(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記離型フィルムが、前記クッション層の片側に第1離型層を有し、前記クッション層の反対側に第2離型層が設けられており、第1離形層は前記離形層であり、第2離形層は、ポリプロピレン樹脂又は、ポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂から形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係る離型フィルム100は、主に、離型層110およびクッション層120から構成される。なお、本実施の形態において、離型フィルム100の厚みは25μm以上300μm以下であることが好ましい。50μm以上200μm以下がより好ましく、更には、80μm以上120μm以下が好ましい。
離型フィルムの厚みを、前記下限範囲よりも小さくした場合は、FPCとの離型性が不足し、FPC回路面に樹脂残りが発生する可能性がある。一方、前記上限値よりも大きくした場合は、FPC回路部への埋め込み性が不足し、CL接着剤のシミダシ量が多くなる可能性がある。
以下、これらの層それぞれについて詳述する。
【0011】
<離型フィルムの構成層の詳細>
1.離型層
離型層110は、ポリブチレンテレフタレートおよびエステル基と無極性基を有する滑剤微粒子を含むものである。
エステル基はポリブチレンテレフタレートと相溶性を有するものであり、滑剤微粒子がエステル基を有しない場合、相溶していない滑剤微粒子が加熱プレスにより欠落し、FPC表面に転写され、汚染される可能性がある。
一方で、滑剤微粒子の無極性基は、エステル基に比べ、ポリブチレンテレフタレートとの相溶性が低い。このため、滑剤微粒子中の無極性基部分が、離型層110の表面近傍に偏在し、または露出することにより、離型層110の表面自由エネルギーが低下し、離型フィルム100の離型性向上に寄与するものである。
【0012】
離型層110に含有することができる樹脂成分であり、ポリブチレンテレフタレート以外のものとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合体やエラストマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
なお、エラストマー樹脂としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、またはエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、もしくはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタアクリレート−ブチルアクリレート−シロキサン等のシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖状高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン及びこれらの共重合体(例えば、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体等)等が挙げられる。
【0015】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、高耐衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、スチレンーメタアクリル酸共重合体、スチレンーメタアクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレンーメタアクリル酸・グリシジルエステル共重合体、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレンーアクリル酸・アルキルエステル共重合体、スチレンーマレイン酸共重合体、スチレンーフマル酸共重合体等が挙げられる。
【0016】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0017】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ナイロン(登録商標)6、ナイロン(登録商標)6,6等が挙げられる。
【0018】
離型層110には滑剤微粒子以外の各種添加剤、例えば、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、核剤、帯電防止剤、プロセスオイル、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、顔料等が配合されてもかまわない。
【0019】
なお、アンチブロッキング剤としては、以下のような無機粒子または有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、IA族、IIA族、IVA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、並びにそれらを中心とする複合化合物及び天然鉱物粒子が挙げられる。
【0020】
このような無機粒子の具体的な例としては、フッ化リチウム、ホウ砂(ホウ酸ナトリウム含水塩)等のIA族元素化合物;炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム等のIIA族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等のIVA族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等のVIA族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガン等のVIIA族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルト等のVIII族元素化合物;ヨウ化第一銅等のIB族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛等のIIB族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミナシリケート(ケイ酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)等のIIIB族元素化合物;酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等のIVB族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の粒子が挙げられる。
【0021】
有機粒子としては、フッ素樹脂、メラミン系樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジンシリコーン及びそれらの架橋体が挙げられる。
【0022】
上述の無機粒子や有機粒子の平均粒径は0.1μm以上10μm以下であるのが好ましく、添加量は0.01重量%以上15重量%以下であるのが好ましい。
【0023】
なお、これらのアンチブロッキング剤は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、2−[(1−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートなどが挙げられる。なお、これらの酸化防止剤は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)等のカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム等のリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。なお、これらの核剤は単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルが挙げられる。なお、これらの中でもn−d−M法で算出されるパラフィン(直鎖)に関わる炭素数の全炭素数に対する百分率が60%Cp以上のパラフィン系オイルが好ましい。
【0028】
プロセスオイルの粘度は、40℃での動粘度が15cs以上600cs以下であるのが好ましく、15cs以上500cs以下であるのがさらに好ましい。また、プロセスオイルの添加量は、離型層形成樹脂100重量部に対して0.01重量部以上1.5重量部以下であるのが好ましく、0.05重量部以上1.4重量部以下であるのがより好ましく、0.1重量部以上1.3重量部以下であるのがさらに好ましい。なお、これらのプロセスオイルは、単独で、または、二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
更に滑剤微粒子は、離型層樹脂と相溶性のあるエステル基と無極性基を有し、前記離型層との溶解度パラメーターの差が8.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、更には4.0以下であることが好ましい。 ここで、溶解度パラメーター(δ)とは分子間の凝集エネルギーEの単位体積当たりの密度の平方根として定義されるものであり、具体的には下記式により定義されるものである。
δ=(E/V)
1/2
E:モル凝集エネルギー V:モル容積
前記溶解度パラメーターの差が前記範囲上限値よりも大きくした場合、前記離型層樹脂との相溶性が不足し、相溶していない滑剤微粒子が加熱プレスにより欠落し、FPC表面に転写され、汚染する可能性がある。
【0030】
前記滑剤微粒子の平均粒径は、0.05μm以上10.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、更には0.5μm以上6.0μm以下であることが好ましい。
前記平均粒径が、前記範囲下限値よりも低くした場合、FPCとの離型性が不足し、回路表面への樹脂残りが発生する可能性がある。一方、前記平均粒径が、前記範囲上限値よりも高くした場合、離型層樹脂の表面状態が悪化し、熱プレスにより、その表面形状が転写され、FPC表面も悪化する可能性がある。
【0031】
前記滑剤微粒子の添加量は、0.001wt%以上15.0wt%以下であるが、0.01wt%以上5.0wt%以下であることが好ましく、0.1wt%以上1.0wt%以下であることがより好ましく、更には0.3wt%以上0.5wt%以下であることが好ましい。前記添加量が、前記範囲下限値よりも低くした場合、FPCとの離型性が不足し、回路表面への樹脂残りが発生する可能性がある。一方、前記添加量が、前記範囲上限値よりも高くした場合、離型層樹脂全体の溶融粘度が低くなり過ぎた事による押出製膜が困難化および滑剤自体がFPCと密着する可能性がある。
【0032】
離型層110の厚みは、5μm以上40μm以下とすること好ましく、10μm以上35μm以下がより好ましく、更には15μm以上30μm以下とすることが好ましい。
離型層110の厚みを前記下限範囲より小さくした場合は、FPCとの離型性が不足し、回路表面への樹脂残りが発生する可能性がある。前記上限値よりも高くした場合は、CL接着剤のシミダシ量が悪化する可能性がある。
また、離型層の表面自由エネルギーは、50mJ/m
2以下であることが好ましく、45mJ/m
2以下であることがさらに好ましく、40mJ/m
2以下であることが最も好ましい。
【0033】
2.クッション層
本発明の離型フィルム100は、
図1に示すようにクッション層120を備えることにより、更に被着体との密着を好適なものとすることができる。クッション層120には、クッション性を示す適度な柔軟性を有するものであれば公知の樹脂を用いることができる。具体的な例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン等のαオレフィン系重合体、及びエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を共重合体成分として有するαオレフィン系共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド等のエンジニアリングプラスチックス系樹脂、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が挙げられ、これらを単独あるいは複数併用してもよい。
【0034】
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂を含む事が望ましい。ポリオレフィン系樹脂を含まない場合、クッション性が不十分となりFPC回路への型追従が不十分になる場合がある。ポリエステル樹脂を含まない場合、フィルムの端部からクッション層樹脂が流れ出し、プレス盤を汚染する可能性がある。
【0035】
前記ポリオレフィン系樹脂として、エチレン等のαオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(EMMA)、およびそれらの部分イオン架橋物等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸の総称である。
中でも、エチレンとメタクリル酸との共重合体とポリプロピレンとマレイン酸変性ポリエチレンのいずれか1つ以上を含むことが望ましく、すべて含むことが更に望ましい。エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体を含む事でクッション性が増し、ポリプロピレンを含む事でクッション層のフィルム端面からの樹脂の流れ出しを抑制でき、マレイン酸変性ポリエチレンを含む事で離型層との接着強度を向上およびポリエステル系樹脂との相溶性を向上することができる。
【0036】
前記ポリエステル樹脂として、ポリブチレンテレフタレートからなる事が好ましい。ポリブチレンテレフタレートを用いる事で、加熱プレス時に端部からの中間層の染み出しを抑制できるとともに、離型層110との接着強度を向上することができる。
【0037】
また、本実施の形態において、被着体とのより好適な密着性を得るためクッション層120の厚みは離型層110の厚みの3倍以上であるのが好ましく、5倍以上であるのがより好ましく、8倍以上であるのがさらに好ましい。本実施の形態において、離型層110とクッション層120との接着性が良好でない場合、それらの層の間にアンカー層やプライマー層(接着層)を介在させてもかまわない。
なお、このクッション層形成樹脂には、必要に応じて、本発明の趣旨を損ねない範囲で、その他、上述のエラストマー樹脂や添加剤が配合されてもかまわない。
【0038】
上述のように、クッション層120を設ける場合、クッション層120の厚みは、特に限定されないが、10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、80μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは30μm以上、60μm以下である。クッション層120の厚みが前記下限値未満である場合、熱プレス工程でFPC回路部への埋め込み性が不足し、CL接着剤のシミダシ量が多くなる可能性があり、また、クッション層120の厚みが前記上限値を超える場合、熱プレス工程において、クッション層からの樹脂のシミ出しが多くなり、圧着装置の熱盤に付着し、作業性が低下すると可能性がある。
【0039】
<離型フィルムの製造方法>
本実施の形態に係る
図1の離型フィルム100は、共押出法や押出ラミネート法等の方法で製造することができる。
【0040】
共押出法では、フィードブロック、マルチマニホールドダイを使用して第1の離型層1とクッション層2とを同時に押し出すことにより離型フィルム100を製造する。なお、共押出法では、ダイス510を通過した融解物Mは、
図3に示されるように、第1ロール530に誘導されると共にタッチロール520によって第1ロール530に固定化され、第1ロール530から脱離するまでの間に第1ロール530により冷却され、離型フィルム200となる。その後、その離型フィルム200は、第2ロール540によりフィルム送り方向(
図3の矢印参照)下流側に送られ、最終的に巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。なお、このとき、第1ロール530の温度は30〜50℃であるのが好ましく、タッチロール520の温度は30〜100℃であるのが好ましく、第1ロール530に対する第2ロール540の周速比は0.990〜0.998であるのが好ましい。
【0041】
押出しラミネート法では、押出機シリンダーの温度を225〜250℃に設定して離型層110を押出し、その離型層110をクッション層120と合流させることにより離型性110とクッション層120とを積層して離型フィルム100を製造する。なお、押出しラミネート法では、ダイス510を通過した離型層形成樹脂の融解物Mは、
図3に示されるように、第1ロール530に誘導され、第1ロール530から脱離するまでの間に第1ロール530により冷却されて離型層フィルムFとなる。その後、その離型層フィルムFは、第2ロール540によりフィルム送り方向(
図3の矢印参照)下流側に送られる。そして、フィルム送り方向下流側に送られた離型層フィルムFに、クッション層120を形成する樹脂ブレンド物の溶融物(図示せず)が合流させられて離型層フィルムFと一体化され、離型フィルム100が製造される。なお、このようにして製造された離型フィルム100は、さらにフィルム送り方向下流側に設けられる巻取ロール(図示せず)に巻き取られる。なお、このときも、第1ロール530の温度は30〜50℃であるのが好ましく、第1ロール530に対する第2ロール540の周速比は0.990〜0.998であるのが好ましい。なお、必要に応じて、第1ロール近傍にタッチロールを配設してもかまわない。
【0042】
<離型フィルムの使用の一例>
(Hot−Hotプレス)
本発明の実施の形態に係る離型フィルム100は、回路露出フィルムへのCLフィルム接着時にCLフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにCLフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びCLフィルムと共にプレス装置により加圧される。
具体的には、離型フィルム100は、
図4に示されるように、回路露出フィルムとCLフィルムとが接着剤により仮止めされたもの340を、離型フィルム100の離型層が対向するように挟み込んだ後、ゴムクッション320で挟み込まれ、熱盤300でプレスされる。なお、その熱盤300による加熱方法としては、
図5に示される通りである。つまり、熱盤300は170〜200℃まで昇温されており、1〜3分間加圧される。このときのプレス圧力は3〜15MPaで適宜調節される。
(Cold−Hotプレス)
本発明の実施の形態に係る離型フィルム100は、回路露出フィルムへのCLフィルム接着時にCLフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにCLフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びCLフィルムと共にプレス装置により加圧される。具体的には、離型フィルム100は、
図4に示されるように、回路露出フィルムとCLフィルムとが接着剤により仮止めされたもの340を、離型フィルム100の離型層110が対向するように挟み込んだ後、テフロン(登録商標)シート330、ゴムクッション320及びステンレス板310で順次挟み込まれ、熱盤300でプレスされる(
図4の白抜矢印参照)。なお、その熱盤300による加熱方法としては、
図6に示される通りである。つまり、熱盤300は、加圧を開始してから15分で常温から170℃まで昇温された後、35分間その温度に維持される。その後、熱盤300は、50分かけて170℃から常温まで冷却される。なお、熱盤300による加圧は、0分の時点で開始され、100分の時点で開放される。なお、このときのプレス圧力は、5〜15MPaで適宜調節される。
【0043】
<変形例>
(A)
先の実施の形態では、クッション層120の片側にのみ離型層110が設けられる離型フィルム100が紹介されたが、
図2に示されるように、クッション層120の両側に離型層110a、110bが設けられる離型フィルム100Aも本発明の一実施の形態に含まれる。なお、以下、符号110aの離型層を「第1離型層」と称し、符号110bの離型層を「第2離型層」と称する。
【0044】
第1離型層110aは、先の実施の形態に係る離型層110と同一の構造を有する。その一方、第2離型層110bは、第1離型層110aと同一の構造を有していてもよいし、第1離型層110aと異なる構造を有していてもよい。後者の場合、第2離型層110bは、例えば、ポリプロピレン樹脂や、ポリメチルペンテン樹脂、メチルペンテン−αオレフィン共重合体、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂から形成される。なお、ポリメチルペンテン樹脂やメチルペンテン−αオレフィン共重合体は、三井化学(株)から商品名TPX(登録商標)として市販されている。また、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂は、出光興産(株)製から商品名ザレック(登録商標)として市販されている。かかる場合、第2離型層110bとクッション層120と接着力が低下するおそれがあるが、そのような場合には、第2離型層110bとクッション層120との間にアンカー層やプライマー層(接着層)を介在させてもかまわない。なお、第2離型層110bがポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂から形成される場合、上記クッション層と第2離型層110bとの接着性が良好であるため、それらの層の間にアンカー層やプライマー層(接着層)を介在させる必要はない。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明する。
【0046】
(実施例1)
1.離型フィルムの製造
【0047】
(1)第1および第2離型層の原料
第1及び第2離型層には以下の原料を表1に示す重量比で含む樹脂組成物を用いた。
ポリブチレンテレフタレート:CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.1100−211S
滑剤微粒子:クラリアント・ジャパン株式会社製リコワックスE(モンタン酸エステルワックス)
【0048】
(2)クッション層の原料
クッション層には以下の原料を表1に示す重量比で含む樹脂組成物を用いた。
エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体:メタアクリル酸メチル誘導単位含有量5重量% 住友化学(株)製アクリフト(登録商標)WD106
ポリプロピレン:住友化学(株)製ノーブレンFH1016
マレイン酸変性ポリエチレン:三菱化学(株)製モディックF515A
ポリブチレンテレフタレート:CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.1100−211S
【0049】
(5)離型フィルムの作製
共押出法を利用して、クッション層の表裏に第1離型層および第2離型層を有する離型フィルム(
図2参照)を作製した。
【0050】
なお、具体的には、マルチマニホールドダイを使用して、第1離型層、第2離型層ともポリブチレンテレフタレートと滑剤粒子のブレンド樹脂、クッション層にはエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンテレフタレートのブレンドを同時に押し出して離型フィルムを作製した。なお、この際、
図3に示される装置を用いたが、第1ロール530の温度は30℃であり、第1ロール530に対する第2ロール540の周速比は0.998であった。
【0051】
この離型フィルムの第1離型層の厚みは25μmであり、クッション層の厚みは70μmであり、第2離型層の厚みは25μmであった。なお、各層の厚みはフィルムの断面を切り出し、断面方向よりマイクロスコープを用いて測定した。
【0052】
この離型フィルムの表面自由エネルギーは、液滴法により決定した。
【0053】
(プレス評価方法)
上記作製方法により得られた離型フィルムを用い、熱盤/ゴムクッション/離型フィルム/CL(有沢製作所製のCVタイプのCL)/FPC/離型フィルム/ゴムクッション/熱盤の順となるようなプレス構成にて、プレスラミネート機によりプレスした。プレスにあたっては、熱盤温度を185℃まで昇温させ、10MPaの加圧条件下で、3分間加圧した。
その後、プレスサンプルについて以下の項目と基準で評価を行なった。なお、下記評価は、社団法人日本電子回路工業会(以下、JPCAと略す)のJPCA規格(デザインガイドマニュアル 片面及び両面フレキシブルプリント配線版 JPCA−DG02)に準拠し、以下のような項目と基準で行なった。
【0054】
(評価項目)
離型性:離型性1は離型フィルムのFPCからの離型性を評価した。具体的には、「JPCA規格 7.5.7.1項表面の付着物」に準拠し、CLプレスラミネート後の離型フィルムのFPCからの剥離状態を目視にて評価した。
評価サンプル数を各n=100として評価を行い、FPC表面に樹脂残りが発生したものの数が評価サンプル数の5%未満のものを合格とした。
◎:破れ発生率 3%未満
○:破れ発生率 3%以上5%未満
×:破れ発生率 5%以上
【0055】
CL接着剤の染み出し量:
回路基板にCLの接着剤層の染み出しがあるか否かを「JPCA規格の7.5.3.6項カバーレイの接着剤の流れおよびカバーコートのにじみ」に準拠し、回路端子部への染み出し量を評価した。染み出し量が150μm未満を合格とした。
◎:染み出し量 100μm未満
○:染み出し量 100μm以上150μm未満
×:染み出し量 150μm以上
【0056】
成形性:成形性は、「JPCA規格の7.5.3.3項の気泡」に準じて目視にて評価した。各符号は、以下の通りである。評価サンプル数を各n=100として評価を行い、サンプル表面にボイドが確認されたものの数が評価サンプル数の2%未満のものを合格とした。
◎:ボイド発生率 1.0%未満
○:ボイド発生率 1.0%以上2.0%未満
×:ボイド発生率 2.0%以上
【0057】
フィルム端面染み出し量:離型フィルム端面染み出し長さ(フィルム4方向端面からの樹脂が染み出した最大長さを測定)により評価した。染み出し長さ3mm未満を合格とした。
◎:染み出し長さ 1mm未満
○:染み出し長さ 1mm以上3mm未満
×:染み出し長さ 3mm以上
【0058】
外観:マルチマニホールドより共押出されたフィルムの外観を目視にて観察し、評価した。フィルム全体にフローマークや異物、フィッシュアイなどの外観不良がないものを外観良好のものを合格とした。
◎:外観不良なし
○:一部分にのみ外観不良あり
×:全面に外観不良あり
【0059】
実施例1において、回路露出フィルムとCLフィルムとの間の接着剤が回路パターンへシミ出した量は、80μm未満であった。また、加熱プレス後の離型フィルムは回路露出フィルムから容易に剥離することが可能であり、離型フィルムの剥離不良発生率は、1.0%未満であった。ボイドの発生率は2%未満であった。またフィルム端面からの染み出し長さも1mm未満であった。外観については、外観不良がなかった
【0060】
(実施例2)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例6)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例7)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例8)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例9)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例10)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例11)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例12)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例13)
クッション層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
離型層に用いられる樹脂組成物中の樹脂重量比を表1に示されるものとした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
クッション層および第2離型層を無くし、第1離型層の厚みを120μmにした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作製し、その離型フィルムに対して実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】