(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2つの変調合波光の極性の関係の判定結果に基づいて、前記変調合波光の極性を補正する極性補正手段をさらに備える請求項1乃至6のいずれか1項記載の偏光多重光送信機。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の普及により、基幹ネットワークを通過するトラフィックが急増している。これに対応するために、1波長あたり100Gbpsを超える超高速の波長多重長距離光通信システムの実現が強く望まれている。それを実現するための技術の一つに、光デジタルコヒーレント方式がある。光デジタルコヒーレント方式が適用された光伝送装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
光デジタルコヒーレント方式が適用された光伝送装置においては、偏光多重されたQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)光信号の4つの光位相(例えば、45度、135度、225度、315度) に、それぞれ2ビット(例えば00、01、11、10)を割り当てる(シンボル・マッピング)。QPSK光信号のコンスタレーションの一例が
図11(a)、(b)に示される。
【0004】
光デジタルコヒーレント方式の光伝送装置においては、偏波保持光スプリッタ等によって2分岐した入力光信号を駆動信号電圧に基づいて光変調する時に、一般的に、光直交位相変調器の一つであるマッハツェンダ型光変調器が用いられる。マッハツェンダ型光変調器は、入力光信号を2つに分離して2つの光路を通過させ、再度合波することによって、2つの光路の干渉を利用して光信号の強度を変化させる。マッハツェンダ型光変調器は、2つの光路に駆動信号電圧を加えることによって、光路を通過する光信号の位相を変化させ、出力される変調光の強度を制御する。
【0005】
ここで、マッハツェンダ型光変調器は、起点となるバイアス点とそれに隣接するバイアス点とで、駆動信号電圧を掃引したときの出力信号光の位相の変化が異なる。マッハツェンダ型光変調器の駆動信号電圧と出力される変調光の特性との関係を
図12に示す。
【0006】
図12に示されるように、駆動信号電圧を出力信号光の強度が最大となる2点間で掃引した場合、
図12の位置Aのバイアス点では出力信号光の位相が「π→0」に変化するのに対して、
図12の位置Bのバイアス点では出力信号光の位相が「0→π」に変化する。従って、起点となるマッハツェンダ型光変調器のバイアス点においてQPSK信号のシンボル・マッピングを定める時、互いに隣接するバイアス点においては、
図11(a)、(b)に示すように、01、10の割り当てが異なる。これを極性問題と呼ぶ。
【0007】
一方、光伝送の更なる高速化を図るために、QAM (Quadrature Amplitude Modulation)等の多値度の大きな変調方式を適用することが提案されている。多値度の大きな変調方式を適用することにより、電気部品の駆動速度を高速化する際の波形歪みの影響を低減できる。多値度の大きな変調方式を採用した光デジタルコヒーレント方式の光伝送装置においては、デジタル・アナログ変換器によって生成した駆動電気信号を用いて光直交位相変調器を駆動する。
【0008】
また、無線通信で広く知られている直交周波数分割多重方式(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式のような複雑な送信光信号において、送信端デジタル信号処理技術を適用することが提案されている。送信端デジタル信号処理とは、駆動信号電圧に前置波長分散付与処理、スペクトル整形処理、信号振幅増幅処理などの予等化処理をデジタル信号処理によって施した後、デジタル・アナログ変換器によりアナログ信号に変換する処理である。
【0009】
ここで、予等化処理とは、光伝送路で発生する波形歪みを光送信機側で予め計算し、発生する歪みを打ち消す逆の歪みを送信信号へ付与するための処理である。予等化方式には主に、以下の2つの方式がある。一つ目は、駆動信号に周波数オフセットを付与することにより2個の独立した光信号に対して異なる光位相の時間的変動を付与する方式(方式1)である。二つ目は、送信端デジタル信号処理技術を活用して駆動信号に対して前置波長分散付与処理をデジタル信号処理により実施する方式(方式2)である。
【0010】
方式1については、例えば、非特許文献1に開示されている。方式1は、
図13(a)に示すように、偏光多重される2つの独立な光信号に対し、異なる光位相の時間変動を付与する。この場合、互いに直交する偏光成分間で搬送波周波数が異なる偏光多重信号が生成され、品質が改善される。
【0011】
しかし、光信号に対して光位相の時間的変動を付与する時にマッハツェンダ型変調器の極性問題により光位相の時間的変動の符号が変化した場合、
図13(b)に示すように、変調光の光スペクトルの周波数シフトの符号が反転する。この場合、光送信機が付与した光位相の時間的変動を相殺するために光受信機が光位相の時間的変動を加えても、時間的変動の符号が異なるため、時間的変動を相殺することができず、光信号の復調ができない。従って、品質が改善されない。
【0012】
一方、方式2は、波長分散が周波数領域上の光信号の搬送波周波数からの周波数偏差の2乗に比例する光位相回転であることから、光直交位相変調器の極性が反転した場合、予等化処理により付与する波長分散の符号が反転する。波長分散の符号が反転した場合、上述のように時間的変動を相殺することができず、光信号の復調ができない。従って、品質が改善されない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る偏光多重光送信機について説明する。本実施形態に係る偏光多重光送信機のブロック構成図を
図1に示す。
図1において、偏光多重光送信機10は、駆動手段20、2つの光変調手段31、32、偏光多重手段40、混合手段50および極性判定手段60を備える。
【0023】
駆動手段20は、光信号の2つの偏光成分を変調するための駆動信号を生成する。駆動手段20は、生成した駆動信号に、前置波長分散付与処理、スペクトル整形処理などの予等化処理をデジタル信号処理によって施し(送信端デジタル信号処理)、デジタル・アナログ変換器によりアナログ信号に変換した後、光変調手段31、32へ出力する。
【0024】
また、本実施形態に係る駆動手段20は、光変調手段31、32の極性の関係を判定する時、光信号の2つの偏光成分のそれぞれの光位相に予め定められた一定の速度の時間的変動を付与する駆動信号を生成する。ここで、光信号の光位相に一定の速度の時間的変動を付与することは、周波数シフトを付加することと等価である。駆動手段20は、光変調手段31、32の極性の関係を判定する時に、光信号の2つの偏光成分にそれぞれ所定の周波数シフトを付加する駆動信号を生成して光変調手段31、32へ出力する。
【0025】
光変調手段31、32はそれぞれ、入力された光信号の2つの偏光成分を駆動手段20から入力された駆動信号を用いて変調し、2つの偏光成分に位相差を付加した後で合波し、変調合波光を偏光多重手段40へ出力する。
【0026】
偏光多重手段40は、光変調手段31、32から入力された変調合波光を、互いに偏光が直交した状態で多重化し、偏光多重光信号を出力する。偏光多重手段40から出力された偏光多重光信号は送信信号として偏光多重光送信機10から出力されると共に、一部が混合手段50へ出力される。
【0027】
混合手段50は、偏光多重手段40から入力された偏光多重光信号の偏光状態を、互いに直交する偏光状態から各偏光成分が混合した状態に変化させ、混合光信号を極性判定手段60へ出力する。なお、偏波スクランブラ等を用いて、互いに直交する偏光軸を一定の速度で時間的に変動してもよい。
【0028】
極性判定手段60は、混合手段50から入力された混合光信号の強度の周波数分布に基づいて2つの光変調手段31、32の極性の関係を判定する。
【0029】
本実施形態において、極性判定手段60は図示しない分離手段を用いて混合手段50から入力された混合光信号を高周波数成分と低周波数成分とに分離する。極性判定手段60はさらに、高周波数成分の強度と低周波数成分の強度との大小関係に基づいて2つの光変調手段31、32の極性の関係を判定する。例えば、駆動手段20が光信号の2つの偏光成分にそれぞれ同じ符号の周波数シフトを付加する。そして、高周波数成分の強度が低周波数成分の強度より有意に大きい場合、極性判定手段60は、2つの光変調手段31、32の極性が設定通りであると判定する。一方、高周波数成分の強度と低周波数成分の強度が同等の場合、極性判定手段60は、光変調手段31、32のいずれか一方の極性が反転したと判定する。
【0030】
なお、図示しない抽出手段を用いて混合光信号から時間的に変動する成分のみを抽出することもできる。極性判定手段60は、抽出した成分に付与した周波数シフトに対応する成分が含まれているか否か判断し、2つの光変調手段31、32の極性の関係を判定する。この場合、駆動手段20が光信号の2つの偏光成分にそれぞれ異なる符号の周波数シフトを付加する。そして、抽出された成分からビート成分が検出されない場合、極性判定手段60は、2つの光変調手段31、32の極性が設定通りであると判定する。一方、抽出された成分から付加された周波数シフトの偏差に相当するビート成分が検出された場合、極性判定手段60は、光変調手段31、32のいずれか一方の極性が反転したと判定する。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る偏光多重光送信機10は、高価な機器を配置することなく自機内において光直交位相変調器の極性を速やかに検出できる。
【0032】
ここで、偏光多重光送信機10は、極性判定手段60において光変調手段31、32の極性が反転したと判定した場合、駆動手段20を制御して一方の偏光成分を変調するための駆動信号の符号を反転させて、光変調手段31、32の極性を補正することができる。
【0033】
なお、偏光多重光送信機10に、光変調手段のバイアスを制御するバイアス制御手段を配置することもできる。そして、光変調手段31、32の極性が反転した場合、バイアス制御手段が光変調手段31、32のバイアス点を隣接するバイアス点に補正し、光変調手段31、32の極性を補正する。なお、バイアス制御手段は、駆動信号が入力していない時に光変調手段31、32から出力される変調合波光の強度が最小になるように、光変調手段31、32のバイアス点を制御する。
【0034】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る偏光多重光送信機のブロック構成図を
図2に示す。
図2において、偏光多重光送信機100は、偏光多重光生成部200および極性検出部300を備える。
【0035】
先ず、偏光多重光生成部200について説明する。偏光多重光生成部200は、一般的な偏光多重光送信機の機能を担う部分である。偏光多重光生成部200は、レーザ発振器210、駆動信号生成部220、駆動信号送信部230a、230b、バイアス制御部240a、240b、光直交位相変調器250a、250b、偏光回転板260および偏光多重部270を備える。
【0036】
レーザ発振器210は、所定の光周波数の連続光を生成して入力光信号として出力する。レーザ発振器210から出力された連続光は、2分岐されて光直交位相変調器250a、250bにそれぞれ入力する。
【0037】
駆動信号生成部220は、光直交位相変調器250a、250bを駆動するための駆動信号を生成し、生成した駆動信号を駆動信号送信部230a、230bへ出力する。駆動信号生成部220は、1つまたは複数の送信ビット列に基づいて、QPSK等の多値光位相変調方式などの光通信システムにおいて使用する変調方式に応じた駆動信号を生成する。
【0038】
また、駆動信号生成部220は、偏光多重光送信機100の起動時および駆動信号断等が発生した時に、光直交位相変調器250a、250bの極性を判断するためのトレーニング信号を生成し、駆動信号送信部230a、230bへ出力する。ここで、トレーニング信号は、光直交位相変調器250a、250bから出力される変調合波光に、予め定められた周波数の同符号の周波数シフトを付与する複素信号データである。なお、トレーニング信号を用いる代わりに、駆動信号の位相を時間的に変動する所定の速度の高周波クロック信号を光直交位相変調器250a、250bへ入力させることによって、変調合波光の周波数をシフトさせることもできる。
【0039】
本実施形態に係る駆動信号生成部220は、光直交位相変調器250aから出力される変調合波光の周波数を「fc+fx」にシフトさせ、光直交位相変調器250bから出力される変調合波光の周波数を「fc+fy」にシフトさせる、トレーニング信号を生成する。ここで、fcは搬送波周波数である。ここで、付与する周波数シフト量の絶対値は、駆動信号送信部230a、230bのデバイス帯域の範囲内であり、マッハツェンダ型光変調器252a、252bが周波数成分を分離できる大きさであることが望ましい。例えば、高速光通信システム用の駆動信号送信部に対しては数十GHzに設定することが望ましい。
【0040】
さらに、駆動信号生成部220は、光直交位相変調器250a、250bの極性の反転が検出された場合、極性を補正するために、変調光の符号を反転させるためのトレーニング信号を生成して出力する。光直交位相変調器250a、250bの極性の補正方法については後述する。
【0041】
駆動信号送信部230a、230bはそれぞれ、駆動信号生成部220から入力された駆動信号またはトレーニング信号に、光直交位相変調器250a、250bを駆動するのに必要となる送信端デジタル信号処理を行い、光直交位相変調器250a、250bへ出力する。本実施形態において、駆動信号送信部230a、230bは、送信端デジタル信号処理として、前置波長分散付与処理、スペクトル整形処理などの予等化処理をデジタル信号処理によって施す。駆動信号送信部230a、230bはさらに、デジタル信号処理した信号をデジタル・アナログ変換器によってアナログ信号に変換し、光直交位相変調器250a、250bへ出力する。
【0042】
バイアス制御部240a、240bは、光直交位相変調器250a、250bのバイアス点を制御する。本実施形態において、バイアス制御部240a、240bは、駆動信号の入力電圧がゼロの時に、光直交位相変調器250a、250bから出力される変調合波光の光強度が最小になるように、光直交位相変調器250a、250bのバイアス点を制御する。
【0043】
光直交位相変調器250a、250bはそれぞれ、駆動信号送信部230a、230bから入力された駆動信号を用いてレーザ発振器210から入力された入力光信号を光変調し、変調合波光を出力する。さらに、本実施形態において、光直交位相変調器250a、250bはそれぞれ、偏光多重光送信機100の起動時および入力光信号の入力が停止している時に、駆動信号送信部230a、230bから入力されたトレーニング信号を光変調して出力する。
【0044】
光直交位相変調器250a、250bについて詳細に説明する。本実施形態に係る光直交位相変調器250のブロック構成図を
図3に示す。
図3において、光直交位相変調器250は、偏波保持光スプリッタ251、マッハツェンダ型光変調器252a、252bを備える。光直交位相変調器250は、さらに、光スプリッタ253a、253b、光移相器254、光カプラ255、光スプリッタ256および光信号ディテクタ257a、257b、258を備える。
【0045】
レーザ発振器210から光直交位相変調器250へ入力された入力光信号は、偏波保持光スプリッタ251によって偏光状態が維持されたまま2分岐され、それぞれマッハツェンダ型光変調器252a、252bへ出力される。
【0046】
マッハツェンダ型光変調器252a、252bは、偏波保持光スプリッタ251から入力された入力光信号を駆動信号送信部230a、230bから入力された駆動信号を用いて光変調し、光スプリッタ253a、253bへ出力する。また、マッハツェンダ型光変調器252a、252bは、偏光多重光送信機100の起動時および入力光信号の入力が停止している時に、駆動信号送信部230a、230bから入力されたトレーニング信号を光変調し、光スプリッタ253a、253bへ出力する。
【0047】
光スプリッタ253a、253bは、マッハツェンダ型光変調器252a、252bから入力された変調光の一部を光信号ディテクタ257a、257bへ出力すると共に、変調光の大部分を光カプラ255側へ出力する。
【0048】
光移相器254は、光スプリッタ253bと光カプラ255との間に配置され、光スプリッタ253bから入力された変調光の位相をπ/2変化させて光カプラ255へ出力する。以下、マッハツェンダ型光変調器252aから出力された変調光をI相、光移相器254を介してマッハツェンダ型光変調器252bから出力された変調光をQ相と定義する。
【0049】
光カプラ255は、マッハツェンダ型光変調器252aから出力された変調光(I相)と、光移相器254を介してマッハツェンダ型光変調器252bから出力された位相がπ/2変化した変調光(Q相)とを合波して、変調合波光を出力する。
【0050】
光カプラ255から出力された変調合波光は、光スプリッタ256において一部が光信号ディテクタ258に出力されると共に大部分は偏光多重部270側へ出力される。
【0051】
光信号ディテクタ257a、257b、258はそれぞれ、光スプリッタ253a、253b、光スプリッタ256を介してマッハツェンダ型光変調器252a、252b、光カプラ255から出力された変調光および変調合波光の光強度を計測し、計測結果をバイアス制御部240へ出力する。バイアス制御部240は、光信号ディテクタ257a、257b、258から入力された計測結果に基づいて光直交位相変調器250のバイアス点を制御する。
【0052】
図2の説明に戻る。偏光回転板260は、光直交位相変調器250bと偏光多重部270との間に配置される。偏光回転板260は、光直交位相変調器250bから出力された変調合波光の偏光状態が駆動信号送信部230aから出力された変調合波光の偏光状態に対して直交するように、光直交位相変調器250bから出力された変調合波光を偏光して偏光多重部270へ出力する。
【0053】
偏光多重部270は、光直交位相変調器250aから入力された変調合波光と、偏光回転板260を介して光直交位相変調器250bから入力された変調合波光とを多重化し、偏光多重光信号を送信光信号として光伝送路に出力する。
【0054】
次に、極性検出部300について説明する。極性検出部300は、光直交位相変調器250a、250bの極性を検出する部分である。極性検出部300は、光スプリッタ310、偏光板320、マッハツェンダ型光干渉計330、光信号ディテクタ340a、340b、信号検出部350および信号調整部360を備える。
【0055】
光スプリッタ310は、偏光多重部270から出力された偏光多重光信号の一部を偏光板320へ分岐する。
【0056】
偏光板320は、管理された偏光軸を有し、偏光状態が互いに直交する2つの光信号が混合されるように、偏光多重部270から出力された偏光多重光信号の偏光状態を変化させ、混合光信号を出力する。なお、トレーニング信号が印加されている期間だけ偏光多重光生成部200の偏光回転板260の偏光回転をゼロに変更できる場合は偏光板320を省略することができる。
【0057】
マッハツェンダ型光干渉計330は、3dB帯域がITU(International Telecommunication Union)グリッド周波数に一致するように設定され、偏光板320から入力された混合光信号を、搬送波周波数fcを基準に高周波数成分と低周波数成分とに分離してそれぞれ光信号ディテクタ340a、340bへ出力する。
【0058】
ここで、マッハツェンダ型光干渉計330の自由スペクトル領域(FSR: Free Spectral Range)は、少なくとも印加する周波数オフセット量の絶対値の半分より大きい必要がある。FSRが大きいほどマッハツェンダ型干渉計のデバイスサイズの小型化が容易であり、光送信機のサイズを小型化できる。一般的に、数十GHz程度のFSRが望ましく、更にITUグリッドの周波数間隔に合わせることにより管理が容易となる。マッハツェンダ型光干渉計の代わりに、光インターリーバーを用いることもできる。
【0059】
光信号ディテクタ340a、340bはそれぞれ、マッハツェンダ型光干渉計330から入力された高周波数成分と低周波数成分を電気強度信号に変換して信号検出部350へ出力する。
【0060】
信号検出部350は、光信号ディテクタ340aから入力された高周波数成分に対応する電気強度信号と、光信号ディテクタ340bから入力された低周波数成分に対応する電気強度信号と、の大きさを比較する。そして、信号検出部350は、電気強度信号の大小関係から光直交位相変調器250a、250bの極性を判別する。光信号ディテクタ340a、340bから出力された電気強度信号の大小関係に基づいて光直交位相変調器250a、250bの極性が判別できる理由については後述する。
【0061】
信号調整部360は、光直交位相変調器250a、250bの極性の判別結果に基づいて駆動信号送信部230a、230bから出力される駆動信号の符号を制御することによって、光直交位相変調器250a、250bの極性を補正する。極性の補正方法については後述する。
【0062】
次に、高周波数成分の大きさと低周波数成分の大きさを比較することによって光直交位相変調器250a、250bの極性が判別できる理由について説明する。
【0063】
本実施形態に係る駆動信号生成部220は、搬送波周波数がfcの時に、光直交位相変調器250aから出力される変調合波光(X偏光)の周波数を「fc+fx」にシフトさせると共に光直交位相変調器250bから出力される変調合波光(Y偏光)の周波数を「fc+fy」にシフトさせるトレーニング信号を生成して出力する。この場合、「fc+fx」の変調合波光と「fc+fy」の変調合波光とが偏光多重化されて偏光板320に入力する。
【0064】
「fc+fx」の変調合波光と「fc+fy」の変調合波光は、偏光板320において偏光状態が混合され、マッハツェンダ型光干渉計330において搬送波周波数fcを基準に高周波数成分と低周波数成分とに分離される。
【0065】
本実施形態では、偏光多重光信号に対して印加する周波数オフセットを、光周波数シフト(+fx、+fy)がそれぞれマッハツェンダ型干渉計330の高周波成分ポートから出力されるように設定する。従って、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りの場合、高周波数成分の大きさが低周波数成分の大きさと比較して有意に大きくなる。一方、例えば、光直交位相変調器250aの極性が反転している場合、周波数シフトの符号が反転して「+fx」から「−fx」に変化して低周波数成分側に分離されることから、高周波数成分の大きさと低周波数成分の大きさとが同等になる。さらに、光直交位相変調器250a、250bの極性が共に反転した場合、低周波数成分の大きさが高周波数成分の大きさと比較して有意に大きくなる。
【0066】
従って、2個の光ディテクタ340a、340bから出力される電気強度信号の強度の大小関係を光信号検出部350においてモニターすることにより、光直交位相変調器250a、250bの極性の反転を検出できる。
【0067】
具体例として、駆動信号生成部220において偏光多重光信号の各偏光成分に対してそれぞれ+5GHz(=fx=fy)の周波数シフトを付与するトレーニング信号を生成した場合の数値シミュレーション結果を
図4に示す。
図4(a)は、光直交位相変調器250a、250bの極性が共に設定通りの場合、
図4(b)は、光直交位相変調器250a、250bのどちらか一方の極性が反転した場合、
図4(c)は光直交位相変調器250a、250bの極性が共に反転した場合である。なお、
図4の縦軸の単位はパワースペクトル密度(PSD:Power spectral density)である。
図4に示すように、付与した周波数シフト量に対応する周波数成分は70dB程度あるため、信号検出部350において十分検出できる。
【0068】
極性が設定通りの場合、マッハツェンダ型光干渉計330において搬送波周波数fcを基準に高周波数成分と低周波数成分とに分離することにより、高周波数成分の大きさが低周波数成分の大きさと比較して有意に大きくなる。従って、
図4(a)に示すように、偏光板320から出力された混合光信号はfcを基準に+5GHzの周波数成分にピークが現れる。これは、X偏光の信号光とY偏光の信号光のそれぞれに付与した周波数シフト量と一致する。
【0069】
また、光直交位相変調器250a、250bのどちらか一方の極性が反転した場合、高周波数成分の大きさと低周波数成分の大きさが同等となる。従って、
図4(b)に示すように、偏光板320から出力された混合光信号は+5GHzと−5GHzの周波数成分にピークが現れる。
【0070】
さらに、光直交位相変調器250a、250bの極性が共に反転した場合、低周波数成分の大きさが高周波数成分の大きさと比較して有意に大きくなる。従って、偏光多重光信号に対して周波数オフセットの大きさを適切に設定することにより、
図4(c)に示すように、偏光板320から出力された混合光信号は搬送波周波数fcよりも小さい周波数成分にピークが現れる。
【0071】
なお、光ディテクタ340aの電気信号強度が光ディテクタ340bの電気信号強度と比較して大きくなるように印加する周波数シフトを設定する場合、光直交位相変調器250a、250bの極性が共に反転することによって、設定とは反対に光ディテクタ340bの電気信号強度が光ディテクタ340aの電気信号強度よりも大きくなる。
【0072】
以上のように、信号検出部350において、光ディテクタ340aから出力された高周波数成分に対応する電気信号強度と、光ディテクタ340bから出力された低周波数成分に対応する電気信号強度と、の大小関係をモニターすることにより、光直交位相変調器250a、250bの極性反転の有無を検出することができる。
【0073】
なお、偏光板320の偏光軸の管理が不十分である場合を考慮して、偏光板320の設定を時間的に変動させて光ディテクタ340a、340bの電気信号強度の大小関係に変化がないことを確認することが望ましい。
【0074】
次に、光直交位相変調器250a、250bの極性が反転した場合に極性を補正する方法について説明する。光直交位相変調器250a、250bのどちらか一方の極性が反転していると判定された場合(高周波数成分の大きさと低周波数成分の大きさが同等)、信号調整部360は、例えば、駆動信号送信部230aの設定を変更して、光直交位相変調器250aのI相の駆動信号の符号を反転させる。なお、光直交位相変調器250aのQ相の駆動信号の符号を反転させることもできるし、駆動信号送信部230bの設定を変更して、光直交位相変調器250bのI相またはQ相の駆動信号の符号を反転させることもできる。
【0075】
そして、上述の設定変更を行った後に再度、光ディテクタ340a、340bの電気信号強度の大小関係をモニターする。そして、駆動信号生成部220にて付与する周波数シフトの結果と同一の大小関係が実現された場合、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りに補正されたと判断する(光直交位相変調器250aの極性が反転していた)。
【0076】
一方、上述の設定変更を光直交位相変調器250aに対して行った後の再モニターにおいて、駆動信号生成部220にて付与する周波数シフトの結果と反対の大小関係が実現された場合、光直交位相変調器250bの極性が反転していたと分かる。この場合、光直交位相変調器250aに対する設定を元に戻し、光直交位相変調器250bに対して設定変更を行うことにより、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りに補正される。
【0077】
さらに、信号検出部350が光直交位相変調器250a、250bの極性が共に反転している場合(低周波数成分の大きさが高周波数成分の大きさよりも有意に大きい)、信号調整部360は、駆動信号送信部230a、230bの設定を変更して、光直交位相変調器250a、250bのI相の駆動信号の符号を反転させる。なお、I相の代わりにQ相の駆動信号の符号を反転させることもできるし、互いに異なる相の駆動信号の符号を反転させることもできる。
【0078】
次に、本実施形態に係る偏光多重光送信機100の極性検出手順および極性補正手順について説明する。偏光多重光送信機100の極性検出および極性補正の動作フローを
図5に示す。
【0079】
本実施形態に係る偏光多重光送信機100において、偏光多重光送信機100の起動時および駆動信号断等の発生時、駆動信号生成部220は、光直交位相変調器250aから出力される変調合波光の周波数を「fc+fx」にシフトさせ、光直交位相変調器250bから出力される変調合波光の周波数を「fc+fy」にシフトさせるトレーニング信号を生成して駆動信号送信部230a、230bへ出力する(S101)。
【0080】
駆動信号送信部230a、230bは、入力されたトレーニング信号に送信端デジタル信号処理を行い、光直交位相変調器250a、250bへ印加する。光直交位相変調器250a、250bは、印加されたトレーニング信号を光変調して合波し、変調合波光を出力する(S102)。光直交位相変調器250aから出力された変調合波光と、光直交位相変調器250bおよび偏光回転板260から出力された変調合波光とは、偏光多重部270において多重化されて出力される。偏光多重部270から出力された偏光多重光信号の一部が、偏光板320に入力する(S103)。
【0081】
偏光板320は、入力された偏光多重光信号の偏光状態を混合してマッハツェンダ型光干渉計330へ出力し、マッハツェンダ型光干渉計330は、入力された混合光信号を高周波数成分と低周波数成分とに分離してそれぞれ光信号ディテクタ340a、340bへ出力する(S104)。
【0082】
光信号ディテクタ340a、340bは、入力された高周波数成分、低周波数成分を電気強度信号に変換して信号検出部350へ出力する。信号検出部350は、光ディテクタ340a、340bから入力された信号の大小関係をモニターする。
【0083】
光ディテクタ340a、340bからの出力信号の大小関係が、駆動信号生成部220での設定通りであれば(S105のYES)、偏光板320の偏光状態の設定を時間的に変更させる。出力信号の大小関係が維持されている場合(S106のYES)、偏光多重光送信機100は、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りであると判断し、トレーニング信号の生成を終了し、通常の送信動作に復帰する(S107)。
【0084】
一方、光ディテクタ340a、340bの出力信号の大小関係が駆動信号生成部220での設定と異なる場合(S105のNO)や光ディテクタ340a、340bの出力信号の大小関係が時間的に変化した場合(S106のNO)、次のように動作する。つまり、偏光多重光送信機100は、駆動信号送信部230a、230bの設定を変更して光直交位相変調器250a、250bのI相またはQ相の駆動信号の符号を反転させることによって、極性を補正する(S108)。光直交位相変調器250a、250bの極性が適正になった場合、偏光多重光送信機100は通常の送信動作に復帰する。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る偏光多重光送信機100は、駆動信号生成部220において、一方の光直交位相変調器にfxだけ搬送波周波数をシフトさせ、他方の光直交位相変調器にfyだけ搬送波周波数をシフトさせるトレーニング信号を生成する。変調・多重化したトレーニング信号は、偏光板320およびマッハツェンダ型光干渉計330を用いて高周波数成分と低周波数成分とに分離される。そして、偏光多重光送信機100は、高周波数成分の強度と低周波数成分の強度との比較結果に基づいて、光直交位相変調器250a、250bの極性を判定する。
【0086】
偏光多重光送信機100は、光直交位相変調器250a、250bの極性が反転している場合、光直交位相変調器250a、250bのI相またはQ相の駆動信号の符号を反転させることによって極性を補正する。
【0087】
従って、本実施形態に係る偏光多重光送信機100は、光スペクトル・アナライザ等の高価な装置を配置することなく、自機内において光直交位相変調器の極性を速やかに検出できると共に光直交位相変調器の極性を補正することができる。
【0088】
ここで、本実施形態に係る偏光多重光送信機100においては、光直交位相変調器250a、250bの極性が反転している場合に駆動信号の符号を反転させることによって極性を補正したが、これに限定されない。例えば、バイアス制御部240a、240bを制御して、印加するバイアスの値のうち、光直交位相変調器250a、250bのI相またはQ相のいずれか一方のバイアスを隣接のバイアス点に補正することでも、極性を補正できる。
【0089】
この場合、偏光多重光送信機100は、トレーニング信号に予め定められた速度の光位相の時間的変動を付与し、バイアス制御部240a、240bによってバイアス点を確定する。その後、偏光多重光送信機100は、出力された偏光多重光信号の光位相の時間的変動の符号を検知し、光直交位相変調器250a、250bの極性を検出する。偏光多重光送信機100はさらに、検出結果に応じて、光直交位相変調器250a、250bのバイアス点を補正する。
【0090】
ここで、本実施形態では、偏光多重光送信機100の起動時および駆動信号の生成が停止している時に、2つの変調合波光の周波数をシフトさせるトレーニング信号を生成し、該トレーニング信号を光変調・合波等した。しかし、周波数シフトが付与されたトレーニング信号を光変調・合波等する代わりに、レーザ発振器210から入力した入力光信号(実送信データ信号)に周波数シフトを付与することもできる。
【0091】
この場合、駆動信号生成部220は、レーザ発振器210から入力された入力光信号に基づいて生成した駆動信号に、入力光信号の各偏光成分にそれぞれ予め定められた周波数の周波数シフトを付与する機能を付加する。光直交位相変調器250a、250bは、レーザ発振器210から入力された入力光信号を、周波数シフトを付与する機能が付加された駆動信号を用いて光変調する。なお、駆動信号送信部230a、230bが、駆動信号に送信端デジタル信号処理を活用した予等化等を施す時に、入力光信号の各偏光成分に予め定められた周波数の周波数シフトを付与する機能を駆動信号に付加することもできる。
【0092】
具体例として、駆動信号生成部220が、50Gbps偏光多重QPSK信号の各偏光成分にそれぞれ5GHzの周波数シフトを付与する機能を駆動信号に付加した場合の数値シミュレーション結果を
図6に示す。
図6(a)は、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りの場合、
図6(b)は、光直交位相変調器250a、250bのどちらか一方の極性が反転した場合である。
【0093】
図6(a)において、光直交位相変調器250a、250bの極性が設定通りの場合、各偏光成分にそれぞれ高周波方向に5GHzの周波数シフトが付与される。これにより、混合光信号の光スペクトルは、搬送波周波数fcを基準として高周波数成分が大きく、低周波数成分が小さくなる。従って、高周波数成分と低周波数成分とに分離した場合に高周波数成分の大きさが低周波数成分の大きさと比較して大きくなる。
【0094】
図6(b)において、光直交位相変調器250a、250bのどちらか一方の極性が反転した場合、偏光板320からの混合光信号の光スペクトルが搬送波周波数fcに関して対称となる。従って、高周波数成分と低周波数成分とに分離した場合に高周波数成分の大きさと低周波数成分の大きさが同等となる。
【0095】
従って、レーザ発振器210から入力された入力光信号(実送信データ信号)に対応する駆動信号に周波数シフトを付与する機能を付加することにより、通常の送信動作において、光直交位相変調器250a、250bの極性を判定することができる。なお、光直交位相変調器250a、250bの極性の反転を検出した場合は、前述の実施形態で説明した極性の補正方法を適用することができる。
【0096】
ここで、駆動信号生成部220において、データ変調を施した駆動信号に周波数シフトを付与する機能を付加して光直交位相変調器250a、250bを駆動する場合、通常の送信動作への切り替えを高速に行うことができる。その理由は、送信データに切り替えた際のバイアス制御部240a、240bの動作点のずれが微小だからである。
【0097】
また、実送信データ信号に基づいて生成した駆動信号に、定期的に上述の周波数シフトを付与する機能を付加することにより、光直交位相変調器250a、250bの極性が動的に変化する場合でも、極性の反転を検知して極性を補正することができる。
【0098】
本実施形態に係る偏光多重光送信機100は、単一偏光光通信システムにおける光直交位相変調器の極性の反転の検出に適用することもできる。また、任意の光位相変調方式に対応可能であり、光直交位相変調器以外の各光位相変調方式に特化した光送信機の構成に適用することもできる。
【0099】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る偏光多重光送信機のブロック構成図を
図7に示す。
図7において、本実施形態に係る偏光多重光送信機100Bは、偏光多重光生成部200Bおよび極性検出部300Bを備える。
【0100】
偏光多重光生成部200Bは、レーザ発振器210B、駆動信号生成部220B、駆動信号送信部230aB、230bB、バイアス制御部240aB、240bB、光直交位相変調器250aB、250bB、偏光回転板260Bおよび偏光多重部270Bを備える。極性検出部300Bは、光スプリッタ310B、偏光板320B、光信号ディテクタ370B、ビート信号分離部380B、信号検出部350Bおよび信号調整部360Bを備える。以下、第2の実施形態で説明した
図2の偏光多重光送信機100と異なる部分を中心に説明する。
【0101】
本実施形態に係る駆動信号生成部220Bは、光直交位相変調器250aB、250bBの極性を判断する場合、互いに異なる周波数の周波数シフトが付与された変調光を光直交位相変調器250aB、250bBから出力させるトレーニング信号を生成する。
【0102】
ここで、付与する周波数シフト量の差分は、光信号ディテクタ370Bのデバイス帯域内に設定することが望ましい。例えば、光通信システム用の光ディテクタに対しては数十〜数百MHzに設定することが望ましい。また、付与する周波数シフト量は、駆動信号送信部230aB、230bBのデバイス帯域の範囲内であり、かつ、光信号ディテクタ370Bのデバイス帯域の範囲外であることが望ましい。例えば、高速光通信システム用の駆動信号送信部に対しては数GHzに設定することが望ましい。なお、付与する周波数シフト量は、光信号ディテクタ370Bの経年劣化による周波数特性の時間的変化を考慮し、光直交位相変調器250aB、250bBの極性を検出する度に変更することができる。駆動信号生成部220Bは、駆動信号の位相が時間的変動する異なる速度の高周波クロック信号を光直交位相変調器250aB、250bBに入力することによっても、周波数シフトを変調光に付与することができる。
【0103】
光スプリッタ310Bは、偏光多重部270Bから出力された偏光多重光信号の一部を、偏光軸が管理された偏光板320Bへ分岐する。偏光板320Bは、互いに直交する偏光状態の光信号が混合するように偏光多重光信号の偏光状態を変化させて光信号ディテクタ370Bへ出力する。偏光板320Bから出力された混合光信号には、偏光多重信号の各偏光成分の間に付与された光位相の時間的変動の速度の差に応じた、光位相が時間的に変動する信号成分が含まれる。
【0104】
光信号ディテクタ370Bは、混合光信号の光強度を電気強度信号に変換してビート信号分離部380Bへ出力し、ビート信号分離部380Bは、電気強度信号から時間的に変動する成分のみを取り出して信号検出部350Bへ出力する。信号検出部350Bは、ビート信号分離部380Bからの出力に、駆動信号生成部220Bにおいて付与した周波数の周波数シフトに相当するビート成分が含まれているか否か調査し、調査結果に基づいて光直交位相変調器250aB、250bBの極性を判別する。
【0105】
次に、互いに直交する偏光状態の2つの連続光に周波数シフトを付与し、光信号ディテクタ370Bから出力された信号に付与した周波数シフトに対応するビート成分が含まれているか調査することで、極性の関係を判別できる理由について説明する。
【0106】
駆動信号生成部220Bは、搬送波周波数がfcの時に、X偏光の周波数を「fc+fx」にシフトさせると共にY偏光の周波数を「fc+fy」にシフトさせるトレーニング信号を生成して出力する。この時に光直交位相変調器250aB、250bBから出力される変調光は式(1)で与えられる。ここで、Δθは、X偏光の光信号の位相とY偏光の光信号の位相との相対位相である。
【0107】
一方、偏光板320において偏光状態を混合した場合、光信号ディテクタ370Bから出力される信号は式(2)で与えられる。
【0108】
ここで、EoxおよびEoyはそれぞれ、X偏光の光信号とY偏光の光信号の複素振幅である。式(2)に示すように、光信号ディテクタ370Bからの出力には、駆動信号生成部220BによってX偏光の光信号に付与された周波数シフト量とY偏光の光信号に付与された周波数シフト量との差分の周波数のビート信号が含まれる。
【0109】
光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合、光信号ディテクタ370Bにおいて観測されるビート信号の周波数は2つの周波数シフト量の和になる。つまり、ビート信号の周波数は、駆動信号生成部220BにてX偏光の光信号に対して付与した周波数シフト量とY偏光の光信号に対して付与した周波数シフト量との和になる。
【0110】
従って、信号検出部350Bによって、周波数シフト量の和と同一位置に周波数ピークが検出された場合、光直交位相変調器250aB、250bBのどちらか一方の極性が反転していると分かる。
【0111】
具体例として、X偏光の光信号に−1.4GHzの周波数シフトを付与し、Y偏光の光信号に+1.5GHzの周波数シフトを付与するように、駆動信号生成部220Bにおいてトレーニング信号を生成した場合の数値シミュレーション結果を
図8に示す。
図8(a)は光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一の場合、
図8(b)は光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合である。なお、光信号ディテクタ370Bのデバイス帯域を1GHzとした。
【0112】
図8(a)において、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一である場合、光信号ディテクタ370Bからの出力信号の信号スペクトルに2.9GHzの小さい周波数ピークが現れる。これは、X偏光の光信号およびY偏光の光信号にそれぞれ付与した周波数シフトの差分と一致する。
図8(a)の周波数ピークは光信号ディテクタ370Bにおいてビート信号として検出されない。
【0113】
一方、
図8(b)において、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合、光信号ディテクタ370Bの出力信号の信号スペクトルに100MHzの鋭い周波数ピークが現れる。これは、X偏光の光信号およびY偏光の光信号に付与した周波数シフトの和と一致する。この周波数ピーク(約115dB)は、実送信データに対応する信号の強度(65dB程度)と比較して50dB程度大きいため、光信号ディテクタ370Bによりビート信号として検出される。
【0114】
従って、光信号ディテクタ370Bからの出力信号の信号スペクトルに、付与した周波数シフトに対応するビート信号が含まれているか否かを調査することによって、光直交位相変調器250aB、250bBが互いに同一の極性を有するか否か判別できる。
【0115】
なお、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一である場合にビート信号が検出され、直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合にビート信号が検出されないように、周波数シフト量を設定することもできる。
【0116】
そして、本実施形態に係る偏光多重光送信機100Bは、信号検出部350Bが光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なると判定した場合、第2の実施形態と同様に動作する。すなわち、偏光多重光送信機100Bは、光直交位相変調器250aBのI相の駆動信号の符号を反転させるように、駆動信号送信部230aBの設定を変更する。なお、光直交位相変調器250aBのQ相の駆動信号の符号を反転させることもできるし、駆動信号送信部230bBの設定を変更して、光直交位相変調器250bBのI相またはQ相の駆動信号の符号を反転させることもできる。
【0117】
さらに、駆動信号送信部230aB、230bBの設定を変更する代わりに次のように動作することもできる。すなわち、偏光多重光送信機100Bは、バイアス制御部240aB、240bBを制御して、印加するバイアスの値のうち、光直交位相変調器250aB、250bBのI相またはQ相のいずれかのバイアスを隣接のバイアス点に補正する。
【0118】
次に、本実施形態に係る偏光多重光送信機100Bの極性検出手順および極性補正手順について説明する。偏光多重光送信機100Bの極性検出および極性補正の動作フローを
図9に示す。
【0119】
図9において、駆動信号生成部220Bは、起動時および信号断発生時等に、それぞれ互いに異なる周波数の周波数シフトを変調光に付与するように光直交位相変調器250aB、250bBを駆動するトレーニング信号を生成する。駆動信号生成部220Bは、生成したトレーニング信号を駆動信号送信部230aB、230bBへ出力する(S201)。
【0120】
駆動信号送信部230aB、230bBは、入力されたトレーニング信号に送信端デジタル信号処理を行い、光直交位相変調器250aB、250bBへ印加する。光直交位相変調器250aB、250bBに入力されたトレーニング信号は、光変調および合波され(S202)、さらに偏光多重部270において多重化された後、一部が偏光板320Bに入力される(S203)。
【0121】
偏光多重光信号は、偏光板320Bにおいて偏光状態が混合され、光信号ディテクタ370Bにおいて電気強度信号に変換された後、ビート信号分離部380Bにおいて時間的に変動する成分のみが取り出されて信号検出部350Bへ出力される(S204)。
【0122】
信号検出部350Bは、駆動信号生成部220Bによって付与した周波数シフト量の和に相当する周波数位置のビート信号が入力された電気強度信号から検出されるか否か調査し、調査結果に基づいて光直交位相変調器250aB、250bBの極性を判別する(S205)。
【0123】
所定の周波数位置においてビート信号が検出されなかった場合(S205のNO)、信号検出部350Bはさらに、偏光板320Bの偏光状態の設定を時間的に変更させてビート信号の周波数成分が検出されるか否か確認する(S206)。偏光板320の偏光状態の設定を変化させても変化しない場合、すなわち、ビート信号の周波数成分が検出されない場合(S206のNO)、偏光多重光送信機100Bは、光直交位相変調器250a、250bの極性が同一であると判断する。この場合、偏光多重光送信機100Bは、トレーニング信号の生成を終了して通常の送信動作に復帰する(S207)。
【0124】
一方、所定の周波数位置においてビート信号が検出された場合(S205のYES)、偏光多重光送信機100Bは、光直交位相変調器250a、250bの極性が同一ではないと判断する。偏光板320Bの偏光状態の設定を変更することによって時間的に変化した場合(S206のYES)も同様である。いずれの場合も、信号調整部360Bによって、一方の駆動信号の符号を反転させて極性を補正する(S208)。そして、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一になった場合、偏光多重光送信機100Bは、通常の送信動作に復帰する。
【0125】
以上のように、本実施形態に係る偏光多重光送信機100Bは、駆動信号生成部220Bにおいて、それぞれ互いに異なる周波数の周波数シフトを変調光に付与するように光直交位相変調器250aB、250bBを駆動するトレーニング信号を生成する。一方、信号検出部350Bにおいて、トレーニング信号を変調・多重等して得られた電気強度信号に、駆動信号生成部220Bが付与した光位相の時間的変動の速度の差に相当する周波数を有するビート信号が含まれるかどうか調査する。そして、偏光多重光送信機100Bは、信号検出部350Bの調査結果に基づいて光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一か否か判別する。
【0126】
従って、本実施形態に係る偏光多重光送信機100Bは、光スペクトル・アナライザ等の高価な装置を配置することなく自機内において光直交位相変調器250aB、250bBの極性を速やかに検出できると共に光直交位相変調器250aB、250bBの極性を補正することができる。
【0127】
なお、本実施形態では、互いに異なる周波数の周波数シフトを変調光に付与するように光直交位相変調器250aB、250bBを駆動するトレーニング信号を生成し、このトレーニング信号を光変調・合波等したが、これに限定されない。
【0128】
駆動信号生成部220Bは、通常の送信動作状態において、レーザ発振器210Bから入力された光信号に基づいて生成した駆動信号に下記の機能を付加することもできる。すなわち、互いに直交する偏光状態の2つの光信号に、各偏光成分間で同一の送信データ信号に基づいた変調信号に周波数が異なる周波数シフトをそれぞれ付与させる機能を付加する。特に、非特許文献1に記されているように、偏光多重光通信システムにおいて、光ファイバ伝送路中の非線形光学効果による伝送品質の劣化を低減するために、互いに直交する偏光状態の2つの独立した光信号に対して、周波数シフトを付与する場合が該当する。
【0129】
この場合も、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一である場合に駆動信号生成部220BにてX偏光の光信号に付与した周波数シフト量とY偏光の光信号に付与した周波数シフト量との差分に相当する周波数のビート信号が発生する。
【0130】
一方、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合は、観測されるビート信号の周波数は駆動信号生成部220BにてX偏光の光信号に付与した周波数シフト量とY偏光の光信号に付与した周波数シフト量の和となる。
【0131】
駆動信号生成部220Bの生成する具体的な駆動信号に対する数値シミュレーション結果を
図10に示す。この駆動信号は、X偏光の光信号に対して通常のデータ変調に加えて−1.4GHzの周波数シフトを付与し、Y偏光の光信号に同一の送信データに基づくデータ変調に加えて+1.5GHzの周波数シフトを付与すると仮定した。
図10(a)は、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一の場合、
図10(b)は、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合である。
【0132】
図10(a)において、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が同一の場合、信号ディテクタ370Bの出力信号の信号スペクトルに2.9GHzの小さい周波数ピークが出現する。これは、X偏光の光信号とY偏光の光信号のそれぞれに付与した周波数シフトの差分と一致する。
【0133】
一方、
図10(b)において、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なる場合、光信号ディテクタ370Bの出力信号の信号スペクトルに100MHzの周波数ピークが現れる。これは、X偏光の光信号とY偏光の光信号のそれぞれに付与した周波数シフトの和と一致する。
【0134】
従って、駆動信号生成部220Bが駆動信号に所定の周波数シフトを付与する機能を付加することにより、レーザ発振器210Bから入力した入力光信号(実送信データ信号)を用いて、光直交位相変調器250aB、250bBの極性の関係を検出できる。なお、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が互いに異なっている場合、第2の実施形態で説明した極性の補正方法を適用することができる。
【0135】
以上のように、実送信データ信号に基づいて生成した駆動信号に周波数シフトを付与する機能を付加することでも、光直交位相変調器250aB、250bBの極性の関係を判別できる。
【0136】
なお、駆動信号生成部220Bにおいて、データ変調を施した駆動信号に周波数シフトを付与する機能を付加して光直交位相変調器250aB、250bBを駆動する場合、通常の送信動作への切り替えを高速に行うことができる。これは、送信データに切り替えた際のバイアス制御部240aB、240bBの動作点のずれが微小だからである。
【0137】
また、実送信データ信号に基づいて生成した駆動信号に、定期的に上述の周波数シフトを付与する機能を付加することにより、光直交位相変調器250aB、250bBの極性が動的に変化する場合でも、極性の反転を検知して極性を補正することができる。
【0138】
本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【0139】
本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。また、本願発明は、2012年11月27日に出願された日本出願特願2012−258591を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。