特許第6222120号(P6222120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222120
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】静電潜像現像用二成分現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20171023BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20171023BHJP
   G03G 9/107 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G03G9/10 351
   G03G9/08 331
   G03G9/10 321
【請求項の数】6
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-8022(P2015-8022)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-133618(P2016-133618A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 公亮
(72)【発明者】
【氏名】内野 哲
(72)【発明者】
【氏名】小原 慎也
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−205784(JP,A)
【文献】 特開2011−150150(JP,A)
【文献】 特開2009−109814(JP,A)
【文献】 特開2008−077002(JP,A)
【文献】 特開2012−003050(JP,A)
【文献】 特開2007−279588(JP,A)
【文献】 特開2007−264136(JP,A)
【文献】 特開2011−070217(JP,A)
【文献】 特開2010−061099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂を含有するトナー母体粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子と、
芯材粒子表面を被覆用樹脂で被覆してなるキャリア粒子と、
からなる静電潜像現像用二成分現像剤であって、
前記トナー粒子の体積平均粒径が3μm以上5μm以下であり、
前記芯材粒子の空隙率が8%以下であり、
前記キャリア粒子の体積平均粒径が15μm以上30μm以下であり、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下であり、真比重が4.25g/cm以上5g/cm以下であり、かつ形状係数SF−1が105以上125以下である、静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項2】
前記結着樹脂が少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含有する、請求項1に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項3】
前記被覆用樹脂が脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含む、請求項1または2に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項4】
前記トナー粒子の平均円形度が0.970以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項5】
前記トナー粒子の体積平均粒径が3.5μm以上4.5μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【請求項6】
前記芯材粒子がマンガンおよびマグネシウムの少なくとも一方を含むフェライト粒子である、請求項1〜のいずれか1項に記載の静電潜像現像用二成分現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷の普及に伴い、高画質化や高い安定性が益々要求されるようになってきている。また、静電潜像現像用トナーの分野では、省エネルギーの観点からトナーを構成する結着樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げ、定着に必要なエネルギーを低減する方法や、紙上のトナー量を減らし定着に必要なエネルギーを低減させる方法が検討されている。このうち、前者は結晶性樹脂を用いることで、融点よりも高い温度で急激に溶融粘度を下げることが可能となり、定着エネルギーの省エネルギー化を図ることができる。また、後者は、トナーを小粒径化することでトナー粒子の表面積が増加し、少ないトナー量で紙を隠ぺいすることが可能となり、画像濃度を低下させず定着に必要なエネルギーを低減することが可能となる。また、トナーの小粒径化は微細な潜像の再現性も良好であり、省エネルギー化と高画質化の両立が可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1〜5では、3〜10μm程度の小粒径トナーとキャリアとを組み合わせた二成分現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181486号公報
【特許文献2】特開2004−348029号公報
【特許文献3】国際公開第10/016605号
【特許文献4】特開2009−169443号公報
【特許文献5】特開2009−192722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、グラフィックなどの出力需要が高まり、高画像濃度印字の出力が増えてきている。しかしながら、特許文献1〜5に開示された技術では、トナーの帯電量の立ち上がりが不十分であり、高画像濃度での連続印字において画質が低下するという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、トナー粒子の帯電量の立ち上がりを向上させ、特に高画像濃度での連続印字において高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用二成分現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、体積平均粒径、芯材粒子の空隙率、体積抵抗率、真比重、および形状係数が特定の範囲にあるキャリア粒子と、小粒径のトナー粒子とを組み合わせた二成分現像剤により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
ずなわち、本発明は、少なくとも結着樹脂を含有するトナー母体粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子と、芯材粒子表面を被覆用樹脂で被覆してなるキャリア粒子と、からなる静電潜像現像用二成分現像剤であって、前記トナー粒子の体積平均粒径が3μm以上5μm以下であり、前記芯材粒子の空隙率が8%以下であり、前記キャリア粒子の体積平均粒径が15μm以上30μm以下であり、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下であり、真比重が4.25g/cm以上5g/cm以下であり、かつ形状係数SF−1が105以上125以下である、静電潜像現像用二成分現像剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナー粒子の帯電量の立ち上がりを向上させ、特に高画像濃度での連続印字において高画質な画像を形成することができる、静電潜像現像用二成分現像剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0011】
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で測定する。
【0012】
本発明の静電潜像現像用二成分現像剤(以下、「静電潜像現像用二成分現像剤」を、単に「二成分現像剤」とも称する)は、少なくとも結着樹脂を含有するトナー母体粒子の表面に外添剤が付着したトナー粒子と、芯材粒子表面を被覆用樹脂で被覆してなるキャリア粒子と、からなる。そして、前記トナー粒子の体積平均粒径が3μm以上5μm以下であり、前記芯材粒子の空隙率が8%以下であり、前記キャリア粒子の体積平均粒径が15μm以上30μm以下であり、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下であり、真比重が4.25g/cm以上5g/cm以下であり、かつ形状係数SF−1が105以上125以下である。
【0013】
上記のような構成を有する本発明の二成分現像剤は、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが向上し、トナー粒子が安定した帯電性を維持することができ、特に高画像濃度での連続印字において、濃度ムラやかぶりが低減され、ドット再現性に優れ、長期に高画質な画像を得ることができる。また、スリーブメモリも低減することができる。さらに、HH(高温高湿)環境下やLL(低温低湿)環境下であっても、トナーの帯電量の立ち上がりが向上し、長期に高画質な画像を得ることができる。
【0014】
以下、本発明の二成分現像剤の構成について、より詳細に説明する。
【0015】
[キャリア]
本発明に係るキャリア粒子は、芯材粒子表面を被覆用樹脂で被覆されてなるものである。該キャリア粒子には、必要に応じて抵抗調整剤などの内添剤が含有されていてもよい。
【0016】
以下、芯材粒子および被覆用樹脂について説明する。
【0017】
<芯材粒子>
芯材粒子は、例えば、鉄粉などの金属粉の他、各種フェライトなどから構成される。これらの中では、残留磁化が低く、好適な磁気特性が得られるという観点から、フェライトが好ましい。
【0018】
フェライトとしては、銅、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの重金属を含有するフェライトやアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する軽金属フェライトが好ましい。
【0019】
フェライトは、一般式:(MO)(Feで表される化合物であり、フェライトを構成するFeのモル比yを30〜95モル%とすることが好ましい。モル比yがかような範囲であるフェライトは、所望の磁化を得やすいので、キャリア粒子同士の付着が起こりにくいキャリア粒子を作製できるなどのメリットを有する。一般式中のMとしては、例えば、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)などの金属が採用されうる。これら金属原子は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。中でも、残留磁化が低く好適な磁気特性が得られるという観点から、マンガン、マグネシウム、ストロンチウム、リチウム、銅、亜鉛が好ましく、マンガン、マグネシウムがより好ましい。すなわち、本発明に係る芯材粒子は、マンガンおよびマグネシウムの少なくとも一方を含むフェライト粒子であることが好ましい。
【0020】
芯材粒子は市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。合成する場合は、例えば、下記のような方法が挙げられる。
【0021】
まず、原材料を適量秤量した後、湿式メディアミル、ボールミルまたは振動ミル等で好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1〜20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化した後、好ましくは700〜1200℃の温度で、好ましくは0.5〜5時間仮焼成する。
【0022】
加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化してもよい。仮焼成後、さらにボールミルまたは振動ミル等で粉砕した後、水、および必要に応じ分散剤、ポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー等を添加して粘度調整をして造粒して、本焼成が行われる。本焼成の温度は、好ましくは1000〜1500℃の温度であり、本焼成の時間は、好ましくは1〜24時間である。仮焼成後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0023】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるために、使用するメディアに1cm以下の粒径を有する微細なビーズを使用することが好ましい。また、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0024】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級法、メッシュ濾過法、沈降法などを用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0025】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300〜700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。酸化被膜の厚さを前記範囲とすることで、酸化被膜層の効果が得られ、高抵抗になりすぎず所望の特性を得やすく好ましい。必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行ってもよい。また、分級の後、さらに磁力選鉱により低磁力品を分別してもよい。
【0026】
後述の芯材粒子の空隙率を制御する方法としては、配合する原料種の選択、原料の添加割合、仮焼の有無、仮焼温度、仮焼時間、スプレードライヤーによる造粒時のバインダー量、水分量、乾燥度合い、焼成方法、焼成温度、焼成時間、解砕方法、水素ガスによる還元等、様々な方法が挙げられる。また、キャリア粒子の真比重を制御する方法としては、配合する原料種の選択、原料の添加割合等が挙げられる。これらのコントロール方法は特に限定されるものではないが、その一例を以下に示す。
【0027】
すなわち、配合する原料種として、酸化物を用いたほうが、水酸化物や炭酸化物を用いた場合に比べて、芯材粒子の空隙率が低くなりやすい。また、原料として重金属であるCu、Ni、Zn等の酸化物に比べて、Mn、Mg、Ca、Sr、Li、Ti、Al、Si、Zr、Bi等の酸化物を使用した方が、キャリア粒子の真比重が低くなりやすい。MnとMgとを含むフェライト粒子であれば、MnとMgとの添加量比を制御することによっても、真比重を制御することができる。
【0028】
仮焼成を行うと空隙率は低くなり、仮焼成温度の高い方が、空隙率はより低くなりやすい。
【0029】
スプレードライヤーによる造粒においては、原料をスラリー化する際の水分量を少なくした方が、空隙が少なくなり、空隙率が低くなりやすい。本焼成時には焼成温度を高くした方が、空隙率が低くなりやすい。
【0030】
所望の芯材粒子の空隙率、およびキャリア粒子の真比重を得るために、これらのコントロール方法を、単独または組み合わせて使用することができる。しかし、各コントロール因子が、各特性に与える影響度合いは様々であるため、それらを組み合わせて使用することにより、本発明で規定される空隙率および真密度の特性を有する芯材粒子を得ることができる。
【0031】
本発明に係る芯材粒子の空隙率は、8%以下である。空隙率が8%を超える場合、キャリアの質量が小さくなり、キャリア粒子のトナー粒子に対する衝突エネルギーが小さくなるため、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。該空隙率は、好ましくは5%以下である。該空隙率の下限値は、通常0%である。なお、芯材粒子の空隙率は、具体的には、以下の方法により測定することができる。
【0032】
≪測定方法≫
芯材粒子の空隙率は、芯材粒子の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した後、得られた画像を画像解析ソフト(Image−Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて解析して求める。具体的には、芯材粒子の表面の凹凸を包絡する線で結んだ粒子面積(A)を測定し、次いで、その芯材粒子画面に含まれる芯材部分の面積(B)を測定する。ここで、下記式(1)を用いて、空隙率を算出する。
【0033】
【数1】
【0034】
この式(1)によって算出される空隙率は、芯材粒子表面から連続する空隙と、芯材内部に独立して存在する空隙とをあわせた空隙率となる。
【0035】
より具体的には、芯材粒子10個の中央付近の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像解析してその平均から空隙率を求めることができる。
【0036】
芯材粒子の粒径としては、体積基準のメジアン径(D50)で13〜30μmであることが好ましい。芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)が30μm以下であれば、画質を低下させることなく、優れた画質を提供できる点で優れている。芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)が13μm以上であれば、キャリア粒子同士の付着の発生を防止することができ、また、かぶり等の少ない優れた画質を提供することができる点で優れている。
【0037】
本発明に係る芯材粒子は、その飽和磁化が30〜80Am/kgの範囲内であるものが好ましく、残留磁化が5.0Am/kg以下であるものが好ましい。このような磁気特性を有する芯材粒子を用いることにより、キャリア粒子が部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に二成分現像剤がより均一に分散されて、濃度むらがなく、均一で、きめの細かいトナー画像を形成することが可能になる。
【0038】
なお、芯材粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、湿式分散機を備えてなるレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパティック社製)により測定することができ、芯材粒子の飽和磁化は、例えば、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電機株式会社製)により測定することができる。
【0039】
<被覆用樹脂>
被覆用樹脂に含まれる構成単位としては、疎水性の高い脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含むことが好ましい。脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含むことにより、キャリア粒子の水分吸着量が低減され、帯電性の環境差が低減され、特に高温高湿環境下における帯電量の低下が抑制される。また、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含む樹脂は、適度な機械的強度を有し、被覆材として適度に摩耗されることにより、キャリア粒子表面がリフレッシュされるという利点も有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
【0040】
脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、具体的には、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルフェニル、アクリル酸シクロドデシル、アクリル酸アダマンチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸シクロオクチルなどが挙げられる。これらの中では、機械的強度および帯電量の環境安定性等の観点から、炭素数5〜8のシクロアルキル基を有するものが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシルがより好ましい。
【0041】
被覆用樹脂を構成する単量体として、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物以外の他の単量体を用いてもよい。他の単量体の例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル化合物;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル化合物;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン化合物;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これら他の単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0042】
これら他の単量体の中でも、機械的強度および帯電量の環境安定性等の観点から、スチレン、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0043】
被覆用樹脂中の脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位と他の単量体由来の構成単位との比は、10:90〜100:0であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましい。
【0044】
(被覆用樹脂の製造方法)
被覆用樹脂の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の重合法を適宜利用することができるものであり、例えば、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、溶液重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法等が挙げられる。特に、粒子径の制御の観点から、乳化重合法で合成することが好ましい。
【0045】
かかる乳化重合法で用いる上記単量体以外の重合開始剤、界面活性剤、さらに必要に応じて用いる連鎖移動剤等や、重合温度等の重合条件に関しては、特に制限されるものではなく、従来公知の重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等を用いることができ、重合温度等の重合条件も従来公知の重合条件を適宜利用して調整することができる。具体的には、後述する実施例に記載の各種添加剤を用いて乳化重合するのが望ましい。即ち、アニオン系界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム、溶媒として水(イオン交換水)、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)をそれぞれ用いて上記単量体を乳化重合するのが望ましい。
【0046】
≪被覆用樹脂の重量平均分子量≫
被覆用樹脂(上記単量体を重合した重合体)の重量平均分子量は、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲内であれば特に制限されるものではないが、好ましくは20万〜80万、より好ましくは30万〜70万の範囲である。被覆用樹脂の重量平均分子量が20万以上であれば、芯材粒子の表面に被覆用樹脂から形成される樹脂被覆層の減耗が促進され過ぎることもなく、キャリア粒子の付着を引き起こし難い点で優れている。被覆用樹脂の重量平均分子量が80万以下であれば、トナー粒子からキャリア粒子表面への外添剤の移行による帯電量低下を引き起こすことなく、良好な帯電量を長期間保持することができる。
【0047】
被覆用樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、より具体的には、下記の方法で測定される。
【0048】
装置「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn SuperHZ−L+TSKgel SuperHZM−M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.35ml/minで流す。測定試料を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを、上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する重量平均分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いる。
【0049】
なお、被覆用樹脂から形成される樹脂被覆層には、キャリア粒子の体積抵抗率を調整する目的で、カーボンブラック等の導電剤が含有されていてもよい。
【0050】
(キャリア粒子の製造方法)
芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆した本発明に係るキャリア粒子を形成するための具体的な製造方法としては、湿式被覆法および乾式被覆法が挙げられる。以下に各方法について詳細に述べる。
【0051】
<湿式被覆法>
湿式被覆法としては、
(1)流動層式スプレー被覆法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層(または流動床)を用いて芯材粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥することで、芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆したキャリア粒子を作製する方法;
(2)浸漬式被覆法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥することで、芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆したキャリア粒子を作製する方法;
(3)重合法
被覆用樹脂形成用の反応性化合物(被覆用樹脂を合成するための単量体の他に、重合開始剤などを含む)を溶剤に溶解した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い、樹脂被覆層を形成することで、芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆したキャリア粒子を作製する方法;
等を挙げることができる。
【0052】
<乾式被覆法>
乾式被覆法としては、
(1)被覆しようとする芯材粒子の表面に被覆用樹脂を被着させ、その後機械的衝撃力を加えて、被覆しようとする芯材粒子表面に被着した被覆用樹脂を溶融または軟化させて固着させることで、芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆したキャリア粒子を作製する方法;等を挙げることができる。
【0053】
上記(1)の乾式被覆法として、詳しくは、芯材粒子および被覆用樹脂を非加熱下、または加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速攪拌混合機を用い、高速撹拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、芯材粒子の表面に溶融あるいは軟化させて固着して樹脂被覆層を形成することで、芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆した樹脂被覆層を有するキャリア粒子を作製する方法(方式)を用いることができる。加熱する場合には、60〜130℃が好ましい。加熱温度が過大になると、キャリア粒子同士の凝集が発生しやすくなるためである。即ち、前記範囲内の温度で加熱すると、キャリア粒子同士の凝集が発生せず、芯材粒子の表面に被覆用樹脂粒子を固着して、均一な層状の樹脂被覆層を形成することができる。
【0054】
本発明における芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆したキャリア粒子を形成する方法としては、溶剤を用いず、環境負荷が小さいこと、また芯材粒子表面に均一に被覆用樹脂を被覆できるという観点から、上記した乾式被覆法で行うことが特に好ましい。この乾式被覆法は、少なくとも以下の工程から構成されている。
【0055】
第1工程:芯材粒子、被覆用樹脂、および必要に応じて添加する添加剤を適量配合した材料を、室温(20〜30℃)で混合(機械的に攪拌)し、個々の芯材粒子の表面に被覆用樹脂と必要に応じ添加した添加剤とを均一な層状に付着させる工程;
第2工程:その後、機械的衝撃や熱を加えて芯材粒子の表面に付着した被覆用樹脂を溶融または軟化させて固着し、樹脂被覆層を形成する工程;
第3工程:次いで室温(20〜30℃)まで冷却する工程。
【0056】
また、必要に応じて、第1〜第3工程を複数回繰り返し、所望の厚さの樹脂被覆層を形成することも可能である。
【0057】
上記第1工程で配合する被覆用樹脂の添加量は、芯材粒子100質量部に対して、1〜7質量部が好ましい。被覆用樹脂粒子の添加量が、芯材粒子100質量部に対して1質量部以上であれば、芯材粒子を被覆用樹脂で完全に被覆することができる点で好ましい。また、被覆用樹脂の添加量が、芯材粒子100質量部に対して7質量部以下であれば、凝集粒子の発生を抑制でき、芯材粒子に均一な樹脂被覆層を形成できる点で好ましい。
【0058】
また、上記第2工程としては、被覆用樹脂が付着した芯材粒子を被覆用樹脂のガラス転移温度以上に加熱しながら機械的衝撃力を加え、芯材粒子の表面に被覆用樹脂を延展して固着して被覆し、樹脂被覆層を形成する工程とするのが好ましい。
【0059】
上記第2工程で機械的衝撃や熱を加える装置としては、例えば、ターボミル、ピンミル、クリプトロン等のローターとライナーとを有する摩砕機、水平攪拌羽根付き高速攪拌混合機等を挙げることができる。これらの中でも、水平攪拌羽根付き高速攪拌混合機が良好に樹脂被覆層を形成できるため好ましい。
【0060】
上記第2工程で機械的衝撃や熱を加える時間は、装置によっても異なるが、通常、10〜100分である。かような範囲内の時間で機械的衝撃や熱を加えると、キャリア粒子同士の凝集が発生し難く、芯材粒子の表面に被覆用樹脂をより均一に固着させることができ、良好な樹脂被覆層を形成することができる。
【0061】
水平攪拌羽根付き高速攪拌混合機を用いる場合、水平攪拌羽根の周速を3〜20m/secとすることが好ましく、4〜15m/secとすることがより好ましい。水平攪拌羽根の周速が3m/sec以上であれば、ブロッキングを発生することなく良好に芯材粒子の表面に被覆用樹脂を固着させることができ、良好な樹脂被覆層を形成することができる。また、水平攪拌羽根の周速が20m/sec以下であれば、樹脂被覆層の破壊やキャリア粒子を構成する芯材粒子自体の破壊を生じさせることなく、芯材粒子の表面に被覆用樹脂を固着させることができ、良好な樹脂被覆層を形成することができる。
【0062】
上記第2工程で加熱する場合には、加熱温度は被覆用樹脂のガラス転移温度に対して5〜20℃高い温度範囲が好ましく、具体的には60〜130℃の範囲が好ましい。かような範囲内の温度で加熱すると、キャリア粒子同士の凝集が発生せず、芯材粒子の表面に被覆用樹脂を固着させて、均一な層状の樹脂被覆層を形成することができる。
【0063】
上記した乾式被覆法では、有機溶媒なども使用しないため、樹脂被覆層に溶媒の抜けた穴も存在せず緻密かつ強固であるばかりでなく、芯材粒子との接着性も良好な樹脂被覆層を形成し、キャリア粒子を作製することが出来る。
【0064】
<樹脂被覆層の膜厚>
樹脂被覆層の膜厚は、0.05〜4μmであることが好ましく、0.2〜3μmであることがより好ましい。樹脂被覆層の膜厚が上記範囲であれば、キャリア粒子の帯電性および耐久性を向上させることができる。
【0065】
なお、樹脂被覆層の膜厚は、以下の方法により求めることができる。
【0066】
集束イオンビーム装置「SMI2050」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)にて、キャリア粒子の中心を通る面でキャリア粒子を切断して測定試料を作製する。その測定試料の断面を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子株式会社製)にて5000倍の視野で観察し、その視野における最大膜厚となる部分と最小膜厚となる部分との平均値を樹脂被覆層の膜厚とする。尚、測定数は50個とし、写真1視野で足りない場合には、測定数50になるまで視野数を増加させるものとする。
【0067】
<キャリア粒子の体積平均粒径>
キャリア粒子の体積平均粒径は、15μm以上30μm以下である。体積平均粒径が15μm未満の場合、キャリア粒子の流動性が低下し、トナー粒子との混合性が低下するため、帯電量の立ち上がりが低下する。一方、30μmを超える場合、キャリア粒子の表面積が小さくなり、トナー粒子が十分に帯電しなくなる。該体積平均粒径は、好ましくは18μm以上28μm以下である。なお、キャリア粒子の体積平均粒径は、下記の方法により測定した体積基準のメジアン径(D50)を採用するものとする。
【0068】
≪測定方法≫
キャリア粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて湿式にて測定されるものである。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定する。そして、測定用のキャリア粒子を0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US−1」(asone社製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを「HEROS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始する。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50とした。
【0069】
キャリア粒子の体積平均粒径は、上記の粉砕機での粉砕条件、使用するビーズの径、組成、粉砕時間、分級方法等を制御することにより、制御することができる。
【0070】
<体積抵抗率>
キャリア粒子の体積抵抗率は、1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下である。体積抵抗率が1×10Ω・cm未満の場合、トナー粒子が十分に帯電しなくなる。一方、1×1010Ω・cmを超える場合、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。該体積抵抗率は、好ましくは5×10Ω・cm以上5×10Ω・cm以下である。なお、体積抵抗率は、具体的には、下記の方法に測定することができる。
【0071】
≪測定方法≫
本発明に係る体積抵抗率とは、磁気ブラシによる現像条件下に動的に測定される抵抗である。具体的には、感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させる。この磁気ブラシをアルミ製電極ドラムと摺擦させ、この現像スリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の体積抵抗率を下記式(2)により求めることができる。
【0072】
【数2】
【0073】
本発明においては、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行うものとする。
【0074】
キャリア粒子の体積抵抗率は、被覆用樹脂の添加量(樹脂被覆層の厚さ)、キャリア粒子の形状、樹脂被覆層への導電剤の添加量等を制御することにより制御することができる。
【0075】
<真比重>
キャリア粒子の真比重は、4.25g/cm以上5g/cm以下である。真比重が4.25g/cm未満の場合、キャリア粒子のトナー粒子に対する衝突エネルギーが小さくなるため、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。一方、5g/cmを超える場合、キャリア粒子とトナー粒子との衝突によるトナー粒子の劣化が顕著になる。キャリア粒子の真比重は、好ましくは4.4g/cm以上4.8g/cm以下である。なお、真比重は、真密度測定機(エステック株式会社製、VOLUMETER.VM−100型)により測定することができる。上記したように、キャリア粒子の真比重は、芯材粒子に用いる原料種や、原料の添加割合、樹脂被覆層の厚さ等を制御することにより制御することができる。
【0076】
<形状係数SF−1>
形状係数SF−1は、真球度を示す指数であり、真球の場合においては、形状係数SF−1は100となる。
【0077】
本発明において、キャリア粒子の形状係数SF−1は、105以上125以下である。形状係数が105未満の場合、真球に近くなるためキャリア粒子とトナー粒子との摩擦力が不足し、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。一方、125を超える場合、キャリア粒子の流動性が低下し、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。形状係数SF−1は、好ましくは110以上120以下である。
【0078】
形状係数SF−1は、下記式(3)により算出される数値である。
【0079】
【数3】
【0080】
キャリア粒子のSF−1の測定においては、キャリア粒子を準備するが、試料がキャリア粒子単体でなく現像剤である場合には、前準備の処理を行う。
【0081】
≪前準備≫
ビーカーに、現像剤、少量の中性洗剤、純水を添加してよくなじませ、ビーカー底に磁石を当てながら上澄み液を捨てる。さらに、純水を添加し上澄み液を捨てることで、トナー粒子および中性洗剤を除くことで、キャリアのみを分離する。40℃にて乾燥し、キャリア粒子単体を得る。
【0082】
≪測定方法≫
(測定)
走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上のキャリア粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析し、各々のキャリア粒子について、最大長および投影面積を求め、上記式(3)により形状係数SF−1を算出する。算出された各々の粒子の形状係数SF−1の平均値を、本発明における「形状係数SF−1」とする。
【0083】
キャリア粒子の形状係数SF−1は、芯材粒子に用いる原料種や、原料の添加割合、芯材粒子作製時の焼成温度等を制御することにより制御することができる。
【0084】
[トナー粒子]
本発明の二成分現像剤は、トナー母体粒子に外添剤を付着させたトナー粒子を含有する。
【0085】
(トナー母体粒子)
本発明に係るトナー母体粒子としては、具体的には少なくとも結着樹脂(以下、「トナー用樹脂」とも称する)を含有し、必要に応じて着色剤を含有する。また、このトナー母体粒子には、必要に応じて、さらに離型剤及び荷電制御剤などの他の成分を含有することもできる。
【0086】
(結着樹脂)
トナー母体粒子を構成する結着樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0087】
このような結着樹脂としては、一般にトナーを構成する結着樹脂として用いられているものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン系樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0088】
中でも、溶融特性が低粘度で高いシャープメルト性を有するスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体樹脂、およびポリエステル樹脂が好適に挙げられる。これらは、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。特にトナー粒子を溶けやすくし、定着時の省エネルギー化を達成する観点から、少なくとも結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。なお、本明細書において、「結晶性」とは、示差走査熱量分析において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。この際、明確な吸熱ピークとは、具体的には、実施例に記載の示差走査熱量分析(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。
【0090】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデカン二酸(1,12−ドデカンジカルボン酸)、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、さらに、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステルも挙げられるがこの限りではない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
また、3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等、およびこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、多価カルボン酸成分の他に、二重結合を有するジカルボン酸成分を使用してもよい。二重結合を有するジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級エステル、酸無水物等も挙げられる。
【0092】
一方、多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが直鎖型の場合、ポリエステル樹脂の結晶性が維持され、溶融温度の降下が抑えられることから、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および低温定着性に優れる。また、炭素数が7以上20以下であると、多価カルボン酸成分と縮重合させる際の融点が低く抑えられ、かつ低温定着が実現される一方、実用上、材料を入手しやすい。主鎖部分の前記炭素数としては7以上14以下であることがより好ましい。
【0093】
結晶性ポリエステル樹脂の合成に好適に用いられる脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、入手容易性を考慮すると、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
結晶性ポリエステル樹脂は、常法に従い、ジブチル錫オキシド、またはテトラブトキシチタネート等の重合触媒存在下で、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応を行って合成すればよい。
【0095】
重縮合反応における反応温度は、180℃以上230℃以下で行うことが好ましい。必要に応じて反応系内を減圧にし、重縮合で発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。単量体が反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0096】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、良好な低温定着性と画像保存性との観点から、好ましくは5,000〜50,000である。なお、本明細書において、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、GPCによって測定される値であり、被覆用樹脂と同様の測定条件で測定することができる。
【0097】
結晶性ポリエステル樹脂以外の結着樹脂(以下、「他の樹脂」とも称する)を得るための重合性単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ステアリルなどのアクリル酸エステル単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸エステル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、およびフマル酸などのカルボン酸単量体などを使用することができる。これら重合性単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0098】
これら他の樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法など公知の方法により製造することができる。中でも、粒子径の制御の観点から、乳化重合法が好ましい。
【0099】
乳化重合法により他の樹脂を製造する場合、用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ化合物、過酸化水素等を用いることが出来る。これらのラジカル重合開始剤は、所望に応じてレドックス重合開始剤として用いることも出来る。例えば、過硫酸塩とメタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素とアスコルビン酸等の組み合わせが挙げられる。また、用いられる連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカブタン、n−オクチルメルカプタン等のチオール化合物、テトラプロモメタン、トリブロモクロロメタン等のハロゲン化メタン等が挙げられる。
【0100】
他の樹脂の重量平均分子量は、低温定着性と画像保存性との観点から、好ましくは10,000〜50,000である。なお、他の樹脂の重量平均分子量はGPCによって測定される値であり、被覆用樹脂と同様の測定条件で測定することができる。
【0101】
[外添剤]
本発明に係るトナー母体粒子の表面には、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を付着させる。外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、および酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上を併用してもよい。
【0102】
特にシリカ粒子に関して、ゾルゲル法により作製されたシリカ粒子を用いることがより好ましい。ゾルゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒子径分布が狭いという特徴を有しているため、付着強度のバラツキを抑制する点で好ましい。ゾルゲル法により形成されたシリカ粒子の個数平均一次粒子径は、70〜150nmの範囲であることが好ましい。個数平均一次粒子径がこのような範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて粒子径が大きいのでスペーサーとしての役割を有し、その他の粒子径の小さい外添剤が現像機中で攪拌混合されることによって、トナー母体粒子中に埋め込まれるのを防止する効果を有し、また、トナー母体粒子同士が融着するのを防止する効果を有している。
【0103】
ゾルゲル法により作製されたシリカ粒子以外の金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、10〜70nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましい。なお、金属酸化物粒子の個数平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求める方法により測定することができる。
【0104】
また、スチレン、メタクリル酸メチルなどの単独重合体やこれらの共重合体等の有機微粒子を外添剤として使用してもよい。
【0105】
本発明に係る外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0106】
また、表面処理剤として、シリコーンオイルを用いることもできる。シリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、またはデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状または分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。また、側鎖、片末端、両末端、側鎖片末端、側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてもよい。該変性基の例としては、アルコキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、高級脂肪酸変性、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基などが挙げられるが、特に制限されるものではない。また、例えば、アミノ/アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであっても良い。
【0107】
また、ジメチルシリコーンオイルと上記の変性シリコーンオイル、さらには他の表面処理剤とを用いて混合処理または併用処理しても構わない。併用する処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等を例示することができる。
【0108】
金属酸化物粒子の疎水化度は、好ましくは40〜80%程度である。なお、金属酸化物粒子の疎水化度とは、メタノールに対する濡れ性の尺度で示され、下記式(4)のように定義される。
【0109】
【数4】
【0110】
疎水化度の測定方法は次の通りである。内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり攪拌した状態で粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式(3)により疎水化度が算出される。
【0111】
<滑剤>
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤を使用することも可能である。例えば、以下のステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0112】
これら外添剤の添加量は、トナー粒子全体に対して0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0113】
[内添剤]
<離型剤>
トナー粒子には、離型剤が含有されていてもよい。ここに、離型剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、脂肪酸エステルワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、および蜜ろうワックス等、公知のものを挙げることができる。
【0114】
トナー粒子中における離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることがより好ましい。
【0115】
<荷電制御剤>
トナー粒子には、荷電制御剤が含有されていてもよい。例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やアルミニウムによる金属錯体(サリチル酸金属錯体)、カリックスアレーン化合物、有機ホウ素化合物、および含フッ素4級アンモニウム塩化合物などを挙げることができる。
【0116】
トナー粒子中における荷電制御剤の含有割合としては、結着樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0117】
<着色剤>
本発明に係るトナー粒子は、カラートナーとするために、着色剤をさらに含んでもよい。
【0118】
使用できる着色剤としては、公知の無機または有機着色剤が挙げられる。以下、具体的な着色剤を示す。
【0119】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
【0120】
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同149、同150、同163、同166、同170、同177、同178、同184、同202、同206、同207、同209、同222、同238、同269等が挙げられる。
【0121】
また、オレンジまたはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー12、同14、同15、同17、同74、同83、同93、同94、同138、同155、同162、同180、同185等が挙げられる。
【0122】
さらに、グリーンまたはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0123】
また、染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー2、同6、同14、同15、同16、同19、同21、同33、同44、同56、同61、同77、同79、同80、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等が挙げられる。
【0124】
これらの着色剤は、必要に応じて単独でもまたは2種以上を併用することも可能である。着色剤を用いる場合の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましい。
【0125】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを好ましく用いることができる。
【0126】
[トナー粒子の製造方法]
本発明に係るトナー粒子は、結着樹脂と必要に応じて離型剤、着色剤等の内添剤とを含むトナー母体粒子に上記の外添剤が添加されてなるものである。
【0127】
(トナー母体粒子の製造方法)
本発明に係るトナー母体粒子、すなわち、外添剤を添加する前の段階の粒子は、公知のトナー製造方法により製造が可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナー母体粒子を作製するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合法によるトナー製造方法が挙げられる。
【0128】
この中でも、重合法によるトナー製造方法は、大きさや形状を制御しながら粒子形成を行えるので、微細なドット画像や細線画像の様な高画質画像形成用の小粒径のトナーの作製に有利な方法といえる。重合法によるトナー製造方法は、たとえば、懸濁重合や乳化重合等の重合反応により樹脂粒子を形成する工程を経てトナー母体粒子を作製するものである。そして、重合法の中でも、重合反応によりたとえば100nm程度の樹脂微粒子を作製し、この樹脂微粒子を凝集、融着させてトナー母体粒子を作製する会合工程を有する重合法のトナー製造方法が特に好ましい。この会合工程を設けることにより、例えば、低温定着に寄与するガラス転移温度が低い樹脂微粒子を凝集させてコア粒子を作製し、次に、当該コア粒子表面にガラス転移温度が高い樹脂粒子を付着、凝集させることにより、コアシェル構造のトナーを作製することも可能である。
【0129】
乳化会合法では、まず重合法や懸濁重合法により予め100nm前後の結着樹脂の樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する。より具体的には、結着樹脂を構成する単量体を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させることにより、結着樹脂の粒子(分散液)を作製する。また、着色剤を含有させる場合には、別途、水系媒体中に着色剤を分散させ、着色剤粒子分散液を作製する。分散液中の着色剤微粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、80〜200nmが好ましい。分散液中の着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布測定装置UPA−150を使用して測定できる。
【0130】
次いで、水系媒体中で前述の樹脂粒子と必要に応じて着色剤粒子を凝集させ、凝集させると同時にこれら粒子を融着させてトナー母体粒子を作製する。すなわち、上記の樹脂粒子分散液と着色剤粒子分散液とを混合した水系媒体中に、アルカリ金属塩や第2族元素の塩等を凝集剤として添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ、同時に樹脂粒子同士を融着させる。そして、トナー母体粒子の大きさが目標の大きさになった時に、塩を添加して凝集を停止させる。その後、反応系を加熱処理することによりトナー母体粒子の形状を所望の形状にするまで熟成を行い、トナー母体粒子を完成させる。
【0131】
凝集させる際には、凝集剤を添加した後に分散液を放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くし、加熱をできるだけ速やかに開始し、結着樹脂のガラス転移温度以上とすることが好ましい。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。凝集剤を添加する温度は特に限定されないが、結着樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。その後は加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.5℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液がガラス転移温度以上の温度に到達した後、分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させる。これにより、トナー母体粒子の成長(結着樹脂粒子および着色剤粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができる。
【0132】
より詳細には、凝集性付与のために、予め水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を着色剤粒子および結着樹脂粒子の分散液に加えて、pHを9〜12に調整しておくことが好ましい。次いで、結着樹脂粒子と着色剤粒子とを含む分散液に、塩化マグネシウム水溶液等の凝集剤を、25〜35℃で5〜15分かけて撹拌しながら添加する。凝集剤の使用量は、結着樹脂粒子および着色剤粒子の固形分全量に対して、5〜20質量%が適当である。その後、1〜6分放置し、30〜90分かけて70〜95℃まで昇温し、凝集した樹脂粒子および着色剤粒子を融着させることができる。このとき、融着したトナー母体粒子の体積基準のメジアン径を測定し、3〜5μmになったときに塩化ナトリウム水溶液等を添加して粒子の成長を停止させる。さらに、熟成処理として液温を80〜100℃にして加熱攪拌を行い、平均円形度が0.900〜0.980になるまで粒子の融着を進行させることもできる。
【0133】
<凝集剤>
本発明で使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩;鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0134】
<その他の添加剤>
凝集工程での分散液は、上述した離型剤、荷電制御剤、さらには、分散安定剤、界面活性剤等公知の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、添加剤の分散液として凝集工程に投入してもよいし、着色剤粒子の分散液や、結着樹脂の分散液中に含有されてもよい。
【0135】
上述した方法で所望の大きさに成長させたトナー母体粒子は、ろ過し、乾燥させる。ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェなどを使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレスなどを使用して行うろ過法などがあり、特に限定されるものではない。次いで、ろ別したトナー母体粒子(ケーキ状の集合物)は、イオン交換水で洗浄することにより界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、ろ液の電気伝導度が例えば3〜10μS/cmレベルになるまで水洗処理を行うものである。
【0136】
乾燥は、洗浄されたトナー母体粒子を乾燥できればよく、特に制限はないが、乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機等公知の乾燥機が挙げられ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機、気流式乾燥機等を使用することが可能である。乾燥されたトナー母体粒子に含有される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0137】
また、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0138】
得られた乾燥済みのトナー母体粒子に、上記の外添剤を粉体で添加して混合する乾式法により、外添剤が添加され、これにより本発明に係るトナー粒子が製造される。外添剤の混合装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用することができる。例えばヘンシェルミキサーを用いる場合は、攪拌羽根の先端の周速を好ましくは30〜80m/sとし、20〜50℃で10〜30分程度攪拌混合する。
【0139】
<トナー粒子の体積平均粒径>
本発明に係るトナー粒子の体積平均粒径は、3μm以上5μm以下である。体積平均粒径が3μm未満の場合、トナー粒子の流動性が低下し、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが低下する。一方、5μmを超える場合、画質の低下が発生する。トナー粒子の体積平均粒径は、好ましくは3.5μm以上4.5μm以下である。
【0140】
トナー粒子の体積平均粒径は、具体的には、下記の方法により測定した体積基準のメジアン径(D50)を採用するものとする。
【0141】
≪測定方法≫
トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。測定手順としては、トナー粒子 0.02gを、界面活性剤溶液 20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用する。測定範囲1〜30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0142】
トナー粒子の体積平均粒径は、上述の製造方法における凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間等を制御することにより制御することができる。
【0143】
[トナー粒子の平均円形度]
本発明に係るトナー粒子の平均円形度は、0.98以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.93〜0.97であることがさらに好ましい。このような範囲の平均円形度であれば、より帯電しやすいトナー粒子となる。
【0144】
なお、平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定することができ、具体的には、以下の方法で測定することができる。
【0145】
≪測定方法≫
トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA−3000」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式(5)で算出される。
【0146】
【数5】
【0147】
平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0148】
トナー粒子の平均円形度は、上述の製造方法における熟成処理時の温度、時間等を制御することにより制御することができる。
【0149】
[二成分現像剤]
本発明の二成分現像剤は、キャリア粒子とトナー粒子とからなり、上記のキャリア粒子とトナー粒子とを、混合装置を用いて混合することで製造することができる。
【0150】
混合装置としては、例えばヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機を挙げることができる。トナー粒子の混合量は、二成分現像剤全体に対し、1〜10質量%であることが好ましい。
【0151】
[画像形成方法]
本発明の二成分現像剤は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができ、例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの静電潜像担持体(「電子写真感光体」または単に「感光体」とも称する)と、により構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置および静電潜像担持体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
【0152】
電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明の二成分現像剤を使用して、例えば静電潜像担持体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光することにより静電的に形成された静電潜像(露光工程)を、現像装置において本発明の二成分現像剤中のキャリア粒子でトナー粒子を帯電させて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る(現像工程)。そして、このトナー画像を用紙に転写(転写工程)し、その後、用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式等の定着処理によって用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像が得られる。
【実施例】
【0153】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、結着樹脂および被覆用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記の測定条件により測定した。
【0154】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
使用機器: HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム: TSKguardcolumn/TSKgel SuperHZMM(3連)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相: テトラヒドロフラン
流速: 0.2ml/min
注入量: 10μl
検出器: 屈折率検出器(IR検出器)。
【0155】
[トナーの作製]
<トナー母体粒子1の作製>
(着色剤微粒子分散液の調製)
n−ドデシル硫酸ナトリウム 11.5質量部をイオン交換水 160質量部に攪拌、溶解させた溶液を準備し、該溶液を攪拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)24.5質量部を徐々に添加した。次いで、攪拌装置「クレアミックス(登録商標)Wモーション CLM−0.8」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行うことにより、着色剤微粒子の体積基準のメジアン径が126nmである「着色剤微粒子分散液(A1)」を調製した。
【0156】
(コア用樹脂の作製)
〔結晶性ポリエステル樹脂の作製〕
三ツ口フラスコに、1,9−ノナンジオール 300g、ドデカン二酸 250g、および触媒Ti(OBu)をドデカン二酸に対し0.014質量%の量で入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧した。さらに、窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械式攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて未反応のモノマー成分を除去し、220℃まで徐々に昇温を行って12時間攪拌を行った。粘稠な状態となったところで冷却することにより、結晶性ポリエステル樹脂〔B1〕を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂〔B1〕は、重量平均分子量(Mw)が19,500であり、融点が75℃であった。
【0157】
〔第1段重合〕
攪拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム 4gおよびイオン交換水 3000gを仕込み、窒素気流下、230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム 10gをイオン交換水 200gに溶解させたものを添加し、液温を75℃とし、
スチレン 568g
アクリル酸n−ブチル 164g
メタクリル酸 68g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱・攪拌し重合を行うことにより、樹脂粒子〔C1〕の分散液を調製した。
【0158】
〔第2段重合〕
攪拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム 2gをイオン交換水 3000gに溶解させた溶液を仕込んだ。80℃に加熱後、上記の樹脂粒子〔C1〕の分散液 42g(固形分換算)、パラフィンワックス「HNP−0190」(日本精蝋株式会社製)70g、および上記結晶性ポリエステル樹脂〔B1〕70gを仕込み、さらに
スチレン 195g
アクリル酸n−ブチル 91g
メタクリル酸 20g
n−オクチルメルカプタン 3g
からなる単量体溶液を80℃にて添加し溶解させた。その後、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX(登録商標)」(エム・テクニック株式会社製)を用いて1時間混合分散させることにより、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0159】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム 5gをイオン交換水 100gに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて1時間にわたって加熱・攪拌し重合を行うことにより、樹脂粒子〔C2〕の分散液を調製した。
【0160】
〔第3段重合〕
上記の樹脂粒子〔C2〕の分散液に、さらに、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた溶液を添加し、80℃の条件下で、
スチレン 298g
アクリル酸n−ブチル 137g
アクリル酸n−ステアリル 50g
メタクリル酸 64g
n−オクチルメルカプタン 6g
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱・攪拌し重合を行った後、28℃まで冷却することにより、コア用樹脂微粒子〔C3〕の分散液を得た。
【0161】
(シェル用樹脂の作製)
攪拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を付けた反応容器に、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム 2.0gをイオン交換水 3000gに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0162】
この溶液に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、
スチレン 564g
アクリル酸n−ブチル 140g
メタクリル酸 96g
n−オクチルメルカプタン 12g
からなる単量体混合液を3時間かけて滴下した。滴下後、この系を80℃にて1時間にわたって加熱・攪拌し重合を行うことにより、シェル用樹脂微粒子〔D1〕の分散液を得た。
【0163】
(凝集・融着工程)
攪拌装置、温度センサ、冷却管、および窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、コア用樹脂微粒子〔C3〕の分散液 360g(固形分換算)、イオン交換水 1100g、および着色剤微粒子の分散液〔A1〕50gを仕込み、液温を30℃に調整した後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム 60gをイオン交換水 60gに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間保持した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(D50)が3.9μmになった時点で、塩化ナトリウム 40gをイオン交換水 160gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成工程として液温80℃にて1時間にわたって加熱・攪拌することにより粒子間の融着を進行させ、これにより、コア粒子〔1〕を形成した。
【0164】
次いで、シェル用樹脂微粒子〔D1〕80g(固形分換算)を添加し、80℃にて1時間にわたって攪拌を継続し、コア粒子〔1〕の表面にシェル用樹脂微粒子〔S1〕を融着させてシェル層を形成させた。ここで、塩化ナトリウム 150gをイオン交換水 600gに溶解した水溶液を添加し80℃にて熟成処理を行い、平均円形度が0.965になった時点で30℃に冷却し、トナー母体粒子1の分散液を得た。冷却後のトナー母体粒子1の体積平均粒径(体積基準のメジアン径(D50))は4μm、平均円形度は0.965であった。
【0165】
(洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて生成したトナー母体粒子1の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー母体粒子1のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.8質量%となるまで乾燥して、「トナー母体粒子1」を得た。
【0166】
<トナー母体粒子2〜3の作製>
平均円形度がそれぞれ0.970(トナー母体粒子2)、および0.975(トナー母体粒子3)になった時点で冷却したこと以外は、上記<トナー母体粒子1の作製>と同様にして、トナー母体粒子2〜3を作製した。
【0167】
<トナー母体粒子4〜7の作製>
体積基準のメジアン径が、それぞれ2.8μm(トナー母体粒子4)、4.9μm(トナー母体粒子5)、5.8μm(トナー母体粒子6)、および2.6μm(トナー母体粒子7)になった時点で、塩化ナトリウム 40gをイオン交換水 160gに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させたこと以外は、上記<トナー母体粒子1の作製>同様にして、トナー母体粒子4〜7を作製した。
【0168】
<トナー粒子1〜7の作製>
(外添剤処理工程)
上記のようにして作製した「トナー母体粒子1〜7」および、
ゾルゲルシリカ(HMDS処理、疎水化度72%、個数平均一次粒子径130nm)(トナー母体粒子に対して2.0質量%)
疎水性シリカ(HMDS処理、疎水化度72%、個数平均一次粒子径=40nm)(トナー母体粒子に対して2.5質量%)
疎水性酸化チタン(HMDS処理、疎水化度55%、個数平均一次粒子径=20nm)(トナー母体粒子に対して0.5質量%)
を、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業株式会社製)に仕込み、羽根先端周速が40m/sとなるようにして回転数を設定して15分間攪拌し、「トナー粒子1〜7」を作製した。
【0169】
また、外添混合時の品温は40℃±1℃となるように設定し、41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、1L/分となるように冷却水を流すことでヘンシェルミキサー内部の温度制御を実施した。
【0170】
トナー粒子1〜7の体積平均粒径および平均円形度を下記表1に示す。なお、測定方法は、以下の通りである。
【0171】
<トナー粒子の体積平均粒径>
トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。測定手順としては、トナー粒子 0.02gを、界面活性剤溶液 20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTON II(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパチャー径は100μmのものを使用する。測定範囲1〜30μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準のメジアン径(D50)とする。
【0172】
<トナー粒子の平均円形度>
≪測定方法≫
トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式(5)で算出される。
【0173】
【数6】
【0174】
平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0175】
【表1】
【0176】
[キャリアの作製]
(芯材粒子1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%、およびSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、水と混合した後、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0177】
得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子の粒度調整を行った後、950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて4時間粉砕した。バインダーとしてPVAを固形分に対して0.8質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1300℃で5時間保持し、本焼成を行った。
【0178】
その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、芯材粒子1を作製した。芯材粒子1の体積平均粒径は24.2μmであった。
【0179】
(芯材粒子2〜7、12〜16の作製)
0.5cmのジルコニアビーズでの粉砕時間、本焼成の温度と時間、および分級での粒度調整を、それぞれ下記表2のように変更したこと以外は、上記(芯材粒子1の作製)と同様にして、芯材粒子2〜7、12〜16を作製した。
【0180】
(多孔質芯材粒子8の作製)
0.5cmのジルコニアビーズでの粉砕時間、本焼成の温度と時間、および分級での粒度調整を、それぞれ下記表2のように変更したこと以外は、上記(芯材粒子1の作製)と同様にして、多孔質芯材粒子8を作製した。
【0181】
(芯材粒子9の作製)
原料の配合比を、MnO:15mol%、MgO:24.5mol%、SiO:10mol%、Fe:50mol%、およびSrO:0.5mol%としたこと以外は、上記(芯材粒子1の作製)と同様にして、芯材粒子9を作製した。
【0182】
(芯材粒子10の作製)
原料の配合比を、MnO:49.5mol%、Fe:50mol%、およびSrO:0.5mol%としたこと以外は、上記(芯材粒子1の作製)と同様にして、芯材粒子10を作製した。
【0183】
(芯材粒子11の作製)
反応装置に、フェノール 200質量部、37質量%ホルマリン 260質量部、体積平均粒子径0.3μmの球状マグネタイト 1600質量部、28質量%アンモニア水 31.2質量部、フッ化カルシウム 4質量部、および水 200質量部を攪拌しながら投入し、毎分1℃で85℃まで昇温し、同温度で3時間反応、硬化させ、芯材粒子11を作製した。
【0184】
各芯材粒子の組成および作製条件を下記表2に示す。
【0185】
【表2】
【0186】
(被覆用樹脂1の作製)
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)およびメタクリル酸メチル(MMA)を50:50(質量比、共重合比)で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂1(CHMA−MMA)を作製した。得られた被覆用樹脂1の重量平均分子量は50万であった。
【0187】
(被覆用樹脂2の作製)
メタクリル酸シクロヘキシルの代わりに、スチレンを用いたこと以外は、上記(被覆用樹脂1の作製)と同様にして、被覆用樹脂2を作製した。得られた被覆用樹脂2の重量平均分子量は60万であった。
【0188】
(キャリア粒子1の作製)
水平回転翼付き高速攪拌混合機に、芯材粒子として上記で準備した「芯材粒子1」100質量部、および「被覆用樹脂1」3.5質量部を投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合攪拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で芯材粒子の表面に被覆用樹脂1を被覆させて、「キャリア粒子1」を得た。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.4μmであった。
【0189】
(キャリア粒子2の作製)
ストレートシリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製、SR−2411)を固形分換算で3.5質量部を秤量し、1000質量部のトルエン溶剤に溶解させ、被覆用樹脂を含む塗布液を調製した。
【0190】
流動床被覆装置を用いて、調製した塗布液を上記芯材粒子1に対して被覆した後、250℃で2時間焼付け処理を行い、凝集した粒子を解砕し、粒度調整を行ってキャリア粒子2を作製した。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.4μmであった。
【0191】
(キャリア粒子3の作製)
「被覆用樹脂1」の代わりに、「被覆用樹脂2」を用いたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子3を作製した。
【0192】
(キャリア粒子4〜7、12〜21の作製)
芯材粒子1の代わりに表3に示す芯材粒子を用いたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子4〜7、12〜21を作製した。
【0193】
(キャリア粒子8の作製)
「被覆用樹脂1」の投入量を2.5質量部としたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子8を作製した。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.3μmであった。
【0194】
(キャリア粒子9の作製)
「被覆用樹脂1」の投入量を4.5質量部としたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子9を作製した。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.5μmであった。
【0195】
(キャリア粒子10の作製)
「被覆用樹脂1」の投入量を2質量部としたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子10を作製した。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.25μmであった。
【0196】
(キャリア粒子11の作製)
「被覆用樹脂1」の投入量を5質量部としたこと以外は、上記(キャリア粒子1の作製)と同様にして、キャリア粒子11を作製した。芯材粒子表面の樹脂被覆層の厚さは、0.55μmであった。
【0197】
(芯材粒子の空隙率)
芯材粒子の空隙率は、芯材粒子の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した後、得られた画像を画像解析ソフト(Image−Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて解析して求めた。具体的には、芯材粒子の表面の凹凸を包絡する線で結んだ粒子面積(A)を測定し、次いで、その芯材粒子画面に含まれる芯材部分の面積(B)を測定し、下記式(1)により、空隙率を算出した。
【0198】
【数7】
【0199】
この式(1)によって算出される空隙率は、芯材粒子表面から連続する空隙と芯材粒子内部に独立して存在する空隙とを合わせた空隙率となる。
【0200】
より具体的には、芯材粒子10個の中央付近の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像解析してその平均から空隙率を求めた。
【0201】
(キャリア粒子の体積平均粒径)
キャリア粒子の体積平均粒径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて、湿式法にて測定した。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定する。そして、測定用の磁性体粒子を0.2%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US−1」(asone社製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを「HEROS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始する。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、累積50%となる粒径を体積平均粒径(D50)とした。
【0202】
(キャリア粒子の体積抵抗率)
感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させた。この磁気ブラシをアルミ製電極ドラムと摺擦させ、このスリーブとドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の体積抵抗率を下記式(2)により求めた。
【0203】
【数8】
【0204】
本発明においては、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmにて測定を行うものとする。
【0205】
(キャリア粒子の真比重)
キャリア粒子の真比重は、真密度測定機(エステック株式会社製、VOLUMETER.VM−100型)により測定した。
【0206】
(形状係数SF−1)
キャリア粒子の形状係数(SF−1)は、下記式(3)により算出される数値である。
【0207】
【数9】
【0208】
≪測定方法≫
走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上のキャリア粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)を用いて解析し、各々のキャリア粒子について、最大長および投影面積を求め、上記式1により形状係数SF−1を算出する。算出された各々の粒子の形状係数SF−1の平均値を、本発明における「形状係数SF−1」とした。
【0209】
キャリア粒子の構成および物性を下記表3に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
<現像剤1の作製>
上記のようにして作製したトナー粒子1およびキャリア粒子1を、トナー濃度が5質量%となるようにして混合し、現像剤1を作製した。混合機はV型混合機(株式会社徳寿工作所製)を用い、25℃で30分間混合した。
【0212】
<現像剤2〜28の作製>
トナー粒子とキャリアとの組み合わせを下記表4および表5に示すようにしたこと以外は、上記<現像剤1の作製>と同様にして、現像剤2〜28を作製した。
【0213】
(評価)
評価装置として、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub PRO(登録商標) C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を用い、上記で作製した現像剤をそれぞれ順次装填し、高温高湿(30℃、相対湿度80%RH)環境下で、A4版の上質紙(65g/m)上にテスト画像として印字率5%の帯状ベタ画像を形成する印刷を10万枚プリントした。
【0214】
<濃度ムラ>
10万枚印刷後、A4サイズの記録用紙に全面40%平網画像を連続で100枚出力した。そして、1枚目および100枚目の画像の反射濃度を、マクベス反射濃度計「RD907」(マクベス社製)によって測定し、その1枚目と100枚目との濃度差によって画像濃度ムラの評価を行った。本評価においては、濃度差が0.05以下であれば合格とした。
【0215】
◎:0.03以下
○:0.03より大きく0.05以下
×:0.05より大きい。
【0216】
<画質(粒状性GI値)>
10万枚印刷後に、さらに印字率40%の帯状ベタ画像を形成する印刷を500枚プリントした後、階調率32段階の階調パターンを出力し、この階調パターンの粒状性について、下記評価基準に従って評価した。粒状性の評価は、階調パターンのCCDによる読み取り値にMTF(Modulation Transfer Function)補正を考慮したフーリエ変換処理を施し、人間の比視感度にあわせたGI値(Graininess Index)を測定し、最大GI値を求めた。GI値は小さいほどよい。なお、このGI値は、日本画像学会誌39(2)、84・93(2000)に掲載されている値である。本評価においては、GI値が0.195未満であれば合格とした。
【0217】
◎:0.170未満
○:0.170以上0.195未満
×:0.195以上。
【0218】
<かぶり>
印刷初期および10万枚印刷後に、白紙をプリントし、初期および10万枚後の転写材の白紙濃度で評価した。A4判の転写材において20か所の濃度を測定し、その平均値を白紙濃度とする。濃度測定は反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて行った。白紙濃度が0.01以下であれば合格とした。
【0219】
◎:0.005以下
○:0.005より大きく0.01以下
×:0.01より大きい。
【0220】
<スリーブメモリ>
ベタ白部とベタ黒部とが隣り合う画像を現像した現像スリーブの位置が、現像スリーブの次の回転時に現像位置に存在し、ハーフトーンを現像するように設定し、ハーフトーンに現れる濃淡差を目視により確認し、下記評価基準で評価を行った。
【0221】
◎:目視ではスリーブメモリは見えず、良好である(画像濃度差≦0.02)
○:目視でスリーブメモリは僅かに見えるが許容できるレベルである(0.02<画像濃度差≦0.05)
×:目視でスリーブメモリがはっきり見え、実用上問題となるレベルである(画像濃度差>0.05)。
【0222】
各現像剤の構成および評価結果を、下記表4および表5に示す。
【0223】
【表4】
【0224】
【表5】
【0225】
上記表4および表5から明らかなように、実施例の二成分現像剤を用いた場合、濃度ムラやかぶりが低減され、ドット再現性に優れ、高画質な画像が得られることがわかった。また、スリーブメモリも低減できることがわかった。このことから、本発明の二成分現像剤を用いることにより、トナー粒子の帯電量の立ち上がりが向上し、トナー粒子が安定した帯電性を維持することができ、特に高画像濃度での連続印字において、長期に亘って高画質な画像が得られることがわかった。