(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0012】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る定着装置100を説明する。
図1(a)は、定着装置100を示す斜視図である。定着装置100は、定着ベルト10と、一対のキャップ部材20と、加圧ローラー50と、回転検出部60とを備える。
【0013】
定着ベルト10は、定着ベルト10と加圧ローラー50との間の定着ニップNを通過するシートに画像を定着させる。定着ベルト10は、定着ベルト10の回転軸線Lの回りに回転可能である。回転軸線Lに沿った方向DLを軸線方向DLと記載する。定着ベルト10は、無端状であり、略円筒形状を有するとともに、可撓性を有する。一対のキャップ部材20は、定着ベルト10の一対の端部11に装着される。一対の端部11は、定着ベルト10の軸線方向DLの一対の端部である。回転検出部60は、定着ベルト10の一対の端部11のうちの端部11Bに装着されたキャップ部材20の回転を検出する。加圧ローラー50は、定着ベルト10に圧接し、定着ニップNを形成する。
【0014】
図1(b)は、定着装置100のキャップ部材20と第1弾性部材30と第2弾性部材40とを示す分解斜視図である。なお、
図1(b)では、定着ベルト10の一対の端部11のうちの端部11Aに装着されるキャップ部材20が示される。定着装置100は第1弾性部材30と第2弾性部材40とをさらに備える。第1弾性部材30及び第2弾性部材40の各々は環状(本実施形態では円環状)である。第1弾性部材30の内径は、第2弾性部材40の外径よりも大きい。
【0015】
キャップ部材20は、第1筒状部21と第2筒状部22と第3筒状部23とベース部24とを含む。第1筒状部21及び第2筒状部22の各々は、筒状(本実施形態では円筒状)である。第1筒状部21と第2筒状部22とは、回転軸線Lを中心とする同心円状に形成される。第1筒状部21の内径は、第2筒状部22の外径よりも大きい。従って、第2筒状部22は、第1筒状部21の内側に位置する。第1筒状部21及び第2筒状部22の各々は、円板状のベース部24から定着ベルト10の端部11Bに向かって延びる。ベース部24から第1筒状部21の先端までの長さは、ベース部24から第2筒状部22の先端までの長さよりも大きい。
【0016】
第3筒状部23は、筒状(本実施形態では円筒状)であり、ベース部24から定着ベルト10の端部11Aの外側に向かって延びる。第3筒状部23の内径及び外径は、それぞれ、第2筒状部22の内径及び外径と同一である。第2筒状部22と第3筒状部23とは、筒状体25を形成する。筒状体25は貫通孔25Aを有する。
【0017】
図1(c)は、定着装置100の第1弾性部材30と第2弾性部材40とが装着されたキャップ部材20を示す斜視図である。
図1(b)及び
図1(c)に示すように、第1弾性部材30は、第1筒状部21の内周面21Aに装着される。第2弾性部材40は、第2筒状部22の外周面22Aに装着される。そして、第1弾性部材30及び第2弾性部材40が装着されたキャップ部材20が定着ベルト10の端部11Aに装着される。この場合、定着ベルト10の端部11Aが第1弾性部材30と第2弾性部材40との間に位置するように、キャップ部材20が定着ベルト10に装着される。
【0018】
なお、定着ベルト10の端部11Bに装着されるキャップ部材20の構造は、
図1(b)及び
図1(c)に示すキャップ部材20の構造と同様であり、説明を省略する。また、図面の簡略化のため省略したが、定着装置100は、端部11Bに装着されるキャップ部材20に装着される第1弾性部材30及び第2弾性部材40をさらに含む。第1弾性部材30及び第2弾性部材40の構造は、それぞれ、
図1(b)及び
図1(c)に示す第1弾性部材30及び第2弾性部材40の構造と同様であり、説明を省略する。
【0019】
図2を参照して、定着ベルト10、キャップ部材20、第1弾性部材30、及び第2弾性部材40の詳細な構成を説明する。
図2(a)は、第2弾性部材40の熱膨張前における定着装置100の一部を示す断面図である。
【0020】
第1弾性部材30は、定着ベルト10の外周面12と対向してキャップ部材20の第1筒状部21に装着される。第1弾性部材30は、第1筒状部21の内周面21Aと定着ベルト10の外周面12とに圧接する。第1弾性部材30は、例えば、材料にシリコーンゴムを含む。シリコーンゴムは、例えば、発泡シリコーンゴムである。第1弾性部材30のゴム硬度(Asker−C硬度)は、例えば、20度〜40度である。
【0021】
第2弾性部材40は、定着ベルト10の内周面13と対向してキャップ部材20の第2筒状部22に装着される。第2弾性部材40は、定着ベルト10の内周面13に対して間隔D(例えば、100μm)を置いて、第2筒状部22の外周面22Aに配置される。第2弾性部材40は、材料に発泡シリコーンゴムを含むことが好ましい。第2弾性部材40の線膨張係数は、少なくとも1×10
-4/℃であることが好ましい。第2弾性部材40の線膨張係数は、1×10
-4/℃以上1×10
-3/℃以下であることが更に好ましい。第2弾性部材40のゴム硬度(Asker−C硬度)は、例えば、20度〜40度である。
【0022】
図2(b)は、第2弾性部材40の熱膨張後における定着装置100の一部を示す断面図である。定着ベルト10が加熱されると、第2弾性部材40も加熱されるため、第2弾性部材40は、定着ベルト10の内周面13に向かって熱膨張する。従って、第2弾性部材40は、定着ベルト10の内周面13と第1筒状部21の内周面21Aとに圧接する。第2弾性部材40の室温での外径は定着ベルト10の端部11Aの室温での内径よりも小さいが(
図2(a))、第2弾性部材40の加熱時の外径は定着ベルト10の端部11Aの室温での内径よりも大きい。従って、加熱時では、定着ベルト10の端部11Aは、第2弾性部材40によって、定着ベルト10の径方向DRに押圧される。なお、押圧に伴って、定着ベルト10の端部11Aの加熱時の内径は、定着ベルト10の端部11Aの室温での内径よりも若干大きくなる。
【0023】
以上、
図2を参照して説明したように、本実施形態によれば、第2弾性部材40は、熱膨張することによって、定着ベルト10の内周面13とキャップ部材20とに圧接する。その結果、定着ベルト10を加熱してシートに画像を定着させる際に、定着ベルト10の内周面13に塗布されている潤滑剤が定着ベルト10の端部11Aから漏洩することを抑制できる。また、第2弾性部材40は、定着ベルト10の内周面13に対して間隔Dを置いて配置されるため、加熱前において、定着ベルト10にキャップ部材20を容易に装着できる。さらに、加熱時では、定着ベルト10が第1弾性部材30と第2弾性部材40とで押圧及び挟持されるため、定着ベルト10の径方向DRへの位置ずれを抑制できる。
【0024】
また、本実施形態によれば、潤滑剤の漏洩を抑制できるため、キャップ部材20が定着ベルト10の外周面12に対して滑ることを抑制できる。従って、キャップ部材20の回転速度と定着ベルト10の回転速度とが略同一になる。その結果、回転検出部60は、キャップ部材20の回転速度を検出することによって、定着ベルト10の回転速度を精度良く検出できる。
【0025】
さらに、本実施形態によれば、端部11Aだけでなく、端部11Bにも、第1弾性部材30及び第2弾性部材40を有するキャップ部材20が装着される。従って、より確実に潤滑剤の漏洩を抑制できる。なお、端部11A及び端部11Bの一方にキャップ部材20を装着してもよい。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、第1筒状部21及び第2筒状部22を設けることにより、簡素な構成により、第1弾性部材30及び第2弾性部材40を装着できる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、第1弾性部材30と第2弾性部材40とは、分離して配置される。従って、第1弾性部材30及び第2弾性部材40が一体的に形成されている場合と比較して、キャップ部材20に第1弾性部材30と第2弾性部材40とを容易に装着できる。
【0028】
さらに、本実施形態によれば、第2弾性部材40の線膨張係数を少なくとも1×10
-4/℃(例えば、1×10
-4/℃以上)にすることにより、加熱時に第2弾性部材40を定着ベルト10の内周面13に効果的に押圧及び密着させることができる。その結果、潤滑剤の漏洩を更に抑制できる。また、第2弾性部材40を発泡シリコーンゴムによって形成することにより、第2弾性部材40の線膨張係数を1×10
-4/℃以上に容易にすることができる。
【0029】
さらに、本実施形態によれば、第2弾性部材40は、第1弾性部材30よりも定着ベルト10の端縁11Eに近い位置に配置される。この場合、第2弾性部材40は、第1弾性部材30と対向しないように又は第1弾性部材30の一部と対向するように、第1弾性部材30に対してずれた位置に配置される。従って、加圧ローラー50の加圧による定着ベルト10の端部11の変形が、第2弾性部材40によって規制されることを抑制できる。その結果、定着ベルト10の端部11を所望の形状に変形させることができる。定着ベルト10の端部11を所望の形状に変形させることによって、定着ベルト10のキャップ部材20への密着性が向上する。従って、キャップ部材20の回転は、定着ベルト10の回転に更に精度良く対応する。その結果、キャップ部材20の回転を検出することによって、定着ベルト10の回転に更に精度良く検出できる。
【0030】
図3及び
図4を参照して、定着装置100の全体構成を説明する。
図3は、定着装置100を示す断面図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【0031】
図3及び
図4に示すように、定着装置100は、定着ユニット70(加熱部)、支持部材81、押圧部材82、シート部材83、ガイド部材84、及び一対のシャフト部85をさらに備える。
【0032】
定着ユニット70は、定着ベルト10を加熱するとともに、定着ベルト10を介して第2弾性部材40を加熱する。具体的には、定着ユニット70はコイル71を備える。コイル71が発生する磁界の作用によって定着ベルト10に渦電流が発生し、定着ベルト10が発熱する。定着ベルト10の発熱に伴って、第2弾性部材40は、加熱されて熱膨張する。なお、
図3では、定着ユニット70によって加熱された定着ベルト10及び第2弾性部材40が示される。
【0033】
支持部材81、押圧部材82、シート部材83、及びガイド部材84の各々は、定着ベルト10の内側に配置される。一対のシャフト部85は、軸線方向DLに沿って支持部材81の両端から突出する。シャフト部85は、キャップ部材20の筒状体25の貫通孔25A(
図1(b))に挿入される。押圧部材82は、定着ベルト10を加圧ローラー50に向けて押圧する。シート部材83は、定着ベルト10の内周面13と接触する。ガイド部材84は、支持部材81によって支持され、定着ベルト10の内周面13に接触し、押圧部材82と共に定着ベルト10を張架する。
【0034】
定着ベルト10が回転すると、定着ベルト10は、シート部材83に対して摺動する。定着ベルト10の内周面13のうちシート部材83に対して摺動する領域には、潤滑剤が塗布されている。潤滑剤は、例えば、材料にフッ素グリス又はシリコーンオイルを含む。
【0035】
図3に示すように、回転検出部60は、第1接続ギア61と、第1接続ギア61と対向して設けられる円形状のパルス板62と、第1接続ギア61とパルス板62とを接続する接続軸63と、パルス板62に近接して配置されるセンサー64とを備える。また、定着装置100は、第1筒状部21の外周面21Bに設けられた第2接続ギア21Cをさらに備える。第1接続ギア61は第2接続ギア21Cと噛合する。パルス板62の円周には、遮光部65が立設されている。センサー64は、例えば、PI(Photo Interrupter)であり、発光部66と受光部67とを備える。
【0036】
キャップ部材20が定着ベルト10の回転に伴って回転すると、第2接続ギア21Cが回転し、第2接続ギア21Cと噛合する第1接続ギア61が回転する。第1接続ギア61の回転は、接続軸63を介してパルス板62に伝達され、パルス板62が回転する。パルス板62が回転すると、センサー64の発光部66から受光部67に向かって照射された光がパルス板62の遮光部65によって断続的に遮断される。従って、センサー64の受光部67はパルス信号を出力する。パルス信号の周波数はパルス板62の回転速度に比例する。パルス板62の回転速度はキャップ部材20の回転速度に比例するため、回転検出部60は、パルス板62を介してキャップ部材20の回転速度、つまり、定着ベルト10の回転速度を検出する。
【0037】
以上、
図3及び
図4を参照して説明したように、本実施形態によれば、第2弾性部材40は、定着ユニット70に加熱されて熱膨張し、定着ベルト10の内周面13とキャップ部材20とに圧接する。従って、定着ユニット70を利用して、第2弾性部材40を容易に熱膨張させることができる。一方、定着ユニット70が定着ベルト10を加熱していない場合、第2弾性部材40は、熱膨張することなく定着ベルト10の内周面13と離間している。従って、定着ユニット70が定着ベルト10を加熱していない時(例えば、製造時、メンテナンス時、電源オフ時、又はスリープ時)、第2弾性部材40と定着ベルト10の内周面13との間には間隔d(
図2(a))が形成される。その結果、キャップ部材20を定着ベルト10に容易に装着できる。
【0038】
図5を参照して、定着装置100を備えた画像形成装置200の一例について説明する。
図5は、画像形成装置200を示す図である。画像形成装置200は、定着装置100、給送部110、シート搬送部120、画像形成部130、画像読取部140、及び排出部150を備える。
【0039】
画像読取部140は原稿の画像を読み取る。給送部110は、シートSを収容する複数のカセット111を含み、各カセット111に収容されたシートSを1枚ずつシート搬送部120へ給送する。
【0040】
シート搬送部120は、画像形成部130に向けてシートSを搬送する。画像形成部130は、電子写真プロセスによって、シートSにトナー像(画像)を形成する。具体的には、画像形成部130は、回転可能に支持された感光体ドラム131を備える。また画像形成部130は、感光体ドラム131の周囲に、帯電部132、露光部133、現像部134、転写部135、クリーニング部136、及び除電部137を備えている。帯電部132及び露光部133によって、感光体ドラム131に静電潜像が形成され、現像部134によって静電潜像が現像されてトナー像が形成され、転写部135によってトナー像がシートSに転写される。また、トナー像の転写後に、クリーニング部136によって感光体ドラム131の残留トナーが清掃され、除電部137によって感光体ドラム131が除電される。
【0041】
トナー像が転写されたシートSは、定着装置100に向けて搬送される。定着装置100は、シートSを加熱及び加圧し、シートSに転写されたトナー像をシートSに定着させる。そして、トナー像が定着されたシートSは、排出部150が備える排出ローラー対151によって排出トレイ152上に排出される。
【0042】
以上、図面(
図1〜
図5)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)及び(2))。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
(1)
図3及び
図4に示したように、加熱部としての定着ユニット70を備えたが、加熱部は定着ユニット70に限定されない。例えば、ハロゲンヒーター又はセラミックヒーターを加熱部として用いることができる。
【0044】
(2)
図1〜
図3に示した第1弾性部材30と第2弾性部材40とは、断面矩形状であったが、本発明はこれに限られない。例えば、第1弾性部材30と第2弾性部材40とは、断面円形状又は断面楕円状であってもよい。定着装置100の設計に応じて、第1弾性部材30と第2弾性部材40の形状を選択することができる。