特許第6222277号(P6222277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222277
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】タンデム質量分析データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G01N27/62 D
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-104352(P2016-104352)
(22)【出願日】2016年5月25日
(62)【分割の表示】特願2015-557668(P2015-557668)の分割
【原出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-170174(P2016-170174A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真一
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520129(JP,A)
【文献】 特開2012−122871(JP,A)
【文献】 特開昭61−020856(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/049064(WO,A1)
【文献】 特開2007−287531(JP,A)
【文献】 特開2005−221250(JP,A)
【文献】 特許第6028875(JP,B2)
【文献】 国際公開第2015/107690(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/035419(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/132502(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0121793(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/121172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
H01J 40/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の質量電荷比幅に含まれる質量電荷比を有する、複数の異なる化合物にそれぞれ由来するイオンをまとめてプリカーサイオンとして選択し、その選択されたプリカーサイオンを解離して得られたプロダクトイオンを質量分析することで得られたMSnスペクトルデータを処理するタンデム質量分析データ処理装置であって、
a)プロダクトイオン毎に、当該プロダクトイオンの質量電荷比から推定される組成式と前記プリカーサイオンの質量電荷比から推定される組成式の整合性を検証することにより、そのプロダクトイオンが複数のプリカーサイオンのいずれに由来するものであるかを判定するプロダクトイオン帰属判定部と、
b)前記プロダクトイオン帰属判定部による判定結果に基づいて、複数のプロダクトイオンをプリカーサイオン毎に分離して各プリカーサイオンに対応するMSnスペクトルデータ再構成するデータ分離部と、
を備えることを特徴とするタンデム質量分析データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタンデム質量分析データ処理装置であって、
実測により得られたMSn-1スペクトルデータからプリカーサイオンとして選択された複数のイオンの質量電荷比値を取得し、該質量電荷比値から各イオンの組成式を推定するプリカーサイオン組成式推定部と、
実測により得られたMSnスペクトルデータから検出されたプロダクトイオンの質量電荷比値を取得し、該質量電荷比値から各プロダクトイオンの組成式を推定するプロダクトイオン組成式推定部と、をさらに備え、
前記プロダクトイオン帰属判定部は、プロダクトイオン毎に、前記プロダクトイオン組成式推定部により推定された組成式と前記プリカーサイオン組成式推定部により推定されたプリカーサイオンの組成式との整合性を検証することにより、そのプロダクトイオンが複数のプリカーサイオンのいずれに由来するものであるかを判定することを特徴とするタンデム質量分析データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを開裂させそれにより生成されたイオンを質量分析することが可能であるタンデム質量分析装置により収集されたデータを処理するデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析の一手法として、タンデム分析或いはMSn分析と呼ばれる手法が知られている。タンデム分析は、試料中の化合物から生成された各種イオンの中でターゲットとなる特定の質量電荷比を持つイオンをまず選択し、該イオン(通常、プリカーサイオンと呼ばれる)を衝突誘起解離(CID=Collision-Induced Dissociation)などの解離操作により開裂させ、それにより生成されたイオン(通常、プロダクトイオンと呼ばれる)を質量分析する分析手法であり、主として分子量が大きな物質の同定やその構造の解析を行うために、近年、広く利用されている。また、化合物によっては、1回の解離操作では十分に小さな断片にまで開裂しないため、プリカーサイオンの選択とそのプリカーサイオンに対する解離操作とが複数回繰り返される(つまりnが3以上であるMSn分析が行われる)場合もある。
【0003】
タンデム分析を行うための質量分析装置としては、例えば、コリジョンセルを挟んでその前後に四重極マスフィルタを配置した三連四重極型質量分析装置(タンデム四重極型質量分析装置などとも呼ばれる)や、三連四重極型質量分析装置において後段の四重極マスフィルタに代えて飛行時間型質量分析計を用いたQ−TOF型質量分析装置などが知られている。これら質量分析装置では、プリカーサイオン選択と解離操作とが1回しか行えないので、MS2(=MS/MS)分析までのタンデム分析しか行えない。一方、イオンの選択と解離操作とを複数回繰り返し実行可能であるイオントラップを用いたイオントラップ型質量分析装置や、イオントラップと飛行時間型質量分析装置とを組み合わせたイオントラップ飛行時間型質量分析装置では、原理的には、nの値の制限のないMSn分析が可能である(ただし、実際には感度の点からnは5程度に制限される)。
【0004】
このようなタンデム分析を利用して試料中の化合物を同定する際には、一般に、その化合物由来の特定の質量電荷比を有するイオンを開裂させ、それにより生成されたプロダクトイオンを質量分析することでMS2スペクトルを取得する。そして、その実測のMS2スペクトルのピークパターンを化合物データベースに格納されている既知化合物のMS2スペクトルと照合してパターンの類似度を計算し、その類似度を参照して化合物を特定する。そのため、正確な化合物同定を行うには、マススペクトルで観測されるピーク情報(主として質量電荷比値)の精度が高いことが重要である。近年の質量分析装置の性能の向上は顕著であり、従来装置ではマススペクトル上で1本のピークとしてしか観測できなかったものが、高質量分解能の装置では、複数本のピークとして分離されて観測できることもよくある。このような質量分解能、質量精度の改善に伴い、上記のようなデータベース検索による化合物の同定の信頼度も大幅に向上している。
【0005】
上述したように装置の質量分解能は向上しているものの、プリカーサイオンを選択する際の質量電荷比幅を極端に狭くすることは難しい。これは、特定の質量電荷比を持つイオンを抜き出すためのウインドウ(質量窓)の端部の選択特性は比較的なだらかである(つまりは透過率が徐々に悪くなる)ため、ウインドウの選択質量電荷比幅を狭くすると解離操作の対象となるプリカーサイオンの量が少なくなってしまい、十分に高い感度でプロダクトイオンを検出することが難しくなるからである(例えば特許文献1等参照)。こうしたことから、一般的な質量分析装置におけるプリカーサイオンの選択質量電荷比幅は0.5〜2Da程度に定められている。そのため、質量電荷比の差が小さい(例えば0.5Da以下)複数種類のイオンが存在すると、得られるMS2スペクトルには、複数の異なるイオン種が解離して生成されたプロダクトイオンのピークが混在して現れることになる。こうしたMS2スペクトルから求まるピーク情報を単純にデータベース検索に供しても、十分に高い精度で以て化合物を同定することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−122871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように従来は、マススペクトル(MS1スペクトル)上で狭い質量電荷比範囲内に複数のイオン種由来のピークが存在していることが判明している場合であっても、多くの場合、それら複数のイオンピーク全体に対して解離操作を行わざるを得ず、その結果、異なる複数のイオン種から生成されたプロダクトイオンのピークが混在したMS2スペクトルしか得られなかった。こうしたMS2スペクトルにおいて異なるイオン種由来のプロダクトイオンピークを識別することは困難であるため、データベース検索による化合物の同定精度を高めることが困難であった。
なお、こうした問題は、典型的にはMS2スペクトルにおいて起こるものであるが、nが3以上であるMSnスペクトルにおいても事情は同じである。
【0008】
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数の異なる化合物由来のイオンを解離して得られたプロダクトイオンのピークが混在しているnが2以上であるMSnスペクトルから、複数の化合物にそれぞれ対応するMSnスペクトルを得ることができるタンデム質量分析データ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するためになされた本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置は、所定の質量電荷比幅に含まれる質量電荷比を有する、複数の異なる化合物にそれぞれ由来するイオンをまとめてプリカーサイオンとして選択し、その選択されたプリカーサイオンを解離して得られたプロダクトイオンを質量分析することで得られたMSnスペクトルデータを処理するタンデム質量分析データ処理装置であって、
a)プロダクトイオン毎に、当該プロダクトイオンの質量電荷比から推定される組成式と前記プリカーサイオンの質量電荷比から推定される組成式の整合性を検証することにより、そのプロダクトイオンが複数のプリカーサイオンのいずれに由来するものであるかを判定するプロダクトイオン帰属判定部と、
b)前記プロダクトイオン帰属判定部による判定結果に基づいて、複数のプロダクトイオンをプリカーサイオン毎に分離して各プリカーサイオンに対応するMSnスペクトルデータ再構成するデータ分離部と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置は、例えば三連四重極型質量分析装置、Q−TOF型質量分析装置、イオントラップ型質量分析装置、イオントラップ飛行時間型質量分析装置などで得られたMSnスペクトルデータ、典型的にはMS2スペクトルデータを処理するものである。
【0011】
本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置第1の態様は、
実測により得られたMSn-1スペクトルデータからプリカーサイオンとして選択された複数のイオンの質量電荷比値を取得し、該質量電荷比値から各イオンの組成式を推定するプリカーサイオン組成式推定部と、
実測により得られたMSnスペクトルデータから検出されたプロダクトイオンの質量電荷比値を取得し、該質量電荷比値から各プロダクトイオンの組成式を推定するプロダクトイオン組成式推定部と、をさらに備え、
前記プロダクトイオン帰属判定部は、プロダクトイオン毎に、前記プロダクトイオン組成式推定部により推定された組成式と前記プリカーサイオン組成式推定部により推定されたプリカーサイオンの組成式との整合性を検証することにより、そのプロダクトイオンが複数のプリカーサイオンのいずれに由来するものであるかを判定することを特徴としている。
【0013】
本発明に係る第1の態様のタンデム質量分析データ処理装置において、プリカーサイオン組成式推定部はそれぞれ、実測により得られたMSn-1スペクトルデータからプリカーサイオンとした複数のイオンの質量電荷比値を取得し、質量電荷比値から各イオンの組成式、つまりそのイオンを構成する元素の種類と数とを推定する。プロダクトイオン組成式推定部も同様に、実測により得られたMSnスペクトルデータからプロダクトイオンの質量電荷比値を取得し、質量電荷比値から各プロダクトイオンの組成式を推定する。なお、プリカーサイオンやプロダクトイオンの質量電荷比値から組成式を推定するためには、質量電荷比が高い精度で得られている必要がある。そのため、処理対象のデータは、Q−TOF型質量分析装置やイオントラップ飛行時間型質量分析装置など、飛行時間型質量分析装置を用いた装置で得られたものであることが望ましい。
【0014】
或るプリカーサイオンが解離して生成されたプロダクトイオンでは、含まれる元素の数がプリカーサイオンにおけるその元素の数よりも増加していたり、或いはプリカーサイオンには含まれない元素が含まれていたりすることは通常あり得ない。即ち、プロダクトイオンの組成式はプリカーサイオンの組成式に包含される筈である。そこでプロダクトイオン帰属判定部は、プロダクトイオン毎に、推定された組成式がプリカーサイオンであるイオンの組成式に包含されるか否かを判定することで整合性が確保されているか否かを検証し、その結果に基づき、そのプロダクトイオンが複数のプリカーサイオンのいずれに由来するものであるかを判定する。そしてデータ分離部はその判定結果に基づいて、複数のプロダクトイオンをプリカーサイオン毎に分けたMSnスペクトルデータを再構成し、例えばプリカーサイオンとして選択した複数のイオン毎に分けたMSnスペクトルを作成する。
【0015】
もちろん、或るプロダクトイオンの組成式が複数のプリカーサイオンの組成式に包含されることはあり得るが、その場合には、プロダクトイオンをその複数のプリカーサイオンのいずれにも対応付ければよい。こうした場合、実際にはプロダクトイオンではないものが誤って対応付けられてしまう可能性があり、これはMSnスペクトルにおいてはノイズとなるが、少なくとも整合性がとれない、つまりは明らかにプロダクトイオンではないイオンを排除することで、各化合物に対するMSnスペクトルの純度を高めることができる。例えばこうして得られたMSnスペクトルデータをデータベース検索に供することで、化合物同定の正確性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置によれば、複数の異なる化合物のイオンが解離して生成されるプロダクトイオンが混在して現れるMSnスペクトルデータを、複数の化合物にそれぞれ対応するMSnスペクトルデータに分離することができる。こうして分離されたMSnスペクトルデータを例えばデータベース検索に供することにより、プリカーサイオン選択の際には分離できなかった複数の化合物を高い確度で同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に関連するタンデム質量分析データ処理装置を用いた第1実施例の質量分析システムの概略構成図。
図2】第1実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理の内容を示すフローチャート。
図3】プリカーサイオン選択ウインドウに複数のイオンが含まれる場合のマススペクトル及びMS/MSスペクトルの一例を示す図。
図4】第1実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理を説明するための模式図。
図5】本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置を用いた第2実施例の質量分析システムの概略構成図。
図6】第2実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理の内容を示すフローチャート。
図7】第2実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理を説明するための模式図。
図8】本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置を用いた第3実施例の質量分析システムの概略構成図。
図9】第3実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理を適用する場合の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施例]
まず本発明には含まれないものの本発明に関連するタンデム質量分析データ処理装置を用いた質量分析システムの一実施例(第1実施例)について、添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施例の質量分析システムの概略構成図である。
【0021】
第1実施例の質量分析システムは、処理対象であるデータを収集するために、イオン源10、第1段質量分離部11、イオン解離部12、第2段質量分離部13、検出器14、アナログデジタル変換器(ADC)15、分析制御部16、を含むタンデム質量分析計1を備える。分析制御部16による制御の下で、イオン源10は導入された試料に含まれる化合物をイオン化し、第1段質量分離部11は生成された各種イオンの中でその質量電荷比が所定の質量電荷比幅を有するプリカーサイオン選択ウインドウに含まれる特定のイオンをプリカーサイオンとして選択する。イオン解離部12は選択されたプリカーサイオンを衝突誘起解離等により解離させ、第2段質量分離部13は解離により生成された各種プロダクトイオンを質量電荷比に応じて分離する。そして、検出器14は分離されたプロダクトイオンを検出し、それぞれのイオンの量に応じた検出信号を生成する。この検出信号はアナログデジタル変換器15によりデジタルデータに変換され、データ処理部2に入力される。
【0022】
タンデム質量分析計1がQ−TOF装置である場合には、第1段質量分離部11は四重極マスフィルタであり、イオン解離部12はコリジョンセルであり、第2段質量分離部13は飛行時間型質量分析器である。また、タンデム質量分析計1がイオントラップ飛行時間型質量分析計である場合には、第1段質量分離部11及びイオン解離部12はイオントラップであり、第2段質量分離部13は飛行時間型質量分析器である。また、イオン源10におけるイオン化法は特に限定されず、試料の態様(つまり気体試料、液体試料など)に応じた適宜のイオン化法を用いることができる。
【0023】
データ処理部2は、タンデム質量分析計1から順次出力されるデータを収集して記憶するデータ格納21と、試料に含まれる化合物を同定するために、データ格納部21に格納されたデータに基づいて特徴的なデータ処理を実行する複数プリカーサ対応解析処理部22と、既知の化合物に関する情報が予め登録されている化合物データベース24と、化合物データベース24を利用したデータベース検索を行うことで化合物の候補を抽出するデータベース検索部23と、を機能ブロックとして含む。ユーザインターフェースである操作部4や表示部5が接続されている制御部3は、タンデム質量分析計1における実際の分析やデータ処理部2におけるデータ処理のためにシステム全体の制御を担う。
【0024】
なお、制御部3、分析制御部16、及びデータ処理部2の少なくとも一部は、パーソナルコンピュータ又はより高性能のワークステーションをハードウエア資源とし、それらコンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを該コンピュータで実行することによりそれぞれの機能が実現されるようにすることができる。
【0025】
図3(a)は、第1段質量分離部11でプリカーサイオンの選択を行わず、且つイオン解離部12でイオンの解離操作を行わないときに得られるマススペクトルの一例を示す図である。第2段質量分離部13として飛行時間型質量分析器のように高精度、高分解能のものを用いた場合、質量電荷比差が0.5Da以下であるようなきわめて近接した複数の化合物由来のイオンピークも分離した状態で観測される。図3(a)の例では、化合物Aに由来するピークA(m/z 385)と化合物Bに由来するピークB(m/z 385.2)との2本のピークがきわめて近接して出現している。このように、マススペクトル上では近接している複数のピークも十分に分離されており、それぞれのピークに対応する質量電荷比値を精度良く求めることが可能である。
【0026】
一方、MS/MS分析に際して解離操作の対象とされるイオンの量を十分に確保するには、プリカーサイオン選択に用いられるプリカーサイオン選択ウインドウの質量電荷比幅を最小でも0.5Da程度にしておく必要がある。そのため、プリカーサイオン選択の際には、きわめて近接しているピークAとピークBとを分離することはできない。その結果、ピークA、Bがプリカーサイオン選択ウインドウに含まれるように該ウインドウを設定してMS/MS分析を実行すると、化合物A由来の分子イオンと化合物B由来の分子イオンとが同時に解離され、図3(b)に示すように、MS/MSスペクトルには2つの異なるイオン種が解離して生成されたプロダクトイオンが混じって現れることになる。
【0027】
本実施例の質量分析システムにおけるデータ処理部2では、こうしたMS/MSスペクトルデータに対して以下に述べる特徴的なデータ処理を実施することで、複数の化合物A、Bをそれぞれ高い確度で同定できるようにしている。図2はこの特徴的なデータ処理の手順を示すフローチャート、図4はこのデータ処理を説明するための模式図である。ここでは、図3(a)に示すマススペクトルを構成するデータ及び図3(b)に示すMS/MSスペクトルを構成するデータがデータ格納部21に保存されている状態で、該データに対するデータ処理を行う場合を例に挙げて説明する。
【0028】
データ処理実行開始が指示されると、データ処理部2において複数プリカーサ対応解析処理部22は、データ格納部21から処理対象である実測のMS/MSスペクトルデータを読み出す。そして、MS/MSスペクトルに対しピーク検出処理を実行することにより、MS/MSスペクトルに現れているピークの情報(質量電荷比値及び信号強度値)を収集する(ステップS1)。上述したように、このときに収集されるプロダクトイオンのピーク情報は1つのプリカーサイオンに対応するものではなく、質量電荷比がプリカーサイオン選択ウインドウに含まれる複数のプリカーサイオン(この例ではm/z 385、385.2の2つ)に対応するものである。
【0029】
また複数プリカーサ対応解析処理部22は、データ格納部21から実測のマススペクトルデータを読み出し、MS/MS分析の際にプリカーサイオンとして選択された化合物A由来のピークAの質量電荷比値及び化合物B由来のピークBの質量電荷比値を求める。そしてデータベース検索部23は、ピークAの質量電荷比値(この例ではm/z 385)をデータベース検索のためのプリカーサイオン情報とし、ステップS1で収集したMS/MSスペクトルのピーク情報をプロダクトイオン情報とするように検索条件を設定したうえで、この検索条件に従って化合物データベース24に対するデータベース検索を実行する(ステップS2)。
【0030】
データベース検索の手法は従来の化合物同定のためのデータベース検索と同様であり、ピークの質量電荷比値の一致度などに基づくピークパターンの類似性を示す指標値が計算され、高い指標値が得られる複数の化合物が候補化合物として抽出される。また、このとき抽出された候補化合物に対応する標準MS/MSスペクトルが化合物データベース24から読み出される(ステップS3)。ここでは、図4に示すように、化合物A由来のピークAの質量電荷比値をプリカーサイオン情報としたデータベース検索によって、a、b、cなる3種の候補化合物が抽出されたものとする。
【0031】
次に、データベース検索部23は、ピークBの質量電荷比値(この例ではm/z 385.2)をデータベース検索のためのプリカーサイオン情報とし、ステップS1で収集したMS/MSスペクトルのピーク情報をプロダクトイオン情報とするように検索条件を設定したうえで、この検索条件に従って化合物データベース24に対するデータベース検索を実行する(ステップS4)。このデータベース検索によって、複数の化合物が候補化合物として抽出され、抽出された候補化合物に対応する標準MS/MSスペクトルが化合物データベース24から読み出される(ステップS5)。ここでは、図4に示すように、化合物B由来のピークBの質量電荷比値をプリカーサイオン情報としたデータベース検索によって、d、e、fなる3種の候補化合物が抽出されたものとする。
【0032】
続いて複数プリカーサ対応解析処理部22は、ピークAに対して抽出された複数の候補化合物のうちの1つとピークBに対して抽出された複数の候補化合物のうちの1つを選択し、その候補化合物の組み合わせに含まれる候補化合物にそれぞれ対応した標準MS/MSスペクトルを統合することによって仮想MS/MSスペクトルを作成する。仮想MS/MSスペクトルは、複数の標準MS/MSスペクトル上のピークを単に加算することにより作成すればよい。そして、その仮想MS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとのピークパターンの類似度を計算する。これにより、候補化合物の1つの組み合わせに対する仮想MS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度が求まる(ステップS6)。
【0033】
そして、候補化合物の全ての組み合わせについての類似度の計算が実施されたか否かを判定し(ステップS7)、類似度計算がなされていない候補化合物の組み合わせがあればステップS6へと戻る。こうしたステップS6、S7の繰り返しによって、ここでは、図4に示した化合物Aに対して抽出された3つの候補化合物a、b、cと化合物Bに対して抽出された3つの候補化合物d、e、fとの組み合わせ、具体的には(a、d)、(a、e)、(a、f)、(b、d)、(b、e)、(b、f)、(c、d)、(c、e)、(c、f)の9通りの組み合わせの全てについて、仮想MS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとの類似度が求まることになる。
【0034】
組み合わせとして選択された候補化合物が実際に化合物A、Bであるならば、仮想MS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度は高くなる筈である。換言すれば、この類似度に基づいて候補化合物が正解の化合物であるか否かを判断することができる。そこで、複数プリカーサ対応解析処理部22は、ステップS6で算出した類似度が高い順に処理結果、つまりは候補化合物の名称と類似度とを制御部3を通して表示部5の画面上に表示する(ステップS8)。最終的にユーザはこの表示を見て、プリカーサイオンとして選択した複数の化合物A、Bを同定する。
【0035】
上記説明では、プリカーサイオン選択ウインドウに2つのイオンが含まれる場合の例について述べたが、プリカーサイオン選択ウインドウに3以上の複数のイオン種が含まれ、その複数のイオン種がまとめてプリカーサイオンとして解離された場合であっても、同様にしてその複数の化合物を同定可能であることは明らかである。
【0036】
上記第1実施例の質量分析システムでは、データベース検索により候補化合物を探索する際に、実測のMS/MSスペクトルから求めたピーク情報、つまりはプロダクトイオンの質量電荷比値(或いは、質量電荷比値及び信号強度値)を用いていたが、同様のデータベース検索は、ニュートラルロスの質量を用いても行うことができる。
【0037】
ニュートラルロスの質量とはプリカーサイオンの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比との差である。したがって、化合物A由来のピークAの質量電荷比値をデータベース検索のためのプリカーサイオン情報とする際には、ピークAの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比との差をニュートラルロス質量としてデータベース検索に供すればよく、化合物B由来のピークBの質量電荷比値をデータベース検索のためのプリカーサイオン情報とする際には、ピークBの質量電荷比とプロダクトイオンの質量電荷比との差をニュートラルロス質量としてデータベース検索に供すればよい。データベース検索によって候補化合物がそれぞれ求まったあとには、第1実施例で説明したのと同様に、仮想MS/MSスペクトルを求めて該仮想MS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度を計算し、その類似度の高い順に結果を表示すればよい。
【0038】
なお、上記第1実施例では、類似度の高い順に候補化合物などの結果を表示したが、最も高い類似度を与える結果が正確であるとみなして、それのみを表示するようにしてもよい。また、類似度が所定の閾値を上回るか否かを判定し、閾値を上回る候補化合物の組み合わせがない場合には、該当無し(同定不能)との結果を表示するようにしてもよい。
【0039】
[第2実施例]
次に本発明に係るタンデム質量分析データ処理装置を用いた質量分析システムの実施例(第2実施例)について、添付図面を参照して説明する。
図5は第2実施例の質量分析システムの概略構成図である。第1実施例の質量分析システムと同じ構成要素には同じ符号を付してある。即ち、この第2実施例の質量分析システムではデータ処理部2の機能ブロックが第1実施例とは相違し、タンデム質量分析計1などの構成は第1実施例と全く同一である。
第2実施例の質量分析システムにおいて、データ処理部2はデータ格納部21のほかに、組成式推定部25、プロダクトイオン帰属判定部26、及びデータ分離処理部27などの機能ブロックを備える。
【0040】
図6は第2実施例の質量分析システムにおける特徴的なデータ処理の内容を示すフローチャート、図7はこの特徴的なデータ処理を説明するための模式図である。以下、データ処理部2における処理について説明する。
データ処理が開始されると、まず組成式推定部25は、データ格納部21から実測のマススペクトルデータを読み出し、プリカーサイオンとして選択された化合物A由来のピークAの質量電荷比値及び化合物B由来のピークBの質量電荷比値を求める。そして、求めた質量電荷比値から、化合物A、Bの組成式、即ち、それら化合物を構成する元素の種類と各元素の数をそれぞれ推定する(ステップS11)。上述したように、第2段質量分離部13が飛行時間型質量分析器のような高精度、高分解能のものであれば、高い精度で質量電荷比値が求まるので、高い確度で組成式を推定することができる。
【0041】
次に、組成式推定部25はデータ格納部21から実測のMS/MSスペクトルデータを読み出し、MS/MSスペクトルに対しピーク検出処理を実行することにより、MS/MSスペクトルに現れているピークの質量電荷比値を収集する。そして、求めた質量電荷比値から、MS/MSスペクトル上で観測されるプロダクトイオンの組成式をそれぞれ推定する(ステップS12)。
なお、一般的に有機化合物であれば、H、C、O、Nなどの基本的な元素が含まれることを想定して組成式推定を行うが、Cl、Brといったハロゲン元素など、特殊な元素が含まれる場合には、そうした可能性があることを示す付加的な情報が与えられれば組成式の推定は容易である。したがって、そうした付加的な情報をユーザが適宜入力できるようにし、それを組成式推定に利用するようにするとよい。
【0042】
一般に、プロダクトイオンは元のプリカーサイオンから何らかの断片(化学構造体)が脱離したものであるから、プロダクトイオンの組成式は元のプリカーサイオンの組成式に包含される、つまりは、プロダクトイオンを構成する任意の元素の個数は元のプリカーサイオンを構成するその元素の個数と同じか或いはそれよりも少なく、プロダクトイオンを構成する任意の元素は元のプリカーサイオンにも含まれる筈である。換言すれば、プロダクトイオンを構成する或る元素の個数がプリカーサイオンを構成する該元素の個数を上回る場合や、プロダクトイオンを構成する或る元素がプリカーサイオンに含まれない場合には、そのプリカーサイオンはそのプロダクトイオンの元となったイオンでない可能性がきわめて高いといえる。そこで、プロダクトイオン帰属判定部26は、実測のMS/MSスペクトルにおいて検出されたプロダクトイオン毎に、その組成式が複数のプリカーサイオンの組成式に包含されるか否かを判定することにより、組成式の整合性を検証し、プロダクトイオンのピークを組成式の整合性がとれるプリカーサイオンに帰属させる(ステップS13)。そして、実測のMS/MSスペクトルにおいて検出された全てのプロダクトイオンピークについて帰属が決定する(ステップS14でYesと判定される)まで、ステップS13、S14の処理を繰り返す。
【0043】
もちろん、或るプロダクトイオンの組成式が複数のプリカーサイオンの組成式に包含されることは十分にあり得るから、その場合には、そのプロダクトイオンは複数のプリカーサイオンの両方に帰属させればよい。また、或るプロダクトイオンの組成式が複数のプリカーサイオンの組成式のいずれにも包含されない場合には、それは実際にはプロダクトイオン由来ではないノイズピークである可能性があるから、そうしたピークは単に除外すればよい。そうして、ステップS12においてMS/MSスペクトルから検出されたプロダクトイオン由来のピーク(厳密にはプロダクトイオンであると推定されるピーク)の全ての帰属を決定したならば、データ分離処理部27は、その帰属結果に基づいて、MS/MSスペクトルデータを複数のプリカーサイオンに対応するように分離し(ステップS15)、さらに、分離されたデータに基づいて各プリカーサイオンに対応したMS/MSスペクトルを作成する(ステップS16)。
【0044】
図7(a)はMS/MSスペクトルに現れるピークが帰属された例を示す図であり、図中、□印と○印はそれぞれのピークの帰属先を示している。また、無印のピークはいずれのプリカーサイオンにも帰属されないピークである。図7(b)は帰属結果に応じて2つに分離されたMS/MSスペクトルの例である。なお、複数のプリカーサイオンの両方に帰属されたプロダクトイオンは実際に両方のプリカーサイオン由来のプロダクトイオンである場合と、いずれか一方(又は希には両方)のプリカーサイオンへの帰属が誤りである場合とがある。後者の場合には、分離されたMS/MSスペクトル上に偽のピークが出現することになるが、明らかにプロダクトイオンではないピークは除去されるので、少なくとも分離前のMS/MSスペクトルに比べれば純度の高い有用なMS/MSスペクトルを得ることができる。
【0045】
例えば、こうしてプリカーサイオン毎に分離されたMS/MSスペクトルが得られたならば、それぞれのMS/MSスペクトルから求めたピーク情報をデータベース検索に供して化合物同定を行うようにすればよい。このときにデータベース検索に供されるピーク情報はそのときのプリカーサイオン由来ではないプロダクトイオンピークの少なくとも一部が除去されたものとなるので、データベース検索の精度が向上し、正解の化合物を同定できる可能性が高まる。
【0046】
[第3実施例]
本発明には含まれないものの本発明に関連するタンデム質量分析データ処理装置を用いた質量分析システムの他の実施例(第3実施例)について、添付図面を参照して説明する。
図8は第3実施例の質量分析システムの概略構成図である。第1、第2実施例の質量分析システムと同じ構成要素には同じ符号を付してある。即ち、この第3実施例の質量分析システムではデータ処理部2の機能ブロックが第1、第2実施例と相違し、タンデム質量分析計1などの構成は第1、第2実施例と全く同一である。
第3実施例の質量分析システムにおいて、データ処理部2はデータ格納部21、データ分離処理部27などのほかに、マスデフェクト抽出部28、プロダクトイオン帰属判定部29といった機能ブロックを備える。
【0047】
この第3実施例では第2実施例と同様に、実測のMS/MSスペクトルにおいて検出された各プロダクトイオンのピークを複数のプリカーサイオンのいずれか(又は複数)に帰属させるが、その際に、一般的にマスデフェクトフィルタリングと呼ばれる手法を利用する。これは、質量分析を用いた代謝物の解析によく利用される手法であり、質量電荷比値の小数点以下の部分の値(つまりはマスデフェクト)の近似性を利用して不要なイオンと有用なイオンとを識別するものである。
【0048】
ここで、図9により、いずれのプリカーサイオンから派生したプロダクトイオンであるかを判定するためにマスデフェクトフィルタリングが有用であることを説明する。
いま一例として図9(a)に示した2種の化合物、即ち、トリアレート(S-2,3,3-トリクロロアリルジイソプロピルチオカルバマート)とフェンプロピモルフ((2β,6β)-4-[3-[4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル]-2-メチルプロピル]-2,6-ジメチルモルホリン)とが試料に含まれているものとする。トリアレートの質量は304.0091、フェンプロピモルフの質量は304.2635であり、マススペクトルにおいて両化合物由来の分子イオンの質量電荷比差は0.2544Daにすぎない。そのため、上述したようにMS/MS分析のための設定されるプリカーサイオン選択ウインドウによっては両化合物由来のイオンを分離することはできず、それら化合物由来のイオンはまとめてプリカーサイオンとして解離されることになる。その結果、MS/MSスペクトルでは、両化合物由来のプロダクトイオンが混じって出現する。
【0049】
トリアレートが解離するとプロダクトイオンの1つとして図9(b)に示すような化学構造を有するイオンが生成される。一方、フェンプロピモルフが解離するとプロダクトイオンの1つとして図9(c)に示すような化学構造を有するイオンが生成される。前者のプロダクトイオンのマスデフェクトは0.0405Da、後者のプロダクトイオンのマスデフェクトは0.3245Daである。トリアレートのマスデフェクトは0.0091Da、フェンプロピモルフのマスデフェクトは0.2635であり、マスデフェクトを比較するとそれぞれのプロダクトイオンは解離前の親化合物のマスデフェクトに近いことが分かる。もちろん、これは、プリカーサイオンとしてまとめて選択される複数の化合物のマスデフェクトが或る程度以上離れていることが前提であるが、そうであれば、プロダクトイオンのマスデフェクトが複数の化合物のマスデフェクトのいずれに近いのかを判断することで、プロダクトイオンをプリカーサイオン、つまりは化合物に帰属させることができる。
【0050】
そこで第3実施例の質量分析システムにおいて、マスデフェクト抽出部28はプリカーサイオンやプロダクトイオンのマスデフェクトを求め、プロダクトイオン帰属判定部29は各プロダクトイオンのマスデフェクトがいずれのプリカーサイオンのマスデフェクトに近いのかを判断し、帰属を決定する。ただし、解離の態様によっては、マスデフェクトが必ずしもプリカーサイオンに近くなるとは限らないので、例えばプリカーサイオンとプロダクトイオンとのマスデフェクト差の最小値が所定閾値を上回る場合には、そのプロダクトイオンはいずれのプリカーサイオンにも帰属しない又は逆に複数のプリカーサイオンの両方に帰属させるようにするとよい。こうしてプロダクトイオンの帰属を決定したならば、第2実施例と同様に、帰属結果に基づいてMS/MSスペクトルデータを分離すればよい。
【0051】
また、第2実施例と第3実施例とは併用することができる。即ち、プロダクトイオンピークの帰属を決定する際に、推定した組成式とマスデフェクトの両方を用いることで、帰属の精度を高めることができる。
【0052】
なお、上記第2実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0053】
1…タンデム質量分析計
10…イオン源
11…第1段質量分離部
12…イオン解離部
13…第2段質量離部
14…検出器
15…アナログデジタル変換器
16…分析制御部
2…データ処理部
21…データ格納部
22…複数プリカーサ対応解析処理部
23…データベース検索部
24…化合物データベース
25…組成式推定部
26、29…プロダクトイオン帰属判定部
27…データ分離処理部
28…マスデフェクト抽出部
3…制御部
4…操作部
5…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9