特許第6222232号(P6222232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222232車両用ドアフレーム及び車両用ドアフレームの中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222232
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用ドアフレーム及び車両用ドアフレームの中間体
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20171023BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20171023BHJP
   B23K 11/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B60J5/04 M
   B62D65/00 C
   B23K11/00 570
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-534233(P2015-534233)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2014072302
(87)【国際公開番号】WO2015029999
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179164(P2013-179164)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】柳井 利文
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−302788(JP,A)
【文献】 特開2013−121754(JP,A)
【文献】 特開2011−068181(JP,A)
【文献】 特開2012−136216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B23K 11/00
B62D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材からなりガラスラン収納部を形成するアウタ部材であって、基端部を有し第1側に位置するアウタ部材と、
板材からなり窓枠の骨格をなす本体部を有するインナ部材であって、前記第1側とは反対の第2側において前記アウタ部材に結合されるように構成されたインナ部材とを備え、
前記アウタ部材は、
前記基端部から離れた位置において前記ガラスラン収納部を形成する縁部と、
前記縁部に設けられ前記第2側に開く開口を有する断面略U字状の折返し部であって、最も第1側に位置する第1側端を有する折返し部と、
前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い部位を少なくとも前記折返し部の前記第1側端の位置まで盛り上げる戻し部と
前記戻し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、平坦な部位を有する側壁とを有し、
前記ガラスラン収納部は、ドアフレームの立柱部に位置する立柱側ガラスラン収納部と、前記ドアフレームの上縁部に位置する上部ガラスラン収納部とを有し、
前記立柱側ガラスラン収納部の前記側壁は、前記平坦な部位を結合代として前記上部ガラスラン収納部に接合した第1の接合部分を有し、
前記インナ部材は、
前記本体部に設けられ前記第1側に延出する延出部と、
該延出部に設けられ前記折返し部の前記開口に挿入されるよう構成された縁部と、
前記延出部の前記縁部に設けられた先端面と
前記先端面における前記インナ部材の長手方向における所定位置に配置されるとともに前記第1側に向かって突出する突起部を、抵抗溶接時の電流集中により加熱溶融させて前記先端面及び前記折返し部の対向する部分を接合した第2の接合部分とを有し、
前記第1の接合部分及び前記第2の接合部分の少なくとも一方は加圧接合されている、車両用ドアフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記ガラスラン収納部は、該ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い部位に、前記窓枠に開閉可能に設けられるドアウインドガラスの移動を案内するチャンネルを結合する結合部を有する、車両用ドアフレーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記戻し部は、該折返し部よりも前記基端部に近い部位を少なくとも前記折返し部の前記第1側端の位置まで盛り上げる、車両用ドアフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記戻し部は、前記折返し部に重ね合わされた状態で前記折返し部よりも前記基端部に近い部位を前記折返し部の前記第1側端の位置まで盛り上げる、車両用ドアフレーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記アウタ部材は、断面略L字状のガラスラン収納部を有する、車両用ドアフレーム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記戻し部は、前記折返し部から前記基端部にずれた位置を起点に前記第1側に延びる、車両用ドアフレーム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用ドアフレームにおいて、
前記折返し部は、前記延出部との間隔が形成されるように前記開口の幅が広がる方向に延びている、車両用ドアフレーム。
【請求項8】
板材からなりガラスラン収納部を形成するアウタ部材であって、基端部を有し第1側に位置するアウタ部材と、
板材からなり窓枠の骨格をなす本体部を有するインナ部材であって、前記第1側とは反対の第2側において前記アウタ部材に結合されるように構成されたインナ部材とを備え、
前記アウタ部材は、
前記基端部から離れた位置において前記ガラスラン収納部を形成する縁部と、
前記縁部に設けられ前記第2側に開く開口を有する断面略U字状の折返し部であって、最も第1側に位置する第1側端を有する折返し部と、
前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い部位を少なくとも前記折返し部の前記第1側端の位置まで盛り上げる戻し部と
前記戻し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、平坦な部位を有する側壁とを有し、
前記ガラスラン収納部は、ドアフレームの立柱部に位置する立柱側ガラスラン収納部と、前記ドアフレームの上縁部に位置する上部ガラスラン収納部とを有し、
前記立柱側ガラスラン収納部と前記上部ガラスラン収納部とは、前記立柱側ガラスラン収納部の前記側壁における平坦な部位を結合代とするように当接し、
前記インナ部材は、
前記本体部に設けられ前記第1側に延出する延出部と、
該延出部に設けられ前記折返し部の前記開口に挿入されるよう構成された縁部と、
前記延出部の前記縁部に設けられた先端面とを有し、
前記先端面には前記第1側に向かって突出する突起部が設けられ、前記突起部は、前記インナ部材の長手方向における所定位置に配置され、抵抗溶接時の電流集中により加熱溶融されて前記先端面及び前記折返し部の対向する部分を加圧接合する、車両用ドアフレームの中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアの窓枠を形成する車両用ドアフレーム及び車両用ドアフレームの中間体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアフレームとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図11に示すように、この車両用ドアフレームは、アウタ部材110と、該アウタ部材110に結合されるインナ部材120とを備えて構成される。アウタ部材110は、ガラスラン収納部111及び車外側の意匠面112を形成する。インナ部材120は、窓枠の骨格をなす本体部121を有する。
【0003】
図12に併せ示すように、アウタ部材110は、車内側に開く開口114の形成された折返し部113を有する。この折返し部113は、ガラスラン収納部111を形成する縁部を車外側に屈曲するとともに車内側に折り返すことで形成されている。インナ部材120は、本体部121の車外側に延出する延出部122の縁部122aが折返し部113の開口114に挿入されている。延出部122の縁部122aの先端面122bには、抵抗溶接時の電流集中により加熱溶融されて先端面122b及び折返し部113の対向部113aを加圧接合する突起部123が車外側に突出形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−68181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用ドアフレームは、アウタ部材110に折返し部113を有することで、ガラスラン収納部111の車内側の部位は、折返し部113の範囲と該折返し部113よりも車内側に距離Δだけ凹んだ基端側の部位とに区画される。このため、ガラスラン収納部111の車内側の部位を利用して別部材を取り付けようとする場合、平坦な部位が折返し部113を除けば該折返し部113よりも車内側に凹んだ基端側の部位しかなくなって別部材の組付けが制限されていた。
【0006】
本発明の目的は、別部材を簡易に組み付けることができる車両用ドアフレーム及び車両用ドアフレームの中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する一態様は、板材からなりガラスラン収納部を形成するアウタ部材であって、基端部を有し第1側に位置するアウタ部材と、板材からなり窓枠の骨格をなす本体部を有するインナ部材であって、前記第1側とは反対の第2側において前記アウタ部材に結合されるように構成されたインナ部材とを備える車両用ドアフレーム又は車両用ドアフレームの中間体を提供する。前記アウタ部材は、前記基端部から離れた位置において前記ガラスラン収納部を形成する縁部と、前記縁部に設けられ前記第2側に開く開口を有する断面略U字状の折返し部であって、最も第1側に位置する第1側端を有する折返し部と、前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、前記ガラスラン収納部の前記折返し部よりも前記基端部に近い部位を少なくとも前記折返し部の前記第1側端の位置まで盛り上げる戻し部と、前記戻し部よりも前記基端部に近い位置に設けられ、平坦な部位を有する側壁とを有し、前記ガラスラン収納部は、ドアフレームの立柱部に位置する立柱側ガラスラン収納部と、前記ドアフレームの上縁部に位置する上部ガラスラン収納部とを有し、前記立柱側ガラスラン収納部の前記側壁は、前記平坦な部位を結合代として前記上部ガラスラン収納部に接合した第1の接合部分を有している。前記インナ部材は、前記本体部に設けられ前記第1側に延出する延出部と、該延出部に設けられ前記折返し部の前記開口に挿入されるよう構成された縁部と、前記延出部の前記縁部に設けられた先端面と前記先端面における前記インナ部材の長手方向における所定位置に配置されるとともに前記第1側に向かって突出する突起部を、抵抗溶接時の電流集中により加熱溶融させて前記先端面及び前記折返し部の対向する部分を接合した第2の接合部分とを有している。前記第1の接合部分及び前記第2の接合部分の少なくとも一方は加圧接合されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、別部材を簡易に組み付けることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態が適用される車両ドアの上部構造を車両の幅方向外側(車外側)から見た車両ドアの側面図。
図2図1の2−2線に沿った断面図。
図3図1の3−3線に沿った断面図。
図4】同実施形態を分解して示す断面図。
図5】(a)〜(d)は、同実施形態の接合構造を示す断面図。
図6】インナ部材を示す斜視図。
図7】本発明の変形形態を示す断面図。
図8】別の変形形態を示す断面図。
図9】別の変形形態を示す断面図。
図10】別の変形形態を示す断面図。
図11】従来形態を示す断面図。
図12】同従来形態を分解して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両用ドアフレームの一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両ボデーの側部に支持される車両ドア1は、その下部を構成するドア本体2を備える。このドア本体2は、ドア外板を構成するドアアウタパネル及びドア内板を構成するドアインナパネル(図示略)が結合されてなる袋状の構造体であって、上向きの開口から出没可能なドアウインドガラスDW等が設置される。
【0011】
また、車両ドア1は、ドア本体2の上端部に取着されて車両ドア1の窓枠(即ちドアウインドガラスDWの枠)を構成するドアフレーム5を備える。このドアフレーム5は、車両の前後方向後側でドア本体2(例えばドアインナパネル)に固着され車両の高さ方向に延在する立柱部5aと、車両の前後方向前側でドア本体2に固着され立柱部5aの上端に接続される別部材としての略弓形の上縁部5bとを有して下向きに開放されている。本実施形態の車両ドア1は、フロントドアであって、ドアフレーム5の上縁部5b及び立柱部5aは、車両ボデーのAピラー及びBピラーにそれぞれ対応して配置されている。
【0012】
なお、以下では、ドアフレーム5において、ドアウインドガラスDWに臨む側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。また、車室内方に向かう車両の幅方向内側を「車内側(第2側)」といい、車室外方に向かう車両の幅方向外側を「車外側(第1側)」という。
【0013】
図2に示すように、立柱部5aは、鋼板などの板材をプレス成形してなるアウタ部材10と、同様の板材をプレス成形してなるインナ部材20と、外側に向けて開放された断面略C字状のシール部材収納部30と、車外側に配置されドアフレーム5の外側から内側にかけて延在する意匠部材40とを備える。アウタ部材10は車外側に位置し、インナ部材20は車外側とは反対側の車内側においてアウタ部材10に結合されるように構成されている。インナ部材20がアウタ部材10に結合される前、アウタ部材10及びインナ部材20はドアフレームの中間体を構成する。
【0014】
なお、インナ部材20の板厚は、アウタ部材10の板厚よりも大きく設定されている。ちなみに、意匠部材40の車外側に露出する端面は、立柱部5aの意匠面41を形成する。この意匠面41は、車両の高さ方向に変位するに従いその幅が徐変されて意匠性の向上が図られている。
【0015】
アウタ部材10は、内側に向けて開放された断面略U字状のガラスラン収納部11を有する。ガラスラン収納部11は、外側に位置する基端部11dを有する。ガラスラン収納部11は、車内側において、外側から内側にかけて延在する第1側壁11aを有するとともに、該第1側壁11aの内側端に連続して車外側に屈曲する段差壁11bを有し、更に該段差壁11bの車外側端に連続して外側から内側にかけて延在する第2側壁11cを有する。つまり、第2側壁11cは、第1側壁11aに対して段差壁11bの分だけ車外側に盛り上がっている。
【0016】
図4に示すように、第2側壁11cの縁部には、車外側に屈曲するとともに車内側に折り返してなる折返し部12が形成されている。この折返し部12は、車内側に開いた開口13を有する断面略U字状である。折返し部12は、最も車外側に位置する車外側端12b(第1側端)を有する。また、第2側壁11cには、折返し部12の車内側端に接続されるとともに外側に向かうに従い車外側に向かうように傾斜する戻し部14が形成されている。この戻し部14は、折返し部12の車外側端12bの位置よりも若干、車外側となる位置まで延びている。つまり、第2側壁11cの折返し部12よりも外側の部位、即ちガラスラン収納部11の折返し部12よりも基端部11dに近い部位は、戻し部14により折返し部12の車外側端12bの位置よりも車外側となる位置まで平坦に盛り上がっている。
【0017】
図2に示すように、インナ部材20は、ガラスラン収納部11の外側で且つ意匠部材40の車内側に沿う状態で外側から内側にかけて延在する取付部21と、該取付部21の内側端に連続して車内側に屈曲するとともに内側から車外側に折り返して折返し部12の開口13に臨む断面略矩形状の本体部22とを一体的に有する。なお、本体部22は、立柱部5aの骨格をなすもので、内側において車内側から車外側に向かう延出部23を有する。インナ部材20は、本体部22の車外側の部位がアウタ部材10に外側から接触する状態で、開口13に挿入される延出部23の縁部23aが折返し部12に溶接にて結合されている。
【0018】
シール部材収納部30は、本体部22の車外側の部位に外側から接触しており、例えば溶接にてアウタ部材10と共に本体部22に結合されている。
なお、ガラスラン収納部11には、長手方向略全長に亘って、例えばゴム材からなる断面略U字状のガラスラン45が液密的に装着されている。このガラスラン45は、少なくともガラスラン収納部11の開口端よりも内側に突出しており、該ガラスラン収納部11内への水の浸入を抑制する。特に、ガラスラン45の車内側端部がアウタ部材10の折返し部12及びインナ部材20の延出部23の縁部23aよりも車内側に位置することにより、立柱部5aの内部空間への水の浸入を抑制する。そして、ガラスラン45には、前記ドアウインドガラスDWの車外側及び車内側の両周縁部が弾性的に接触可能となっている。ガラスラン45は、ドアウインドガラスDWを開閉可能に弾性的に保持する。また、立柱部5a(車両ドア1)の対向する車両ボデーの開口部周縁部Bには、インナ部材20の長手方向略全長に亘ってその本体部22に液密的に接触するボデーシール部材46が保持されている。従って、立柱部5a及び開口部周縁部B間に形成される空間は、ボデーシール部材46によって車外側及び車内側間で液密的に隔てられている。
【0019】
図3に示すように、上縁部5bは、鋼板などの板材をロール成形してなり、その長手方向の略全長に亘って一定断面を有する。この上縁部5bは、上部本体部51と、該上部本体部51の車外側端に連続する上部ガラスラン収納部52と、該上部ガラスラン収納部52の車外側の内側端に連続する上部意匠部53と、該上部意匠部53の外側端に連続する接続部54と、該接続部54の内側端に連続する上部シール部材収納部55とを一体的に有する。
【0020】
上部本体部51は、立柱部5aとの接続位置での本体部22の形状に合わせて形成されており、車外側から車内側に向かうとともに内側から車外側に折り返す断面略矩形状を呈する。この上部本体部51は、上縁部5bの骨格をなす。上部ガラスラン収納部52は、立柱部5aとの接続位置でのガラスラン収納部11の形状に合わせて形成されており、内側に向けて開放された断面略U字状を呈する。従って、上部ガラスラン収納部52も、車内側において、外側から内側にかけて延在する第1側壁52aを有するとともに、該第1側壁52aの内側端に連続して車外側に屈曲する段差壁52bを有し、更に該段差壁52bの車外側端に連続して外側から内側にかけて延在する第2側壁52cを有する。ただし、第2側壁52cは、段差壁52bから内側に真っ直ぐに延びて上部本体部51の車外側端に繋がっている。つまり、第2側壁52cには、アウタ部材10の第2側壁11cのようなインナ部材20の本体部22との接合用の折返し部12等が非形成である。
【0021】
上部意匠部53は、立柱部5aとの接続位置でのガラスラン収納部11の車外側の部位及び取付部21の形状に合わせて形成されており、上部ガラスラン収納部52の車外側に沿う状態で内側から外側にかけて延在する。接続部54は、上部意匠部53の車内側に沿う状態で外側から内側にかけて延在するとともに内側に向かうに従い車内側に向かうように傾斜する。上部シール部材収納部55は、立柱部5aとの接続位置でのシール部材収納部30の形状に合わせて形成されており、外側に向けて開放された断面略C字状を呈する。
【0022】
そして、上部ガラスラン収納部52の外側の部位及び上部シール部材収納部55の内側の部位は、上部本体部51の車外側の部位に対して内側及び外側からそれぞれ重ね合わされた状態で、例えば溶接により結合されている。
【0023】
ところで、前記立柱部5aのインナ部材20は、本体部22の車外側の部位をアウタ部材10の外側の部位に外側から接触させた状態で、延出部23の縁部23aを折返し部12の開口13に挿入することで、アウタ部材10に仮組みされる。以下では、アウタ部材10及びインナ部材20の仮組みにより開口13に挿入された延出部23の縁部23aと、折返し部12との接合構造について説明する。
【0024】
図6に示すように、延出部23の縁部23aの先端面23bには、車外側に台形状に隆起する複数の台座部24がインナ部材20の長手方向に沿って形成されるとともに、それぞれの台座部24の長手方向中央部には、更に車外側に突出する突起部25が形成されている。図5(a)及び図5(b)に示すように、アウタ部材10及びインナ部材20の仮組みの段階にあって、折返し部12の開口13に延出部23の縁部23aが挿入された状態では、突起部25において折返し部12の対向部(折返しの底部)12aと当接しており、該対向部12a及び台座部24(先端面23b)間に車内外方向の間隙が形成されている。
【0025】
この仮組み状態において、抵抗溶接装置の一対の溶接電極(図示略)にて折返し部12及び延出部23が挟持及び加圧され、一対の溶接電極間に溶接電流が流される。これにより、図5(c)及び図5(d)に示すように、抵抗溶接時の電流集中により突起部25が加熱溶融されて折返し部12の対向部12aが台座部24に最終的に接触され、台座部24(先端面23b)及び折返し部12の対向部12aが加圧接合される。つまり、突起部25は、抵抗溶接(いわゆるプロジェクション溶接)の突起として機能する。そして、アウタ部材10及びインナ部材20が結合される。このとき、対向部12a及び先端面23b間に車内外方向の間隙が形成され、これら対向部12a及び先端面23bが非接触となっている。つまり、台座部24は、折返し部12(アウタ部材10)及び延出部23(インナ部材20)を結合する際に位置決めする基準位置となっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。
既述のように、上縁部5bの断面形状は、立柱部5aとの接続位置での該立柱部5aの断面形状に合わせて形成されている。本実施形態では、立柱部5a及び上縁部5bは、それらの接続位置で先端面同士が突き合わされ、溶接にて結合される。
【0027】
第2側壁11cの折返し部12よりも外側の部位は、戻し部14により折返し部12の車外側端12bの位置よりも車外側の位置まで平坦に盛り上がっている。すなわち、第2側壁11cの折返し部12よりも外側の部位は、戻し部14を介することで折返し部12の車外側端12bよりも車内側に凹まない平坦な部位となっている。そして、当該平坦な部位は、上縁部5bとの接続位置で上縁部5bの第2側壁52cに当接することで、該第2側壁52cとの結合代(溶接代)として利用することができる。
【0028】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、第2側壁11cの折返し部12よりも基端部11dに近い部位を、上縁部5bの第2側壁52cとの結合代(溶接代)として利用することができる。つまり、立柱部5a及び上縁部5bを溶接にて接合する際の溶接可能範囲を増加することができる。これにより、立柱部5aに上縁部5bを簡易に組み付けることができる。
【0029】
(2)本実施形態では、ガラスラン収納部11の第2側壁11cの断面形状を、上部ガラスラン収納部52の第2側壁52cの断面形状により近付けて立柱部5a及び上縁部5bを接合したことで、それらの接続位置(コーナー部)での不連続な箇所の発生を抑えることができ、例えば車両走行時の風切音などの異音の発生を抑えることができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図7に示すように、アウタ部材60として、断面略L字状のガラスラン収納部61を有するものを採用してもよい。このガラスラン収納部61は、外側に位置する基端部61bを有する。また、ガラスラン収納部61は、車内側において、外側から内側にかけて延在する側壁61aを有する。そして、側壁61aの縁部には、車外側に屈曲するとともに車内側に折り返してなる折返し部62が形成されている。この折返し部12は、車内側に開いた開口63を形成する。また、側壁61aには、折返し部12の車内側端に接続されるとともに外側に向かうに従い車外側に向かうように傾斜する戻し部64が形成されている。この戻し部64は、折返し部62の車外側端62a(第1側端)の位置よりも若干、車外側となる位置まで延びている。つまり、側壁61aの折返し部62よりも外側の部位、即ちガラスラン収納部61の折返し部62よりも基端部61bに近い部位は、戻し部64により折返し部62の車外側端62aの位置よりも車外側となる位置まで平坦に盛り上がっている。なお、折返し部62におけるインナ部材20の延出部23の縁部23aとの接合構造については前記実施形態と同様であるため、その説明を割愛する。
【0031】
ガラスラン収納部61には、内側に向けて開放された別部材としての断面略U字状のチャンネル65が取着される。すなわち、チャンネル65は、その外側の部位がガラスラン収納部61の外側の部位に内側から接触するとともに、車内側の部位が側壁61aに車外側から接触する状態で、車内外方向にそれらを貫通する結合部としての締結具66にてガラスラン収納部61に結合されている。つまり、側壁61aの折返し部62よりも外側の戻し部64を介した平坦な部位は、チャンネル65との結合代として利用されている。このように、ガラスラン収納部61の折返し部62(戻し部64)よりも基端部61bに近い位置にある平坦な部位を利用することで、締結具66にてガラスラン収納部61にチャンネル65を簡易に組み付けることができる。このチャンネル65は、ドアウインドガラスDWの移動を案内するためのものである。なお、結合部は締結具66に限らず、レーザー溶接等の溶接により結合するものであってもよい。また、内外方向において、チャンネル65の車外側の部位における内側端よりも締結具66は内側に配置されるため、チャンネル65の車内側の部位に締結具を挿入する際にチャンネル65の車外側の部位に干渉されることなく挿入及び締結が可能となり、チャンネル65のガラスラン収納部61に対する組付性が向上する。
【0032】
なお、前記実施形態に準じて、このようなアウタ部材60を備えた立柱部が、上縁部にそれらの先端面同士が突き合わされた状態で溶接にて結合される場合には、側壁61aの折返し部62よりも外側の平坦な部位を、上縁部との溶接代(結合代)として利用できることはいうまでもない。
【0033】
図8に示すように、折返し部12,62に折り重なるように車外側に延びる戻し部71であってもよい。この場合、ガラスラン収納部11,61の折返し部12,62よりも外側の部位は、該折返し部12,62に密着した状態で平坦に盛り上がる。従って、側壁11c,61aの平坦な部位は、折返し部12,62に密着する内側の位置まで延在することになり、上縁部等の別部材との結合代をより拡大することができる。これにより、当該別部材をいっそう簡易に組み付けることができる。
【0034】
特に、二点鎖線で示すように、ガラスラン収納部11,61の折返し部12,62よりも外側の部位が戻し部71により平坦に盛り上がる車外側の位置が、折返し部12,62の車外側端12b,62aの位置に一致していてもよい。この場合には、折返し部12,62及び該折返し部12,62よりも外側の部位を共に別部材の結合代として利用することができる。これにより、当該別部材を更にいっそう簡易に組み付けることができる。
【0035】
図9に示すように、折返し部12,62から外側にずれた位置を起点に車外側に延びる戻し部72であってもよい。
図10に示すように、延出部23との間隙が形成されるように開口の幅が広がる方向に延びした折返し部74であってもよい。折返し部74は車外側端74aを有する。
【0036】
・ガラスラン収納部の折返し部よりも基端部に近い部位を、該折返し部の車外側端の位置まで平坦に盛り上げる戻し部であってもよい。
・前記実施形態において、台座部24を割愛して、先端面23bに直に突起部25を突出形成してもよい。
【0037】
・上記実施形態において、アウタ部材10又はインナ部材20は、板材をロール成形したものであってもよい。この場合、アウタ部材10又はインナ部材20は、長手方向に一定断面形状を有していてもよい。
【0038】
・本発明は、例えばリアドアのドアフレームに適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…車両ドア、5…ドアフレーム、5a…立柱部、5b…上縁部(別部材)、10,60…アウタ部材(車両用ドアフレームの中間体)、11,61…ガラスラン収納部、12,62,74…折返し部、12a…対向部、13,63…開口、14,71,72…戻し部、20…インナ部材(車両用ドアフレームの中間体)、22…本体部、23…延出部、23a…縁部、23b…先端面、25…突起部、65…チャンネル(別部材)、66…締結具(結合部)。
図1
図2
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図5
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図7
図8
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図11
図12