特許第6222224号(P6222224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222224
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ガスバリアーフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20171023BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20171023BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B05D7/24 302Y
   B05D3/06 102Z
   B05D7/04
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-513653(P2015-513653)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2014059796
(87)【国際公開番号】WO2014175029
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-89919(P2013-89919)
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 浩了
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 達也
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−016854(JP,A)
【文献】 特開2012−143996(JP,A)
【文献】 特開2012−056101(JP,A)
【文献】 特開2012−056130(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/092085(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161894(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/002026(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/007543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00〜B05D7/26
B32B1/00〜B32B43/00
C08J7/00〜C08J7/18
B29C71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送し、前記ポリシラザン層に前記エキシマ光を照射して、ガスバリアー層を改質する表面改質処理を行い製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記表面改質処理時の前記エキシマランプと前記基材間の空間領域における平均水蒸気濃度、150〜930ppmの範囲内とすることを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度が、50mW/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度が、80mW/cm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項4】
対向する位置にある前記エキシマランプのランプ管表面と前記基材上のポリシラザン層面との最短距離が、0.1〜9.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記表面改質工程が、複数個のエキシマランプが設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記表面改質工程が、前記エキシマランプが前記基材の搬送方向に対し10基以上並列に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリシラザン化合物が、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシラザン化合物を含むポリシラザン層にエキシマランプを照射して表面改質してガスバリアー層を形成して製造するガスバリアーフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック基板やフィルム表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアー性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途等に広く用いられている。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)素子等で使用されている。特に、液晶表示素子や有機EL素子などでは、水蒸気や空気の内部浸透が品質の劣化を招く要因となるため、高度なガスバリアー性(ガス遮断性)が要求されている。
【0003】
このような問題点を解決するために、透明フィルム基材上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリアー性を付与する新たな技術が種々検討されており、その中の一つとしてポリシラザンを塗布したフィルム基材に真空紫外光(以下、「VUV」、「VUV光」ともいう。)を照射することにより、ガスバリアー性に優れたフィルムを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1、2及び3参照。)。
【0004】
特許文献1には、シラザン化合物溶液を塗布した塗膜に真空紫外光照射を施すことにより、酸化ケイ素膜を作製する方法が提案されている。この方法は、シラザン化合物内の原子間結合力より大きい、真空紫外光と呼ばれる波長として100〜200nmの範囲内の光エネルギーを用いる。これにより、光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、原子の結合を直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化ケイ素膜(ガスバリアー層)の形成を行うことができる。例えば、40mW/cmの照度を有するVUV光源のエキシマランプを3〜10分間照射することにより、シラザン化合物塗膜の一部、あるいは全てを酸化ケイ素膜へと転化させる方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、水蒸気濃度が140ppm以下で、酸素濃度が0.5体積%以下という、実質的に水蒸気及び酸素を含まない環境下で、エキシマランプを照射する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法には、連続的に基材等を搬送させながら酸化ケイ素膜を形成する方法に関する記載は全く無く、また、連続生産する際のエキシマランプの寿命及びそれに関連した生産安定性についても、一切言及がなされていない。
【0007】
特許文献3には、ロール・ツー・ロール方式で、基材を連続搬送させながら、水蒸気濃度が1000〜4000ppm、酸素濃度が0.05〜21体積%の環境下で、ポリシラザンを塗布したフィルム基材に真空紫外光を照射して改質処理を施して、ガスバリアーフィルムを製造する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3には、連続生産する際のエキシマランプの寿命及びそれに関連した生産安定性については、一切言及されていない。
【0009】
また、エキシマランプは、長時間点灯により、照度の低下だけでなく、ランプ自身から発する真空紫外光によりエキシマランプ管がもろくなり、これに起因してエキシマランプの破損が発生することが知られている。このエキシマランプの破損が発生する時間は、一様ではなく、かつ破損発生の兆候も見られず、エキシマランプの破損が発生する時期を予測することが困難であった。
【0010】
このようなランプ破損は突然発生するため、連続搬送方式で改質処理を行う際には、生産安定性に確保する上では大きな障害となっている。すなわち、上記のようなエキシマランプの破損が発生すると、塗膜に照射される光量が低下し、目標とする性能に到達することができず、結果として製品のロスが発生することとなる。特に、照射部を複数のエキシマランプにより構成する場合には、破損発生までの時間が短いと、常にランプのどれかに破損が発生し、安定した性能が発揮できない。また、点灯時間に対する照度低下が速い場合も、ランプの交換頻度が多くなり、生産安定性を低下させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−255040号公報
【特許文献2】国際公開第2011/007543号
【特許文献3】特表2009−503157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、連続生産方式で行うエキシマランプ照射による表面改質処理方法を用い、エキシマランプの寿命低下(例えば、ランプ照度の低下や、エキシマランプの破損)を抑制することにより、連続生産方式においても、安定してガスバリアー層を形成することができるガスバリアーフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、基材上の少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を有する基材を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送して、前記ポリシラザン層にエキシマ光を照射して、ガスバリアー層を改質する表面改質処理を行い製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、表面改質処理時のエキシマランプと基材間の空間領域における平均水蒸気濃度を特定の範囲に制御するガスバリアーフィルムの製造方法を適用することにより、エキシマランプの寿命低下(ランプ照度の低下や、エキシマランプの破損)を抑制することができ、連続生産時において安定してガスバリアー層を形成することができるガスバリアーフィルムの製造方法を実現することができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0015】
1.基材上の少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送し、前記ポリシラザン層に前記エキシマ光を照射して、ガスバリアー層を改質する表面改質処理を行い製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記表面改質処理時の前記エキシマランプと前記基材間の空間領域における平均水蒸気濃度が、150〜930ppmの範囲内とすることを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
【0016】
2.前記エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度が、50mW/cm以上であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【0017】
3.前記エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度が、80mW/cm以上であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【0018】
4.対向する位置にある前記エキシマランプのランプ管表面と前記基材上のポリシラザン層面との最短距離が、0.1〜9.0mmの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【0019】
5.前記表面改質工程が、複数個のエキシマランプが設置されていることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【0020】
6.前記表面改質工程が、前記エキシマランプが前記基材の搬送方向に対し10基以上並列に配置されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【0021】
7.前記ポリシラザン化合物が、パーヒドロポリシラザンであることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記手段により、連続生産適性を有し、エキシマランプのランプ照度の低下やエキシマランプの寿命低下を抑制でき、かつガスバリアー層を安定して形成することができるガスバリアーフィルムの製造方法を提供することができる。
【0024】
すなわち、本発明の技術的特徴は、表面改質処理時のエキシマランプと基材間の空間領域(以下、処理空間ともいう。)における平均水蒸気濃度を、150〜930ppmの範囲内に制御して表面改質処理を施すことを特徴とするが、表面改質処理時の平均水蒸気濃度が150ppm以上であれば、エキシマ光によりポリシラザン層から発生するアンモニア成分とエキシマランプ管とが反応することによる照度低下を防止することができる。一方、表面改質処理時の平均水蒸気濃度が930ppm以下であれば、エキシマ光によって活性化されるエキシマランプ管と、雰囲気中の水分とが反応することにより、エキシマランプの脆弱化を防止することができる。したがって、平均水蒸気濃度として150〜930ppmの範囲内にある処理空間で表面改質処理を行うことにより、エキシマランプ管の照度安定性及び脆弱耐性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明の表面改質処理方法に用いられるキセノンエキシマ照射ユニットの外観図
図1B】本発明の表面改質処理方法に用いられるキセノンエキシマ照射ユニットの概略断面図
図2】本発明の表面改質処理部を有し、連続搬送してガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルム製造装置の構成の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、基材上の少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送し、前記ポリシラザン層に前記エキシマ光を照射して、ガスバリアー層を改質する表面改質処理を行い製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記表面改質処理時の前記エキシマランプと前記基材間の空間領域における平均水蒸気濃度、150〜930ppmの範囲内とすることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0027】
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度が、50mW/cm以上であること、更には80mW/cm以上であることが、ランプの連続照射時の照度安定性に優れている観点から好ましい。
【0028】
また、対向する位置にある前記エキシマランプのランプ管表面と前記基材上のポリシラザン層面との最短距離を0.1〜9.0mmの範囲内に設定することにより、安定した基材搬送性とランプの連続照射時の照度安定性に優れている観点から好ましい。
【0029】
また、前記表面改質工程は、生産性の観点から複数個のエキシマランプが設置されていること、更には前記エキシマランプが、前記基材の搬送方向に10基以上並列に配置されている構成であることが好ましい。
【0030】
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、水分子や酸素分子等の気体の透過を抑制することを示し、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(温度:40±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%)が1×10−1g/(m・24h)以下であり、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1mL/m・24h・atm以下であることを意味する。
【0031】
また、本発明でいう表面改質処理時におけるエキシマランプと基材間の空間領域における平均水蒸気濃度とは、エキシマランプを発光させた状態で、当該空間領域の10か所について、静電容量式露点計又は鏡面冷却式露点計を用いて水蒸気濃度を測定し、その算術平均値をもって、本発明でいう空間領域における平均水蒸気濃度と定義する。なお、測定温度は、エキシマランプの照射条件により空間領域の温度が変化するため、一概に規定することはできない。
【0032】
また、本発明において、「真空紫外線」、「真空紫外光」、「VUV」、「VUV光」とは、具体的には波長が100〜200nmの範囲内にある光を意味する。
【0033】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0034】
《ガスバリアーフィルムの製造方法》
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、基材上の少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送し、前記ポリシラザン層に前記エキシマ光を照射して、ガスバリアー層を改質する表面改質処理を行い製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、前記表面改質処理時の前記エキシマランプと前記基材間の空間領域における平均水蒸気濃度が、150〜930ppmの範囲内とすることを特徴とする。
【0035】
従って、本発明においては、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層に改質処理を施した層を、ガスバリアー層と称す。
【0036】
なお、本発明において、表面改質処理時に、本発明で規定する平均水蒸気濃度を150〜930ppmの範囲内に制御する空間領域とは、具体的には、後述する図1Bに示す空間領域Sの領域内で、エキシマランプ3より照射されるエキシマ光照射領域7と定義する。
【0037】
以下、本発明の表面改質処理方法で適用する具体的な各要件について説明する。
【0038】
はじめに、本発明のガスバリアーフィルムの製造方法について、図を交えて説明する。
【0039】
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、少なくとも一方の面側に、ポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層を有する基材を、エキシマ光を発光するエキシマランプを具備した表面改質工程内を連続的に搬送し、前記エキシマランプと前記基材間の空間領域の平均水蒸気濃度が150〜930ppmの範囲内である条件下で、前記ポリシラザン層に表面改質処理を施して、ガスバリアー層に改質することを特徴としている。
【0040】
すなわち、前述のように、表面改質処理時の平均水蒸気濃度が150ppm以上であれば、エキシマ光によりポリシラザン層から発生するアンモニア成分とエキシマランプ管とが反応することによる照度低下を防止することができる。一方、表面改質処理時の平均水蒸気濃度が930ppm以下であれば、エキシマ光によって活性化されるエキシマランプ管と、雰囲気中の水分とが反応することにより、エキシマランプの脆弱化を防止することができる。したがって、水蒸気濃度として150〜930ppmの範囲内で表面改質処理を行うことにより、エキシマランプ管の照度安定性及び脆弱耐性を向上することができる。
【0041】
また、対向する位置にあるエキシマランプのランプ管表面と基材上のポリシラザン層面との最短距離が、0.1〜9.0mmの範囲内であることが好ましい態様である。
【0042】
また、本発明に係る表面改質工程が、複数個のエキシマランプ、好ましくはエキシマランプが基材の搬送方向に対し10基以上並列に配置されている構成が好ましい実施の態様である。
【0043】
図1Aは、本発明のガスバリアーフィルムの製造方法に用いることができるキセノンエキシマ照射ユニットの一例を示す外観図である。図1Aにおいて、キセノンエキシマ照射ユニット1は、エキシマランプホルダー2とエキシマランプ3と、複数の窒素ガス及び水蒸気供給用配管入口4とを備えている。
【0044】
図1Bは、図1Aで示したキセノンエキシマ光照射ユニット1のA−Aの切断面における断面図である。図1Bにおいて、エキシマランプホルダー2内には、窒素ガス及び水蒸気供給用配管入口4から、窒素ガス(N)と、所定の水蒸気濃度となる条件で含む水蒸気(HO)とが供給され、窒素ガス及び水蒸気供給用配管5を通って、エキシマランプ3の幅手の両サイドから、下方に位置するポリシラザン化合物を有する塗布液を塗布して形成されたポリシラザン層8を表面に有する基材9に向かって窒素ガス及び濃度が制御された水蒸気6を噴射させることができる。また、エキシマランプ3は、エキシマ光7を下方の基材9に向かって照射する。
【0045】
本発明に係るエキシマランプ3の近傍の水蒸気濃度は、図1Bに示す空間領域Sを、水蒸気濃度測定センサーを直接配置もしくは、チューブ等でのサンプリングにより測定できる。なお、本発明でいう空間領域とは、前述のように、エキシマランプ3より照射されるエキシマ光照射領域7であると定義する。
【0046】
この時、エキシマ光の照射領域7内での測定のサンプリング数は10か所とし、その平均値を求め、これを空間領域Sであるエキシマ光の照射領域7における平均水蒸気濃度とする。測定された水蒸気濃度情報に従って、所望の水蒸気濃度となるように、窒素ガス及び水蒸気供給用配管入口4から供給する混合気体中の水蒸気濃度を制御する方法が好ましい。また、後述の図2に示すような周囲を密閉した構造であるエキシマ光照射部34の内部に、適当な間隔でエキシマランプのエキシマ光の照射領域に複数基(例えば、10基)の水蒸気濃度測定センサーSを配置し、複数の測定データの平均値を求め、その測定結果より、窒素ガス及び水蒸気供給用配管入口4から供給する混合気体中の水蒸気濃度を制御する方法も適用することができる。
【0047】
また、その他の方法としては、後述の図2に示すような周囲を密閉した構造であるエキシマ光照射部34の内部に、適当な間隔でエキシマランプのエキシマ照射領域に複数基、例えば、10基の水蒸気濃度測定センサーを配置し、複数の測定データの平均値を求め、その測定結果より、エキシマ光照射部34の内部に設けた水蒸気濃度調整装置により、加湿あるいは除湿を行って、エキシマ光照射部34の内部及びエキシマランプのエキシマ照射領域の水蒸気濃度を所定の条件に制御する方法も、好適な方法である。
【0048】
水蒸気濃度測定センサーとしては、一般に市販されている静電容量式露点計や鏡面冷却式露点計を好ましく用いることができる。
【0049】
また、図1Bに示すように、本発明においては、エキシマランプ3のランプ管表面と基材上のポリシラザン層8面との最短距離hが、0.1〜9.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0050】
すなわち、当該最短距離hが0.1mm以上であれば、表面改質処理時に、エキシマランプと基材間に、それぞれ接触することなく、安定した搬送性を確保することができる。一方、短距離hが9.0mm以下であれば、エキシマランプより照射されるエキシマ光(真空紫外光)が、大気中の酸素や水分子に吸収されることなく、所望のエキシマ光を、安定して基材表面に照射することができる。
【0051】
図2は、本発明に係る表面改質処理部を有し、連続搬送してガスバリアーフィルムを製造することができるガスバリアーフィルム製造装置の構成を示す概略断面図であり、一例として、積層したロール状のフィルム基材21を用いて連続搬送するロール・ツー・ロール方式の製造装置を示してある。
【0052】
図2に示すガスバリアーフィルム製造装置30では、フィルム基材21をロール状に積層した状態から繰り出すための繰り出し部31と、フィルム基材21上にポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布してポリシラザン層を形成するための塗布部に装備したコーター32と、フィルム基材21上に形成したポリシラザン層を乾燥する乾燥部33と、フィルム基材21上のポリシラザン層にエキシマ光を照射してポリシラザン層を改質処理するエキシマ光照射部34と、改質処理により得られたガスバリアーフィルムをロール状に巻き取る巻き取り部35を備え、フィルム基材を連続的に搬送しながら表面改質処理を行う。
【0053】
より具体的な方法としては、繰り出し部31において、長尺のフィルム基材21をロール状に積層した積層ロールからフィルム基材21を繰り出す。次いで、塗布部に装備した湿式塗布方式のコーター32を用いて、フィルム基材21上にポリシラザン化合物を有する塗布液を、コーター32への供給量を制御しながら所望の湿潤膜厚で塗布して、フィルム基材21上に湿潤状態のポリシラザン層8を形成する。次いで、形成した湿潤状態のポリシラザン層8を有するフィルム基材21を乾燥部33に移動し、温風、加熱ヒーター等の乾燥手段を用いた乾燥機によって、フィルム基材21上のポリシラザン層8を乾燥する。
【0054】
乾燥したポリシラザン層8を形成したフィルム基材21は、次工程であるエキシマ光照射部34に移動する。
【0055】
エキシマ光を照射してポリシラザン層8に表面改質処理を施すエキシマ光照射部34は、複数の図1に示したエキシマ光照射ユニットU1〜U30と、フィルム基材21を搬送するための搬送手段20を備えている。さらに、個々のエキシマ光照射ユニットU1〜U30に窒素ガス及び水蒸気を供給するための配管(不図示)とエキシマ光照射部34内の水蒸気濃度を調整し、窒素ガス及び水蒸気雰囲気にするための窒素ガス及び水蒸気のガス注入口36と、窒素ガス及び水蒸気の排出口37とを備えている。このエキシマ光照射部34内部には、蒸気濃度測定センサー(不図示)が設けられており、その測定情報に従って、窒素ガス及び水蒸気の混合ガス中の水蒸気濃度を所定の条件に制御する。
【0056】
搬送ロール20によって搬送されるフィルム基材21の下部には、フィルム基材21の塗膜と反対側の面を大気圧に対して減圧にするための部材として、吸引壁38が存在する。複数の搬送ロール20の間には間隙が存在するため、吸引壁38のフィルム基材21側を吸引口39から真空ポンプ(不図示)を用いて吸引することにより、フィルム基材21の塗膜と反対側の面を大気圧に対して減圧にすることができる。40は、減圧の際の圧力を測定する位置を示している。
【0057】
本発明の表面改質処理方法においては、図2に例示したように、エキシマ光照射部34が複数個のエキシマランプ(エキシマ光照射ユニット1)で構成されていることが、処理効率を上げることができる点から好ましい構成である。
【0058】
より好ましくは、エキシマランプがフィルム基材の搬送方向に対し10基以上並列に配置されている構成であることが好ましい実施の態様である。少数のエキシマランプを用いた方法では、所望の改質処理を達成するためには高照射エネルギー量を基材に付与する必要があり、このようなエキシマ光の照射により、基材の温度が上昇して、基材が熱によるダメージを受けやすくなる。これに対し、エキシマランプを10基以上使用することにより、基材への熱ダメージを抑制し、かつ連続的に高速で表面改質処理を行うことが可能となる。
【0059】
《エキシマ処理》
次いで、ポリシラザン化合物を含有するポリシラザン層の改質処理として、上記で説明した本発明のエキシマ光を発光するエキシマランプを用いた表面改質処理(以下、エキシマ処理ともいう。)の詳細について説明する。
【0060】
本発明におけるエキシマ光照射工程において、エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度としては、好ましくは50mW/cm以上であり、より好ましくは50〜500mW/cmの範囲内であり、更に好ましくは80mW/cm以上であり、特に好ましくは、80〜200mW/cmの範囲内である。ピーク照度が50mW/cm以上であれば、改質効率の低下の懸念がなく、500mW/cm以下であれば、ポリシラザン層にアブレーション(熱破壊による構成成分の蒸発や飛散)が生じることがなく、基材にダメージを与えないため好ましい。一般に、低い照度条件では、所望の照度を得るためには、多数のエキシマランプ、あるいは改質処理の低速化が必要となり、逆に高い照度条件では、改質処理効率としては十分であるが、エキシマランプの寿命が短くなるという問題を抱えており、本発明では、50〜500mW/cmの範囲内とすることが、上記の条件を両立することができる観点から好ましい。
【0061】
エキシマランプのランプ管表面におけるピーク照度の測定は、照度計(浜松ホトニクス製、C9536/H9535−172)を、エキシマランプのランプ管面下部に所定の位置に配置して測定することができる。所望のピーク照度を得るためには、エキシマランプの種類の選択、あるいは印加電圧等を適宜調整する。
【0062】
ポリシラザン層面におけるエキシマ光の照射エネルギー量は、200〜20000mJ/cmの範囲内であることが好ましく、500〜10000mJ/cmの範囲内であることがより好ましい。200mJ/cm以上であれば、改質を十分に行うことができ、20000mJ/cm以下であれば、過剰改質にならずクラック発生や、基材の熱変形を防止することができる。
【0063】
また、エキシマ光の照射時間を長くすることで、ポリシラザン層に占める改質部分の膜厚を厚くすることが可能となる。しかし、照射時間が長過ぎると改質処理を施すポリシラザン層面の平面性の劣化やガスバリアーフィルムとしたときに、他の構成材料にダメージを与える場合がある。本発明においては、連続生産を可能にするためにも、照射時間としては0.1秒〜10分の範囲内にすることが好ましく、より好ましくは0.5秒〜3分の範囲内である。
【0064】
本発明においては、真空紫外光源としてエキシマランプを用いることを特徴とし、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。Xe、Kr、Ar、Neなどの希ガスの原子は、化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。
【0065】
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
【0066】
紫外線光照射時の反応には、酸素が必要であるが、エキシマ光は、酸素による吸収があるため、酸素が存在すると紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、エキシマ光の照射においては、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、エキシマ光照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲内である。
【0067】
エキシマ光照射時に、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
【0068】
《ポリシラザン化合物及び各構成材料》
〔ポリシラザン化合物〕
本発明の表面改質処理方法においては、ポリシラザン化合物にエキシマランプによりエキシマ光を照射して、ポリシラザン化合物の一部を酸化ケイ素(SiO)へと改質する。
【0069】
〔一般式(1)で表される構造を有する化合物〕
本発明に係るポリシラザン層の形成に適用するポリシラザンとは、分子構造内にケイ素−窒素結合を有するポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、適用するポリシラザンとしては、特に制限はないが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0070】
【化1】
【0071】
上記一般式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは、炭素原子数2〜20のアルケニル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは、炭素原子数6〜30のアリール基)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜20のシリル基)、アルキルアミノ基(好ましくは、炭素原子数1〜40、より好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基)又はアルコキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜30のアルコキシ基)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも1つは、水素原子であることが好ましい。
【0072】
上記R、R及びRにおけるアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基としては、従来公知のポリシラザンに適用することができるアルキル基を用いることができる。
【0073】
上記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物は、数平均分子量としては100〜5万の範囲内であることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定して求めることができる。
【0074】
本発明では、得られるガスバリアー層としての緻密性の観点からは、R1、及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(略称:PHPS)が特に好ましい。パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は、数平均分子量(Mn)で約600〜2000(ポリスチレン換算)の範囲内で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
【0075】
一般式(1)において、Rに水素原子、R及びRに有機基を有するポリシラザン、又はR及びRに有機基、Rに水素原子を有するものは−(RSiNR)−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有している。
【0076】
用いるポリシラザンは、上記のごとく、一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有するが、一般式(1)で表される単位は、上記に記載したように環状化することがあり、その場合にはその環状部分が末端基となり、このような環状化がされない場合には、主骨格の末端はR、R、Rと同様の基又は水素原子とすることができる。
【0077】
本発明に適用可能なポリシラザンとしては、その他に、特開昭62−195024号公報に記載されているような繰り返し単位が〔(SiH(NH)〕及び〔(SiHO〕(これらの式中、n、m、rはそれぞれ1,2又は3である)で表されるポリシロキサザン、特開平2−84437号に記載されているようなポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造する耐熱性に優れたポリボロシラザン、特開昭63−81122号公報、同63−191832号公報、特開平2−77427号公報に記載されているようなポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン、特開平1−138108号公報、同1−138107号公報、同1−203429号公報、同1−203430号公報、同4−63833号公報、同3−320167号公報に記載されているような分子量を増加させ(上記公報の前者4件)、耐加水分解性を向上させた(上記公報の後者2件)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、特開平2−175726号、同5−86200号、同5−331293号、同3−31326号に記載されているようなポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に有利な共重合シラザン、特開平5−238827号公報、特開平4−272020号公報、同5−93275号公報、同5−214268号公報、同5−30750号公報、同5−338524号公報に記載されているようなポリシラザンにセラミック化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加したプラスチックスやアルミニウムなどの金属への施工が可能で、より低温でセラミックス化する低温硬化タイプポリシラザンなども同様に使用できる。
【0078】
また、本発明に係るポリシラザン化合物は、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン化合物含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
【0079】
〔ポリシラザン化合物含有塗布液の調製〕
本発明に係るポリシラザン化合物含有塗布液は、上記説明したポリシラザン化合物と共に、必要に応じて、下記に示す触媒や溶媒を添加して、調製することができる。
【0080】
(触媒)
ポリシラザン含有塗布液中には、ポリシラザン化合物を酸化珪素化合物へ転化する反応を促進するため、触媒を添加することもできる。
【0081】
本発明に好ましく用いられる触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、特開平10−279362号公報の記載の化合物を参照することができる。
【0082】
ポリシラザン化合物に対する触媒の添加量は、ポリシラザン化合物含有塗布液中における固形分濃度比率として、ポリシラザン化合物の全質量に対し、質量比として0.1ppm以上、5.0%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、100ppm以上、3.0%以下の範囲である。
【0083】
(溶媒)
ポリシラザン化合物含有塗布液の調製に用いる有機溶媒としては、ポリシラザン化合物と容易に反応するようなアルコール系や水分を含有する溶媒は避けることが好ましい。
【0084】
ポリシラザン化合物含有塗布液中におけるポリシラザン化合物濃度としては、目的とするポリシラザン化合物含有層(ガスバリア層)の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、概ね0.2〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
【0085】
〔塗布方法〕
本発明に係るポリシラザン化合物含有塗布液を塗布する方法としては、湿式塗布方法であることが好ましく、本発明に適用可能な湿式塗布方法としては、特に制限は無く、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。具体例な塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0086】
本発明に係るポリシラザン化合物含有層の膜厚は、目的に応じて適宜設定されるが、乾燥後の厚さとしては、1nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10nm〜10μmの範囲内であり、最も好ましくは10nm〜1μmの範囲内である。
【0087】
〔乾燥工程〕
ポリシラザン化合物含有塗布液を基材上に塗布した後の乾燥工程は、主に有機溶媒を取り除くため、乾燥条件(温度、処理時間)としては、適用する熱処理等の方法に準じて適宜設定することができ、熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度であることが好ましいが、使用している樹脂フィルムである基材に対する熱ダメージを考慮し、付与する温度と処理時間を適宜決定することが好ましい。例えば、基材として、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、熱処理温度は150℃以下を設定することが好ましい。処理時間は溶媒が除去され、かつ基材への熱ダメージが少なくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が150℃以下であれば、30分以内に設定することが好ましい。
【0088】
ポリシラザン化合物含有塗布液を基材上に塗布した後の乾燥工程における雰囲気は、比較的低湿に制御されていることが好ましいが、低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は、4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は−31℃(温度25℃/湿度1%)以下である。また、水分を取り除きやすくするため、減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaの範囲で選択することができる。
【0089】
〔基材〕
本発明に適用可能な基材としては、ポリシラザン化合物含有のポリシラザン層を保持することができる有機材料で作製されたものであれば特に限定されないが、連続搬送適性を付与する観点からは、可撓性を有し、折り曲げ可能なフィルム基材であることが好ましい。
【0090】
フィルム基材の材料としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート(略称:PBT)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(略称:PVC)、ポリエチレン(略称:PE)、エチレン−環状オレフィン等のポリエチレン共重合体、ポリプロピレン(略称:PP)、ポリスチレン(略称:PS)、ポリアミド(略称:PA)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリマー、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム基材(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記ポリマーを2層以上積層して成る基材等を挙げることができる。
【0091】
フィルム基材の厚さは、取扱性や機械的強度の観点から、5〜500μmの範囲内が好ましく、更に好ましくは10〜250μmの範囲内である。また、ガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であることが好ましい。また、熱収縮率も低いことが好ましい。
【0092】
〔ガスバリアーフィルムにおけるガスバリアー層以外の構成層〕
本発明に係るガスバリアーフィルムにおいては、本発明に係るガスバリアー層以外に、必要に応じて各種機能層を設けてもよい。
【0093】
(オーバーコート層)
本発明に係るガスバリアー層の上には、屈曲性を更に改善する目的で、オーバーコート層を形成しても良い。オーバーコート層の形成に用いられる有機物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。
【0094】
(アンカー層)
本発明に係るガスバリアーフィルムにおいては、基材とガスバリアー層の間に、基材とガスバリアー層との密着性改良を目的として、アンカー層(平滑層ともいう。)を有してもよい。
【0095】
アンカー層には、樹脂基材を加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面に移動して、接触する面を汚染してしまう現象(ブリードアウト)を抑制することもできる。アンカー層は、その上にガスバリアー層を形成するため、平滑であることが好ましく、その表面粗さRa値としては、0.3〜3nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5nmの範囲内である。表面粗さRa値が0.3nm以上であれば、表面が適度な平滑性を有し、ローラー搬送性及び本発明の表面改質処理方法によるガスバリアー層形成時に平滑性を維持することができる。一方、3nm以下であれば、ガスバリアー層形成時に、ガスバリアー層に微小な欠陥が生じることを防止でき、高度なガスバリアー性や密着性等を得ることができる。
【0096】
アンカー層の構成材料としては、平滑性が必要なことから、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。かような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、硬化性樹脂は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0097】
活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、新中村化学工業株式会社の硬化性2官能アクリレートNKエステル A−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)等を用いることができる。
【0098】
アンカー層の厚さとしては、カールを調整する観点から、0.3〜10μmの範囲内が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。
【0099】
(ブリードアウト防止層)
本発明に係るガスバリアーフィルムにおいては、基材上にポリシラザン層を作製する前に、基材上にブリードアウト防止層を形成することができる。ブリードアウト防止層は、アンカー層(平滑層)を有する基材を加熱した際に、基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、アンカー層を有する基材面とは反対側の面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的には、先に述べたアンカー層と同じ構成を取るものであっても構わない。
【0100】
ブリードアウト防止層を構成する感光性樹脂としては、アンカー層を構成する硬化性樹脂を同様に使用することができる。さらに、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を添加することができる。また、添加剤として、マット剤を含有しても良い。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
【0101】
ブリードアウト防止層には、必要に応じて他の成分を配合し、必要に応じて希釈溶剤を用いて塗布液として調製し、当該塗布液をフィルム基材21表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、紫外線や電離放射線等を照射して硬化させることにより作製することができる。
【0102】
ブリードアウト防止層の厚さとしては、ブリードアウト防止層を基材の一方の面にのみ設けた場合における基材のカールを防止する観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、更に好ましくは2〜7μmの範囲である。
【0103】
(乾式ガスバリアー層)
本発明に係るガスバリアーフィルムにおいては、本発明の表面改質処理方法により形成するガスバリアー層のほかに、乾式ガスバリアー層を設けてもよい。例えば、乾式ガスバリアー層の上に本発明に係るガスバリアー層を設けることで、塗布による均質な膜により乾式ガスバリアー層の有する微細な欠陥の補修による相乗効果によりガスバリアー性の更なる向上が期待できる。
【0104】
乾式ガスバリアー層には、Si、Ta、Nb、Al、In、W、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ca、Na、B、Pb、Mg、P、Ba、Ga、Ge、Li、K、Zrから選ばれる1種以上の金属原子を含む酸化物又は窒化物、窒酸化物、炭化物を主成分として含む膜を用いることができ、酸化ケイ素、窒酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミ、酸化ケイ素アルミ、窒酸化ケイ素アルミ、ZTO、ITO、ZnOが好ましく用いられる。またこれらの膜には一定割合の炭素が含有されていてもよく、膜厚方向に組成変化のある傾斜膜でもよい。
【0105】
乾式ガスバリアー層の製造方法としては、物理蒸着法(例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など)や化学蒸着法(例えば、PECVD、Cat−CVD、大気圧プラズマ法、ALD法など)を用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。なお、以下の説明で、各構成要素のあとの括弧内に記載の数字は、図1A図1B及び図2に記載した各構成要素の符号を表す。
【0107】
《ガスバリアーフィルムの作製》
〔ガスバリアーフィルム1の作製〕
(基材の準備)
フィルム基材(21)として、両面に易接着加工された厚さ125μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PEN テオネックスQ83)を用いた(以下、PENフィルム略記する。)。当該PENフィルムの40℃、90%RH条件下における水蒸気透過度は、4.8g/(m・24hr)であった。
【0108】
(ブリードアウト防止層の形成)
上記PENフィルムの片面に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)Z7535を、乾燥後の膜厚が4μmになるようにダイコーターで塗布した後、乾燥条件として80℃で、3分間の乾燥を行った後、大気雰囲気下で、高圧水銀ランプを使用して、硬化条件として1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
【0109】
(アンカー層の形成)
次いで、上記PENフィルムのブリードアウト防止層を形成した面とは反対側の面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)Z7501を、乾燥後の膜厚が4μmになるようにダイコーターで塗布した後、乾燥条件として、80℃で、3分間の乾燥を行った後、大気雰囲気下、高圧水銀ランプを使用して、硬化条件として1.0J/cmで硬化を行い、アンカー層を形成した。このとき、表面粗さである最大断面高さRt(p)は、16nmであった。
【0110】
なお、表面粗さであるRt(p)は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出する。極小の先端半径の触針により測定距離が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さとして求めた。
【0111】
(ポリシラザン化合物含有層の形成)
次に、上記アンカー層及びブリードアウト防止層を設けたPENフィルムのアンカー層面の上に、下記の方法に従って、ポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布及び乾燥して、ポリシラザン層(8)を形成した。
【0112】
〈ポリシラザン化合物含有塗布液の調製〉
無触媒のパーヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ(登録商標)NN120−20)とアミン触媒を固形分で5質量%含有するパーヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ(登録商標)NAX120−20)を混合して用い、アミン触媒を固形分で1質量%となるように調整した後、さらにジブチルエーテルで希釈することにより、パーヒドロポリシラザンを5質量%含有するジブチルエーテル溶液を調製し、これをポリシラザン化合物含有塗布液として用いた。
【0113】
〈ポリシラザン化合物含有塗布液の塗布〉
上記調製したポリシラザン化合物含有塗布液を、図2に示すガスバリアーフィルム製造装置(30)を用いて、PENフィルムのアンカー層面の上に、塗布部(32)に装備したダイコーターを用いて、ラインスピード1.0m/minで連続塗布したのち、図2に示す乾燥部(33)で乾燥温度が50℃で、乾燥雰囲気の露点10℃で1分間乾燥した後、乾燥温度80℃で、乾燥雰囲気の露点5℃で2分間乾燥して、乾燥後の膜厚が150nmのポリシラザン層(8)を形成した。
【0114】
(表面改質処理)
上記塗布部(32)及び乾燥部(33)を経て形成したポリシラザン層(8)を有するフィルム基材(21)を、エキシマ光照射部(34)に搬送し、エキシマ光照射による表面改質処理を行った。
【0115】
エキシマ光の照射は、エキシマランプ3として、MDエキシマ社製のキセノンエキシマランプ(波長:172nm、ピーク照度:120mW/cm)を用い、図2に示すようにフィルム基材(21)の搬送方向に平行して、30基のエキシマランプU1〜U30を配置した。エキシマランプ管面と搬送されている基材表面間の最短距離(h)は、3mmとなるようにエキシマランプの設置位置を調整した。なお、ピーク照度は、照度計(浜松ホトニクス製、C9536/H9535−172)を用い、エキシマランプ(3)のランプ管面から3mmの位置で測定した。
【0116】
エキシマランプホルダー(2)には、Nガス及び水蒸気を供給し、エキシマランプ幅手の両サイドからフィルム基材面に向かってNが及び濃度制御された水蒸気を噴射した(図1B参照。)。その際、エキシマ光照射時の酸素濃度は、エキシマランプ全体を囲っている筺体にも窒素ガス及び水蒸気を供給してエキシマランプ管面とフィルム基材間の酸素濃度が0.1%以下となるように調整を行った。
【0117】
また、水蒸気濃度は、(株)三菱化学アナリテック製のゼントールデジタル露点計(XDTシリーズ)を各エキシマランプの空間領域(S)に、計30基配置し、エキシマランプ(3)とフィルム基材(21)間の空間領域(S)の水蒸気濃度を常時モニターしながら、平均水蒸気濃度が151ppm(露点−39℃)となるように制御した。
【0118】
上記の条件で、ポリシラザン層(8)にエキシマ光を照射して表面改質処理を行ってガスバリアー層に改質して、ガスバリアーフィルム1を作製した。
【0119】
〔ガスバリアーフィルム2〜17の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、エキシマ光照射部(34)におけるエキシマランプ(3)とフィルム基材(21)間の空間領域(S)の水蒸気濃度、各エキシマランプ(3)のピーク照度(mW/cm)、エキシマランプ(3)の管面とフィルム基材(21)表面間の最短距離(h)を、それぞれ表1に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、ガスバリアーフィルム2〜17を作製した。
【0120】
《ガスバリアーフィルムの評価》
〔各評価用のサンプルの作製〕
上記ガスバリアーフィルムの作製において、作製初期(エキシマランプ点灯直後)のガスバリアーフィルムを、ガスバリアーフィルム1A〜17Aとした。
【0121】
次いで、連続搬送しながら製造し、エキシマランプとして、1000時間照射した後に作製したガスバリアーフィルムを、ガスバリアーフィルム1B〜17Bとした。
【0122】
同様に、連続製造しながら製造し、ガスバリアーフィルムとして60000m作製した時点でサンプリングしたガスバリアーフィルムを、ガスバリアーフィルム1C〜17Cとした。
【0123】
〔ガスバリアー性の評価〕
上記作製したガスバリアーフィルム1A〜17A、ガスバリアーフィルム1B〜17B、ガスバリアーフィルム1C〜17Cについて、下記の方法に従って水蒸気透過率(ガスバリアー性)の評価を行った。
【0124】
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、以下の方法により測定した。
【0125】
〈測定装置〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
原材料:水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
〈水蒸気透過率評価用セルの作製〉
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、上記作製した各ガスバリアーフィルムの蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、フィルム試料片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0126】
得られた両面をアルミニウムにより封止したサンプルを60℃、90%RHの高温高湿環境下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量(g/m/day)を計算した。
【0127】
(ガスバリアー性の評価:作製初期のガスバリアーフィルム)
上記作製初期(エキシマランプ点灯直後)のガスバリアーフィルム1A〜17Aについて、上記の方法で水蒸気透過率を測定した後、下記の評価ランクに従ってガスバリアー性を評価した。
【0128】
◎:水蒸気透過率が、1×10−3g/m/day未満である
○:水蒸気透過率、1×10−3g/m/day以上、3×10−3g/m/day未満である
△:水蒸気透過率が、3×10−3g/m/day以上、1×10−1g/m/day未満である
×:水蒸気透過率が、1×10−1g/m/day以上である
(耐久性の評価1:1000時間照射した後の耐久性)
上記測定したガスバリアーフィルム1A〜17A(作製直後)の水分量を基準として、それぞれエキシマランプとして1000時間照射した後に作製したガスバリアーフィルム1B〜17Bの水分量の増加率を測定し、下記の基準に従って、耐久性1の評価を行った。
【0129】
○:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する1000時間照射した後に作製したガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、1.5倍未満である
△:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する1000時間照射した後に作製したガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、1.5倍以上、5.0倍未満である
×:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する1000時間照射した後に作製したガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、5.0倍以上である
(耐久性の評価2:60000m作製後の耐久性)
上記測定したガスバリアーフィルム1A〜13A(作製直後)の水分量を基準として、それぞれエキシマランプを連続点灯し、60000mのガスバリアーフィルムを作製した時点でサンプリングしたガスバリアーフィルム1B〜17Bの水分量の増加率を測定し、下記の基準に従って、耐久性1の評価を行った。
【0130】
○:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する60000m作製後にサンプリングしたガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、1.5倍未満である
△:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する60000m作製後にサンプリングしたガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、1.5倍以上、5.0倍未満である
×:ランプ点灯直後に作製したガスバリアーフィルムに対する60000m作製後にサンプリングしたガスバリアーフィルムの水分量の増加率が、5.0倍以上である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
表1に記載の結果より明らかなように、連続搬送してエキシマ光による表面改質処理を行う際に、エキシマランプと基材間の領域の水蒸気濃度を150〜930ppmの範囲内に規定することにより、良好なガスバリアー性を有するガスバリアーフィルムを得ることができ、更に、長時間にわたりエキシマランプの照射を行っても、あるいは長時間にわたり製造した後でも、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを安定して製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のガスバリアーフィルムの製造方法は、連続生産適性を有し、エキシマランプのランプ照度の低下やエキシマランプの寿命低下を抑制でき、かつガスバリアー層を安定して形成することができる製造方法であり、これらにより製造したガスバリアーフィルムは、液晶表示素子、太陽電池、有機EL素子等の封止用フィルムとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0134】
1 (キセノン)エキシマ光照射ユニット
2 エキシマランプホルダー
3 エキシマランプ
4 窒素ガス及び水蒸気の配管入口
5 窒素ガス及び水蒸気配管
6 窒素ガス及び水蒸気
7 エキシマ光照射領域
8 ポリシラザン層
9 基材
20 搬送手段
21 フィルム基材
30 ガスバリアーフィルム製造装置
31 繰り出し部
32 塗布部
33 乾燥部
34 エキシマ光照射部
35 巻き取り部
36 ガス注入口
37 窒素ガス及び水蒸気の排出口
h ランプ管表面とポリシラザン層面との最短距離
U1〜U30 エキシマ光照射ユニット
図1A
図1B
図2