特許第6222024号(P6222024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222024
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   F16H61/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-187896(P2014-187896)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-61328(P2016-61328A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】永井 祥太郎
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−017454(JP,A)
【文献】 特開平06−313470(JP,A)
【文献】 特開2009−121521(JP,A)
【文献】 特開2003−194197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレートプレートを挟んで上下に積層される複数のバルブボディを有する油圧制御ユニットを備えた自動変速機であって、
前記複数のバルブボディは、変速機ケース内の下部に配置され、
前記複数のバルブボディは、第1バルブボディと、該第1バルブボディの下方に設けられ、平面視で前記第1バルブボディよりも大きい第2バルブボディと、を有し、
前記第2バルブボディにおける前記第1バルブボディが重ねられていない部分に、作動油を制御する制御弁が設けられ、
前記制御弁は、前記第2バルブボディに形成されたボアと、該ボアに挿入される弁体と、前記ボアに連通するように前記第2バルブボディに形成されたドレインポートと、を備えており、
前記第2バルブボディは、該第2バルブボディの上面から上方に突出して前記ドレインポートを構成する周側壁を備え、
前記周側壁の上面は開口部とされ、
前記周側壁の上縁部には、該周側壁を厚さ方向に貫通する溝部が設けられ、
前記第1バルブボディと前記第2バルブボディの間に挟まれた前記セパレートプレートは、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとの合わせ面よりも外側に張り出した延設部を備え、
前記開口部は、前記延設部によって閉じられており、
前記溝部と前記延設部との間に、前記ドレインポートと前記バルブボディの外部とを連通させるドレイン流出口が形成されている
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
セパレートプレートを挟んで上下に積層される複数のバルブボディを有する油圧制御ユニットを備えた自動変速機であって、
前記複数のバルブボディは、変速機ケース内の下部に配置され、
前記複数のバルブボディは、第1バルブボディと、該第1バルブボディの下方に設けられ、平面視で前記第1バルブボディよりも大きい第2バルブボディと、を有し、
前記第2バルブボディにおける前記第1バルブボディが重ねられていない部分に、作動油を制御する制御弁が設けられ、
前記制御弁は、前記第2バルブボディに形成されたボアと、該ボアに挿入される弁体と、前記ボアに連通するように前記第2バルブボディに形成されたドレインポートと、を備えており、
前記第2バルブボディは、該第2バルブボディの上面から上方に突出して前記ドレインポートを構成する周側壁を備え、
前記周側壁の上面は開口部とされ、
前記第1バルブボディと前記第2バルブボディの間に挟まれた前記セパレートプレートは、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとの合わせ面よりも外側に張り出した延設部を備え、
前記延設部は、前記開口部を上側から覆うように該開口部の上方に離間して配置されている
ことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
前記開口部は、前記第2バルブボディの上面における第1バルブボディの端縁に隣接した部位に設けられている
ことを特徴とする前記請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記制御弁は、前記第2バルブボディのボア内を水平方向に摺動可能な前記弁体を有する
ことを特徴とする前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に関し、特に、セパレートプレートを挟んで上下に積層される複数のバルブボディを有する油圧制御ユニットを備えた自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される自動変速機は一般に、エンジンの出力軸に直結されたトルクコンバータと、トルクコンバータの出力側に連結された変速機構とを有し、変速機構内の動力伝達経路を選択的に切り換えて車両の運転状態に応じて所定の変速段を達成するように構成されている。
【0003】
この自動変速機の変速機構として、複数の遊星歯車機構と、複数の湿式多板式のクラッチ及びブレーキなどの摩擦締結要素と、該摩擦締結要素を選択的に締結するための油圧制御回路とを備え、該油圧制御回路によって各摩擦締結要素の締結状態を組み合わせることにより遊星歯車機構の変速比を変更して各変速段を得るようにしたものが知られている。
【0004】
この油圧制御回路は、バルブボディにスプール弁やソレノイド弁等の各種バルブを組み込んでなる油圧制御ユニットによって構成され、オイルポンプから供給される作動油の油圧制御や供給先の切換制御等を行う。このバルブには、通例、元圧が供給される入力ポートと、該入力ポートに供給された油圧を供給先に送り出す出力ポートと、供給先に供給されていた油圧を排出するドレインポートと、が設けられている。
【0005】
このドレインポートは、バルブボディの弁体(スプール弁にあってはスプール、ソレノイド弁にあってはプランジャ部)が挿入されるボアの所定の部位を外部への開口部に接続させたもので、スプールやプランジャの移動により、前記所定の部位と開口部とが連通/遮断されるように構成されている。
【0006】
通例、前記開口部は下向きに形成されるが、バルブボディにおける当該バルブの配設位置や、他の構成(他のバブル、締結部材、油路等)との位置関係、さらにはバルブボディの加工上の理由等で開口部が上向きに形成されることがある。
【0007】
ところが、開口部が上向きの場合、通例、油圧制御ユニットは変速機構の直下に配置されるので、変速機構で発生するコンタミネーション(以下、「コンタミ」と略称する。)が落下して開口部からドレインポート内に侵入し、弁体のクリアランス部に噛み込むことによって弁体のロックや摺動不良を発生させるおそれがある。摩擦締結要素に対する油圧の供給/排出を切り換えるバルブの場合、弁体の作動不良によって摩擦締結要素への油圧の給排出が困難となり、その制御が正常に行えなくなり、変速段切換の制御性が悪化するおそれがある。
【0008】
この課題に対して、例えば、特許文献1には、図7に示すように、上向きの開口部101からバルブボディ100の内部に侵入したコンタミを溜めるための溜まり部102をドレインポート103の上方に設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4220503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、この従来技術の場合、バルブボディ100の内部に溜まり部102を新たに設けるスペースが必要になり、油圧制御ユニットが大型化するので、この油圧制御ユニットの自動変速機への組み込み性や自動変速機の車載性に影響する可能性があった。
【0011】
そこで、本発明は、油圧制御ユニットを大型化することなく、開口部からドレインポート内にコンタミが入るのを防止できる自動変速機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動変速機は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
セパレートプレートを挟んで上下に積層される複数のバルブボディを有する油圧制御ユニットを備えた自動変速機であって、
前記複数のバルブボディは、変速機ケース内の下部に配置され、
前記複数のバルブボディは、第1バルブボディと、該第1バルブボディの下方に設けられ、平面視で前記第1バルブボディよりも大きい第2バルブボディと、を有し、
前記第2バルブボディにおける前記第1バルブボディが重ねられていない部分に、作動油を制御する制御弁が設けられ、
前記制御弁は、前記第2バルブボディに形成されたボアと、該ボアに挿入される弁体と、前記ボアに連通するように前記第2バルブボディに形成されたドレインポートと、を備えており、
前記第2バルブボディは、該第2バルブボディの上面から上方に突出して前記ドレインポートを構成する周側壁を備え、
前記周側壁の上面は開口部とされ、
前記周側壁の上縁部には、該周側壁を厚さ方向に貫通する溝部が設けられ、
前記第1バルブボディと前記第2バルブボディの間に挟まれた前記セパレートプレートは、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとの合わせ面よりも外側に張り出した延設部を備え、
前記開口部は、前記延設部によって閉じられており、
前記溝部と前記延設部との間に、前記ドレインポートと前記バルブボディの外部とを連通させるドレイン流出口が形成されている
ことを特徴とする。
また、本願の請求項2に記載の発明は、
セパレートプレートを挟んで上下に積層される複数のバルブボディを有する油圧制御ユニットを備えた自動変速機であって、
前記複数のバルブボディは、変速機ケース内の下部に配置され、
前記複数のバルブボディは、第1バルブボディと、該第1バルブボディの下方に設けられ、平面視で前記第1バルブボディよりも大きい第2バルブボディと、を有し、
前記第2バルブボディにおける前記第1バルブボディが重ねられていない部分に、作動油を制御する制御弁が設けられ、
前記制御弁は、前記第2バルブボディに形成されたボアと、該ボアに挿入される弁体と、前記ボアに連通するように前記第2バルブボディに形成されたドレインポートと、を備えており、
前記第2バルブボディは、該第2バルブボディの上面から上方に突出して前記ドレインポートを構成する周側壁を備え、
前記周側壁の上面は開口部とされ、
前記第1バルブボディと前記第2バルブボディの間に挟まれた前記セパレートプレートは、前記第1バルブボディと前記第2バルブボディとの合わせ面よりも外側に張り出した延設部を備え、
前記延設部は、前記開口部を上側から覆うように該開口部の上方に離間して配置されている
ことを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の自動変速機であって、
前記開口部は、前記第2バルブボディの上面における第1バルブボディの端縁に隣接した部位に設けられている
ことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機であって、
前記制御弁は、前記第2バルブボディのボア内を水平方向に摺動可能な前記弁体を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成により、本願各請求項に係る発明によれば、次の効果が得られる。
【0017】
請求項1及び請求項2に係る発明によれば、ドレインポートに開口部が開口されているので、従来技術に比べて、ドレインポートから開口部までの距離を短くすることができる。また、セパレートプレートに設けられた延設部によって、ドレインポートからの作動油の流出路を確保しながら開口部を上方から覆うので、開口部を上方から覆うための専用のカバー部材を別途設ける必要がない。したがって、油圧制御ユニットを大型化させずに、上方で発生したコンタミが落下して開口部からドレインポート内に入るのを防止できる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、開口部は第2バルブボディの上面における第1バルブボディの端縁に隣接した部位に設けられているので、セパレートプレートの延設部の延長する量を低減できる。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、ボア内を水平方向に摺動可能な弁体を有するコンタミによる影響(例えばスプール弁の場合、スプールのスティック)を受けやすい制御弁において、簡素な構成でその影響を効果的に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の油圧制御ユニットを示す側面図である。
図2図1の油圧制御ユニットを上方から見た平面図(a)と、セパレートプレート延設部を上方から見た一部拡大図(b)である。
図3図2の油圧制御ユニットをA−A断面で見た拡大断面図(a)と、矢印Cで見た矢視図(b)である。
図4】同油圧制御ユニットをB−B断面で見た拡大断面図である。
図5】同油圧制御ユニットの油圧回路の要部を示す説明図である。
図6】同油圧制御ユニットの変形例をB−B断面で見た拡大断面図である。
図7】従来の油圧制御ユニットの構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る自動変速機について、図1〜6図を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る自動変速機1は、該自動変速機1に設けられた複数の摩擦締結要素(図示しない)を制御する油圧制御ユニット2を備える。油圧制御ユニット2は、変速機ケースC内の底部に配設されたバルブボディ10を備える。バルブボディ10は、上層部材11と、該上層部材11の下方に設けられた中層部材12と、該中層部材12の下方に設けられた下層部材13と、を上下に積層して構成されている。上層部材11と中層部材12の間には、第1セパレートプレート14が挟まれると共に、中層部材12と下層部材13の間には、第2セパレートプレート15が挟まれた状態で、これら部材11〜13は多数のボルト16によって一体的に結合されている。
【0023】
図2(a)にも示すように、平面視で中層部材12は上層部材11よりも大きい。すなわち、中層部材12は、その上面において上層部材11が存在する部位(本実施形態の場合、図2(a)の左側略半分)と、上層部材11が存在しない部位(本実施形態の場合、図2(a)の右側略半分)とを有し、この上層部材11が存在しない部位は、変速機ケースCの内部空間に解放されている。
【0024】
上述の上層部材11と中層部材12の間に挟まれた第1セパレートプレート14は、その上面が上層部材11によって覆われた本体部14aと、該本体部14aと連続し、その上面が上層部材11によって覆われずに上層部材11の端縁11aから外側に突出した、すなわち、中層部材12の上層部材11が存在しない部位の上方まで延びた延設部14bと、を有する。図2(b)は、図2(a)の延設部14bの拡大図である。なお、中層部材12と下層部材13の間に挟まれた第2セパレートプレート15は、その上面の略全面が中層部材12によって覆われている。
【0025】
なお、上層部材11、中層部材12及び下層部材13は、アルミ合金製の鋳造品にボルト穴や弁体を挿入するボア等を後加工することにより製造される。また、セパレートプレート14、15は、所定形状に打ち抜いた圧延鋼板にボルト穴や油孔等を加工することにより製造される。
【0026】
上述のように構成されたバルブボディ10の内部には、複数のバルブや油路でなる自動変速機1の油圧制御用コントロールバルブ機構17、17’…17’(以下、「バルブ機構」という。)が組み込まれている。
【0027】
より詳細に説明するに、上層部材11には、マニュアルバルブ18がその操作部を外部に露出させて組み込まれている。マニュアルバルブ18は、当該車両の運転者によるシフトレバーの操作に連動して移動し、選択されたレンジに応じてバルブ機構17、17’…17’の油路を切り換えるように構成されている。
【0028】
中層部材12には、複数のバルブ機構17、17’…17’が設けられている。バルブ機構17、17’…17’は、中層部材12の前面から後面(図2(a)で下から上)に向けて互いに平行に水平姿勢で設けられている。
【0029】
下層部材13には、リニアソレノイドバルブやON−OFFソレノイドバルブ等の複数のソレノイドバルブ19,19’…19’が取り付けられている。これらソレノイドバルブ19,19’…19’は、後部を外部に露出させた状態で、前部が下層部材13の下面に設けられた孔に挿入され、該下層部材13の下面に水平姿勢で取り付けられている。
【0030】
また、バルブボディ10(上層部材11)の上面には、電子制御ユニット20とセンサユニット30が配設されている。
【0031】
電子制御ユニット20は、自動変速機1または該自動変速機1が搭載された車両の状態に応じて、バルブ機構17、17’…17’を電気的に制御するものであり、本体21の上面には、車両の各部に配置された各種センサからの導かれたハーネス(図示せず)の集合コネクタ22が凸設されている。
【0032】
センサユニット30は、自動変速機1の各部の状態を検出する複数のセンサで構成され、ハウジング31の上面から斜め上方に延びる回転センサ32、33と、該ハウジング31に内装させたポジションセンサ(図示せず)とが備えられている。回転センサ32、33は、磁界の変化を検出してパルス信号を出力するホール素子を用いたものであり、各先端部が自動変速機1の変速機構を構成する回転部材Bの周面に近接して配置され、該回転部材Bの回転に伴う磁界の変化に基づいて回転部材Bの回転速度を検出するように構成されている。また、ポジションセンサは、マニュアルバルブ18の操作位置に基づき、選択されているレンジを検出するように構成されている。
【0033】
これら回転センサ32、33及びポジションセンサからの信号が電子制御ユニット20に入力され、これら信号と、集合コネクタ22から入力される車両各部の状態を示す信号とに基づき、電子制御ユニット20による所定の制御が行われる。
【0034】
ここで、複数のバルブ機構17、17’…17’のうち、中層部材12の中央付近に設けられたバルブ機構17について、図3図5を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0035】
図3(a)に示すように、バルブ機構17は、いわゆるスプール式のバルブであり、中層部材12の前面(図3(a)で左側面)に開口する有底のスプール穴41と、該スプール穴41の軸方向に移動可能な円柱状のスプール42と、により構成されている。スプール穴41は、例えば、中層部材12の前面からその軸方向を水平方向に向けて穴開け加工することにより形成される。スプール42は、大径部42aと小径部42bとを有し、該大径部42aは、その外周面がこれに対応する位置にあるスプール穴41の内周面と気密性を確保しながら、スプール穴41内を水平方向に摺動可能に形成されている。
【0036】
また、スプール穴41内の底部にはリターンスプリング43が挿入されており、該リターンスプリング43は、スプール42をスプール穴41の開口部41a側(図3(a)の左側)に常時付勢している。また、スプール42及びリターンスプリング43が挿入されたスプール穴41の開口部41aは、栓44によって封止されている。さらに、中層部材12における栓44よりも開口部41a側には、その上面から棒状のストッパ45が挿入され、該ストッパ45によって栓44がスプール穴41から抜け出ないように係止されている。
【0037】
スプール穴41の内周面には、以下に示す複数のポート51〜53が開口している。
【0038】
信号圧ポート51は、バルブ機構17の作動を制御する信号圧を導入するための信号圧ライン(図示しない)が接続されている。なお、図3(a)は、バルブ機構17に信号圧が導入されていない状態を示している。
【0039】
ポート52、52’…52’は、バルブ機構17の作動によって流路が切り換えられる、図示しないオイルポンプや摩擦締結要素等に接続された複数のライン61、61が接続されている。
【0040】
ドレインポート53は、バルブボディ10の上方に開口する開口部53aが設けられている。開口部53aは、中層部材12の上面における上層部材11が存在しない部位に設けられており、本実施形態の場合、図2(b)、図4に示すように、中層部材12の上面における上層部材11の端縁11aに隣接した部位に設けられている。
【0041】
本実施形態の場合、図2(b)、図4に示すように、中層部材12は、開口部53aを画成する周側壁53bの上面に、平面視で上層部材11の端縁11aと略垂直な方向であって、開口部53aから周側壁53bの外側面まで水平方向に延びる溝部54が形成されている。
【0042】
上述の開口部53aと溝部54は、図3(b)、図4に示すように、第1セパレートプレート14の延設部14bによって上方から覆われている。これによって、開口部53aをその上面に密接して上方から覆う第1セパレートプレート11の延設部14bと溝部54との間には、平面視で開口部53aから周側壁53bの外側面まで延びる、バルブボディ10の外部へ作動油を排出するためのドレイン流出口55が形成されている。すなわち、第1セパレートプレート14の延設部14bは、ドレインポート53からの作動油の流出路を確保しながら、開口部53aを上方から覆っている。
【0043】
上述の構成によれば、スプール穴41内の作動油は、バルブボディ10の内部においてドレインポート53からこれに連通するドレイン流出口55まで流れ、このドレイン流出口55からバルブボディ10の外部に流出する。流出した作動油は、バルブボディ10の外側を伝わって流れ落ちて摩擦締結要素の冷却等に用いられるオイルDとして変速機ケースCの底部に溜められる。
【0044】
図5に示すように、本実施形態の場合、バルブ機構17のポート52には、ソレノイドバルブ19のドレインライン71が接続されている。ソレノイドバルブ19には、供給油路72を介して油圧が供給され、ソレノイドバルブ19とクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素73とがライン74を介して接続されている。
【0045】
したがって、摩擦締結要素73を締結状態から解放状態に切り換える際、ソレノイドバルブ19を供給油路72から摩擦締結要素73への油圧の供給を止めてライン74とドレインライン71を連通するように切り換えると、摩擦締結要素73内にあるオイルが、ライン72及びドレインライン71を介してバルブ機構17のポート52に入力される。バルブ機構17をポート52とドレインポート53が内部で連通されるように切り換えると、ポート52に入力されたオイルは、ドレインポート53のドレイン流出口55からバルブボディ10の外部に排出される。
【0046】
次に、油圧制御ユニット2の変形例について図6を参照しながら説明する。
【0047】
図6に示すように、油圧制御ユニット2の変形例は、延設部14bが開口部53aの上面と接触せずに、この上面から所定の隙間を介して上方に離間して設けられている。そのため、この変形例の場合、開口部53a自体が作動油がバルブボディ10の外部に流出するためのドレイン流出口となっている。すなわち、この変形例の場合も前述の実施形態と同様に、第1セパレートプレート14の延設部14bは、ドレインポート53からの作動油の流出路を確保しながら、開口部53aを上方から覆っている。
【0048】
この変形例の場合、開口部53aの上面と延設部14bとの間であって、上層部材11の端縁11a側以外の三方に解放された隙間から作動油がバルブボディ10の外部に流出可能であるので、溝部54を設けた前述の実施形態に比べて、作動油が流出するドレイン流出口の面積をより大きく確保することができる。
【0049】
以上により、本実施形態によれば、ドレインポート53に開口部53aが開口されているので、従来技術に比べて、ドレインポート53から開口部53aまでの距離を短くすることができる。また、第1セパレートプレート14に設けられた延設部14bによって、ドレインポート53からの作動油の流出路を確保しながら開口部53aを上方から覆うので、開口部53aを上方から覆うための専用のカバー部材を別途設ける必要がない。したがって、油圧制御ユニット2を大型化させずに、上方で発生したコンタミが落下して開口部53aからドレインポート53内に入るのを防止できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、開口部53aは中層部材12の上面における上層部材11の端縁11aに隣接した部位に設けられているので、開口部53aを上方から覆うために第1セパレートプレート14の延設部14bを延長する量を低減できる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、ボア41内を水平方向に摺動可能なスプール42を有するので、スプール42のスティック等のコンタミによる影響を受けやすいバルブ機構17において、簡素な構成でその影響を効果的に排除することができる。
【0052】
なお、本発明は例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0053】
例えば、本実施形態に記載された技術は、バルブ機構17のドレインポート53の開口部53aを上層部材11に隣接して設けたが、これに限るものではない。延設部14bが届く範囲であれば、上層部材11から離間した位置に開口部53aを設けてもよい。
【0054】
また、本実施形態に記載された技術は、1つの延設部14bで1つの開口部53aを上方から覆ったが、これに限るものではない。例えば、1つの延設部14bで複数の開口部53aの上方を覆ってもよい。また、1つまたは複数の開口部53aの上方を覆う延設部14bを複数設けてもよい。
【0055】
また、本実施形態に記載された技術は、溝部54を平面視で上層部材11の端縁11aと略垂直な方向に延びるように設けたが、これに限るものではない。例えば、溝部54を上層部材11の端縁11aと平行する方向またはこの端縁11aに対して傾斜する方向に延びるように設けてもよい。また、溝部54を設ける個数も1つに限らず、複数設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明によれば、油圧制御ユニットを大型化することなく、開口部からドレインポート内にコンタミが入るのを防止できるので、自動変速機及び該自動変速機が搭載された車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0057】
1 自動変速機
2 油圧制御ユニット
10 バルブボディ
11 上層部材(第1バルブボディ)
12 中層部材(第2バルブボディ)
14 第1セパレートプレート(セパレートプレート)
14b 延設部
17 コントロールバルブ機構(制御弁)
42 スプール(弁体)
53 ドレインポート
53a 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7