特許第6222077号(P6222077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222077含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222077
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20171023BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20171023BHJP
   B01D 50/00 20060101ALN20171023BHJP
   F23G 7/04 20060101ALN20171023BHJP
   F23L 7/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   C02F11/00 KZAB
   C22B1/16 E
   !B01D50/00 501J
   !B01D50/00 501Q
   !F23G7/04 601K
   !F23L7/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-265262(P2014-265262)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123913(P2016-123913A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 稔
(72)【発明者】
【氏名】百野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】末嶋 晋一
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰貴
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−006467(JP,A)
【文献】 特公昭47−035148(JP,B1)
【文献】 特開平01−239309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
C22B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系の含油スラッジを燃焼炉によって処理する際に、
前記燃焼炉に、燃料と、前記燃料を燃焼するための燃焼用空気とを供給すると共に、前記燃焼炉から排出された排ガスの一部を、前記燃焼用空気の少なくとも一部として使用し、
前記燃焼用空気の少なくとも一部として用いられる排ガスは、前記燃焼炉から排気管へ排出される前記燃焼炉の出口における排ガスの10〜30vol%であることを特徴とする含油スラッジの処理方法。
【請求項2】
さらに、前記燃焼炉から排出された排ガスを排ガス処理設備によって処理し、
前記排ガス処理設備で処理されていない排ガスを、前記燃焼用空気として用いる請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。
【請求項3】
さらに、前記排ガス処理設備に供給する排ガスに冷却用空気を混合し、
前記冷却用空気が混合されていない排ガスを、前記燃焼用空気として用いる請求項2に記載の含油スラッジの処理方法。
【請求項4】
さらに、前記燃焼炉から排出された排ガスを排ガス処理設備によって処理し、かつ、前記排ガス処理設備が、複数の処理装置によって排ガスの処理を行うものであり、
最初の前記処理装置によって処理された排ガスを、前記燃焼用空気として用いる請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。
【請求項5】
前記排ガス処理設備が、最初にサイクロンによって排ガスを処理し、次いで、電気集塵機によって排ガスを処理するものである請求項2〜4のいずれかに記載の含油スラッジの処理方法。
【請求項6】
鉄系の含油スラッジと、燃料と、前記燃料を燃焼するための燃焼用空気とを燃焼炉に供給すると共に、前記燃焼炉から排出された排ガスの一部、前記燃焼用空気の少なくとも一部として使用し、
前記燃焼用空気の少なくとも一部として用いられる排ガスは、前記燃焼炉から排気管へ排出される前記燃焼炉の出口における排ガスの10〜30vol%であり、
前記燃焼炉より油分除去スラッジを、前記燃焼炉から排出された排ガスより微粉ダストを、それぞれ、回収することを特徴とする製鉄原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼の製造過程において発生する油分を多く含む鉄系の含油スラッジの処理方法、および、この処理方法を利用する製鉄原料の製造方法に関する。具体的には、含油スラッジを製鉄原料の一部等として再利用する含油スラッジの処理において、燃料の削減を可能にする含油スラッジの処理方法、および、この処理方法を利用する製鉄原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、鉄鉱石をコークス等で還元して溶銑とし、その溶銑を精錬して鋼として、各種の鉄鋼製品を製造している。このような鉄鋼製品を製造する際、油分を含む鉄を主成分とする各種のスラッジやダストが発生する。
例えば、圧延工程においては、摩擦係数を低減して圧延負荷を軽減したり、圧延機の潤滑性を確保し、損耗等を防止したりするために、種々の圧延潤滑油や作動油、グリース等が使用されている。そのため、この圧延潤滑油などの油分を含む鉄系のスラッジが多量に発生する(以降、このような油分を含むスラッジを、単に「含油スラッジ」ともいう)。
【0003】
この含油スラッジ中に含まれる油分の濃度は、発生工程や圧延機の種類等によっても異なるが、高いものでは10質量%以上となるものもある。
【0004】
従来は、含油スラッジを、そのまま造粒原料の一部として焼結原料中に用いて造粒し、擬似粒子の焼結原料として焼結機に装入していた。
ところが、前述のように、含油スラッジは、多いものでは10質量%以上の油分を含んでいる。そのため、焼結原料中に含まれる油分が気化し、電気集塵機やバグフィルターに付着する。電気集塵機やバグフィルターに付着した油分は、目詰まりや火災などの事故の原因となる。
【0005】
また、含油スラッジを転炉製鋼原料として用いた際には、粒度が細かく粉塵としての飛散が多くなる。そのため、別途ブリケット化あるいはペレット化することが必要となり、コストがかかる。しかも、油分を含有するため転炉に装入時に発煙が発生する、あるいは注銑時に蒸気爆発するなどの問題が起こる恐れがある。
【0006】
以上のように、含油スラッジを、そのまま使用すると、操業面で悪影響を及ぼすという問題がある。そのため、含油スラッジは、このままでは製鉄原料として再利用することが難しいため、従来、産業廃棄物として埋め立てに用いて処理していた。
【0007】
一方で、含油スラッジ中には多量の鉄分が含まれている。そこで、油分を除去(脱水・分離、焙焼等)し、鉄源として再利用することが検討されている。
例えば、特許文献1には、並流式回転キルン型燃焼炉を使用した含油スラッジの処理方法において、燃焼炉の炉内で含油スラッジ中の油分が蒸発する地点に、油分を燃焼するのに必要な空気または酸素を富化した空気を強制的に吹き込むとともに、燃焼炉の出側の排ガス中酸素濃度を0.1〜5体積%に制御し、さらに含油スラッジの投入口の炉内の内壁面温度を400℃以上とした条件下で油分を燃焼除去し、油分の除去されたスラッジを非酸化条件下で冷却することが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、含油スラッジの処理において、含油スラッジに高圧流体を吹き付けるなどして、1〜10mmの小塊状にして分散させ高温のロータリーキルン内で焼却する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−169957号公報
【特許文献2】特開平8−121736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような含油スラッジの処理では、重油等の燃料が用いられる。使用する重油の量は、含油スラッジの油分含有量が多い程、多くなる。
コスト低減や環境のためにも、含油スラッジの処理では、使用する燃料は削減するのが好ましい。
【0011】
加えて、含油スラッジの処理では、燃焼炉から排ガスは排出される。この排ガスには、不可避的に微細なスラッジや油分が含まれる。
そのため、燃焼炉から排出された排ガスはサイクロンや電気集塵機等の処理装置で処理されるが、前述のように、排ガス中の油分は、目詰まりや火災などの事故の原因となる。従って、含油スラッジの処理を行う燃焼炉から排出される排ガスには、含有する油分が少ないことが求められる。
【0012】
特許文献1に記載される含油スラッジの処理方法によれば、酸素富化空気の吹込によって排ガス中の酸素濃度の制御、含油スラッジ投入口の炉内温度、処理済のスラッジの冷却を制御することで、処理済みの含油スラッジに含有される油分を低減できる。
また、特許文献2に記載される含油スラッジの処理方法によれば、含油スラッジを小塊状にして分散して燃焼することによって、含油スラッジの燃焼効率を向上し、かつ、LPG等の助燃料の使用量も低減できる。
【0013】
しかしながら、特許文献1および特許文献2には、含油スラッジの処理において、重油等の燃料の使用量を削減することや、排ガス中の油分の低減に関する記載は無い。
【0014】
したがって本発明の目的は、含油スラッジの処理において、重油等の燃料の使用量を削減でき、かつ、排ガスに含まれる油分も低減できる含油スラッジの処理方法、および、この処理方法を利用する焼結原料や転炉製鋼原料などの製鉄原料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、以下の知見を得て、本発明に至った。
鉄系の含油スラッジを、ロータリーキルン等の燃焼炉で処理した場合、キルン出口から高温の排ガスが排出される。通常、含油スラッジ処理設備には排ガスに含有されるダスト処理としてサイクロン、電気集塵機等が設置されている。この排ガス中には含油スラッジより揮発した未燃焼の油分が含有され、この油分が排ガス処理設備に供給された場合には、発火等のトラブルを有する。
しかしながら、燃焼炉より排出される排ガスは500℃以上の高温顕熱を有し、かつ、未燃焼油分を含有する。従って、この排ガスの一部を、排ガスの処理経路より分岐し、燃焼炉に供給する燃焼用空気として利用することにより、排ガスが有する顕熱が燃焼に寄与するため、燃料の使用料を削減できる。しかも、排ガスの一部を燃焼用空気として燃焼炉に供給することにより、排ガスが燃焼炉を含む経路を循環する結果となり、排ガス中の油分も低減できる。
【0016】
すなわち、本発明の含油スラッジの処理方法は、鉄系の含油スラッジを燃焼炉によって処理する際に、前記燃焼炉に、燃料と、前記燃料を燃焼するための燃焼用空気とを供給すると共に、前記燃焼炉から排出された排ガスの一部を、前記燃焼用空気の少なくとも一部として使用し、前記燃焼用空気の少なくとも一部として用いられる排ガスは、前記燃焼炉から排気管へ排出される前記燃焼炉の出口における排ガスの10〜30vol%であることを特徴とする含油スラッジの処理方法を提供する。
【0017】
このような本発明の含油スラッジの処理方法において、さらに、前記燃焼炉から排出された排ガスを排ガス処理設備によって処理し、前記排ガス処理設備で処理されていない排ガスを、前記燃焼用空気として用いるのが好ましい。
また、さらに、前記排ガス処理設備に供給する排ガスに冷却用空気を混合し、前記冷却用空気が混合されていない排ガスを、前記燃焼用空気として用いるのが好ましい。
また、さらに、前記燃焼炉から排出された排ガスを排ガス処理設備によって処理し、かつ、前記排ガス処理設備が、複数の処理装置によって排ガスの処理を行うものであり、最初の前記処理装置によって処理された排ガスを、前記燃焼用空気として用いるのが好ましい。
さらに、前記排ガス処理設備が、最初にサイクロンによって排ガスを処理し、次いで、電気集塵機によって排ガスを処理するものであるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の製鉄原料の製造方法は、鉄系の含油スラッジと、燃料と、前記燃料を燃焼するための燃焼用空気とを燃焼炉に供給すると共に、前記燃焼炉から排出された排ガスの一部を、前記燃焼用空気の少なくとも一部として使用し、前記燃焼用空気の少なくとも一部として用いられる排ガスは、前記燃焼炉から排気管へ排出される前記燃焼炉の出口における排ガスの10〜30vol%であり、前記燃焼炉より油分除去スラッジを、前記燃焼炉から排出された排ガスより微粉ダストを、それぞれ、回収することを特徴とする製鉄原料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃焼炉による鉄系の含油スラッジの処理において、燃焼炉に供給する重油等の燃料の使用量を削減できる。また、燃焼炉から排出される排ガス中に残る未燃焼油分を燃焼させることで、含油スラッジを極めて効率的に処理できる。さらに、排ガス中に含まれる油分を低減できるので、排ガスを処理する処理設備の油分による汚染や、異常高温、発火等のトラブルを回避できる。加えて、本発明の製鉄原料の製造方法によれば、本発明の含油スラッジの処理方法を利用して、焼結原料や転炉製鋼原料などの製鉄原料を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法の一例を説明するための概念図である。
図2図1に示す含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法を実施する設備を概念的に示す設備図である。
図3】本発明の含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法の別の例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法について、添付の図面に示される好適例を基に詳細に説明する。
【0022】
図1に、本発明の含油スラッジの処理方法および本発明の製鉄原料の製造方法を説明するための概念図を示す。また、図2に、図1に示す含油スラッジの処理方法および本発明の製鉄原料を実施する含油スラッジの処理設備の設備図を概念的に示す。
【0023】
図1および図2に示す例では、鉄系の含油スラッジをロータリーキルン10で処理すると共に、ロータリーキルン10から排出された高温の排ガスを、サイクロン12および電気集塵機14で処理する。
【0024】
含油スラッジは、ホッパ18に投入されて、スクリューコンベア20によって、ロータリーキルン10に供給される。
また、ロータリーキルン10には、含油スラッジと同時に、ブロワ24によって燃焼用空気が供給され、また、図示しない供給装置によって重油等の燃料が供給される。燃焼用空気は、酸素が過剰になるように供給される。
【0025】
ロータリーキルン10内では、重油等の燃料による燃焼ガスにより、含油スラッジが昇温し、油分が揮発し、炉内の過剰酸素によって燃焼する。
【0026】
なお、本発明の含油スラッジの処理方法において、燃焼炉は、ロータリーキルン10に限定はされず、シャフト炉(竪型炉)、多段炉、回転炉、流動炉、バッチ炉等、含油スラッジの処理に利用される燃焼炉(焙焼炉、焼却炉)が、各種、利用可能である。
【0027】
ロータリーキルン10で処理された油分除去スラッジは、ロータリーキルン10の出口を構成するキルンフード16に排出され、キルンフード16の下部から排出されて、スラッジ搬送コンベア26によって、回収槽30に搬送される。
【0028】
他方、ロータリーキルン10(キルンフード16)から排出された高温の排ガス(重油等燃料の燃焼ガス、油分の燃焼ガス、過剰空気、未燃焼油分、ダスト等)は、排気管28によってサイクロン12に供給される。
なお、排気管28から分岐して回収槽30に接続する配管36は、排気管28の途中に蓄積したダスト等を抜き出すための配管である。
【0029】
ここで、ロータリーキルン10から排出された排ガスは、高温(通常、500℃以上)である。そのため、ロータリーキルン10から排出された排ガスには、サイクロン12に入る前に、設備保護の観点から、冷却用空気(冷却用空気2)が混合される。
また、同様の理由で、排ガスには、キルンフード16の下部からも、冷却用空気(冷却用空気1)が混合される。
【0030】
なお、本発明の含油スラッジの処理方法において、排ガスを冷却するための冷却用空気1および/または冷却用空気2は、必要に応じて混合すればよい。
すなわち、サイクロン12や電気集塵機14等の排ガスの処理設備が十分な耐熱性を有する場合には、冷却用空気1および冷却用空気2の少なくとも一方、あるいは、両方とも、混合しなくてもよい。後述する燃焼用空気として供給する排ガスの温度の点からは、冷却用空気1および冷却用空気2は、少なくとも一方を混合しないのが好ましく、両方とも混合しないのが、より好ましい。
【0031】
サイクロン12では、排ガス中の微粉ダストおよび未燃焼油分が除去される。
サイクロン12で処理された排ガスは、次いで、電気集塵機14で処理されて、微粉ダストおよび未燃焼油分が、さらに除去される。
サイクロン12および電気集塵機14で回収された微粉ダストは、ブロワ38によって回収管40を輸送され、油分除去スラッジと同様に回収槽30に搬送される。
【0032】
なお、本発明の含油スラッジの処理方法において、排ガスの処理は、サイクロン12および電気集塵機14の両方によって行うのに限定はされず、いずれか一方による処理のみであってもよい(1段階の処理であってもよい)。さらに、排ガスの処理は、図示例のような2段階ではなく、必要に応じて、3段階以上の処理を行ってもよい。
また、排ガスの処理は、サイクロン12および/または電気集塵機14以外にも、バグフィルタ等、含油スラッジの処理における排ガス処理に用いられる各種の処理手段が利用可能である。
【0033】
電気集塵機14で処理された排ガスは、煙突34から排出される。なお、電気集塵機14から排出される排ガスの温度が高い場合には、必要に応じて、煙突34の前に冷却塔を設置してもよい。
図2に示す含油スラッジの処理設備において、ロータリーキルン10から煙突34に到る排ガスの輸送、および、排ガスへの冷却用空気1および冷却用空気2の混合(排ガスへの冷却用空気の吸引)は、電気集塵機14と煙突34との間に配置されるブロワ32によって行われる。
【0034】
ここで、図1および図2に示される例では、ロータリーキルン10(キルンフード16)の排ガスの出口と冷却用空気2の混合位置との間、すなわち、冷却用空気2の混合位置よりも上流(ロータリーキルン10側)で、排気管28から分岐して、排ガス供給管42が設けられる。排ガス供給管42は、ブロワ24による燃焼用空気の供給管に接続される。また、排ガス供給管42には、排ガス輸送用のブロワ46が設けられる。なお、排ガス供給管42は、保温されている。
すなわち、図示例の含油スラッジ処理設備では、ロータリーキルン10から排出された排ガスの一部を分岐して、分岐した排ガスを、燃焼用空気として、ブロワ46によって排ガス供給管42からロータリーキルン10に供給する(排ガスの一部を循環する)。
本発明の含油スラッジの処理方法においては、ロータリーキルン10から排出された排ガスの一部を、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給することにより、燃料として供給する重油の使用量を削減し、かつ、排ガスに含まれる油分を低減する。
【0035】
前述のように、ロータリーキルン10から排出される排ガスは、例えば500℃以上の高温の排ガスである。従って、この排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給することにより、高温の排ガスの顕熱分が燃焼に寄与するので、燃料として供給する重油の使用量を削減できる。
また。ロータリーキルン10から排出される排ガスには、未燃焼油分が数mg/Nm3程度含まれている。排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給することにより、この未燃焼油分も燃料として利用できるので、含油スラッジを極めて効率的に処理でき、この点でも、燃料として供給する重油の使用量を削減できる。
さらに、排ガスの一部を分岐して燃焼用空気として燃焼炉に供給することにより、排ガスが燃焼炉を含む経路を循環する結果となり、排ガス中の油分も低減できる。加えて、排ガス中に含まれる油分を低減できるので、排ガスを処理するサイクロン12や電気集塵機14の汚染や、異常高温、発火等のトラブルを回避できる。
また、本発明の製鉄原料の製造方法は、本発明の含油スラッジの処理方法を利用するものであり、本発明の含油スラッジの処理方法と同様の処理を行って、ロータリーキルン10から油分除去スラッジら回収し、かつ、サイクロン12および電気集塵機14から微粉ダストを回収することにより、製鉄原料を製造するものである。従って、本発明の含油スラッジの処理方法および本発明の製鉄原料の製造方法によれば、含油スラッジを極めて効率的に処理できるため、処理した含油スラッジや排ガスから回収した微粉ダストを焼結原料や転炉製鋼原料の製鉄原料として好適に利用でき、含油スラッジに含まれる鉄分の利用効率を向上できる。
【0036】
本発明の含油スラッジの処理方法において、燃焼用空気として排ガスから分岐する排ガスの量、すなわち、排ガスの内、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する排ガスの割合(以下、排ガスの分岐量とも言う)は、ロータリーキルン10の入口における酸素濃度等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者の検討によれば、排ガスの分岐量は、燃焼用空気(分岐した排ガス(循環ガス)を混合した後の、ロータリーキルン10の入口における燃焼用空気)中の酸素濃度により規定するのが好ましい。
燃焼用空気中の酸素濃度が16%未満となった場合には、重油および含油スラッジ中の油分の燃焼が不安定となる。また、排気管28から分岐する排ガスの量が多くなると、相対的に排ガスの量が増加して、ロータリーキルン10内におけるガス速度が速くなり、気相中での油分の燃焼に必要な滞留時間が確保できなくなる。また、ロータリーキルン10内におけるガス流速が速くなることで、飛散するダスト量も増加する。
そのため、排ガスの分岐量は、キルンフード16の出口における排ガスの10〜30vol%であるのが好ましく、20〜30vol%であるのがより好ましい。
排ガスの分岐量を、キルンフード16の出口における排ガスの10〜30vol%とすることにより、排ガスをロータリーキルン10に供給する効果を十分に得て、使用する燃料をより削減できる。
【0037】
排ガスの分岐量は、調節可能にしてもよい。
この場合には、一例として、含油スラッジの含油量、含油スラッジの処理量等に応じて、排ガスの分岐量を調節すればよい。
さらに、含油スラッジの供給量も、ロータリーキルン10大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0038】
本発明の含油スラッジの処理方法において、燃焼用空気として供給する排ガスは、図1および図2に示すように、冷却用空気2と混合される前の排ガスであるのが好ましい。すなわち、燃焼用空気として供給する排ガスは、冷却用空気2の混合位置より上流側で分岐するのが好ましい。これにより、より高温の排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給できる。
また、燃焼用空気として供給する排ガスは、可能な限り可能な限りロータリーキルン10(キルンフード16の出口)に近い排ガスであるのが好ましい。すなわち、燃焼用空気として供給する排ガスは、設備の設計上、可能な限りロータリーキルン10の排ガス排出口に近い位置から分岐するのが好ましい。これにより、同様に、より高温の排ガスをロータリーキルン10に供給できる。
【0039】
なお、図2に示す例では、排ガス供給管42にブロワ46を設けて、排ガスをロータリーキルン10に供給しているが、本発明は、これに限定はされない。
例えば、排気管28で排ガスを輸送するブロワ32による送風量を制御することによって、排気管28から分岐する排ガス供給管42から、ロータリーキルン10に排ガスを供給してもよい。
【0040】
図3に、本発明の含油スラッジの処理方法および本発明の製鉄原料の製造方法の別の態様を概念的に示す。
図1および図2に示す例では、ロータリーキルン10とサイクロン12との間(かつ、冷却用空気2の導入部の上流)から分岐して、排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給している。
これに対して、図3に示す例は、サイクロン12と電気集塵機14との間で分岐して、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する。すなわち、排ガスを最初に処理するサイクロン12によって処理した排ガスを、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する。サイクロン12で処理した排ガスも、ある程度の高温である。従って、この排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給することにより、排ガスの顕熱分が重油等の燃料の削減に寄与する。
【0041】
あるいは、本発明の含油スラッジの処理方法は、電気集塵機14によって処理した排ガスを、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給してもよい。
サイクロン12で処理した排ガスや、電気集塵機14によって処理した排ガスを、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する場合において、排ガスの分岐量は、キルンフード16から排出される排ガスの分岐量と同様に、各処理機からの排ガスの排出量の10〜30vol%とするのが好ましく、20〜30vol%とするのがより好ましい。ただし、図示例のように、冷却用空気2を供給する場合には、上記分岐量では、ロータリーキルン10に供給する排ガスの量が多くなってしまう傾向に有るので、注意を要する。
【0042】
すなわち、本発明の含油スラッジの処理方法では、ロータリーキルン10から排出された排ガスであれば、どの位置で分岐した排ガスであっても、利用可能である。
しかしながら、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する排ガスの温度を考慮すれば、できるだけロータリーキルン10に近い位置(できるだけ上流側)で分岐して、排ガスをロータリーキルン10に供給するのが好ましい。
従って、本発明においては、図1および図2に示す例のように、最初の処理装置であるサイクロン12で処理される前の排ガス、すなわち、サイクロン12よりも上流で分岐して、排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給するのが好ましい。
【0043】
また、本発明の含油スラッジの処理方法では、キルンフード16とサイクロン12との間で分岐した排ガスと、サイクロン12と電気集塵機14との間で分岐した排ガスとの両方を、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給してもよい。すなわち、本発明においては、2以上の複数箇所で排ガスを分岐して、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給してもよい。
しかしながら、ブロワ24によって供給する燃焼用空気燃の制御性や、燃焼用空気として供給する排ガスの制御性等を考慮すると、燃焼用空気としてロータリーキルン10に供給する排ガスは、1箇所から分岐した排ガスのみとするのが好ましい。
【0044】
さらに、本発明の含油スラッジの処理方法を実施する含油スラッジの処理設備は、サイクロン12や電気集塵機14等の、排ガスの処理設備を有さない設備であってもよい。
【0045】
以上、本発明の含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明の含油スラッジの処理方法および製鉄原料の製造方法について、より詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは、もちろんである。
【0047】
[実施例1]
図2に示す含油スラッジの処理設備を用いて、含油スラッジの処理を行った。
条件は、以下のとおりである。
ロータリーキルン10への含油スラッジの供給量; 1.75t/h
なお、含油スラッジは、油分濃度が10質量%、水分濃度が30%で、残部は鉄と不可避的不純物からなるものである。
重油供給速度; 106L(リットル)/h
燃焼用空気の供給量(排ガスを除く); 2687Nm3/h
冷却用空気1の供給量(吸い込み量); 950Nm3/h
冷却用空気2の供給量(吸い込み量); 7200Nm3/h
【0048】
キルンフード16から排出される排ガス量は、4450Nm3/hで、その内から、890Nm3/h(分岐量20vol%)を分岐して、燃焼用空気(温度444℃)としてロータリーキルン10に供給した。
【0049】
サイクロン12に供給した排ガスは、排ガス量が11640Nm3/hで、油分濃度が55mg/Nm3、ダスト濃度が8.0g/Nm3、酸素濃度が11.9vol%であった。
また、サイクロン12から排出された排ガスは、排ガス量が11640Nm3/hで、油分濃度が7mg/Nm3、ダスト濃度が0.960g/Nm3であった。
【0050】
また、排ガス処理によって回収した微粉ダストの量は93kg/h、排ガス処理で回収されたダスト中の油分濃度は0.69質量%、電気集塵機14から排出された排ガス中の油分濃度は0.66質量%であり、操業トラブルを生じることなく、含油スラッジの処理を行うことができた。
【0051】
[実施例2]
燃焼用空気として供給する排ガスの分岐位置を、冷却用空気2の混合位置の上流から図3に示すサイクロン12と電気集塵機14との間に変更した以外は、図2に示す含油スラッジの処理設備を用いて、実施例1と同様に含油スラッジを処理した。
なお、排ガスの分岐位置の変更に伴い、重油供給速度のみ、109L/hに変更した。
【0052】
サイクロン12に供給した排ガスは、排ガス量が13377Nm3/hで、油分濃度が33.7mg/Nm3、ダスト濃度が7.1g/Nm3、酸素濃度が10.6vol%であった。
サイクロン12から排出される排ガスは、排ガス量が13377Nm3/hで、その内から、1747Nm3/h(分岐量13vol%)を分岐して、燃焼用空気(温度190℃)としてロータリーキルン10に供給した。また、サイクロン12から排出された排ガスは、油分濃度が7mg/Nm3、ダスト濃度が0.86g/Nm3であった。
【0053】
また、排ガス処理によって回収した微粉ダストの量は96kg/h、排ガス処理で回収されたダスト中の油分濃度は0.78質量%、電気集塵機14から排出された排ガス中の油分濃度は0.62質量%であり、操業トラブルを生じることなく、含油スラッジの処理を行うことができた。
【0054】
[比較例1]
分岐した排ガスを燃焼用空気としてロータリーキルンに供給しなかった以外は、図2に示す含油スラッジの処理設備を用いて、実施例1と同様に含油スラッジを処理した。
なお、排ガスを燃焼用空気として供給しなかったことに伴い、重油供給速度のみ、120L/hに変更した。
【0055】
サイクロン12に供給した排ガスは、排ガス量が11650Nm3/hで、油分濃度が73mg/Nm3、ダスト濃度が8.2g/Nm3、酸素濃度が11.5vol%であった。
また、サイクロン12から排出された排ガスは、排ガス量が11650Nm3/hで、油分濃度が9mg/Nm3、ダスト濃度が0.984g/Nm3であった。
【0056】
また、排ガス処理によって回収した微粉ダストの量は96kg/h、排ガス処理で回収されたダスト中の油分濃度は0.89質量%、電気集塵機14から排出された排ガス中の油分濃度は1.1質量%であり、サイクロン12および電気集塵機14の汚染、および、排ガス中の油分濃度が問題となった。
【0057】
以上のように、本発明によれば含油スラッジの処理に使用する燃料の使用量を削減できる。しかも、燃料使用料を削減したにも関わらず、排ガス中の油分濃度を低減して、排ガスを処理する処理設備の油分による汚染や、異常高温、発火等のトラブルを回避できる。
特に、ロータリーキルン10から排出した排ガスを、冷却用空気2と混合する前に分岐した実施例1では、サイクロン12の下流で排ガスを分岐した実施例2に比して、良好な燃料削減効果が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
製鉄所における圧延等で排出される含油スラッジの処理や、鉄鋼業以外のプロセスで排出された含油スラッジの処理、含油スラッジを用いる製鉄原料の製造等に、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 ロータリーキルン
12 サイクロン
14 電気集塵機
16 キルンフード
18 ホッパ
20 スクリューフィーダ
24、32、38、46 ブロワ
26 スラッジ搬送コンベア
28 排気管
30 回収槽
34 煙突
40 回収管
42 排ガス供給管
図1
図2
図3