(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)ポリエチレン又はポリエチレン組成物を、溶剤に加熱溶解させたポリエチレン溶液を調製する工程、(b)前記ポリエチレンまたはポリエチレン組成物の溶液をダイより押し出して押出物を形成する工程、(c)前記押出物を冷却してゲル状シートを形成する工程、(d)前記ゲル状シートを延伸する工程、(e)延伸した前記ゲル状シートから前記溶剤を除去して微多孔膜を得る工程、(f)前記溶剤を除去した前記微多孔膜を延伸する工程、(g)(f)工程の後に、前記微多孔膜を90℃以上100℃以下に加熱したロール間の周速差を利用して、長手方向の緩和率が0.8%以上3%以下である熱緩和処理を行う工程を含む、ガーレー透気度が1〜1,000秒/100mL/25μmであり、ポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さが微多孔膜の全体幅の4分の1以下であり、重量平均分子量1×106〜5×106のポリエチレンを、ポリエチレン全体を100重量%として5〜40重量%含んでなるポリエチレン微多孔膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0025】
まず初めに、本発明のポリエチレン微多孔膜の原料を以下に説明する。
[1]原料
ポリエチレン系樹脂
本発明のポリエチレン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂を主成分とすることにより、耐熱性、成形性、生産コストの低減、耐薬品性、耐酸化・還元性等の観点において優れる。ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン単一物からなってもよく、好ましくはポリエチレンを主成分として構成されるポリエチレン組成物からなる。
【0026】
ポリエチレンまたはポリエチレン組成物は、空孔率、透過性、機械強度を高くするために、微多孔膜を構成する全てのポリマー全重量に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましくは85重量%以上である。
【0027】
ポリエチレンまたはポリエチレン組成物は、重量平均分子量(Mw)が5×10
5以上であることが好ましく、より好ましくは、5×10
5〜5×10
6であることが好ましい。重量平均分子量がこの好ましい範囲であると、微多孔膜の製造時の延伸工程において微多孔膜の破断が起こりにくく、一方、溶融押し出しが容易である。
【0028】
次に、本発明に用いるポリエチレン又はポリエチレン組成物の分子量分布=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は4〜300が好ましく、10〜100がより好ましい。Mw/Mnをこの範囲にすることにより、微多孔膜に、溶融押し出しによる加工性を保持しながら、優れた強度を付与することができる。
ポリエチレン組成物
本発明のポリエチレン微多孔膜には、ポリエチレン組成物を用いることが好ましい。特に重量平均分子量(Mw)が5×10
5〜9×10
5の第一のポリエチレンと、Mwが1×10
6〜5×10
6の第二のポリエチレンとの組成物であることが最も好ましい。第一のポリエチレンと第二のポリエチレンとのポリエチレン組成物を用いることにより、溶融押し出しによる製造を容易にすると同時に、微多孔膜に優れた強度、特に優れた突刺強度および機械強度を付与することができる。
第一のポリエチレン
第一のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレンおよび鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。好ましくは、高密度ポリエチレンである。
【0029】
第一のポリエチレンは、エチレンの単独重合のみならず、エチレン以外のα−オレフィンを少量含有するエチレン・α−オレフィン共重合体でもよい。エチレン以外のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1及びオクテン−1が好ましい。その他に、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル及びスチレンを含有してもよい。エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとを共重合することにより、第一のポリエチレンの融点を132℃以上とすることができる。融点は、JIS K7121 (1987)に基づき、示差走査熱量計(DSC)測定により求める。エチレン以外のα−オレフィンの含有量は、微多孔膜の機械強度を保持する観点から、0〜5モル%が好ましい。また、第一のポリエチレンは、1種類のみを用いることもできるし、2種類以上用いることもできる。
【0030】
第一のポリエチレンのMwは5×10
5〜9×10
5が好ましく、5×10
5〜8×10
5がより好ましく、5.5×10
5〜7×10
5がさらに好ましい。第一のポリエチレンの分子量分布は0より大きく、50以下が好ましく、より好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜15、最も好ましくは4〜10である。
【0031】
優れた透過性及び機械強度を有する微多孔膜を得るために、第一のポリエチレンの末端ビニル基濃度は、10,000個の炭素原子当たり0.2個未満であるのが好ましい。このようなポリエチレンは、例えば、チーグラー−ナッタ触媒又は、シングルサイト重合触媒により製造することができる。なお、末端ビニル基濃度はWO1997/23554に記載の方法により測定することができる。
第二のポリエチレン
第二のポリエチレンは超高分子量ポリエチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合のみならず、エチレン以外のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1及びオクテン−1が挙げられる。その他に、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル及びスチレンも使用可能である。エチレン以外のα−オレフィンの含有量は0〜5モル%が好ましい。
【0032】
第二のポリエチレンのMwは1×10
6〜5×10
6が好ましく、1×10
6〜3×10
6がより好ましい。第二のポリエチレンの分子量分布は1.2〜50が好ましく、3〜20がより好ましく、4〜15がさらに好ましく、4〜10が最も好ましい。
【0033】
第二のポリエチレンは、例えば、チーグラー−ナッタ触媒又はシングルサイト重合触媒により製造することができる。第二のポリエチレンの融点は、溶融押し出し法での加工性を良好にする観点から、134℃以上220℃未満が好ましい。
【0034】
第二のポリエチレンの含有量は、ポリエチレン組成物全体を100重量%として、1〜50重量%が好ましく、2〜45重量%がより好ましい。最も好ましくは、5〜40重量%である。第二のポリエチレン含有量を当該範囲とすることにより、本発明のポリエチレン微多孔膜に優れた機械強度と空孔率を付与することができる。
その他
上述のポリエチレン又はポリエチレン組成物には、無機フィラー、耐熱ポリマー等のその他の成分を含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、珪素及び/又はアルミニウム原子を含むフィラーが挙げられる。耐熱ポリマーとしては、上述の第一及び第二のポリエチレンよりも融点が高い熱可塑性樹脂である。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィンを挙げることができる。微多孔膜は、溶融押し出し法にて製造するため、耐熱ポリマーの融点は、加工性の観点から好ましくは、(第一のポリエチレンの融点)〜(第一のポリエチレンの融点+50℃)であることが好ましい。無機フィラーおよび耐熱ポリマーとしては、WO2007/132942及びWO2008/016174に記載されたものが好ましい。無機フィラー及び耐熱ポリマーのそれぞれの含有量は、微多孔膜の重量を100重量%として、10重量%以下が好ましい。
【0035】
さらに、本発明で用いるポリエチレン又はポリエチレン組成物には、低圧法により製造された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中圧法により製造された低密度ポリエチレン(LDPE)、シングルサイト触媒により製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体、重量平均分子量1,000〜4,000の低分子量ポリエチレンを添加して、低温でのシャットダウン機能を付与することで電池用セパレータとしての特性を向上させることもできる。ただし、製造時の延伸工程において、微多孔膜の破断を有効に防止する観点から、低密度ポリエチレンの添加量はポリエチレン組成物中0〜20重量%が好ましい。
【0036】
また、本発明で用いるポリエチレン又はポリエチレン組成物には、ポリプロピレンを添加することにより、本発明のポリエチレン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合にメルトダウン温度を向上させることができる。ポリプロピレンの種類は、単独重合体のほかに、ブロック共重合体、ランダム共重合体も使用することができる。ブロック共重合体、ランダム共重合体には、プロピレン以外の他のα−エチレンとの共重合体成分を含有することができ、当該他のα−エチレンとしては、エチレンが好ましい。
【0037】
その他、本発明のポリエチレン微多孔膜には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリエチレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
[2]ポリエチレン微多孔膜の製造方法
次に、本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法を具体的に説明する。なお、本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法は、これに限定されるものではない。
(a)ポリエチレン溶液の調製
ポリエチレン又はポリエチレン組成物を、溶剤に加熱溶解させたポリエチレン溶液を調製する。ポリエチレン組成物は、上述したように、第一のポリエチレンと、第二のポリエチレンとから調製することが好ましく、重量平均分子量(Mw)が5×10
5〜9×10
5の第一のポリエチレンと、Mwが1×10
6〜5×10
6の第二のポリエチレンとの組成物であることが最も好ましい。
【0038】
ここで、溶剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できるものであれば特に限定されない。比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であるのが好ましい。液体溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。溶融混練状態では、ポリエチレンと混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0039】
液体溶剤の粘度は40℃において20〜200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリエチレン溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。
(b)押出物の形成
ポリエチレン溶液の均一な溶融混練は、特に限定されないが、高濃度のポリエチレン溶液を調製したい場合、二軸押出機中で行うことが好ましい。必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で酸化防止剤等の各種添加材を添加してもよい。特にポリエチレンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0040】
押出機中では、ポリエチレン又はポリエチレン組成物が完全に溶融する温度で、ポリエチレン溶液を均一に混合する。溶融混練温度は、使用するポリエチレン又はポリエチレン組成物によって異なるが、(ポリエチレン又はポリエチレン組成物の融点+10℃)〜(ポリエチレン又はポリエチレン組成物の融点+120℃)とするのが好ましい。さらに好ましくは(ポリエチレン又はポリエチレン組成物の融点+20℃)〜(ポリエチレン又はポリエチレン組成物の融点+100℃)である。ここで、融点とは、JIS K7121(1987)に基づき、DSCにより測定した値をいう(以下、同じ)。例えば、ポリエチレンの場合の溶融混練温度は140〜250℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、160〜230℃、最も好ましくは170〜200℃である。具体的には、ポリエチレン組成物は約130〜140℃の融点を有するので、溶融混練温度は140〜250℃が好ましく、180〜230℃が最も好ましい。
【0041】
また、ポリエチレン溶液にポリプロピレンを含む場合の溶融混練温度は、190〜270℃、特に190〜250℃であるのが好ましい。ポリプロピレンを含む場合は、特に混練および樹脂の分散性・分配性を向上させる観点から、溶融混練状態のポリエチレンまたはポリエチレン組成物にポリプロピレン溶液を押出機の途中から供給する。
【0042】
樹脂の劣化を抑制する観点から溶融混練温度は低い方が好ましい。溶融混練温度がこの好ましい範囲であると、ダイから押出された押出物に未溶融物が発生せず、後の延伸工程で破膜等が起こらず、一方、ポリエチレンの熱分解が起こりにくく、得られる微多孔膜の物性、例えば、突刺強度、引張強度等に優れる。
【0043】
ポリエチレンまたはポリエチレン組成物と溶剤の配合割合は、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物と溶剤の合計を100重量%として、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物の含有量は、押出物の成形性を良好にする観点から、10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。さらに好ましくは、20〜30重量%である。溶剤の好ましい含有量は90〜50重量%、さらに好ましくは90〜70重量%、より好ましくは80〜70重量%である。ポリエチレンまたはポリエチレン組成物と溶剤の配合割合がこの好ましい範囲であると、シート状に成形する際に、ダイの出口でスウエルやネックインが小さく、シートの成形性が良好で、製膜性に優れる一方、厚み方向の収縮が小さく、成形加工性に優れる。
【0044】
二軸押出機のスクリュー長さ(L)と直径(D)の比(L/D)は良好な加工混練性と樹脂の分散性・分配性を得る観点から、20〜100が好ましく、さらに好ましくは35〜70である。L/Dを20以上にすると、溶融混練が十分となる。L/Dを100以下にすると、ポリエチレン溶液の滞留時間が増大し過ぎない。混練する樹脂の劣化を防ぎながら良好な分散性・分配性を得る観点から、二軸押出機のシリンダ内径は40〜100mmであるのが好ましい。
【0045】
押出物中にポリエチレンを良好に分散させて、優れた微多孔膜の厚み均一性を得るために、二軸押出機のスクリュー回転数(Ns)を300〜600rpm以上とすることが好ましい。さらに、Ns(rpm)に対するポリエチレン溶液の押出量Q(kg/h)の比、Q/Nsを0kg/h/rpmより大きく、0.4kg/h/rpm以下にするのが好ましい。さらに好ましくは0kg/h/rpmより大きく、0.35kg/h/rpm以下である。
【0046】
溶融混練したポリエチレンまたはポリエチレン組成物の加熱溶液を直接に、あるいはさらに別の押出機を介して、ダイから押出して、最終製品の微多孔膜の厚みが5〜100μmになるように成形して押出物を得る。ダイは、長方形のTダイを用いてもよい。Tダイを用いた場合、最終製品の微多孔膜の厚みを制御しやすい観点から、ダイのスリット間隙は0.1〜5mmが好ましく、押し出し時に140〜250℃に加熱するのが好ましい。
(c)ゲル状シートの形成
次に、得られた押出物を冷却することによりゲル状シートが得られ、冷却により、溶剤によって分離されたポリエチレンのミクロ相を固定化することができる。冷却により10〜45℃まで冷却するのが好ましい。冷却は少なくともゲル化温度以下までは30℃/分以上の速度で行うのが好ましい。さらには50℃/分以上の速度が好ましい。冷却速度がこの好ましい範囲であると、結晶化度が上昇せず、延伸に適したゲル状シートとなりやすい。一般に冷却速度が遅いと、比較的大きなポリエチレンの結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成する疑似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと、比較的小さなポリエチレンの結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が密になり、密な細胞単位となる。
【0047】
冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。なお、ダイから押し出された溶液は、冷却前あるいは冷却中に好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の引き取り比で引き取ってもよい。引き取り比がこの好ましい範囲であると、ネックインが小さく、また延伸時に破断を起こしにくい。ゲル状シートの厚さは0.5〜5mmが好ましく、0.7〜3mmがより好ましい。
【0048】
これまで微多孔膜が単層の場合を説明してきたが、本発明のポリエチレン微多孔膜は、単層に限定されるものではなく、積層体にしてもよい。積層部分は、上述したようにポリエチレンの他に、本発明の効果を損なわない程度にそれぞれ所望の樹脂を含んでも良い。ポリエチレン微多孔膜を積層体とする方法としては、従来の方法を用いることができるが、例えば、所望の樹脂を必要に応じて調製し、これらの樹脂を別々に押出機に供給して所望の温度で溶融させ、ポリマー管あるいはダイ内で合流させて、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状ダイから押出しを行う等して、積層体を形成する方法がある。
(d)延伸
得られたゲル状(未延伸積層)シートを延伸する。延伸はゲル状シートを加熱し、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法、もしくはこれらの方法の組み合わせによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、微多孔膜に優れた強度を付与する観点から二軸延伸が好ましい。ここで、ゲル状シートの製造方向を長手方向、長手方向に垂直なゲル状シートの方向を幅方向と定義する。二軸延伸の場合は、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う等の逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法等が包含される。特に同時二軸延伸法を用いることが好ましい。逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、延伸工程で長手方向、幅方向に結晶が均一に成長するため、安定して高倍率に延伸しやすい。また、微多孔膜の長手方向および幅方向の物性バランスをコントロールしやすい。
【0049】
延伸温度はポリエチレンまたはポリエチレン組成物の融点+10℃以下にするのが好ましく、(ポリエチレンまたはポリエチレン組成物の結晶分散温度Tcd)〜(ポリエチレンまたはポリエチレン組成物の融点)の範囲にするのがより好ましい。延伸温度がこの好ましい範囲であると、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物が溶融せず、延伸による分子鎖の配向ができる一方、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物の軟化が十分で、延伸時に破膜しにくく、高倍率の延伸ができる。具体的には、ポリエチレンまたはポリエチレン組成物は約90〜100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度を90〜130℃にし、好ましくは100〜120℃にし、より好ましくは110〜120℃にし、最も好ましくは115〜120℃にする。結晶分散温度TcdはASTM D4065に従って測定した動的粘弾性の温度特性から求める。または、NMRから求める場合もある。
【0050】
また、延伸倍率は、ゲル状シートの厚さによって異なるが、一軸延伸の場合は2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸の場合は、いずれの方向でも3倍以上に延伸することが好ましい。面積倍率では、9倍以上が好ましく、さらに好ましくは16倍以上、最も好ましくは20倍以上である。面積倍率が9倍未満では、延伸が不十分で高強度の微多孔膜が得られない。面積倍率を400倍以下が好ましい。延伸倍率がこの好ましい範囲であると、微多孔膜の製造中に破れが発生しにくく、生産性に優れる。なお、二軸延伸における長手方向および幅方向における延伸倍率は同じでなくてもよい。
【0051】
以上のような延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔が拡大するので、電池用セパレータに好適になる。
(e)洗浄
次に、ゲル状シート中に残留する溶剤を、洗浄溶剤を用いて除去する。ポリエチレン相と溶媒相とは分離しているので、溶剤の除去により微多孔膜が得られる。洗浄溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン、C
6F
14、C
7F
16等の鎖状フルオロカーボン、C
5H
3F
7等の環状ハイドロフルオロカーボン、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5等のハイドロフルオロエーテル、C
4F
9OCF
3、C
4F
9OC
2F
5等のパーフルオロエーテル等の易揮発性溶剤が挙げられる。これらの洗浄溶剤は低い表面張力(例えば、25℃で24mN/m以下)を有する。低い表面張力の洗浄溶剤を用いることにより、微多孔を形成する網状構造が洗浄後に乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮するのが抑制され、もって高い空孔率および透過性を有する微多孔膜が得られる。これらの洗浄溶剤はポリエチレンまたはポリエチレン組成物の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。
【0052】
洗浄方法は、ゲル状シートを洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、ゲル状シートに洗浄溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組み合わせによる方法等により行うことができる。洗浄溶剤の使用量は洗浄方法により異なるが、一般にゲル状シート100重量部に対して300重量部以上であるのが好ましい。洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて80℃以下に加熱する。この時、溶剤の洗浄効果を高める観点、得られる微多孔膜の物性の幅方向および/または長手方向の微多孔膜物性が不均一にならないようにする観点、微多孔膜の機械的物性および電気的物性を向上させる観点から、ゲル状シートが洗浄溶剤に浸漬している時間は長ければ長い方が良い。
【0053】
上述のような洗浄は、洗浄後のゲル状シート、すなわち微多孔膜中の残留溶剤が1重量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0054】
その後、洗浄溶剤を乾燥して除去する。乾燥の方法は特に限定されないが、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリエチレン組成物の結晶分散温度Tcd以下であることが好ましく、特に、(Tcd−5℃)以下であることが好ましい。乾燥は、微多孔膜の乾燥重量を100重量%として、残存洗浄溶剤が5重量%以下になるまで行うのが好ましく、3重量%以下になるまで行うのがより好ましい。乾燥が十分であると、後の熱処理で微多孔膜の空孔率が低下せず、透過性に優れる。
(f)再延伸
乾燥した微多孔膜を少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)する。再延伸前に、適宜押出ラミネートや、コーティング等により所望の樹脂層を微多孔膜に設けてもよい。
【0055】
再延伸は、微多孔膜を加熱しながら上述の延伸と同様にテンター法等により行うことができる。再延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸または逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。多段延伸の場合は、同時二軸または/および逐次延伸を組み合わせることにより行う。
【0056】
再延伸の温度は、ポリエチレン組成物の融点以下にすることが好ましく、(Tcd−20℃)〜融点の範囲内にするのがより好ましい。具体的には、70〜135℃が好ましく、110〜132℃がより好ましい。最も好ましくは、120〜130℃である。
【0057】
再延伸の倍率は、一軸延伸の場合、1.01〜1.6倍が好ましく、特に幅方向は1.1〜1.6倍が好ましく、1.2〜1.5倍がより好ましい。二軸延伸の場合、長手方向および幅方向にそれぞれ1.01〜1.6倍とするのが好ましい。なお、再延伸の倍率は、長手方向と幅方向で異なってもよい。
【0058】
再延伸の速度は長手および幅方向ともに3%/秒以上が好ましく、より好ましくは5%/秒以上である。上限は、50%/秒以下が好ましく、25%/秒以下が好ましい。再延伸速度は長手方向および幅方向で互いに独立して設定してもよい。
【0059】
微多孔膜は、少なくとも一軸方向に延伸することにより一軸方向に配向していることが好ましい。少なくとも一軸方向に配向していることにより、微多孔膜の強度を高めることができる。また、少なくとも一方向に微多孔膜を延伸・配向させることにより、孔形成が促進されるため、透過性を著しく向上させることもできる。また、微多孔膜の長手方向に延伸・配向することにより、その製造工程において、キャスト速度が同じでも、製膜速度(=ライン速度)を高くできることから、単位時間あたりの微多孔膜の生産面積を高めることができる。すなわち、単位面積あたりのコストを少なくすることができる。
【0060】
さらに、微多孔膜は、少なくとも二軸延伸することにより二軸配向していることがより好ましい。微多孔膜が二軸配向していることにより、微多孔膜の各方向の強度バランスを優れたものとすることができる。微多孔膜が二軸配向していることにより、微多孔膜に靱性を付与でき、微多孔膜がどの方向にも裂けにくくすることができる。これにより微多孔膜は、二次加工工程において横方向に過度に縮んだり、破れることを防ぐことができる。
【0061】
二軸配向の微多孔膜の製造方法として、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、それに続く再延伸等、各種二軸延伸法に代表される各種の成膜法が用いられるが、孔径と縦方向の伸度のバランスを良好に保ち、高透過性、高強度の微多孔膜を高い生産性で製造するためには、縦−横同時二軸延伸法または縦−横逐次二軸延伸法を用いることが重要である。縦−横同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法は、微多孔膜の長手方向と幅方向の物性バランスを調整しやすいため、微多孔膜をセパレータとして電池等を製造する場合には好ましい電池特性を得ることができるため、延伸方法として好適である。
【0062】
(d)延伸工程と(f)再延伸工程は、いずれか一つの工程を微多孔膜に行うようにしてもよいが、両方の工程を行うことが好ましい。
(g)熱緩和処理
延伸後の微多孔膜を熱緩和処理する。熱緩和処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱緩和処理とは、微多孔膜を加熱中に長手方向や幅方向に熱収縮させる熱処理である。
熱緩和処理は、微多孔膜の最後の延伸工程の後、好ましくは微多孔膜の製造工程の最後、例えば微多孔膜を最終製品とする直前や微多孔膜をロールに巻き取る直前に行うことが好ましい。熱緩和処理の加熱方法としては、再延伸後に続けて再延伸と同じ加熱炉内で熱処理しても良いし、再延伸を行った加熱炉を微多孔膜が出た後に別の加熱炉で行う方法等がある。
【0063】
ここで、熱緩和処理の温度は、微多孔膜の主成分である樹脂のTcd付近であることが最も好ましい。具体的には、熱処理温度は、Tcd〜Tmの範囲内が好ましく、(Tcd−30℃)〜(Tcd+20℃)である。さらに好ましくは、(Tcd−20℃)〜(Tcd+15℃)、最も好ましくは、(Tcd−10℃)〜(Tcd+10℃)である。特に、本発明のポリエチレン微多孔膜の熱緩和処理温度は好ましくは50〜115℃であり、さらに好ましくは60〜110℃である。
【0064】
熱緩和処理の時間は1,000秒以下が好ましく、より好ましくは800秒以下、さらに好ましくは50秒以下、最も好ましくは20秒以下が好ましい。
【0065】
熱緩和処理は、長手方向に一段階もしくは多段階で行ってもよく、長手方向および幅方向に同時又は逐次的に行うようにしてもよい。
長手方向の熱緩和処理
本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法では、少なくとも長手方向に熱緩和処理することが重要である。本発明のポリエチレン微多孔膜は、少なくとも長手方向に熱緩和処理することにより、延伸の際に微多孔膜内に生じる長手方向の残存応力を低減することができ、波打幅を小さくし、平面性を良好なものとすることができる。
【0066】
長手方向の緩和率が小さいとき、得られる微多孔膜の長手方向および幅方向の105℃、8時間での熱収縮率は大きいままであるが、微多孔膜の波打幅や弛みを無くすために必要な荷重は小さくなる場合がある。一方、長手方向の緩和率を大きくしても、得られた微多孔膜の長手方向の105℃、8時間での熱収縮率が低下するものの、微多孔膜の波打幅や弛みを無くすために必要な荷重は小さくならない場合があり、本発明者らは熱収縮率と波打幅や弛みを無くすために必要な荷重は相関関係にないことを見出した。
【0067】
そこで、長手方向の緩和率は
0.8%以上3%以下であ
る。好ましくは1%〜3%である。緩和率は、以下の式により算出した。
【0068】
緩和率(%)=100×(緩和前の長さ−緩和後の長さ)/緩和前の長さ
微多孔膜を長手方向に熱緩和処理する方法として、従来の方法を用いることができ、例えばテンター中で微多孔膜をリニアモーター式クリップ等のクリップに把持し、加熱した状態でクリップ間距離を長手方向に縮めるテンター式の方法や、テンター内でクリップに把持された微多孔膜の端部や中央部にカッターにより切り込みを入れ、長手方向の張力を低下させる方法等を用いることができる。特に、本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法では、後方(巻き取り機に近い側)のロールの周速を前方(押出機に近い側)のロールの周速よりも遅くするようにロール間に周速差をつけた加熱したロール上を微多孔膜を搬送することで、微多孔膜を長手方向に緩和させる方法が好ましい。微多孔膜をロールを用いて長手方向に熱緩和処理することにより、テンタークリップ方式に比べて微多孔膜を所望の温度で均一に加熱できるだけでなく、緩和率や緩和速度を制御しやすい。そのため、熱緩和処理の方式は最も好ましくは、熱ロール方式である。
【0069】
加熱ロールによる熱緩和処理では、ロールの数は制限されないが、ロールの周速差を利用して微多孔膜を長手方向に収縮させて緩和させる必要があるため、最低限2本のロールが必要である。加熱ロールとの接触時間(加熱時間)は1秒以上が好ましい。微多孔膜と加熱ロールとの接触時間は、微多孔膜の走行速度、加熱ロールの径、及び微多孔膜のロールへの進入角度で制御することができる。緩和率を大きくするために、3本以上の加熱ロールを用いても良い。
【0070】
本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法において使用するロールの直径は150〜450mm、好ましくは250〜350mmである。
【0071】
本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法において使用するロールの素材としては、ステンレスや鉄製およびそれらにメッキ処理した金属製ロール、ハードクロム製ロール、金属製の中心部分にゴムを被覆したゴムロール、金属製の中心部分にセラミックを被覆したセラミックロール等が好適に用いられる。またロールの加熱方法としては、中心部分を中空として内部に加熱されたスチームや熱水または熱媒を通して加熱する方法、あるいは内部に電熱線を施して加熱する方法、または電磁波にて誘導加熱で加熱する方法等がある。
幅方向の熱緩和処理
本発明のポリエチレン微多孔膜の製造方法では、ポリエチレン微多孔膜を長手方向に熱緩和処理する際に、同時に又は逐次的に幅方向に熱緩和処理するようにしてもよい。長手方向および幅方向に熱緩和処理することで長手方向および幅方向の厚みの経時変化や、長手方向および幅方向の長さの経時変化を抑制することができ、波打の発生を抑制することができる。
【0072】
微多孔膜を幅方向に熱緩和処理する方法としては、従来の方法を用いることができ、例えば、テンター中で微多孔膜をクリップに把持し、加熱した状態でクリップ間距離を幅方向に縮める方法や、テンター中でクリップに把持された微多孔膜の端部や中央部にカッターにより切り込みを入れ、幅方向の張力を低下させる方法がある。
【0073】
熱緩和処理後の幅方向の長さは、緩和前の微多孔膜の幅方向の長さを1とした場合に、1より小さいが、0.7倍以上となることが好ましい。熱緩和処理後の幅方向の長さがこの好ましい範囲であると、微多孔膜の強度に優れ、透気度が過度に大きくならず、電池セパレータとして用いた場合に好ましい。
【0074】
以上のように、微多孔膜を少なくとも長手方向に熱緩和処理することにより、透過性および平面性が良好な本発明のポリエチレン微多孔膜を得ることができる。
【0075】
さらに、以上の工程を経て製造された本発明のポリエチレン微多孔膜は、巻き取るようにしてロール状の捲回体を形成してもよい。
(h)その他の処理
以上の工程に加え、延伸したゲル状シート及び/又は再延伸後の微多孔膜に熱固定処理をしてもよい。熱固定処理とは、微多孔膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱固定処理方法としては、従来の方法で行うことができるが、例えば、微多孔膜をテンターにて固定した状態で加熱する方法がある。熱固定処理により、ゲル状シートの結晶化が安定化し、ラメラ層が均一化する。そのため延伸により形成されたフィブリルからなる網状構造が安定化し、後段の溶媒除去処理により、機械強度に優れ、熱収縮率が低い微多孔膜を作製することができる。熱固定処理温度は、(Tcd−20℃)〜融点(Tm)の温度範囲内であることが好ましい。
【0076】
熱固定処理は、(d)延伸工程と(g)再延伸工程のそれぞれの後に行うことによって、微多孔膜の収縮を抑制することができる。熱固定処理を行う場合、熱緩和処理は熱固定処理よりも後に行うことが好ましい。
【0077】
さらに、その他用途に応じて、微多孔膜に親水化処理を施すこともできる。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
【0078】
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤および両イオン界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中に微多孔膜を浸漬するか、微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
【0079】
必要に応じ、微多孔膜の少なくとも片面に空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理する。
【0080】
次に、本発明のポリエチレン微多孔膜へコーティング処理をして、複合膜を製造する方法について説明する。
[3]複合膜の製造方法
本発明のポリエチレン微多孔膜は、少なくとも片面にコーティング層を形成した複合膜とすることが好ましい。コーティング層は、上述のポリエチレン微多孔膜と同様に、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体に対し透過性を有する。コーティング層の形成方法は、従来の方法を用いることができ、また、有機高分子化合物を含んで構成されても良いし、無機フィラーを含んでもよい。有機高分子化合物として、例えば、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。特に、耐熱性を有する観点から、ポリフッ化ビニリデンやセラミックコーティング等の耐熱性を有するコーティング層を本発明のポリエチレン微多孔膜の少なくとも片面に形成して複合膜とすることにより、本発明のポリエチレン微多孔膜をリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いた場合に、電池に優れた安全性を付与することができる。
【0081】
本発明のポリエチレン微多孔膜は優れた平面性を有するため、コーティング層形成時に、コーティング層の厚みムラ、塗布ムラや、塗工筋などの塗布欠点を発生しにくい。そのため、コーティング加工時の生産性の向上に寄与することができる。
【0082】
また、本発明のポリエチレン微多孔膜にコーティング処理することにより、連弾状塗布筋欠点の発生を抑制することができる。ここで連弾状塗布筋欠点は、
図1に示すような核が連なった塗布筋を意味し、一つの核の周囲に樹脂成分が山の裾の状に広がっている形態のものが多い。連弾状塗布筋欠点は、高さの非常に小さいものであり、薄いため、後述する特定の条件下、暗室内で三波長蛍光管を用いて検出する方法および、ブロムライトを用いて検出する方法の両方法を組み合わせて検出される。
【0083】
ここで規定する連弾状塗布筋欠点は、核の部分が複数小に分割された形状のものも含まれる。尚、本発明が規定する連弾状塗布筋欠点は、ブロムライトのみを用いて比較的容易に検出できる塗布液中に存在する粒子凝集物が微多孔膜上で密集し、さらに筋状に点在した粗大塗布筋欠点とは大きさ、形状が異なり、さらに発生メカニズムも異なるものである。
[4]ポリエチレン微多孔膜の物性
次に、本発明のポリエチレン微多孔膜の物性について説明する。
(a)ガーレー透気度
本発明のポリエチレン微多孔膜は、ガーレー透気度が1〜1,000秒/100mL/25μmである。ガーレー透気度とは、JIS P 8117 (1998)に基づいて測定される透過性の指標であり、面積642mm
2の微多孔膜を空気100mLが通過する時間である。ガーレー透気度が小さい値であるほど、微多孔膜に対する気体、液体等の透過性が優れていることを示しており、微多孔膜の孔径、空孔率がほぼ同じでガーレー透気度が小さければ、微多孔膜中に貫通孔がより多く形成されているものと考えられる。
【0084】
ガーレー透気度が1秒/100mL/25μm未満では、微多孔膜の強度が低下し、セパレータとして用いた際に容易にピンホールが発生し、短絡の原因となる場合や、電池内部に収納するために捲回した際に破れてしまう可能性が高くなる。1,000秒/100mL/25μmを超えるガーレー透気度では、イオン電導性に劣る。強度およびセパレータとして優れたイオン電導性の発現を両立させる観点から、ガーレー透気度はより好ましくは1〜1,000秒/100mL/25μm、より好ましくは50〜600秒/100mL/25μmであれば特に好ましく、70〜500秒/100mL/25μmが最も好ましい。
【0085】
ガーレー透気度をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上述した第一のポリエチレンと第二のポリエチレンとの比率や、ポリエチレン及び/又はポリエチレン組成物と可塑剤との比率を調整することで達成しやすくなる。また、製造時に、溶剤に対する樹脂濃度をより低くすることによって、貫通孔をより多くしてガーレー透気度を低くすることができる。さらに、後述する延伸条件を採用することにより、ガーレー透気度を好ましい範囲に制御することもできる。
(b)幅方向における波打幅
本発明のポリエチレン微多孔膜は、ポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さが微多孔膜の全体幅の
4分の1以下である。本明細書では、微多孔膜の製造方向を長手方向、微多孔膜の長手方向に同平面で、かつ垂直な方向を幅方向と定義する。本明細書では、波打とは、微多孔膜を平面に静置した場合に接地面から浮上している部分がある状態をいい、波打幅とは浮上した部分の長さである。従って、波打幅が0より小さくなることはない。ポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さが微多孔膜の全体幅の
4分の1より大きいと、凹凸領域が広くなっているため、微多孔膜を捲回してセパレータとして電池内に収納した際に、電池の機能性が低下し、安全性に乏しくなってしまう。また、微多孔膜の少なくとも片面にコーティング層等の加工層を形成した際に、コーティング層の厚みが不均一になり、ムラができるため機械強度等の低下につながる。
【0086】
本発明のポリエチレン微多孔膜の表面に加工層を形成する際の厚みの均一性等の加工性を向上させる観点、および電池製造の収率の観点から、ポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さは、微多孔膜の全体幅の
4分の1以下とすることが必要であり、好ましくは
5分の1以下、より好ましくは
6分の1以下
である。
【0087】
波打幅をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、上述の微多孔膜の最後の延伸工程の後、好ましくは微多孔膜の製造工程の最後、例えば微多孔膜を最終製品とする直前や微多孔膜をロールに巻き取る直前に、微多孔膜を少なくとも長手方向に熱緩和処理することにより効果的に達成することができる。
(c)弛みを無くすために必要な荷重
本発明のポリエチレン微多孔膜は、弛みを無くすために必要な荷重を0〜
80g/mm
2とすることが好まし
い。弛みを無くすために必要な荷重を上記好ましい範囲とすることにより、弛み、結果的に波打を小さな荷重で容易に低減もしくは無くすことができる。従来、微多孔膜の表層にコーティング層等の加工層形成時に捲回装置やコーティング装置等を用いて微多孔膜を把持する際に、弛みを無くすために大きな張力をかける等の必要があった。そのため、微多孔膜が伸びてしまうことや、製造条件の有効範囲が狭いため生産収率を悪化させることがあった。しかし、本発明のポリエチレン微多孔膜では弛みを無くすために必要な荷重が小さいため、微多孔膜が伸びてしまうことを防ぐことができ、さらには、加工の生産収率を良好にすることができる。
(d)空孔率
本発明のポリエチレン微多孔膜の空孔率は、15%〜85%であることが好ましい。本発明のポリエチレン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いた場合に、空孔率が大きいことによって、電気抵抗を小さくして、電池の高出力用途においても、発熱等がおこらず、エネルギー損失を抑えることができるため、空孔率は大きい方が好ましい。しかし、空孔率が大きすぎると、機械強度が低下してしまい、電池内部に収納するために電極と共にポリエチレン微多孔膜を捲回する際に、ポリエチレン微多孔膜が破膜して欠陥が生じる場合があるため、本発明のポリエチレン微多孔膜の空孔率は85%以下であることが好ましい。また、空孔率が小さすぎると透過性に劣るため、空孔率は15%以上であることが好ましい。透過性と強度を両立させて、優れた電池特性を得る観点から、本発明のポリエチレン微多孔膜の空孔率は20〜55%であればより好ましく、25〜50%が最も好ましい。
【0088】
本発明のポリエチレン微多孔膜の空孔率をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、ポリエチレン組成物中における第一のポリエチレンと第二のポリエチレンとの比率やポリエチレン及び/又はポリエチレン組成物と可塑剤との比率を上述の範囲内にすること等が挙げられる。さらに、上述の延伸条件で製造することにより、本発明のポリエチレン微多孔膜の空孔率を達成することができる。
(e)厚み
本発明のポリエチレン微多孔膜は、優れた透過性と機械特性を両立させる観点から、微多孔膜の厚みが2〜100μmであることが好ましい。微多孔膜の厚みがこの好ましい範囲であると、製造工程やその後の加工工程において、微多孔膜が伸びにくく、シワが入りにくく、加工性に優れ、取り扱いが容易であり、強度が十分で、破膜のおそれがない一方、透過性が低下せず、また生産性に優れる。微多孔膜の厚みとしては、3〜80μmであればより好ましく、4〜50μmであればさらに好ましい。最も好ましくは、5〜30μmである。
(f)幅方向の長さ
本発明のポリエチレン微多孔膜は、面積を大きくしても優れた平面性を有するため、幅方向の長さを大きくしても平面性が良好である。幅方向の長さは、特に限定されないが、好ましくは30mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは300mm以上、最も好ましくは500mm以上にすることができる。
(g)突刺強度
ポリエチレン微多孔膜の突刺強度は、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針を2mm/秒の速度でポリエチレン微多孔膜に突き刺した時の最大荷重により表される。ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして電池に組み込んだ場合に短絡の発生を抑制する観点から、本発明のポリエチレン微多孔膜の突刺強度は100gf〜1,000gfであることが好ましい。さらに好ましくは150gf〜900gfであり、最も好ましくは200gf〜800gfである。
(h)引張強度
本発明のポリエチレン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた時に微多孔膜が破れることを抑制し、ハンドリング性を高める観点から、本発明のポリエチレン微多孔膜の引張強度は、長手方向および幅方向のいずれも500kgf/cm
2〜4,000kgf/cm
2であることが好ましい。さらに好ましくは750〜3,500kgf/cm
2であり、最も好ましくは900〜3,000kgf/cm
2である。
(i)熱収縮率
本発明のポリエチレン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた時、電池製造時や電池使用でのトラブル時に、電池が高温になる際、内部短絡の危険性を抑制する観点から、本発明のポリエチレン微多孔膜を105℃、8時間保持した時の熱収縮率は長手方向および幅方向ともに−5%〜10%であることが好ましい。ここで、収縮率の値が0より小さいことは、膨張することを示す。より好ましくは、−3〜8%であり、さらに好ましくは−2〜7.5%であり、最も好ましくは0〜7%である。
[5]物性値の測定方法
次に、本明細書において測定したポリエチレン微多孔膜の物性値の測定方法を説明する。
(a)ガーレー透気度
ガーレー透気度は、JIS P 8117 (1998)に準拠して、23℃、65%RHにて測定した(単位:秒/100mL)。同じ試験片について同様の測定を5回行い、得られたガーレー透気度の平均値を当該試験片のガーレー透気度とした。この際、ガーレー透気度の平均値が1,000秒/100mL/25μmを超えるものについては実質的に透過性を有さないものとみなし、無限大(∞)秒/100mLとした。微多孔膜の厚みを25μmに換算したガーレー透気度値は以下の式により算出した。
【0089】
25μm換算ガーレー透気度値=25×試験片のガーレー透気度測定値(秒/100mL)/サンプルの厚み(μm)
(b)幅方向における波打幅(mm)
まず、
図2〜
図4を参照してポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の測定方法を説明する。まず初めに、ポリエチレン微多孔膜を長手方向1m、幅方向100mm以上に切り作製した試験片1を
図2に示すように平面のガラス板2に静置する。なお、本明細書における波打幅の測定においてポリエチレン微多孔膜は、製造後23℃50%湿度の環境下に少なくとも24時間保管した後に用いる。次に、試験片1を静電性の刷毛を用いて平らにする。刷毛の使用方法は、刷毛3の柄部4がガラス板2に平行になり、
図3に示すように、刷毛の毛先5が試験片1に接するようにして、長手方向に平行に動かして(
図3(a)(b))、試験片1を平らにする。刷毛3の柄が試験片1に対して斜めになってはならない。また、刷毛3の毛先5と試験片1の接する角度αは90度〜45度が好ましく、刷毛の毛先が過度に折れ曲がったり、刷毛の毛先の一部のみが試験片に接するようにしてはならない。また、刷毛3は直線方向に動かすことが好ましく、
図3(c)に示すように、曲線を描いたり、曲げたりしては動かしてはならない。
【0090】
次に、試験片1のガラス板2から浮上した波打部分について、幅方向の長さを測定する。本明細書におけるポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さとは、以下に述べるように測定した幅方向の波打ち幅の長さの合計を意味する。幅方向の波打幅の長さの測定方法を詳細に説明するために、
図2の2A−2A線の断面の模式図を
図4に示す。試験片のガラス板から浮き上がった波打部分a、b、cにおいて、aの波打幅は、浮き上がり始める始点から再びガラス板に接する終点までの長さAであり、bおよびcの波打幅BおよびCも同様である。
図4では、幅200mmの試験片において、一端を0mmとして距離を測定すると、aは0mm〜20mm、bは110mm〜130mm、cは180mm〜200mmの範囲に観察されるため、A=20mm、B=20mm、C=20mmである。よって、ポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さは、A+B+Cである。従って、
図4における微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さは60mmとなる。なお、波打幅の長さの測定は、試験片1を長手方向20cm間隔で測定し、これらの4か所の測定結果の平均値を本明細書のポリエチレン微多孔膜の幅方向における波打幅の合計した長さとした。
(c)弛みを無くすために必要な荷重(g/mm
2)
本明細書における弛みを無くすために必要な荷重の測定においてポリエチレン微多孔膜は、23℃50%湿度の環境下に少なくとも24時間保管した後に実施する。
図5および
図6を参照して、弛みを無くすために必要な荷重の測定方法を説明する。
図5は、弛みを無くすために必要な荷重(g/mm
2)を測定する測定装置全体の概略図である。
図6(a)(b)は、
図5の線5A−5Aの断面の模式図である。まず初めに、ポリエチレン微多孔膜を長手方向1m以上に切り試験片6を作製する。
図5に示すように、試験片6を1mの距離をおいた2本のロール7および8上に渡し、試験片6の端部9をロール7上でテープやバー等を用いて幅方向に均一に固定する。試験片6の端部10はロール8上にあるか、試験片6が1m以上長い場合にはロール8の上から垂直に垂れるようにして静置する。
【0091】
ロール7および8の中心軸と平行で、ロール7とロール8とからの距離が等しくなるように中間に糸11を張り、
図6(a)、(b)のように試験片6の上側の最高部12に接するよう糸11の高さを合わせる。糸11に接する試験片の上側の最高部12と糸11から最も離れた試験片の下側の最低部13との間の長さを測定して弛み量とする。ここで、試験片に対してロールと反対側を上側、ロール側を下側と定義する。次に、
図5に示すように試験片6の長手方向に沿って、また試験片6の幅全体にわたって均一に荷重をかけて、荷重Fを大きくして弛み量が1mm以下となるときの単位面積(mm
2)あたりの荷重F”を、本発明における弛みを無くすために必要な荷重とする。測定は25℃、湿度50%RHで行う。なお、この測定は、長時間荷重をかけ続けると、荷重により試験片が伸びてしまうことがあり、弛みが無くなる荷重が変わってしまうことがあるため、荷重Fの測定は、試験片に荷重をかけ始めた時から、測定終了までを30秒以内で行うこととする。
(d)空孔率(%)
空孔率は、ポリエチレン微多孔膜の質量W
1と、ポリエチレン微多孔膜と同じポリエチレン系樹脂からなる同体積の空孔のないポリエチレン膜の質量W
2から、以下の式により算出した。
【0092】
空孔率(%)=100×(W
2−W
1)/W
2
(e)突刺強度(gf)
突刺強度は、T
1の厚さを有するポリエチレン微多孔膜を、球状の先端表面(曲率半径R:0.5mm)を有する直径1mmの針を用いて2mm/秒の速度で突き刺したときに(グラム単位の力すなわち「gF」で)測定される最大荷重と定義される。
(f)105℃での長手方向/幅方向の熱収縮率(%)
ポリエチレン微多孔膜を長手方向9cm、幅方向9cmの正方形に切って試験片を作製する。試験片の各辺の中点の位置にマークを入れる。向かい合う辺にある中点間の距離を測定する(L
0)。この試験片を105℃の熱風循環オーブン中で8時間熱処理した後、室温中に取り出し、30分間静置する。熱処理前と同様に向かい合う各辺の中点間の距離を測定する(L
1)この際、熱収縮率は以下の式により算出した(単位:%)。
【0093】
熱収縮率(%)=100×(L
0−L
1)/L
0
同一の微多孔膜について、異なる5つの試験片を作製し、各試験片について同様の測定を実施する。5回の測定結果の平均値を105℃熱収縮率とする。
(g)微多孔膜の厚み(μm)
ポリエチレン微多孔膜を長手方向5cm、幅方向5cmの正方形に切って試験片を作製する。長手方向に1cm間隔で全体で5cmとなるように接触厚さ計(明産(株)製、RC−1)によりポリエチレン微多孔膜の厚みを測定した。また、幅方向についても同様に測定した。同一のポリエチレン微多孔膜について、10個の試験片を用意し、測定を行った。試験片10個の全ての平均値を微多孔膜の厚みとした。
(h)実効延伸倍率
スリット状ダイから押し出し、金属ドラムにキャストしてシート状に冷却固化した未延伸のポリエチレン微多孔膜に、長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺がポリエチレン微多孔膜の長手方向、幅方向に平行になるように刻印した後、延伸・巻き取りを行い、得られたポリエチレン微多孔膜の升目の長さ(cm)を長手方向に10升目分、幅方向に10升目分測定し、これらの平均値をそれぞれ長手方向・幅方向の実行延伸倍率とした。
(i)製膜性
ポリエチレン微多孔膜をキャスト速度2m/分で5時間製膜した際に、下記の基準で判定した。
【0094】
A:破れが発生しない
B:破れが1回発生
C:破れが2回発生
D:破れが3回以上発生
(j)塗布欠点
まず、ポリエチレン微多孔膜に以下のようにコーティング層を形成する。
[スラリー1および2の作製]
ポリビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF−CTFE)高分子をアセトンに5重量%加えた後、50℃の温度で12時間以上溶解させて高分子溶液を得た。この高分子溶液にBaTiO
3粉末をBaTiO
3/PVdF−CTFE=90/10(重量%)になるように加え、12時間以上ボールミル法を用いてBaTiO
3粉末を粉砕および分散させてスラリー1を得た。このようにして得られたスラリー1のBaTiO
3粒径は、ボールミル法に用いられるビーズのサイズ(粒度)、およびボールミルの適用時間で制御し、400nmにて粉砕してスラリー2を得た。
[スラリー3の作製]
Al
2O
3粉末を10重量%ジメチルメチルホスホネート(DMMP)のアセトン溶液に入れて24時間25℃で撹拌して改質する。ポリビニレンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVdF−CTFE)高分子をアセトンに5重量%添加した後、50℃で12時間溶解させて高分子溶液を製造した。この高分子溶液にAl
2O
3粉末を高分子溶液:Al
2O
3=90:10(重量比)になるように添加して、15時間ボールミル法を利用して、Al
2O
3粉末を粉砕してスラリー3を製造した。
[スラリー4の作製]
スラリー2とスラリー3をそれぞれ同体積ずつ混合し、十分撹拌してスラリー4を製造した。このようにして得られたスラリー4をディップ・コート法を用いて、ポリエチレン微多孔膜に塗布した。コーティングされた層の厚さは3μmであった。
【0095】
次に得られたコーティング層を有するポリエチレン微多孔膜から長さ1mのポリエチレン微多孔膜を切り出し、暗室内で垂直方向に垂らした。次に、微多孔膜背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し、片方の面から三波長昼白色蛍光灯(FL20SS EX-N/18P:パナソニック(株)製)を用いてポリエチレン微多孔膜面に対し約10°から45°の範囲で該蛍光灯の角度を変えながらポリエチレン微多孔膜正面から観察し、評価面積1m
2について長さ10mm以上の塗布筋欠点を検出し、マーキングを行った。(ポリエチレン微多孔膜の幅が1m未満であっても評価面積が1m
2であればよい。)
なお、筋欠点の長さは定規を用いて直接ポリエチレン微多孔膜に接触しない程度に近づけて測定した。さらに評価する面と反対側にブロムライト(VIDEO LIGHT VLG301 100V 300W、LPL商事(株)製)を用いて前記と同様に約10°から45°の範囲で照射し、ブロムライト照射面側(先に評価した面と反対側)から観察し、塗布筋欠点を抽出し、マーキングを行った。この時、光沢の無い黒色の布は観察者と反対側に配置した。なお、ポリエチレン微多孔膜の幅方向に対し同一位置になる筋は一本と数えるが、100mm以上離れている場合は別個の筋として数えた。このマーキングした塗布筋欠点存在部分について、本明細書でいう連弾状塗布筋欠点と、塗布液中に存在する粒子凝集物が微多孔膜上で密集し、さらに筋状に点在した粗大塗布筋欠点とを区別するために、Micromap社製非接触3次元形状測定装置TYPE550を用い、1,664×1,248μmの視野の表面形状を以下の測定条件で測定した。
【0096】
測定条件:waveモード
対物レンズ:10倍
0.5倍ズームレンズ使用
次いで、等高線表示モードにて、測定面が高さによって色分けされた画像を表示させた。この時、表面形状のうねりを除去するため面補正(4次元関数補正)を行った。等高線表示モードでは、測定範囲内の平均高さを0nmとし、高さ最高値を100nm、高さ最低値を−100nmに設定し、高さ100nm以上の突起部分が赤色に表示されるように表示させた。次いで、同一測定視野の断面プロファイル表示モードを表示させた。断面移動画面で、カーソルの両端をつまんで突起の長尺方向に沿うように、かつ、カーソルが突起の最高高さ位置を通るように移動させた。プロット画面では、高さのスケールを突起全体が表示されるように調整した。プロット画面で2本のカーソルを突起の両端に合わせ、突起の大きさ(長径)を読み取った。次いで、一本のカーソルを突起の最高点に、もう一本のカーソルを高さ0nm(測定範囲内の平均高さが0nmである)に合わせ、突起高さを求めた。さらに測定位置を、測定した筋の延長方向にずらし(ここで、連弾状塗布筋の幅方向に対し0.5mm以内の幅に並ぶ核は同一筋の核として数える)、同一といえる筋の判定長が10mmとなるまで、上述の測定を繰り返した。
【0097】
上述の測定の結果、以下の式1および式2に定義される核を有する欠点が下記式3および式4に定義される状態で連なった塗布筋欠点を、連弾状塗布筋欠点と判定し、微多孔膜1m
2当たりのその数を数え、そのポリエチレン微多孔膜の連弾状塗布筋欠点数とした。
【0098】
式1 10μm≦Dd≦35μm
式2 100nm≦Dt≦800nm
式3 n≧2
式4 t≧10
Dd:連弾状欠点部の一つ核の長径
Dt:連弾状欠点部の一つの核の最大高さ
n:連弾状塗布筋欠点1mm当たりの式1、式2を満足する核の数
t:連弾状塗布筋欠点の長さ
連弾状塗布筋欠点数が50本/m
2以下の場合をgood、連弾状塗布筋欠点数が50本/m
2より大きい場合をbadとして評価した。
(k)引張強度
ASTM D882 (1997年)に準拠してポリエチレン微多孔膜の引張強度を測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記の通りとする。5回の測定結果の平均値を本発明における引張強度とする。幅方向の引張強度の測定における試験片は、ポリエチレン微多孔膜を長手方向10mm、幅方向50mm(微多孔膜をつかむチャックとチャックの間隔は20mm)の長方形に切り試験片とした。長手方向の引張強度の測定における試験片は、ポリエチレン微多孔膜を幅方向10mm、長手方向50mm(微多孔膜をつかむチャックとチャックの間隔は20mm)の長方形に切り、試験片とした。引張速度は、100mm/分、測定環境は、温度23℃、湿度65%RHであった。
(l)二軸配向の判別
ポリエチレン微多孔膜の配向状態を、ポリエチレン微多孔膜に対して以下に示す3方向からX線を入射した際に得られるX線回折写真から判別した。
・Through入射:ポリエチレン微多孔膜の長手方向・幅方向で形成される面に垂直に入射。
・End入射:ポリエチレン多孔膜の幅方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射。
・Edge入射:ポリエチレン微多孔膜の縦方向・厚み方向で形成される面に垂直に入射。
【0099】
なお、試験片は、ポリエチレン微多孔膜を長手方向どうしおよび幅方向どうしのそれぞれの方向を揃えて、厚みが1mm程度になるよう重ね合わせて、切り出し、測定した。
【0100】
X線回折写真は以下の条件でイメージングプレート法により測定した。
・X線発生装置:理学電気(株)[現在は株式会社リガク]製、4036A2型
・X線源:CuKα線(Niフィルター使用)
・スリット系:1mmφピンホールコリメータ
・イメージングプレート:FUJIFILM BAS-SR
・撮影条件:カメラ半径(サンプルとイメージングプレートとの間の距離)40mm、露出時間5分。
【0101】
ここで、ポリエチレン微多孔膜の無配向、一軸配向、二軸配向の判別は、例えば、松本喜代一ら、“繊維学会誌”、第26巻、第12号、1970年、p.537〜549:松本喜代一著、“微多孔膜をつくる”、共立出版(1993)、p.67〜86:岡村誠三ら著、“高分子化学序論(第2版)”、化学同人(1981)、p.92〜93などで解説されているように、以下の基準で判別した。
・無配向:いずれの方向のX線回折写真においても実質的にほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる。
・縦一軸配向:End入射のX線回折写真においてほぼ均等強度を有するデバイ・シェラー環が得られる。
・二軸配向:いずれの方向のX線回折写真においてもその方向を反映した、回折強度が均等でない回折像が得られる。
【実施例】
【0102】
次に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚みのポリエチレン微多孔膜を得るために、特に断りのない限り、ポリマーの押出量を所定の値に調節した。
(
参考例1)
Mwが2.0×10
6、Mw/Mnが5、135℃の融点および90℃の結晶分散温度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)40重量%と、重量平均分子量(Mw)が5.6×10
5、分子量分布(Mw/Mn)が4.1、135℃の融点および90℃の結晶分散温度を有し、末端ビニル基が10,000個の炭素原子当たり0.1個の高密度ポリエチレン(HDPE)60重量%とからなるポリエチレン組成物を調製した。ポリエチレンの組成物の融点Tmは135℃であり、結晶分散温度Tcdは90℃であった。
【0103】
なお、UHMWPEおよびHDPEのMwおよびMw/Mnは、Macromolecules, Vol.34, No.19, pp.6,812〜6,820 (2001)に記載の方法に従い、以下の条件でゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた(以下同じ)。
・測定装置:Polymer Laboratories製、PL−GPC220
・カラム:Polymer Laboratories製、Three PLgel Mixed-B Columns
・カラム温度:145℃
・溶媒(移動相):1,2,4−トリクロロロベンゼン(アルドリッチ社製、約1,000ppmのブチル化ヒドロキシトルエンを含む)
・溶媒流速:0.5mL/分
・試料濃度:0.25〜0.75mg/mL(溶解条件:160℃/2時間)
・インジェクション量 :300μL
・検出器:ディファレンシャルリフラクトメーター
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算係数を用いて作製した。
【0104】
ポリエチレン組成物を25重量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cst(40℃)]を75重量%となるように供給し、210℃および350rpmの条件で溶融混練して、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に設けたTダイから押し出し、40℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを、テンター延伸機により120℃で長手方向および幅方向ともに5倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、120℃の温度で10秒間、熱固定処理した(1段目延伸・熱固定)。
【0105】
次いで延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、洗浄して得られたポリエチレン微多孔膜を風乾した。得られたポリエチレン微多孔膜を、テンター延伸装置により125℃で幅方向に1.5倍に再延伸した後、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、130℃の温度で20秒間熱固定処理した(2段目延伸・熱固定)。
【0106】
2段目の熱固定処理の後にポリエチレン微多孔膜を90℃に加熱された2本のロール上に搬送し、ロール間の周速差を利用して熱緩和処理をした。ロールによる熱緩和処理は、巻き取り機側のロールの周速を押出機側のロールの周速に比べて遅くすることで、ロール間で微多孔膜を長手方向に緩和率0.1%、長手方向の緩和速度0.8%/秒で緩和させた(熱緩和)。
【0107】
次いで、ポリエチレン微多孔膜を室温まで冷却して、ロールで巻き取り、厚さ9μm、膜幅300mmのポリエチレン微多孔膜を製造した。
(実施例
1〜4、参考例2)
表1、表2に記載したように熱緩和処理における長手方向の緩和率を変化させて、
参考例1と同様の方法によりポリエチレン微多孔膜を製造し、評価した。
(実施例
5)
表1、表2に記載したように膜幅における長手方向の緩和率を変化させて、表2に記載したように膜幅を変化させた点以外は、
参考例1と同様の方法によりポリエチレン微多孔膜を製造し、評価した。
(実施例
6、
参考例3)
表1、表2に記載したように熱緩和処理における緩和温度を変化させ、さらに長手方向の緩和速度を0.3%/秒に変化させて
参考例1と同様の方法によりポリエチレン微多孔膜を製造し、評価した。
(
参考例4)
参考例1と同じ超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)2重量%と、
参考例1と同じ高密度ポリエチレン(HDPE)98重量%とからなるポリエチレン組成物を調製した。ポリエチレンの組成物の融点Tmは135℃であり、結晶分散温度Tcdは90℃であった。
【0108】
ポリエチレン組成物を40重量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cst(40℃)]を60重量%となるように供給し、210℃および350rpmの条件で溶融混練して、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に設けたTダイから押し出し、40℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを、テンター延伸機により120℃で長手方向および幅方向ともに5倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、120℃の温度で10秒間熱固定処理した(1段目延伸・熱固定)。
【0109】
次いで延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、洗浄して得られたポリエチレン微多孔膜を風乾した。得られたポリエチレン微多孔膜を、テンター延伸装置により125℃で幅方向に1.4倍に再延伸した後、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、130℃の温度で30秒間、熱固定処理した(2段目延伸・熱固定)。
【0110】
熱固定処理後にポリエチレン微多孔膜を実施例3と同様の方法で長手方向に緩和率1.5%で緩和させた。
【0111】
次いで、ポリエチレン微多孔膜を室温まで冷却して、ロールで巻き取り、厚さ20μm、膜幅300mmのポリエチレン微多孔膜を製造した。
(実施例
7)
参考例1と同じ超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)30重量%と、
参考例1と同じ高密度ポリエチレン(HDPE)70重量%とからなるポリエチレン組成物を調製した。ポリエチレンの組成物の融点Tmは135℃であり、結晶分散温度Tcdは90℃であった。
【0112】
ポリエチレン組成物を28重量%となるように二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cst(40℃)]を72重量%となるように供給し、210℃および350rpmの条件で溶融混練して、ポリエチレン溶液を調製した。このポリエチレン溶液を二軸押出機に設けたTダイから押し出し、40℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを、テンター延伸機により120℃で長手方向および幅方向ともに7倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、120℃の温度で10秒間、熱固定処理した(1段目延伸・熱固定)。
【0113】
次いで延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、洗浄して得られたポリエチレン微多孔膜を風乾した。得られたポリエチレン微多孔膜を、テンター延伸装置により130℃で幅方向に1.4倍に再延伸した後、そのままテンター延伸装置に固定して長手および幅方向の両方向に寸法変化が無いように、130℃の温度で20秒間、熱固定処理した(2段目延伸・熱固定)。
【0114】
続いて、テンター装置により、90℃で幅方向に緩和率15%で緩和させた(1段目熱緩和)。その後、実施例1と同様に、ポリエチレン微多孔膜を90℃に加熱された2本のロール上に搬送し、ロールによる熱緩和処理をした。ロール間で微多孔膜を長手方向に緩和率1.5%、長手方向の緩和速度0.5%/秒で緩和させた(2段目熱緩和)。
【0115】
次いで、微多孔膜を室温まで冷却して、ロールで巻き取り、厚さ12μm、膜幅300mmのポリエチレン微多孔膜を製造した。
(実施例8)
表1、表2に記載したように、1段目熱緩和を100℃に加熱された2本のロール間の周速差を利用してポリエチレン微多孔膜を長手方向に緩和率1.5%、長手方向の緩和速度0.5%/秒で緩和させ、2段目熱緩和を行わなかった点、厚さ9mm、膜幅300mmのポリエチレン微多孔膜を得た点を除いて、実施例7と同様にポリエチレン微多孔膜を製造した。
(
比較例1)
表1、表2に記載したように、2段目の熱固定後に、1段目および2段目熱緩和をリニアモーターテンター装置を用いて行い、1段目熱緩和を緩和温度90℃で幅方向に緩和率15%で緩和させ、2段目熱緩和を緩和温度90℃で長手方向に緩和率5%、長手方向の緩和速度0.3%/秒で緩和させた点を除いて、参考例1と同様にポリエチレン微多孔膜を製造した。
(実施例9〜14)
表1、表2及び表3に記載したように製造条件を変化させて、それ以外は実施例7と同様の方法によりポリエチレン微多孔膜を製造し、評価した。
(比較例
2)
表1、表2に記載したように、長手方向に緩和を行わなかった点を除いて、参考例1と同様にポリエチレン微多孔膜を製造した。
(比較例
3)
表1、表2に記載したように、2段目延伸を延伸温度130℃、幅方向の倍率1.4倍にした点、熱緩和のロールの温度を35℃、長手方向の緩和率を1.5%、長手方向緩和速度を0.8%/秒に変更した点を除いては、参考例1と同様にポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0116】
実施例1〜14、参考例1〜
4および比較例1
〜3の製造条件を表1、表2に示す。
【0117】
また、実施例1〜14、参考例1〜
4および比較例1
〜3で得られたポリエチレン微多孔膜の物性評価結果を表3に示す。実施例1〜14、参考例1〜
4および比較例1
〜3で得られたポリエチレン微多孔膜はすべて二軸配向を示した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
実施例1〜14において得られたポリエチレン微多孔膜は、比較例1
〜3において得られたポリエチレン微多孔膜に対して熱収縮率等の重要な物性を損なうことなく、透過性に優れ、波打幅および弛みを無くすために必要な荷重が小さかった。さらに、塗布欠点数が少なく塗工性に優れることを示した。