(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述の検出手段が、自動変速機の油圧変速機構を制御する油圧制御弁と共通の電源制御部から電気供給されている場合、この電源制御部から検出手段への通電を一時停止すると、油圧制御弁も同時に通電停止となるので、油圧制御弁の高度な制御が求められる変速期間中は検出手段のリセット(通電停止)を行うことができない。
【0008】
したがって、従来、非変速中に検出手段が誤った補正によって出力停止となった場合には、直ぐにリセットを実行できるので、リセット後の出力に基づき故障判定が行われるが、
図9に示すように、変速期間中に検出手段が誤った補正によって出力停止となり、変速期間中に故障判定期間が終了する場合には、リセットが可能になるのを待って変速期間の終了直後にリセットを行っても、故障判定が終了した後にリセットが行われることになるので、正常であるのに故障していると誤判定される頻度が高かった。
【0009】
そこで、本発明は、自動変速機に設けられた検出手段が正常であるのに故障していると誤判定される頻度を低減することができる自動変速機の制御装置及び制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動変速機の制御装置及び制御方法は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
自動変速機の油圧変速機構を制御する油圧制御弁と、
前記自動変速機の状態を検出
するものであって、電気供給が一時停止されることで出力の補正がリセットされるように構成された変速機状態検出手段と、
前記油圧制御弁及び前記変速機状態検出手段へ電気供給する共通の電源制御手段と、
前記変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続する期間を異常継続期間とし、該異常継続期間が所定期間以上となる場合、前記変速機状態検出手段が故障していると判定する故障判定手段と、
前記変速機状態検出手段の出力が異常且つ前記自動変速機が非変速中の場合、
前記電源制御手段による電気供給を一時停止する
ことで、前記変速機状態検出手段の出力の補正をリセットするリセット手段と、
を備えた自動変速機の制御装置であって、
前記故障判定手段は、前記自動変速機の変速期間の少なくとも一部の期間中において前記変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続した期間を前記異常継続期間から除外して判定する
ことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記故障判定手段は、前記自動変速機の変速期間の全期間に亘る前記変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続した期間を前記異常継続期間から除外する
ことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2のいずれか1項に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記電源制御手段と前記変速機状態検出手段間を電気的に接続する第1経路と、
前記電源制御手段と前記油圧制御弁間を電気的に接続する第2経路と、を備え、
前記第1経路と前記第2経路は、その少なくとも一部の経路が共通化されており、
前記電源制御手段、前記第1経路及び前記第2経路は、前記自動変速機の内部に設けられている
ことを特徴とする。
【0014】
さらに、本願の請求項4に記載の発明は、
自動変速機の油圧変速機構を制御する油圧制御弁と、
前記自動変速機の状態を検出
するものであって、電気供給が一時停止されることで出力の補正がリセットされるように構成された変速機状態検出手段と、
前記油圧制御弁及び前記変速機状態検出手段へ電気供給する共通の電源制御手段と、を備えた自動変速機の制御方法であって、
前記変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続する期間を異常継続期間とし、該異常継続期間が所定期間以上となる場合、前記変速機状態検出手段が故障していると判定する故障判定工程と、
前記変速機状態検出手段の出力が異常且つ前記自動変速機が非変速中の場合、
前記電源制御手段による電気供給を一時停止する
ことで、前記変速機状態検出手段の出力の補正をリセットするリセット工程と、を含み、
前記故障判定工程では、前記自動変速機の変速期間の少なくとも一部の期間中において前記変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続した期間を前記異常継続期間から除外して判定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成により、本願各請求項に係る発明によれば、次の効果が得られる。
【0016】
請求項1に係る発明によれば、自動変速機の変速期間の少なくとも一部の期間中において変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続した期間を異常継続期間から除外して判定するので、この除外された期間だけ故障判定が終了するのを遅らせることができる。これにより、自動変速機の変速期間終了時まで待ってリセットを行う場合に、変速機状態検出手段の故障判定が終了する前にリセットを行うことがより可能となる。したがって、リセットされない状態で故障判定が行われる(故障判定が終了する)のを抑制できるので、自動変速機に設けられた変速機状態検出手段が正常であるのに故障していると誤判定される頻度を低減することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、自動変速機の変速期間の全期間に亘って変速機状態検出手段の出力が異常である状態が継続した期間を異常継続期間から除外するので、変速機状態検出手段が正常であるのに故障していると誤判定されるのをより確実に防止することができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、電源制御手段と変速機状態検出手段間を電気的に接続する第1経路と、電源制御手段と油圧制御弁間を電気的に接続する第2経路とは、その少なくとも一部の経路が共通化されており、電源制御手段、第1経路及び第2経路は、自動変速機の内部に設けられているので、特に、その少なくとも一部の経路を共通化することで小型化された自動変速機においても、変速機状態検出手段が正常であるのに故障していると誤判定される頻度を低減することができる。
【0019】
さらに、請求項4に係る発明である自動変速機の制御方法によれば、請求項1に係る発明である制御装置と同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る自動変速機について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る自動変速機が搭載された車両の駆動系は、動力源であるエンジン1と、エンジン1の回転出力を所望の速度比で変速して出力する自動変速機構2と、自動変速機2の回転出力を左右の車輪(例えば前輪)8に分配するディファレンシャルギア機構7と、を備える。
【0023】
自動変速機2は、変速機ケース2a内に、エンジン1からのトルクを流体によって後述の変速機構4側に伝達するためのトルクコンバータ3、複数の摩擦締結要素や遊星歯車機構等でなる変速機構4、前記摩擦締結要素を油圧で制御する油圧制御装置5、該油圧制御装置5の作動を電気的に制御する変速制御モジュール6(以下、「変速制御モジュール」を「TCM」(Transmission Control Module)とも記す。)等が組み込まれている。また、変速機ケース2a内には、作動油が充填されている。
【0024】
油圧制御装置5は、図示しないが、コントロールバルブ機構が組み込まれたバルブボディに、油路の切り換えや油圧の制御に用いられる複数のソレノイド弁を取り付けた構成とされている。これにより、油圧制御装置5は、自動変速機2に設けられた複数の摩擦締結要素を直接的に制御することができる。また、このソレノイド弁とTCM6がワイヤハーネスにより接続され、該油圧制御装置5とTCM6は、一体化されたアッセンブリ体として変速機ケース2aに組み込まれている。
【0025】
自動変速機2には、変速機構4の入力軸(すなわち、トルクコンバータ3の出力軸)の回転速度Niを検出するためのタービン回転速度センサ11、変速機構4の出力軸の回転速度Noを検出するためのアウトプット回転速度センサ12(以下、「アウトプット回転速度センサ」を「OSP」(Output Speed sensor)とも記す。)が設けられている。また、車輪8には、車両の走行速度(車速)Nvを検出するための車速センサ13が設けられている。なお、これら回転速度センサとは別に、作動油の温度を検出するための作動油温センサや、トルクコンバータ3の入力軸の回転速度(エンジン回転速度)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ等を設けてもよい。
【0026】
図2に示すように、TCM6は、各種機器からの信号を入力するための入力処理部110と、これら入力信号に基づいて自動変速機2の動作に関する各種制御を行う制御本体部120と、各種機器へ信号を出力する出力処理部130と、各種機器へ電気供給する共通の電源制御部140等を設けた構成とされている。
【0027】
入力処理部110には、タービン回転速度センサ11の信号と、アウトプット回転速度センサ12の信号と、車両の速度を検出する車速センサ13からの信号と、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ14、エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ15等からの信号が入力される。
【0028】
制御本体部120は、油圧制御装置5内に取り付けられたソレノイド弁の開閉ないし開度を制御する変速制御部121と、所定の故障判定条件の成立時にOSP12が故障したと判定する故障判定部122と、所定のリセット条件の成立時に電源制御部140からの電気供給を一時停止するリセット制御部123と、を備えている。これら変速制御部121、故障判定部122及びリセット制御部123は、互いに独立して各制御を実行する。なお、故障判定部122には、故障判定期間をカウントするためのタイマが内蔵されている。
【0029】
出力処理部130は、例えば警告灯や警告ブザー等、自動変速機2の外部に設けられたドライバに故障の有無を知らせるための故障警告部16へ信号を出力し、また、TCM6内の電源制御部140へ信号を出力する。
【0030】
電源制御部140は、ワイヤハーネス20を介して電気的に接続された油圧制御装置5、タービン回転速度センサ11及びアウトプット回転速度センサ12に電気供給を行う共通の電源である。ワイヤハーネス20は、電源制御部140及び油圧制御装置5を電気的に接続する電線21と、電源制御部140及びタービン回転速度センサ11を電気的に接続する電線22と、電源制御部140及びアウトプット回転速度センサ12を電気的に接続する電線23とを備える。これら電線21〜23は、その一端に油圧制御装置5、タービン回転速度センサ11またはアウトプット回転速度センサ12と接続するためのコネクタ(図示しない)がそれぞれ設けられると共に、その他端側の少なくとも一部の電線が共通化され、電源制御部140と接続するための共通のコネクタ(図示しない)が設けられている。ワイヤハーネス20は、各コネクタを各機器5、11、12、140に接続した際に自動変速機2の内部に収納される。
【0031】
次に、第1の実施形態に係る自動変速機2のTCM6の故障判定部122及びリセット制御部123における制御方法について、
図3〜
図5のフローチャートに従って、以下に順に説明する。
【0032】
図3を参照しながら、故障判定部122における制御方法について説明する。
【0033】
まず、自動変速機のTCM6は、
図2に示すセンサ11〜15から各種信号を読み込む(ステップS1)。
【0034】
次に、読み込んだ車速センサ13の信号に基づいて、OSP12の故障判定条件(車速がV2(例えば、時速16km)以上)が成立したか否かを判定する(ステップS2)。
【0035】
ステップS2においてOSP12の故障判定条件が成立したと判定した場合、OSP12の信号に基づいて、OSP12の出力が停止(アウトプット回転速度の検出値がゼロ)しているか否かを判定する(ステップS3)。一方、この故障判定条件が成立していないと判定した場合、OSP12が正常であると判定し(ステップS9)、当該フローの最初に戻る。
【0036】
ステップS3においてOSP12の出力が停止していると判定した場合、OSP12からの入力信号の代わりに、車速センサ13からの入力信号を自動変速機2の動作制御に代用することを開始する(ステップS4)。なお、出力軸回転数Noは、車速Nvに基づいて、例えば「No=Nv/タイヤ周長」なる関係式から算出することができる。
【0037】
次に、車速センサ13及びアクセル開度センサ14の信号に基づいて、非変速中であるか否かを判定し(ステップS5)、非変速中ではないと判定している間は、該ステップS5を継続する。
【0038】
ステップS5において非変速中であると判定した場合、タイマによる故障判定期間のカウントを開始すると共に、OSP12の故障判定を開始する(ステップS6)。
【0039】
次に、OSP12の出力が停止しているか否かを判定し(ステップS7)、出力が復帰していれば、OSP12の代わりに車速センサ13を代用するのを終了し、タイマによる故障判定期間のカウントを終了し(ステップS8)、OSP12が正常であると判定し(ステップS9)、当該フローの最初に戻る。
【0040】
ステップS7においてOSP12の出力停止状態が継続している場合、所定の故障判定期間(例えば、3秒間)が経過したか否かを判定し(ステップS10)、故障判定期間が経過していなければ、ステップS7に戻る。
【0041】
ステップS10において故障判定期間が経過すると、OSP12が故障状態であると判定し(ステップS11)、故障警告部16によりドライバにOSP12の故障を警告し(ステップS12)、当該フローを終了する。
【0042】
以上により、故障判定部122は、故障判定条件が成立したのをトリガとして、所定の故障判定期間に亘ってOSP12の出力停止状態が継続したときに、OSP12を故障状態と判定する制御を行うことができる。
【0043】
次に、
図4を参照しながら、リセット制御部123における制御方法について説明する。
【0044】
まず、OSP12の出力が停止しているか否かを判定する(ステップS21)。
【0045】
ステップS21においてOSP12の出力が停止している場合、車速センサ13の信号に基づいて、リセット条件(車速がV1(例えば、時速7km)以上)が成立したか否かを判定する(ステップS22)。一方、ステップS21においてOSP12の出力が復帰した場合、当該フローの最初に戻る。
【0046】
ステップS22においてリセット条件が成立した場合、車速センサ13及びアクセル開度センサ14の信号に基づいて、非変速中であるか否かを判定する(ステップS23)。一方、ステップS22においてリセット条件が成立しない場合、当該フローの最初に戻る。
【0047】
ステップS23において非変速中である場合、OSP12をリセット、すなわち、電源制御部140からOSP12への通電を停止する(ステップS24)。一方、ステップS23において非変速中でない、すなわち、変速期間である場合、当該フローの最初に戻る。
【0048】
以上により、リセット制御部123は、OSP12の出力が停止したのをトリガとして、リセット条件が成立した場合、非変速中に限り、OSP12の補正をリセットする制御を行うことができる。
【0049】
次に、上述の第1の実施形態に係る自動変速機1の作動例について、
図5のタイムチャートを用いて説明する。
【0050】
図5に示すように、時刻0において、当該車両がV2より大きな車速で走行中であり、自動変速機2のレンジはDレンジであり、例えば、変速段は6速の状態にある。
【0051】
この状態で、時刻t1において、TCM6の変速制御部121は、変速段の5速への切り換えを開始するように油圧制御装置5を制御する。このとき、変速ショックが起きないように油圧を制御して、変速期間t1〜t3をかけて摩擦締結要素の解放または締結が徐々に行われる。
【0052】
ここで、例えば、パルスギヤの歯部に付着したゴミ(コンタミネーション)の影響で誤った補正を行ったことで、
図5に示すように、時刻t2でOSP12の出力が停止した場合、仮に非変速中であれば、時刻t2でリセット制御部123によってOSP12の補正のリセットが行われるが(
図5の一点鎖線を参照)、この作動例では、変速期間中であるので、リセットは直ぐに実行されず、タイマによる故障判定期間のカウントも開始しない。
【0053】
その後、時刻t3で変速期間が終了すると、リセット制御部123によってOSP12の補正のリセットが実行されると共に、タイマによる故障判定期間のカウントが開始される。
【0054】
このリセットの結果、時刻t4においてOSP12の出力が復帰すると、車速センサ13による代用を終了し、故障判定期間のカウントを終了し、OSP12が正常であると判定する。
【0055】
以上により、変速期間中にOSP12が出力停止した場合にも、自動変速機2の変速期間終了時にカウントを開始すると共にリセットが行われるので、その後の故障判定の際にOSP12が正常であるのに故障していると誤判定されるのを回避できる。
【0056】
なお、参考のために、OSP12が実際に故障していた場合について、アウトプット回転速度、OSP故障判定タイマ及びOSP故障判定結果の変化を、
図5において破線で示す。この場合、時刻t3でOSP12の補正がリセットされても、時刻t4でOSP12の出力は復帰しない。したがって、タイマによる故障判定期間のカウントを継続し、所定の故障判定期間T0が経過した時刻t5でOSP12が故障していると判定される。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る自動変速機2について、
図6〜
図7を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態に係る自動変速機2は、第1の実施形態に係る自動変速機2と
図1〜
図2に示したシステム構成が共通する。
【0058】
なお、ステップS21〜S24については、前述の
図3におけるステップS1〜S4に相当し、その内容が同一であるので、説明を省略する。
【0059】
タイマによる故障判定期間のカウントを開始すると共に、OSP12の故障判定を開始する(ステップS25)。
【0060】
次に、車速センサ13及びアクセル開度センサ14の信号に基づいて、非変速中であるか否かを判定し(ステップS26)、非変速中ではないと判定した場合、故障判定期間のカウントを停止して(ステップS27)、ステップS26に戻る。
【0061】
ステップS26において非変速中であると判定した場合、故障判定期間のカウントが停止していればカウントを再開する一方、故障判定期間のカウントが停止してなければカウントを継続し(ステップS28)、次のステップS29に進む。
【0062】
なお、ステップS29〜S34については、前述の
図3におけるステップS7〜S12に相当し、その内容が同一であるので、説明を省略する。
【0063】
以上により、第2の実施形態の場合も前述の第1の実施形態と同様に、リセット制御部123は、OSP12の出力が停止したのをトリガとして、リセット条件が成立した場合、非変速中に限り、OSP12の補正をリセットする制御を行うことができる。
【0064】
次に、上述の第2の実施形態に係る自動変速機1の作動例について、
図7のタイムチャートを用いて説明する。
【0065】
前述の
図5と同様に、時刻0において、当該車両がV2より大きな車速で走行中であり、自動変速機2のレンジはDレンジであり、例えば、変速段は6速の状態にある。
【0066】
この状態で、時刻t1において、TCM6の変速制御部121は、変速段の5速への切り換えを開始するように油圧制御装置5を制御する。このとき、変速ショックが起きないように油圧を制御して、変速期間t1〜t3をかけて摩擦締結要素の解放または締結が徐々に行われる。
【0067】
ここで、例えば、パルスギヤの歯部に付着したゴミ(コンタミネーション)の影響で誤った補正を行ったことで、時刻t2でOSP12の出力が停止した際、変速期間中であるので、リセットは直ぐに実行されない。また、この第2の実施形態の場合、時刻t2でタイマによる故障判定期間のカウントが開始されるが、非変速中であるので、直ぐにこのカウントが停止される。
【0068】
その後、時刻t3で変速期間が終了すると、リセット制御部123によってOSP12の補正のリセットが実行されると共に、この第2の実施形態の場合、タイマによる故障判定期間のカウントが再開される。
【0069】
このリセットの結果、時刻t4においてOSP12の出力が復帰される。これにより、車速センサ13による代用が終了し、故障判定期間のカウントが終了され、OSP12が正常であると判定される。
【0070】
以上により、変速期間中にOSP12が出力停止した場合にも、自動変速機2の変速期間終了時にカウントを開始すると共にリセットが行われるので、その後の故障判定の際にOSP12が正常であるのに故障していると誤判定されるのを回避できる。
【0071】
次に、参考として、従来の自動変速機の作動例について、
図8のタイムチャートを用いて説明する。
【0072】
図7と同様の初期状態において、時刻t2で誤った補正によりOSPの出力が停止した場合、従来の自動変速機のTCMでは、タイマによる故障判定期間のカウントが開始され、変速期間が経過する前に故障判定期間が経過した時刻t3で故障判定が実行される。このとき、OSPの出力が停止しているので、OSPは正常であるのに故障していると誤判定される。なお、この従来の自動変速機のTCMは、故障と判定された時点で車速センサによる代用を開始している。
【0073】
その後、変速期間が終了した時刻t4において、OSPの補正がリセットされた結果、時刻t5でOSPの出力が復帰するが、故障判定は既に終了しているので、誤判定されたままとなる。
【0074】
したがって、従来の自動変速機のTCMでは、誤った補正によりOSPの出力が停止した場合でも、故障判定期間が終了した時点でOSPが正常なのに故障していると誤判定される。
【0075】
以上により、これら実施形態によれば、自動変速機2の変速期間の全期間に亘ってOSP12の出力が異常である状態が継続した期間を異常継続期間から除外するので、この除外された期間だけ故障判定が終了するのを遅らせることができる。これにより、自動変速機2の変速期間終了時まで待ってリセットが行われた後に故障判定が行われる。したがって、リセットされない状態で故障判定が行われる(故障判定が終了する)ことがないので、自動変速機2に設けられたOSP12が正常なのに故障していると誤判定されるのをより確実に防止することができる。
【0076】
また、これら実施形態によれば、電源制御部140とOSP12間を電気的に接続する電線23と、電源制御部140と油圧制御装置5間を電気的に接続する電線21とは、その少なくとも一部の電線が共通化されており、電源制御部140、電線21及び23は、自動変速機2の内部に設けられているので、特に、その少なくとも一部の電線を共通化することで小型化された自動変速機2においても、OSP12が正常であるのに故障していると誤判定されるのをより確実に防止することができる。
【0077】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0078】
例えば、本実施形態の場合、故障判定において、非変速中の場合にリセットを行ったが、これに限るものではない。非変速中の場合、または変速期間の少なくとも一部の期間中、例えばトルクフェーズの場合にリセットを行ってもよい。この場合、自動変速機2の変速期間の少なくとも一部の期間中においてOSP12の出力が異常である状態が継続した期間を異常継続期間から除外するので、この除外された期間だけ故障判定が終了するのを遅らせることができる。これにより、自動変速機2の変速期間終了時まで待ってリセットを行う場合に、OSP12の故障判定が終了する前にリセットを行うことがより可能となる。したがって、リセットされない状態で故障判定が行われる(故障判定が終了する)のを抑制できるので、自動変速機2に設けられたOSP12が正常なのに故障していると誤判定される頻度を低減することができる。また特に、トルクフェーズでリセットを行う場合には、緻密な油圧制御が必要とされる変速期間中のイナーシャフェーズにおいて、変速制御性の確保と故障判定早期化を両立することができる。
【0079】
また、これら実施形態の場合、OSP12の故障を判定したが、これに限るものではない。例えば、タービン回転速度センサ11、作動油の温度を検出する油温センサ等、油圧制御装置5と電源制御部140が共通である他の検出手段について故障を判定してもよい。
【0080】
また、これら実施形態の場合、故障判定をすると直ぐにドライバへ故障警告を行ったが、これに限るものではない。故障の誤判定の頻度をさらに低減するために、例えば、1度目の故障判定をしてからエンジン停止、始動を行った後、2度目の故障判定をしたときに初めてドライバに故障警告を行うようにしてもよい。
【0081】
また、これら実施形態の場合、故障判定期間として予め設定した値を用いたが、これに限らず、現在の変速状況に応じて可変な値であってもよい。
【0082】
また、これら実施形態の場合、故障判定期間をカウントする方法として、カウントアップを用いたが、カウントダウンとしてもよい。
【0083】
また、これら実施形態の場合、OSP12の出力停止時に異常な状態であると判断して故障判定を行うようにしたが、出力停止以外に、出力が正常時に比べて極端に低いまたは高い場合なども異常な状態と判断してもよい。
【0084】
また、これら実施形態の場合、故障判定においてタイマを用いたが、車速センサ13やタービン回転速度センサ11等の出力が所定値以上に変化するまでの期間としてもよい。