(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0024】
図1および
図2を参照して本発明による基板の実施の形態を説明する。
図1および
図2に示した基板1は、炭化珪素の単結晶からなる基板1であって、当該基板1の表面11における表面粗さRaの平均値が0.5nm以下、当該表面粗さRaの標準偏差σが0.2nm以下となっている。また、当該基板1の裏面12における表面粗さRaの平均値が0.3nm以上10nm以下となっており、当該表面粗さRaの標準偏差σが3nm以下となっている。また、基板1の表面の直径Dは110mm以上である。このように、表面11に加えて裏面12についても表面粗さが管理された基板1においては、表面11に炭化珪素のエピタキシャル膜を成長させる際に裏面12と当該基板1が搭載された成膜装置のサセプタとの間の接触状態を裏面12全体で均一化することができる。このため、局所的な接触状態のばらつきが発生することに起因する基板1での温度分布の発生を抑制できる。このため、形成されるエピタキシャル膜の結晶性や不純物濃度といった膜質の均一性を向上させることができる。この結果、当該エピタキシャル膜を利用して形成された半導体装置の特性がばらつくことを抑制でき、結果的に形成される半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0025】
また、上記基板1において、表面11の直径をD(
図1参照)とし、基板1の厚みをT(
図2参照)とし、裏面の反りをWbとした場合に、100≦D/T≦1000、0≦Wb/T≦0.2、という関係式を基板1は満足する。この場合、比較的大型で反りの少ない基板1に本発明を適用することになり、エピタキシャル膜の形成工程や半導体装置の製造工程における不良の発生確率を低減できるという本発明の効果がより顕著になる。
【0026】
次に、
図3を参照して、
図1および
図2に示した炭化珪素からなる基板1の製造方法を説明する。
【0027】
図3を参照して、まず基板準備工程(S10)を実施する。ここでは、表面粗さを調整する加工対象である炭化珪素からなる基板を準備する。具体的には、たとえば種基板に炭化珪素をエピタキシャル成長させる結晶成長工程(S11)を実施する。このようにしてある程度の大きさの炭化珪素からなるインゴットを得る。
【0028】
次に、インゴット成型工程(S12)を実施する。具体的には、上述した工程(S11)において得られたインゴットの表面、裏面、外周などを研削して所定の形状および面方位のインゴットを得る。
【0029】
次に、スライス工程(S13)を実施する。この工程(S13)においては、上述のようにして得られたインゴットを、ワイヤーソーなどを用いてスライスする。この結果、表面粗さを調整する加工対象である炭化珪素からなる基板を得る。
【0030】
次に、
図3に示すように、表面処理工程(S20)を実施する。具体的には、基板の表面および裏面を従来周知の任意の方法により研削する研削工程(S21)を実施する。この工程(S21)により、基板の厚みを調整し、基板の表面側および裏面側の表面粗さRaをある程度の値にまで低減する。
【0031】
次に、研磨工程(S22)を実施する。この工程(S22)においては、たとえばラップ装置やCMP装置を用いて基板の表面および裏面を研磨する。この工程(S22)により、上述したような表面粗さRaを有する表面11および裏面12を得る。
【0032】
次に、
図3に示した洗浄工程(S30)を実施する。具体的には、研磨された基板の表面および裏面を従来周知の任意の方法により洗浄する。このようにして、
図1および
図2に示した炭化珪素からなる基板1を得ることができる。
【0033】
また、本発明は上述のような単結晶SiCからなる基板のみではなく、
図4に示すような貼合わせ基板(複合基板)に対しても適用可能である。
図4を参照して、本発明による基板の実施の形態の変形例を説明する。
【0034】
図4を参照して、本発明による基板の実施の形態の変形例である基板1は、ベース基板20の表面上に、複数の単結晶炭化珪素からなる単結晶タイル基板30が接合された貼合せ基板である。高品質の小片単結晶基板を、安価な大型ベース基板に貼合せることで、表面の結晶品質が優れる大口径基板を低コストで作製することができる。
【0035】
複数の単結晶タイル基板30は接合面31において隙間が埋まっていることが好ましい。なおベース基板20としては、特に材料の限定はないが、耐熱性と強度から炭化珪素からなる基板を用いることが好ましい。炭化珪素は転位や欠陥の多い単結晶、多結晶、焼結体のいずれでもよい。
【0036】
この基板1においても、エピタキシャル膜などを形成する単結晶炭化珪素が露出した面である表面11の表面粗さRaは平均値が0.5nm以下、標準偏差σが0.2nm以下とすることができる。また、裏面12における表面粗さRaは平均値が0.3nm以上10nm以下、標準偏差σが3nm以下となっている。このような基板1によっても、
図1および
図2に示した基板と同様の効果を得ることができる。
【0037】
次に、
図4に示した基板1の製造方法を簡単に説明する。
図4に示した基板1の製造方法は、基本的には
図1および
図2に示した基板1の製造方法と同様であるが、
図3に示す基板準備工程(S10)が
図1および
図2に示した基板の製造方法とは異なっている。すなわち、
図4に示した基板1の製造方法においては、
図3に示した基板準備工程(S10)として先に説明した結晶成長工程(S11)、インゴット成型工程(S12)、スライス工程(S13)までは同様の工程を実施するが、その後単結晶タイル基板30(
図4参照)を形成するためのタイル基板成形工程(S14)を実施する。この工程(S14)においては、たとえば上記スライス工程(S13)において得られた基板からダイシングソーやワイヤーソーなどを用いて単結晶タイル基板30を切り出す。この単結晶タイル基板30の平面形状は、三角形状、四角形状などの多角形状、あるいは円形状など任意の形状とすることができる。
【0038】
その後、貼合わせ工程(S15)を実施する。この工程(S15)においては、任意の方法により複数個の単結晶タイル基板30をベース基板20上に配置して互いに接合する。この貼合わせ工程(S15)において用いる方法としては、たとえば接合材となるべき炭化珪素を昇華法などにより接合面31に形成するといった方法や、接着剤により接合する方法等の任意の方法を用いることができる。
【0039】
この後、
図3に示した表面処理工程(S20)および洗浄工程(S30)を実施することにより、
図4に示した基板1を得ることができる。
【0040】
次に、
図1または
図4に示した基板1を用いて形成した半導体装置を、
図5を参照して説明する。
【0041】
図5に示すUMOS410は、本発明による基板1と、n
−型SiCエピタキシャル層102と、p型ウェル領域117と、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116と、1対のn
+型ソース不純物領域と、1対のn
+型ソース不純物領域の間においてp型ウェル領域117およびn
−型SiCエピタキシャル層102を部分的に除去して形成された溝の内壁面上に形成されたゲート絶縁膜107と、ゲート絶縁膜107上であって溝を充填するように形成されたゲート電極122と、ゲート電極122およびp型ウェル領域117の表面を覆う層間絶縁膜106と、層間絶縁膜106においてn
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域の上部表面の一部を露出するように形成された開口部と、当該開口部を介してn
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域116に接続されたソース電極121と、基板1の裏面上に形成されたドレイン電極124とを備える。
【0042】
図5に示すUMOS410においては、ゲート絶縁膜107がp型ウェル領域117に形成された溝の上下方向に伸びる側面および、ゲート電極122の最下部と対向する左右方向に伸びる底面を覆うように形成されている。なお、以上に述べた各構成要素のp型およびn型をすべて逆とした構成としてもよい。
【0043】
ここでUMOS410の動作について説明する。ゲート絶縁膜107に沿ったp型ウェル領域117の側面(接合面近傍)において、ゲート電極122への電圧印加に応じて電子の反転層を形成することができる。すると、ソース電極121とドレイン電極124との電位差に応じて、n
+型ソース不純物領域111、p型ウェル領域117の反転層、n
−型SiCエピタキシャル層102、n
+型のSiC基板である基板1を経由した電流を、上記両ソース電極121とドレイン電極124との間に印加することが可能となる。このときのソース電極121とドレイン電極124との間の電流は、ゲート絶縁膜107に沿うように流れる。
【0044】
図5に示したUMOS410は、本発明による基板1を利用しているため、n
−型SiCエピタキシャル層102を形成するときに基板1の温度分布が均一化されている。したがって、当該n
−型SiCエピタキシャル層102は優れた膜質を有する。そのため、電気的特性の優れたUMOS410を実現できる。
【0045】
次に、
図6を参照して、
図5に示したUMOS410の製造方法を説明する。
図6に示すように、UMOS410の製造方法としては、まず基板1を準備する工程である基板準備工程(S100)を実施する。この工程(S100)では、
図3に示した基板の製造工程を実施することにより基板1を準備してもよい。次に、基板1の表面上n
−型SiCエピタキシャル層102を形成する工程であるエピタキシャル成長工程(S200)を実施する。そして、
図6に示す加工工程(S300)を実施する。具体的には、イオン注入法などによりp型ウェル領域117、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116、n
+型ソース不純物領域111を形成する工程(S310)を実施する。
【0046】
当該工程(S300)では、次に、1対のn
+型ソース不純物領域の間において、p型ウェル領域117およびn
−型SiCエピタキシャル層102を部分的に除去して溝を形成する工程(S320)を実施する。この工程(S320)では、たとえば反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いることにより溝を形成することができる。なお、p型ウェル領域117における溝の側面近傍での反転層の形成による、ソース電極121とドレイン電極124との導通を確実に行なうため、上記溝の上下方向の深さは、p型ウェル領域117の厚さよりも深いことが好ましい。
【0047】
次に、エピタキシャル層以外の構造を形成する工程に対応する電極形成工程(S400)を実施する。具体的には、上記方法により形成された溝の内部表面上およびp型ウェル領域117の上部表面上に、たとえば熱酸化法を用いて、ゲート絶縁膜107となるべき絶縁膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクパターンをマスクとして当該絶縁膜を部分的にエッチングにより除去することにより、
図5に示すゲート絶縁膜107を形成する。ゲート絶縁膜107上にゲート電極122を形成する。さらに、全体を覆うように層間絶縁膜106を形成した後、層間絶縁膜106上に形成されたマスクパターンをマスクとしたエッチングにより層間絶縁膜106を部分的に除去することにより、n
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域の上部表面の一部を露出するように開口部を形成する。そして、当該開口部を介してn
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域に接続されるとともに、ゲート電極122上の層間絶縁膜106を覆うようにソース電極121を形成する。また、基板1の裏面側にドレイン電極124を形成する。このようにして、
図5に示したUMOS410を得ることができる。
【0048】
次に、
図1または
図4に示した基板1を用いて形成した本発明による半導体装置の変形例を、
図7を参照して説明する。
【0049】
図7に示すDMOS420は縦型MOSFETの一種である。
図7のDMOS420は、ソース電極121からn
−型SiCエピタキシャル層102のゲート絶縁膜107と対向する領域に電子が流れた後、当該電子が転向してドレイン電極124に向かう。このようにしてソース電極121とドレイン電極124との間に電流が流れる構成としている。
【0050】
具体的には
図7に示すように、DMOS420は、
図5に示したUMOS410と同様に、本発明による基板1と、基板1の表面上に形成されたn
−型SiCエピタキシャル層102とを備える。n
−型SiCエピタキシャル層102の表面層には、互いに間隔を隔てて配置された1対のp型ウェル領域117が形成されている。p型ウェル領域117の表面には、それぞれp
+型ウェルコンタクト不純物領域116と、n
+型ソース不純物領域111とが形成されている。1対のp型ウェル領域117の間におけるn
−型SiCエピタキシャル層102の表面上からp型ウェル領域117およびn
+型ソース不純物領域111上にまで延在するようにゲート絶縁膜107が形成されている。ゲート絶縁膜107上にはゲート電極122が形成されている。
【0051】
ゲート電極122およびp型ウェル領域117の表面を覆うように層間絶縁膜106が形成されている。層間絶縁膜106においては、n
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域の上部表面の一部を露出するように開口部が形成されている。当該開口部を介してn
+型ソース不純物領域111およびp
+型ウェルコンタクト不純物領域116に接続されたソース電極121が形成されている。また、基板1の裏面上にドレイン電極124が形成されている。なお、以上に述べた各構成要素のp型およびn型をすべて逆とした構成としてもよい。
【0052】
なおp型ウェル領域117は、たとえば厚みが1.5μm程度であり、アルミニウムを不純物として1×10
16cm
−3程度含んでいてもよい。p
+型ウェルコンタクト不純物領域116は、アルミニウムを不純物として1×10
19cm
−3程度含んでいてもよく、その厚みが0.4μm程度であってもよい。
【0053】
ここでDMOS420の動作について説明する。DMOS420は、ゲート電極122に対して電圧を印加しない状態であれば、n
+型ソース不純物領域111がn型、p型ウェル領域117がp型、n
−型SiCエピタキシャル層102がn型であるため、n
+型ソース不純物領域111とp型ウェル領域117との間、あるいはp型ウェル領域117とn
−型SiCエピタキシャル層102との間のいずれかにおいて、ソース電極121からドレイン電極124への導通を阻害する。ゲート電極122に対して負の電圧を加えた場合においては、ゲート電極122の下部のゲート絶縁膜107に覆われたp型ウェル領域117において、多数キャリアの正孔による蓄積層が形成される。このため、電流を流すことがさらに困難となる。
【0054】
しかしゲート電極122に対して正の電圧を加えると、ゲート電極122の下部のゲート絶縁膜107に覆われたp型ウェル領域117において電子による反転層が形成される。このため、n
+型ソース不純物領域111からドレイン電極124にかけての領域には空乏層が形成されなくなる。したがってソース電極121とドレイン電極124との間の電位差に応じて、両電極間に電流を流すことが可能になる。
【0055】
図7に示したDMOS420は、本発明による基板1を利用しているため、n
−型SiCエピタキシャル層102を形成するときに基板1の温度分布が均一化されている。したがって、当該n
−型SiCエピタキシャル層102は優れた膜質を有する。そのため、電気的特性の優れたDMOS420を実現できる。
【0056】
なお、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116は、ソース電極121とp型ウェル領域117とを電気的に接続することにより、p型ウェル領域117における電位を固定する役割を有する。p型ウェル領域117は上述したように不純物濃度が1×10
16cm
−3と低い。このため、p型ウェル領域117とソース電極121とを直接接合することにより両者を電気的に接続することが困難である。そこでDMOS420においては、p型ウェル領域117と同じp型の注入層からなり、p型ウェル領域117よりも不純物濃度の高いp
+型ウェルコンタクト不純物領域116を、ソース電極121と接合するように配置している。このようにすれば、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116を介してソース電極121とp型ウェル領域117とを電気的に接続することが可能となる。
【0057】
次に、
図7に示したDMOS420の製造方法について説明する。
図7に示したDMOS420の製造方法は、基本的には
図6に示したUMOS410の製造方法と同様であって、
図6の工程(S100)〜工程(S300)を実施する。ただし、工程(S300)では、p型ウェル領域117、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116、n
+型ソース不純物領域111を形成する工程(S310)を実施するが、その後には
図5に示したUMOS410の製造方法とは異なり溝は形成しない。
【0058】
その後、電極形成工程(S400)を実施するが、当該工程(S400)では、p
+型ウェルコンタクト不純物領域116、n
+型ソース不純物領域111およびp型ウェル領域117の上部表面上に、たとえば熱酸化法を用いて、ゲート絶縁膜107となるべき絶縁膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクパターンをマスクとして当該絶縁膜を部分的にエッチングにより除去することにより、
図7に示すゲート絶縁膜107を形成する。ゲート絶縁膜107は、p型ウェル領域117の一部およびn
−型SiCエピタキシャル層102、そしてn
+型ソース不純物領域111の一部を覆うように形成される。この後、
図5に示したUMOS410の場合と同様に、ゲート電極122、ソース電極121およびドレイン電極124を形成する。このようにして、
図7に示したDMOS420を得ることができる。
【0059】
ここで、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0060】
この発明に従った基板1は、表面11および裏面12を有し、当該表面11の少なくとも一部分が単結晶炭化珪素からなる基板1であって、表面11における表面粗さRaの平均値が0.5nm以下であって、当該表面粗さRaの標準偏差σが0.2nm以下であり、裏面における表面粗さRaの平均値が0.3nm以上10nm以下であって、当該表面粗さRaの標準偏差σが3nm以下であり、表面11の直径Dが110mm以上である。
【0061】
このようにすれば、基板1の表面11上にエピタキシャル層(たとえば
図5のn
−型SiCエピタキシャル層102)を形成する工程において、基板を支持するサセプタと基板1の裏面12との接触状態が局所的に変わることを抑制できる。このため、当該接触状態の変化に伴って基板1の温度分布が偏るといった問題の発生を抑制でき、結果的に膜質の優れたエピタキシャル層を形成できる。
【0062】
また、裏面12の表面粗さRaについて平均値を0.3nm以上10nm以下、標準偏差を3nm以下と制御することにより、基板1の表面11上にエピタキシャル膜を成長させるときに、裏面12側での結晶欠陥の発生や伸展を抑制でき、結果的に基板1の反りも抑制できる。この結果、エピタキシャル層の形成工程や、その後の素子形成工程において、基板1の反りに起因する不良の発生確率を低減できる。
【0063】
なお、基板1の表面11における表面粗さRaの平均値は、上述のように0.5nm以下としているが、好ましくは0.1nm以上0.3nm以下である。表面粗さRaを0.5nm以下にすることで、基板1の表面11上に良好なエピタキシャル層(n
−型SiCエピタキシャル層102)を形成することができる。また、表面粗さRaを0.1nm以上とすることで、CMPなどの研磨処理の工程数の増加を抑制するとともに、歩留りの低下を抑制して製造コストの過大な増加を避けることができる。
【0064】
また、基板1の表面11の表面粗さRaの標準偏差σは上述のように0.2nm以下としているが、好ましくは0.1nm以下、より好ましくは0.05nm以下である。このように標準偏差σを0.2nm以下にすることで、基板1の表面11に均一なエピタキシャル層を形成できる。
【0065】
また、裏面12における表面粗さRaの平均値は0.3nm以上10nm以下としているが、好ましくは0.4nm以上5nm以下、より好ましくは0.5nm以上2nm以下である。なお、裏面12における表面粗さRaの平均値が10nm以上であると、エピタキシャル層の形成工程での、サセプタと基板1の裏面12との接触状態が局所的に変わる(ばらつく)ことから基板1の温度分布が不均一となり、結果的に得られるエピタキシャル層(n
−型SiCエピタキシャル層102)の品質が低下する恐れがある。また、加熱中に基板1の裏面12から結晶欠陥が伸長して基板1の反りが大きくなる問題が生じ、基板1上に半導体素子を形成する工程であるデバイス工程の歩留が低下する可能性がある。また、裏面12の表面粗さRaの平均値を0.3nm未満にするためには高度な表面処理が必要であり、基板1の製造コストが増大するとともに基板1の製造工程における生産性が低下する。たとえば、基板1の裏面12の表面粗さRaの平均値を0.3nm未満にするためには、中性のダイヤモンドスラリーを用いた通常の研磨では難しく、コロイダルシリカとケミカル成分とを用いたCMP処理などが必要になる。
【0066】
また、裏面12の表面粗さRaの標準偏差σは上述のように3nm以下としているが、好ましくは1.5nm以下、より好ましくは0.7nm以下である。このようにすれば、基板1の裏面12とサセプタとの接触状態を裏面全体でほぼ均一にすることができ、結果的に基板1の表面11に均一なエピタキシャル層を形成できる。
【0067】
また、基板1の表面11における直径Dは110mm以上としているが、このようにすれば、大面積の基板1を用いることで当該基板1に形成できる半導体素子(チップ)の数を増加させることができる。この結果、半導体素子の製造コストを低減できるとともに、半導体素子の形成工程における生産性を改善できる。
【0068】
なお、表面粗さRaは、AFMや光干渉式粗さ計で測定できる。表面粗さRaの測定位置は、基板1の中央部から格子状に10mm間隔の位置とし、基板1の外周部から5mmの位置より外側の領域は測定対象領域から除外する。また、基板1として
図4に示すような貼合せ基板(複数の単結晶タイル基板30を接続して形成された基板1)を用いる場合、隣接する単結晶タイル基板30の間の接合面31(継ぎ目部)は、直接的な測定位置とはせずに、接合面31に隣接する単結晶タイル基板30の表面において表面粗さRaを測定する。
【0069】
上記基板において、単結晶炭化珪素における窒素濃度が2×10
19/cm
3以下であってもよい。また、上記基板1において、上記単結晶炭化珪素における窒素濃度は4×10
18/cm
3以上2×10
19/cm
3以下であってもよい。また、積層欠陥の発生を抑制するという観点からは、単結晶炭化珪素における窒素濃度は5×10
18/cm
3以下とすることが好ましい。この場合、基板1の電気抵抗をある程度低減した状態とできるとともに、エピタキシャル層を形成するための熱処理において基板1での積層欠陥の伸張を抑制でき、結果的に基板1の反りを抑制できる。なお、単結晶炭化珪素中の窒素濃度低減には炭化珪素の成長中の雰囲気における窒素濃度を低減する必要があるが、このような雰囲気条件では成長した炭化珪素にポリタイプが混入しやすくなる可能性がある。したがって、基板1中におけるポリタイプの炭化珪素の混入を抑制するとともに積層欠陥の伸張を抑制するという観点からは、上記窒素濃度は、好ましくは1×10
18/cm
3以上2×10
19/cm
3以下、より好ましくは4×10
18/cm
3以上2×10
19/cm
3以下、さらに好ましくは6×10
18/cm
3以上1.5×10
19/cm
3以下である。この場合、より確実に基板1の電気抵抗の低減と積層欠陥の伸長の抑制(つまり反りの抑制)とを両立できる。
【0070】
上記基板1において、表面11の直径をDとし、基板1の厚みをTとし、裏面の反りをWbとした場合に、
100≦D/T≦1000
0≦Wb/T≦0.2
という関係式を満足することが好ましい。この場合、比較的大型であって反りの少ない基板1に本発明を適用することになり、エピタキシャル層の形成工程や半導体素子の製造工程における不良の発生確率を低減できるという本発明の効果が顕著になる。
【0071】
ここで、上記D/Tの下限を100としたのは、基板1のハンドリングや、デバイスプロセスでの基板1の自動搬送が容易になるという理由による。また、D/Tの上限値を1000としたのは、基板1の反り低減が容易になり、基板1の割れ発生確率を低減できるという理由による。また、Wb/Tは小さいことが好ましいが、Wb/Tの上限値を0.2としたのは、エピタキシャル層形成工程での基板温度の均一化が容易であり、また真空吸着時の反りの矯正が容易であることからフォトリソグラフィでの微細パターンの形成が容易になるという理由による。
【0072】
なお、基板1の直径Dはたとえば110mm以上300mm以下とすることができる。また、基板1の厚みTはたとえば500μm以上800μm以下とすることができる。また、基板1の裏面の反りWbはたとえば60μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは20μm以下とすることができる。なお、ここで反りとは、二次元の位置データで表される複数の測定点にそれぞれ対応する複数の変位値から最小自乗平面を算出し、最小自乗平面に対して一方側に最も大きな変位値と最小自乗平面との距離、および他方側に最も大きな変位値と最小自乗平面との距離の和として算出される値を意味する。
【0073】
基板1の厚みTが厚いと基板1の反りを抑制できるが、当該厚みTが800μmを超えると基板1のハンドリングや基板1の自動搬送などで基板1をうまく真空吸着できないといった問題が生じる可能性がある。また基板1の材料コストが増加する。一方、基板1の厚みTが500μm未満であると、自立した基板1として当該基板1を取り扱うことが難しくなる場合がある。また、割れの発生確率が増加し、反りが大きくなりやすい。さらに、基板1の反りWbが60μmを超えると、基板1上に形成するエピタキシャル層の膜質が劣化したり、基板1に形成する半導体素子の歩留りが低下したりする可能性が高くなる。
【0074】
上記基板1において、表面の直径Dは125mm以上300mm以下であってもよい。基板1に半導体素子を形成する工程での生産性を高める観点から、基板1の直径Dはできるだけ大きくする(たとえば上記のように110mm以上、より好ましくは125mm以上とする)ことが望まれている。一方、基板1の直径Dが300mmを超えると、基板1の反りを抑制するために高度なプロセス制御が必要となり、生産性の低下を招く恐れがある。
【0075】
上記基板1では、表面11における上記一部分の炭化珪素の結晶構造が4H型であってもよく、当該表面11における一部分が、{0001}面に対するオフ角が0.1°以上10°以下となっている結晶面を含んでいてもよい。あるいは、表面11における一部分が、{000−1}面に対するオフ角が0.01°以上6°以下となっている結晶面を含んでいてもよい。この場合、基板1の表面上にエピタキシャル層を形成して半導体素子を形成したときに、優れた電気的特性の半導体素子(たとえば
図5のUMOS410など)を得ることができる。
【0076】
上記基板1では、表面11における上記一部分の炭化珪素の結晶構造が4H型であってもよく、表面11における一部分が、{03−38}面またはその裏面に対するオフ角が4°以下となっている結晶面を含んでいてもよい。この場合、基板1の表面11上に酸化膜を形成する、あるいはエピタキシャル層を形成してからその表面に酸化膜を形成したときに、良好な膜質の酸化膜を得ることができるので、半導体素子としてたとえばMOSFETを形成したときに、優れた電気的特性のMOSFETを得ることができる。また、表面11における一部分は、{01−11}面またはその裏面に対するオフ角が4°以下となっている結晶面や、{01−12}面またはその裏面に対するオフ角が4°以下となっている結晶面を含んでいてもよい。この場合、同様に良好な膜質の酸化膜を得ることができる。
【0077】
上記基板1では、表面11における上記一部分の炭化珪素の結晶構造が4H型であってもよく、表面11における一部分が、{000−1}面に対するオフ角が0.01°以上6°以下となっている結晶面を含んでいてもよい。この場合、基板1の表面上にエピタキシャル層を形成して半導体素子を形成したときに、優れた電気的特性の半導体素子(たとえば
図5のUMOS410や
図7のDMOS420など)を得ることができる。
【0078】
上記基板1において、表面11には加工変質層が形成されていてもよく、当該加工変質層の厚みは10nm、より好ましくは5nm以下であってもよい。加工変質層は、研削や研磨等の加工により基板表面に生じた結晶格子が歪んだ層である。炭化珪素では、基底面方向に欠陥が入りやすく、加工変質層が生じやすい。加工変質層は、劈開等により形成した断面のTEM観察により、その存在、厚みを評価することができる。このように表面11の加工変質層の厚みを相対的に薄く設定することで、表面11上に良好な膜質のエピタキシャル層を形成できる。また、裏面12にも加工変質層が形成されていてもよく、当該加工変質層の厚みは200nm以下、より好ましくは100nm以下であってもよい。裏面12の加工変質層の厚みを上記のような範囲に制限することで、熱処理時における基板1の裏面12での積層欠陥の生成を確実に抑制することができる。この結果、基板1の反りを抑制することができる。
【0079】
また、
図2に示すように基板1は単一の炭化珪素(SiC)単結晶から形成されるものであってもよいし、
図4に示すように、強度保持部としてのベース基板20と、当該ベース基板20の表面上に形成された炭化珪素を含む表面部(単結晶タイル基板30の接合体)とを備える複合基板であってもよい。表面部は、たとえば炭化珪素からなる複数の単結晶タイル基板30を接合した接合体であってもよい。上記強度保持部は十分な耐熱性と強度とがあれば単結晶SiCである必要はない。また、表面部は上部表面の少なくとも一部が単結晶SiCにより構成されていればよい。
【0080】
強度保持部としてのベース基板20の材料としては、耐熱性と強度との観点から炭化珪素を用いることが好ましい。用いる炭化珪素としては、気相成長による多結晶体、無機原料あるいは有機原料を焼結することにより形成された焼結体、単結晶体のいずれでもよい。表面部は、当該表面部上にエピタキシャル層を形成することから、当該エピタキシャル層を形成する表面(上部表面)の少なくとも一部は単結晶SiCにより構成されていることが必要となる。
【0081】
基板1を単一の単結晶SiCにより構成する場合、当該基板1(単結晶SiC基板)の製造プロセスは、結晶成長(SiC単結晶インゴット形成)(S11)、インゴット成形加工(S12)、インゴットのスライス(S13)、スライスして得られた基板の研削(S21)、研磨(S22)、洗浄(S30)といった工程を含んでいてもよい。また、上述した複合基板の製造プロセスは、結晶成長(SiC単結晶インゴットの形成)(S11)、インゴット成形加工(S12)、インゴットのスライス(S13)、スライスして得られた基板から単結晶タイル基板を切出すタイル成型加工(S14)、ベース基板の表面への単結晶タイル基板の貼合せ(S15)、複合基板の研削(S21)、研磨(S22)、洗浄(S30)からなる。
【0082】
また異なる観点から言えば、この発明に従った基板1の製造方法は、炭化珪素からなるインゴットを準備する工程(結晶成長工程(S11)およびインゴット成型工程(S12))と、インゴットをスライスして、表面および裏面を有するとともに当該表面の直径が110mm以上である基板を得る工程(スライス工程(S13))と、基板の表面および裏面を研磨する工程(表面処理工程(S20))とを備える。研磨する工程(表面処理工程(S20))では、研磨する工程(表面処理工程(S20))における抵抗係数Rを制御することによって、表面11における表面粗さRaの平均値が0.5nm以下であって、表面粗さRaの標準偏差が0.2nm以下となり、裏面12における表面粗さRaの平均値が0.3nm以上10nm以下であって、表面粗さRaの標準偏差が3nm以下となるように、表面11および裏面12を研磨する。このようにすれば、本発明による基板1を確実に得ることができる。
【0083】
強度保持部(ベース基板20)と表面部を構成する単結晶タイル基板30との貼合わせ、および単結晶タイル基板30同士の貼合せは、近接昇華法や接着剤を用いた接合方法を用いることができる。接着剤は基板1の強度を保持できれば有機系、無機系のいずれでもよい。また、珪素(Si)と炭素(C)とを含有し、加熱してSiC結合を形成するポリカルボシラン等のポリマーを接着剤として用いてもよい。複合基板は、結晶成長の方位やサイズの制約がないことから、所望の面方位となった表面を有するとともに、所望のサイズの基板を得ることができる。また、強度保持部(ベース基板20)として安価な多結晶体や焼結体、転位や欠陥の多い単結晶を使用でき、表面部を構成する単結晶SiC(単結晶タイル基板30)の厚みを薄くできることから、基板1の材料コストを低減でき、安価な基板1を実現できる。一方、単一の単結晶SiCからなる基板1は、複合基板のようなタイル成形加工や貼合せ加工が不要であるため、基板1の製造工程を簡略化できる。
【0084】
この発明に従った半導体装置(UMOS410またはDMOS420)は、上記基板1と、エピタキシャル層(n
−型SiCエピタキシャル層102)と、電極(ゲート電極122、ソース電極121)とを備える。エピタキシャル層は、基板1の表面11上に形成され、炭化珪素からなる。電極(ゲート電極122、ソース電極121)は、エピタキシャル層上に形成されている。この場合、不良の発生確率が低減され、製造コストが抑制された半導体装置を実現できる。
【0085】
この発明に従った半導体装置の製造方法は、上記基板を準備する工程(S100)と、基板1の表面上に、炭化珪素からなるエピタキシャル層(n
−型SiCエピタキシャル層102)を形成する工程(S200)と、エピタキシャル層上に電極を形成する工程(電極形成工程(S400))とを備える。この場合、本発明による基板1を用いることで、不良の発生確率が低減され、半導体装置の製造コストを抑制できる。
【0086】
上述した基板1の製造方法または半導体装置の製造方法において、基板1の表面粗さRaを制御するための研磨方法としては、ラッピング、ポリシングなどを用いることができる。特に、基板1の表面11は表面粗さを低下させ、加工変質層を低減するために仕上げ研磨はCMP処理により研磨することが好ましい。CMP処理において用いる砥粒は、表面粗さや加工変質層を低減させるために炭化珪素よりも柔らかい材料により構成されることが好ましい。具体的には、砥粒の材料としてコロイダルシリカ、フュームドシリカを用いることが好ましい。CMP処理において用いる溶液の条件については、ケミカル作用を増加させるためにpH4以下、またはpH9.5以上とすることが好ましく、より好ましくはpH2以下またはpH10.5以上である。また、当該溶液には酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤にはトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル塩などの塩素系酸化剤、硫酸、硝酸、過酸化水素水等を用いることができる。
【0087】
基板1の表面11の表面粗さRaを低減し、表面粗さRaの面内分布を低減するためには、仕上げ研磨の研磨液の粘度η(mPa・s)と液流量Q(m
3/s)、研磨定盤の面積S(m
2)、研磨圧力P(kPa)、周速V(m/s)で表される抵抗係数R(m
2/s)(R=η×Q×V/S×Pという式で表現される抵抗係数R)を3.0×E−15以上1.0×E−14以下とすることが好ましい。このように研磨工程における研磨材と基板1との間の抵抗係数を制御することにより、適切な研磨速度を維持して表面粗さRaを適切な範囲に制御し、面内分布のばらつきを低減することができる。研磨材は樹脂定盤や発泡ポリウレタン、不織布、スウェード等の研磨布がよく、特にスウェードタイプが好ましい。
【0088】
基板1の裏面12の研磨については、ラッピング、ポリシング等を用いることができる。仕上げ研磨には、微細なダイヤモンド砥粒を用いたポリシングを適用することが好ましい。なお、CMP処理は被研磨面の表面粗さを低減できるが、プロセスコストが他の方法より高い、あるいはプロセスの生産性が他の方法より低いといった問題がある。上記ダイヤモンド砥粒の粒径は、0.1μm以上3μm以下とすることが好ましい。ポリシングに用いる研磨材としては、スズ、スズ合金などの金属定盤や、樹脂定盤、研磨布を用いることができる。金属定盤を用いることで、研磨レートを向上させることができる。また、研磨材として研磨布を用いることで、被研磨面の表面粗さを低減することができる。基板の裏面の表面粗さRaを低減し、表面粗さRaの面内分布を低減するためには、仕上げ研磨の抵抗係数Rは、3.0×E−18以上1.0×E−17以下とすることができる。抵抗係数Rを制御することにより、基板1の研磨工程において、適切な研磨速度を維持して研磨面の表面粗さの面内分布のばらつきを低減できる。
【0089】
<参考例1>
本発明の参考例による基板の一例として、複合基板および当該複合基板を用いた半導体素子を以下のように作製し、作製した半導体素子の歩留りを調査した。
【0090】
(基板の製造)
昇華法により、SiCの単結晶を成長してインゴットを形成した。グラファイトからなる容器内に単結晶炭化珪素からなる種基板と、炭化珪素からなる原料粉末とを挿入した。種基板には主面が(0001)面であり直径50mmのSiC単結晶基板を用いた。次に、原料粉末が加熱されることにより炭化珪素が昇華し、種基板上に再結晶化する。このとき、不純物として窒素を導入しつつ再結晶化を進行させた。そして、種基板上に所望の大きさの結晶が成長した時点で加熱を停止し、容器内から単結晶炭化珪素の結晶を取り出した。インゴットの窒素濃度は1×E19/cm
3であった。そして、外周研削機により、インゴットにおける結晶の成長面、下地基板面、外周を研削加工し、SiCからなり成形されたインゴットを得た。
【0091】
その後、当該成形されたインゴットをスライスして基板を切出した。スライスはマルチワイヤーソーで実施した。スライス後の基板面を{03−38}とするため、インゴットの(0001)面を、ワイヤーの走行方向から54.7°傾斜させた状態で、ワイヤーソー装置内にインゴットをセットし、スライス工程を実施した。スライス後の基板厚みは250μmとした。そして、スライス後の基板の外周をダイシングすることにより、平面形状が四角形状であり、縦×横が20mm×30mmとなっている単結晶タイル基板を得た。
【0092】
次に、ベース基板を形成するため、まず昇華法により多結晶SiCからなるインゴットを形成した。当該インゴットを外周加工することにより、直径155mmの成形されたインゴットを得た。当該インゴットをマルチワイヤーソーによりスライスし、厚み500μmの多結晶基板を得た。この多結晶基板をベース基板として用いた。
【0093】
そして、複数個の単結晶タイル基板(単結晶矩形基板)をベース基板(多結晶下地基板)上に、互いに隣接するように配置し、近接昇華法により単結晶タイル基板同士および単結晶タイル基板とベース基板とを接合した。このようにして得られた複合基板の外周加工を行い、直径150mm、厚み750μmの基板(複合基板)を得た。
【0094】
その後、複合基板の下地面(ベース基板の裏面側)、タイル面(単結晶タイル基板の上部表面が露出した側)を順次平面加工して、エピ用の基板を得た。下地面はダイヤモンド砥石により研削加工し、その後にダイヤモンドスラリーにより研磨加工した。本発明の参考例の範囲の表面粗さRa0.3〜10nm、標準偏差3nm以下に鏡面化する際には、抵抗係数は1.0×E−17m
2/s〜3.0×E−18m
2/sとした。参考例1〜6では、研磨時の抵抗係数は5.0×E−17m
2/sとした。研削加工にはインフィード型研削機を用い、砥石にはビトリファイドボンドで番手#600、集中度150の砥石を用いた。研磨加工は多段階で実施した。定盤には銅定盤とスズ定盤を用いた。ダイヤモンドスラリーは粒径が3μmと1μmとなったものを用いた。
【0095】
タイル面の加工は、研削加工、ラッピング加工の後に、CMPを実施した。CMPのスラリーの砥粒には平均粒径が50nmのコロイダルシリカを用いた。スラリーは硝酸酸性でpH2とし、酸化剤に過酸化水素水を用いた。研磨布にはスウェードタイプを用いた。CMP時の抵抗係数は、本発明の参考例の範囲では1.0×E−14m
2/s〜3.0×E−15m
2/sとした。参考例3は2.0×E15m
2/sとした。
【0096】
そして、下地面およびタイル面の平面加工の条件を変更することで、後述する表1に示すような表面粗さの異なる基板の試料を17種類(試料No.1〜17)作製した。なお、後述する表1からわかるように、試料No.1〜4、8、11、14〜17が本発明の参考例であり、試料No.5〜7、9、10、12、13が比較例の試料となっている。
【0097】
(半導体素子の製造)
上述した試料No.1〜17のそれぞれの基板を用いて、半導体素子(デバイス)を作成した。半導体素子の構造は、縦型MOSFETの一種であるUMOS構造とした。当該半導体素子の断面構造は、
図5に示した半導体素子と同様である。
【0098】
具体的には、n
−型SiCエピタキシャル層102の厚みは10μmとした。p型ウェル領域117の厚みは1.5μmとした。p
+型ウェルコンタクト不純物領域116の厚みは0.2μmとした。n
+型ソース不純物領域の厚みは0.4μmとした。溝の深さは3μm、幅は3μmとした。ゲート絶縁膜107の材質はシリコン酸化膜とし、その厚みは40nmとした。ゲート電極122の材質はTi、Ni、Alの合金とし、その厚みは0.5μmとした。層間絶縁膜106の材質はポリシリコンとし、その厚みは0.4μmとした。ソース電極121の材質はNi、Siの合金とした。ドレイン電極124の材質はNi、Siの合金とした。裏面電極形成前に、バックグラインディングにより基板を減厚し、単結晶基板を100μm残存させた。
【0099】
また、各試料とも、エピタキシャル層の形成工程など素子を形成するためのプロセス条件は同じとした。
【0100】
(調査内容および結果)
そして、形成された半導体素子について、各試料ごとに歩留りを調査した。その結果を表1に示す。
【0102】
本発明の参考例である試料については、いずれも半導体素子の歩留り(デバイス歩留)は52%以上となっていたのに対して、比較例の試料については半導体素子の歩留りはいずれも40%未満となっており、明らかに歩留りについて差があることが分かる。また、本発明の参考例の試料については、形成された半導体素子の特性についても良好であった。つまり、基板について、表面粗さおよび裏面粗さの平均値と標準偏差σを制御することで、大口径基板の大部分で良好なエピタキシャル成長層を形成することができるとともに、基板の反りを適切な範囲に抑制することができることがわかる。そして、この結果として、本発明の参考例では不良の発生を抑制して歩留りが向上するとともに、良好なデバイス特性が得られた。
【0103】
<参考例2>
単結晶タイル基板の面方位を参考例1とは異ならせて、複合基板および当該複合基板を用いた半導体素子を作製し、作製した半導体素子の歩留りを調査した。
【0104】
(基板の製造)
単結晶タイル基板の面方位を{0001}とした以外は、参考例1と同様の条件で複合基板を作成した。単結晶タイル基板の面方位は、インゴットをスライスする時の切断方向で制御した。スライス後の基板の厚みは250μmとした。そして、平面加工の加工条件を調整することにより、本発明の参考例となる試料および本発明の範囲外となる比較例の試料を準備した。
【0105】
(半導体素子の製造)
参考例および比較例の試料である基板を用いて、基本的に参考例1と同様にUMOS構造の半導体素子を形成した。
【0106】
(調査内容および結果)
基板の主表面における面方位が{0001}である複合基板においても、本発明の参考例の試料については、表面粗さ、裏面粗さを制御したことに起因して、参考例1の場合と同様に良好な歩留りおよびデバイス特性を得ることができた。一方、比較例の試料については、参考例の試料と比べて歩留りは低かった。
【0107】
<参考例3>
本発明の参考例による基板の一例として、単一の単結晶SiCからなる基板および当該基板を用いた半導体素子を以下のように作製し、作製した半導体素子の歩留りを調査した。
【0108】
(基板の製造)
昇華法により、SiCの単結晶を成長してインゴットを形成した。種基板には主面が(0001)面であり直径100mmのSiC単結晶基板を用いた。窒素濃度は6×E18/cm
3であった。そして、外周研削機により、インゴットにおける結晶の成長面、下地基板面、外周を研削加工し、SiCからなり成形されたインゴットを得た。
【0109】
その後、成形された当該インゴットをスライスして基板を切出した。スライスはマルチワイヤーソーで実施した。スライス後の基板面が、{0001}からのオフ角が2°となった面となるようにインゴットをスライスし、直径110mmの基板を得た。
【0110】
その後、スライス後の基板の裏面、表面を順次平面加工してエピ用の基板を得た。平面加工は上記参考例1の複合基板に対する処理と基本的に同様の処理条件を用いて実施した。基板の裏面の研磨には銅定盤とスズ定盤および研磨布を用いた。ダイヤモンドスラリーの砥粒は粒径が3μmと0.5μmとなったものを用いた。抵抗係数は6.0×E−18m
2/s以上1.0×E−17m
2/s以下とした。また、基板の表面について研削加工、ラッピング加工の後に、参考例1と同様にCMPを実施した。CMPのスラリーの砥粒には平均粒径が60nmのコロイダルシリカを用いた。研磨布は不織布タイプのものを用いた。CMP時の抵抗係数は、3.0×E−15m
2/s以上8.0×E−15m
2/s以下とした。そして、平面加工の加工条件を調整することにより、後述する表2に示すような基板の試料を13種類(試料No.1〜13)作製した。なお、後述する表2から分かるように、試料No.3、4、9〜13が本発明の参考例であり、試料No.1、2、5〜8が比較例の試料となっている。
【0111】
(半導体素子の製造)
上述した参考例および比較例の試料である基板を用いて、基本的に参考例1と同様にUMOS構造の半導体素子を形成した。
【0112】
(調査内容および結果)
そして、形成された半導体素子について、各試料ごとに歩留りを調査した。その結果を表2に示す。
【0114】
本発明の参考例の試料については、参考例1の場合と同様に良好なデバイス歩留が得られた。すなわち、基板の表面粗さおよび裏面粗さの平均値、標準偏差σを制御することで、大口径基板の大部分で良好なエピタキシャル成長層を形成することができるとともに、反りを適切な範囲することができた。また、この結果本発明の参考例ではデバイス歩留を向上させることができるとともに、良好なデバイス特性が得られた。
【0115】
<参考例4>
本発明の参考例による基板の一例として、上述した参考例3と同様に、単一の単結晶SiCからなる基板および当該基板を用いた半導体素子を以下のように作製し、作製した半導体素子の歩留りを調査した。
【0116】
(基板の製造)
昇華法により、SiCの単結晶を成長してインゴットを形成した。種基板には主面が(0001)面であり直径100mmのSiC単結晶基板を用いた。窒素濃度は6×E18/cm
3であった。そして、外周研削機により、インゴットにおける結晶の成長面、下地基板面、外周を研削加工し、SiCからなり成形されたインゴットを得た。
【0117】
その後、成形された当該インゴットをスライスして基板を切出した。スライスはマルチワイヤーソーで実施した。スライス後の基板面が、{000−1}からのオフ角が1°となった面となるようにインゴットをスライスし、直径130mmの基板を得た。
【0118】
その後、スライス後の基板の裏面、表面を順次平面加工してエピ用の基板を得た。平面加工は上記参考例1の複合基板に対する処理と基本的に同様の処理条件を用いて実施した。基板の裏面の研磨には銅定盤とスズ定盤および研磨布を用いた。ダイヤモンドスラリーの砥粒は粒径が3μmと0.5μmとなったものを用いた。抵抗係数は3.0×E−18m
2/s以上8.0×E−18m
2/s以下とした。また、基板の表面について研削加工、ラッピング加工の後に、参考例1と同様にCMPを実施した。CMPのスラリーの砥粒には平均粒径が30nmのコロイダルシリカを用いた。研磨布はスウェードタイプのものを用いた。CMP時の抵抗係数は、6.0×E−15m
2/s以上1.0×E−14m
2/s以下とした。そして、平面加工の加工条件を調整することにより、後述する表3に示すような基板の試料を9種類(試料No.1〜9)作製した。なお、後述する表3から分かるように、試料No.3、4、7〜9が本発明の参考例であり、試料No.1、2、5、6が比較例の試料となっている。
【0119】
(半導体素子の製造)
上述した参考例および比較例の試料である基板を用いて、
図7に示したDMOS構造の半導体素子を形成した。
【0120】
具体的には、n
−型SiCエピタキシャル層102の厚みは10μmとした。p型ウェル領域117の厚みは1.5μmとした。p
+型ウェルコンタクト不純物領域116の厚みは0.2μmとした。n
+型ソース不純物領域111の厚みは0.4μmとした。ゲート絶縁膜107の材質はシリコン酸化膜とし、その厚みは40nmとした。ゲート電極122の材質はTi、Ni、Alの合金とし、その厚みは0.5μmとした。層間絶縁膜106の材質はポリシリコンとし、その厚みは0.4μmとした。ソース電極121の材質はNi、Siの合金とした。ドレイン電極124の材質はNi、Siの合金とした。裏面電極形成前に、バックグラインディングにより基板を減厚し、単結晶基板を100μm残存させた。
【0121】
(調査内容および結果)
そして、形成された半導体素子について、各試料ごとに歩留りを調査した。その結果を表3に示す。
【0123】
本発明の参考例の試料については、参考例1の場合と同様に良好なデバイス歩留が得られた。すなわち、基板の表面粗さおよび裏面粗さの平均値、標準偏差σを制御することで、大口径基板の大部分で良好なエピタキシャル成長層を形成することができるとともに、反りを適切な範囲することができた。また、この結果本発明の参考例ではデバイス歩留を向上させることができるとともに、良好なデバイス特性が得られた。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。