(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スプリングホルダが、板状の材料の加工により前記座部と複数の前記ガイド部と複数の前記調芯部とが一体的に形成され、前記座部の外周において周方向に沿って前記ガイド部と前記調芯部とが交互に配置され、これらの中間位置に前記座部の一部を前記回転軸芯の方向に切り欠いた切込部が形成されている請求項1記載の弁開閉時期制御装置。
前記支持部が、前記ガイド部の一部を切り欠くことで、前記トーションスプリングの端部を支持する空間が切り開らかれた凹状に形成されている請求項1又は2記載の弁開閉時期制御装置。
前記座部に対し、複数の前記ガイド部が前記回転軸芯に沿って延びるように一体形成され、複数の前記ガイド部のうち前記支持部が形成される端面に、前記トーションスプリングの前記端部を前記支持部に案内する傾斜部が形成されている請求項3記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トーションスプリングの一方の端部を駆動側回転体に支持する構成として、駆動側回転体に対して、回転軸芯に平行する姿勢で形成された孔部に挿通するものが考えられる。この構成では、孔部に対してトーションスプリングの一方の端部を挿通するに手間が掛かり弁開閉時期制御装置の組み立てを困難にするものであった。また、特許文献2に示される支持部材は大型化しやすいものである。
【0008】
本発明の目的は、スプリングホルダを有した弁開閉時期制御装置において付勢力を作用させるトーションスプリングを容易に支持する構成を得る点にある。更に、本発明の目的は、スプリングホルダを安定した姿勢で確実に支持する構成を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
弁開閉用のカムシャフトと同じ回転軸芯上で一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体および前記従動側回転体に亘って連結されるトーションスプリングを支持するスプリングホルダとを備え、
前記スプリングホルダは、前記従動側回転体に設けられた嵌合部に嵌め込まれた状態で固定される座部と、
前記座部から前記カムシャフトの回転軸芯に沿って突出するガイド部とを備え、
前記座部には、前記嵌合部に嵌合して芯出しを行う調芯部と、前記嵌合部に形成された規制部に対して前記回転軸芯と直交する径方向に係合して前記座部の回転を規制する被規制部と、が形成され、
前記ガイド部には前記トーションスプリングの端部を支持する支持部が形成され
、
前記駆動側回転体が、中央に貫通孔を有する蓋体を備え、
前記回転軸芯を中心として複数の前記ガイド部の外周を結ぶ外周径が、前記貫通孔の内径より小さく、前記回転軸芯を中心として前記調芯部の外端を結ぶ外端径が、前記貫通孔の内径より大きい点にある。
【0010】
この構成によると、座部を従動側回転体の嵌合部に嵌合させ、調芯部を従動側回転体の嵌合部に嵌合させることにより、座部の中心位置を弁開閉時期制御装置の回転軸芯上に配置することが可能となる。また、被規制部を従動側回転体の規制部に対して係合させることにより、従動側回転体とスプリングホルダとの一体回転が可能となる。
更に、例えば、スプリングホルダの一方の端部をガイド部の支持部に支持した状態で、トーションスプリングの他方の端部を駆動側回転体に支持するため、トーションスプリングの他方の端部の支持を容易に行えると共に、トーションスプリングの付勢力を駆動側回転体と従動側回転体との間に作用させることが可能となる。
【0011】
特に、弁開閉時期制御装置の外部にトーションスプリングを配置する構成のため、トーションスプリングとの接触により摩擦粉が発生しても装置内部へ侵入することがない。しかも、弁開閉時期制御装置の回転軸芯方向での小型化を可能にする。また、スプリングホルダが、その座部を従動側回転体に接触させて支持されるため、スプリングホルダの姿勢を安定させる。
従って、スプリングホルダを有した弁開閉時期制御装置において付勢力を作用させるトーションスプリングを容易に支持する構成が得られた。
また、これによると、スプリングホルダを装着する場合には、スプリングホルダの座部を従動側回転体の嵌合部に嵌合し、調芯部により位置決めを行い、被規制部による回転規制を行う。次に、ガイド部を蓋体の貫通孔に挿通する状態で、蓋体を駆動側回転体に連結することにより、調芯部が蓋体により押さえ込まれ、スプリングホルダの浮き上がりの阻止が可能となる。
【0012】
本発明は、前記スプリングホルダが、板状の材料の加工により前記座部と複数の前記ガイド部と複数の前記調芯部とが一体的に形成され、前記座部の外周において周方向に沿って前記ガイド部と前記調芯部とが交互に配置され、これらの中間位置に前記座部の一部を前記回転軸芯の方向に切り欠いた切込部が形成されても良い。
【0013】
これによると、例えば、鋼材をプレス加工することにより座部と、複数のガイド部と、複数の調芯部とを一体的に形成することが可能となる。また、複数のガイド部は、座部に対して直交する方向に延出するものであり、切込部が形成されることにより、プレス加工時に座部や調芯部に歪みが生ずるのを防止することができる。
【0014】
本発明は、前記支持部が、前記ガイド部の一部を切り欠くことで、前記トーションスプリングの端部を支持する空間が切り開かれた凹状に形成されても良い。
【0015】
これによると、ガイド部の一部を切り欠き、切り開かれた空間となる凹状に支持部を形成することにより、簡単な構成によりトーションスプリングの一端を支持できる。
【0016】
本発明は、前記座部に対し、複数の前記ガイド部が前記回転軸芯に沿って延びるように一体形成され、複数の前記ガイド部のうち前記支持部が形成される端面に、前記トーションスプリングの前記端部を前記支持部に案内する傾斜部が形成されても良い。
【0017】
これによると、ガイド部でトーションスプリングを支持し、トーションスプリングの一方の端部を、ガイド部の支持部に係合させる場合には、トーションスプリングの一方の端部をスプリング支持部の傾斜面に接触させることにより、その端部が傾斜面に沿って移動し、支持部に係合させることが可能となる。これにより、トーションスプリングの装着工程が単純化する。
【0018】
本発明
の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
弁開閉用のカムシャフトと同じ回転軸芯上で一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体および前記従動側回転体に亘って連結されるトーションスプリングを支持するスプリングホルダとを備え、
前記スプリングホルダは、前記従動側回転体に設けられた嵌合部に嵌め込まれた状態で固定される座部と、
前記座部から前記カムシャフトの回転軸芯に沿って突出するガイド部とを備え、
前記座部には、前記嵌合部に嵌合して芯出しを行う調芯部と、前記嵌合部に形成された規制部に対して前記回転軸芯と直交する径方向に係合して前記座部の回転を規制する被規制部と、が形成され、
前記ガイド部には前記トーションスプリングの端部を支持する支持部が形成され、
前記支持部が、前記ガイド部の一部を切り欠くことで、前記トーションスプリングの端部を支持する空間が切り開らかれた凹状に形成され、
前記座部に対し、複数の前記ガイド部が前記回転軸芯に沿って延びるように一体形成され、複数の前記ガイド部のうち前記支持部が形成される端面に、前記トーションスプリングの前記端部を前記支持部に案内する傾斜部が形成されている点にある。
【0019】
この構成によると、座部を従動側回転体の嵌合部に嵌合させ、調芯部を従動側回転体の嵌合部に嵌合させることにより、座部の中心位置を弁開閉時期制御装置の回転軸芯上に配置することが可能となる。また、被規制部を従動側回転体の規制部に対して係合させることにより、従動側回転体とスプリングホルダとの一体回転が可能となる。
更に、例えば、スプリングホルダの一方の端部をガイド部の支持部に支持した状態で、トーションスプリングの他方の端部を駆動側回転体に支持するため、トーションスプリングの他方の端部の支持を容易に行えると共に、トーションスプリングの付勢力を駆動側回転体と従動側回転体との間に作用させることが可能となる。
特に、弁開閉時期制御装置の外部にトーションスプリングを配置する構成のため、トーションスプリングとの接触により摩擦粉が発生しても装置内部へ侵入することがない。しかも、弁開閉時期制御装置の回転軸芯方向での小型化を可能にする。また、スプリングホルダが、その座部を従動側回転体に接触させて支持されるため、スプリングホルダの姿勢を安定させる。
従って、スプリングホルダを有した弁開閉時期制御装置において付勢力を作用させるトーションスプリングを容易に支持する構成が得られた。
また、これによると、ガイド部の一部を切り欠き、切り開かれた空間となる凹状に支持部を形成することにより、簡単な構成によりトーションスプリングの一端を支持できる。
更に、これによると、ガイド部でトーションスプリングを支持し、トーションスプリングの一方の端部を、ガイド部の支持部に係合させる場合には、トーションスプリングの一方の端部をスプリング支持部の傾斜面に接触させることにより、その端部が傾斜面に沿って移動し、支持部に係合させることが可能となる。これにより、トーションスプリングの装着工程が単純化する。
【0020】
本発明は、前記トーションスプリングが複数の前記ガイド部の外周部に配置されるように構成され、前記ガイド部の端部に径方向に延出した延出部を備えても良い。
【0021】
これによると、ガイド部の端部にトーションスプリングが移動した場合には、このトーションスプリングが延出部に接触することで脱落が防止される。
【0022】
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
弁開閉用のカムシャフトと同じ回転軸芯上で一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体および前記従動側回転体に亘って連結されるトーションスプリングを
支持するスプリングホルダとを備え、
前記スプリングホルダは、前記従動側回転体に設けられた嵌合部に嵌め込まれた状態で固定される座部と、
前記座部から前記回転軸芯と直交する姿勢で外方に突出する調芯部と、
前記座部から前
記回転軸芯に沿って突出するガイド部とを備え、
前記駆動側回転体が、
中央に貫通孔を有する蓋体を備
え、
前記回転軸芯を中心として複数の前記ガイド部の外周を結ぶ外周径が、前記貫通孔の内径より小さく、前記回転軸芯を中心として前記調芯部の外端を結ぶ外端径が、前記貫通孔の内径より大きく設定されている点にある。
【0023】
従来からの弁開閉時期制御装置として、装置の外部にトーションスプリングを備えるものでは、トーションスプリングを支持するホルダ等の構成を必要とする。また、例えば、ホルダを装置の外部に備えるものではホルダを安定的に支持することも望まれる。
【0024】
このような課題に対して、本発明の構成のように、座部を従動側回転体の嵌合部に嵌め込むことにより、調芯部を嵌合部の内周に接触させ、座部の中心位置を弁開閉時期制御装置の回転軸芯上に配置することが可能となる。また、スプリングホルダを装着する場合には、スプリングホルダの座部を従動側回転体の嵌合部に嵌め込み、次に、ガイド部を蓋体の貫通孔に挿通する状態で、蓋体を駆動側回転体に連結することにより、調芯部が蓋体により押さえ込まれ、スプリングホルダの浮き上がり、あるいは、脱落が阻止される。
従って、スプリングホルダを安定した姿勢で確実に支持する構成が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1及び
図2に示すように、駆動側回転体としての外部ロータ20と、従動側回転体としての内部ロータ30と、外部ロータ20及び内部ロータ30の相対回転位相を進角方向に付勢する付勢機構としての付勢ユニット40と、電磁制御弁50とを備えて弁開閉時期制御装置Aが構成されている。
【0027】
外部ロータ20(駆動側回転体の一例)は、内燃機関としてのエンジンEのクランクシャフト1と同期回転するようにタイミングベルト7を介して連係しており、吸気カムシャフト5の回転軸芯Xと同軸芯上に配置されている。内部ロータ(従動側回転体)は、回転軸芯Xと同軸芯上に配置されることで外部ロータ20に内包され、吸気カムシャフト5に対して一体回転するように連結している。
【0028】
この弁開閉時期制御装置Aは、内部ロータ30の回転軸芯Xと同軸芯に電磁制御弁50を備えている。弁開閉時期制御装置Aは、電磁制御弁50による作動油(流体の一例)の制御により外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を変更し、これにより吸気バルブ5Vの開閉時期の制御を行う。尚、外部ロータ20と内部ロータ30とが位相制御機構として機能する。
【0029】
エンジンE(内燃機関の一例)は、乗用車などの車両に備えられるものである。このエンジンEは、下部にクランクシャフト1を備え、上部のシリンダブロック2に形成されたシリンダボアの内部にピストン3を収容し、このピストン3とクランクシャフト1とをコネクティングロッド4で連結した4サイクル型に構成されている。
【0030】
尚、クランクシャフト1の回転力を弁開閉時期制御装置Aに伝える伝動構成としては、タイミングチェーンを用いて良く、多数のギヤを有するギヤトレインによりクランクシャフト1の駆動力を伝える構成でも良い。
【0031】
また、エンジンEの上部には、吸気カムシャフト5と排気カムシャフトとを備え、クランクシャフト1の駆動力で駆動される油圧ポンプPを備えている。吸気カムシャフト5は回転により吸気バルブ5Vを開閉作動させる。油圧ポンプPは、エンジンEのオイルパンに貯留される潤滑油を、供給流路8を介して作動油(流体の一例)として電磁制御弁50に供給する。
【0032】
エンジンEのクランクシャフト1に形成した出力プーリ6と、タイミングプーリ23Pとに亘ってタイミングベルト7を巻回することで、外部ロータ20がクランクシャフト1と同期回転する。図面には示していないが、排気側のカムシャフトの前端にもタイミングプーリが備えられ、これにもタイミングベルト7が巻回されている。
【0033】
尚、この実施形態では、吸気カムシャフト5に弁開閉時期制御装置Aを備えているが、弁開閉時期制御装置Aを排気カムシャフトに備えることや、吸気カムシャフト5と排気カムシャフトとの双方に備えても良い。
【0034】
図2に示すように、弁開閉時期制御装置Aは、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ20が駆動回転方向Sに向けて回転する。また、内部ロータ30が外部ロータ20に対して駆動回転方向Sと同方向に相対回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向を遅角方向Sbと称する。
【0035】
〔弁開閉時期制御装置〕
弁開閉時期制御装置Aは、
図1、
図2、
図5に示すように外部ロータ20と内部ロータ30とを備えると共に、内部ロータ30と吸気カムシャフト5との間に挟み込まれる位置にブッシュ状のアダプタ37を備えている。
【0036】
外部ロータ20は、外部ロータ本体21と、蓋体としてのフロントプレート22と、リヤプレート23とを有しており、これらが複数の締結ボルト24の締結により一体化されている。リヤプレート23の外周にはタイミングプーリ23Pが形成されている。
【0037】
フロントプレート22(蓋体の一例)とリヤプレート23とに挟み込まれる位置に内部ロータ30が配置されている。外部ロータ本体21には、回転軸芯Xを基準にして径方向の内側に突出する複数の区画部21Tが一体的に形成されている。
【0038】
内部ロータ30は、外部ロータ本体21の区画部21Tの突出端に密接する円柱状の内部ロータ本体31と、外部ロータ本体21の内周面に接触するように内部ロータ本体31の外周に突出して備えた複数(4つ)のベーン部32とを有している。尚、ベーン部32は4つに限らず任意の数に設定できる。
【0039】
これにより、回転方向で隣接する区画部21Tの中間位置で、内部ロータ本体31の外周側に複数の流体圧室Cが形成される。そして、これらの流体圧室Cがベーン部32で仕切られることにより進角室Caと遅角室Cbとが形成される。
【0040】
また、連結ボルト38にはボルト頭部38Hと雄ネジ部38Sとが形成され、雄ネジ部38Sが吸気カムシャフト5の雌ネジ部に螺合することにより、内部ロータ30が吸気カムシャフト5に連結される。特に、この連結時には、ボルト頭部38Hと吸気カムシャフト5との間にアダプタ37と、内部ロータ30と、スプリングホルダ41の座部42とが挟み込まれる状態で一体化する。
【0041】
連結ボルト38は、回転軸芯Xを中心にする筒状に形成され、この内部空間に電磁制御弁50のスプール51と、これを突出方向に付勢するスプールスプリングとが収容されている。この電磁制御弁50の構成は後述する。
【0042】
この弁開閉時期制御装置Aでは、位相制御機構としての外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を最遅角位相にロック(固定)するロック機構Lを備えている。このロック機構Lは、1つのベーン部32に対し回転軸芯Xに沿う姿勢で形成されたガイド孔26に出退自在にガイドされるロック部材25と、このロック部材25を突出付勢するロックスプリングと、リヤプレート23に形成したロック凹部とを備えている。ロック機構Lとしては、最遅角位相でロックするものに限らず、例えば、最遅角位相と最進角位相との間の任意の位置でロックする構成のものを備えても良い。
【0043】
エンジンEの稼働時には吸気カムシャフト5から作用する変動トルクが遅角方向Sbに作用する。このような理由から、この変動トルクの作用を抑制するように付勢ユニット40による付勢方向を、内部ロータ30に対して進角方向Saに変位させるように設定している。この付勢ユニット40の構成は後述する。
【0044】
〔弁開閉時期制御装置:油路構成〕
作動油の供給により相対回転位相を進角方向Saに変位させる空間が進角室Caであり、これとは逆に、作動油の供給により相対回転位相を遅角方向Sbに変位させる空間が遅角室Cbである。ベーン部32が進角方向Saの作動端(ベーン部32の進角方向Saの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最進角位相と称し、ベーン部32が遅角方向Sbの作動端(ベーン部32の遅角方向Sbの作動端の近傍の位相を含む)に達した状態での相対回転位相を最遅角位相と称する。
【0045】
内部ロータ本体31には遅角室Cbに連通する遅角流路33と、進角室Caに連通する進角流路34とが形成されている。また、ロック凹部に対して進角流路34が連通している。
【0046】
この弁開閉時期制御装置Aでは、ロック機構Lがロック状態にある状態で進角室Caに作動油が供給される際にロック凹部に対して進角流路34から作動油が供給されることにより、ロックスプリングの付勢力に抗してロック部材25がロック凹部から離脱し、ロック状態が解除される。
【0047】
〔電磁制御弁・油路構成〕
図1に示すように、電磁制御弁50は、スプール51と、スプールスプリングと、電磁ソレノイド54とで構成されている。つまり、スプール51は、連結ボルト38の内部空間で回転軸芯Xに沿う方向にスライド移動自在に配置され、連結ボルト38にはスプール51の外端側の操作位置を決めるため止め輪で成るストッパー53が備えられている。また、スプールスプリングは、このスプール51を吸気カムシャフト5から離間する方向(突出方向)に付勢力を作用させる。
【0048】
電磁ソレノイド54は、内部のソレノイドに供給された電力に比例した量だけ突出作動するプランジャ54aを備えており、このプランジャ54aの押圧力によりスプール51を操作する。また、スプール51は、内部ロータ30と一体回転し、電磁ソレノイド54は、エンジンEに支持されることにより回転不能となる。
【0049】
電磁ソレノイド54は、プランジャ54aをスプール51の外端に接当可能な位置に配置され、非通電状態では非押圧位置に保持され、スプール51は遅角ポジションに保持される。また、電磁ソレノイド54に所定電力を通電する状態ではプランジャ54aが内端側の押圧位置に達しスプール51は進角ポジションに保持される。更に、電磁ソレノイド54に対して、進角ポジションに設定する電力より低い電力を通電することにより、プランジャ54aの突出量が制限され、スプール51は進角ポジションと遅角ポジションとの中間となる中立ポジションに保持される。
【0050】
また、連結ボルト38の内部には、スプール51のポジションにより、油圧ポンプPからの流体を制御して遅角流路33と進角流路34との何れかに供給するための流路が形成されている。従って、例えば、電磁ソレノイド54によりスプール51が遅角ポジションに操作され、次に、中立ポジションに操作され、更に、進角ポジションに操作された場合には、これに対応して、油圧ポンプPからの作動油を遅角室Cbに供給する状態と、作動油の給排を行わない状態と、進角室Caに作動油を供給する状態とが、この順序で作り出される。
【0051】
〔弁開閉時期制御装置:付勢ユニット〕
付勢ユニット40は、
図1、
図3〜
図5に示すように、スプリングホルダ41と、スプリングホルダ41に支持されるトーションスプリング46とで構成されている。
【0052】
スプリングホルダ41は、内部ロータ本体31に連結する座部42と、座部42から回転軸芯Xに沿って突出する姿勢で形成された複数(実施形態では3つ)のガイド部としての突出部43とが一体的に形成されている。
【0053】
座部42の中心位置には締結ボルト24が挿通する挿通孔42Aが形成されている。座部42の外周のうち周方向で突出部43(ガイド部の一例)の中間には、外方に突出する姿勢の調芯部44が形成され、複数(実施形態では3つ)の調芯部44の1つには、更に、外端から外方に突出する被規制部としての回転規制部44Aが形成されている。
【0054】
スプリングホルダ41は、金属板のプレス加工により製造されるものであり、座部42と、複数の調芯部44と、回転規制部44A(被規制部の一例)とは、回転軸芯Xに対して直交する姿勢となる同一の仮想平面上に配置される。また、複数の突出部43は各々が設定幅に形成され、その外周面が回転軸芯Xを中心とする円周上に配置されるように円弧状に成形されている。更に、プレス加工において突出部43の折曲げを容易にするため、突出部43の基端部と、調芯部44の基端部との境界部分を座部42の方向に切り欠いた切込部42Bが形成されている。このスプリングホルダ41は樹脂の成形により構成されるものであっても良い。
【0055】
複数の突出部43の1つの側縁には、周方向に切り欠きトーションスプリング46の第1アーム46Bを支持する空間が切り開かれた凹状となる支持部としての第1係合部43A(係合部の一例)が形成されている。内部ロータ本体31の嵌合部としての嵌合凹部31Aの内部に複数の調芯部44が嵌り込んだ状態で、各々の調芯部44の外端縁44Eが嵌合凹部31A(嵌合部の一例)の円形の内周面31AEに当接して位置決めを行う。この位置決めを実現するため、各々の外端縁44Eを結ぶ仮想外周円が回転軸芯Xを中心とする円の円周に沿う円弧状に成形されている。後述するように、仮想外周円の直径が外端径D3となる。尚、この構成では、嵌合凹部31Aに調芯部44が嵌り込んだ状態では、各々の相対回転が許される程度の嵌合状態であり、規制凹部31B(規制部の一例)に回転規制部44Aが嵌め込まれることにより、各々の回転が規制される。
【0056】
トーションスプリング46は、スプリングホルダ41の外周部を取り囲む領域に配置されるコイル部46Aと、コイル部46Aで回転軸芯Xに沿う方向の外端位置から外方に延出する第1アーム46B(一方の端部)と、外端位置から径方向外方に延出する第2アーム46C(他方の端部)と、を備えている。
【0057】
図5に示すように、フロントプレート22の中央位置には、複数の突出部43の外周径D2より僅かに大径となる内径で回転軸芯Xを中心とする孔径D1(内径)となる貫通孔22Aが形成されている。回転軸芯Xに沿う方向視で複数の突出部43の外周を結ぶ仮想外周縁が外周径D2となる。尚、トーションスプリング46のコイル部46Aの内径は外周径D2より充分に大きい値に設定されている。
【0058】
回転軸芯Xに沿う方向視で複数の調芯部44の外端を結ぶ仮想外周縁の外端径D3は孔径D1より大きく設定されている。また、内部ロータ本体31の嵌合凹部31Aの内周径D4が外端径D3より僅かに大きい値に設定されている。これにより、外周径D2の突出部43が、孔径D1の貫通孔22Aに挿通可能となる。また、貫通孔22Aの孔径D1より外端径D3が大きい調芯部44が、フロントプレート22に対して抜け止め状態で保持される。更に、この外端径D3の調芯部44が、内周径D4の嵌合凹部31Aに嵌め込み可能となる。
【0059】
フロントプレート22の外壁で貫通孔22Aを取り囲む円周領域にはトーションスプリング46のコイル部46Aの内端位置の一部が嵌り込む凹状のスプリング保持部22Bが形成されている。スプリング保持部22Bに連なる位置には、このスプリング保持部22Bから外方に向けて溝状に連なる第2係合部22C(アーム保持部の一例)が形成されている。
【0060】
図4に示すように、スプリング保持部22Bは、トーションスプリング46のコイル部46Aの端部形状に沿うように螺旋状に形成されている。つまり、スプリング保持部22Bは、回転軸芯Xに直交する仮想平面に対して傾斜する傾斜面に形成されている。このようにスプリング保持部22Bが傾斜姿勢で形成されることにより、スプリング保持部22Bの深さ(回転軸芯Xに沿う方向での値)は一定の値ではないが、このスプリング保持部22Bは、トーションスプリング46の一巻き分を収容できる深さに設定されている。
【0061】
このようにスプリング保持部22Bの深さを制限することにより、フロントプレート22の厚みの増大を制限し、弁開閉時期制御装置Aの大型化を抑制する。尚、トーションスプリング46として、断面形状が円形となる線材を用いることも可能である。
【0062】
内部ロータ本体31のうちフロントプレート側となる外端面に対して、回転軸芯Xを中心とする領域を窪ませる形態で嵌合凹部31Aが形成されている。嵌合凹部31Aは回転軸芯Xを中心とした内周面31AEを有する円形に形成されている。この嵌合凹部31Aの内周径D4は、前述したように、複数の調芯部44の外端を結ぶ仮想外周縁の外端径D3より僅かに大きい値に設定され、その外周一部に凹状となる規制部としての規制凹部31Bが形成されている。
【0063】
この嵌合凹部31Aには、スプリングホルダ41の座部42と調芯部44が嵌め込まれ、規制凹部31B(規制部の一例)には回転規制部44Aが嵌め込まれる。そして、嵌合凹部31Aと、規制凹部31Bとの深さは、スプリングホルダ41の調芯部44の厚さと一致する値に設定されている。これにより、複数の締結ボルト24によりフロントプレート22を外部ロータ本体21に連結した場合に、スプリングホルダ41の調芯部44をフロントプレート22の貫通孔22Aの外周が押さえ込み、抜け止め状態にする。
【0064】
尚、規制凹部31Bは、嵌合凹部31Aの複数箇所に形成されても良い。また、スプリングホルダ41と内部ロータ30との相対回転を規制するために、調芯部44の外周の凹部を形成し、これに嵌合する凸部を嵌合凹部31Aの内周に形成しても良い。このように規制凹部31Bが径方向に形成されているため、例えば、回転軸芯Xに沿う孔状に形成されるものと比較して、内部ロータ30の厚さを増大させることもない。
【0065】
〔付勢ユニットの組み立て〕
外部ロータ本体21の背部にリヤプレート23を配置し、内部に内部ロータ本体31を嵌め込み、また、連結ボルト38の内部にスプール51等を収容する。
【0066】
次に、フロントプレート22の貫通孔22Aに対し裏面側からスプリングホルダ41の突出部43を挿通し、複数の突出部43を取り囲むようにトーションスプリング46を配置する。
【0067】
このようにトーションスプリング46を配置する場合に、コイル部46Aの一部をフロントプレート22のスプリング保持部22Bに嵌め込み、第2係合部22Cにトーションスプリング46の第2アーム46Cを嵌め込む。更に、トーションスプリング46の第1アーム46Bを突出部43の第1係合部43A(支持部の一例)に係合して保持する。
【0068】
次に、スプリングホルダ41の調芯部44を、内部ロータ本体31の嵌合凹部31Aに嵌め込み、回転規制部44Aを規制凹部31Bに嵌め込む。これにより、嵌合凹部31Aの円周状の内周面31AEに、複数の調芯部44の外端縁44Eが接触し、スプリングホルダ41の重心位置を回転軸芯Xの位置に保持するように位置決めが行われる。これにより、内部ロータ本体31とスプリングホルダ41とが一体回転可能な状態に達する。
【0069】
次に、フロントプレート22を外部ロータ本体21に重ね合わせ、締結ボルト24により連結する。更に、スプリングホルダ41の座部42の挿通孔42Aに連結ボルト38を挿通し、この連結ボルト38の雄ネジ部38Sを吸気カムシャフト5の雌ネジ部に螺合させて締結を行う。
【0070】
これにより、吸気カムシャフト5と、内部ロータ30と、スプリングホルダ41とが一体化し、弁開閉時期制御装置Aが完成する。この完成状態では、スプリングホルダ41の調芯部44をフロントプレート22の貫通孔22Aの外周が押さえ込み、スプリングホルダ41の浮き上がりが阻止される。
【0071】
この完成状態では、付勢ユニット40のトーションスプリング46が、外部ロータ20に対して内部ロータ30を進角方向Saに変位させる付勢力を作用させる。また、トーションスプリング46のコイル部46Aのうち、フロントプレート22に隣接する部位が、傾斜姿勢のスプリング保持部22Bに嵌り込むことにより、トーションスプリング46のコイル部46Aの軸芯を、回転軸芯Xと一致させた状態でトーションスプリング46を支持できる。更に、トーションスプリング46のコイル部46Aの内周が突出部43の外周から離間した位置に配置されるため、相対回転位相の変化時に、これらの間で抵抗を作用させることがなく、突出部43の外周を摩耗させることもない。
【0072】
〔実施形態の作用・効果〕
このように、外部ロータ20と内部ロータ30とで構成される本体部分(位相制御機構)の外部に付勢ユニット40を備えるため、本体部分の小型化が可能となる。
【0073】
本発明のようにスプリングホルダ41を内部ロータ本体31に装着する場合には、内部ロータ本体31の嵌合凹部31Aに対して、調芯部44を嵌め込んで位置決めを行うことによりスプリングホルダ41の重心位置を、回転軸芯Xと同軸芯上に配置することが可能となる。また、スプリングホルダ41の回転規制部44Aを嵌め込むだけで、スプリングホルダ41を内部ロータ30と一体回転させることが可能となる。
【0074】
スプリングホルダ41を内部ロータ30に対して圧入により固定するものと比較すると、内部ロータ30に変形がなく、この圧入時の変形に伴う摺動抵抗の増大もない。更に、例えば、トーションスプリング46の一端を外部ロータ20、あるいは、内部ロータ30に対して直接的に係合させるものでは、係合部分に強度を高める必要がある。これに対してスプリングホルダ41を用いることで両ロータの何れにも強度を高める必要がなく、スプリングが係合する部位の摩耗もない。
【0075】
本発明のようにトーションスプリング46のコイル部46Aの回転軸芯Xの方向での内端側をフロントプレート22の傾斜姿勢のスプリング保持部22Bに嵌め込む形態で支持する。これにより、トーションスプリング46のコイル部46Aの軸芯位置を、回転軸芯Xと一致させ、回転時にトーションスプリング46を振動させることもない。更に、トーションスプリング46のコイル部46Aの一部がスプリング保持部22Bの傾斜面に対して広い面で接触するため、局部的な接触に起因する摩耗の低減も実現する。
【0076】
フロントプレート22の貫通孔22Aの孔径D1を、複数の調芯部44の外端径D3より小さくしているため、フロントプレート22でスプリングホルダ41を押さえ込みスプリングホルダの浮き上がりを防止する。
【0077】
この構成の弁開閉時期制御装置Aでは、外部ロータ20と内部ロータ30との間で作動油がリークするものであり、このようにリークした作動油をフロントプレート22の貫通孔22Aから外部に流し出すことにより、作動油をトーションスプリング46とスプリング保持部22Bとの間に供給し、スプリング保持部22Bの摩耗の抑制できる。
【0078】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0079】
(a)
図6に示すように、複数の突出部43の突出端側の一部を小径化し、これより突出端側に続く領域を外方に張り出すように延出部としての脱落防止部43Rを形成する。この構成では、トーションスプリング46のうち外側の巻き径を小さくして脱落防止部43R(延出部)にオーバラップさせている。これにより、突出部43の突出端の方向にトーションスプリング46が移動しても小径化した部位にトーションスプリング46が脱落防止部43Rに接触して脱落が防止される。尚、この別実施形態(a)として、筒状に形成した突出部43(突出部43が単一となる)の突出端に脱落防止部43Rを形成しても良い。また、トーションスプリング46として全ての巻き径が一定のものを用いても良い。
【0080】
(b)
図7に示すように、複数の突出部43の突出端を大径化するように成形することで外方に延びる形態となる延出部としての脱落防止部43Rを形成する。この構成では、突出部43の突出端の方向にトーションスプリング46が移動しても脱落防止部43Rに接触することにより脱落が防止される。尚、この別実施形態(b)として、筒状に形成した突出部43(突出部43が単一となる)の突出端に脱落防止部43Rを形成しても良い。
【0081】
(c)
図8に示すように、複数の突出部43の突出端の部位を周方向に延出することにより、突出部43の突出端から周方向に延びるように延出部としての脱落防止部43Rを形成する。このように脱落防止部43Rでは、突出部43の突出端の方向にトーションスプリング46が移動しても脱落防止部43Rに接触することにより脱落が防止される。
【0082】
(e)
図9に示すように、複数の突出部43のうち、第1係合部43A(係合部)が形成された端縁を傾斜部43Tに形成する。この傾斜部43Tの傾斜方向として、この第1係合部43Aより座部42に近い位置にトーションスプリング46の第1アーム46Bが接触した場合に、その第1アーム46Bを第1係合部43A(係合部)の方向(突出部43の突出方向)に案内して確実に係合させることが可能となる。
【0083】
尚、この別実施形態(e)の傾斜部43Tを、複数の突出部43の全てに備えても良い。このように構成することにより、トーションスプリング46の第1アーム46Bを、第1係合部43Aが形成されていない突出部43に接触させた場合には、簡単に脱落するため、誤った装着を抑制する。しかも、複数の突出部43の形状を等しくしてスプリングホルダ41の回転バランスを向上させることも可能となる。
【0084】
(f)例えば、内部ロータ本体31において連結ボルト38を挿通する孔部の開口縁から回転軸芯Xの方向に突出するリング状の突出嵌合部を形成し、この突出嵌合部にスプリングホルダ41の座部42の挿通孔42Aが外嵌するように嵌合部を構成しても良い。この構成ではスプリングホルダ41を内部ロータ本体31に嵌合保持することが可能となる。また、この別実施形態(f)の構成では、挿通孔42Aが調芯部44を兼ねることになり、例えば、突出嵌合部の外周に規制部として凹部を形成し、これに係合する被係合部を座部42の挿通孔42Aの内周に形成しても良い。
【0085】
この構成においても、スプリングホルダ41を内部ロータ30に対して決まった位置に保持すると共に、内部ロータ30が一体回転することが可能となる。