(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一様に帯電した感光ドラムに対して画像情報に基づいてレーザー光が照射されることにより、感光ドラム表面に静電潜像が形成される。そして、静電潜像が形成された感光ドラムにトナーが供給されることにより、静電潜像が可視化されてトナー像が形成される。このトナー像が、中間転写ベルトと二次転写ローラーとの間に形成されるニップ部によって用紙に転写された後、定着部で加熱および加圧されることによってトナー像が用紙に定着され、用紙に画像が形成される。
【0003】
また、定着部による定着の方式として、加熱源を有する加熱ローラーと、上加圧ローラーと、下加圧ローラーと、を備え、さらに加熱ローラーと上加圧ローラーとに定着ベルトを懸架させ、加熱ローラーおよび定着ベルトを介して加熱源で発生させた熱を用紙に伝えて用紙を加熱するとともに、上加圧ローラーの加圧によって定着ベルトと下加圧ローラーの間にニップ部を形成して用紙を加圧する方式が知られている。なお、加熱源で発生させた熱は、まず定着ベルトに伝えられ、さらに定着ベルトを介して下加圧ローラーにも伝えられ、定着ベルトの熱と下加圧ローラーの熱とによって用紙を加熱する。このような定着ベルトを用いる定着方式は、定着ベルトを用いない定着方式(加熱ローラーが用紙と接触して加熱および加圧を行う方式)と比べて、定着昇温(トナー像を用紙に定着可能な温度まで定着部材の温度を上げること)にかかる時間や定着昇温のための消費電力が少ないという利点がある。
【0004】
ところで、画像形成装置において、装置本体の長さより長い(すなわち、装置本体の給紙部から排紙部まで設けられる通紙経路部より長い)ロール紙や連続帳票などの連帳紙が用紙として用いられることがある。ユーザーによって画像形成中に画像形成を停止させる指示がなされた場合や、何らかの原因でエラー処理が行われて画像形成を停止させる場合、連帳紙でない用紙(例えばA4サイズの用紙など)を用紙として用いる画像形成装置では、用紙を排紙部から排紙させてから画像形成を停止させたり、用紙の搬送を通紙経路部の定着部より上流側で停止させたりできるのに対し、連帳紙を用紙として用いる画像形成装置では、このようなことができないため、連帳紙が定着部に残っている状態で連帳紙の搬送を停止させることになる。画像形成を停止させる際に連帳紙を装置本体から取り除けば連帳紙が定着部に停滞することはないが、連帳紙を装置本体から取り除き再び通紙を行うには手間がかかる。
【0005】
このように、画像形成を停止させる際、連帳紙が定着ベルトと下加圧ローラーとによって形成されるニップ部で挟持されたまま放置されると、画像形成を停止させる場合には加熱源への電力供給を停止させて定着部の温度を下げるものの、定着部の熱によって連帳紙は変形や変色などのダメージを受ける。そのため、定着ベルトのように熱を用いる定着方式において連帳紙の搬送を停止させる場合は、連帳紙が定着ベルトに接触して連帳紙に熱が直接伝わらないよう、定着ベルトを下加圧ローラーから離間させてニップを解除し、連帳紙が定着ベルトに接触しないようにすることが知られている。連帳紙が定着ベルトに接触しないようにすることで定着部の熱が連帳紙に直接は伝わらなくなるが、定着部内の定着ベルト付近の空気を介して連帳紙には熱が伝わってしまうため、連帳紙が定着ベルトに接触している場合と比べて変形量は小さいが連帳紙は変形等を生じる。
【0006】
一方、再び画像形成を開始させる際は、加熱源への電力供給を停止させたことにより定着部の熱が下がっているので、画像形成の準備として定着昇温を行う。定着昇温では、加熱ローラーの加熱源によって加熱を行う際、定着ベルト全体の温度を均一にするために定着ベルトを離間状態のまま回転させる。この場合に、定着ベルトを離間しているにもかかわらず連帳紙の変形等によって連帳紙が定着ベルトに接触することがある。定着ベルトに連帳紙が接触している状態で定着ベルトを回転させると、連帳紙と定着ベルトとの間で生じる摺擦によって定着ベルトに周方向の傷が発生するという問題がある。
【0007】
定着ベルトに生じる周方向の傷は、形成した画像にスジが生じる原因となる。スジが生じた画像は見栄えが悪く、画像形成装置の品質として望ましくない。
【0008】
上記では、回転部材の一例として定着ベルトを用いる場合について述べたが、回転部材の一例として加熱ローラーを用いる場合においても上記の問題が生じ得る。すなわち、加熱ローラーを下加圧ローラーと離間させた状態で回転させる際に連帳紙が変形していると、連帳紙と加熱ローラーとの間で生じる摺擦によって加熱ローラーに周方向の傷が発生するという問題がある。
【0009】
また、回転部材の一例として中間転写ベルトを用いる場合においても上記の問題が生じ得る。すなわち、中間転写ベルトを二次転写ローラーと離間させた状態で回転させる際に連帳紙が変形していると、連帳紙と中間転写ベルトとの間で生じる摺擦によって中間転写ベルトに周方向の傷が発生するという問題がある。なお、連帳紙の変形に関し、中間転写ベルト付近は定着部より温度が低いため熱による連帳紙の変形への影響は小さいが、吸湿などにより連帳紙が変形する場合が考えられる。
【0010】
特許文献1には、連帳紙にたるみ(なお、上述した変形はたるみを含む)が生じないよう、非印刷中の用紙停止時に連帳紙を規定の時間間隔で搬送、停止させることが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、給紙装置1A、装置本体1B、および巻取装置1Cを備える。なお、給紙装置1Aおよび巻取装置1Cを備えず、装置本体1Bのみによって画像形成装置1を構成してもよい。
【0020】
給紙装置1Aは、例えばロール紙や連続帳票などの連帳紙を収容し、装置本体1Bへ連帳紙を給紙する。装置本体1Bは、給紙装置1Aから給紙された連帳紙に画像を形成する。巻取装置1Cは、装置本体1Bからの指示に従って装置本体1Bによって送出された連帳紙を巻き取る。
【0021】
図2は、装置本体1Bの構成例を示す図である。
図3は、装置本体1Bの制御系の主要部を示すブロック図である。
【0022】
図2、3に示す装置本体1Bは、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。装置本体1Bには、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色に対応する感光ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向(鉛直方向)に直列配置し、中間転写ベルト421に各色トナー像を順次転写させる縦型タンデム方式が採用されている。すなわち、装置本体1Bは、感光ドラム413上に形成されたYMCKの各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、連帳紙に二次転写することにより、画像を形成する。
【0023】
図2、3に示すように、装置本体1Bは、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、および制御部80を備える。
【0024】
制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83等を備える。CPU81は、ROM82または記憶部72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM83に展開し、展開したプログラムと協働して、給紙装置1A、装置本体1B、巻取装置1Cの動作を制御する。
【0025】
通信部71は、例えばネットワークカード、モデム、USB等の各種インターフェースを有する。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリー(いわゆるフラッシュメモリー)やハードディスクドライブで構成される。記憶部72には、例えば各ブロックの動作を制御する際に参照されるルックアップテーブルが格納される。
【0026】
制御部80は、通信部71を介して、LAN、WAN等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部80は、例えば、外部の装置から送信されたページ記述言語(PDL)による画像データ(入力画像データ)を受信し、これに基づいて連帳紙に画像を形成させる。また、制御部80は、通信部71を介して、給紙装置1Aおよび巻取装置1Cとの間で各種データの送受信を行う。
【0027】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。
【0028】
表示部21は、制御部80から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、各機能の動作状況等の表示を行う。また、ユーザーによるタッチ操作を受け付けて、操作信号を制御部80に出力する。
【0029】
操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部80に出力する。ユーザーは、操作表示部20を操作して、画質設定および、倍率設定、応用設定、出力設定、用紙設定などの画像形成に関する設定および用紙搬送指示を行うことができる。
【0030】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部80の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0031】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41および中間転写ユニット42等を備える。
【0032】
画像形成ユニット41は、Y成分用、M成分用、C成分用、K成分用の4つの画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kで構成される。画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有するので、以下では同一の符号で示す。画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0033】
感光ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL)、電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光を受けて一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダーに分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0034】
帯電装置414は、例えばスコロトロン帯電装置やコロトロン帯電装置等のコロナ放電発生器で構成される。帯電装置414は、コロナ放電によって感光ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0035】
露光装置411は、例えば複数の発光ダイオード(LED)が直線状に配列されたLEDアレイ、個々のLEDを駆動するためのLPH駆動部(ドライバーIC)、およびLEDアレイからの放射光を感光ドラム413上に結像させるレンズアレイ等を有するLEDプリントヘッドで構成される。LEDアレイの1つのLEDが、画像の1ドットに対応する。制御部80がLPH駆動部を制御することにより、LEDアレイに所定の駆動電流が流され、特定のLEDが発光する。
【0036】
露光装置411は、感光ドラム413に対して各色成分の画像に対応する光を照射する。感光ドラム413の電荷発生層で発生した正電荷が電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。これにより、感光ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0037】
現像装置412は、各色成分の現像剤(例えばトナーと磁性キャリアーとからなる二成分現像剤)を収容しており、感光ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。具体的には、現像剤担持体(現像ローラー)に現像バイアス電圧が印加され、感光ドラム413と現像剤担持体との電位差によって現像剤担持体上の帯電トナーが感光ドラム413の表面の露光部に移動し、付着する。
【0038】
ドラムクリーニング装置415は、感光ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0039】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、およびベルトクリーニング装置426等を備える。
【0040】
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置される支持ローラー423が駆動ローラーであることが好ましい。駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0041】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光ドラム413に圧接されることにより、感光ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0042】
二次転写ローラー424は、複数の支持ローラー423のうちの一つに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421に対向して配置される支持ローラー423はバックアップローラーと呼ばれる。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラーに圧接されることにより、中間転写ベルト421から連帳紙へトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0043】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0044】
その後、連帳紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が連帳紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、連帳紙の裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は連帳紙に静電的に転写される。トナー像が転写された連帳紙は定着部60に向けて搬送される。
【0045】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0046】
なお、中間転写ユニット42において、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成(ベルト式の二次転写ユニット)を採用してもよい。
【0047】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、および通紙経路部53等を備える。給紙部51は、給紙装置1Aから搬送された連帳紙を通紙経路部53へ導く。通紙経路部53は、中間搬送ローラー等を含む複数の搬送ローラーを備える。通紙経路部53は、給紙部51から給紙された連帳紙を画像形成部40(二次転写部)、定着部60、排紙部52の順に搬送する。排紙部52は、通紙経路部53から搬送された連帳紙を巻取装置1Cへ導く。
【0048】
定着部60は、加熱ローラー61、加熱ローラー61を加熱する加熱源61A、上加圧ローラー62、加熱ローラー61と上加圧ローラー62との間に架け渡される無端状の定着ベルト63、下加圧ローラー64等を備える。
【0049】
加熱源61Aは、加熱ローラー61の内部または近傍に配置される。制御部80によって加熱源61Aの出力が制御され、加熱ローラー61が加熱される。さらに定着ベルト63を回転させることによって、加熱ローラー61の熱が定着ベルト63全体に伝えられる。この定着昇温動作は、定着ベルト63が下加圧ローラー64から離間した状態のまま行われる。
【0050】
定着部60では、加熱ローラー61と上加圧ローラー62とに懸架された定着ベルト63と、下加圧ローラー64との間で圧着および離間が可能となっている。加熱ローラー61および上加圧ローラー62は、図示しない保持体に移動可能に保持されており、保持体には図示しない偏芯カムが接触している。偏芯カムはその支点を中心として回転し、偏芯カムの回転によって保持体は鉛直方向(圧着離間方向)に移動する。保持体の移動に伴って加熱ローラー61および上加圧ローラー62が移動し、これにより定着ベルト63を下加圧ローラー64に対して圧着および離間することが可能となっている。なお、偏芯カムは、図示しない駆動部(モーターやギア)が駆動することによって回転する。駆動部は、制御部80の指示によって駆動される。
【0051】
定着ベルト63が下加圧ローラー64に圧着状態とされることにより、連帳紙を狭持して搬送するニップ部が形成される。連帳紙はニップ部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が定着される。
【0052】
図4は、定着ベルト63が下加圧ローラー64から離間した直後の状態を示す図である。連帳紙への画像形成を停止させる場合は、まず、画像形成を停止後、加熱源61Aへの電力供給を停止させる。その後、形成した画像が定着部60より下流側へ搬送されると、連帳紙の搬送を停止させ、定着ベルト63を下加圧ローラーから離間させる。ここで、連帳紙の搬送を停止した直後では、
図4のように連帳紙は変形していない。
【0053】
図5は、定着部60において連帳紙に変形が生じた場合を示す図である。搬送停止後に連帳紙が定着部60(特に、定着ベルト63と下加圧ローラー64との間)に停滞すると、加熱源61Aへの電力供給を停止させて定着部60の温度を下げているものの、定着部60に依然として残っている熱により連帳紙に変形が生じる。この変形により、定着ベルト63を下加圧ローラー64から離間しているにもかかわらず定着ベルト63に連帳紙が接触することがある(例えば、
図5のように、鉛直方向に波打つように変形する場合など)。この状態で、再び画像形成を開始させる準備として温度が下がった定着部60に対して定着昇温を行うために定着ベルト63を回転させると、接触している連帳紙によって定着ベルト63に周方向の傷が付いてしまう。
【0054】
そこで、本発明の実施形態においては、定着ベルト63を回転開始させる前に、連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態にしてから、定着ベルト63を回転開始させる。この処理は、定着ベルト63が離間状態であり、連帳紙の搬送が停止されている状態で定着ベルト63を回転させようとする場合に、定着ベルト63を回転させる前に行われる。
【0055】
図6は、連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態にする例として、連帳紙を移動させることを説明する図である。
図6において、点線は連帳紙を移動させる前の連帳紙の位置を示し、矢印は連帳紙を移動させる向きを示す。定着ベルト63を回転開始させる場合は、
図6のように定着ベルト63から連帳紙を移動させてから定着ベルト63を回転させる。このようにすることにより、定着ベルト63の回転開始時には定着ベルト63に連帳紙が接触していないため、定着ベルト63に回転に伴う傷が付くのを防止できる。画像形成装置1としては、形成画像の品質低下を防止できる。なお、連帳紙を移動させる向きは矢印の向きに限られず、定着ベルト63に接触しない状態になるように移動させれば十分である。
【0056】
連帳紙を移動させる手段としては、接触を防ぐ(たるみをずらす、押さえる、または通紙経路部53の形状や位置を変化させる等)ための新たな部品を設けてもよい。例えば、定着ベルト63の付近に移動可能なバーを設け、これを搬送方向に移動させることでたるみを移動させたり、鉛直方向に移動させることでたるみを押さえたりしてもよい。ただし、連帳紙の搬送に用いる部材(搬送ローラー等)のみを用いると、省スペース化および低コスト化が可能となり、好ましい。
【0057】
図7は、連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態にする例として、定着ベルト63を移動させることを説明する図である。
図7において、点線は定着ベルト63移動させる前の定着ベルト63の位置を示し、矢印は定着ベルト63を移動させる向きを示す。制御部80は、加熱ローラー61および上加圧ローラー62を図示しない駆動部によって移動させることによって定着ベルト63を移動させる。この際、定着ベルト63が連帳紙から離れるように定着ベルト63を移動させればよく、定着ベルト63を移動させる向きは必ずしも
図7の矢印の向きでなくてもよい。ただし、ニップ形成のために圧着および離間させる際の方向(鉛直方向)に定着ベルト63を移動させるように構成すると、他の方向に移動させる場合と比べて簡易な構成で移動を実現することができ、他の方向に移動させるための余分なスペースが不要である。特に、定着ベルト63の移動開始時の位置よりも鉛直方向において下でのみ定着ベルト63を移動させるのが好ましい。また、定着ベルト63を移動させた場合には、回転開始時には移動開始時の位置に戻すようにすると、回転開始後の動作に影響を与えないので効果的である。
【0058】
また、連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態にする例として、定着ベルト63の移動と前述した連帳紙の移動とを組み合わせて定着ベルト63に連帳紙が接触していない状態にしてもよい。
【0059】
図8は、連帳紙の変形度が大きく、定着ベルト63に連帳紙が押し付けられるように接触している場合に起こり得る問題を説明する図である。
図8(a)は、定着部60において連帳紙に変形が生じている状態を示す(
図5と同様の図である)。この際、定着ベルト63のみを移動させても、
図8(b)のように、定着ベルト63の移動に伴って定着ベルト63との接触を維持するように連帳紙が移動してしまう場合がある。なお、点線は連帳紙が移動する前の連帳紙の位置を示している。以上の問題に対応するため、少なくとも連帳紙を移動させるのが好ましい。
【0060】
図9は、定着昇温処理の手順を示すフローチャートである。定着昇温処理では、定着昇温および定着昇温に際して連帳紙や定着ベルト63を移動させる処理が行われる。定着昇温処理は、定着昇温の要求があった場合に開始される。
【0061】
ステップS101の動作選択では、制御部80は連帳紙の移動に関する動作を選択する。選択手段については後述する。ステップS102(ステップS102に動作Bが選択された場合)において、制御部80は下流ローラーを駆動させる。
【0062】
図10は、下流ローラー65の動作を説明する図である。下流ローラー65は、定着ベルト63より下流側に設けられる搬送ローラーである。下流ローラー65を駆動させて連帳紙を搬送させることにより、
図10(a)のように連帳紙のたるみが定着ベルト63に接触していない状態になるように連帳紙を移動させることができる。
【0063】
このとき、上流ローラー(定着ベルト63より上流側の搬送ローラー)を駆動させてもよいが、上流ローラーを駆動させず、下流ローラー65のみを駆動させると、連帳紙を引っ張ることができるので、連帳紙の移動に伴ってたるみを解消しやすくなる。また、連帳紙の移動により上流側にたるみが移動すると、たるみが装置内部に残り続けるため様々な配慮が必要となる。
【0064】
ただし、
図10(a)の状態では、連帳紙の搬送が不十分(十分である場合は次に述べる)であるため、下流ローラー65よりも上流側(定着ベルト63側)にたるみが残っている。そのため、たるみが定着ベルト63側に移動し、再び連帳紙が定着ベルト63に接触してしまう可能性がある。
【0065】
そこで、下流ローラー65を駆動させる際に、
図10(a)に点線で示す定着ベルト63のニップ部にあった連帳紙が、下流ローラー65を超えるまで(
図10(b)に点線で示す位置まで)搬送させるのが好ましい(ステップS103)。そうすることにより、
図10(b)のように下流ローラー65に関し定着ベルト63側にはたるみがない状態になるので、より確実に接触を防ぐことができる。
【0066】
下流ローラー65によって連帳紙のニップ部位置が下流ローラー65を過ぎるように移動させた後(ステップS103でYES)、制御部80は下流ローラー65を停止させ(ステップS104)、加熱源61Aおよび定着ベルト63を駆動させて定着昇温を開始させる(ステップS105)。
【0067】
その後、制御部は定着昇温の進行度に応じて下流ローラー65を駆動させ、連帳紙の微速搬送を開始させる(ステップS106)。ここで微速とは、画像形成速度より遅い速度を意味する。通常の速度(画像形成速度)で搬送させてもよいが、微速搬送とするほうが好ましい。微速搬送させることにより、通常の速度で搬送させた場合と比較して、連帳紙の無駄を抑えることができる。
【0068】
一方、搬送速度が遅すぎると定着昇温で生じた熱によって連帳紙が再び変形し、その変形によって定着ベルト63に接触してしまう。そのため、昇温時は定着部60の温度(定着温度)に応じて徐々に搬送速度を上げていくのが好ましい(ステップS107)。これにより、連帳紙の無駄を抑えつつ連帳紙の変形を抑えることができる。
【0069】
なお、画像形成を行っていない場合に既定の時間間隔で連帳紙の搬送を行うような画像形成装置(例えば、特許文献1)では、画像形成を行っていない場合に連帳紙の無駄が発生し続けるのに対し、本実施の形態では、前述した連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態にする処理と、いま述べた定着昇温の処理と、において連帳紙を搬送すれば十分であるため、連帳紙の無駄を抑えることができる。
【0070】
制御部80は、連帳紙の搬送開始後、定着部60の温度を監視し、定着昇温が完了したか否かを判断する(ステップS108)。定着昇温が完了していない場合(ステップS108でNO)、定着温度に応じて再び連帳紙の速度を変更させる(ステップS107)。定着昇温が完了した場合(ステップS108でYES)、定着昇温処理を終了する。
【0071】
次に、ステップS101において動作Cが選択された場合について説明する。
図11は、定着ベルト63を圧着させてから連帳紙を移動させる場合について、定着ベルト63および連帳紙の状態を示す図である。
図11(a)は、連帳紙を移動させる前の状態を示している(
図5と同じ図である)。
【0072】
動作Cでは、制御部80は、まず定着ベルト63を圧着させる(ステップS109)。
図11(b)は、この時の状態を示している。なお、定着ベルト63を離間状態で回転させるのではなく、このように単に圧着させる場合は、定着ベルト63に周方向の傷が付くことはない。
【0073】
定着ベルト63を圧着させると(ステップS109の後)、制御部80は下流ローラー65および定着ベルト63を駆動させる(ステップS110)。定着ベルト63が圧着状態である場合に下流ローラー65および定着ベルト63を駆動させても、連帳紙は定着ベルト63の回転に伴って移動(搬送)されるため、定着ベルト63に対する相対位置が変化せず、定着ベルト63に周方向の傷は付かない。ステップS111は、ステップS103と同様である。
【0074】
連帳紙のニップ部位置が下流ローラーを過ぎるまで連帳紙を移動させると(ステップS111でYES)、下流ローラー65および定着ベルト63を停止させる(ステップS112)。この時の状態が
図11(c)である(矢印は搬送方向を示す)。このように定着ベルト63を圧着させてから連帳紙を移動させると、定着ベルト63を搬送に用いない場合と比較して搬送力が高くなるので、より確実に連帳紙を移動させることができ、連帳紙のたるみを伸ばすことができる。
【0075】
下流ローラー65および定着ベルト63を停止させた後(ステップS112の後)、制御部80は
図11(d)のように定着ベルト63を離間させる(ステップS113)。
図9(d)は
図4と同じ図であり、連帳紙の移動によって連帳紙のたるみを解消させているので、連帳紙が定着ベルト63に接触していない状態になっており、定着ベルト63を回転させても定着ベルト63に傷が付かない。ステップS113の後、処理はステップS105に進む。
【0076】
次に、ステップS101の動作選択について説明する。動作選択では、制御部80は、連帳紙の移動に関する動作を、動作A(何もしない)、動作B(下流ローラー65により引っ張る)、動作C(定着ベルト63を圧着させてから移動させる)の3つの動作の中から選択する。動作Aは、定着ベルト63に連帳紙が接触していない場合に対応する(例えば、連帳紙の変形度が小さいと判断される場合)。動作BおよびCは、定着ベルト63に連帳紙が接触する場合に対応する。そのうち、動作Cが接触している可能性が高い場合(例えば、連帳紙の変形度が大きいと判断される場合)に対応する。
【0077】
動作Bと動作Cとを比較すると、動作Cのほうが動作Bより搬送力が高く、変形度の大きい連帳紙でも安定して搬送することができる。一方、動作Cは定着ベルト63の圧着離間を行うため、動作Bよりも処理に時間がかかる。そのため、変形度が動作Cに対応する変形度より小さい場合は、処理速度が速い動作Bのほうが適している。
【0078】
図12は、動作選択について説明する表である。
図12(a)は連帳紙の変形量に応じて動作が切り替わる例である。変形量が小の場合、定着ベルト63に連帳紙が接触している可能性が低いため、動作Aを選択する。変形量が大の場合、連帳紙の搬送に高い搬送力が必要と判断され、動作Cを選択する。変形量が中の場合、動作Bを選択する。連帳紙の変形量に応じて動作を切り替えることで、連帳紙移動に関して適切な処理を行うことができる。
【0079】
図13は、連帳紙の変形量を検出するための変形量検出部を設けた例である。通紙経路部53に沿って発光部と受光部とが定着ベルト63を挟むようにフォトセンサーが設けられる。これにより、連帳紙の変形量が所定量より大きい場合に検知が可能となる。さらに、受光検知量により複数の段階で変形量を検出することも可能である。変形量の検出手段としては、アクチュエーターやレーザー変位計を用いることもできる。
【0080】
図12(b)は、使用している連帳紙の種類に応じて動作が切り替わる例である。塗工紙やフィルムは、普通紙に比べ熱の影響を受けやすく変形が生じやすい。そのため、塗工紙およびフィルムを使用している場合は動作Cを選択する。普通紙を使用している場合は動作Bを選択する。連帳紙の種類に応じて動作を切り替えるので、変形量検出などの手間をかけずに動作を選択することができる。
【0081】
図12(c)は、変形量(
図12(a))と連帳紙種類(
図12(b))を組み合わせて動作を選択する例である。
図12(c)では、同じ変形量でも連帳紙の種類に応じて動作が切り替わるように設定されている。これは、例えばフィルムは普通紙よりも複雑な変形(尖りなど)を生じやすいからである。このような場合にいったん定着ベルト63を圧着させることによって、連帳紙の形状を矯正しやすくなる。この動作選択の例(
図12(c))では、変形量(
図12(a))のみや連帳紙種類(
図12(b))のみに応じて動作選択する場合に比べ、より適切な処理を行うことができる。
【0082】
図12に基づき、動作選択について説明したが、これらの例は適宜設定変更が可能なものである。また、動作は3つ(動作A、B、C)のみならず、さらに多くの種類に分けてもよい。また、動作の切り替えを行わずに1つの動作のみを毎回選択してもよい。例えば、必ず動作Cを選択するように設定した場合は、処理に時間はかかるが、確実に定着ベルト63の傷を防止できる。
【0083】
また、これらの動作選択の手段以外に、定着部60または装置本体1B内の温度や湿度(状態)に基づいて動作を選択してもよい。前のジョブからの時間に基づいて動作を選択してもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は定着ベルト63のみならず、圧着離間可能な回転部材からなる回転駆動部に対して適宜用いることができる。また、本実施形態の定着部60は定着ベルト63を有しているが、定着ベルト63を有さない形態(例えば、クリーニングを目的として離間状態で回転する等)であっても本発明を適用することができる。
【0085】
また、
図9のステップS107において、定着温度に応じて連帳紙の搬送速度を変更しているが、これに連帳紙の種類を組み合わせて搬送速度を決定してもよい。その場合は、塗工紙、フィルムの場合の搬送速度が普通紙の場合よりも速くなるように設定するのが好ましい。これにより、連帳紙の種類に応じて適切な搬送速度に変更することができる。
【0086】
また、連帳紙の移動に際しては、上流ローラーによって上流側へ連帳紙を移動させてもよい。このようにすることで、連帳紙の無駄を防ぐことができる。