特許第6222101号(P6222101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222101ポリエステルポリカーボネートポリオール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222101
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ポリエステルポリカーボネートポリオール
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/64 20060101AFI20171023BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08G63/64
   C08G18/44
   C08F290/06
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-544574(P2014-544574)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】JP2013079526
(87)【国際公開番号】WO2014069563
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-241248(P2012-241248)
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】平川 貴文
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 清隆
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸夫
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−051599(JP,B1)
【文献】 特公平05−029648(JP,B2)
【文献】 特開平06−145636(JP,A)
【文献】 特開平11−001549(JP,A)
【文献】 特開2000−327760(JP,A)
【文献】 特開2003−183345(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063767(WO,A1)
【文献】 特開2012−193279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 − 64/42
C08G 18/00 − 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)で表される繰り返し単位と、分子末端の水酸基とを含有するポリエステルポリカーボネートポリオールであって、
下記式(1)で表される繰り返し単位が、下記式(3)で表される繰り返し単位を2種以上含有し、
式(2)で表される繰り返し単位の量が、式(1)及び式(2)で表される繰り返し単位の合計中、10〜30モル%であり、
式(3)で表される繰り返し単位が、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位であるポリエステルポリカーボネートポリオール。
【化24】

(式(1)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【化25】

(式(2)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【化26】

(式(3)中、nは、2〜20の整数を表す。)
【化29】

【化30】
【請求項2】
式(3)で表される繰り返し単位の量が、式(1)で表される繰り返し単位中、60〜100モル%である、請求項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール。
【請求項3】
式(6)で表される繰り返し単位の量が、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位中、20〜80モル%である、請求項1又は2に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール。
【請求項4】
式(2)で表される繰り返し単位が、式(4’)〜(7’)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール。
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】
【請求項5】
式(2)で表される繰り返し単位が、式(6’)で表される繰り返し単位である、請求項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール。
【請求項6】
数平均分子量が、500〜5000である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートを共重合して得られる、ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる、ウレタンアクリレート。
【請求項9】
触媒の存在下、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ε−カプロラクトン、及び炭酸エステルを反応させる、ポリエステルポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項10】
反応を温度50〜250℃、圧力0〜1000mmHgで行なう、請求項9に記載のポリエステルポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項11】
触媒の量が、全仕込み量に対して1〜20000重量ppmである請求項9又は10に記載のポリエステルポリカーボネートポリオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリカーボネートポリオール、並びにこれを用いて得られるポリウレタン樹脂及びウレタンアクリレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートジオールは、ポリウレタン樹脂、ウレタンアクリレート、熱可塑性エラストマー等の原料として有用であり、中でも、1,6−ヘキサンジオールを1,4−ブタンジオール又は1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるポリカーボネートジオールを原料として、耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、弾性回復性等のバランスのとれたポリウレタン樹脂が得られることが知られている(特許文献1)。
【0003】
近年は、ポリウレタン樹脂等を製造するための反応における重合反応性を改善するためにポリカーボネートジオールの1級末端OH比率を制御する技術が提案されている(特許文献2〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−289616号公報
【特許文献2】特許第3874664号
【特許文献3】WO2009/063767
【特許文献4】WO2009/063768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術のポリカーボネートジオールを用いたコーティング剤組成物には、コーティングの対象物によっては、得られる塗膜が密着せず、剥がれ易いという問題があった。とりわけ、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)のような合成ゴムに対しては、密着性の問題が顕著であった。本発明は、この問題を解決し、密着性に優れた塗膜をもたらすことができる原料を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者は、式(2):
【化1】
(式(2)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位を、特定量で、ポリカーボネートポリオールに導入して、ポリエステルポリカーボネートポリオールとすることにより、上記の課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明1は、下記式(1)で表される繰り返し単位と、下記式(2)で表される繰り返し単位と、分子末端の水酸基とを含有するポリエステルポリカーボネートポリオールであって、
下記式(1)で表される繰り返し単位が、下記式(3)で表される繰り返し単位を2種以上含有するポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
【化2】
(式(1)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【化3】
(式(2)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【化4】
(式(3)中、nは、2〜20の整数を表す。)
本発明2は、式(2)で表される繰り返し単位の量が、式(1)及び式(2)で表される繰り返し単位の合計中、1〜60モル%である、本発明1のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明3は、式(3)で表される繰り返し単位の量が、式(1)で表される繰り返し単位中、60〜100モル%である、本発明1又は2のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明4は、式(3)で表される繰り返し単位が、式(4)〜(7)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる2種以上である、本発明1〜3のいずれかのポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
本発明5は、式(3)で表される繰り返し単位が、式(5)及び式(7)で表される繰り返し単位である、本発明4のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明6は、式(5)で表される繰り返し単位の量が、式(5)及び式(7)で表される繰り返し単位中、30〜95モル%である、本発明5のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明7は、式(3)で表される繰り返し単位が、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位である、本発明4のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明8は、式(6)で表される繰り返し単位の量が、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位中、20〜80モル%である、本発明7のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明9は、式(2)で表される繰り返し単位が、式(4’)〜(7’)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上である、本発明1〜8のいずれかのポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
本発明10は、式(2)で表される繰り返し単位が、式(6’)で表される繰り返し単位である、本発明9のポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明11は、数平均分子量が、500〜5000である、本発明1〜10のいずれかのポリエステルポリカーボネートポリオールに関する。
本発明12は、本発明1〜11のいずれかのポリエステルポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートを共重合して得られる、ポリウレタン樹脂に関する。
本発明13は、本発明1〜11のいずれかのポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる、ウレタンアクリレートに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールを、ポリウレタン樹脂やウレタンアクリレート等の原料とすることにより、密着性に優れた塗膜をもたらすことができる。本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールによれば、とりわけ、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)のような合成ゴムに対して、優れた塗膜の密着性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールは、式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位と、分子末端の水酸基とを含有する。
【0010】
本発明において、式(1)で表される繰り返し単位は、以下のとおりである。
【化13】
(式(1)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【0011】
本発明において、式(1)で表される繰り返し単位は、式(3)で表される繰り返し単位を2種以上含む。式(3)で表される繰り返し単位は、2〜5種であることができ、ポリエステルポリカーボネートポリオールの物性の制御がしやすい点から、2又は3種であることが好ましい。
【0012】
本発明において、式(3)で表される繰り返し単位は、以下のとおりである。
【化14】
(式(3)中、nは、2〜20の整数を表す。)
【0013】
式(3)で表される繰り返し単位の量は、式(1)で表される繰り返し単位中、60モル%以上であることが、粘度を低減して取扱い易くする上で好ましい。この量は、好ましくは、90モル%以上であり、より好ましくは、100モル%であり、式(1)で表される繰り返し単位が、全て、式(3)で表される繰り返し単位であってもよい。
【0014】
式(3)で表される繰り返し単位としては、式(4)〜(7)で表される繰り返し単位が挙げられ、これらのうち2種以上であることができる。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0015】
例えば、式(3)で表される繰り返し単位として、式(5)及び式(7)で表される繰り返し単位を組み合わせることができる。この組み合わせは、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂の原料とした場合、合成樹脂に耐溶剤性を容易にもたらすことができる点から、好ましい。
【0016】
この組み合わせにおいて、式(5)で表される繰り返し単位の量は、式(5)及び式(7)で表される繰り返し単位中、30〜95モル%であることができる。この範囲であれば、ポリエステルポリカーボネートポリオールが室温(25℃)又は加温下(例えば、55℃までの加温下)で流動性(例えば、粘度500〜7000cP)を有することが期待できる。この量は、好ましくは、51〜95モル%であり、より好ましくは、60〜95モル%である。ここで、粘度は、E型粘度計(BROOKFIELD社製 「BROOLFIELD粘度計LV DV-II +Pro」)を用いて、以下のようにして、所定の温度にて測定した値とする。
粘度が300〜1900cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−42」を用いて、回転数0.3rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が1901〜4000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.6rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が4001〜20000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.3rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が20001〜60000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.1rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が60001〜100000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.05rpmで測定した値を粘度とした。
【0017】
また、例えば、式(3)で表される繰り返し単位として、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位を組み合わせることができる。この組み合わせは、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂の原料とした場合、合成樹脂に高い柔軟性を容易にもたらすことができる点から、好ましい。
【0018】
この組み合わせにおいて、式(6)で表される繰り返し単位の量は、式(6)及び式(7)で表される繰り返し単位中、20〜80モル%であることができる。この範囲であれば、ポリエステルポリカーボネートポリオールが室温(25℃)又は加温下(例えば、55℃までの加温下)で流動性(例えば、粘度500〜7000cP)を有することが期待できる。この量は、より好ましくは、30〜70モル%であり、特に好ましくは50モル%を超えて70モル%以下である。
【0019】
さらに、例えば、式(3)で表される繰り返し単位として、式(4)と式(5)と式(7)で表される繰り返し単位の組み合わせや、式(4)と式(6)と式(7)で表される繰り返し単位の組み合わせも使用することができる。
【0020】
式(3)以外の、式(1)で表される繰り返し単位としては、Rが、炭素数2〜20の分岐状のアルキレン基、例えば、プロピレン基、イソブチレン基、2−メチルテトラメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、イソノナメチレン基、2−メチルノナメチレン基等;炭素数3〜20の置換又は非置換のシクロアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,2−ジメチレンシクロペンタン基、1,3−ジメチレンシクロペンタン基、1,2−ジメチレンシクロヘキサン基、1,3−ジメチレンシクロヘキサン基、1,4−ジメチレンシクロヘキサン基、4,4’−メチレンジシクロヘキシレン基、2,2−ジシクロヘキシレンプロパン基等;炭素数6〜20の置換又は非置換のアリーレン基、例えば、フェニレン基、1,2−ジメチレンベンゼン基、1,3−ジメチレンベンゼン基、1,4−ジメチレンベンゼン基、ナフチレン基、4,4’−メチレンジフェニレン基、2,2−ジフェニレンプロパン基等の繰り返し単位が挙げられる。
【0021】
本発明において、式(2)で表される繰り返し単位は、以下のとおりである。
【化19】
(式(2)中、Rは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。)
【0022】
としては、炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、2−メチルテトラメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、イソノナメチレン基、2−メチルノナメチレン基等;炭素数3〜20の置換又は非置換のシクロアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、1,2−ジメチレンシクロペンタン基、1,3−ジメチレンシクロペンタン基、1,2−ジメチレンシクロヘキサン基、1,3−ジメチレンシクロヘキサン基、1,4−ジメチレンシクロヘキサン基、4,4’−メチレンジシクロヘキシレン基、2,2−ジシクロヘキシレンプロパン基等;炭素数6〜20の置換又は非置換のアリーレン基、例えば、フェニレン基、1,2−ジメチレンベンゼン基、1,3−ジメチレンベンゼン基、1,4−ジメチレンベンゼン基、ナフチレン基、4,4’−メチレンジフェニレン基、2,2−ジフェニレンプロパン基等の繰り返し単位が挙げられる。
【0023】
としては、炭素数2〜20の直鎖状のアルキレン基が好ましく、式(4’)〜(7’)で表される繰り返し単位が挙げられ、これらのうち1種以上であることができる。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0024】
中でも、原料が入手しやすい点から、式(6’)が好ましい。
【0025】
式(2)で表される繰り返し単位の量は、式(1)及び式(2)で表される繰り返し単位の合計中、1〜60モル%であることができる。この範囲であれば、耐加水分解性を保持したままで、室温(25℃)又は加温下(例えば、55℃までの加温下)で流動性(例えば、粘度500〜7000cP)を容易に得ることができる。この量は、好ましくは、2〜50モル%であり、より好ましくは、3〜30モル%である。
【0026】
本発明において、式(1)で表される繰り返し単位及び式(2)で表される繰り返し単位の存在の仕方は特に限定されず、ランダムであっても、ブロックであってもよい。式(1)で表される繰り返し単位に含まれる式(3)で表される繰り返し単位の存在の仕方も特に限定されず、ランダムであっても、ブロックであってもよい。
【0027】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて、数平均分子量Mnは、500〜5000であることができる。この範囲であれば、室温(25℃)又は加温下(例えば、55℃)で流動性(例えば、粘度500〜7000cP)を容易に得ることができ、取扱い性に優れる。数平均分子量Mnは、好ましくは、500〜3500であり、より好ましくは、500〜3000である。本明細書において、数平均分子量Mnは、JIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0028】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて、重量平均分子量Mwは、500〜15000であることができる。重量平均分子量Mwは、好ましくは、1000〜13000である。本明細書において、重量平均分子量Mwは、GPCにより測定した値とする。
【0029】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて、分散度Mw/Mnは、1.0〜3.0であることができる。分散度Mw/Mnは、好ましくは、2.0〜2.3である。
【0030】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて、酸価は、0〜1mgKOH/gであることができる。この範囲であれば、これを原料として、特に良好な物性のポリウレタン樹脂が得られる。酸価は、好ましくは、0〜0.1mgKOH/gであり、より好ましくは、0〜0.05mgKOH/gである。本明細書において、酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した値とする。
【0031】
本発明は、分子末端に水酸基を有する。本発明は、好ましくは、両分子末端にそれぞれ水酸基を有するポリエステルポリカーボネートジオールである。
【0032】
本発明は、式(1)及び(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(その他の繰り返し単位)を含むことができる。その他の繰り返し単位は、本発明の繰り返し単位中、10モル%以下が好ましく、より好ましくは5モル%以下である。
【0033】
その他の繰り返し単位としては、ポリブタジエンポリオールに由来する繰り返し単位等が挙げられる。
【0034】
本発明において、繰り返し単位中の、式(1)又は(2)で表される繰り返し単位、あるいは式(3)で表される繰り返し単位のモル数の割合は、本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにおいて消費された原料から換算することができる。具体的には、ポリエステルポリカーボネートポリオールの製造において仕込んだ原料のモル数の比率から求めることができる。ただし、製造工程において、原料ジオールを留出させる場合には、留出させた原料ジオールを差し引いて求める。
【0035】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールの製造方法は、特に制限されないが、式(1)に対応するジオール類、式(2)に対応するラクトン類及び炭酸エステルを反応させる方法が挙げられる。この方法において、反応の際の温度は、50〜250℃とすることができ、好ましくは70〜220℃である。反応の際の圧力は、0〜1000mmHgとすることができ、好ましくは0.1〜760mmHgである。反応時間は、5〜48時間とすることができる。
【0036】
反応は、副生するアルコールを系外に抜きながら行うことが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。
【0037】
反応は、触媒を使用して行ってもよいし、使用せずに行なってもよい。触媒を使用する場合は、公知のエステル交換反応に用いられる触媒が挙げられ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム等の金属、又はその塩、アルコキシド若しくは有機化合物を使用することができる。特に好ましいのは、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、スズ等の化合物であり、例えば水素化ナトリウム、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズオキサイド等が挙げられる。触媒の使用量は、ポリエステルポリカーボネートポリオールの製造における全仕込み量に対して、好ましくは1〜20000重量ppmであり、より好ましくは10〜5000重量ppmであり、20〜4000重量ppmであることが特に好ましい。
【0038】
反応の終了後、必要に応じて、未反応のジオール類及びラクトン類を留去することにより、本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0039】
式(1)で表わされる繰り返し単位を誘導するジオール類としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の側鎖を持たない、炭素数2〜20のアルカンのジオールが挙げられる。これらのジオール類は、式(3)で表される繰り返し単位を誘導することができ、2種以上で使用される。
【0040】
さらに、ジオール類としては、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等の側鎖を有する、炭素数2〜20のアルカンのジオール類;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,7−ノルボルナンジオール等の炭素数6〜20の脂環式構造を有するジオール等;1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,2−ベンゼンジメタノール、2,7−ナフタレンジメタノール等の炭素数6〜20の芳香族環式構造を有するジオール等が挙げられる。
【0041】
また、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールを用いることもできる。
【0042】
式(2)で表される繰り返し単位を誘導するラクトン類としては、ω−ラクトン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ω−エナントラクトン、ω−カプリロラクトン、ω−ラウロラクトン等の炭素数3〜21のラクトン類が挙げられ、好ましくはε−カプロラクトンである。
【0043】
炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル;ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル等が挙げられ、不要な副生成物を除去しやすい点から、好ましくは脂肪族炭酸エステル又は環状炭酸エステルであり、ジメチルカーボネート又はエチレンカーボネートが特に好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールは、ポリウレタン、ウレタンアクリレート等の原料や、コーティング剤、塗料やインクの添加剤等として用いることができる。
【0045】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオール及びポリイソシアネートを反応させて、ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂の製造に使用することができるポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、粗製MDI等の芳香族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香脂肪族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水素添加MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン−1,2−ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート(水素添加XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂の製造においては、共重合成分として鎖延長剤を用いることができる。鎖延長剤としては、公知の鎖延長剤を使用することができ、例えば、水、低分子ポリオール、ポリアミン等が挙げられる。鎖延長剤については、例えば、「最新ポリウレタン応用技術」(株式会社CMC社、1985年に発行)を参照することができる。
【0048】
低分子ポリオールとしては、分子量が300以下のジオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが用いられる。
【0049】
ポリウレタン樹脂の用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、鎖延長剤として公知の高分子ポリオールを使用してもよい。高分子ポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテルカーボネート(ポリエーテルカーボネートポリオール)等が挙げられる。高分子ポリオールについては、例えば、「ポリウレタンフオーム」(高分子刊行会、1987年)を参照することができる。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法としては、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができ、例えば、本発明のポリエステルポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートを、大気圧下で、室温(25℃)〜200℃で反応させることにより、ポリウレタン樹脂を製造することができる。鎖延長剤を用いる場合は、反応の最初から加えておいてもよいし、反応の途中から加えてもよい。ポリウレタン樹脂の製造方法については、例えば、米国特許第5,070,173号を参照することができる。
【0051】
ポリウレタン化反応において、公知の重合触媒を用いることができ、例えば、第三級アミン、スズ又はチタン等の有機金属塩が挙げられる。重合触媒については、吉田敬治著「ポリウレタン樹脂」(日本工業新聞社刊、1969年)の第23〜32頁を参照することができる。
【0052】
ポリウレタン化反応は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセルソルブ等が挙げられる。
【0053】
ポリウレタン化反応において、末端停止剤を使用することができる。末端停止剤としては、イソシアナト基に反応する活性水素を1つだけ含有する化合物、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、及びジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の二級アミン等が挙げられる。
【0054】
本発明のポリウレタン樹脂に、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤等の安定剤を配合してもよい。酸化防止剤としては、例えば、リン酸や亜リン酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステル、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体(特に、ヒンダードフェノール化合物);チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル等の硫黄化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤は、一次、二次、三次老化防止剤に分けることができ、一次老化防止剤としてのヒンダードフェノール化合物としてはIrganox1010(商品名;BASF社製)、Irganox1520(商品名;BASF社製)等が好ましい。二次老化防止剤としてのリン系化合物は、PEP−36、PEP−24G、HP−10(いずれも商品名;旭電化社製)、Irgafos168(商品名;BASF社製)が好ましい。さらに、三次老化防止剤としての硫黄化合物としてはジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)等のチオエーテル化合物が好ましい。
【0056】
光安定剤としては、紫外線吸収型の光安定剤とラジカル捕捉型の光安定剤が挙げられ、
紫外線吸収型の光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。ラジカル捕捉型の光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらの安定剤は単独で、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これら安定剤の添加量は、ポリウレタン樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。
【0057】
本発明のポリウレタン樹脂に、可塑剤を配合してもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類;トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリメチルヘキシルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、トリス−ジクロロプロピルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸イソデシルエステル等のトリメリット酸エステル類、ジペンタエリスリトールエステル類、ジオクチルアジペート、ジメチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノレート等の脂肪酸エステル類;ピロメリット酸オクチルエステル等のピロメリット酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ系可塑剤;アジピン酸エーテルエステル、ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤:液状NBR、液状アクリルゴム、液状ポリブタジエン等の液状ゴム;非芳香族系パラフィンオイル等が挙げられる。これら可塑剤は単独で、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。可塑剤の添加量は、要求される硬度、物性に応じて適宜選択されるが、ポリウレタン樹脂100重量部当り0.1〜50重量部が好ましい。
【0058】
さらに、本発明のポリウレタン樹脂には、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、ケイ酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。これらの種々の添加剤は、従来のポリウレタン樹脂に一般に用いる量で用いることができる。
【0059】
本発明のポリウレタン樹脂のショアD硬さは好ましくは20〜70、より好ましくは25〜50の範囲である。ショアD硬さが20以上であれば、耐熱性、耐スクラッチ性が十分に高く、また、ショアD硬さが70以下であれば、得られる低温性能、ソフト感が不足することもない。本発明のポリウレタン樹脂の分子量については、GPC分析により測定されるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)及びGPC分析により測定されるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)がそれぞれ10,000〜200,000の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールは、ウレタンアクリレートの原料とすることができる。
【0061】
ウレタンアクリレートは、本発明のポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリイソシアネート及びイソシアナト基と反応性の基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。具体的には、ウレタンアクリレートは、特開平6−145636号公報、特開2003−183345号公報に記載の方法に準ずる方法で調製することができる。
【0062】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂の製造に使用することができるポリイソシアネートを使用することができ、中でも、取扱いが容易である点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート(MDI)、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0063】
イソシアナト基と反応性の基を有する(メタ)アクリレートにおけるイソシアナト基と反応性の基としては、水酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレートを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、取扱いが容易である点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0064】
本発明のウレタンアクリレートに、光開始剤及び場合により(メタ)アクリレートを配合し、コーティング剤を調製することができる。光開始剤としては、公知のものを使用することができ、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、アセトフェノン、置換アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエステル、キサントン、置換キサントン、ホスフィンオキシド、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ−チオキサントン、N−メチルジエタノール−アミン−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、反応性や取扱いが容易な点から、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
【0065】
(メタ)アクリレートとしては、特に制限されず、上記水酸基含有(メタ)アクリレートで例示された化合物を使用することもできる。中でも、反応性の点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0066】
コーティング剤は、溶媒を含有することができ、例えば、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系(酢酸メチル、酢酸エチル等)、エーテル系(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、炭化水素系(n−ヘキサン、ベンゼン等)の溶媒が挙げられる。
【0067】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールは、ポリウレタン、ウレタンアクリレート等の原料や、コーティング剤、塗料やインクの添加剤等に有用である。
【実施例】
【0068】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0069】
数平均分子量は、以下のようにして測定した。
JIS K 1577のB法に準拠して、水酸基価を測定した。測定した水酸基価により、以下の式により、数平均分子量Mnを算出した。
数平均分子量Mn=(56.1×1000×2)/水酸基価
【0070】
酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した。
【0071】
粘度は、E型粘度計(BROOKFIELD社製 「BROOLFIELD粘度計LV DV-II +Pro」)を用いて、以下のようにして、所定の温度にて測定した値である。
粘度が300〜1900cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−42」を用いて、回転数0.3rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が1901〜4000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.6rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が4001〜20000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.3rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が20001〜60000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.1rpmで測定した値を粘度とした。
粘度が60001〜100000cPの場合:コーンとして「スピンドルCPE−52」を用いて、回転数0.05rpmで測定した値を粘度とした。
重量平均分子量(Mw)は、GPCを用いて測定した、ポリスチレン換算の値である。
また、分散度(Mw/Mn)の算出に用いたMw及びMnもGPCを用いて測定した、ポリスチレン換算の値である。このため、分散度の算出に用いたMnと上記の水酸基価より算出したMnとは異なる値である。
【0072】
得られたポリエステルポリカーボネートジオールにおける各繰り返し単位のモル数の割合は、原料の仕込み量から算出した。
【0073】
実施例1
1,6−ヘキサンジオール:1,5−ペンタンジオール=48:52(モル比)となるように原料を仕込んだ。また、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとの合計:ε−カプロラクトン=9:1(モル比)となるように原料を仕込んだ。
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート350.2g(3.89mol)、1,6−ヘキサンジオール186.8g(1.58mol)、1,5−ペンタンジオール178.4g(1.71mol)、ε−カプロラクトン41.8g(0.37mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を10時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリエステルポリカーボネートジオール466.43gを得た。
得られたポリエステルポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は992であり、酸価は0.02mgKOH/gであり、重量平均分子量は2800であり、分散度は2.1であった。また粘度は、表1に示す。
【0074】
実施例2
1,6−ヘキサンジオール:1,5−ペンタンジオール=48:52(モル比)となるように原料を仕込んだ。また、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとの合計:ε−カプロラクトン=7:3(モル比)となるように原料を仕込んだ。
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート292.8g(3.25mol)、1,6−ヘキサンジオール162.9g(1.38mol)、1,5−ペンタンジオール155.5g(1.49mol)、ε−カプロラクトン140.5g(1.23mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を10時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリエステルポリカーボネートジオール501.03gを得た。
得られたポリエステルポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は985であり、酸価は0.03mgKOH/gであり、重量平均分子量は2800であり、分散度は2.1であった。また粘度は、表1に示す。
【0075】
実施例3
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート351.8g(3.91mol)、1,6−ヘキサンジオール169.5g(1.43mol)、1,5−ペンタンジオール168.4g(1.62mol)、ε−カプロラクトン38.7g(0.34mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を11時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリエステルポリカーボネートジオール430.37gを得た。
得られたポリエステルポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は1938であり、酸価は0.03mgKOH/gであり、重量平均分子量は5500であり、分散度は2.2であった。また粘度は、表1に示す。
【0076】
参考例4
1,6−ヘキサンジオール:1,5−ペンタンジオール=48:52(モル比)となるように原料を仕込んだ。また、1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタンジオールとの合計:ε−カプロラクトン=97:3(モル比)となるように原料を仕込んだ。
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート377.2g(4.19mol)、1,6−ヘキサンジオール201.0g(1.70mol)、1,5−ペンタンジオール192.0g(1.84mol)、ε−カプロラクトン11.3g(0.1mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を10時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリエステルポリカーボネートジオール458.21gを得た。
得られたポリエステルポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は993であり、酸価は0.02mgKOH/gであり、重量平均分子量は2800であり、分散度は2.1であった。また粘度は、表1に示す。
【0077】
比較例1
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート372.0g(4.13mol)、1,6−ヘキサンジオール195.6g(1.66mol)、1,5−ペンタンジオール186.8g(1.79mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を10時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリカーボネートジオール439.20gを得た。
得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は991であり、酸価は0.05mgKOH/gであり、重量平均分子量は2900であり、分散度は2.2であった。また粘度は、表1に示す。
【0078】
比較例2
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート387.0g(4.30mol)、1,6−ヘキサンジオール185.2g(1.57mol)、1,5−ペンタンジオール184.0g(1.77mol)、チタンテトラブトキシド0.05gを仕込み、常圧、攪拌下、窒素気流中でメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を12時間行った。この間、反応温度は95℃から200℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、180℃でエステル交換反応をさらに10時間行った。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリカーボネートジオール422.01gを得た。
得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量(JIS K 1577のB法に準拠)は1934であり、酸価は0.04mgKOH/gであり、重量平均分子量は5600であり、分散度は2.2であった。また粘度は、表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
応用例1〜4、比較応用例1及び2
実施例1のポリエステルポリカーボネートジオール92.2g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)41.5g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)23.1g、ウレタン化触媒(ZrAcAc:ジルコニウムアセチルアセトナート)0.09g、パラメトキシフェノール(重合禁止剤)0.16gを仕込んで反応を行い、ウレタンアクリレートを得た。得られたウレタンアクリレート(UA)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とを表2に示す重量比で混合し、応用例1の組成物を得た。実施例2及び3並びに参考例4のポリエステルポリカーボネートジオール、比較例1及び2のポリカーボネートジオールを用いて、同様に組成物を調製した。得られたウレタンアクリレート(UA)及び組成物の粘度を、表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
各応用例・比較応用例におけるウレタンアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとを0.8:0.2の重量比で混合し、混合物80重量部に対し、開始剤としてIrgacure 819(BASF社製)を1重量部、溶媒として酢酸エチルを19重量部添加してコーティング剤を得た。
得られたコーティング剤について、下記を測定した。結果を表3に示す。
密着性:各基材にコーティング剤を乾燥後膜厚が0.07mmとなるように塗布し、80℃、30分で乾燥後、高圧水銀ランプを用いて積算光量1000mJ/cm2で硬化させ、1日室温で放置した後、4cm2を10×10の100マスにカッターで切り込みを入れ、セロハンテープを用いて碁盤目剥離試験を行った。具体的には、セロハンテープを所定回数、貼付・剥離し、残存しているマスの数を数え、測定結果を以下のように示した。
100/10 10回剥離試験して100マス残存
48/1 1回剥離試験して48マス残存
0/1 1回剥離試験して0マス残存
【0083】
【表3】
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、
PET:ポリエチレンテレフタレート
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンゴム、
PC:ポリカーボネート
【0084】
表3の結果から、本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールを用いた場合は、EPDMに密着性の高いコーティング剤が得られることが分かる。
【0085】
また、得られたコーティング剤について、下記を測定した。結果を表4に示す。
耐溶剤性:基材にコーティング剤を乾燥後膜厚が0.07mmとなるように塗布し、80℃、30分で乾燥後、高圧水銀ランプを用いて積算光量1000mJ/cm2で硬化させ、1日室温で放置した後、各溶剤をしみこませた脱脂綿を24時間置いて、ウェスでふき取り、目視で評価した。
○ ふき取り後、塗膜に変化なし
○- ふき取り後、脱脂綿の痕又はくもりあり
△ ふき取り後、ぽつぽつした浮きあり
【0086】
【表4】
【0087】
表4の結果から、本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールにより、耐無機酸性、耐有機酸性のみならず、耐中性洗剤性の高いコーティング剤が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリエステルポリカーボネートポリオールを、ポリウレタン樹脂やウレタンアクリレート等の原料とすることにより、密着性に優れた塗膜をもたらすことができ、産業上の有用性が高い。