特許第6222254号(P6222254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222254
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20171023BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A01C11/02 322Z
   A01C11/02 320A
   A01B63/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-37631(P2016-37631)
(22)【出願日】2016年2月29日
(62)【分割の表示】特願2013-223864(P2013-223864)の分割
【原出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-104034(P2016-104034A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】福島 寿美
(72)【発明者】
【氏名】山口 信
(72)【発明者】
【氏名】奥村 仁
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−089341(JP,A)
【文献】 特開平07−071057(JP,A)
【文献】 特開平07−155023(JP,A)
【文献】 特開2004−337052(JP,A)
【文献】 特開2012−005492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
A01B 63/10
E02F 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を設け、該昇降リンク装置(3)を昇降させる昇降油圧シリンダ(46)を設け、該昇降リンク装置(3)に作業装置(4)を設け、該作業装置(4)の下部に圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させる接地部材(55)を設けた作業車両において、
該昇降油圧シリンダ(46)への送油量を調整する電磁バルブ(83)を設け、前記昇降リンク装置(3)の昇降位置を検知する昇降位置検知部材(92)を設け、該昇降リンク装置(3)が所定位置まで上昇したことを該昇降位置検知部材(92)が検知すると、前記電磁バルブ(83)から昇降油圧シリンダ(46)への送油量を減少させて前記作業装置(4)の上昇速度を減速させる制御装置(100)を設け
前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、前記接地部材(55)が圃場面に接地している間は、前記走行操作部材(17)が後進操作されても前記走行車体(2)が後進側に走行しない構成とし、前記エンジン(20)の回転数を増減させる自動アクセル機構(E)を設け、
該自動アクセル機構(E)に優先して前記エンジン(20)の回転数を変更する回転数切替部材(93)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置(100)は、前記回転数切替部材(93)を高回転数側に操作すると、前記エンジン(20)の回転数が高くなる構成とすると共に、
前記走行操作部材(17)を最高速位置まで操作したときは、前記回転数切替部材(93)の操作位置に関係なく前記エンジン(20)の回転数を前記自動アクセル機構(E)に基づく回転数にする構成とすることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、該走行操作部材(17)の操作位置を検知する操作検知部材(95)を設け、
前記走行車体(2)の走行速度を検知する速度検知部材(96)を設け、
前記制御装置(100)は、前記操作検知部材(95)が走行操作部材(17)の前進操作または後進操作を検知した状態でありながら、前記速度検知部材(96)が走行停止状態を検知するときは、前記電磁バルブ(83)から前記昇降油圧シリンダ(46)への送油量を減少させ、前記油圧式無段変速装置(23)への送油量を増加させる構成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、
前記接地部材(55)の上下方向の角度を検知する傾斜角検知部材(90)を設け、
前記制御装置(100)は、該傾斜角検知部材(90)が接地部材(55)の接地状態を検知しているときに前記自動昇降機構(C)が作動すると、前記電磁バルブ(83)から前記昇降油圧シリンダ(46)への送油量を増加させる構成とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記走行操作部材(17)の操作位置を検知する操作検知部材(95)を設け、
前記走行車体(2)の走行の動力を伝達する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を前記操作検知部材(95)が検知する前記走行操作部材(17)の操作位置に合わせて操作する構成とし、
前記傾斜角検知部材(90)が接地部材(55)の接地状態を検知しているとき、前記制御装置(100)は、前記走行操作部材(17)を後進側に操作しても前記油圧式無段変速装置(23)から動力を出力させない構成とすることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記作業装置(4)を昇降させるとき、前記制御装置(100)は、前記電磁バルブ(83)の開度を変更する電流値を時間経過に伴って上昇させて、前記作業装置(4)の昇降速度を制御する構成とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記作業装置(4)の下部に接地部材(55)を設け、該接地部材(55)の上下方向の角度を検知する傾斜角検知部材(90)を設け、
該傾斜角検知部材(90)が検知する前記接地部材(55)の角度が所定角度より上向きの角度であるとき、前記制御装置(100)は、前記電磁バルブ(83)の開度を大きく変更する構成とすることを特徴とする請求項6に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける植付装置を備えた苗移植機などの作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された苗移植機は、植付作業時には苗植付部の下部にフロートを設置し、このフロートで圃場面を均らすと共に、圃場の凹凸を検知して苗植付部を昇降させ、苗の植付深さを一定にする構成としている。
【0003】
また、下記特許文献2に記載された苗移植機は、油圧バルブの開度を変更することにより、苗植付部を昇降させる昇降油圧シリンダを伸縮させる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−106566号公報
【特許文献2】特開2012− 85610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された苗移植機では、後進操作時には、苗植付部が上昇し始めると同時に走行車体の後進が始まるので、フロートが圃場面から離間するまでにフロートが圃場面に潜り込み、圃場に大きな凹凸が形成され、苗の植付深さが乱れる問題がある。また、フロートには肥料などの粒状体を圃場に供給する粒状体供給装置から供給される粒状体排出口が設けられているが、フロートが接地したまま後進すると、この粒状体排出口に泥土が進入してしまい、粒状体が圃場に供給されなくなる問題がある。
【0006】
特許文献2に記載された苗移植機では、苗植付部の昇降は油圧バルブの開度制御で行われるが、油圧バルブの開度制御は、開度を切り替える信号が出てから開度が切り替わるまでのタイムラグが生じやすく、苗植付部の昇降タイミングが必要なタイミングよりも遅れ、苗の植付深さが深くなり過ぎたり、フロートが圃場面に潜り込んでしまう問題がある。
【0007】
本発明の課題は、後進操作をしても、フロートが圃場面から離間しない間に走行車体の後進が始まらないようにした作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
【0009】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を設け、該昇降リンク装置(3)を昇降させる昇降油圧シリンダ(46)を設け、該昇降リンク装置(3)に作業装置(4)を設け、該作業装置(4)の下部に圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させる接地部材(55)を設けた作業車両において、
該昇降油圧シリンダ(46)への送油量を調整する電磁バルブ(83)を設け、前記昇降リンク装置(3)の昇降位置を検知する昇降位置検知部材(92)を設け、該昇降リンク装置(3)が所定位置まで上昇したことを該昇降位置検知部材(92)が検知すると、前記電磁バルブ(83)から昇降油圧シリンダ(46)への送油量を減少させて前記作業装置(4)の上昇速度を減速させる制御装置(100)を設け
前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、前記接地部材(55)が圃場面に接地している間は、前記走行操作部材(17)が後進操作されても前記走行車体(2)が後進側に走行しない構成とし、前記エンジン(20)の回転数を増減させる自動アクセル機構(E)を設け、
該自動アクセル機構(E)に優先して前記エンジン(20)の回転数を変更する回転数切替部材(93)を設けたことを特徴とする作業車両である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記制御装置(100)は、前記回転数切替部材(93)を高回転数側に操作すると、前記エンジン(20)の回転数が高くなる構成とすると共に、
前記走行操作部材(17)を最高速位置まで操作したときは、前記回転数切替部材(93)の操作位置に関係なく前記エンジン(20)の回転数を前記自動アクセル機構(E)に基づく回転数にする構成とすることを特徴とする請求項1に記載の作業車両である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、該走行操作部材(17)の操作位置を検知する操作検知部材(95)を設け、
前記走行車体(2)の走行速度を検知する速度検知部材(96)を設け、
前記制御装置(100)は、前記操作検知部材(95)が走行操作部材(17)の前進操作または後進操作を検知した状態でありながら、前記速度検知部材(96)が走行停止状態を検知するときは、前記電磁バルブ(83)から前記昇降油圧シリンダ(46)への送油量を減少させ、前記油圧式無段変速装置(23)への送油量を増加させる構成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両である。
【0012】
請求項4記載の発明は前記走行車体(2)にエンジン(20)を設け、該エンジン(20)からの動力を伝達して前記走行車体(2)を走行駆動させる油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を操作する走行操作部材(17)を設け、
前記接地部材(55)の上下方向の角度を検知する傾斜角検知部材(90)を設け、
前記制御装置(100)は、該傾斜角検知部材(90)が接地部材(55)の接地状態を検知しているときに前記自動昇降機構(C)が作動すると、前記電磁バルブ(83)から前記昇降油圧シリンダ(46)への送油量を増加させる構成とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業車両である。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記走行操作部材(17)の操作位置を検知する操作検知部材(95)を設け、
前記走行車体(2)の走行の動力を伝達する油圧式無段変速装置(23)を設け、該油圧式無段変速装置(23)を前記操作検知部材(95)が検知する前記走行操作部材(17)の操作位置に合わせて操作する構成とし、
前記傾斜角検知部材(90)が接地部材(55)の接地状態を検知しているとき、前記制御装置(100)は、前記走行操作部材(17)を後進側に操作しても前記油圧式無段変速装置(23)から動力を出力させない構成とすることを特徴とする請求項4に記載の作業車両である。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記作業装置(4)を昇降させるとき、前記制御装置(100)は、前記電磁バルブ(83)の開度を変更する電流値を時間経過に伴って上昇させて、前記作業装置(4)の昇降速度を制御する構成とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業車両である。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記作業装置(4)の下部に接地部材(55)を設け、該接地部材(55)の上下方向の角度を検知する傾斜角検知部材(90)を設け、
該傾斜角検知部材(90)が検知する前記接地部材(55)の角度が所定角度より上向きの角度であるとき、前記制御装置(100)は、前記電磁バルブ(83)の開度を大きく変更する構成とすることを特徴とする請求項6に記載の作業車両である。
【0016】
(削除)
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、昇降リンク装置(3)が所定高さまで移動すると電磁バルブ(83)から昇降油圧シリンダ(46)への送油量が減少することにより、昇降リンク装置(3)を停止する前作業装置(4)の上昇速度を減速させることができるので、作業装置(4)に停止時の衝撃や振動が加わることが防止され、耐久性が向上する。
また、接地部材55が圃場に接地している間は、走行車体2が後進側に走行しないので、作業装置4の構成部材が圃場の泥土内に進入することを防止できるので、泥土が作業装置4の作動を阻害することが防止され、作業能率が従来技術より向上する。
【0018】
また、エンジン(20)の回転数は、走行操作部材(17)の操作に連動してエンジン(20)の回転数を増減させる自動アクセル機構(E)よりも、回転数切替部材(93)の操作で優先して変更されることにより、湿田や深田等の高トルクが必要な場所で低速走行する際にエンジン回転数が不足することを防止できるので、作業能率が向上する。
【0019】
請求項記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加えて、回転数切替部材(93)を高回転側に操作しているときは、エンジン(20)の回転数を高くすることにより、湿田や深田で作業をする際に常時高トルクを発生させ続けることができるので、圃場の泥土によって走行車体が移動できなくなることが防止され、作業能率が向上する。
【0020】
また、走行操作部材(17)を最高速位置まで操作したときは、回転数切替部材(93)の操作位置に関係なくエンジン(20)の回転数を自動アクセル機構(E)に基づく回転数にすることにより、走行車体(2)の走行速度が速くなり過ぎることが防止され、安定した走行や圃場内での作業が可能になる。
【0021】
請求項記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、操作検知部材(95)が前進操作または後進操作を検知した状態でありながら、速度検知部材(96)が走行停止状態を検知しているときは、電磁バルブ(83)から昇降油圧シリンダ(46)への送油量を減少させると共に、油圧式無段変速装置(23)への送油量を増加させることにより、油圧式無段変速装置(23)の作動油不足により走行車体(2)が走行できなくなることを防止できるので、作業能率が向上する。
【0022】
請求項記載の発明によれば、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、接地部材(55)が接地しているときに作業装置(4)が上昇すると、電磁バルブ(83)から昇降油圧シリンダ(46)への送油量を増やすことにより、作業装置(4)の上昇速度を早くすることができ、作業装置(4)の下部の接地部材(55)が圃場面から早く退避することができるので、泥土の付着が防止される。
【0023】
請求項記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加えて、接地部材(55)が接地しているとき、走行操作部材(17)を後進側に操作しても油圧式無段変速装置(23)から動力を出力させないことにより、接地部材(55)が接地したまま後進走行することを防止できるので、接地部材(55)に圃場の泥土が乗り上げ、この泥土が接地部材(55)の機能を阻害することが防止され、作業能率が向上する。
【0024】
請求項記載の発明によれば、請求項1からのいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、作業装置(4)を昇降させるとき、電磁バルブ(83)の開度を変更する電流値を時間経過に伴って上昇させることにより、電磁バルブ(83)が急激に作動することを防止できるので、電磁バルブ(83)の急作動による異音の発生や、作業装置(4)の昇降による走行車体(2)の振動が防止される。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項6に記載の発明の効果に加えて、傾斜角検知部材(90)が検知する接地部材(55)の回動角度が所定角度より上向きの角度であるときは、電磁バルブ(83)の開度を大きくすることにより、作業装置(4)の上昇速度を速くすることができるので、作業装置(4)の上方への退避が早くなり、接地部材(55)が圃場を荒らすことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例の乗用型苗移植機の側面図である。
図2図1の乗用型苗移植機の平面図である。
図3図1の乗用型苗移植機の作動部材の油圧回路図の一例である。
図4図1の乗用型苗移植機の制御ブロック図である。
図5図1の乗用型苗移植機の作動部材の油圧回路図の一例である。
図6図1の乗用型苗移植機の自動アクセル機構の作動中において、エンジン回転数切替ダイヤルを操作する場合のエンジン回転数とHSTレバーの操作量との関係を示す図である。
図7図1の乗用型苗移植機のホイルキャップの平面図(図7(A))と前輪へホイルキャップを取り付けた場合の車輪側面図(図7(B))である。
図8図7に示す前輪を装着した車両の模式的平面図であり、図8(A)には右旋回している場合を示し、図8(B)には直進している場合を示す。
図9図1の乗用型苗移植機のフロートと苗植付装置の部分平面図(図9(A))と側面図(図9(B))である。
図10図1の乗用型苗移植機のフロートの平面図(図10(A))とフロートが前上がりとなる傾斜地を走行中の乗用型苗移植機のフロート側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0028】
図1及び図2は作業車両の一実施例である乗用型苗移植機の側面図及び平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して作業装置である苗植付部4が昇降可能に装着されている。以下、苗植付部4に代表され、播種装置等を含む装置を作業装置ということがある。
【0029】
この乗用型苗移植機1は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸(図示せず)に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0030】
また、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0031】
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪伝動ケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪伝動ケース18,18から外向きに突出する後輪車軸(図示せず)に後輪11,11が取り付けられている。
【0032】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内の主変速装置及び副変速装置により変速された後、走行動力と外部取り出し軸に分離して取り出される。
【0033】
エンジン20からHST23を介して伝達される走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13を経て前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪伝動ケース18,18を経て後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0034】
エンジン20の上部には操縦席31が設置された操縦部33があり、該操縦部33にはHST23を操作して走行車体2の前後進、停止及び走行速度を変速する走行操作レバー(HST操作レバー)17と走行車体2の走行速度をチェンジにより複数段に変速するための副変速レバー16が配置されている。HST操作レバー17の操作量を検知するポテンショメータからなる操作検知部材95の検知結果に応じて制御装置100が油圧式無段変速装置(HST)23の出力を変更することができる。
【0035】
また、フロアステップ35上には走行クラッチペダル91を備え、該走行クラッチペダル91を踏み込み操作してサイドクラッチ(図示省略)を連結状態にし、その後で走行操作レバー17の前進側又は後進側への操作を行うことによって、車体2を移動させることができる。
【0036】
操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリアステップ36となっている。
【0037】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗枠38(予備苗載せ台38a,38b,38cを設けても良い。予備苗枠38は機体に支持された支持枠体49に第3予備苗載台38cと第2、第3移動リンク部材39b,39cを取り付け、第2、第3移動リンク部材39b,39cで第2予備苗載台38bを支持し、さらに第1、第2移動リンク部材39a,39bと第2予備苗載台38bで第1予備苗載台38aを支持している。第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cは支持枠体49に取り付けられた第2移動リンク部材39bの回動中心軸に設けられた図示しないモータからなる回動機構(切替駆動装置)70で回動して、第1予備苗載台38a、第2予備苗載台38b、第3予備苗載台38cを前後ほぼ同一平面状に展開する展開状態と上下に段状に配置される積層状態に変更することができる。
【0038】
また、苗植付部4の昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その端部側に縦リンク43が連結されている。
【0039】
そして、前記リンクベースフレーム42の下方に走行車体側の第1ローリング回動軸44を設け、前記縦リンク43に苗植付部側の第2ローリング回動軸44bを設け、該第1及び第2ローリング回動軸44、44bを連結軸44cで連結し、該連結軸44cを回転自在に挿入する第2ローリング軸44bを中心として苗植付部4をローリング自在に装着している。
【0040】
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0041】
また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65bと支持ローラ65aからなる枠体構造物65をレール状にして左右方向にスライドする構成である。
【0042】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植え付ける苗植付爪52aを備えた苗植付装置52,…、次工程における機体の進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ184等を備えている。
【0043】
なお、機体の前部左右両側には、隣接条に植え付けられた苗の上方に位置し続け、作業者が機体を走行させる目安とする左右一対のサイドマーカ115,115を備えている。前記線引きマーカ184,184は圃場面を削って直進走行の目安となる線を形成するものであるが、土質が柔らかいと、溝が時間の経過によって自然に埋まったり、線引きマーカ184,184が巻き上げた泥で溝が見えなくなったりすることがある。このときは、サイドマーカ115,115と既に植えた隣接条の苗を合わせながら走行すると、隣接条の苗の植え付けにあわせた苗の植え付けが可能となるので、苗の植え付け方向が乱れることがなく、植付精度が向上する。
【0044】
また、苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0045】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の上下動がセンターフロート55の前部に設けられたフロート傾斜角センサ90により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する電子油圧バルブ83(図3図5)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0046】
ここで、苗植付部4を作動油により昇降させる昇降シリンダ46などと昇降リンク装置3を昇降機構Rということがある。
【0047】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。整地ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー28を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
【0048】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0049】
操縦席31の前方下部に設けられた副変速レバー16はレバーガイド(図示せず)に沿って回動操作することにより、図示しない副変速装置が「路上走行速」、「中立」、「植付速」のいずれかに手動で切り換わるように構成されている。そして、副変速レバー16の基部側に設けた副変速レバーセンサ(レバー16の操作角度を検出するポテンショメータなど)(図示せず)によって副変速レバー16の操作位置を検出することができる。
【0050】
図3図5には本実施例の油圧回路Y,Z構成を示し、また図4に本実施例の制御ブロック図を示す。
【0051】
作動油を貯留するオイルタンクであるミッションケース12には、エンジン20の作動に伴いトルクジェネレータ82、昇降油圧シリンダ46を伸縮させて作業装置(苗植付部)4を上昇させる電子油圧バルブ83、油圧式無段変速装置(HST)23及び昇降シリンダ46へそれぞれ作動油を送油する油路と該油路に送油するためのメインポンプ86が設けられている。
【0052】
そして本実施例ではオイルタンク12からトルクジェネレータ82などが配置される油圧回路Y,Zに送油する油路の最上流部にアシスト切替弁84を配置していることに特徴があり、前記油路のオイルタンク12側からトルクジェネレータ82に向けて順にフィルタ73、メインポンプ86及びアシスト切替弁84が配置されている。
【0053】
図5に示すように、トルクジェネレータ82とアシスト切替弁84の間にある油圧回路Zの油路に蓄圧装置(アキュムレータ)85を設けた構成としても良い。このように、トルクジェネレータ82とアシスト切替弁84の間にある油圧回路Zに蓄圧装置85を設けると、トルクジェネレータ82の圧力が急激に変化することを防止できるので、ハンドル34が保持されて自動直進できる状態が維持されると共に、トルクジェネレータ82が油圧で破損することが防止される。
【0054】
本実施例では作動油を貯留するオイルタンク12からエンジン20の作動に伴い各種駆動部の油圧回路Y,Zにオイルタンク12から送油するメインポンプ86を備えており、また、ハンドル34の操舵力を作動油によりアシストするトルクジェネレータ(パワステ)82と、ハンドル34の操作角度を検知する操舵ポテンショメータ24を備えており、さらにトルクジェネレータ82への送油を切り替えるアシスト切替弁84と所定時間(例:15〜30秒)または所定距離(例:10〜20m)内に検知された操舵ポテンショメータ24の最大検知角度が設定値未満(例:10度未満)であるときは、トルクジェネレータ82への送油を遮断する側にアシスト切替弁84を作動させるタイマー機能88を備えた制御装置(100)を備えている。
【0055】
従って、前記所定時間または所定距離に亘って操舵ポテンショメータ24の最大検知角度が設定値未満であるときは、トルクジェネレータ82へのオイルタンク12からの送油が遮断されるので、ハンドル34を操作しなくても直進走行できる場所であると判断することができ、前輪10に土壌からの抵抗力がかかった際に走行車体2が左右方向に移動することが防止できる。
【0056】
また、作業者がハンドル34を操作しなくても、走行車体2が直進走行できることにより、作業者は他の操作に集中することができるので、作業能率や作業精度が従来より向上する。
【0057】
また、アシスト切替弁84の作動後に操舵ポテンショメータ24が所定値以上(例:10度以上)の操作角度を検知すると、タイマー機能88により制御装置100はトルクジェネレータ82に送油する側にアシスト切替弁84を作動させることにより、自動直進では対応できない場所、即ちハンドル34の操作が必要な場所であると判断することができるので、作業者は軽い力で走行車体2の進行方向を修正することが可能となり、作業者の労力が抑えられる。また、走行車体2の進行方向が乱れることを防止できるので、作業精度が従来技術より向上する。
【0058】
さらに、タイマー機能88により、アシスト切替弁84がオイルタンク12からの送油を遮断する側に切り替わってから所定時間(例:5〜10分)経過すると、制御装置100はトルクジェネレータ82にオイルタンク12から送油する側にアシスト切替弁84を作動させる構成とすることができる。
【0059】
また、アシスト切替弁84の切替後、所定時間(例:15〜30秒)または所定距離(例:10〜20m)を走行中の操舵ポテンショメータ24の最大検知角度が設定値未満(例:10度未満)であるときは、制御装置100はトルクジェネレータ82へのオイルタンク12からの送油を遮断する側にアシスト切替弁84を作動させる構成とすることができる。
【0060】
トルクジェネレータ82にオイルタンク12から作動油の供給を定期的に行うことにより、遮断されたトルクジェネレータ82内の作動油がリークして圧力が低下し、土壌の抵抗で前輪10が左右方向に移動することを防止できるので、継続した直進走行が可能となり、作業能率や作業精度が従来技術より向上する。
【0061】
また、アシスト切替弁84の作動調整により内圧が高い状態が維持され、トルクジェネレータ82が圧力により破損したり、シール性能が低下することを防止できるので、トルクジェネレータ82の耐久性が従来より向上する。
【0062】
また、HSTレバー17の操作量を操作検知部材95で検知し、操作検知部材95によるHSTレバー17の操作量の検知結果に応じて油圧式無段変速装置(HST)23の出力を変更し、また、HSTレバー17の後進操作に連動して苗植付部4を上昇させる自動昇降機構(バックリフト機構)Cを作動させ、またフロート傾斜角センサ90がフロート55の傾斜角を検知している間、すなわちフロート55が接地している間は、HSTレバー17が後進側に操作されていても油圧式無段変速装置23を出力させない制御構成を有する制御装置100を備えている。
【0063】
このため、フロート55が圃場に接地している間は、走行車体2が後進側に走行しないので、苗植付部4の構成部材が圃場の泥土内に進入することを防止できるので、泥土が苗植付部4の作動を阻害することが防止され、作業能率が従来技術より向上する。
【0064】
また、フロート傾斜角センサ90がフロート55の接地を検知している間は、HSTレバー17が後進側に操作されていてもHST(油圧式無段変速装置)23を後進側に出力させない制御構成が制御装置100に備わっているので、走行車体2が後進することによる以下の不具合を防止できる。施肥ホース62の出口に設ける、圃場に溝を形成する作溝器64に泥土が付着すると圃場面に溝を形成することができず、圃場に肥料が浸透しにくくなり、肥料が流失しやすくなる。また、施肥ホース62の出口に泥土が詰まり、肥料が圃場に供給されなくなることもある。
【0065】
走行車体2には走行速度を検知する速度センサとして後輪回転センサ96を備えているが、該後輪回転センサ96の代わりにGPS(図示せず)で走行車体2の走行速度を検知してもよい。
【0066】
そして、HSTレバー17で前後進操作された状態で、且つ前記昇降機構(昇降リンク装置3や昇降シリンダ46などからなる)Rを昇降作動させたときに、後輪回転センサ96又はGPSで走行車体2が走行していないことを検知すると、油圧式無段変速装置(HST)23の作動油の供給不足(チャージ不足)が発生していると判断して、制御装置100は苗植付部4を昇降させる油圧回路の電磁バルブ83の開度を絞って昇降機構Rへの作動油の送油量を減少させ、HST23への作動油の送油量を増加させる制御構成を備えている。
【0067】
そのため、HST23への作動油不足による走行車体2の走行の停止や昇降機構Rの停止が防止され、作業能率が従来技術より向上する。
【0068】
フロート傾斜角センサ90がフロート55、56の圃場への接地を検知しているときに、自動昇降機構Cが作動すると、制御装置100は、苗植付部4の昇降機構Rを作動させる油圧バルブ83の開度を広げて昇降機構Rへの作動油の送油量を増加させる制御構成を制御装置100に設けている。
【0069】
そのため、苗植付部4の昇降機構Rが作動した時にフロート55が接地しているときは、苗植付部4の昇降機構Rの作動用の油圧バルブ83の開度を広げることにより、作動油の排出量を増やすことができるので、昇降機構Rの作動が早くなり、苗植付部4の下部が圃場面から早く退避し、泥土の付着が防止される。
【0070】
苗植付部4の昇降機構Rを構成する昇降リンク装置3の昇降位置を検知する昇降位置検知部材(リンクセンサ)92を設け、該リンクセンサ92が、所定位置(最大付近)まで昇降リンク装置3が上昇したことを検知すると、苗植付部4の昇降機構Rの作動用の油圧バルブ83の開度を絞る制御構成を制御装置100に設けた。
【0071】
そのため、苗植付部4の昇降リンク装置3が所定高さまで移動すると、電磁バルブ83の開度が絞られることにより、昇降リンク装置3が停止する前に減速させることができるので、苗植付部4の昇降途中での停止時の衝撃や振動が防止され、耐久性が従来技術より向上する。
【0072】
本実施例では、制御装置100は苗植付部4の昇降用の油圧バルブ83の開度を電気的に(電流量で)制御して苗植付部4の昇降速度を制御する制御構成と、タイマー機能88により所定時間(例:100ミリ秒)ごとに段階的(例:1Aになるまで、0.1Aずつ)に苗植付部4の昇降速度制御用の電流値を上昇させながら苗植付部4の昇降信号を出力する昇降速度制御構成を備えている。
【0073】
制御装置100から苗植付部4の昇降信号が発信された際、タイマー機能88により苗植付部4の昇降速度を制御する制御構成により苗植付部4の昇降速度制御用の電流値を所定時間ごとに段階的に上昇させることにより、電磁バルブ83が急激に作動することを防止できるので、前記電磁バルブ83の急作動による異音の発生や、昇降機構Rの急激な動作による苗植付部4の重心位置の変動による走行車体2の振動が防止される。
【0074】
フロート傾斜角センサ90はフロート55の水平に対する接地角度から接地状態を検知する。すなわちフロート55がある程度の傾斜角で傾けば、フロート55が接地していないということが分かる。
【0075】
フロート傾斜角センサ90によりフロート55の接地角度が水平に近い角度である(接地状態にある)ことが分かると、制御装置100は、タイマー機能88により所定時間ごとに段階的に苗植付部4の昇降速度制御用の電流値を上昇させると共にフロート55の接地角度が所定値(例、作業条件にもよるが2〜5度程度)より大きくなると、前記電流値を最大値まで上昇させる苗植付部4の昇降信号の出力制御を行う制御構成を備えている。
【0076】
フロート傾斜角センサ90が検知するフロート55の水平に対する接地角度がマイナス角度であるときは、フロート55が実質的に圃場に接地していると判断され、タイマー機能88により苗植付部4の昇降速度制御用の電流値の上昇を所定時間ごとに段階的に上昇させることにより、昇降機構作動用の油圧バルブ83が急激に作動することを防止できるので、前記電磁バルブ83の急作動による異音の発生や、昇降機構Rの急激な動作による苗植付部4の重心位置の変動による走行車体2の振動が防止される。
【0077】
フロート55の接地角度が大きくなると、苗植付部4の昇降用の電流値を最大まで上昇させることにより、苗植付部4の上昇速度が速くなり、苗植付部4の上方退避が速くなるので、フロート55などが圃場を荒らすことが防止できる。
【0078】
なお、本実施例の苗移植機には、HSTレバー17を操作すると走行車体2の駆動用に設けられるエンジン20の回転数を連動して増減させる自動アクセル(オートアクセル)機構Eを備えている。
【0079】
自動アクセル(オートアクセル)機構Eとは、例えばオートアクセルスイッチ72をオンにすると、苗植付部(作業装置)4の昇降操作に連動して、エンジン回転数を制御する機構であり、苗植付部4の上げ操作で規定回転数までエンジン回転を低下させ、苗植付部4の下げ操作で低下させているエンジン回転を元の回転数に復帰させる機能を有する機構である。
【0080】
そこで、HSTレバー17を操作して、オートアクセルスイッチをオンにすると、走行車体2の駆動用に設けられるエンジン20の回転数を連動して増減させる自動アクセル機構Eを設けた場合に、自動アクセル機構Eが作動中であっても、HSTレバー操作位置検知部材95が走行中立位置(アイドリング状態)、または低速走行段階を検知しているときのエンジン20の回転数を手動で変更できる回転数切替ダイヤル93を設けた。
【0081】
走行中立位置又は低速走行段階のエンジン回転数を回転数切替ダイヤル93で上昇できることにより、自動アクセル機構Eが作動中であっても湿田や深田等の高トルクが必要な場所で低速走行する際にエンジン回転数が不足することを防止でき、作業者がエンジン回転数を別途変更する操作を行うことなく走行車体2を走行させることができるので、作業能率が従来技術より向上する。
【0082】
また、例えば、苗の補充作業のために苗植付部4を昇降させるとき等は、HSTレバー操作検知部材95が走行中立位置(アイドリング状態)、または低速走行段階を検知しているときにエンジン回転数切替ダイヤル93により作業者がエンジン20の回転数を上げることができるので、昇降用油圧シリンダ46への作動油の供給速度が速くなり、苗植付部4の苗の補充位置や植付作業位置への移動に要する時間が短縮されるため、作業能率が従来技術より向上する(図6(A)参照)。
【0083】
なお、苗の補充時は苗植付部を上昇させ、植付作業時は下降させる。低速走行中にこの操作を行うのは、補充を行う圃場端に近付いているとき、または補充後に離れるとき等である。
【0084】
自動アクセル機構Eが作動中であってもエンジン20の回転数を変更する回転数切替ダイヤル93を高回転数側に操作すると、HSTレバー17を操作したときに変動されるエンジン20の回転数が、回転数切替ダイヤル93を高回転数側以外に操作したときのエンジン20の回転数よりも高くなる制御構成と、HSTレバー17を最高速位置(図6の横軸の「8」)まで操作したときは、回転数切替ダイヤル93の操作位置に関係なくエンジン20の回転数を最高回転にする制御構成を制御装置100に設けた。
【0085】
エンジン回転数切替ダイヤル93を高回転側に操作しているときは、エンジン20の回転数を高くすることにより、湿田や深田で作業をする際に常時高トルクを発生させ続けることができるので、圃場の泥土によって走行車体が移動できなくなることが防止され、作業能率が向上する。
【0086】
また、HSTレバー17を最高速位置まで操作したときは、エンジン回転数切替ダイヤル93の操作位置に関係なくエンジン20の回転数を最高回転にすることにより、走行車体2には過度の高トルクが発生せず、また走行速度が速くなり過ぎることがなく、安定した走行や圃場内での作業が可能になる。
【0087】
図6には前記自動アクセル機構Eの作動中において、エンジン回転数切替ダイヤル93を操作する場合の具体例を示す。図6の縦軸はエンジン回転数(rpm)であり、横軸はHSTレバー17の操作量を、中立位置をゼロとして8段階で変化可能であることを示し、操作量が大きいほど大きな数字で表している。また、図6の点線は、基本のエンジン回転数を示し、破線はエンジン回転数切替ダイヤル93によるエンジン回転数を示す。
【0088】
図6(A)〜図6(F)にはHSTレバー操作検知部材95が走行中立位置(アイドリング状態)、または低速走行段階を検知しているときに回転数切替ダイヤル93により作業者がエンジン20の回転数を増減させる各種パターンを示す。
【0089】
たとえば図6(A)には,HSTレバー操作検知部材95が走行中立位置(アイドリング状態)、または低速走行段階を検知しているときにエンジン回転数切替ダイヤル93により作業者がエンジン20の回転数を走行開始時の所定の変速段数の間で基本回転数より上げることができることを示し、作業能率が従来技術より向上する。
【0090】
図6(B)は、深田や土壌の粘度が高い圃場等、走行開始から非常に強いトルクを発揮させる必要がある場合に用いる制御であり、アイドリング開始時からエンジン20の基本回転数よりエンジン回転数を比較的大きくしておき、HSTレバー17の操作量が大きくなると共に徐々にエンジン回転数を基本回転数に収れんさせる方法であり、圃場の泥土に足を取られて停止状態から発進できなくなることや、スリップ等により走行車体2の移動速度が不安定になり、苗の植付間隔が乱れて植付精度が低下することによる作業能率の低下を防止する効果がある。
【0091】
また、中立時もエンジン回転数が高く維持されるので、停止時の苗植付部4の昇降時に十分な作動油の移動が行え、苗植付部4の昇降操作を素早く行えるので、作業能率が向上する。
【0092】
図6(C)には走行開始時に苗移植機が圃場のぬかるみにより走行開始が出来なくなるのを防ぐために、走行開始時に回転数切替ダイヤル93によりエンジン20の回転数を基本回転数より急激に大きくする場合を示す。走行開始後にエンジン20の回転数が大幅に上昇することにより、圃場の土質や深さの抵抗に負けることなく能率的な走行が行えると共に、植付作業開始と共に苗植付部4の昇降や油圧式無段変速装置(HST)23、及びパワーステアリング機構等の作動に必要な作動油を電磁バルブ83から出し入れすることができるので、油圧不足による動作の遅れ、あるいは動作の停止が防止される。
【0093】
図6(D)にはフルスロットルになるHSTレバー17の変速段の変化の様子を示す。
【0094】
走行開始からエンジン回転数を基本回転数より大きく上げて、さらに、それでもエンジン回転数が不足する場合は、破線で示すように回転数切替ダイヤル93によりエンジン20の回転数を上げる。この操作では、泥土の粘度が高い圃場や深い圃場であっても、高速域で十分な走行トルクを確保することができるので、高速で植付走行する際にトルク不足で走行速度が低下してしまうことが防止され、作業能率の向上が図られる。
【0095】
図6(E)には図6(D)に示す場合よりさらに高出力にした場合の例を示す。通常時はHSTレバー17の操作段階にほぼ比例してエンジン20の回転数が増加することにより、燃料消費が抑えられ、回転上昇制御時は、低速でも高速でも十分な走行トルクの確保が可能となり、走行性能が向上する。
【0096】
図7のホイルキャップ98の平面図(図7(A))と前輪に装着したホイルキャップ98とタイヤ99の平面図(図7(B))示すようにホイルキャップ98の前輪10との接触部分に半円形の切欠を設けた。
【0097】
図8図7に示す前輪を装着した車両の模式的平面図であるが、図8(A)には右旋回している場合を示し、図8(B)には直進している場合を示す。直進走行時には前記ホイルキャップ98の前輪10との接触部分に設けた半円形の切欠が小さいので,この部分に付着した泥が隣接する植付条に落ちることはない。旋回時にはホイルキャップ98の全面で付着した泥を図8の矢印T方向に前輪10の外側に押し出すため、泥の抵抗が大きいが、切欠を設けることにより抵抗を軽減できる。
【0098】
また前輪10の洗浄時には、ホイルキャップ98の半円形の切欠部から前輪10の内側に入り込んだ泥は容易に水で洗い流すことができる。
【0099】
図9にフロート55、56と苗植付装置52の部分平面図(図9(A))と側面図(図9(B))を示す。
【0100】
苗植付装置52の苗植付爪52aに挟持された苗を圃場に植え付ける際に苗植付爪52aに沿って苗を押し出し、この動作に伴って圃場面に苗が植え付けられるが、苗が植え付けられた直後に、その領域の近傍の圃場面をフロート55、56が整地することになり、該整地動作で苗を植え付けた圃場面が影響を受け、場合によっては、せっかく植え付けた苗の植え付け状態に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0101】
そこで、図9(A)に示すように、フロート55、56の後半部分(苗植付装置52の回動中心より後ろ側の側部を切り欠くことで圃場に植え付けた苗に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0102】
また、図10(A)の平面図に示すように、苗植付爪52aの先端部が最も前側に移動する位置から後ろ側にかけてフロート55、56の側面に切欠部(角切除部)を設け、フロート55、56の後端部分を徐々に細くすることで、矢印Sに示すように泥が回り込むことができ、フロート55、56による整地跡が圃場面に付き難くすることができる。特に(図10(B))に示すように、フロート55、56が前上がりとなる傾斜地では、フロート55、56の後端部分を徐々に細くすることで、泥が回り込む効果が大きくなる。
【0103】
また、覆土板71は、苗植付爪52aによる苗植付位置より前側のフロート55、56の両側面に取り付けられるので、フロート55、56の後半部分の切欠部分に流れ込もうとする泥を覆土板71ですくい取りながら戻す効果がある。このとき覆土板71の後端部側面の曲げ部の形状がフロート側面の切欠部分の曲げ部の形状と左右対称にすることで覆土板71の後端部とフロート55,56の側面との間に隙間が生じにくくなるので、覆土板71による覆土性能が向上する。
【符号の説明】
【0104】
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部(作業装置)
10 前輪
17 走行操作(HST)レバー
20 エンジン
23 静油圧式無段変速装置(HST)
46 昇降用油圧シリンダ
55 センターフロート(接地部材)
83 電子油圧バルブ(電磁バルブ)
90 フロート傾斜角センサ(傾斜角検知部材)
92 昇降位置検知用リンクセンサ(昇降位置検知部材)
93 エンジン回転数切替ダイヤル(回転数切替部材)
95 HSTレバー検知部材(操作検知部材)
96 後輪回転センサ(速度検知部材)
100 制御装置
C 自動昇降機構
E 自動アクセル機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10