(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定着ベルトの回転時及び回転停止時において前記熱源から前記非通紙領域に向かう輻射熱を遮断する遮断部材を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された定着装置においては、定着ベルトの回転が停止した際に、定着ベルトのうちの熱源に最も接近する部分が熱源によって加熱され、定着ベルトがオーバーシュート(過昇温)する恐れがある。特に、JAM(紙詰まり)の発生などによって定着ベルトの回転が緊急停止した際には、定着ベルトがオーバーシュートしやすい。
【0006】
本発明は上記事情を考慮し、定着ベルトの回転が停止した際に定着ベルトがオーバーシュートするのを簡易な構成によって抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の定着装置は、回転可能に設けられる定着ベルトと、前記定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、前記定着ベルトに向かって輻射熱を放射する熱源と、前記熱源から前記定着ベルトのうちの前記熱源に最も接近する部分に向かう輻射熱を遮断する第1の位置と、前記熱源から前記定着ベルトのうちの前記熱源に最も接近する部分に向かう輻射熱を遮断しない第2の位置と、の間で移動可能に設けられ、前記定着ベルトに接触する移動部材と、前記移動部材を前記第1の位置に付勢する付勢部材と、を備え、前記定着ベルトが回転すると、前記定着ベルトと前記移動部材の間に働く摩擦力によって前記移動部材が前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1の位置から前記第2の位置まで移動し、前記定着ベルトの回転が停止すると、前記付勢部材の付勢力によって前記移動部材が前記第2の位置から前記第1の位置まで移動することを特徴とする。
【0008】
このような構成を採用することで、定着ベルトの回転時に定着ベルトのうちの熱源に最も接近する部分を熱源によって加熱し、定着ベルトを迅速に昇温させることが可能となる。一方で、定着ベルトの回転が停止した際には、定着ベルトのうちの熱源に最も接近する部分が熱源によって加熱されるのを防止することが可能となる。これに伴って、定着ベルトのオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0009】
また、定着ベルトと移動部材の間に働く摩擦力及び付勢部材の付勢力によって移動部材を第1の位置と第2の位置の間で移動させている。そのため、モーターなどの駆動源を用いて移動部材を移動させる場合と比較して、定着装置の構成を簡易なものとすることが可能となる。
【0010】
前記定着ベルトは、記録媒体が通過する通紙領域と、前記定着ベルトの回転軸方向において前記通紙領域の外側に設けられる非通紙領域と、を備え、前記移動部材は、前記第1の位置にある状態において前記熱源から前記通紙領域のうちの前記熱源に最も接近する部分に向かう輻射熱を遮断し、前記第2の位置にある状態において前記熱源から前記通紙領域のうちの前記熱源に最も接近する部分に向かう輻射熱を遮断しなくても良い。
【0011】
このような構成を採用することで、定着ベルトの通紙領域がオーバーシュートするのを効果的に抑制することが可能となる。
【0012】
前記定着装置は、前記定着ベルトの回転時及び回転停止時において前記熱源から前記非通紙領域に向かう輻射熱を遮断する遮断部材を更に備えていても良い。
【0013】
このような構成を採用することで、定着ベルトの回転時に定着ベルトの非通紙領域が熱源によって加熱されるのを抑制することが可能となる。これに伴って、定着ベルトの非通紙領域のオーバーシュートを抑制することができる。
【0014】
また、定着ベルトの回転が停止した際には、定着ベルトの通紙領域がオーバーシュートするのを移動部材によって抑制すると共に、定着ベルトの非通紙領域がオーバーシュートするのを遮断部材によって抑制することが可能となる。そのため、定着ベルトの回転軸方向(長手方向)の全域に亘って、定着ベルトのオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0015】
前記定着装置は、前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する押圧部材と、前記押圧部材を支持する支持部材と、を更に備え、前記遮断部材は、前記支持部材に固定されていても良い。
【0016】
このような構成を採用することで、定着装置の熱容量を小さくすることが可能になると共に、簡易な構成を用いて遮断部材を固定することが可能となる。
【0017】
前記遮断部材は、前記定着ベルトの前記非通紙領域と間隔を介して設けられていても良い。
【0018】
このような構成を採用することで、定着ベルトの熱が遮断部材に逃げるのを抑制することが可能となり、熱源によって定着ベルトを効率的に加熱することが可能となる。
【0019】
前記定着装置は、前記移動部材が前記第1の位置にあることを検知可能な第1検知部を更に備え、前記移動部材が前記第1の位置にあることを前記第1検知部が検知している時には、前記熱源からの輻射熱の放射が停止されても良い。
【0020】
このような構成を採用することで、回転停止状態の定着ベルトが熱源によって加熱されるのを確実に抑制することが可能となる。また、複雑な回路などを用いることなく定着ベルトが回転しているか否かを検知することができるため、定着装置の構成を簡易なものとすることが可能となる。
【0021】
前記移動部材が前記第2の位置にあることを検知可能な第2検知部を更に備えていても良い。
【0022】
このような構成を採用することで、定着ベルトが回転しているか否かを一層正確に検知することが可能となる。
【0023】
前記熱源は、前記定着ベルトの内径側に配置され、前記移動部材は、前記定着ベルトの内周面に接触し、前記第1の位置と前記第2の位置の間で回転可能に設けられていても良い。
【0024】
このような構成を採用することで、定着ベルトの内径側の空間を熱源及び移動部材の設置スペースとして有効に利用することが可能となる。
【0025】
前記定着ベルトの回転軸方向外側に配置されるガイド部材を更に備え、前記移動部材は、前記定着ベルトに接触する本体部と、前記本体部から前記回転軸方向外側に向かって延出する延出部と、を備え、前記ガイド部材には、円弧状に湾曲するガイド穴が設けられ、前記ガイド穴に前記延出部が挿通されていても良い。
【0026】
このような構成を採用することで、簡易な構成を用いて移動部材を回転させることが可能となる。
【0027】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、定着ベルトの回転が停止した際に定着ベルトがオーバーシュートするのを簡易な構成によって抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、
図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。
【0031】
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(記録媒体)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の側方に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
【0032】
プリンター本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が排紙トレイ4の下方に配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(
図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0033】
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送経路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送経路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙部19が設けられている。搬送経路15の下方には、両面印刷用の反転経路20が形成されている。
【0034】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0035】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0036】
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(
図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
【0037】
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部19から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残留したトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
【0038】
次に、定着装置18について詳細に説明する。以下、説明の便宜上、
図2、
図3における紙面手前側を定着装置18の前側(正面側)とする。各図に適宜付される矢印Fr、Rr、L、R、U、Loは、それぞれ定着装置18の前側、後側、左側、右側、上側、下側を示している。各図に適宜付される矢印Iは、前後方向内側を示し、各図に適宜付される矢印Oは、前後方向外側を示している。
図2に付される矢印Yは、用紙の搬送方向(本実施形態では、左右方向)を示している。
【0039】
図2、
図3等に示されるように、定着装置18は、定着フレーム21と、定着フレーム21の上部に収容される定着ベルト22と、定着フレーム21の下部に収容される加圧ローラー23(加圧部材)と、定着ベルト22の内径側の空間の上部に配置されるヒーター24(熱源)と、定着ベルト22の内径側の空間においてヒーター24の下側に配置される反射部材25と、定着ベルト22の内径側の空間の下端部に配置される押圧部材26と、定着ベルト22の内径側の空間において反射部材25の下側且つ押圧部材26の上側に配置される支持部材27と、定着ベルト22の内周面に沿って配置される移動部材28と、定着ベルト22の内径側の空間の前端側と後端側にそれぞれ配置される遮断部材29と、定着フレーム21の前端側と後端側にそれぞれ配置されるコイルバネ30(付勢部材)と、を備えている。
【0040】
定着フレーム21(
図2、
図3等参照)は、例えば板金によって形成されている。定着フレーム21の前端部と後端部の上部には、それぞれガイド板33(ガイド部材)が設けられている。各ガイド板33は、定着ベルト22の前後方向外側に配置されている。
【0041】
図4等に示されるように、各ガイド板33の右側部には、円弧状に湾曲するガイド穴34が設けられている。各ガイド板33の前後方向外側の面には、ガイド穴34の下方に係合突起35が突設されている。前側のガイド板33の前面(前後方向外側の面)には、ガイド穴34の上端側に第1検知部36が固定されると共に、ガイド穴34の下端側に第2検知部37が固定されている。第1、第2検知部36、37は、例えばPIセンサー(Photo Interrupter Sensor)によって構成されている。
【0042】
定着ベルト22(
図2、
図3等参照)は、前後方向に長い略円筒状を成している。定着ベルト22は、可撓性を有しており、周方向には無端状である。定着ベルト22は、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、を備えている。定着ベルト22の基材層は、例えばSUSなどの金属によって形成されている。なお、定着ベルト22の基材層は、PI(ポリイミド)などの樹脂によって形成されていても良い。定着ベルト22の弾性層は、例えば、シリコンゴムによって形成されている。定着ベルト22の離型層は、例えば、PFAチューブによって形成されている。なお、各図において、定着ベルト22の各層(基材層、弾性層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。
【0043】
図5に示されるように、定着ベルト22は、前後方向に延びる回転軸Aの周りを回転可能に設けられている。つまり、本実施形態では、定着ベルト22の回転軸方向は前後方向である。定着ベルト22は、通紙領域41と、通紙領域41の前後両側(通紙領域41の前後方向外側)に設けられる非通紙領域42と、を備えている。通紙領域41は、最大サイズの用紙が通過する領域である。非通紙領域42は、最大サイズの用紙が通過しない領域である。
【0044】
加圧ローラー23(
図2、
図3等参照)は、前後方向に長い略円柱状を成している。加圧ローラー23は、例えば、円柱状の芯材と、この芯材に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層と、によって構成されている。加圧ローラー23の芯材は、例えば、鉄等の金属によって形成されている。加圧ローラー23の弾性層は、例えば、シリコンゴムによって形成されている。加圧ローラー23の離型層は、例えば、PFAチューブによって形成されている。なお、各図において、加圧ローラー23の各層(芯材、弾性層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。
【0045】
加圧ローラー23は、定着ベルト22の下側(外径側)に配置されている。加圧ローラー23は、定着ベルト22に圧接しており、定着ベルト22と加圧ローラー23の間には定着ニップ43が形成されている。加圧ローラー23は、定着フレーム21に回転可能に支持されている。加圧ローラー23は、モーター等によって構成される駆動源44に接続されており、駆動源44によって加圧ローラー23を回転させることができるようになっている。
【0046】
ヒーター24(
図2、
図3等参照)は、例えばハロゲンヒーターによって構成されている。ヒーター24は、反射部材25、押圧部材26及び支持部材27よりも上側(加圧ローラー23から離間する側)に配置されている。ヒーター24の前後両端部は、定着フレーム21に取り付けられている。なお、
図2に示されるように、定着ベルト22の通紙領域41の中では、定着ベルト22の通紙領域41の上端部41aがヒーター24に最も接近している。この定着ベルト22の通紙領域41の上端部41a(定着ベルト22の通紙領域41のうちのヒーター24に最も接近する部分)は、定着ベルト22の回転軸Aを挟んで定着ニップ43の反対側に位置しており、定着ニップ43と対向している。ヒーター24は、通電によって発熱し、定着ベルト22の内周面に向かって輻射熱を放射するように構成されている。
【0047】
反射部材25(
図2、
図3等参照)は、前後方向に長い形状を成している。反射部材25は、例えば、光輝アルミニウム等の金属によって形成されている。反射部材25は、ヒーター24と支持部材27の間に配置されており、支持部材27の上方を覆っている。
図2に示されるように、反射部材25は、左右方向に沿って設けられる反射板部45と、反射板部45の左右両端部から下側(加圧ローラー23側)に向かって屈曲される一対の屈曲板部46と、を備えており、上向きに凸となる略コ字状を成している。なお、
図3に示されるように、定着ベルト22の非通紙領域42と対応する前後方向位置においては、反射部材25が反射板部45のみを備えており、各屈曲板部46を備えていない。反射板部45の上面は、ヒーター24から放射される輻射熱を定着ベルト22の内周面に向かって反射する機能を有している。
【0048】
押圧部材26(
図2、
図3等参照)は、前後方向に長い形状を成している。押圧部材26は、例えば、LCP(液晶ポリマー)等の耐熱性樹脂によって形成されている。押圧部材26の下面は、定着ベルト22を下側(加圧ローラー23側)に向かって押圧している。
【0049】
支持部材27(
図2、
図3等参照)は、前後方向に長い形状を成している。支持部材27は、例えばSECC(亜鉛メッキ鋼板)等から成る一対のL字板金47を組み合わせることで形成されており、断面ロの字状を成している。支持部材27は、押圧部材26を上側から支持している。
【0050】
移動部材28(
図5、
図6等参照)は、本体部50と、本体部50の幅方向一端部から前後方向外側に向かって延出する一対の延出部51と、を備えている。
【0051】
図2に示されるように、移動部材28の本体部50は、定着ベルト22の通紙領域41の内周面に接触しており、定着ベルト22の通紙領域41の内周面に沿って円弧状に湾曲している。
【0052】
図3に示されるように、移動部材28の各延出部51の前後方向内側の部分は、定着ベルト22の非通紙領域42の内周面に沿って円弧状に湾曲しており、定着ベルト22の非通紙領域42の内周面に接触している。
図4に示されるように、各延出部51の前後方向外側の部分は、各ガイド板33に設けられたガイド穴34に挿通されている。これにより、第1の位置(
図4の実線参照)と第2の位置(
図4の二点鎖線参照)との間で回転可能となるように移動部材28が各ガイド板33に支持されている。
【0053】
各遮断部材29(
図6等参照)は、湾曲部53と、湾曲部53の左右両端部から下側(加圧ローラー23側)に向かって屈曲される固定部54と、を備えている。
【0054】
図3に示されるように、各遮断部材29の湾曲部53は、定着ベルト22の非通紙領域42の内周面に沿って円弧状に湾曲している。湾曲部53は、定着ベルト22の非通紙領域42の内周面と間隔を介して設けられている。湾曲部53の前後方向の位置は、移動部材28の本体部50の前後方向の位置とは重なっていない(
図5参照)。
【0055】
図3に示されるように、各遮断部材29の各固定部54の下端部は、支持部材27の左右両側面に当接している。各固定部54の下端部には固定穴55が設けられており、この固定穴55を貫通する固定ビス56によって各固定部54が支持部材27の左右両側部に固定されている。
【0056】
各コイルバネ30(
図4等参照)は、各ガイド板33の前後方向外側に配置されている。各コイルバネ30の下端部は、各ガイド板33の係合突起35に係合している。各コイルバネ30の上端部は、移動部材28の各延出部51の前後方向外側の端部に係合している。各コイルバネ30は、移動部材28の各延出部51を左上方に押し上げることで移動部材28を第1の位置に付勢している。
【0057】
上記のように構成された定着装置18において、用紙にトナー像を定着させる際には、駆動源44によって加圧ローラー23を回転させる(
図7の矢印B参照)。このように加圧ローラー23が回転すると、加圧ローラー23に圧接する定着ベルト22が加圧ローラー23とは逆方向に従動回転する(
図7の矢印C参照)。このように定着ベルト22が回転すると、定着ベルト22が押圧部材26に対して摺動する。
【0058】
また、用紙にトナー像を定着させる際には、ヒーター24を稼働させる。このようにヒーター24が稼働すると、ヒーター24から放射される輻射熱によって定着ベルト22が加熱される。この状態で用紙が定着ニップ43を通過すると、用紙及びトナー像が加熱及び加圧されて、用紙にトナー像が定着される。
【0059】
ところで、上記のように構成された定着装置18においては、定着ベルト22の回転が停止した際に、定着ベルト22のうちのヒーター24に最も接近する部分がヒーター24によって加熱され、定着ベルト22がオーバーシュート(過昇温)する恐れがある。特に、JAM(紙詰まり)の発生などによって定着ベルト22の回転が緊急停止した際には、定着ベルト22がオーバーシュートしやすい。そこで、本実施形態では以下のようにして定着ベルト22のオーバーシュートを抑制している。
【0060】
図2に示されるように、用紙にトナー像を定着させる動作が行われていない時(非通紙時)には、定着ベルト22の回転が停止しており、各コイルバネ30の付勢力によって移動部材28が第1の位置に保持されている。また、移動部材28が第1の位置にあることを第1検知部36が検知しており、移動部材28が第2の位置にあることを第2検知部37が検知していない。これに伴って、ヒーター24からの輻射熱の放射が停止されている。
【0061】
これに対して、用紙にトナー像を定着させる動作が行われる時(通紙時)には、
図7に示されるように、定着ベルト22が回転し、定着ベルト22の内周面と移動部材28の外周面の間に働く摩擦力によって、移動部材28が各コイルバネ30の付勢力に抗して第1の位置から第2の位置まで回転する。そのため、移動部材28が第1の位置にあることを第1検知部36が検知しなくなり、移動部材28が第2の位置にあることを第2検知部37が検知する。これに伴って、ヒーター24への通電が開始され、ヒーター24から輻射熱が放射される。
【0062】
上記のように移動部材28が第2の位置にある状態では、ヒーター24から定着ベルト22の通紙領域41の上端部41a(通紙領域41のうちのヒーター24に最も接近する部分)に向かう輻射熱は、
図7に矢印Dで示されるように、移動部材28の本体部50に遮断されずに定着ベルト22の通紙領域41の上端部41aに到達し、吸収される。
【0063】
一方で、定着ベルト22の回転が停止すると、
図2に示されるように、各コイルバネ30の付勢力によって移動部材28が第2の位置から第1の位置まで回転する。このように移動部材28が第1の位置にある状態では、ヒーター24から定着ベルト22の通紙領域41の上端部41a(通紙領域41のうちのヒーター24に最も接近する部分)に向かう輻射熱は、
図2に矢印Eで示されるように、移動部材28の本体部50によって遮断され、定着ベルト22の通紙領域41の上端部41aには到達しない。
【0064】
また、上記のように移動部材28が第2の位置から第1の位置まで回転すると、移動部材28が第2の位置にあることを第2検知部37が検知しなくなり、移動部材28が第1の位置にあることを第1検知部36が検知する。これに伴って、ヒーター24への通電が停止され、ヒーター24からの輻射熱の放射も停止される。
【0065】
本実施形態では上記のように、定着ベルト22の回転時には定着ベルト22の通紙領域41の上端部41aをヒーター24によって加熱することができるため、定着ベルト22を迅速に昇温させることが可能となる。一方で、定着ベルト22の回転が停止した際には、定着ベルト22の通紙領域41の上端部41aがヒーター24によって加熱されるのを防止することが可能となるため、定着ベルト22の通紙領域41のオーバーシュートを効果的に抑制することが可能となる。
【0066】
また、定着ベルト22の内周面と移動部材28の外周面の間に働く摩擦力及び各コイルバネ30の付勢力によって移動部材28を第1の位置と第2の位置の間で回転させている。そのため、モーターなどの駆動源を用いて移動部材28を回転させる場合と比較して、定着装置18の構成を簡易なものとすることが可能となる。
【0067】
また、定着ベルト22の回転時及び非回転時において、ヒーター24から定着ベルト22の非通紙領域42に向かう輻射熱は、
図3に矢印Fで示されるように、各遮断部材29によって遮断される。このような構成を採用することで、定着ベルト22の回転時に定着ベルト22の非通紙領域42がヒーター24によって加熱されるのを抑制することが可能となる。これに伴って、定着ベルト22の非通紙領域42のオーバーシュートを抑制することができる。また、定着ベルト22の回転が停止した際には、定着ベルト22の通紙領域41がオーバーシュートするのを移動部材28によって抑制すると共に、定着ベルト22の非通紙領域42がオーバーシュートするのを遮断部材29によって抑制することが可能となる。そのため、前後方向の全域に亘って、定着ベルト22のオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0068】
また、定着装置18は、定着ベルト22を下側(加圧ローラー23側)に向かって押圧する押圧部材26と、押圧部材26を支持する支持部材27と、を備え、各遮断部材29は、支持部材27に固定されている。このような構成を採用することで、定着装置18の熱容量を小さくすることが可能になると共に、簡易な構成を用いて各遮断部材29を固定することが可能となる。
【0069】
また、各遮断部材29の湾曲部53は、定着ベルト22の非通紙領域42の内周面と間隔を介して設けられている。このような構成を採用することで、定着ベルト22の熱が各遮断部材29に逃げるのを抑制することが可能となり、ヒーター24によって定着ベルト22を効率的に加熱することが可能となる。
【0070】
また、定着装置18は、移動部材28が第1の位置にあることを検知可能な第1検知部36を備えており、移動部材28が第1の位置にあることを第1検知部36が検知している時には、ヒーター24からの輻射熱の放射が停止されるようになっている。このような構成を採用することで、回転停止状態の定着ベルト22がヒーター24によって加熱されるのを確実に抑制することが可能となる。また、複雑な回路などを用いることなく定着ベルト22が回転しているか否かを検知することができるため、定着装置18の構成を簡易なものとすることが可能となる。
【0071】
また、定着装置18は、移動部材28が第2の位置にあることを検知可能な第2検知部37を更に備えている。そのため、定着ベルト22が回転しているか否かを一層正確に検知することが可能となる。
【0072】
また、ヒーター24は、定着ベルト22の内径側に配置され、移動部材28は、定着ベルト22の内周面に接触し、第1の位置と第2の位置の間で回転可能に設けられている。このような構成を採用することで、定着ベルト22の内径側の空間をヒーター24及び移動部材28の設置スペースとして有効に利用することが可能となる。
【0073】
また、各ガイド板33には円弧状に湾曲するガイド穴34が設けられ、このガイド穴34に移動部材28の各延出部51が挿通されている。このような構成を採用することで、簡易な構成を用いて移動部材28を回転させることが可能となる。
【0074】
本実施形態では、各遮断部材29の湾曲部53の前後方向の位置と移動部材28の本体部50の前後方向の位置が重ならない場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、各遮断部材29の湾曲部53の前後方向の位置と移動部材28の本体部50の前後方向の位置が部分的に重なっていても良い。このような構成を採用することで、各遮断部材29によって移動部材28をガイドすることが可能となり、移動部材28の回転軌道を安定させることが可能となる。
【0075】
また、他の異なる実施形態においては、移動部材28の各延出部51が各遮断部材29の湾曲部53によってガイドされていても良い。このような構成を採用する場合にも、移動部材28の回転軌道を安定させることが可能となる。
【0076】
本実施形態では、第1検知部36と第2検知部37を定着装置18が備えている場合について説明したが、他の異なる実施形態では、第1検知部36と第2検知部37のいずれか一方のみを定着装置18が備えていても良い。
【0077】
本実施形態では、各遮断部材29の湾曲部53が定着ベルト22の非通紙領域42の内周面と間隔を介して設けられている場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、各遮断部材29の湾曲部53が定着ベルト22の非通紙領域42の内周面と接触していても良い。
【0078】
本実施形態では、ヒーター24が定着ベルト22の内径側に配置されると共に、移動部材28が定着ベルト22の内周面に接触する場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、ヒーター24等の熱源が定着ベルト22の外径側に配置されると共に、移動部材28が定着ベルト22の外周面に接触していても良い。
【0079】
本実施形態では、ハロゲンヒーターをヒーター24として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、セラミックヒーターなどをヒーター24として用いても良い。
【0080】
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。