(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両の一形態として、車室の屋根が開放可能な開閉ルーフ車(オープンカー)がある。このような開閉ルーフ車は、電動等により車室部分上部等を、該車室部分上部等を画成するフールで覆う閉鎖状態と、ルーフを折り畳んで車室部分後部等に格納した開放状態にすることが可能となっている。
【0003】
このような開閉ルーフ車は、特許文献1に例示される後部車体構造のように、ルーフ、ピラー、サイドウインド、及びリヤウインドの少なくとも一部を車体内に格納する格納区画と、該格納区画を開閉可能に覆うデッキカバーとを有し、該デッキカバーの前部に対して下側には、デッキカバーを開閉変位させる駆動手段が設けられた後部車体構造となっている。
【0004】
なお、特許文献1に開示の後部車体構造は、その他にも駆動手段として、モータと、該モータの駆動力を蓋(6)(デッキカバー)に伝達するリンク機構と、車体側に固定され、モータを取り付けたメインブラケット(21)と、蓋(6)に固定されたカバーブラケット(31)を備えたものである。
【0005】
そして、このような従来の蓋(6)は、格納区画の上端開口を閉塞するという機能上必要最小限の短い前後方向の長さに形成されたものであるとともに、前後方向の全長に亘って略平坦な板状に形成されたものである。
【0006】
特許文献1に開示される蓋(6)に例示される従来のように、前後方向の長さが短く、且つ板厚が前後方向に亘って略平坦な形状のデッキカバーであれば、たとえ格納区画の開口部を閉じようとする閉止力の加わる部分がデッキカバーの前方に偏り易くなっても、デッキカバー後部が車体に対して僅かに浮き上がった姿勢となるなどの問題が特段生じることなかった。
【0007】
しなしながら
、デザイン上の要求等により、例えば、デッキカバーの前後方向に長くすると、上述したように、デッキカバーの前側からモータの駆動が伝達するようにして、開口部を閉じようとする閉止力の加わる部分がデッキカバーの前方に偏った場合には、デッキカバー後部が車体に対して僅かに浮き上がった姿勢となる傾向があった。
デッキカバーが浮き上がると美観上(外観意匠性)の観点で好ましくないのは勿論、車体と、該車体から浮き上がったデッキカバーとの間に生じた隙間から水が侵入し易くなり、シール性の観点からも問題が生じることになる。
【0008】
さらに、デザイン上の要求等により、デッキカバーの前部側を後方よりも上方へ突出させるなどした構成の場合、重心が前部に偏り、その傾向が顕著になるおそれがあった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印Uは車両上方を示す。
【0023】
図面は本実施形態のオープンカー10の車体構造を示し、
図1は本実施形態のルーフ開放状態のオープンカー10を右斜め前方から視た斜視図を示し、
図2は本実施形態のルーフ閉鎖状態のオープンカー10を右斜め前方から視た斜視図を示し、
図3は開閉ルーフ21の開閉状態変更時における、車幅方向内側から視た開閉ルーフ構造20とデッキカバー構造70を示し、
図4は車幅方向内側から視た開閉ルーフ構造20の車体への組み付け構造の斜視図を示し、
図5は、ルーフ閉鎖状態のオープンカー10の後部の上側部分を示す右側面図であり、詳しくは、ロック装置90とカバーブラケット82と原動リンク83、及び従動リンク84との枢支連結部83a,84aとの高さ関係を示す構成説明図である。
図6は、右斜め下方から視た車両後方の斜視図である。なお、
図6は、デッキカバー71と車幅方向右側のリヤフェンダ16及びBピラー50以外は図示省略している。
図7は、ルーフ閉鎖状態のオープンカー10の後部の右側斜視図であり、リヤバンパー131、トランクリッド14、及びテールランプ132は図示省略している。
図8は
図7中の領域Z部分の拡大図を示している。
【0024】
なお、以下の実施例においては開閉ルーフ構造20とデッキカバー構造70について車両左側の構造を中心に説明するが、特に示す場合を除き、車両右側の構造は左側のそれと左右対称に構成されている。
【0025】
本実施形態のオープンカー10は、
図1に示すように、乗員が着座するシート12(乗員用シート12)として運転席12a及び助手席12bが配置された車室が画成された車体本体11を備え、該車体本体11には車室の上方、及び後方を覆う開閉ルーフ21を閉鎖するルーフ閉鎖状態(
図2参照)と、開閉ルーフ21を折り畳んで開放したルーフ開放状態(
図1参照)とに選択的に変更可能な開閉ルーフ構造20(
図3、及び
図4参照)が組み付けられている。
【0026】
図1〜
図3、及び
図5に示すように、車体本体11の後部にはトランクルーム13が形成されており、その開口13a(
図3参照)はトランクリッド14によって開閉可能に閉塞されている。車室とトランクルーム13との間には、開閉ルーフ21が格納される格納区画15が上方に開口して形成されている(
図1〜
図3参照)。なお、
図1〜
図3、及び
図5〜
図8中の符号16は車両本体11後部の幅方向両側の車両外観面を形成するリヤフェンダ16であり、
図5に示すように、該リヤフェンダ16の上端辺部16uは、車両前後方向に沿って延び、該上端辺部16uの前部から後端にかけて前高後低状に緩やかに傾斜した形状で形成している。
【0027】
格納区画15の上端に有する開口15A(
図3参照)には、デッキカバー構造70の一部としてのデッキカバー71が配設され、このデッキカバー71は、
図1、及び
図2に示すように、開閉ルーフ21が閉鎖状態と開放状態において、格納区画15の上端開口15Aを閉塞する定位置に配置される一方で、開閉ルーフ21を閉鎖状態と開放状態との間で変更する際には、
図3に示すように、格納区画15の後側上方に回動して格納区画15の開口15Aを開口する開放位置に配置される。
【0028】
開閉ルーフ構造20は、
図2、
図5、及び
図7に示すように、車室上部から後部を形成する開閉ルーフ21と、
図3、及び
図4に示すように、該開閉ルーフ21を閉鎖状態と開放状態の間で作動させる駆動ユニット25と、該駆動ユニット25の駆動を開閉ルーフ21に伝達するリンク機構40を備えて一体に構成し、メインブラケット30を介して車体本体11側のピラーインナーパネル150に組み付けている。
【0029】
開閉ルーフ構造20におけるリンク機構40、駆動ユニット25、及びメインブラケット30は、車両幅方向において左右一対設けられており、これらリンク機構40、駆動ユニット25、及びメインブラケット30は適宜、左右対称構造に形成されるとともに、駆動ユニット25に備えた左右のモータ26は同期駆動するように構成されている。
【0030】
開閉ルーフ21は、
図2、
図3、
図5、及び
図7に示すように、車幅方向に延びて車室前部のフロントウインドガラス17(フロントウインド部材)の上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダ18から車室の後方に連なって車室の天井となるフロントルーフ22と車室後部側のリヤルーフ23とで構成し、それぞれ前後方向に配設している。
【0031】
フロントルーフ22は、フロントルーフ本体部22Fと、該フロントルーフ本体部22Fの後方に配置されたフロントルーフ後部22Rとを備えるとともに(
図2参照)、互いの対向部分を枢支連結して構成している。これにより、フロントルーフ22自体も、開閉ルーフ21が開放する際に折り畳まれる。
【0032】
これにより、開閉ルーフ21は、フロントルーフ本体部22Fとフロントルーフ後部22Rとリヤルーフ23とで3分割に折り畳み可能に構成しており、この実施例では、フロントルーフ22およびリヤルーフ23は共にハードルーフ部材にて形成されている。
【0033】
フロントルーフ22は、強度部材であるフロントヘッダ18に対して着脱自在に設けられている。
具体的には、図示しないが、フロントルーフ22の前部には、ルーフ閉鎖時に該フロントルーフ22をフロントヘッダ18に係止するためのフックを形成するとともに、フロントヘッダ18には、フックと係合する被係合部を形成し、それぞれ車幅方向の中央部分に備えている。
【0034】
なお、上述のフロントヘッダ18は、車室内に配設された乗員用シート12の前方にて車幅方向に延び、車室前部のフロントウインドガラス17の上辺を支持する閉断面構造の強度部材である。
【0035】
リヤルーフ23は、
図3、及び
図7に示すように、車室の後方を覆うようにフロントルーフ22の後方位置に配置され、透明なガラス製のリヤウインド24を備えている。
【0036】
なお、
図3中において、リヤウインド24を除いたリヤルーフ23、及びフロントルーフ22は、2点鎖線で示して断面構造を図示省略するが、フロントルーフ22及びリヤルーフ23は、それぞれの外表面を形成するアウタパネルと、該アウタパネルの車室内方側に配設されるインナパネルとでそれぞれの外周縁部同士をヘミング接合して構成している。アウタパネルとインナパネルとの間には、板状の補強部材が適宜、配設されている。
【0037】
開閉ルーフ構造20のリンク機構40は、車幅方向の両側位置それぞれに配置される複数のリンク41で構成され、これら複数のリンク41が互いに連動するように該複数のリンク41の連結部分が枢支結合されている。
【0038】
複数のリンク41のうち、基端側(車両本体11)の基端側リンク41Aの基端部は、メインブラケット30に枢支結合されるとともに、先端側(開閉ルーフ21側)のリンク41として例えば、リヤルーフ側リンク41Bの先端部は、開閉ルーフ21側のブラケットとして例えば、リヤルーフブラケット230に枢支結合されている。
【0039】
なお、
図3、及び
図4は、リンク機構40を構成する複数のリンク41のうち、先端側(開閉ルーフ21側)のリンク41は、リヤルーフブラケット230に枢支結合したリヤルーフ側リンク41Bのみを示すなど、基端側リンク41Aやリヤルーフ側リンク41B以外の他のリンク41は図示省略している。
【0040】
開閉ルーフ構造20に備えた駆動ユニット25は、本実施形態では電動式に構成されている。駆動ユニット25は、メインブラケット30とピラーインナーパネル150との間において、ボルト等によって固定されている(
図3参照)。
【0041】
メインブラケット30は、剛性に優れた略板状の部材であり、車両本体11のピラーインナーパネル150において一体に固定され、リンク機構40を構成する複数のリンク41のうち、基端側に備えた基端側リンク41Aの基端部が車幅方向に延びる回転軸回りに回転可能に取り付けられている(
図3、及び
図4参照)。
【0042】
また、
図1〜
図6に示すように、サイドドア110のドアガラス111後端よりも僅かに後側には、ルーフ閉鎖状態、或いはルーフ開放状態に関わらず、リヤフェンダ16の上端部よりも上方へ突出するようにBピラー50を車体本体11から立設している。
【0043】
Bピラー50は、
図1〜
図3、
図5、及び
図6に示すように、下部に対して上部が車幅方向内側に僅かに傾きながらサイドドア110のドアガラス111後端に当接するように上方へ突出している。Bピラー50は、その基部(下部)が上述したメインブラケット30に固定され(
図3、及び
図4参照)、開閉ルーフ構造20の一部として該メインブラケット30を介して車両本体11のピラーインナーパネル150に固定されている。
【0044】
なお、Bピラー50についても、上述した開閉ルーフ構造20におけるリンク機構40、駆動ユニット25、及びメインブラケット30と同様に、車両幅方向において左右一対設けられているとともに、左右対称構造に形成されている。
【0045】
Bピラー50は、
図3〜
図5に示すように、アルミの押し出しにより閉断面構造で形成したピラー芯材51と、ピラー芯材51の前後各側に装着されたピラーウェザーストリップ60(60F,60R)と、該ピラーウェザーストリップ60F,60Rを保持した状態で、ピラー芯材51の外面に装着され、外観意匠面を構成するガーニッシュ62(
図5参照)とで構成している。
【0046】
また、メインブラケット30における車幅方向の内側の面には、メインブラケット30とともにリンク機構40を固定する枢支ブラケット38がボルト締結され(
図3、及び
図4参照)と、リンク機構40の基端側に備えた基端側リンク41Aが、メインブラケット30と枢支ブラケット38の間に配置されるとともに、これらブラケット30,38に対して車幅方向に延びる回転軸回りに枢支連結されている。
【0047】
また、メインブラケット30には、
図3、
図4に示すように、駆動ユニット25として、基端側リンク41Aの基端部に備えたリンクギア(図示省略)、及びモータ26の駆動軸に取り付けられた駆動ギヤ(図示省略)と噛み合う減速ギヤ28が固定されている。これによって基端側リンク41Aは、モータ26の駆動に伴い回転軸回りに所定の角度の範囲で回転する。
【0048】
また、上述したデッキカバー構造70は、
図3に示すように、上述したデッキカバー71と、該デッキカバー71を作動させて格納区画15を開閉する四節リンク機構80と駆動ユニット85を備えている。
デッキカバー71は、
図1、
図2、
図5〜
図7に示すように、車室とトランクルーム13との間の車両外面を構成し、幅方向に延びて格納区画15を閉塞するプレート状のデッキカバーベース部72と、該デッキカバーベース部72の車幅方向の両側において、閉止時には車両本体11の上部外観面を形成するようにデッキカバー71の主に前部側が上方に突出する突出部75と、該突出部75に架設したデッキカバーヘッダ76とで一体に形成している。
【0049】
デッキカバーベース部72は、
図3、
図6及び
図7に示すように、デッキカバー71が定位置において、トランクリッド14の上面と略フラットになる略平坦な上面を有する。
【0050】
図6〜
図8に示すように、突出部75の後部は、デッキカバーベース部72からトランクルーム13に至るまで、詳しくは、トランクルーム13の前端から該トランクルーム13の前後方向の長さの大よそ3分の1だけ後方に至るまで延設している。突出部75は、その前端がデッキカバーヘッダ76と略同じ高さまで突出し、後端がトランクルーム13の上面と略同じ高さとなるまで前高後低状に緩やかに傾斜する突出形状で形成している。
デッキカバーヘッダ76は、幅方向の両側の突出部75の前部上端の間に横架し、幅方向に直線状に延びる閉断面構造で構成している(
図1〜
図3、及び
図7参照)。
【0051】
図3、及び
図7に示すように、車両本体11の車室の後側部分には、デッキカバーベース部72と、幅方向の両側のBピラー50、及び突出部75と、デッキカバーヘッダ76とで囲まれて車両後方から前方視略四角形状に開口して、
図3に示すように、リヤウインド24が取り外し可能に配設されるリヤウインド配置開口部19を形成し、該リヤウインド配置開口部19は、車室側と車室外側とに車両前後方向に連通する。
【0052】
突出部75は、車幅方向内側側面が車両後方から車両前方(すなわちリヤウインド配置開口部19)に向けて車幅方向内側へ徐々に下方広がり状となるように形成し、車幅方向の両側に配置した一対の突出部75の間隔が車両後方から車両前方に向けて徐々に幅小になるように形成している。
【0053】
すなわち、このようなBピラー50、及び突出部75と、Bピラー50間に横架したデッキカバーヘッダ76とにより、デッキカバー71は、リヤウインド配置開口部19に向かって開口面積が徐々に小さくなる先細り形状、換言すると、先すぼまり形状に形成している。
【0054】
また、
図1〜
図3、及び
図5〜
図7に示すように、突出部75の上部前端は、該突出部75の前方に配置したBピラー50における上方に達するまで前方斜め上方に突出した前側突出部73を形成している。突出部75の前側突出部73よりも下部の外面には、前端から後方へ車幅方向の外面から内側に凹状としたガーニッシュ取付凹部74を形成し(
図1、
図2、
図5〜
図7参照)、ガーニッシュ取付凹部74には、突出部75の車幅方向の外面と略面一となるプレート状のガーニッシュ77を装着している(同図参照)。
【0055】
また、デッキカバー構造70は、本実施形態ではモータ86を駆動源とする電動式に構成され、
図3に示すように、デッキカバー71を開閉変位させる四節リンク機構80と駆動ユニット85とは、デッキカバー71の車幅方向の両側に備えた突出部75の前部における下方に設けられている。
【0056】
四節リンク機構80は、
図3に示すように、メインブラケット81と、カバーブラケット82と、モータ26からの駆動力を直接的に受けて動く原動リンク83と、原動リンク83に連動する従動リンク84とを備えている。
【0057】
メインブラケット81は車両本体11側の格納区画15の底面に固定されるとともに、カバーブラケット82はデッキカバー71の突出部75の下面の前側部分に固定され、四節リンク機構80を構成する原動リンク83と従動リンク84とのそれぞれは、これらメインブラケット81及びカバーブラケット82に両端が枢支連結されている。
なお、
図3中の符号83aはカバーブラケット82と原動リンク83との枢支連結部であり、
図3中の符号84aはカバーブラケット82と従動リンク84との枢支連結部である。
【0058】
カバーブラケット82は、突出部75の前側下部に固定されている。すなわち、四節リンク機構80は前後方向に延びるデッキカバー71の前方側に配設されている。
【0059】
このデッキカバー構造70に備えた駆動ユニット85には、メインブラケット30に固定されたモータ86を備えるとともに、メインブラケット30に車幅方向に延びる回転軸回りに回転可能に取り付けられたセクターギア87、及びピニオン88を備え、モータ86の駆動によってピニオン88を介してセクターギア87が回転することによって、該セクターギア87に基端部が固定された原動リンク83が回動する。
【0060】
上述した構成により、四節リンク機構80は、突出部75が上方へ突出することで重心が偏ったデッキカバー71を、その前側部分の下方から支持する構成とし、駆動ユニット85は、デッキカバー71をその前側部分から移動させる構成としている。
【0061】
上述した開閉ルーフ構造20は、
図2、
図5、及び
図7に示すように、ルーフ閉鎖状態のとき、車両を側面視すると、フロントヘッダ18の後方は、フロントルーフ22、デッキカバーヘッダ76、デッキカバー71の突出部75によって車室から格納区画15にかけて連続する滑らかなボディラインを形成している。
【0062】
一方、例えば、ルーフ閉鎖状態からルーフ開放状態とする際には、まず、デッキカバー71の四節リンク機構80が作動し、定位置にあるデッキカバー71を後方、且つ上方へ回動させてカバー開放位置として、格納区画15を開放する(
図3参照)。そして、
図4に示すように、開閉ルーフ構造20に備えたモータ26(同図参照)の駆動により、減速ギヤ28によってトルクが増幅され、基端側リンク41Aが回転軸回りに回動し、リンク機構40の基端側リンク41Aより先端側先端側で枢支連結されているリンク41がその回動に連動して動き、その動きに伴って、フロントルーフ22、及びリヤルーフ23が格納区画15に格納されるように作動する。その後、再度、デッキカバー71は、四節リンク機構80が作動し、格納区画15を閉じるように定位置まで回動させる。
【0063】
そして、ルーフ開放状態としたとき、フロントルーフ22、及びリヤルーフ23が格納区画15に格納され、車室の上方、及び後方が開口し、車両本体11における車室よりも上方には、幅方向に横架したデッキカバーヘッダ76と、車幅方向の両側から上方に突出するBピラー50、及び突出部75が残った状態となる(
図1参照)。
【0064】
なお、ルーフ開放状態からルーフ閉鎖状態へは、上述したルーフ閉鎖状態からルーフ開放状態への動作と逆の動作により変更できるため、その説明を省略する。
【0065】
また、
図3、及び
図5〜
図8に示すように、デッキカバー71の車幅方向両側と、これに対応する車体側の箇所には、開閉ルーフ21が閉鎖状態、及び開放状態となった時、デッキカバー71を車両本体11側にロックするロック装置90を備えている。
【0066】
詳しくは、ロック装置90の一方を構成するラッチ92は、デッキカバー71における左右各側の突出部75の後部下部に一対設けられており、車両本体11側に備えた後述するストライカ91に係合可能に車両前方に向けて突出したフック状に形成している。
【0067】
ロック装置90の他方を構成するストライカ91は、
図3、
図7、及び
図8に示すように、ラッチ92に対応する車体側の箇所、本実施例では、リアデッキ121におけるトランクルーム13の開口部13aの縁部の台座121aにブラケット93を左右一対取り付け、このブラケット93に、ラッチ92との係合部分が車幅方向に延びるようにコの字形状に形成した両端部を固定している。そして、このストライカ91とラッチ92との両側で結合構造を構成している。
【0068】
ロック装置90は、開閉ルーフ21の開閉時に伴うデッキカバー71の開閉に連動して結合又は結合解除されるように電動式に構成したものである。
【0069】
デッキカバー71の開閉に連動して結合又は結合解除する電動式の構成は、特に限定しないが、例えば、ワイヤを備えて構成とすることができる(図示せず)。
ワイヤを備えたロック装置90の一例として、操作ワイヤの一端を四節リンク機構80や駆動ユニット85側に連結するとともに、他端をロック装置90のラッチ92側に連結することでこれらの間に操作ワイヤを延設しておき、デッキカバー構造70のモータ86が駆動すると、その動きに連動して操作ワイヤを介してラッチ92によるストライカ91の拘束を解除してデッキカバー71を開放し、格納区画15を開ける構成とすることができる。
【0070】
また、
図5に示すように、上述したカバーブラケット82は、デッキカバー71が閉止時において、すなわち定位置にある状態において上記ロック装置90よりも車両下側に配されている。
【0071】
具体的には、カバーブラケット82と原動リンク83との枢支連結部83a、及びカバーブラケット82と従動リンク84との枢支連結部84aは、いずれもデッキカバー71が閉止時において上記ロック装置90よりも車両下側に配されている(
図5中の符号H1、H2参照)。
【0072】
上述した開閉ルーフ21、Bピラー50、ドアガラス111、及びリヤウインド24の少なくとも一部である開閉ルーフ21とリヤウインド24を車両本体11内に格納する格納区画15と、該格納区画15を開閉可能に覆うデッキカバー71とを有し、該デッキカバー71の前部における下方には、デッキカバー71を開閉変位させる駆動手段としての四節リンク機構80、及び駆動ユニット85が設けられた車両の後部車体構造において(
図3参照)、デッキカバー71の前部側には、上方へ突出して、デッキカバー71が閉止時には車両本体11の上部外観面を形成する突出部75が形成され(
図1〜
図3、及び
図5〜
図7参照)、該デッキカバー71は、複数のリンクとしての原動リンク83や従動リンク84により開閉可能に支持され(
図3参照)、これら原動リンク83や従動リンク84のデッキカバー側支持部としてのカバーブラケット82は突出部75の下部、すなわち突出部75がより上方に突出しているデッキカバー71の前側部分に配され、デッキカバー71の後部下部には、車両本体11に対しロック可能とするロック装置90が配されたものである(
図3、及び
図5〜
図8参照)。
【0073】
上記構成によれば、デッキカバー71の後部下部には、車体に対しロック可能とするロック装置90を配しているため、たとえ前後方向に長いデッキカバー71の重心が前側に偏り、デッキカバー71を前側から下方に引き込む構成、すなわち格納区画15の開口部15aを閉じる閉止力の加わる部分がデッキカバー71の前方に位置する構成であっても(
図3参照)、デッキカバー71の後部が車両本体11に対して浮き上がることなく、しっかりとデッキカバー71を閉じることができる。
従って、外観意匠性、及びシール性を確保した車両の後部車体構造を提供することができる。
【0074】
詳しくは、突出部75は、デッキカバー71の前側に形成しているため、デッキカバー71の重心が前側に偏るが、四節リンク機構80におけるデッキカバー71側を支持するカバーブラケット82を、突出部75の前側下部に配した場合、カバーブラケット82をデッキカバー71の重心が偏った側に配することになる。
【0075】
さらに、上述したように、デッキカバー71の前部に対して下方に、該デッキカバー71を開閉変位させる駆動手段としての四節リンク機構80、及び駆動ユニット85が設けられた構成とした場合、重心が前側に偏っているデッキカバー71の前側部分を下方に引き込むことになり、デッキカバー71の後部が車体に対して浮き上がるという傾向が顕著になるおそれがある。
【0076】
特に、降下したデッキカバー71により格納区画15の開口部15Aが完全に閉塞される直前には、デッキカバー71により大きなトルクを加えて開口部15aを閉塞しようとするが、その際に、デッキカバー71の特に、前側部分にトルクが加わることになるため、従来のデッキカバーであれば、後部が車体に対して浮きがちになる。
【0077】
これに対して、本実施例においては、デッキカバー71の後部下部には、車体に対しロック可能とするロック装置90を配しているため、たとえ前後方向に長いデッキカバー71の重心が前側に偏り、デッキカバー71前側から下方に引き込んで格納区画15の開口部15aを閉塞する構成であってもデッキカバー71の後部が車体に対して浮き上がることなく、しっかりとデッキカバー71を閉じることができる。
【0078】
従って、外観意匠性、及びシール性を確保した車両の後部車体構造を提供することができる。
【0079】
この発明の態様として、カバーブラケット82は、閉止時においてロック装置90よりも車両下側に配されたものである(
図5参照)。
【0080】
このようにカバーブラケット82を、閉止時においてロック装置90よりも車両下側に配された構成の場合、閉止時においてデッキカバー71を、ロック装置90よりも車両下側に配されているカバーブラケット82から下方へ引き込むことになるため、なおさらデッキカバー71の後部が浮き上がり易くなるが、このような構成であっても、デッキカバー71の後部下部に、車両本体11に対しロック可能とするロック装置90が配されているため、デッキカバー71の後部が車両本体11に対して浮き上がることなく、しっかりとデッキカバー71を閉じることができる。
【0081】
またこの発明の態様として、デッキカバー71の幅方向の両側に形成された突出部75上部は、車幅方向に延びるデッキカバーヘッダ76で結ばれたものである。
【0082】
上記構成によれば、突出部75は、上述したように、デッキカバー71の前部側に形成されており、このような突出部75上部を、車幅方向に延びるデッキカバーヘッダ76で結んだ構成とすることで、デッキカバーヘッダ76は、重心がより一層前側に偏り、なおさらデッキカバー71の後部が浮き上がり易くなるが、このような構成であっても、デッキカバー71の後部下部に、車両本体11に対しロック可能とするロック装置90が配されているため、デッキカバー71の後部が車両本体11に対して浮き上がることなく、しっかりとデッキカバー71を閉じることができる。
【0083】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のルーフは、実施例の開閉ルーフ21に対応し、
以下、同様に、
ピラーは、Bピラー50に対応し、
サイドウインドは、ドアガラス111に対応し、
デッキカバー側支持部は、カバーブラケット82に対応し、
複数のリンクは、原動リンク83、及び従動リンク84に対応し、
駆動手段は、四節リンク機構80、及び駆動ユニット85に対応し、
ヘッダは、デッキカバーヘッダ76に対応し、
車体は、車両本体11に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。