(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の流動性内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
また、粘性の高い流動性内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
【0005】
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
【0006】
上述した特許文献1〜3は、何れもプラスチック容器について、容器内面を形成する熱可塑性樹脂組成物の化学組成によって内容物に対する滑り性を向上させたものであり、ある程度の滑り性向上は達成されているが、用いる熱可塑性樹脂の種類や添加剤が限定される為、滑り性向上には限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
【0007】
一方、特許文献4には、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対してHLBが5.0以下の添加剤を0.3〜3重量部の範囲内で配合した組成物からなる包装材が提案されている。
【0008】
特許文献4の包装材は、チョコレートクリーム、カスタードクリームなどの乳化系内容物に対する剥離性に優れているというものである。即ち、この包装材には、このような乳化系内容物が付着しにくく、例えば蓋材の内面などに内容物が多量に付着するなどの不都合を回避できるというものである。
しかしながら、本発明者等の研究によると、このような組成物から形成された容器では、ソースなどの流動性内容物に対する滑り性を高めるには至っていないことが判った。
【0009】
また、本発明者等は先に、容器の内面、即ち、内容物と接触する面が液浸透性面となっており、該液浸透性面に液体が保持されている容器(特願2012−199236号)及び容器の内面が、成形用樹脂と液体(内容物とは非混和性の液体)とを含む樹脂組成物により形成されている容器(特願2013−23468号)を提案した。これらの容器では、内容物が接触する部分に液層が形成されており、ケチャップ、ソース、マヨネーズなどの流動性内容物に対する滑り性が著しく高められている。
しかしながら、これらの容器は、内容物との滑り性を高めるために形成される液層を薄く且つ均一に形成することが困難であるという問題や、内面を形成する樹脂に多量の液体を混合する必要があるといった問題があり、さらなる改善が必要である。即ち、特願2012−199236号の容器では、容器を成形後、内容物が接触する部分にスプレー等の手段で液体を施すため、形成される液層が必要以上に厚くなり過ぎてしまい、結果、かかる液体の内容物への移行などが問題となるおそれがある。一方、特願2013−23468号の容器では、成形用樹脂に液体を混合して成形が行われるが、容器内面に形成された液層は、内層を形成するブレンド樹脂からのブリードアウトで形成されるため、内層を形成する樹脂層にはブリードしない液体が残ってしまい、無駄になるといった問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<ブロー成形容器の製造>
本発明のブロー成形容器は、基本的には、従来公知の方法と同様、溶融樹脂(成形用樹脂の溶融物)の押出(押出成形)或いは射出(射出成形)により容器用のプリフォームを成形し、次いで所定のブロー成形温度に維持された該プリフォーム内にブロー用流体を供給して容器の形態に賦形することにより行われる。ただ、本発明においては、該プリフォーム内の空間に所定の液層を形成するための液体が存在する状態でブロー用流体が供給されることとなる。
【0020】
プリフォームの形態は、目的とする容器の形態によって異なり、例えば、2軸延伸ブロー容器では、試験管の形態を有しており、上部に容器の口部となる未延伸部分(キャップ締結するために螺子やサポートリングが形成されている部分)が形成され、このような形態のプリフォームは、通常、射出成形により成形される。
一方、ダイレクトブロー容器でのプリフォームは、パイプ形状を有しており、例えばボトル形状の容器の場合、容器の底部となる部分はピンチオフされて閉じられている。このようなプリフォームは、押出成形により成形される。
【0021】
尚、特に食品用のダイレクトブロー成形容器を成形するためのプリフォームでは、内容物が充填されるまでの滅菌のため、口部となる未延伸部分の上部が閉じられた形態で一体成形される。食品用のダイレクトブロー成形容器では、容器が柔軟性に富んで変形し易く、容器内の殺菌処理が困難だからである。
また、プリフォーム上端の閉塞部分は、押し出されてきたパイプ状の樹脂溶融物を、底部のピンチオフと同時に、ブロー流体用の細管(シリンジ)が内部を通って伸びている締め型によって閉じることにより形成される。従って、この閉塞部には、容器成形後にも該細管の空孔が形成されている。
【0022】
さらに、上記のプリフォームは、単層構造に限らず、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂による多層構造を有していてもよいことは勿論である。多層構造のプリフォームは、それ自体公知の方法により共射出や共押出により成形される。
【0023】
上述した形態を有する容器用プリフォームのブロー成形は、ブロー成形温度(具体的には、成形用樹脂のガラス転移温度(Tg)以上)に加熱されたプリフォームをブロー金型内に配置し、該プリフォーム内に、ブロー流体用の供給管を挿入してブロー用流体を供給することにより行われる。即ち、ブロー用流体によるブロー圧により、該プリフォーム(特に口部を除く部分)は膨張し、ブロー金型により冷却され、容器形状に賦形されることとなる。賦形された容器外面には、金型によって賦形されたものに発生するパーティングラインが形成される。
尚、ブロー成形温度への加熱は、プリフォーム成形後、一旦冷却されたものを再加熱することにより行ってもよいし、成形直後の加熱状態にあるプリフォームを用いることにより再加熱を省略することもできる。一般に、通常のダイレクトブロー成形では、押し出されて溶融状態にあるパイプ形状のプリフォームを、ブロー温度領域でブロー成形に供される。
【0024】
ところで、本発明においては、上述したブロー流体の吹き込みは、該プリフォーム内に所定の液体が存在する状態で行われる。このような液体の供給は、ブロー流体が吹き込まれたときにプリフォーム内空間に流体が存在している限り、任意の手段を採用することができるが、一般的には、ブロー流体と共にブロー流体用の供給管からミスト状に供給する方法や、容器を構成する樹脂と共押出して内面に供給する方法が好適である。
【0025】
上記のようにしてブロー流体を吹き込むことにより、プリフォーム内に供給された液体は、ブロー圧によってプリフォーム内面に押し付けられながらプリフォームと共に押し広げられることとなる。なお、ブロー圧としては、通常0.2〜5MPaの範囲で行われる。
このようにして成形されるブロー成形容器の内面には、液体の層が、容器の内面(延伸される部分)の全体にわたって薄く均一に形成されることとなる。
成形後、ブロー成形容器は、ブロー型から取り出され、この空容器には、内容物が充填され、キャップ等により口部を閉じて販売に供されることとなる。
【0026】
<ブロー成形容器>
以上のようにして形成されるブロー成形容器は、
図1に示されているように、容器壁1の内面(特にブローされている部分)に液体の層が全体にわたって均一に形成されている。
【0027】
例えば、
図2には、本発明が最も好適に適用される食品用ダイレクトブロー容器の成形直後の空容器の状態を示すが、全体として10で示すこの空容器は、上部に螺子等を備えた口部13を有しており、口部13に連なるブロー部分(即ち、胴部及び胴部を閉じるように形成されている底部を備えた延伸部分)の内面には、上記の液体の層3が形成されている。
また、口部13の上部には、これを閉じている閉塞部17が形成されている。この閉塞部17には、ブロー成形に当ってブロー用流体を供給するための供給管が挿入される小孔17aが供給されている。この小孔17aは、空容器10の内部に通じている。
【0028】
即ち、この空容器10は、このままユーザーに供給され、そこで、閉塞部17を切り取り、この状態で内容物を充填し、次いで、キャップを口部に締結して容器を密封して販売に供されることとなる。
内容物充填前の空容器10をこのような形態とするのは、先にも述べたように、容器10の内部を殺菌することが難しいため、滅菌状態を維持し且つ異物の侵入を防止するためである。また、ブロー成形に無菌エアーを用いることで、大気中に含まれる雑菌をボトル内に侵入させず、さらに、加熱されたプリフォームに液体が接触することで加熱殺菌することもできる。
【0029】
このように、本発明の容器では、ブロー成形時にプリフォーム内部に液体を存在させているため、上記のように上部が閉塞された空容器10であっても、その内部に液層3を形成することができる。例えば、液体をスプレー噴霧や浸漬により供給するような場合には、上記のような空容器10に液層3を形成することはできない。
【0030】
本発明の容器において、これに収容する内容物としては、液層3による滑り性による利点を最大限に活かすため、形態保持性を示さずに流動性を示す流動性物質が好適であり、例えば、粘稠なペースト乃至スラリー状の流動性物質(例えば25℃での粘度が100mPa・s以上のもの)、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス、コンディショナーなどが好適である。即ち、本発明の容器では、液層3が良好な滑り性を示すため、このような粘稠な流動性物質であっても、容器を傾倒或いは倒立させることにより、容器の内面に付着残存させることなく、速やかに排出することができるからである。特に前述した食品用のダイレクトブロー容器では、胴部をスクイズすることにより内容物が絞り出されるため、ケチャップやマヨネーズが内容物として収容されることとなる。
【0031】
一方、液層3を形成する液体としては、内容物に対して非混和性の液体(潤滑液)が使用される。内容物に対して混和性であると、この潤滑液が内容物と混ざり合ってしまい、容器内面から脱落してしまい、液層3が崩れてしまうこととなるからである。
【0032】
ところで、内容物と非混和性である液体とは、内容物と混和しなければよいのであり、大まかにいうと、水性の内容物に対しては親油性の液体が使用され、油性の内容物に対しては水或いは親水性液体である。一般的には、容器内に内容物を充填する際に、被覆率Fが前述した範囲内(0.35以上)となるような液を潤滑液として使用すればよい。特に、容器内面に対する表面張力(容器内面と潤滑液との界面張力)が、内容物に対する表面張力(内容物と潤滑液との界面張力)と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、本発明には好適である。
【0033】
また、上述の潤滑液は、容器内壁において厚みが薄くできるものが好ましい。潤滑液の厚みEの臨界値としては、潤滑液の毛管長κ
−1、および容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*を用いて下記式(2)で表現される。
E=2κ
−1sin(θ
*/2) (2)
本発明では、潤滑液の厚みEを薄くできるものが好ましいため、潤滑液の毛管長κ
−1、および容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*が小さいものが好ましい。特に、容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*としては、0度乃至40度、特に0度乃至20度であることが好適である。
【0034】
また、本発明においては、ブロー成形時における成形温度は通常、室温よりも高い温度であるため、スプレーコート法等と比較し、広範囲の粘度に対応した液体の薄い液層を形成することが可能である。大部分の液体は、温度が高いほど液体の粘度が低くなり、ブロー成形時において伸展性が増すことで、液層を形成しやすくなるためである。本発明で用いられる液体の粘度(23℃での値)としては、1mPa・s乃至1000mPa・s、特に、10mPa・s乃至500mPa・sであることが好適である。
スプレーコート法でも、同様に液体の温度を高くし、液体の粘度を下げる方法が考えられるが、液層を形成させる容器が樹脂製の場合、高温の液体を吹きつけることにより、樹脂が熱変形してしまうため、適用できる温度が制限され、用いることのできる液体の粘度は限定的となる。また、スプレーコート法で容器内面に形成する液層を薄くさせる場合、吹き付ける液体の微粒化が必須であるが、低粘度でない液体の微粒化は容易ではなく、薄い液層を形成することが困難であることは公知の通りである。
このような観点からも、ブロー成形容器内面に薄い液層を形成させる点において、本発明は極めて有効である。
【0035】
また、かかる潤滑液は、前述したブロー温度で液体として存在するもの(即ち、沸点がブロー温度よりも高いもの)が好ましい。即ち、ブロー温度よりも沸点が低いと、ブロー成形時に潤滑液が揮発してしまい、その後、室温に戻した時に液体となったとしても、液層3の厚みにムラを生じてしまい、場合によっては液層3が形成されていない部分が生じてしまうからである。
【0036】
上記のような観点から、容器内に収容される内容物の種類に応じて潤滑液を選択することが望ましく、例えば、水分含有の内容物(例えばケチャップ)に対して最も好適に使用される潤滑液としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などを挙げることができる。特に好ましいものは、中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリントリオレート及びグリセリンジアセトモノオレートに代表されるグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、ならびに食用油脂である。これらは、揮散し難く、しかも、食品添加物として認可されており、さらには、無臭であり、内容物のフレーバ−を損なわないという利点もある。
また、油性の内容物に対しては、沸点が上記範囲内であることを条件として、水あるいは親水性の高いイオン液体等が挙げられる。
さらに、乳化系の流動性物質に対しては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などが好適である。
【0037】
本発明において、上述した潤滑液から形成される液層3は、その量が10g/m
2以下、好ましくは8g/m
2以下の薄層であり、既に述べたように、ブローされている容器の内面全体にわたって均一に形成されている。即ち、本発明では、ブロー成形時に、上記の液体(潤滑液)をプリフォーム内部に存在させているため、このような薄い液層3をブローされている容器の内面全体にわたって均一に形成することが可能となっているわけである。即ち、かかる液層3の厚みを上記範囲よりも厚くしたとしても、その内容物に対する潤滑性は桁違いには向上せず、むしろ過度な量の潤滑液の存在により、潤滑液が脱落して、液溜まりとなって内容物と混ざったりする不都合を生じてしまうが、本発明では、このような不都合は有効に回避されている。
【0038】
また、かかる液層3の量は、0.1g/m
2以上、特に0.3g/m
2以上、最も好ましくは0.5g/m
2以上の範囲にあるのがよい。かかる厚みが薄すぎると、厚みにムラが生じ、液層3が存在していない部分が形成されてしまうおそれがあるからである。
【0039】
尚、液層3の厚み調整は、ブロー成形時に供給する潤滑液の量を、ブロー成形容器の内面の面積の大きさに応じて適宜の範囲に設定すればよい。この量の潤滑液がブロー成形容器の内面全体に押し広げられて液層3が形成されるからである。
また、ブロー成形容器の液層3の厚みは、容器から液層3を形成する潤滑液を、潤滑液と混和性の溶剤で抽出し、その重さを測定することにより、単位面積あたりの重さとして算出される。
【0040】
さらに、本発明においては、上記のような薄い液層3が容器内面の全体にわたって形成されていることから、容器内面の全体にわたって、下記式(1):
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、θは、容器内面での水接触角であり、
θ
Aは、前記液層上での水接触角であり、
θ
Bは、液層が形成されていない容器面での水接触角である、
で表される被覆率Fが0.35以上となっている。例えば、内容物が充填されていない空容器の胴部を任意の10か所で2cm×2cmの大きさに切り取り、その被覆率Fを測定すると、何れの被覆率Fも0.35以上となっている。即ち、このことから、前述した薄い液層3は、容器の内面全体を被覆するように均一に形成されていることが判る。
【0041】
本発明において、上述した容器は、容器の形態への成形が可能である限り、種々の熱可塑性プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルやオレフィン系樹脂などにより形成され、単層構造に限らず、多層構造を有していてもよいことは先にも述べた通りである。
また、容器の形態としては、ボトル、カップ、パウチなどが挙げられる。パウチとは、少なくとも1枚以上のフィルムを使用し、フィルムの周縁部をヒートシールすることにより作成される容器である。パウチ形成用のフィルムは、樹脂を円盤状のダイから押し出すインフレーション法やTダイから押し出すTダイ法により成形される。成形されるフィルムは、延伸、未延伸であってもよい。
【0042】
特に、前述したダイレクトブロー容器に本発明を適用する場合には、成形用樹脂として、それ自体公知のオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂を用いることができる。
例えば、オレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどにより形成される。勿論、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよい。さらには、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体およびこの(メタ)アクリル酸が金属イオンで架橋されたいわゆるアイオノマー樹脂であってもよい。また、前述した特許文献1(特開2007−284066号)に開示されている環状オレフィン系共重合体であってもよい。
一方、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0043】
尚、多層構造も特に制限されるものではないが、例えばダイレクトブロー容器では、スクイズ性が確保される程度の厚みに容器壁の全体厚みが調整されていることが必要である。
例えば、シャンプーやコンディショナー等のボトルに使用する場合においては、最内層を上記のオレフィン系樹脂により形成し、その外側に高密度ポリエチレンからなる2層構造とすることができる。
【0044】
上記の多層構造における中間層としては、一般的には、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)や芳香族ポリアミドなどのガスバリア性樹脂を用いて形成されるガスバリア層であることが好ましく、特にエチレンビニルアルコール共重合体を用いて形成されていることが最も好適である。即ち、中間層形成用の樹脂としてガスバリア性樹脂を用いることにより、中間層に酸素バリア性を付与することができ、特にエチレンビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、酸素透過による内容物の酸化劣化をも有効に抑制することができ、優れた滑落性を維持せしめると同時に、優れた内容物保存性を確保することができる。
このようなガスバリア中間層の好適な厚みは、一般に1乃至50μm、特に9乃至40μmの範囲である。
【0045】
また、上記のようなガスバリア性樹脂を中間層として用いる場合には、内外層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、接着剤樹脂層を介して中間層を設けることが好ましい。これにより、中間層をしっかりと内外層に接着固定することができる。このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には0.5乃至20μm、好適には1乃至8μm程度である。
【0046】
また、上記のような多層構造容器においては、この容器を成形する時に発生するスクラップ樹脂をバージンの最外層形成樹脂と混合してリグラインドの層を形成することもできる。この場合、成形性を維持しつつ、資源の再利用化を図るという観点から、スクラップ樹脂の量は、バージンの最外層樹脂100重量部当り10乃至60重量部程度の量とするのがよい。このような最外層隣接層の厚みは、包装容器の大きさや内容物の種類等によっても異なるが、容器壁の全体厚みが必要以上の厚みとならず且つスクラップ樹脂の有効利用が図れるような厚みとすればよく、一般に、20乃至400μm程度の厚みに設定される。
【実施例】
【0047】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び容器(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
【0048】
1.液体被覆率の測定
後述の方法で成形した容量500gのボトルの胴部の任意の10点から20mm×20mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、3μLの純水を試験片にのせ、水接触角θを測定した。得られた水接触角を用いて、下記式(1)より、ボトル内面の潤滑液の被覆率Fを求めた。
F=(cosθ−cosθ
B)/(cosθ
A−cosθ
B) (1)
式中、θは、容器内面での水接触角であり、
θ
Aは、前記液層を被覆した容器内面上での水接触角であり、
θ
Bは、液層が形成されていない容器内面での水接触角である、
潤滑液の被覆率Fを求めるにあたり、θ
Aとθ
Bの値として、下記水接触角の値を用いた。
θ
B:100.1°(高圧法低密度ポリエチレン(MFR=0.3)
単独での値)
θ
B:93.5°(環状オレフィン系共重合体単独での値)
θ
B:72.0°(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート単
独での値)
θ
B:65.8°(ポリエチレンテレフタレート単独での値)
θ
A:80.3°(中鎖脂肪酸トリグリセライドの液膜上での値)
【0049】
2.液層被覆量の測定
後述の方法で作製した容量500gのボトルを用いて、容器内面に形成された液層(潤滑液層)を、潤滑液と混和性の溶剤(ヘプタン)30mLで回収し、エバポレーターを用いて濃縮した後、残留物を蒸発皿へ移し取り、液層成分の重さを求めた。得られた重さを容器内面の面積で除し、ボトル内面における液層被覆量(g/m
2)とした。この値が小さい程、容器内面には薄い液層が形成されている。
【0050】
3.容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*の測定
後述の方法において、液層を形成せずに各種層構成の容器(ボトル)を成形した。成形したボトルの胴部から20mmx70mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、2μLの潤滑液を試験片にのせ、容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*を測定した。
この値が小さい程、潤滑液の薄膜化に適していることを示している。
【0051】
4.流動性内容物の滑落速度測定
後述の方法で作製した容量500gのボトルの胴部から20mmx70mmの試験片を切り出した。23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、試験片の内層が上になるように固定し、70mgの流動性内容物を試験片にのせ、45°の傾斜角における滑落挙動をカメラで撮影し、滑落挙動を解析し、移動距離−時間のプロットから滑落速度を算出した。この滑落速度を滑落性の指標とした。前記滑落速度の値が大きい程、内容物の滑落性が優れている。用いた流動性内容物は下記の通りである。なお、内容物の粘度として、音叉型振動式粘度系SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて25℃で測定した値も共に示す。
用いた流動性内容物;
キユーピーハーフ(キユーピー(株)製、粘度=1260mPa・s)
ケチャップ(カゴメ(株)製、粘度=1050mPa・s)
お好みソース(オタフクソース(株)製、粘度=560mPa・s)
【0052】
5.ボトル外観評価
後述の方法で作製したボトルにおいて、ボトル内面における潤滑液の液溜まりの有無を目視にて評価した。液溜まりが発生しなかったものを○、液溜まりが発生したものを×とした。液溜まりが発生しないものが良好なボトルである。
【0053】
<最内層形成用樹脂>
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min
密度;0.92g/cm
3
環状オレフィン系共重合体
(COC、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体)
Tg;80℃
密度;1.02g/cm
3
グリコール変性ポリエチレンテレフラレート(PETG)
Tg;80℃
密度;1.27g/cm
3
<最外層形成用樹脂>
高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.4g/10min
<接着剤層形成用樹脂>
無水マレイン酸変性ポリエチレン
変性ポリオレフィン
<ガスバリア層形成用樹脂>
エチレンビニルアルコール共重合体
(密度1.20g/cm
3、Tg60℃)
<潤滑液>
中鎖脂肪酸トリグリセライド
表面張力(23℃);28.8mN/m
粘度(23℃);33.8mPa・s
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、潤滑液の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0054】
<実施例1>
50mm押出機に最内層用の低密度ポリエチレン(MFR=0.3)、40mm押出機に最外層用の低密度ポリエチレン(MFR=0.4)、30mm押出機Aに接着剤層用の無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機Bにガスバリア層形成用のエチレンビニルアルコール共重合体を、それぞれペレットの形態で供給し、さらにパリソンの最内面を被覆する液層材料として中鎖脂肪酸トリグリセライドをポンプにより供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度20℃、ブロー圧0.7MPaにて公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量24gの5種6層(液層含む)の多層ボトルを作製した。このボトルの構成は次の通りである。
液層/樹脂最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/樹脂最外層
作製したボトルを用い、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、流動性内容物の滑落速度測定、およびボトル外観評価を行った。結果を表1にまとめて示す。
また、液体を供給せずボトルを成形し、容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*の測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
<実施例2>
容器の最内面を被覆する液層材料の供給量を変更した以外は実施例1と同様の手順・同一の材料で5種6層(液層含む)の多層ボトルを作製した。
作製したボトルを用い、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、流動性内容物の滑落速度測定、およびボトル外観評価を行い、さらに潤滑液の接触角θ
*についても、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
【0056】
<実施例3>
40mm押出機に最内層用の環状オレフィン系共重合体(COC)、50mm押出機に最外層用の低密度ポリエチレン(MFR=0.4)、30mm押出機Aに接着剤層用の無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機Bにガスバリア層形成用のエチレンビニルアルコール共重合体を、それぞれペレットの形態で供給し、さらにパリソンの最内面を被覆する液層材料として中鎖脂肪酸トリグリセライドをポンプにより供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度22℃、ブロー圧0.7MPaにて公知のダイレクトブロー成形法により、内容量500g、重量22gの5種6層(液層含む)の多層ボトルを作製した。このボトルの構成は次の通りである。
液層/樹脂最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/樹脂最外層
作製したボトルを用い、実施例1と同様にして、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、およびボトル外観評価を行い、さらに潤滑液の接触角θ
*についても、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
【0057】
<実施例4>
40mm押出機に最内層用のグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、50mm押出機に最外層用の低密度ポリエチレン(MFR=0.4)、30mm押出機Aに接着剤層形成用の変性ポリオレフィンを、それぞれペレットの形態で供給し、さらにパリソンの最内面を被覆する液層材料として中鎖脂肪酸トリグリセライドをポンプにより供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度22℃、ブロー圧0.7MPaにて公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量22gの4種4層(液層含む)の多層ボトルを作製した。このボトルの構成は次の通りである。
液層/樹脂最内層/接着層/樹脂最外層
作製したボトルを用い、実施例1と同様にして、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、およびボトル外観評価を行い、さらに潤滑液の接触角θ
*についても、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
【0058】
<実施例5>
射出成形機(NN75JS、新潟鐵工所製)を使用し、乾燥処理済みのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂をバレル設定温度280℃、サイクルタイム30秒にて射出成形し、重量24g(500mLPETボトル用)のPET単層からなる非晶プリフォームを成形した。
【0059】
成形したプリフォームを用いて、プリフォーム内面に液層形成材料として中鎖脂肪酸トリグリセライドを塗布し、プリフォーム温度100度、ブロー圧3.5MPaで公知の二軸延伸ブロー成形法により縦3倍、横3倍、面積9倍となる容量500mlの延伸ブローボトルを成形した。
作製したボトルを用い、実施例1と同様にして、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、およびボトル外観評価を行い、さらに潤滑液の接触角θ
*についても、実施例1と同様に行った。結果を表1にまとめて示す。
【0060】
<比較例1>
50mm押出機に最内層用の低密度ポリエチレン(MFR=0.3)、40mm押出機に最外層の低密度ポリエチレン(MFR=0.4)、30mm押出機Aに接着剤層の無水マレイン酸変性ポリエチレン、30mm押出機Bにガスバリア層形成用のエチレンビニルアルコール共重合体を、それぞれ、ペレットの形態で供給し、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融パリソンを押し出し、金型温度20℃、ブロー圧0.7MPaにて公知のダイレクトブロー成形法により内容量500g、重量24gの4種5層の多層ボトルを作製した。このボトルの構成は次の通りである。
樹脂最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/樹脂最外層
成形したボトル口部の閉塞部を切り、スプレーコート法により中鎖脂肪酸トリグリセライドをボトル内面に被覆した。コートした後、口部を下向きにして3分間保持しボトル内面に存在する余分な中鎖脂肪酸トリグリセライドを除去した。
作製したボトルを用い、前述の液体被覆率の測定、液層被覆量の測定、容器内面を形成する樹脂上における潤滑液の接触角θ
*の測定、流動性内容物の滑落速度測定、およびボトル外観評価を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0061】
<比較例2>
比較例1と同様の手順で4種5層の多層ボトルを作製した。このボトルの構成は次の通りである。
樹脂最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/樹脂最外層
成形したボトルの内面を液体で被覆せずに、流動性内容物の滑落速度測定、およびボトル外観評価を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1より、プリフォーム内面に液体が存在する状態でブロー成形した実施例1〜5においては、ボトル内面に10g/m
2以下の薄い液層が被覆されていることが分かる。一方、ボトル成形後にスプレーコートによりボトル内面に液層を形成させた比較例1では、44g/m
2と厚い液層が被覆されている。このことから、本実施例の手法がボトル内面に薄い液層を形成することに非常に有効であることが確認できる。また、ボトル内面の液体被覆率Fについて、実施例1および2と比較例1とを比較すると、実施例では比較例と同等以上の被覆率であることが分かる。
これらのことから、本発明においては、ボトル内面への液層形成において、被覆率を下げることなく、液層を薄くすることが可能であると言える。
流動性内容物の滑落速度に関して、液層を形成していない比較例2では、いずれの内容物に対しても滑落速度の値が小さく、滑落性が悪いことが分かるが、液層を形成したものでは、いずれの内容物に対しても滑落速度の値が10倍以上の値となっており、滑落性が優れていることが分かる。
ボトル外観評価について、液層を被覆していない比較例2、および液層被覆量が10g/m
2以下と小さい実施例1〜5では液溜まりが発生しなかったが、液層被覆量が44g/m
2と大きい比較例1では液溜まりが発生した。このことから、液溜まりの発生を抑制するためには、ボトル内面の被覆量を小さくすることが必要であることが分かる。
以上の結果より、ボトル内面に10g/m
2以下の薄い液層を形成することにより、ボトル内面に液溜まりが発生せずに、かつ、滑落性に優れたボトルを提供できることが明らかになった。