特許第6222099号(P6222099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222099経路制御方法、無線通信システム、経路制御装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222099
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】経路制御方法、無線通信システム、経路制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/14 20090101AFI20171023BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20171023BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20171023BHJP
【FI】
   H04W40/14
   H04W28/18 110
   H04W72/04 110
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-543124(P2014-543124)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2013004276
(87)【国際公開番号】WO2014064869
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-233493(P2012-233493)
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西岡 淳
【審査官】 大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/020783(WO,A1)
【文献】 特開2012−049902(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/109536(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
H04L 12/28
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する方法であって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択ステップと、
を備えた経路制御方法。
【請求項2】
前記ペナルティコストは、トラヒック毎に予め定められている固有値に基づき決定される、
請求項1に記載の経路制御方法。
【請求項3】
前記ペナルティコストは、前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値に基づき決定される、請求項1又は2記載の経路制御方法。
【請求項4】
前記トラヒックの要求帯域を収容可能な空き領域を有する経路候補に対しては、当該経路候補の空き領域に応じて決定されるリンクコストを設定するとともに、
前記ペナルティコストは、前記トラヒック毎に予め定められている固有値と、
前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値の少なくとも一つの値に基づき決定されるトレードオフ係数を、前記他の経路候補における最大のリンクコストに乗算することにより算出する、
請求項1記載の経路制御方法。
【請求項5】
無線リンクが過去に使用した変調方式の履歴情報に基づいて、無線リンクの帯域毎の安定度を算出する請求項1〜4いずれかに記載の経路制御方法。
【請求項6】
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して、最短経路である第1の経路候補と、当該第1の経路候補よりもホップ数の多い第2の経路候補を含む複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する方法であって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択ステップと、
を備えた経路制御方法。
【請求項7】
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する装置を備え、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算手段と、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択手段と、
を備えた無線通信システム。
【請求項8】
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して、最短経路である第1の経路候補と、当該第1の経路候補よりもホップ数の多い第2の経路候補を含む複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する制御装置を備え、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算手段と、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択手段と、
を備えた無線通信システム。
【請求項9】
適応変調機能を備えた制御部と、
通信装置と無線通信する無線アンテナを備え、
前記制御部は、前記通信装置と無線リンクで接続されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御するものであって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算手段と、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択手段と、
を備えた経路制御装置。
【請求項10】
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択するプログラムであって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記複数の経路候補における帯域の状況に基づき、各経路候補のリンクコストを計算する計算ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにし、前記リンクコストと前記ペナルティコストとを含むコストに基づき、前記複数の経路候補から、前記コストが最も小さくなる一の経路を選択する選択ステップと、
を備えたプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路制御方法、無線通信システム、経路制御装置、及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関し、特に、モバイルバックホールネットワークにおける経路制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化の進展に伴い、データ通信などによるデータ通信トラヒックの需要が増加している。そこで、ネットワークに対して広帯域化やオペレーションコストの低減化が求められている。広帯域の伝送が可能なミリ波帯などの周波数を利用した無線方式を用いる固定無線アクセス(FWA: Fixed broadband Wireless Access)などの、無線リンクによって構築されたネットワークが携帯電話網などで利用されている。
【0003】
FWAは、携帯電話等の移動体通信システムにおいて、点在する複数の基地局を無線通信で接続し、コアネットワークに接続するシステムである。このシステムによれば、有線ネットワークに比べて工期を短縮し、また、ケーブル敷設にかかるコストを削減することができる。近年は、モバイルネットワークの無線基地局間を無線回線で結ぶ接続回線として、移動体通信事業者により採用される。
【0004】
FWAを構築するネットワークは無線リンクのため、その通信品質は、受信信号のSNR(Signal-Noise Ratio)によって変動する。そこで、無線リンクの更なる広帯域を実現するために、適応変調技術が着目されている。適応変調技術は、無線リンクの無線状況から、最も伝送効率の良い変調方式を適応的に発見し、使用する技術である。適応変調技術により無線環境に応じた最適な無線通信を行うことが可能となり、周波数効率の向上が期待できる。
【0005】
特許文献1には、適応変調によって無線リンクの帯域が変化することから、過去の履歴などから無線リンクが安定して使用できる変調方式を推定し、その変調方式のリンク帯域を用いて、トラヒックが要求する通信品質を保証する経路制御方法が開示されている。
【0006】
しかし、安定度を重視して安定して使用出来る変調方式の無線リンクを選択すると、トラヒック収容の効率が低下してしまう。また、この経路制御方法によれば、経路のホップ数が多く、経路が冗長になりやすくなり、安定度が高い経路であっても、遅延が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−504090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
関連する技術ではトラヒックの経路を計算するにあたって、通信品質を維持しつつ、効率の良いトラヒック収容が可能でないという問題がある。
本発明は、かかる問題を解決するものであって、通信品質を維持しつつ、効率の良いトラヒック収容が可能な経路制御方法、無線通信システム、経路制御装置、及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様にかかる経路制御方法は、適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択する。そして、前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択ステップを備える。
【0010】
一態様にかかる無線通信システムは、適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する装置を備えている。そして、前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択手段を備えている。
【0011】
一態様にかかる経路制御装置は、適応変調機能を備えた制御部と、通信装置と無線通信する無線アンテナを備え、前記制御部は、前記通信装置と無線リンクで接続されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する。そして、前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と、前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択手段を備えている。
【0012】
一態様にかかる経路制御をコンピュータに実行させる非一時的なコンピュータ可読媒体は、適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択する、そして、前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択ステップを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信品質を維持しつつ、効率の良いトラヒック収容が可能な経路制御方法、無線通信システム、無線通信装置、及び非一時的なコンピュータ可読媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態にかかるネットワークの一構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる経路制御装置と通信装置の構成図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる経路制御装置の基本動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態にかかる経路制御方法は、適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する方法である。この経路制御方法は、図1に示されるような、経路制御装置100と通信装置101〜103で構成されたネットワークの無線通信システム200で実施される。そして、経路計算は、経路制御装置100で行われる。無線通信システム200は、経路制御装置100と通信装置101を結ぶ有線または無線リンク191と、通信装置101と103を結ぶ無線リンク111と、通信装置101と102を結ぶ無線リンク112と、通信装置102と103を結ぶ無線リンク113を有する。
【0016】
経路制御装置100がネットワーク全体を管理し、新規フローの受付や終了などはすべて経路制御装置100が行う。経路制御装置100は定期的に各通信装置101〜103から無線リンクのリンク品質(ビットエラーレート、使用している変調方式)に関する情報を取得し、各リンクの変調方式毎の安定度を計算すると共に、経路計算を行う。
【0017】
図2は、経路制御装置100と通信装置101の構成図である。経路制御装置100は、適応変調機能を備えた制御部50と、通信装置101と無線通信するための無線アンテナ51を備える。通信装置101は、通信経路を選択する制御部55と、経路制御装置100及び他の通信装置102、103と無線通信する無線アンテナ56を備えている。他の無線装置102、103も無線装置101と同様の構成を有している。
【0018】
次に、経路制御装置100の処理について、図3を用いて説明する。経路制御装置100は、各無線リンクのコスト計算を実行し、その後に、コスト計算結果に基づいて、経路計算を実行する。
経路制御装置100は、各無線リンクについて、定期的に変調方式毎の安定度を算出し、割当帯域毎の安定度を計算する。
リンクの安定度は、例えば特許文献1に開示された計算方法と同様の方法により計算する。変調方式mの安定度Avail(m)は、ある一定時間Tのうち、自身の変調方式mか、自身の変調方式mよりも高次の変調方式が使用された時間の割合から求める。
【0019】
ここで、変調方式m1, m2, m3, m4 の関係がm1<m2<m3<m4、即ち、変調方式m1が最も低次で、その次が変調方式m2、さらにその次が変調方式m3であり、変調方式m4が最も高次の変調方式という場合について説明する。変調方式m3の安定度Avail(m3)は、次式により求まる。
Avail(m3) = (T_m3 + T_m4) / T (1)
ここで、T_m3, T_m4 は、時間Tの間に変調方式m3、変調方式m4がそれぞれ使用された時間を表す。
このように、無線リンクが過去に使用した変調方式の履歴情報に基づいて、無線リンクの帯域毎の安定度を算出する。
【0020】
経路制御装置100は、各無線リンクについて次の1)〜3)の処理を実行する。
1)トラヒックが要求する安定度Avail(tr)を満足する変調方式の中でで最も高次の変調方式M1を調べる(S201)。
2)トラヒックの優先度から、その優先度と同じかそれ以上のトラヒックに対して割り当て済みの帯域を調べる(S202)。優先度は、トラヒックに流れるデータの優先順位を判断する優先制御で決定される。優先制御とは、IPネットワークなどパケット通信網を流れるパケットに何段階かの優先順位を付加し、フローごとのサービス品質(QoS:Quality of Service)に差を付け、データの読出し順序を制御することを言う。具体的には、パケットのヘッダーに優先順位を表す値を設定し、ルーターなどのノードがバッファにたまったパケットの優先順位を見ることで、フローごとの優先順位を判断する。
3)トラヒックの要求帯域と割り当て済み帯域の合計値を、1)で求めた変調方式M1での伝送レートと比較する(S203)。
【0021】
A)伝送レート≧トラヒックの要求帯域+割り当て済み帯域
伝送レートがトラヒックの要求帯域と割り当て済み帯域の合計値以上の場合である。即ち、変調方式M1による伝送で十分に伝送可能な場合である。
この場合には、現在の要求帯域と割り当て済み帯域の差分、あるいは、使用可能な空き帯域を基本とした値の逆数をリンクコストとして用いる(S204)。なお、この例では、現在の要求帯域と割り当て済み帯域の差分、あるいは、使用可能な空き帯域を基本とした値の逆数をリンクコストとして用いているが、これに限らず、使用可能な空き帯域が大きくなればなるほど、リンクコストは小さくなるようにリンクコストが算出されるような処理であればよい。ここで、リンクコストの算出には、使用可能な空き帯域とリンクコスト値が予め関連付けられたテーブルを用いて、使用可能な空き帯域に基づいてリンクコスト値を求めるようにしてもよい。
【0022】
B)伝送レート<トラヒックの要求帯域+割り当て済み帯域
伝送レートがトラヒックの要求帯域と割り当て済み帯域の合計値未満の場合である。即ち、変調方式M1による伝送では十分ではない場合である。この場合に、同じ経路で伝送しようとすると、変調方式M1よりも低い安定度を有し、トラヒックの要求帯域を収容可能な変調方式(例えば、M2)により伝送する必要がある。このため、安定度の高い変調方式(例えばM1)から相対的に安定度の低い変調方式(例えばM2)により伝送することに起因して、通信品質が低下することを、経路選択に反映させ、当該経路が選択されにくくなるような重み付けを与えるために、ペナルティコストが設定される。
この場合には、ペナルティコストが設定される無線リンクとしてマーキングする(S205)。即ち、ペナルティコストが設定される無線リンクであることを示す情報を無線リンクの識別情報に関連づける。
【0023】
次に、経路を計算する。
4)ペナルティコストが設定される無線リンクとしてマーキングされた無線リンクのリンクコストを設定する(S206)。
他の無線リンクに設定されたリンクコストの最悪値にトレードオフ係数xを掛け算した値をペナルティコストとして設定する。なお、すべての無線リンクにペナルティコストのマーキングがされた場合、1を用いる。
【0024】
ペナルティコストのリンクコストにおいて用いられるトレードオフ係数xは、トラヒックがどの程度信頼性を犠牲にして最短経路を優先するかの指標を表す値として計算される。即ち、要求される安定度よりも低い安定度のリンクにトラヒックを収容する場合の係数(重み付け)として計算される。
【0025】
トレードオフ係数xは、該当リンクにおける使用可能帯域の安定度がAvail(M2)、トラヒックが要求する安定度がAvail(tr)であった場合、
y = log(1- Avail(M2)) - log(1-Avail(tr) ) = log( (1 - Avail(M2)) / (1- Avail(tr)))
x = pref(y) (2)
で定義される。ここで、M2は、無線リンクがトラヒックの要求帯域を収容するために必要な安定度を有する最低の変調方式であり、yは、該当リンクにおける安定度減少度で、対数を求めているのは他のリンクコストと比較する場合に、数値的な次元を合わせるためである。また、関数pref(y)は、任意の増加関数であり、トレードオフ係数xは、M2の安定度が低ければ低いほど、大きい値となる。
【0026】
pref(y)はペナルティコストを定める上での一要素である。pref(y)は、計算対象である経路候補においてトラヒックが要求する安定度を満たす変調方式(例えば、M1)の安定度と、当該経路候補において前記トラヒックの要求帯域を収容可能な変調方式(例えば、M2)の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値である。この安定度反映値は、十分な安定度を有する変調方式から安定度の低い変調方式への変更が通信品質に与える負の要素を反映した値である。両者の安定度の違いが大きい場合に、通信品質に与える負の要素が大きいと考えられるから、より高い値となる。それ故、両変調方式の安定度の違いが大きければ大きいほど、ペナルティコストが高くなるため、計算対象である経路候補よりも他の経路候補が選択されやすくなる。
【0027】
トレードオフ係数xを求める式は、例えば次のような複数の関数が用いられる。
関数1:x = pref(y) = y + 2 関数2: x = pref(y) = y + 0.5 (3)
関数1を用いた場合には、関数2を用いる場合に比べて、ペナルティコストが大きくなる。そのため、候補となる経路のうち、関数1が用いられてペナルティコストが計算された経路は、他の経路よりも選択されにくくなる。
【0028】
また、pref関数は、トラヒック毎にいずれかの関数を適用すべきかが予め定められている。いずれかの関数は、トラヒックの経路設定時に要求者側から、経路制御装置に通知される。または、経路制御装置は、トラヒックにおいて送信されるデータの種類(音声データ、テキストデータ等)に応じて、適用すべきpref関数を定めるようにしてもよい。
【0029】
5) 最小コスト経路を計算する(S207)。
経路設定において経路にペナルティコストが用いられた無線リンクが含まれている場合、経路制御装置100は、該当する無線リンク上にある通信装置101〜103に対して、その経路を用いるトラヒックに対してマーキングを行わせる。そして、該当する無線リンク上にある通信装置101〜103は、マーキングしたトラヒックの優先度を、同一優先度の他のトラヒックよりも一段階低くする。そうすると、そのトラヒックと他のトラヒックとの間で輻輳が生じた場合には、他のトラヒックよりも優先度が低いため、パケットが選択されない。即ち該パケットの優先順位を低く設定する。
【0030】
本発明の実施形態にかかる経路制御方法について、具体的な計算例を挙げて説明する。この例では、図1で示されるようなネットワーク構成を前提としている。即ち、経路制御装置100および配下の各通信装置101〜103で構成されたネットワークを対象としている。ここで、経路制御装置100がネットワーク全体を管理し、新規フローの受付や終了などはすべて経路制御装置100が行う。経路制御装置100は定期的に各通信装置101〜103から無線リンクのリンク品質(ビットエラーレート、使用している変調方式)に関する情報を取得し、各リンクの変調方式毎の安定度を計算すると共に、経路計算を行う。
【0031】
無線通信システム200は、経路制御装置100と通信装置101を結ぶ有線または無線リンク191と、通信装置101と通信装置103を結ぶ無線リンク111と、通信装置101と通信装置102を結ぶ無線リンク112と、通信装置102と通信装置103を結ぶ無線リンク113を有する。
【0032】
以下の説明において、通信装置101から通信装置103を直接結ぶ経路を「無線リンク111」と表し、通信装置101から通信装置102を経由して通信装置103を結ぶ経路を「無線リンク112・113」と表す。無線リンク111は、ホップ数は1であり、無線リンク112・113はホップ数2である。この例において、ホップ数が多くなればなるほど、伝送遅延量が大きくなる。
【0033】
ここで、各無線リンク111、112、113ともに、各変調方式の安定度と、確保できる帯域を表1に示す。以下、変調方式の例として、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)、32QAM(32 Quadrature Amplitude Modulation)を用いている。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示される、各変調方式の安定度99.99%、99.9%、99.5%に合わせて、トラヒックの優先度毎に、それぞれの優先度を有するトラヒックが要求する安定度を次の通りとする。
優先度1 99.99%
優先度2 99.9%
優先度3 99.5%
つまり、優先順位が高い優先度1のトラヒックについてはQPSKの安定度99.99%を要求するものとする。また、優先順位が次に高い優先度2のトラヒックについては16QAMの安定度99.9%を要求するものとする。そして、優先順位が最も低い優先度3のトラヒックについては、32QAMの安定度99.5%を要求するものとする。
【0036】
A) 経路計算1
無線リンク101―103間において、要求帯域30Mbpsのトラヒック(優先度1:安定度99.99%、QPSK要求)の経路計算を行う。まず、各リンクにおいて、99.99%を満たす安定度の変調方式を調べる。すべてのリンクにおいて、QPSKが条件を満たすため、各リンクでQPSKの伝送レートでも高優先トラヒックを収容できるかどうか調べる。表1から、空き帯域は十分あることがわかるため、リンクコストを計算する。
リンクコスト=1/(指定した安定度を満たす空き帯域)であるから、各リンクのリンクコストは次の通りとなる。
(無線リンク111、無線リンク112、無線リンク113) 1 / 40 (4)
【0037】
通信装置102を経由して通信装置101から通信装置103を結ぶ無線リンク112・113の経路のコストは、1 / 40+1 / 40=2 / 40となる。
また、通信装置101から直接に通信装置103を結ぶ無線リンク111の経路のコストは、1 / 40である。ここで、候補となる二つの経路のコストを比較すると、無線リンク111の経路のコストの方が無線リンク112・113の経路よりも小さいため、無線リンク111の経路が選択される。無線リンク111においてQPSKで確保できる40Mbpsのうち30Mbpsがこのトラヒックに割当てられる。
経路計算1が終了した状態における各無線リンクの割当帯域は、表2のようになる。
【0038】
【表2】
【0039】
B) 経路計算2
次に、要求帯域が、20Mbpsのトラヒック(優先度1:安定度99.99%、QPSK要求)の経路計算を行う。リンクコストを計算すると、無線リンク111には既に経路計算1で割り当てられたトラヒックによってQPSKの割当帯域40Mbpsのうち30Mbpsが使用されているので、指定した安定度を満たす空き帯域10Mbpsよりも、このトラヒックの要求帯域20Mbpsが大きくなってしまう (30+20 > 40)。そのため、無線リンク111のリンクコストにはペナルティコストが設定される。
【0040】
無線リンク111に設定するペナルティコストとして、他のリンクのリンクコストの中の最大値を係数x倍したコストが設定される。該当リンクにおける使用可能な帯域(16QAM)の安定度は99.9%でトラヒックが要求する安定度が99.99%であるため、pref関数としてx = pref(y) = y + 2を用いた場合のトレードオフ係数xは、
pref(log (1 - 0.999) - log(1-0.9999)) = 3 (5)
となる。そのため、該当リンクに設定するペナルティリンクコストは、次の通りとなる。
3 * 1/40 = 3/40 (6)
【0041】
他の無線リンク112、113には、QPSKについては40Mbpsの帯域が残っているため、それらのリンクコストは、経路計算1と同じように、次の通りとなる。
(無線リンク112、無線リンク113) 1/40 (7)
【0042】
二つの経路候補のコスト総和は次のとおりになる。
(無線リンク112・113) 1/40 + 1/40= 2 /40 (8)
(無線リンク111) 3 /40 (9)
経路の候補を比較すると、コストの小さい無線リンク112・113の経路が選択される。この場合の計算処理後の使用帯域は、次の通りに更新される。
【表3】
【0043】
なお、同じ優先度のトラヒックであっても、pref関数として、x = pref(y)=y + 0.5 を用いるトラヒックの場合、トレードオフ係数x = 1.5となるため、経路候補の総和はそれぞれ、次のようになる。
(無線リンク112・113) 1/40 + 1/40= 2 /40 (10)
(無線リンク111) 1.5/40 (11)
従って、この場合には、無線リンク111の経路が選択されることになる。
【0044】
C) 経路計算3
次に、要求帯域が20Mbpsのトラヒック(優先度3:安定度99.5%、32QAM以上の安定度要求)の経路計算を行う。各リンクのリンクコストは、トラヒックが要求する安定度を満足する空き帯域は3つの帯域であり、その逆数から、次のように計算される。
(無線リンク111) 1 / ((40+40+28) - 30) = 1/78 (12)
(無線リンク112、無線リンク113) 1 / ((40+40+28) - 20 ) = 1/88(13)
(無線リンク112・113) 2 /88 (14)
(無線リンク111) 1 /78 (15)
(14)、(15)の結果より、コストの小さい無線リンク111が経路として選択される。トラヒックが要求する安定度を満たす空き帯域の中で一番安定度が低い帯域を割当てると、割当状況は表4のようになる。
【0045】
【表4】
【0046】
D) 経路計算4
最後に、要求帯域が20Mbpsのトラヒック(優先度1:安定度99.99%、QPSK要求)の経路計算を行う。リンク111は空き帯域(16QAM)の安定度がトラヒックの安定度を満足しないため、ペナルティコストが設定される。無線リンク112、113のリンクコストは、次の通りとなる。
(無線リンク112、無線リンク113) 1 / (40 - 20) = 1/20 (16)
これより、無線リンク112・113のリンクコストは、2/20となる。
【0047】
このトラヒックについては、最短経路を好む、即ち、安定性よりも伝送速度を重視するトラヒックであると仮定し、ペナルティコストとしては相対的に小さい値が算出されるpref関数としてx = pref(y)= y + 0.5が予め設定されている。
具体的にペナルティコストは、x = pref(log(1-0.999) - log(1-0.9999))= log(1-0.999) - log(1-0.9999) + 0.5= 1.5となる。そして、無線リンク111のペナルティコストは次の通り算出される。
(無線リンク111) 1 / 20 * 1.5 = 3/40 (17)
以上の結果より、各経路のリンクコストの総和を比較して、そのリンクコストの総和が小さい無線リンク111が経路として選択される。
【0048】
最終的に各リンクの使用済み帯域は次の表の通りとなる。
【表5】
【0049】
上述のように、経路計算によって、安定性を重視するトラヒックには安定度の高い経路を、遅延を重視するトラヒックにはホップ数が短い経路を設定できる。本発明の活用例として、携帯電話網でのモバイルバックホールにおいて利用が考えられる。
【0050】
本実施の形態によれば、同じ優先度であってもトラヒック毎に、異なるペナルティコスト計算を行うため、最短経路を好むトラヒックの場合はペナルティコストを低く設定し、安定度を重視するトラヒックの場合はペナルティコストを高く設定し、トラヒックの嗜好に適した経路設定が可能となる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、第4世代以上の通信規格(例えばLTE-Advanced、IMT-Advanced、WiMAX2)等の上位通信規格にも適用できる。
【0052】
<その他の実施の形態>
その他の実施の形態として、経路制御装置100の機能を通信装置101〜103が持つ構成であっても実現できる。
【0053】
また、本実施形態で述べた経路制御装置100は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含む半導体処理装置を用いて実現されてもよい。また、この方法は、少なくとも1つのプロセッサ(e.g. マイクロプロセッサ、MPU、DSP(Digital Signal Processor))を含むコンピュータシステムにプログラムを実行させることによって実現されてもよい。具体的には、フローチャート等を用いて説明されたバイアス電圧制御に関するアルゴリズムをコンピュータシステムに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを作成し、当該プログラムをコンピュータに供給すればよい。
【0054】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0055】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する方法であって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて他の経路候補よりも選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択ステップを備えた経路制御方法。
(付記2)
前記ペナルティコストは、トラヒック毎に予め定められている固有値に基づき決定される、
付記1に記載の経路制御方法。
(付記3)
前記ペナルティコストは、前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値に基づき決定される、付記1又は2記載の経路制御方法。
(付記4)
前記トラヒックの要求帯域を収容可能な空き領域を有する経路候補に対しては、当該経路候補の空き領域に応じて決定されるリンクコストを設定するとともに、
前記ペナルティコストは、前記トラヒック毎に予め定められている固有値と、
前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値の少なくとも一つの値に基づき決定されるトレードオフ係数を、前記他の経路候補における最大のリンクコストに乗算することにより算出する、
付記1記載の経路制御方法。
(付記5)
無線リンクが過去に使用した変調方式の履歴情報に基づいて、無線リンクの帯域毎の安定度を算出する付記1〜4いずれかに記載の経路制御方法。
(付記6)
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して、最短経路である第1の経路候補と、当該第1の経路候補よりもホップ数の多い第2の経路候補を含む複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する方法であって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択ステップを備えた経路制御方法。
(付記7)
前記ペナルティコストは、トラヒック毎に予め定められている固有値に基づき決定される、付記6に記載の経路制御方法。
(付記8)
前記ペナルティコストは、前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値に基づき決定される、付記6又は7記載の経路制御方法。
(付記9)
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する装置を備えた無線通信システムであって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択手段を備えた無線通信システム。
(付記10)
前記ペナルティコストは、トラヒック毎に予め定められている固有値を含む、
付記9に記載の無線通信システム。
(付記11)
前記ペナルティコストは、前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値に基づき決定される、付記9又は10記載の無線通信システム。
(付記12)
前記トラヒックの要求帯域を収容可能な空き領域を有する経路候補に対しては、当該経路候補の空き領域に応じて決定されるリンクコストを設定するとともに、
前記ペナルティコストは、前記トラヒック毎に予め定められている固有値と、
前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値の少なくとも一つの値に基づき決定されるトレードオフ係数を、前記他の経路候補における最大のリンクコストに乗算することにより算出する、
付記9記載の無線通信システム。
(付記13)
無線リンクが過去に使用した変調方式の履歴情報に基づいて、無線リンクの帯域毎の安定度を算出する付記9〜12いずれかに記載の無線通信システム。
(付記14)
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して、最短経路である第1の経路候補と、当該第1の経路候補よりもホップ数の多い第2の経路候補を含む複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御する制御装置を備えた無線通信システムであって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択手段を備えた無線通信システム。
(付記15)
前記ペナルティコストは、トラヒック毎に予め定められている固有値を含む、
付記14に記載の無線通信システム。
(付記16)
前記ペナルティコストは、前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値に基づき決定される、付記14又は15記載の無線通信システム。
(付記17)
前記トラヒックの要求帯域を収容可能な空き領域を有する経路候補に対しては、当該経路候補の空き領域に応じて決定されるリンクコストを設定するとともに、
前記ペナルティコストは、前記トラヒック毎に予め定められている固有値と、
前記第1の経路候補における前記第1の変調方式の安定度と、当該第1の経路候補における前記第2の変調方式の安定度との相対的な高さの違いに応じて決定される安定度反映値の少なくとも一つの値に基づき決定されるトレードオフ係数を、前記他の経路候補における最大のリンクコストに乗算することにより算出する、
付記14記載の無線通信システム。
(付記18)
適応変調機能を備えた制御部と、
通信装置と無線通信する無線アンテナを備え、
前記制御部は、前記通信装置と無線リンクで接続されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択することにより通信経路を制御するものであって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較手段と
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて、選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択手段を備えた経路制御装置。
(付記19)
適応変調機能を備えた無線リンクで構成されたネットワークにおいて、特定のトラヒックに対して複数の経路候補から一の経路を選択する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記トラヒックの要求帯域と、前記複数の経路候補に含まれ、第1の変調方式によって前記トラヒックの要求する安定度を満たす第1の経路候補において割当可能な割当可能帯域を比較する比較ステップと、
前記比較の結果、前記トラヒックの要求帯域が前記割当可能帯域よりも大きい場合には、当該第1の経路候補において、前記第1の変調方式よりも低い安定度の第2の変調方式により使用可能になる帯域を用いて伝送することによるペナルティコストを与えて選択されにくくなるようにして、前記複数の経路候補から一の経路を選択する選択ステップを備えた非一時的なコンピュータ可読媒体。
【0056】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0057】
この出願は、2012年10月23日に出願された日本出願特願2012−233493を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0058】
50 制御部
51 無線アンテナ
55 制御部
56 無線アンテナ
100 経路制御装置
101 通信装置
102 通信装置
103 通信装置
111 無線リンク
112 無線リンク
113 無線リンク
191 無線リンク
200 無線通信システム
図1
図2
図3