装置1に近づくにしたがって、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量および第2ヒータ10Bの第2輻射熱量をともに減少させる。したがって、乗員21の足部211から膝部213までが輻射ヒータ装置1に近づくほど、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの輻射熱量をいずれも減少させることができる。このようにして、乗員21の着座位置が所定位置よりも第1、第2ヒータ10A、10Bに近い側に位置する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0084】
また、ヒータECU3は、着座位置検出手段が検出した着座位置が所定位置よりもフット吹出口90に近い側にある場合には、下記のように通電制御を行なう。ヒータECU3は、着座位置がフット吹出口90に近づくにしたがって、第1輻射熱量および第2輻射熱量をいずれも低減させるように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0085】
これによると、ヒータECU3は、乗員21の着座位置がフット吹出口90に近づくにしたがって、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量および第2ヒータ10Bの第2輻射熱量をともに減少させる。したがって、フット吹出口90からの温風が乗員21に到達し易くなるほど、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの輻射熱量をいずれも減少させることができる。このようにして、フット吹出口90から吹き出される温風による暖房を併用し、乗員21の着座位置が所定位置よりもフット吹出口90に近い側に位置する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0086】
また、ヒータECU3は、着座位置検出手段が検出した着座位置が所定位置よりも第1、第2ヒータ10A、10Bから遠い側にある場合には、下記のように通電制御を行なう。着座位置が第1、第2ヒータ10A、10Bから遠ざかるにしたがって、第1輻射熱量を低減させるように、発熱部11Aへの通電を制御する。また、着座位置が第1、第2ヒータ10A、10Bから遠ざかるにしたがって、第2輻射熱量を増大させるように、発熱部11Bへの通電を制御する。
【0087】
これによると、ヒータECU3は、乗員21の着座位置が輻射ヒータ装置1から遠ざかるにしたがって、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量を減少させるとともに、第2ヒータ10Bの第2輻射熱量を増加させる。したがって、乗員21の足部211から膝部213までが輻射ヒータ装置1から遠ざかるほど、乗員21から比較的遠い側の第1ヒータ10Aの輻射熱量を減少させるとともに、乗員21に比較的近い側の第2ヒータ10Bの輻射熱量を増加させることができる。このようにして、乗員21の着座位置が所定位置よりも輻射ヒータ装置1から遠い側に位置する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0088】
また、ヒータECU3は、着座位置検出手段が検出した着座位置が所定位置よりもフット吹出口90から遠い側にある場合には、下記のように通電制御を行なう。ヒータECU3は、着座位置がフット吹出口90から遠ざかるにしたがって、第1輻射熱量を低減させるとともに、第2輻射熱量を増大させるように、発熱部11Aおよび発熱部11Bへの通電を制御する。
【0089】
これによると、ヒータECU3は、乗員21の着座位置がフット吹出口90から遠ざかるにしたがって、第1ヒータ10Aの第1輻射熱量を減少させるとともに、第2ヒータ10Bの第2輻射熱量を増加させる。したがって、フット吹出口90からの温風が乗員21に到達し難くなるほど、乗員21から比較的遠い側の第1ヒータ10Aの輻射熱量を減少させるとともに、乗員21に比較的近い側の第2ヒータ10Bの輻射熱量を増加させることができる。このようにして、フット吹出口90から吹き出される温風による暖房を併用し、乗員21の着座位置が所定位置よりもフット吹出口90から遠い側に位置する場合において、良好な暖房感を得ることができる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0091】
上記実施形態では、輻射ヒータ装置1は、第1輻射ヒータ部をなす第1ヒータ10Aと第2輻射ヒータ部をなす第2ヒータ10Bとの2つのヒータ部からなっていたが、これに限定されるものではない。輻射ヒータ装置は3つ以上のヒータ部を有するものであってもかまわない。
【0092】
例えば、図9に示すように、第1ヒータ10Aと第2ヒータ10Bとの間に第3ヒータ10Cを備えるものであってもよい。図9に示す輻射ヒータ装置501では、第1ヒータ10Aと第3ヒータ10Cとが互いに隣り合い、第3ヒータ10Cと第2ヒータ10Bとが互いに隣り合うように配設されている。第1ヒータ10Aには発熱部511Aが設けられ、第2ヒータ10Bには発熱部511Bが設けられ、第3ヒータ10Cには発熱部511Cが設けられている。各発熱部511A、511B、511Cは、例えば発熱部11を蛇行配線、屈曲配線、並列配線等して形成することができる。
【0093】
第1ヒータ10Aは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち、足部211側に配設される。第2ヒータ10Bは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち、膝部213側に配設される。第3ヒータ10Cは、乗員21の足部211から膝部213までの部位のうち、例えば脛部212に対応して配設される。このような輻射ヒータ装置501において、第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することができる。
【0094】
このとき、第3ヒータ10Cの輻射熱量は、第1ヒータ10Aの輻射熱量と第2ヒータ10Bの輻射熱量との中間の輻射熱量とすることができる。また、第3ヒータ10Cの輻射熱量は、第1ヒータ10Aの輻射熱量と第2ヒータ10Bの輻射熱量とのいずれかと同一の輻射熱量とすることができる。また、第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第3ヒータ10Cを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bおよび第3ヒータ10Cを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。また、第3ヒータ10Cを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。第1ヒータ10Aおよび第3ヒータ10Cを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。
【0095】
また、例えば、図10に示す輻射ヒータ装置601のように、第1ヒータ10Aと第2ヒータ10Bとの間に第3ヒータ10Cを備えるものであってもよい。第1ヒータ10Aには発熱部611A、611Dが設けられ、第2ヒータ10Bには発熱部611B、611Dが設けられ、第3ヒータ10Cには発熱部611C、611Dが設けられている。発熱部611Dは、第1〜第3ヒータ10A、10B、10Cの全てに亘って設けられている。各発熱部611A、611B、611C、611Dは、例えば発熱部11を蛇行配線、屈曲配線、並列配線等して形成することができる。
【0096】
輻射ヒータ装置601においても、輻射ヒータ装置501と同様に、第1〜第3ヒータ10A、10B、10Cの輻射熱量を制御することができる。輻射ヒータ装置601は、全ての輻射ヒータ部に均等に配設された発熱部611Dを有して、全ての輻射ヒータ部において発熱部611Dで均一な発熱量を得ることが可能である。したがって、いずれかの輻射ヒータ部で比較的低出力の放射を行なう必要がある場合には、当該輻射ヒータ部では発熱部611Dのみに通電を行ない、当該輻射ヒータ部にのみ配設された発熱部を非通電とすることができる。これによれば、低出力に対応するために、通電のオンオフを行なうデューティー制御を行なう必要がない。
【0097】
また、輻射ヒータ装置601においても、第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することができる。また、第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第3ヒータ10Cを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。第1ヒータ10Aを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bおよび第3ヒータ10Cを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。また、第3ヒータ10Cを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。第1ヒータ10Aおよび第3ヒータ10Cを第1輻射ヒータ部とし、第2ヒータ10Bを第2輻射ヒータ部として本発明を適用することも可能である。
【0098】
また、図2図9図10に示した輻射ヒータ装置は、いずれも、各ヒータ部の表面積を同一としていたが、これに限定されるものではない。輻射ヒータ装置の各ヒータ部は、互いに表面積が異なるものであってもかまわない。
【0099】
また、上記実施形態では、仮の目標ヒータ出力αは、目標吹出温度TAO−内気温Trが大きくなるにつれて、一次的に大きくなるように設定されていたが、これに限定されるものではない。例えば、仮の目標ヒータ出力αは、TAO−Trの一次関数以外で設定されるものであってもよい。また、仮の目標ヒータ出力αは、TAO−Trに対応して設定されるものに限定されるものではない。例えば、仮の目標ヒータ出力αは、TAOが大きくなるにつれて大きくなるように設定されるものであってもよい。また、例えば、仮の目標ヒータ出力αは、Trが小さくなるにつれて大きくなるように設定されるものであってもよい。
【0100】
また、補正係数β1、β2は、フット吹出風量が大きくなるにつれて、一次的に小さくなるように、フット吹出風量に対応して設定されていたが、これに限定されるものではない。例えば、補正係数β1、β2は、フット吹出風量の一次関数以外で設定されるものであってもよい。また、例えば、車両用空調装置がオート運転モードであり、吹出風量が自動設定される場合には、補正係数β1、β2は、TAOが大きくなるにつれて小さくなるように、TAOに対応して設定されるものであってもよい。
【0101】
また、補正係数γ1、γ2は、座席20の前後方向の位置に対応して、図8に例示する関係で設定されていたが、これに限定されるものではない。例えば、座席20が基準位置を含む所定範囲にあるときに、γ1、γ2をいずれも1に固定するものでなくてもよい。
【0102】
また、補正係数γ1、γ2は、車室内における乗員21の着座位置に対応して設定することができる。したがって、着座位置検出手段は、座席位置検出手段に限定されるものではない。
【0103】
補正係数γ1、γ2は、輻射ヒータ装置1の第1、第2ヒータ10A、10Bと、乗員21の足部211から膝部213にかけての部位との距離に応じて設定することができる。補正係数γ1、γ2は、輻射ヒータ装置1の第1、第2ヒータ10A、10Bと、乗員21の足部211から膝部213にかけての部位との位置関係に応じて設定することができる。例えば、補正係数γ1、γ2は、ハンドル23および操作ペダルであるペダル24の位置に対応して設定されるものであってもよい。また、補正係数γ1、γ2は、座席20のシートクッション部201の上下方向の高さ位置およびシートクッション部201の座面傾斜角度に対応して設定されるものであってもよい。また、補正係数γ1、γ2は、座席20のシートクッション部201に対するシートバック部202の傾斜角度に対応して設定されるものであってもよい。
【0104】
また、座席20の前後方向位置、ハンドル23及びペダル24の位置、シートクッション部201の高さ位置及び座面傾斜角度、シートクッション部201とシートバック部202との角度等のうちの複数に対応して、γ1、γ2を設定するものであってもよい。補正係数γ1、γ2は、乗員21の足部211から膝部213までの部位の車室内における位置に関連する物理量に対応して設定することができる。補正係数γ1、γ2は、車室内における乗員21の膝部213の位置および膝部213から足部211までの部位の傾斜角度に関連する物理量に対応して設定することができる。
【0105】
また、上記実施形態では、空調装置のフット吹出口90は、吹き出された温風が乗員21の足部211から膝部213に向かって流れるように設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、フット吹出口は、吹き出された温風が乗員21の膝部213から足部211に向かって流れるように設けるものであってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、仮の目標ヒータ出力αを、温風風量に応じた補正係数β1、β2と、乗員21の車室内位置に応じた補正係数γ1、γ2とで補正して、真の目標ヒータ出力を決定していたが、これに限定されるものではない。例えば、温風風量に応じた補正、および、乗員21の車室内位置に応じた補正のいずれか一方のみを行なうものであってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、補正係数β1、β2および補正係数γ1、γ2は、ヒータECU3が各種検出情報に基づいて決定していたが、これに限定されるものではない。例えば、補正係数またはこれに関連する値等の補正情報を乗員が入力するものであってもよい。乗員が入力する補正情報としては、固定値としての補正係数とすることができる。また、入力する補正情報は、補正係数の算出関数式に関する値等であってもよい。例えば、温風風量に応じた補正の場合には、乗員21が、図7に例示したβ1、β2を示す線の傾きに関連する値、および、β1に対するβ2の比に関連する値の少なくともいずれかを入力するものであってもよい。乗員21による入力手段としては、例えば、ヒータECU3と通信可能な、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末、ナビゲーション装置、および、インストルメントパネルに設けた入力スイッチ等を採用することができる。
【0108】
また、上記実施形態では、発熱部11Aへの通電と発熱部11Bへの通電を個別に調節する個別調節手段は、ヒータECU3であったが、これに限定されるものではない。例えば、個別調節手段は、乗員21が各発熱部への通電を直接もしくは間接的に調節するものであってもよい。例えば、第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bの出力レベルを、個別調節手段としての入力操作部から入力するものであってもよい。例えば、インストルメントパネルに各ヒータの出力レベルを連続的に変更可能なレベル設定スイッチを各ヒータに対応してそれぞれ設け、これを入力操作部としてもかまわない。また、各ヒータの出力レベルを「強」、「中」、「弱」の三段階に変更可能なレベル設定スイッチを各ヒータに対応してそれぞれ設け、これを入力操作部としてもかまわない。また、各ヒータの出力レベルの組み合わせを設定するスイッチを設け、これを入力操作部としてもかまわない。また、入力操作部は、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末、ナビゲーション装置等に設けてもかまわない。
【0109】
また、上記実施形態では、乗員検出手段として着座センサ203を用いていたが、これに限定されるものではない。例えば、乗員検出手段には、着座センサ、シートベルトバックルスイッチ、IRセンサ、撮像カメラ等の1つもしくは2つ以上を組み合わせて採用することができる。
【0110】
また、上記実施形態では、ヒータECU3をエアコンECU5と別に設けていたが、これに限定されるものではない。例えば、ヒータECU3とエアコンECU5とを一体の制御装置としてもかまわない。
【0111】
また、上記実施形態では、輻射ヒータ装置1の第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bは、座席20に着座した乗員21の足部211から膝部213までの部位に対応して配設されていたが、これに限定されるものではない。輻射ヒータ装置1の第1ヒータ10Aおよび第2ヒータ10Bは、座席20に着座した乗員21の足部211から膝部213までの一部の部位に対応して配設されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 輻射ヒータ装置
3 ヒータECU(個別調節手段、制御手段)
10A 第1ヒータ(第1輻射ヒータ部)
10B 第2ヒータ(第2輻射ヒータ部)
11A 発熱部(第1発熱部)
11B 発熱部(第2発熱部)
20 座席
21 乗員
50 空調機能部品(風量調節手段)
90 フット吹出口
203 着座センサ(乗員検出手段)
204 シート位置センサ(座席位置検出手段、着座位置検出手段)
211 足部
213 膝部
R1、R2 輻射熱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10