(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気液分離部(30)の内部には、前記第1熱交換部(12)から流入した前記冷媒を外部へ流出させる冷媒流れと、前記第1熱交換部(12)から流入した冷媒を前記第2熱交換部(62)へ流出させる冷媒流れとが形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型熱交換器。
さらに、複数の第2板状部材(61)が互いに積層されて接合されることにより、前記複数の第2板状部材(61)同士の間に、前記冷媒が流れる複数の第2冷媒流路(621)、および第2熱媒体が流れる複数の第2熱媒体流路(622、623)が形成された第2熱交換部(62)を備え、
前記第2板状部材(61)における前記冷媒の流れ方向の長さは、前記第1板状部材(11)における前記冷媒の流れ方向の長さよりも短くなっており、
前記第2熱交換部(62)は、前記第2天井板(19)に接合されており、
前記第2冷媒流路(621)は、前記気液分離部(30)と連通しており、
前記第2天井板(19)における前記第2熱交換部(62)が接合されている部位以外の部位には、乾燥剤(95)を前記気液分離部(30)内に挿入するための挿入口(96)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の積層型熱交換器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1に示す熱交換器10は、車両用空調装置の冷凍サイクルを構成している。熱交換器10は、冷凍サイクルの高圧側冷媒と冷却水とを熱交換して高圧側冷媒を凝縮させる凝縮器である。なお、本実施形態の冷却水が、本発明の第1熱媒体に相当している。
【0012】
冷却水としては、例えば、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体等を用いることができる。本実施形態では、冷却水として、エチレングリコール系の不凍液(LLC)が用いられている。
【0013】
熱交換器10は、多数の第1板状部材11(以下、単に板状部材11と略称する)が積層されて接合されることによって一体的に形成されている。以下では、板状部材11の積層方向(
図1の例では上下方向)を板積層方向と言い、板積層方向の一端側(
図1の例では上端側)を板積層方向一端側と言い、板積層方向の他端側(
図1の例では下端側)を板積層方向他端側と言う。
【0014】
板状部材11は細長の略矩形状の板材であり、具体的材質としては、例えば、アルミニウム芯材にろう材をクラッドしたクラッド材が用いられる。
【0015】
略矩形状の板状部材11の外周縁部には、略板積層方向(換言すれば、板状部材11の板面と略直交する方向)に突出する張出部111が形成されている。多数の板状部材11は、互いに積層された状態で張出部111同士がろう付けにより接合されている。多数の板状部材11は、張出部111の突出先端が互いに同じ側(
図1の例では略下方側)を向くように配置されている。
【0016】
多数の板状部材11は、第1熱交換部12(以下、単に熱交換部12と略称する)、冷媒用第1タンク空間13、冷媒用第2タンク空間14、冷却水用第1タンク空間15および冷却水用第2タンク空間16を形成している。
【0017】
熱交換部12は、複数の第1冷媒流路121(以下、単に冷媒流路121と略称する)および複数の第1冷却水流路122(以下、単に冷却水流路122と略称する)で構成されている。なお、本実施形態の冷却水流路122が、本発明の第1熱媒体流路に相当している。
【0018】
複数の冷媒流路121および複数の冷却水流路122は、多数枚の板状部材11同士の間に形成されている。冷媒流路121および冷却水流路122の長手方向は、板状部材11の長手方向と一致している。
【0019】
冷媒流路121および冷却水流路122は板積層方向に1本ずつ交互に積層配置(並列配置)されている。板状部材11は、冷媒流路121と冷却水流路122とを仕切る隔壁の役割を果たしている。冷媒流路121を流れる冷媒と、冷却水流路122を流れる冷却水との熱交換は、板状部材11を介して行われる。
【0020】
冷媒用第1タンク空間13および冷却水用第1タンク空間15は、熱交換部12に対して、冷媒流路121および冷却水流路122の一方側(
図1の例では右方側)に配置されている。冷媒用第2タンク空間14および冷却水用第2タンク空間16は、熱交換部12に対して、冷媒流路121および冷却水流路122の他方側(
図1の例では左方側)に配置されている。
【0021】
冷媒用第1タンク空間13および冷媒用第2タンク空間14は、複数の冷媒流路121に対して冷媒の分配および集合を行う。冷却水用第1タンク空間15および冷却水用第2タンク空間16は、複数の冷却水流路122に対して冷却水の分配および集合を行う。
【0022】
冷媒用第1タンク空間13、冷媒用第2タンク空間14、冷却水用第1タンク空間15および冷却水用第2タンク空間16は、板状部材11の四隅に形成された連通孔によって構成されている。本実施形態では、略矩形状の板状部材11の四隅のうち対角線上にある2つの隅部に、冷媒用第1タンク空間13および冷媒用第2タンク空間14が設けられており、残りの2つの隅部に冷却水用第1タンク空間15および冷却水用第2タンク空間16が設けられている。
【0023】
熱交換部12を構成する多数枚の板状部材11のうち最も板積層方向一端側に位置する最端板状部材17には、第1ジョイント21および第1冷却水パイプ22が取り付けられている。第1ジョイント21は、冷媒配管を接合するための部材であり、熱交換器10の冷媒入口101を形成している。第1冷却水パイプ22は、熱交換器10の冷却水出口102を形成している。
【0024】
本実施形態では、第1ジョイント21は、最端板状部材17の長手方向における一端側(
図1の例では右方側)に設けられている。また、第1冷却水パイプ22は、最端板状部材17の長手方向における他端側(
図1の例では左方側)に設けられている。
【0025】
熱交換部12を構成する多数枚の板状部材11のうち、最も板積層方向他端側、すなわち板積層方向の最外側に位置する第1天井板18は、他の板状部材11と比較して、張出部111の板積層方向の長さが長くなっている。第1天井板18には、当該第1天井板18との間に空間を形成するように、板状の第2天井板18がろう付けにより接合されている。この空間は、内部に流入した冷媒の気液を分離するとともに冷凍サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離部30を構成している。
【0026】
図2および
図4に示すように、第1天井板18における重力方向下方側には、熱交換部12の冷媒流路121を流れる冷媒を気液分離部30に流入させる冷媒流入部181が形成されている。冷媒流入部181は、第1天井板18に貫通孔を形成することにより構成されている。より詳細には、冷媒流入部181は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面(
図2の破線部参照)よりも、重力方向下方側に配置されている。
【0027】
第1天井板18における重力方向上方側には、後述する第1内部冷却水パイプ41が挿入される第1貫通孔182が形成されている。より詳細には、第1貫通孔182は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも、重力方向上方側に配置されている。本実施形態では、冷媒流入部181および第1貫通孔182は、ともに、第1天井板18の長手方向における一端側(
図2の例では右方側)に配置されている。
【0028】
図3および
図4に示すように、第2天井板19における重力方向下方側には、気液分離部30から液相冷媒を外部へ流出させる冷媒流出部191が設けられている。冷媒流出部191は、第2天井板19に貫通孔を形成することにより構成されている。より詳細には、冷媒流出部191は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも、重力方向下方側に配置されている。
【0029】
第2天井板19における重力方向上方側には、後述する第1内部冷却水パイプ41が挿入される第2貫通孔192が形成されている。第2貫通孔192の内周面と第1内部冷却水パイプ41の外表面とは、ろう付けにより接合されている。
【0030】
より詳細には、第2貫通孔192は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも、重力方向上方側に配置されている。本実施形態では、第2貫通孔192は、第2天井板18の長手方向における一端側(
図3の例では右方側)に配置されている。一方、冷媒流出部191は、第2天井板18の長手方向における他端側(
図2の例では左方側)に配置されている。
【0031】
本実施形態では、
図3に示すように、第2天井板19における重力方向下方側には、気液分離部30の内圧の上昇により第2天井板19にかかる応力を吸収するための突起193が設けられている。この突起193を設けることにより、気液分離部30の剛性を向上させることができる。また、気液分離部30の重力方向下方側には、液相冷媒中の水分を除去する乾燥剤31が設けられている。
【0032】
図1および
図4に示すように、第2天井板19には、第2ジョイント23および第2冷却水パイプ24が取り付けられている。第2ジョイント23は、冷媒配管を接合するための部材であり、熱交換器10の冷媒出口103を形成している。第2冷却水パイプ24は、熱交換器10の冷却水入口104を形成している。
【0033】
冷媒入口101は、冷媒用第1タンク空間13に連通している。冷媒用第1タンク空間13は、冷媒流入部181を介して、気液分離部30に連通している。気液分離部30は、冷媒流出部191を介して、冷媒出口103に連通している。
【0034】
図4に示すように、気液分離部30の内部には、冷却水が流通するとともに、冷却水入口104と冷却水用第1タンク空間15とを連通させる第1内部冷却水通路40が設けられている。具体的には、気液分離部30の内部には、第2冷却水パイプ24と冷却水用第1タンク空間15とを接続する第1内部冷却水パイプ41が設けられている。この第1内部冷却水パイプ41により、第1内部冷却水通路40が構成されている。
【0035】
したがって、
図1および
図4に示すように、冷却水入口104は、第1内部冷却水通路40を介して、冷却水用第1タンク空間15に連通している。また、冷却水出口102は、冷却水用第2タンク空間16に連通している。
【0036】
図5に示すように、本実施形態では、熱交換部12を構成する多数枚の板状部材11は、当該板状部材11の四隅に板積層方向の一端側または他端側に向かって突出する略円筒状の突出部11fを有している。この突出部11fにより、冷媒用第1タンク空間13、冷媒用第2タンク空間14、冷却水用第1タンク空間15および冷却水用第2タンク空間16が、それぞれ形成されている。
【0037】
熱交換部12を構成する多数枚の板状部材11のうち、板積層方向の略中央部に位置する中央板状部材11Aは、冷媒用第1タンク空間13を構成する突出部11fを閉塞する閉塞部11gを有している。これにより、冷媒用第1タンク空間13は板積層方向に2つの空間に仕切られている。なお、閉塞部11gは、突出部11f、すなわち中央板状部材11Aと一体に形成されている。
【0038】
したがって、
図1の実線矢印に示すように、冷媒入口101から流入した冷媒は、板積層方向一端側の冷媒流路121を冷媒用第1タンク空間13側から冷媒用第2タンク空間14側へ向かって流れた後、板積層方向他端側の冷媒流路121を冷媒用第2タンク空間14側から冷媒用第1タンク空間13側へ向かって流れて、冷媒流入部181から気液分離部30へ流入する。すなわち、熱交換器10は、冷媒の流れが1回Uターンするように構成されている。気液分離部30へ流入した冷媒は気液分離され、液相冷媒が冷媒出口103から外部へ流出する。
【0039】
また、冷却水入口104からから流入した冷却水は、
図1の一点鎖線矢印に示すように、冷却水流路122を冷却水用第1タンク空間15側から冷却水用第2タンク空間16側へ向かって流れて、冷却水出口102から外部へ流出する。
【0040】
ところで、板状部材11同士の間には、
図6に示すオフセットフィン50が配置されている。オフセットフィン50は、板状部材11同士の間に介在し、冷媒と冷却水との間での熱交換を促進させるインナーフィンである。
【0041】
オフセットフィン50は、部分的に切り起こされた切り起こし部50aが形成された板状の部材である。切り起こし部50aは、冷媒および冷却水の流れ方向と平行な方向F1(すなわち、板状部材11の長手方向)に多数個形成されている。
【0042】
冷媒および冷却水の流れ方向と平行な方向F1に隣り合う切り起こし部50a同士は、互いにオフセットされている。
図6の例では、多数個の切り起こし部50aは、冷媒および冷却水の流れ方向と平行な方向F1に千鳥配置されている。オフセットフィン50は、隣り合う両方の板状部材11にろう付けにより接合されている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器10では、第1天井板18に、当該第1天井板18との間に空間を形成するように第2天井板19を接合するとともに、その空間により気液分離部30を構成している。これにより、第1熱交換部12に対して板状の第2天井板19を追加するだけで、気液分離部30を構成することができる。このため、気液分離部30が一体化された熱交換器10の小型化を図るとともに、搭載上のデッドスペースを小さくすることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、気液分離部30の冷媒流出部191は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも重力方向下方側に配置されている。このため、冷媒流出部191から液相の冷媒を確実に流出させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図7に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、熱交換器10の搭載方向が異なるものである。
【0046】
図7に示すように、本実施形態の熱交換器10は、板状部材11の長手方向、すなわち第1天井板18および第2天井板19の長手方向が、重力方向と一致するように搭載されている。このとき、冷媒流入部181および冷媒流出部191は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面(
図7の破線部参照)よりも重力方向下方側に配置されている。
【0047】
気液分離部30における冷媒流入部181および冷媒流出部191との間には、気液分離部30内の重力方向下方側の空間を冷媒流入部181側と冷媒流出部191側とに区画するバッフル板32が設けられている。バッフル板32には、複数の貫通孔(図示せず)が形成されており、冷媒流入部181側の空間と冷媒流出部191側の空間とが連通している。
【0048】
バッフル板32は、気液分離部30の重力方向下方側端部から上方側に向かって、重力方向と略平行に延びている。本実施形態では、バッフル板32の重力方向上方側端部は、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも下方側に配置されている。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、板状部材11の長手方向が重力方向と一致するように熱交換器10を搭載した場合において、気液分離部30の冷媒流出部191を、気液分離部30に蓄えられている液相冷媒の液面よりも重力方向下方側に配置している。これにより、冷媒流出部191から液相の冷媒を確実に流出させることができる。
【0050】
また、気液分離部30における冷媒流入部181および冷媒流出部191との間にバッフル板32を設けることで、気液分離性を向上させることができる。さらに、バッフル板32により、気液分離部30の剛性を向上させることができる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図8〜
図10に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、熱交換器10に第2熱交換部62を設けた点が異なるものである。
【0052】
図8に示すように、本実施形態の第2天井板19には、気液分離部30から流出した液相冷媒と冷凍サイクルの低圧冷媒とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する過冷却部として機能する第2熱交換部62が接続されている。なお、本実施形態の低圧冷媒が、本発明の第2熱媒体に相当している。
【0053】
第2熱交換部62は、複数の第2板状部材61を互いに積層されて接合されることによって一体的に形成されている。具体的には、多数の第2板状部材61は、第2熱交換部62、液相冷媒用第1タンク空間63、液相冷媒用第2タンク空間64、低圧冷媒用第1タンク空間65および低圧冷媒用第2タンク空間66を形成している。
【0054】
第2熱交換部62は、液相冷媒が流通する複数の第2冷媒流路621、および、低圧冷媒が流通する複数の低圧冷媒流路622で構成されている。なお、本実施形態の低圧冷媒流路622が、本発明の第2熱媒体流路に相当している。
【0055】
複数の第2冷媒流路621および複数の低圧冷媒流路622は、多数枚の第2板状部材61同士の間に形成されている。第2冷媒流路621および低圧冷媒流路622の長手方向は、第2板状部材61の長手方向と一致している。
【0056】
第2板状部材61における液相冷媒の流れ方向の長さは、第1板状部材11における冷媒の流れ方向の長さよりも短くなっている。すなわち、第2板状部材61の長手方向の長さは、第1板状部材11の長手方向の長さよりも短くなっている。また、第2板状部材61の積層方向は、第1板状部材11の積層方向と平行になっている。
【0057】
第2冷媒流路621および低圧冷媒流路622は板積層方向に1本ずつ交互に積層配置(並列配置)されている。第2板状部材61は、第2冷媒流路621と低圧冷媒流路622とを仕切る隔壁の役割を果たしている。第2冷媒流路621を流れる冷媒と、低圧冷媒流路622を流れる低圧冷媒との熱交換は、第2板状部材61を介して行われる。
【0058】
液相冷媒用第1タンク空間63および低圧冷媒用第1タンク空間65は、第2熱交換部62に対して、第2冷媒流路621および低圧冷媒流路622の一方側(
図8の例では右方側)に配置されている。液相冷媒用第2タンク空間64および低圧冷媒用第2タンク空間66は、第2熱交換部62に対して、第2冷媒流路621および低圧冷媒流路622の他方側(
図8の例では左方側)に配置されている。
【0059】
液相冷媒用第1タンク空間63および液相冷媒用第2タンク空間64は、複数の第2冷媒流路621に対して液相冷媒の分配および集合を行う。低圧冷媒用第1タンク空間65および低圧冷媒用第2タンク空間66は、複数の低圧冷媒流路622に対して低圧冷媒の分配および集合を行う。
【0060】
液相冷媒用第1タンク空間63、液相冷媒用第2タンク空間64、低圧冷媒用第1タンク空間65および低圧冷媒用第2タンク空間66は、第2板状部材61の四隅に形成された連通孔によって構成されている。
【0061】
本実施形態では、
図9に示すように、略矩形状の第2板状部材61の四隅のうち対角線上にある2つの隅部に、液相冷媒用第1タンク空間63および液相冷媒用第2タンク空間64が設けられている。そして、第2板状部材61の残りの2つの隅部に、低圧冷媒用第1タンク空間65および低圧冷媒用第2タンク空間66が設けられている。
【0062】
図8および
図10に示すように、第2熱交換部62を構成する多数枚の第2板状部材61のうち最も板積層方向一端側(
図8の例では上側)に位置する第2最端板状部材67は、第2天井板19にろう付けにより接合されている。第2最端板状部材67には、気液分離部30からの液相冷媒を流入させる液相冷媒流入孔671が形成されている。液相冷媒流入孔671は、冷媒流出部191に対応する部位に形成されている。これにより、気液分離部30内の液相冷媒は、冷媒流出部191および液相冷媒流入孔671を介して第2熱交換部62(具体的には、液相冷媒用第1タンク空間63)に流入する。
【0063】
図8および
図9に示すように、第2熱交換部62を構成する多数枚の第2板状部材61のうち最も板積層方向他端側(
図8の例では下側)に位置する第3最端板状部材68には、第2ジョイント23、第3ジョイント71および第4ジョイント72が取り付けられている。第3ジョイント71は、低圧冷媒配管を接合するための部材であり、第2熱交換部62の低圧冷媒入口701を形成している。第4ジョイント72は、低圧冷媒配管を接合するための部材であり、第2熱交換部62の低圧冷媒出口702を形成している。
【0064】
本実施形態では、第4ジョイント72は、第3最端板状部材68の長手方向における一端側(
図9の例では右方側)に設けられている。第2ジョイント23および第3ジョイント71は、第2最端板状部材68の長手方向における他端側(
図9の例では左方側)に設けられている。また、第2ジョイント23は、第3ジョイント71よりも重力方向上方側に設けられている。
【0065】
続いて、本実施形態における第2熱交換部62の液相冷媒および低圧冷媒の流れについて説明する。
【0066】
気液分離部30から流入した冷媒は、
図8の実線矢印に示すように、第2冷媒流路621を液相冷媒用第1タンク空間63側から液相冷媒用第2タンク空間64側へ向かって流れて、冷媒出口103から外部へ流出する。また、低圧冷媒入口701からから流入した低圧冷媒は、
図8の破線矢印に示すように、低圧冷媒流路622を低圧冷媒用第2タンク空間66側から低圧冷媒用第1タンク空間65側へ向かって流れて、低圧冷媒出口702から外部へ流出する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、熱交換器10の第2天井板19に、過冷却部として機能する第2熱交換部62を接続している。これにより、気液分離部30の剛性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、第2板状部材61における液相冷媒の流れ方向の長さを、第1板状部材11における冷媒の流れ方向の長さよりも短くしている。これにより、第2熱交換部62の冷媒流れ方向の一端側(
図8の例では右方側)にスペースが形成される。このスペースを、第2冷却水パイプ24を配置スペースとして有効活用することができるので、搭載上のデッドスペースを小さくすることが可能となる。
【0069】
ところで、比較例として、チューブ内を流通する冷媒とチューブ外を流通する冷却風とを熱交換させて冷媒を冷却するフィンアンドチューブ型の熱交換器において、放熱コア部の凝縮部(本実施形態の第1熱交換部12に相当)と過冷却部(本実施形態の第2熱交換部62に相当)との間に気液分離部を設けたものがある。この比較例に係る熱交換器では、冷却風(走行風)が常に当たる位置に気液分離部が設定されているため、冷却風の温度により気液分離部内の冷媒の状態が変化してしまうおそれがある。
【0070】
これに対し、本実施形態の熱交換器10は水冷式の積層型熱交換器であるため、気液分離部30に走行風が当たることはない。したがって、気液分離部30の冷媒の状態が変化することを抑制できる。
【0071】
また、比較例に係る熱交換器では、剛性が低いフィンアンドチューブ型の熱交換器において気液分離部を凝縮部と過冷却部との間に配置するために、気液分離部の剛性を向上させる必要がある。このため、押出成形により形成された押出チューブ等で気液分離部構成する必要があり、製造コストが上昇してしまう。
【0072】
これに対し、本実施形態の熱交換器10では、気液分離部30を2つの板状部材、すなわち第1天井板18および第2天井板19により構成することができるため、製造コストを低減することが可能となる。
【0073】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図11に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第3実施形態と比較して、第2熱交換部62を、液相冷媒と冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する過冷却部とした点が異なるものである。なお、本実施形態の冷却水が、本発明の第2熱媒体に相当している。
【0074】
図11に示すように、本実施形態では、多数の第2板状部材61は、第2熱交換部62、液相冷媒用第1タンク空間63、液相冷媒用第2タンク空間64、冷却水用第3タンク空間650および冷却水用第4タンク空間660を形成している。
【0075】
第2熱交換部62は、液相冷媒が流通する複数の第2冷媒流路621、および、冷却水が流通する複数の第2冷却水流路623で構成されている。なお、本実施形態の第2冷却水流路623が、本発明の第2熱媒体流路に相当している。
【0076】
複数の第2冷媒流路621および複数の第2冷却水流路623は、多数枚の第2板状部材61同士の間に形成されている。第2冷媒流路621および第2冷却水流路623の長手方向は、第2板状部材61の長手方向と一致している。
【0077】
第2冷媒流路621および第2冷却水流路623は板積層方向に1本ずつ交互に積層配置(並列配置)されている。第2板状部材61は、第2冷媒流路621と第2冷却水流路623とを仕切る隔壁の役割を果たしている。第2冷媒流路621を流れる冷媒と、第2冷却水流路623を流れる冷却水との熱交換は、第2板状部材61を介して行われる。
【0078】
液相冷媒用第1タンク空間63および冷却水用第3タンク空間650は、第2熱交換部62に対して、第2冷媒流路621および第2冷却水流路623の一方側(
図11の例では右方側)に配置されている。液相冷媒用第2タンク空間64および冷却水用第4タンク空間660は、第2熱交換部62に対して、第2冷媒流路621および第2冷却水流路623の他方側(
図11の例では左方側)に配置されている。冷却水用第3タンク空間650および冷却水用第4タンク空間660は、複数の第2冷却水流路623に対して冷却水の分配および集合を行う。
【0079】
液相冷媒用第1タンク空間63、液相冷媒用第2タンク空間64、冷却水用第3タンク空間650および冷却水用第4タンク空間660は、第2板状部材61の四隅に形成された連通孔によって構成されている。本実施形態では、略矩形状の第2板状部材61の四隅のうち対角線上にある2つの隅部に、冷却水用第3タンク空間650および冷却水用第4タンク空間660が設けられている。
【0080】
第2最端板状部材67には、後述する第2内部冷却水パイプ81が挿入される貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔は、第2内部冷却水パイプ81の外表面にろう付け接合されている。また、この貫通孔は、第2最端板状部材67の長手方向における液相冷媒流入孔671と反対側の端部に設けられている。
【0081】
第3最端板状部材68には、第2ジョイント23および第3冷却水パイプ73が取り付けられている。第3冷却水パイプ73は、第2熱交換部62の冷却水入口703を形成している。
【0082】
本実施形態では、第3冷却水パイプ73は、第3最端板状部材68の長手方向における一端側(
図11の例では右方側)に設けられている。第2ジョイント23は、第2最端板状部材68の長手方向における他端側(
図8の例では左方側)に設けられている。
【0083】
気液分離部30の内部には、冷却水が流通するとともに、冷却水用第4タンク空間660と冷却水用第2タンク空間16とを連通させる第2内部冷却水通路80が設けられている。具体的には、気液分離部30の内部には、冷却水用第4タンク空間660と冷却水用第2タンク空間16とを接続する第2内部冷却水パイプ81が設けられている。この第2内部冷却水パイプ81により、第2内部冷却水通路80が構成されている。
【0084】
ところで、本実施形態では、第1熱交換部12を構成する多数枚の第1板状部材11のうち、板積層方向の略中央部よりも第1天井板18側に位置する板状部材11は、冷却水用第1タンク空間15を構成する突出部(図示せず)を閉塞する第1閉塞部(図示せず)を有している。これにより、冷却水用第1タンク空間15は板積層方向に2つの空間に仕切られている。
【0085】
また、第1熱交換部12を構成する多数枚の第1板状部材11のうち、板積層方向の略中央部よりも最端板状部材17側に位置する板状部材11は、冷却水用第2タンク空間16を構成する突出部(図示せず)を閉塞する第2閉塞部(図示せず)を有している。これにより、冷却水用第2タンク空間16は板積層方向に2つの空間に仕切られている。
【0086】
続いて、本実施形態における熱交換器10の冷却水の流れについて説明する。
【0087】
図11の一点鎖線矢印に示すように、第2熱交換部62の冷却水入口703から冷却水用第3タンク空間650へ流入した冷却水は、冷却水流路623を流れて、冷却水用第4タンク空間660へ流入する。冷却水用第4タンク空間660へ流入した冷却水は、第2内部冷却水通路80を流れて、第1熱交換部12の冷却水用第2タンク空間16へ流入する。
【0088】
一方、熱交換器10の冷却水入口104から第1内部冷却水通路40を介して冷却水用第1タンク空間15に流入した冷却水は、板積層方向他端側(
図11の例では下方側)の第1冷却水流路122を流れて、冷却水用第2タンク空間16へ流入する。このように、本実施形態の熱交換器10は、冷却水用第2タンク空間16において、熱交換器10の冷却水入口104から流入した冷却水と、第2熱交換部62を通過した後の冷却水とが合流するように構成されている。
【0089】
冷却水用第2タンク空間16へ流入した冷却水は、板積層方向中央側の第1冷却水流路122を冷却水用第2タンク空間16側から冷却水用第1タンク空間15側へ向かって流れた後、板積層方向一端側(
図11の例では上方側)の第1冷却水流路122を冷却水用第1タンク空間15側から冷却水用第2タンク空間16側へ向かって流れて、冷却水出口102から外部へ流出する。すなわち、第1熱交換部12は、冷却水の流れが2回Uターンするように構成されている。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器10では、第1熱交換部12に、熱交換器10の冷却水入口104から流入した冷却水と、第2熱交換部62を通過した後の冷却水との双方を流入させている。すなわち、第1熱交換部12に対して、冷却水を並列に流入させることができる。このため、第1熱交換部12において冷却水の圧力損失を低減でき、第1熱交換部12の熱交換効率を向上させることができる。
【0091】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図12に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第4実施形態と比較して、冷却水入口104および第1内部冷却水パイプ41を廃止して、第1熱交換部12において第2熱交換部62を通過した後の冷却水と冷媒とを熱交換させる点が異なるものである。
【0092】
図12に示すように、第1熱交換部12の冷却水用第2タンク空間16は、第2熱交換部62を通過した後の冷却水のみが流入するようになっている。また、本実施形態では、第1熱交換部12を構成する多数枚の第1板状部材11のうち中央板状部材11Aは、冷却水用第2タンク空間16を構成する突出部(図示せず)を閉塞する閉塞部(図示せず)を有している。これにより、冷却水用第2タンク空間16は板積層方向に2つの空間に仕切られている。
【0093】
したがって、冷却水用第2タンク空間16へ流入した冷却水は、板積層方向他案側(
図12の例では下方側)の第1冷却水流路122を冷却水用第2タンク空間16側から冷却水用第1タンク空間15側へ向かって流れた後、板積層方向一端側(
図11の例では上方側)の第1冷却水流路122を冷却水用第1タンク空間15側から冷却水用第2タンク空間16側へ向かって流れて、冷却水出口102から外部へ流出する。すなわち、第1熱交換部12は、冷却水の流れが1回Uターンするように構成されている。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器10では、第1熱交換部12に、第2熱交換部62を通過した後の冷却水を流入させている。すなわち、第2熱交換部62に、熱交換器10に流入させる冷却水の全量を流通させている。このため、気液分離部30によって気液分離された液相冷媒の過冷却を優先的に行うことができる。
【0095】
このとき、第1熱交換部12では、第2熱交換部62を通過した後の冷却水により冷媒を冷却することになる。しかしながら、液相冷媒の過冷却に必要な冷却能力は小さいので、第1熱交換部12の冷媒凝縮機能が損なわれることを抑制できる。
【0096】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について
図13〜
図18に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第5実施形態と比較して、熱交換器10を、凝縮モードと蒸発モードとを切り替え可能なヒートポンプサイクルの室外器として用いた点が異なるものである。
【0097】
凝縮モードは、熱交換器10を、冷凍サイクルの高圧側冷媒と冷却水とを熱交換して高圧側冷媒を凝縮させる凝縮器として機能させるモードである。蒸発モードは、熱交換器10を、冷凍サイクルの低圧側冷媒と冷却水とを熱交換して低圧側冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させるモードである。なお、
図13〜
図18において、実線矢印が凝縮モード時の冷媒流れを示しており、二点鎖線矢印が蒸発モード時の冷媒流れを示しており、一点鎖線矢印が冷却水流れを示している。
【0098】
図13および
図17に示すように、本実施形態の第2ジョイント23は、凝縮モード時に第2熱交換部62から冷媒を外部へ流出させる第1冷媒出口103を形成している。
図14および
図17に示すように、第2ジョイント23は、第3最端板状部材68における重力方向上方側に配置されている。なお、
図16に示すように、本実施形態では、第3冷却水パイプ73も、第3最端板状部材68における重力方向上方側に配置されている。
【0099】
図14および
図15に示すように、第2天井板19の長手方向における冷媒流入部181に近い側の端部に、第5ジョイント75が取り付けられている。第5ジョイント75は、冷媒配管を接合するための部材であり、蒸発モード時に気液分離部30から冷媒を外部へ流出させる第2冷媒出口705を形成している。本実施形態では、冷媒流入部181および第5ジョイント75は、第2天井板19における重力方向上方側に配置されている。
【0100】
続いて、本実施形態における熱交換器10の冷媒の流れについて説明する。
【0101】
凝縮モードにおいては、
図13の実線矢印に示すように、冷媒流入部181から気液分離部30へ流入した冷媒は、気液分離部30にて気液分離される。気液分離部30にて気液分離された液相冷媒は、液相冷媒流入孔671から液相冷媒用第1タンク空間63へ流入する。液相冷媒用第1タンク空間63へ流入した冷媒は、第2冷媒流路621を液相冷媒用第1タンク空間63側から液相冷媒用第2タンク空間64側へ向かって流れて、冷媒出口103から外部へ流出する。
【0102】
一方、蒸発モードにおいては、
図18の二点鎖線矢印に示すように、冷媒流入部181から気液分離部30へ流入した冷媒は、第2冷媒出口705から外部へ流出する。
【0103】
したがって、気液分離部30の内部には、凝縮モード時に第1熱交換部12から流入した冷媒を第2熱交換部62へ流出させる冷媒流れと、蒸発モード時に第1熱交換部12から流入した冷媒を外部へ流出させる冷媒流れとが形成される。
【0104】
なお、熱交換器10内の冷媒流路の切り替えは、熱交換器10の外部(より詳細には、冷媒出口側)に設けたバルブ等により行うことができる。このように、熱交換器10内の冷媒流路を切り替えることで、蒸発モードと凝縮モードとを切り替えることができる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器10は、当該熱交換器10の内部に、凝縮モードの冷媒流れと蒸発モードの冷媒流れとを形成可能になっている。このため、本実施形態の熱交換器10を、ヒートポンプサイクルの室外器として好適に用いることができる。この場合、室外器の水冷化を図ることができ、これより冷却水の蓄熱効果から冷媒挙動が安定しCOP制御を容易に行うことができる。
【0106】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について
図19〜
図21に基づいて説明する。本第7実施形態は、上記第4実施形態と比較して、気液分離部30の構成が異なるものである。
【0107】
図19および
図20に示すように、本実施形態の気液分離部30は、複数の第3板状部材91を互いに積層されて接合されることによって一体的に形成されている。第3板状部材91の積層方向は、第1板状部材11の積層方向(板積層方向)と平行になっている。第3板状部材91は、第1板状部材11に対して、配置方向の長さおよび幅方向の長さが等しくなっている。
【0108】
多数の第3板状部材91は、張出部911の突出先端が互いに同じ側を向くように配置されている。なお、本実施形態では、第1板状部材11は、張出部111の突出先端が気液分離部30と反対側(
図19の例では上方側)を向くように配置されている。一方、第2板状部材61および第3板状部材91は、それぞれ、張出部611、911の突出先端が第1熱交換部12と反対側(
図19の例では下方側)を向くように配置されている。
【0109】
図21に示すように、複数の第3板状部材91同士の間には、第1熱交換部12の第1冷媒流路121から流入した冷媒が流れる複数の気液分離通路92が形成されている。第3板状部材91には第1貫通穴912が設けられており、これにより隣り合う気液分離通路92同士が互いに連通している。なお、気液分離通路92には、インナーフィンは配置されていない。
【0110】
ここで、気液分離部30を構成する多数枚の第3板状部材91のうち、最も板積層方向一端側に位置する第3板状部材91を第3天井板93といい、最も板積層方向他端側に位置する第3板状部材91を第4天井板94という。
【0111】
第3天井板93は、第1天井板18の板積層方向他端側の面に接合されている。第4天井板94の張出部911における板積層方向他端側の面には、第2天井板19が接合されている。また、第3天井板93は、他の第3板状部材91と比較して、板厚が厚くなっている。
【0112】
第3板状部材91には、第1内部冷却水パイプ41が貫通する第2貫通穴913と、第2内部冷却水パイプ81が貫通する第3貫通穴(図示せず)が設けられている。なお、本実施形態では、第1内部冷却水パイプ41は、第2冷却水パイプ24と一体に形成されている。
【0113】
図20および
図21に示すように、第2天井板19における第2熱交換部62が接合されている部位以外の部位には、乾燥剤95を気液分離部30内に挿入するための挿入口96が設けられている。挿入口96は、栓部97によって閉塞されている。
【0114】
乾燥剤95は、袋体の内部に吸水用の粒状ゼオライトが収納されたものであり、冷媒中の水分を吸収するようになっている。これは、冷媒中の水分により冷凍サイクルを構成する各機能部品が腐食したり、膨張弁の細孔で凍結して冷媒流れが滞ったりするのを防止するためのものである。
【0115】
乾燥剤95は、気液分離部30内部、すなわち気液分離通路92における挿入口96に対応する部位に配置されている。本実施形態では、乾燥剤95は、第1貫通穴912の近傍に配置されている。
【0116】
図示は省略しているが、本実施形態の第3天井板93には、凹部が設けられている。凹部は、第3天井板93の一部を板積層方向他側に向かって凹ませることにより形成されている。第3天井板93に凹部を設けることで、第1天井板18と第3天井板93との間、すなわち第1熱交換部12と気液分離部30との間に、隙間を形成することができる。
【0117】
以上説明したように、本実施形態では、気液分離部30内の気液分離空間を多数枚の第3板状部材91により構成している。これにより、気液分離部30内で冷媒液面が分割されるので、冷媒液面の泡立ちを抑制することができる。
【0118】
ところで、第2板状部材61における冷媒流れ方向の長さを、第1板状部材11における前記冷媒の流れ方向の長さと同等とした場合、気液分離部30内に乾燥剤95を設置するためには、専用部品を追加する必要がある。このため、製造コストが増大するという問題がある。
【0119】
これに対し、本実施形態では、第2板状部材61における冷媒流れ方向の長さを、第1板状部材11における前記冷媒の流れ方向の長さよりも短くしている。さらに、第2天井板19における第2熱交換部62が接合されている部位以外の部位には、乾燥剤95を気液分離部30内に挿入するための挿入口96を設けている。これによれば、乾燥剤95を設置するための専用部品を追加することなく、気液分離部30内に乾燥剤95を挿入することができる。
【0120】
また、本実施形態では、第1冷媒流路121にオフセットフィン50を配置しているので、気液分離部30に冷媒が二相(気相と液相)に分離して流入することを抑制できる。なお、第3板状部材91は気液分離部30内の液相冷媒により冷却されているので、気液分離部30に流入する際に気泡(気相冷媒)がわずかに混入した場合でも、気泡は第3板状部材91と熱交換することで冷却されて凝縮する。
【0121】
したがって、本実施形態では、気液分離部30の気液分離性を向上させることが可能となる。
【0122】
また、本実施形態では、第3天井板93に凹部を設けて、第1熱交換部12と気液分離部30との間に隙間を形成している。これにより、高温冷媒の有する熱により気液分離部30内の液相冷媒が加熱されることを抑制できる。
【0123】
ところで、本実施形態では、図示しないラジエータにおいて冷却された冷却水を、冷却水入口104から第1内部冷却水通路40を介して第1熱交換部12に流入させるとともに、冷却水入口703から第2熱交換部62に流入させている。このため、2つの冷却水入口104、703から流入する冷却水量を制御することで、第1熱交換部12への通水流量および第2熱交換部62への通水流量の流量分配制御を行うことができる。
【0124】
すなわち、第1熱交換部12への通水流量を増加させることで、冷媒の凝縮性能を向上させ、凝縮能力を増大させることができる。一方、第2熱交換部62への通水流量を増加させることで、冷媒の過冷却性能を向上させ、冷媒の過冷却度を高めることができる。
【0125】
なお、第2熱交換部62にて加熱された冷却水を冷却するための専用ラジエータを設け、この専用ラジエータにより冷却された冷却水を第2熱交換部62に流入させてもよい。これによれば、冷媒の過冷却度をより高めることができる。
【0126】
従来の空冷式、すなわち冷媒と空気との間で熱交換を行うことにより冷媒を冷却する熱交換器であって、凝縮部と過冷却部が同一放熱面上に配置されているものでは、熱交換器に対する空気の流入が成り行きとなる。このため、冷媒の過冷却度を高めるためには、凝縮部と過冷却部の放熱面積割合を変更するしか方法がないので、過冷却部の面積を増大させて、凝縮部の面積を縮小させる必要がある。しかしながら、凝縮部の面積が縮小すると、冷媒圧力が上昇するため、実質的に冷媒の過冷却度を制御することが困難であった。
【0127】
これに対し、本実施形態では、上述したように、第1熱交換部12への通水流量および第2熱交換部62への通水流量の流量分配制御を行うことで、冷媒の過冷却度の制御を行うことが可能となる。
【0128】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0129】
(1)上記第6実施形態では、熱交換器10内の冷媒流路の切り替えを、熱交換器10の外部に設けたバルブ等により行う例について説明したが、冷媒流路の切替方法はこれに限定されない。例えば、熱交換器10の気液分離部30の内部に、第1熱交換部12から流出した冷媒を外部へ流出させる冷媒流れと、第1熱交換部12から流出した冷媒を第2熱交換部62へ流入させる冷媒流れとを切り替え可能なバルブ等を設けてもよい。
【0130】
(2)上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。