(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連通孔を有する縦区画部により、インフレータから膨張用ガスが供給される上流側膨張室と、同上流側膨張室の前側に隣接し、かつ前記連通孔を経由した膨張用ガスが供給される下流側膨張室とに少なくとも区画されたエアバッグを用い、このエアバッグを折り畳むことにより収納用形態にして、乗物用シートに着座した乗員の側方近傍の収納部に収納し、前記乗物用シートの側方から加わる衝撃に応じて供給される膨張用ガスにより前記エアバッグを、前記乗員の側方で前方へ向けて展開及び膨張させるようにしたサイドエアバッグ装置であって、
前記収納用形態のエアバッグは、非膨張展開状態のエアバッグに対し、上部及び下部の少なくとも一方を、前後方向に対し傾斜する折り線に沿って乗員から遠ざかる側へ折り返す第1の折りと、前記第1の折りの後に、前方から後方へ向けて折り畳む第2の折りとが行なわれるとともに、前記第2の折りを経た中間形態のエアバッグの上部及び下部のうち前記第1の折りが行なわれた方を、前記乗員から遠ざかる側へ折り返す第3の折りが行なわれることにより形成されており、
前記下流側膨張室の前端部には、同下流側膨張室内の膨張用ガスを排出するための排気孔が設けられており、
前記エアバッグにおいて前記第1の折りにより折り返される部分は、前記排気孔を含んでいるサイドエアバッグ装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第1実施形態について、
図1〜
図19を参照して説明する。
【0028】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)についての中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とするものとする。
【0029】
また、車両用シートには、乗員として、標準的な体格を有する大人が適正な姿勢で着座しているものとする。
図1及び
図2に示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側の近傍には、乗物用シートとして車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部(車両用シート12の側方部)に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
【0030】
車両用シート12は、シートクッション13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)により傾斜角度を調整されるシートバック14とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が前方を向く姿勢で車両10に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
【0031】
次に、シートバック14における車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、
図3に示すように、シートバック14内の車外側部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部17」という)は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。サイドフレーム部17を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド18が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード19が配置されている。なお、シートパッド18は表皮によって被覆されているが、
図3ではその表皮の図示が省略されている。後述する
図19についても同様である。
【0032】
シートパッド18内において、サイドフレーム部17の車外側近傍には収納部21が設けられている。収納部21の位置は、シートバック14の上下方向についての中間部分であって、車両用シート12に着座した乗員Pに対し、車外側の斜め後方近傍となる(
図2参照)。この収納部21には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。
【0033】
シートパッド18内において、収納部21の車外側かつ前側の角部からは、車外側の斜め前方に向けてスリット22が延びている。シートパッド18の前側の角部18cとスリット22とによって挟まれた箇所(
図3において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ30によって破断される破断予定部23を構成している。
【0034】
エアバッグモジュールAMは、インフレータアセンブリ25及びエアバッグ30を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<インフレータアセンブリ25>
図3及び
図5に示すように、インフレータアセンブリ25は、ガス発生器としてのインフレータ26と、そのインフレータ26を覆うリテーナ27とを備えている。第1実施形態では、インフレータ26として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ26は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ26の下端部にはガス噴出部(図示略)が設けられ、上端部には、インフレータ26への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0035】
なお、インフレータ26としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
【0036】
一方、リテーナ27は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ26をエアバッグ30と一緒にサイドフレーム部17に締結する機能を有する部材である。リテーナ27の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって、略上下方向へ延びる略筒状に形成されている。第1実施形態のリテーナ27は、インフレータ26から噴出された膨張用ガスが、後述する第1膨張室41よりも第3膨張室43へ多く供給される形状に形成されている。
【0037】
リテーナ27には、これをサイドフレーム部17に取付けるための係止部材として、車内側へ延びる複数本のボルト28が固定されている。なお、インフレータアセンブリ25は、インフレータ26とリテーナ27とが一体になったものであってもよい。
【0038】
図1及び
図2に示すように、エアバッグ30の外殻部分はエアバッグ本体31によって構成されている。
<エアバッグ本体31>
図4は、エアバッグ本体31が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)のエアバッグモジュールAMを示している。また、
図5は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、
図4のエアバッグ30が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを乗員Pとともに示している。
【0039】
図4〜
図6に示すように、エアバッグ本体31は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、折り線32に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ本体31の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを本体布部33といい、車外側に位置するものを本体布部34というものとする。
【0040】
なお、第1実施形態では、折り線32がエアバッグ本体31の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線32がエアバッグ本体31の他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ本体31は折り線32に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ本体31は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片の周縁部を結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ本体31は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
【0041】
両本体布部33,34としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
【0042】
両本体布部33,34の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部35においてなされている。第1実施形態では、周縁結合部35は両本体布部33,34の周縁部のうち、後端部(折り線32の近傍部分)等を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。このように、結合が縫製による点は、後述する側縁結合部48,49,53,64,65,66、結合部54、囲み結合部72,73についても同様である。
【0043】
上記縫製に関し、
図4、
図5、
図7、
図11、
図12及び
図18では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。第2実施形態の説明に用いられる
図20及び
図21についても同様である。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、縫合部分を側方から見た状態を示している(
図4における周縁結合部35等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、例えば車外側の本体布部34の奥に位置していて直接は見えない縫糸の状態を示している(
図4における側縁結合部49等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線(破線の一種)であり、これは、例えば縫合の対象となる本体布部33,34間や、構成布部46,47間における縫糸の状態を示している(
図5における周縁結合部35等参照)。すなわち、縫製が3番目の線種で表現されている図は、縫製部分を通る断面に沿った断面構造を示している。
【0044】
図4〜
図6に示すように、両本体布部33,34間であって、周縁結合部35によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって乗員Pの上半身の多くの部分(腰部PPから肩部PSにかけての部位)の側方で展開及び膨張することにより、同部分を拘束して衝撃から保護するための膨張部36となっている。
【0045】
なお、周縁結合部35は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する側縁結合部48,49,53,64,65,66、結合部54、囲み結合部72,73についても同様である。
【0046】
二つ折りされたエアバッグ本体31の後端部であって上下方向についての中間部分には、折り線32に直交する方向へ延びるスリット37が形成されている。両本体布部33,34においてスリット37よりも上側部分は、エアバッグ本体31の他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられた内折り部39となっている。内折り部39の上端部は、周縁結合部35の上部によって両本体布部33,34の他の部分に結合(共縫い)されている。また、内折り部39の形成に伴い、スリット37が開かれて、インフレータアセンブリ25の挿入口38が形成されている。
【0047】
膨張部36内には、横区画部44及び縦区画部61が設けられている。これらの横区画部44及び縦区画部61は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。
<横区画部44>
横区画部44は、膨張部36を上下2つの空間に区画するためのものであり、エアバッグ本体31と同様の素材からなる1枚の布片を、上下方向に延びる折り線45に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を両本体布部33,34の下部間に架け渡すことにより形成されている。なお、横区画部44は、折り線45に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。横区画部44の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置する部分を構成布部46といい、車外側に位置するものを構成布部47というものとする。
【0048】
図6及び
図10(a)に示すように、二つ折りされた横区画部44における各構成布部46,47は、自身の後部に、略下方へ延びる延出部46a,47aを有している。そして、二つ折りされた横区画部44は、折り線45を折り線32に合致させた状態で両本体布部33,34間に配置されている。二つ折りされた横区画部44の各構成布部46,47は、自身の上側の側縁部に沿って設けられた側縁結合部48によって本体布部33,34に結合されている。両構成布部46,47は、それらの下側の側縁部に沿って設けられた側縁結合部49によって相互に結合されている。さらに、二つ折りされた横区画部44の両構成布部46,47の前端部は、周縁結合部35によって両本体布部33,34の前端部に結合(共縫い)されている。
【0049】
膨張部36において横区画部44よりも下側の空間は、乗員Pの上半身のうち、腰部PPの側方で展開及び膨張する第3膨張室43となっている。
<縦区画部61>
図4〜
図6に示すように、縦区画部61は、膨張部36において横区画部44よりも上側の空間を前後2つの空間に区画するためのものであり、エアバッグ本体31と同様の素材からなり、かつ上下方向に細長い一対の布片62,63を備えている。両布片62,63は、上下方向に延びる一方の側縁部に沿って設けられた側縁結合部64によって相互に結合されている。なお、縦区画部61は、1枚の布片を、上下方向に延びる折り線に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせたものであってもよい。
【0050】
各布片62,63の上端部は、上述した周縁結合部35によって両本体布部33,34の上端部に結合(共縫い)されている。各布片62,63の下部は、横区画部44の両構成布部46,47上に重ねられている。各布片62,63の下端部は、上述した側縁結合部49によって両構成布部46,47に結合(共縫い)されている。
【0051】
各布片62,63は、両構成布部46,47に重ならない箇所では、上下方向に延びる他方の側縁部に沿って設けられた側縁結合部65によって本体布部33,34に結合されている(
図8参照)。また、各布片62,63は、両構成布部46,47に重なる箇所では、上記側縁部に沿って上記側縁結合部65の下側に設けられた側縁結合部66によって、構成布部46,47にのみ結合されている(
図9参照)。
【0052】
膨張部36において縦区画部61よりも後側の空間は、乗員Pの上半身のうち、肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する第1膨張室41となっている。また、膨張部36において縦区画部61よりも前側の空間は、乗員Pの上半身のうち、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する第2膨張室42となっている。第1膨張室41及び第2膨張室42は、縦区画部61を介して互いに前後に隣接している。第1膨張室41は、膨張部36の横区画部44よりも上側の空間のうち、インフレータ26に近い側に位置する上流側膨張室に該当し、第2膨張室42は、インフレータ26から遠い側に位置する下流側膨張室に該当する。
【0053】
上記横区画部44には開口部51及び逆止弁52が設けられ、上記縦区画部61には連通孔67が設けられている。
<開口部51及び逆止弁52>
開口部51は、第1膨張室41と第3膨張室43とを連通させるためのものである。二つ折りされた横区画部44における側縁結合部49は、各構成布部46,47の後部において結合を解除されている。表現を変えると、折り線45を跨ぐ部分では、両構成布部46,47を結合させる側縁結合部49が設けられていない。このように、側縁結合部49が設けられていない部分である、結合を解除された箇所によって開口部51が構成されている。
【0054】
逆止弁52は、開口部51での膨張用ガスの流通を制御する弁であり、第1膨張室41から第3膨張室43への膨張用ガスの流通(流入)を許容するが、その逆の流通(流出)を規制する。
【0055】
二つ折りされた横区画部44における両延出部46a,47aの前側の側縁部は、それらの側縁部に沿って設けられた側縁結合部53によって相互に結合されている。側縁結合部53は、前側ほど低くなるように傾斜しており、その上端部は、側縁結合部49の後端部に繋がっている。
【0056】
二つ折りされた横区画部44における両延出部46a,47aの後部は、開口部51から前下方へ傾斜した状態で延びる結合部54によって相互に結合されている。さらに、二つ折りされた両延出部46a,47aにおいて結合部54よりも後側部分は、上述した周縁結合部35によって両本体布部33,34の後下端部に結合(共縫い)されている。
【0057】
車内側の延出部46aにおいて、開口部51と側縁結合部53と結合部54とによって囲まれた箇所は、逆止弁52の車内側の弁体部55を構成している。また、車外側の延出部47aにおいて、開口部51と側縁結合部53と結合部54とによって囲まれた箇所は、逆止弁52の車外側の弁体部56を構成している。
【0058】
そして、逆止弁52は、両弁体部55,56の一方が他方から離間することで膨張用ガスの流通を許容する。このときの逆止弁52の動作態様を「開弁」という。また、逆止弁52は、両弁体部55,56が、それらの少なくとも一部において互いに接触することで、膨張用ガスの流通を規制する。このときの逆止弁52の動作態様を「閉弁」という。
【0059】
<連通孔67>
連通孔67は、第1膨張室41と第2膨張室42とを連通させるためのものである。第1実施形態では、連通孔67として丸孔が布片62,63毎に1つずつあけられている。
【0060】
なお、連通孔67は布片62,63毎に複数ずつ設けられてもよい。また、連通孔67は両布片62,63の片方にのみ設けられてもよい。また、縦区画部61が1枚の布片を折り線に沿って二つ折りしたものである場合には、連通孔67は、縦区画部61の折り線上に設けられてもよい。この場合、連通孔67は、1箇所にのみ設けられてもよいし、複数箇所に設けられてもよい。
【0061】
さらに、エアバッグ本体31には、膨張用ガスを排出するための排気孔(ベントホールとも呼ばれる)71が設けられている。
<排気孔71>
排気孔71は、第2膨張室42の前端部、及び第3膨張室43の前下部にそれぞれ設けられている。各排気孔71を形成するための構成は共通している。そのため、以下では、第2膨張室42の排気孔71を形成するための構成について説明し、第3膨張室43の排気孔71を形成するための構成については説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、周縁結合部35には、その一部の領域において結合を解除されることにより、互いに離間した一対の端末部35a,35bが形成されている。エアバッグ本体31には、端末部35aを囲んだ状態で両本体布部33,34を結合する囲み結合部72が設けられるとともに、端末部35bを囲んだ状態で両本体布部33,34を結合する囲み結合部73が設けられている。両本体布部33,34間であって両囲み結合部72,73によって挟まれた箇所は、両本体布部33,34の周縁部同士を結合する機能を有していない。この箇所は、第2膨張室42の内部と外部とを連通させて、その第2膨張室42内の膨張用ガスを外部へ排出させるための排気孔71となっている。
【0063】
ところで、
図3に示すように、エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ30(
図4、
図5参照)が折り畳まれることにより、
図16及び
図17に示すコンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部21に対し、収納に適したものとするためである。この収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ30に対し、第1の折り、第2の折り及び第3の折りが順に行なわれることにより得られる。次に、各折りについて説明する。
【0064】
<第1の折り>
第1の折りは、
図4に示す非膨張展開状態のエアバッグ30のうち、インフレータアセンブリ25を囲む箇所を除く部分の上部に対し行なわれる折り返しの態様であり、第1膨張室41及び第2膨張室42の両方が対象とされる。この第1の折りの実施に際しては、
図4において一点鎖線で示すように、非膨張展開状態のエアバッグ30の上部に、前後方向に対し傾斜する直線状の折り線75が設定される。第1実施形態では、折り線75は、第1膨張室41及び第2膨張室42の両方に跨っており、前側ほど低くなるように傾斜している。折り線75は、上側の排気孔71よりも若干下方の箇所と、縦区画部61における側縁結合部64の上端よりも若干後方の箇所とを通過している。そして、この折り線75よりも前上側の部分76が、同
図4中、二点鎖線の矢印で示すように、折り線75に沿って車外側の下方、すなわち、乗員Pから遠ざかる側へ折り返される。従って、エアバッグ本体31において第1の折りにより折り返される部分76は、上側の排気孔71を含んでいる。また、部分76は、第1膨張室41及び第2膨張室42の各一部を含んでいる。そのため、第1の折りが行なわれることにより、
図11(a),(b)に示すように、部分76の一部は、第1の折りの対象となっていない箇所のうち、第1膨張室41の上部に重なる。
【0065】
<第2の折り>
第2の折りは、第1の折りが行なわれたエアバッグ30を対象とし、前方から後方へ向けて折り畳む折り態様である。この第2の折りは、エアバッグ30のうちインフレータアセンブリ25を囲んでいる部分に近い箇所であるバッグ後部30rを対象として行なわれる蛇腹折りと、バッグ後部30rの前側に隣接するバッグ前部30fを対象として行なわれるロール折りとからなる。バッグ後部30rには第1膨張室41の一部が含まれ、バッグ前部30fには第2膨張室42の多くの部分が含まれる。
【0066】
蛇腹折りに際しては、バッグ後部30rに対し、
図11(a)に示すように、互いに平行な状態で上下方向に延びる複数本の折り線77が設定される。隣り合う折り線77の間隔は、蛇腹折りにおける折り幅となる。そして、
図12(a),(b)に示すように、第1膨張室41の一部及び第3膨張室43の一部が、これらの折り線77に沿って蛇腹状に折り畳まれる。より詳しくは、バッグ後部30rは、前方から後方に向けて、一定幅ずつ交互に、折り返す方向を変えながら折り畳まれる。なお、上記蛇腹折りの対象には、折り線75に沿って折り返された部分76の一部も含まれる。
【0067】
ロール折りに際しては、バッグ前部30fに対し、
図12(a)に示すように、互いに平行な状態で上下方向に延びる複数本の折り線78が設定される。バッグ前部30fが前方から後方に向けて、折り線78に沿って順に渦巻き状に折り畳まれる。表現を変えると、上記バッグ前部30fは同一方向に繰り返し折り畳まれる。
【0068】
その結果、
図13(a),(b)に示すように、蛇腹折りによって折り畳まれたバッグ後部30rがインフレータアセンブリ25の前方に配置され、ロール折りによって折り畳まれたバッグ前部30fが、バッグ後部30rの前方に配置される。
【0069】
また、第1実施形態では、バッグ前部30fが、車外側の面を渦の内側に巻き込むように同一方向に向けて繰り返し折り畳まれる。この折り畳みにより、バッグ後部30rとバッグ前部30fとの境界部分は、車外側(
図13(b)では上側)の箇所に位置する。また、バッグ後部30rにおいて蛇腹折りされた部分の非折り畳み部分(インフレータアセンブリ25を囲んでいる部分)との境界部分は、車外側の箇所に位置する。この場合には、ロール状に折り畳まれているバッグ前部30fの折りの解消がボディサイド部11に向かってなされる。そのため、バッグ前部30fをボディサイド部11に沿って展開させやすくする効果が期待できる。
【0070】
なお、上記蛇腹折り及びロール折りの実施順は特に限定されず、例えば、同時又は略同時に実施されてもよい。そして、上記第2の折り(蛇腹折り、ロール折り)を経たエアバッグ30は、
図13(a),(b)に示すように、前後方向に寸法が小さく、上下方向に細長い中間形態となる。
【0071】
<第3の折り>
第3の折りは、上記中間形態のエアバッグ30の上部及び下部のうち、第1の折りが行なわれた方(第1実施形態では上部)を、乗員Pから遠ざかる側へ折り返す折り態様である。より詳しくは、中間形態のエアバッグ30のインフレータアセンブリ25よりも上側において、
図15に示すように、車幅方向に延びる折り線79が設定される。そして、中間形態のエアバッグ30の折り線79よりも上側部分30uが、同
図15において矢印で示すように、折り線79を支点として後側(後下方)へ折り返される。
【0072】
なお、中間形態のエアバッグ30の下部については、上記第3の折りの対象とされていない。詳しくは、
図13(a)に示すように、中間形態のエアバッグ30においてインフレータアセンブリ25よりも下側に、車幅方向に延びる折り線81が設定される。中間形態のエアバッグ30において折り線81よりも下側部分30lが、同
図13(a)において矢印で示すように、折り線81を支点として前側(前上方)へ折り返される。さらに、折り返された下側部分30lに、
図14に示すように、車幅方向に延びる折り線82が設定され、この折り線82よりも上側部分が、同
図14において矢印で示すように、同折り線82を支点として前側(前下方)へ折り返される。これらの2度にわたる折り返しにより、
図15に示すように、エアバッグ30の上下方向の寸法が小さくなる。
【0073】
中間形態のエアバッグ30の上部及び下部に対する上記折り返しによりエアバッグ30は、
図16に示すように、前後方向にも上下方向にも寸法が小さく、狭い収納部21に対しても収納に適した収納用形態となる。
【0074】
なお、中間形態の下部の折り返しについては、上部の折り返しと略同時に行なわれてもよいし、上部の折り返しの後に行なわれてもよい。
その後、上記エアバッグモジュールAMは、結束テープ(図示略)等の保持手段によって収納用形態に保持される。
【0075】
収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、
図3に示すように、インフレータアセンブリ25を後側に位置させ、かつ蛇腹折りされたバッグ後部30rと、ロール折りされたバッグ前部30fとを前側に位置させた状態で、収納部21に配設されている。そして、上述したように、リテーナ27から延びてエアバッグ30に挿通されたボルト28がサイドフレーム部17に挿通され、ナット29によって締付けられている。この締付けにより、インフレータアセンブリ25がエアバッグ30と一緒にサイドフレーム部17に固定されている。
【0076】
なお、インフレータアセンブリ25は、上述したボルト28及びナット29とは異なる部材によってサイドフレーム部17に固定されてもよい。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに衝撃センサ85及び制御装置86を備えている。衝撃センサ85は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11等に取付けられており、同ボディサイド部11に側方から加わる衝撃を検出する。制御装置86は、衝撃センサ85からの検出信号に基づきインフレータ26の作動を制御する。
【0077】
さらに、車両10には、車両用シート12に着座した乗員Pを拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、
図1等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
【0078】
次に、上記のようにして構成された第1実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
図1及び
図2に示すように、ボディサイド部11に対し側方から衝撃が加わったことが衝撃センサ85によって検出されないときには、制御装置86からインフレータ26に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、インフレータ26から膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ30は、収納用形態でインフレータアセンブリ25とともに収納部21に収納され続ける(
図3参照)。
【0079】
これに対し、車両10の走行中等に、側突等によりボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ85によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置86からインフレータ26に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ26は膨張用ガスをガス噴出部から噴出する。
【0080】
この膨張用ガスの一部が、収納用形態のエアバッグ30の第1膨張室41に供給され、同第1膨張室41が膨張を開始する。また、第1膨張室41に供給されるよりも多くの膨張用ガスが逆止弁52へ向けて流れる。膨張用ガスが逆止弁52に供給されている期間には、両弁体部55,56には、これらを筒状にさせようとする力が発生する。そのため、膨張用ガスが開口部51と両弁体部55,56間とを順に通って、第3膨張室43へ流入し、同第3膨張室43が膨張を開始する。インフレータ26からの膨張用ガスの供給が続くことで、第1膨張室41及び第3膨張室43の各内圧が上昇していく。ただし、第3膨張室43には第1膨張室41よりも多くの膨張用ガスが供給されることから、同第3膨張室43の内圧が第1膨張室41の内圧よりも高くなる。第1膨張室41及び第3膨張室43が膨張することで、縦区画部61及び横区画部44がそれぞれ車幅方向の両側へ引っ張られる。
【0081】
第1膨張室41の膨張が進むにつれて、同第1膨張室41内の膨張用ガスが連通孔67を通じて第2膨張室42へ流出し、第1膨張室41に遅れて第2膨張室42が膨張を開始する。
【0082】
これらの第3膨張室43、第1膨張室41及び第2膨張室42の各膨張は、折り畳まれた順とは逆の順に、すなわち、第3の折り、第2の折り及び第1の折りの順に、折り状態の解消を伴いながらなされる。これは、エアバッグ30において後から折り畳まれた部分が、先に折り畳まれた部分の折り状態の解消を規制するからである。このように展開及び膨張するエアバッグ30によってシートバック14のシートパッド18が押圧され、破断予定部23(
図3参照)において破断される。
図19に示すように、エアバッグ30は、その一部を収納部21に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から、前方へ飛び出す。
【0083】
その後も膨張用ガスが供給されるエアバッグ30は、
図2において二点鎖線で示すように、ボディサイド部11と、車両用シート12に着座している乗員Pの上半身との間で前方へ向けて折り状態を解消しながら展開する。
図5に示すように、内圧が最も高くなった第3膨張室43は、乗員側部のうち耐衝撃性の最も高い部位である腰部PPの側方で展開及び膨張する。第3膨張室43に次いで内圧の高くなった第1膨張室41は、胸部PTの前半部よりも耐衝撃性の高い肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する。第1膨張室41よりも内圧の低い第2膨張室42は、肩部PSや胸部PTの後半部よりも耐衝撃性の低い胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する。
【0084】
なお、
図19に示すように、車幅方向の両側へ引っ張られた縦区画部61は緊張した状態となる。この緊張状態の縦区画部61により、第1膨張室41及び第2膨張室42の車幅方向の膨張厚みが規制される。また、
図10(b)に示すように、車幅方向の両側へ引っ張られた横区画部44は緊張した状態となる。この緊張状態の横区画部44により、第3膨張室43、第1膨張室41及び第2膨張室42の車幅方向の膨張厚みが規制される。
【0085】
このように、第3膨張室43、第1膨張室41及び第2膨張室42がそれぞれ展開及び膨張したエアバッグ30が、乗員Pの上半身と、車内側へ進入してくるボディサイド部11との間に介在する。このエアバッグ30によって上半身が車内側へ押圧されて拘束される。そして、ボディサイド部11を通じて上半身に伝わる側方からの衝撃が、エアバッグ30によって緩和されて、同上半身が保護される。
【0086】
また、第2膨張室42が第1膨張室41よりも遅れて膨張を開始することから、第2膨張室42が第1膨張室41と略同時に膨張を開始するものに比べ、エアバッグ30全体の展開の勢いが弱められる。従って、たとえエアバッグ30の前方に障害物O(
図17の二点鎖線参照)があったとしても、その障害物Oがエアバッグ30の展開に伴い強く押圧される現象が抑制される。
【0087】
インフレータ26からの膨張用ガスの噴出が停止し、第3膨張室43内の膨張用ガスが、第1膨張室41側へ流れようとすると、逆止弁52の両弁体部55,56が、第3膨張室43内の高い圧力を受けて押圧され、互いに接触する。逆止弁52が閉弁された状態となり、第3膨張室43の膨張用ガスが、両弁体部55,56間及び開口部51を順に通って第1膨張室41へ流出(逆流)することを規制される。従って、乗員Pの腰部PPを保護するのに適切な内圧にまで高められた第3膨張室43の内圧が逆流により低下することが抑制される。
【0088】
エアバッグ30による乗員Pの上記拘束時には、両本体布部33,34において各排気孔71の周りの部分が筒状に変形し、各排気孔71が開いた状態となる。第2膨張室42内の余剰の膨張用ガスは、上側の排気孔71を通じてエアバッグ30の前方へ排出される。また、第3膨張室43内の余剰の膨張用ガスは、下側の排気孔71を通じてエアバッグ30の前下方へ排出される。これらの排出により、乗員Pのエアバッグ30による拘束時には、第2膨張室42及び第3膨張室43の内圧がそれぞれ低下し、乗員Pが適切な押圧力で押圧される。
【0089】
エアバッグ30による乗員Pの拘束及び保護と、障害物Oの基本的な押圧抑制とは上記のようにして行なわれる。第1実施形態では、さらに、エアバッグ30の折り態様について工夫がなされていることから、特徴的な折りの解消が行なわれる。それに伴い、障害物Oの押圧抑制の促進をはじめとして、以下に記載する種々の作用がなされる。
【0090】
まず、第3の折りの解消に際しては、
図17に示すように、収納用形態のエアバッグ30において、折り線79に沿って後側(後下方)へ折り返された上側部分30uが、同
図17において二点鎖線の矢印で示すように、折り線79を支点として後側(後上方)へ回動する。この回動の方向は、エアバッグ30の前方の障害物Oから遠ざかる方向である。そのため、この点においても、障害物Oが、エアバッグ30の第3の折りの解消に伴い強く押圧される現象が抑制される。
【0091】
また、乗員Pの肩部PSとボディサイド部11との隙間は狭いが、上記上側部分30uの回動はこの隙間へ向けて行なわれるのではなく、同隙間よりも後側の広い領域へ向けて行なわれる(
図2参照)。そのため、上側部分30uの折り線79を支点とした後側(後上方)への回動に際しては、同上側部分30uは乗員Pの肩部PSやボディサイド部11と干渉しにくく、第3の折りがスムーズに解消される。
【0092】
また、前方から後方へ向けて折り畳む第2の折りとして、バッグ後部30rについては、折りが解消されやすく展開しやすい蛇腹折りが行なわれている。そのため、より早く展開及び膨張させることが望まれるバッグ後部30rは、速やかに前方へ展開及び膨張する。また、ロール折りされているバッグ前部30fは、蛇腹折りに比べると折りが解消されにくいものの、展開経路上にあるものによって展開を阻害されにくい。
【0093】
上記第2の折りの解消に際しては、
図18に示すように、第1の折りにより折り返された部分76が、第2の折りの解消の抵抗となり、後方から前方へ向かうエアバッグ30の展開及び膨張を抑制する。この抑制により、上記後方から前方へ向かう展開及び膨張の速度が、第1の折りが行なわれることなく第2の折りが行なわれた場合よりも低下する。そのため、この点においても、エアバッグ30の前方の障害物Oが、エアバッグ30の第2の折りの解消に伴い強く押圧される現象が抑制される。
【0094】
また、第2の折りの解消途中であって、第1の折りが解消される前には、膨張用ガスは、第1の折りにより折り返された部分76に流入しにくく、排気孔71から排出されにくい。そのため、第1膨張室41において第1の折りの対象となっていない箇所は、膨張用ガスにより効率よく展開及び膨張し、乗員Pの肩部PSや胸部PTの後半部を的確に拘束する。
【0095】
折り線75に沿って第1の折りにより折り返された部分76の一部は、第1の折りの対象となっていない箇所の一部(第1膨張室41の一部を含む)に重なっている。一方、第1膨張室41及び第2膨張室42において第1の折りの対象となっていない箇所は、上記部分76よりも早く膨張用ガスが供給されて展開及び膨張を開始する。上記部分76に膨張用ガスが供給される前に、第1の折りの対象となっていない箇所が膨張する。そのため、第1の折りの折り状態の解消に際しては、上記部分76が、第1膨張室41のうち第1の折りの対象となっておらず膨張する箇所(特に、より早い時期から膨張を開始する第1膨張室41)によって押されながら、折り状態を解消する。この押圧力が加わる分、第1の折りの解消が促進される。
【0096】
そして、第1の折りの解消開始を契機として、部分76に膨張用ガスが流入し、同部分76に位置する上側の排気孔71から膨張用ガスが排出される。この排出により、第2膨張室42の内圧が低下し始め、乗員Pが第2膨張室42によって適切な押圧力で押圧される。
【0097】
さらに、第1の折りの解消に際しては、エアバッグ30において、折り線75を支点として車外側へ折り返された部分76が、
図18の二点鎖線の矢印で示すように、折り線75を支点として車外側(前上方)へ回動する。この回動の方向は、障害物Oから遠ざかる方向である。そのため、この点においても、障害物Oが、第1の折りの解消に伴い強く押圧される現象が抑制される。
【0098】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)縦区画部61により第1膨張室41(上流側膨張室)と第2膨張室42(下流側膨張室)とに少なくとも区画されたエアバッグ30を対象とする。非膨張展開状態の上記エアバッグ30(
図4)に対し、第1〜第3の折り(
図11〜
図15)を行なうことにより、エアバッグ30を収納用形態(
図16)にしている。第1の折りでは、エアバッグ30の上部を、前側ほど低くなるように傾斜(前後方向に対し傾斜)する折り線75に沿って乗員Pから遠ざかる側である車外側へ折り返す(
図4、
図11)。第2の折りでは、第1の折りが行なわれたエアバッグ30を前方から後方へ向けて折り畳む(
図11〜
図13)。第3の折りでは、第2の折りを経た中間形態のエアバッグ30(
図13)の上部を、乗員Pから遠ざかる側である後側(後下方)へ折り返す(
図15、
図16)。
【0099】
そのため、エアバッグ30の前方に障害物Oがあっても、その障害物Oがエアバッグ30の展開に伴い強く押圧されるのをより一層抑制することができる。
(2)第2膨張室42の前端部に排気孔71を設け、エアバッグ30において第1の折りにより折り返される部分76にこの排気孔71を含ませている(
図4)。
【0100】
そのため、第1膨張室41によって乗員Pの上半身の後半部を的確に拘束した後に、排気孔71から第2膨張室42内の余剰の膨張用ガスを排出させることができる。
(3)折り線75を第1膨張室41及び第2膨張室42に跨って設定している(
図4)。
【0101】
そのため、第1の折りにより折り返された部分76を、膨張部36のうち第1の折りの対象となっていない箇所(特に、第1膨張室41)の膨張によって押圧し、第1の折りの解消を促進することができる。
【0102】
(4)第2の折りとして、バッグ後部30rに対し蛇腹折りを行なうとともに、バッグ前部30fに対しロール折りを行なうようにしている(
図11、
図12)。
そのため、より早く展開及び膨張させることが望まれるバッグ後部30rについては、速やかに前方へ展開及び膨張させることができる。また、バッグ前部30fについては、衝撃により車両用シート12側へ進入するボディサイド部11と乗員Pとの間の狭い隙間であっても、より良好に展開させることができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した第2実施形態について、
図20及び
図21を参照して説明する。
【0104】
第2実施形態の第1実施形態との主な相違点は、次の2点である。
(i)縦区画部61
第2実施形態では、縦区画部61を構成する一対の布片62,63として、第1実施形態とは異なる形状を有するものが用いられている。エアバッグ本体31が非膨張展開状態にあるときには、各布片62,63の上部は、上側ほど前方に位置するように傾斜している。
【0105】
両布片62,63は、第1実施形態とは逆に、前側の側縁部に沿って設けられた側縁結合部64によって相互に結合されている。
各布片62,63は、横区画部44の両構成布部46,47に重ならない箇所では、後側の側縁部に沿って設けられた側縁結合部65によって本体布部33,34に結合されている。また、各布片62,63は、両構成布部46,47に重なる箇所では、後側の側縁部に沿って上記側縁結合部65の下側に設けられた側縁結合部66によって、構成布部46,47にのみ結合されている。
【0106】
両布片62,63を相互に結合する側縁結合部64が、両布片62,63の前後の両側縁部のうち、インフレータアセンブリ25から遠い側である前側の側縁部に設けられることで、各布片62,63がより後方で本体布部33,34に結合されているにも拘わらず、側縁結合部64とインフレータアセンブリ25との干渉が起こりにくい。
【0107】
上記のように両布片62,63の形状が変更されることに伴い、第1膨張室41及び第2膨張室42の各形状が第1実施形態と異なっている。ただし、第1膨張室41が乗員Pの上半身のうち、肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張し、第2膨張室42が乗員Pの上半身のうち、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する点は、第1実施形態と同様である。第1膨張室41が、膨張部36の横区画部44よりも上側の空間のうち、インフレータ26に近い側に位置する上流側膨張室に該当し、第2膨張室42が、インフレータ26から遠い側に位置する下流側膨張室に該当する点も第1実施形態と同様である。
【0108】
(ii)第1の折り
第2実施形態では、収納用形態のエアバッグ30のうち、上側の排気孔71から上方へ外れた部分が第1の折りにより折り返されている。
【0109】
第1の折りの実施に際しては、
図20において一点鎖線で示すように、非膨張展開状態のエアバッグ30の上部に、前後方向に対し傾斜する直線状の折り線75が設定される。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、折り線75は、第1膨張室41及び第2膨張室42の両方に跨っており、前側ほど低くなるように傾斜している。ただし、折り線75は、排気孔71よりも若干上方の箇所と、縦区画部61における側縁結合部64の上端よりも後方の箇所(第1実施形態と略同じ箇所)とを通過している。そのため、この折り線75よりも前上側の部分76の大きさは、第1実施形態よりも小さくなる。そして、この部分76が、同
図20中、二点鎖線の矢印で示すように、折り線75に沿って車外側の下方、すなわち、乗員Pから遠ざかる側へ折り返される。従って、エアバッグ30において第1の折りにより折り返される部分76は、上側の排気孔71を含んでいない。また、部分76は、第1膨張室41の一部及び第2膨張室42の一部を含んでいる。そのため、第1の折りが行なわれることにより、
図21に示すように、部分76の一部は第1の折りの対象となっていない箇所のうち、第1膨張室41及び第2膨張室42の各上部に重なる。
【0110】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
上記のように、第2膨張室42の前端部に設けられた排気孔71は、エアバッグ30において第1の折りにより折り返される部分76に含まれない。このことから、上側の排気孔71からの膨張用ガスの排出は、第1の折りの解消の有無によって影響を受けにくい。
【0111】
そのため、第2の折りの解消途中であって、第1の折りが解消される前でも、第2膨張室42内の膨張用ガスは、同上側の排気孔71から排出され得る。
なお、上記エアバッグ30では、縦区画部61の形状が第1実施形態とは異なり、それに伴い第1膨張室41及び第2膨張室42の形状が第1実施形態と異なっている。しかし、この場合にも、第1膨張室41が、肩部PSの側方及び胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張する。第2膨張室42が、胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張する。
【0112】
従って、第2実施形態によると、上記(1),(3),(4)と同様の効果が得られるほか、上記(2)に代えて次の効果が得られる。
(5)第2膨張室42の前端部に排気孔71を設け、収納用形態のエアバッグ30のうち排気孔71から外れた部分76を、第1の折りにより折り返すようにしている(
図20、
図21)。すなわち、収納用形態のエアバッグ30において第1の折りにより折り返される部分76に上側の排気孔71を含ませていない。
【0113】
そのため、上記部分76が、たとえ第1の折りの解消途中でボディサイド部11と接触する等して、折りの解消を妨げられたとしても、第2膨張室42内の膨張用ガスを上側の排気孔71から排出させることができる。
【0114】
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<エアバッグ30の折り態様について>
・バッグ前部30fのロール折りに際し、
図22(a)に示すように、同バッグ前部30fが、上記各実施形態とは逆に、車内側の面を渦の内側に巻き込むように同一方向に向けて繰り返し折り畳まれてもよい。このように折り畳まれることで、バッグ後部30rとバッグ前部30fとの境界部分は、車内側に位置する。また、バッグ後部30rにおいて蛇腹折りされた部分の非折り畳み部分(インフレータアセンブリ25を囲んでいる部分)との境界部分は、車内側に位置する。
【0115】
・
図22(b)に示すように、バッグ前部30fのロール折りの回転位相を上記各実施形態に対し90°ずらしてもよい。この場合、第3の折りに際し、第2の折りを経た中間形態のエアバッグ30の上部及び下部のうち第1の折りが行なわれた方は、乗員Pから遠ざかる側として、後側に代えて車外側へ折り返されてもよい。
【0116】
・上記各実施形態では、
図22(c)に示すように、第2の折りとして、蛇腹折りされたバッグ後部30rと、ロール折りされたバッグ前部30fとが、インフレータアセンブリ25の前方で車幅方向に並べられてもよい。
【0117】
・上記各実施形態では、第2の折りが、蛇腹折り及びロール折りの一方のみによって行なわれてもよい。
・上記各実施形態では、第3の折りに際し、中間形態のエアバッグ30の下部についても、上部と同様、乗員Pから遠ざかる側(後側又は車外側)へ折り返されてもよい。
【0118】
・上記各実施形態では、エアバッグ30の下部の折りが、第2の折りにより上下方向に細長くなった中間形態のエアバッグ30に対し行なわれたが、中間形態にされる前(第2の折りが行なわれる前)のエアバッグ30に対し行なわれてもよい。例えば、第1の折りと同時や、第1の折りが行なわれた後で、かつ第2の折りが行なわれる前に、エアバッグ30の下部が折られてもよい。
【0119】
・第2実施形態において、第1の折りにより折り返される部分76の後端部は、第1膨張室41に位置することを条件に、第1実施形態とは異なる箇所に設定されてもよい。
・第2実施形態において、第1の折りにより折り返される部分76の前端部は、上側の排気孔71よりも上方であることを条件に、同第2実施形態とは異なる箇所に設定されてもよい。ただし、部分76の容量を確保する観点からは、上記部分76の前端部は、上側の排気孔71に近い箇所であることが望ましい。
【0120】
<膨張部36について>
・エアバッグ30は、その略全体が上記各実施形態のように膨張部36からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
【0121】
・ここで、一般に、乗員Pの上半身の側部の耐衝撃性については、肩部PSが胸部PTよりも勝っていることが知られている。そのため、エアバッグ30を通じて乗員Pの上半身に側方から加わる衝撃は、胸部PTにおいて肩部PSにおけるよりも小さいことが望ましい。
【0122】
そこで、
図23(a),(b)に示すように、横区画部44が縦区画部61の下側に代えて上側に設けられることで、第3膨張室43が、第1膨張室41及び第2膨張室42の下側に代え、上側に設けられてもよい。
【0123】
この場合、第1膨張室41の下部は、
図23(a)に示すように、腰部PPの側方で展開及び膨張するものであってもよいし、
図23(b)に示すように、腰部PPよりも上側の部分の側方で展開及び膨張するものであってもよい。いずれの場合も、第1の折りに際しては、非膨張展開状態のエアバッグ30の下部が、前側ほど高くなるように傾斜(前後方向に対し傾斜)する折り線に沿って、乗員Pから遠ざかる側(車外側)へ折り返される。
【0124】
このようにすると、エアバッグ30の前方に障害物Oがあっても、その障害物Oがエアバッグ30の展開に伴い強く押圧されるのをより一層抑制することができる。
また、サイドエアバッグ装置では、車両10に対し、車両用シート12の側方から衝撃が加わると、乗員Pの上半身のうち耐衝撃性が胸部PTよりも高い肩部PSの側方で、第3膨張室43をその下側の第1膨張室41よりも高い内圧で展開及び膨張させることが可能である。この第3膨張室43によって、肩部PSを胸部PTよりも高い圧力で押圧し、拘束することが可能となる。このように、乗員Pの肩部PSについての耐衝撃性に即した圧力で第3膨張室43を展開及び膨張させ、その肩部PSを第3膨張室43によって衝撃から効果的に保護することができる。
【0125】
・
図23(c)に示すように、横区画部44が縦区画部61の下側に加え、上側に設けられることで、第3膨張室43が、第1膨張室41及び第2膨張室42の下側に加え、上側に設けられてもよい。
【0126】
この場合、第1の折りに際しては、非膨張展開状態のエアバッグ30の上部に対し、前側ほど低くなるように傾斜(前後方向に対し傾斜)する折り線が設定される。また、非膨張展開状態のエアバッグ30の下部に対し、前側ほど高くなるように傾斜(前後方向に対し傾斜)する折り線が設定される。そして、非膨張展開状態のエアバッグ30の上部及び下部が上記両折り線に沿って、乗員Pから遠ざかる側へ折り返される。このようにすると、エアバッグ30の前方に障害物Oがあっても、その障害物Oがエアバッグ30の展開に伴い強く押圧されるのをより一層抑制することができる。
【0127】
また、この場合には、第1膨張室41を胸部PTの後半部の側方で展開及び膨張させ、第2膨張室42を胸部PTの前半部の側方で展開及び膨張させてもよい。また、下側の第3膨張室43を腰部PPの側方で展開及び膨張させ、上側の第3膨張室43を肩部PSの側方で展開及び膨張させてもよい。
【0128】
なお、
図23(a),(b),(c)の各々は、縦区画部61、横区画部44等の配置状態を模式的に示したものであり、開口部51、逆止弁52等、細部の図示については省略及び簡略化されている。
【0129】
・上記各実施形態において、第3膨張室43は、第1膨張室41のみの下方に設けられてもよい。また、
図23(c)において、下側の第3膨張室43は、第1膨張室41のみの下方に設けられてもよい。
【0130】
さらに、
図23(a),(b)において、第3膨張室43は、第1膨張室41のみの上方に設けられてもよい。また、
図23(c)において、上側の第3膨張室43は、第1膨張室41のみの上方に設けられてもよい。
【0131】
このようにすると、第3膨張室43は、第1膨張室41及び第2膨張室42に跨って設けられた場合よりも、前後方向に狭い領域で展開及び膨張することになる。しかし、第3膨張室43は腰部PP又は肩部PSの少なくとも一部の側方で、第1膨張室41よりも高い内圧で展開及び膨張するため、腰部PP又は肩部PSを拘束し、衝撃から保護する効果は得られる。
【0132】
<縦区画部61について>
・第1実施形態の縦区画部61として、第2実施形態の形状を有するものが用いられてもよい。また、第2実施形態の縦区画部61として、第1実施形態の形状を有するものが用いられてもよい。
【0133】
・各実施形態の縦区画部61において、両布片62,63を相互に結合する側縁結合部と、各布片62,63をエアバッグ本体31の本体布部33,34に結合する側縁結合部との前後位置関係が変更されてもよい。
【0134】
<エアバッグモジュールAMの収納箇所について>
・車両用シート12のシートバック14に代えて、ボディサイド部11に収納部21に相当する箇所が設けられ、ここにエアバッグモジュールAMが組み込まれてもよい。
【0135】
<その他>
・上記各実施形態においては、インフレータ26から噴出された膨張用ガスを、第1膨張室41よりも第3膨張室43へ多く、すなわち優先的に供給されるように整流するためのインナチューブが用いられてもよい。インナチューブは、管状をなし、その一端部がインフレータ26の少なくともガス噴出部を取り囲み、かつ他端部が第3膨張室43に面するように配置される。
【0136】
・上記サイドエアバッグ装置は、横区画部44及び第3膨張室43が省略されたサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
・上記サイドエアバッグ装置は、シートバック14が車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート12が配置された車両において、その車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員Pを保護するタイプのサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
【0137】
・上記サイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記サイドエアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等における乗物用シートに装備されるサイドエアバッグ装置にも適用可能である。