(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電動パーキングブレーキの作動時には、前記一のスイッチ群内のスイッチの共通端子は、各々のスイッチの常時開端子に接続されるとともに、前記別のスイッチ群内のスイッチの共通端子は、各々のスイッチの常時閉端子に接続され、
前記電動パーキングブレーキの作動解除時には、前記一のスイッチ群内のスイッチの共通端子は、各々のスイッチの常時閉端子に接続されるとともに、前記別のスイッチ群内のスイッチの共通端子は、各々のスイッチの常時開端子に接続されるように構成される、請求項3に記載のスイッチ回路。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0022】
(実施形態1)
(EPBの制御系及びスイッチ回路の構成)
本実施形態においては、
図1に示すように、スイッチ回路100と、車両の電気系統の制御を行う電子制御ユニット300(以下、ECUという)とは、スイッチ回路100の4つの入出力端子(以下、SW端子という)1〜4と、ECU300の4つの入出力端子(以下、ECU端子という)5〜8とを介して電気的に接続されている。
【0023】
EPB操作スイッチ200の操作に応じて、スイッチ回路100内で導通経路が切り替えられる。ECU300からスイッチ回路100に信号を入力し、スイッチ回路100からの出力信号により、ECU300で、スイッチ回路100内の導通経路の変化、すなわち、EPB操作スイッチ200の操作結果を検出する。この検出結果に基づいて、ECU300からEPBコントローラ400に制御信号が送られ、EPBコントローラ400によって、EPB500の動作が制御される。
【0024】
また、後述するように、スイッチ回路100に電気的故障検出が発生した場合、ECU300からワーニングランプ(警告ランプ)コントローラ600に信号が送られ、ワーニングランプ(警告ランプ)700が点灯する。
【0025】
通常、スイッチ回路100は、中立状態であり、運転者がEPB操作スイッチ200を操作して作動状態や解除状態とした後、EPB操作スイッチ200から手を離す等して操作をやめると、中立状態に戻るように構成されている。このような構成は公知であるため、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0026】
なお、ECU300は、EPB500の作動制御以外に、エンジンの駆動制御等を行うが、説明を簡潔にするため、本明細書では記載を省略している。
【0027】
また、EPBコントローラ400を設けず、ECU300からEPB500に直接、制御信号が送られ、EPB500の動作が制御されてもよい。
【0028】
図1から
図4に示すように、スイッチ回路100は、SW端子1〜4の4つの端子を有する入出力端子部101と、これらの端子間を接続する配線11〜14と、各配線の経路に配置されたスイッチ21〜24と、各配線の経路に配置されたダイオード31〜34と、を有している。
【0029】
また、スイッチ21は片切スイッチであり、EPB操作スイッチ200の操作に基づいて、共通(Common)端子21aは、常時閉(Normally Close)端子21b、または、常時開(Normally Open)端子21cに接続される。
【0030】
スイッチ22、23、24についても片切スイッチであり、上記と同様に動作する。
【0031】
なお、常時閉端子に接続された状態で、スイッチは閉状態、つまり導通状態であり、常時開端子に接続された状態で、スイッチは開状態、つまり非導通状態である。
【0032】
スイッチ21が閉状態のとき、SW端子1とSW端子4とは、配線11を介して電気的に接続される。このとき、配線11の経路中で、スイッチ21とダイオード31と抵抗41とが直列接続した状態となる。
【0033】
スイッチ22が閉状態のとき、SW端子2とSW端子4とは、配線11から分岐した配線12を介して電気的に接続される。このとき、配線12の経路中で、スイッチ22とダイオード32と抵抗42とが直列接続した状態となる。
【0034】
スイッチ23が閉状態のとき、SW端子1とSW端子3とは、配線13を介して電気的に接続される。このとき、配線13の経路中で、スイッチ23とダイオード33と抵抗43とが直列接続した状態となる。
【0035】
スイッチ24が閉状態のとき、SW端子2とSW端子3とは、配線13から分岐した配線14を介して電気的に接続される。このとき、配線14の経路中で、スイッチ24とダイオード34と抵抗44とが直列接続した状態となる。
【0036】
なお、抵抗41〜44は、端子間に流れる電流を制限し、スイッチやダイオードを保護するために設けられているが、電流量が小さい場合は配置されていなくてもよい。
【0037】
ダイオード31〜34は、各々のアノードが、スイッチ21〜24の常時閉端子21b〜24b側に接続されている。
【0038】
このように接続することで、スイッチ21〜24のいずれを閉状態にした場合でも、端子間に流れる電流の方向は同じとなる。
【0039】
例えば、SW端子4からSW端子1へは電流が流れるが、逆方向へは電流が流れない。
【0040】
SW端子3からSW端子1への電流の流れも、SW端子4やSW端子3からSW端子2への電流の流れも同様である。
【0041】
図2に示すように、中立状態では、スイッチ21〜24のすべてが閉状態である。
【0042】
図3に示すように、EPB500の作動状態では、スイッチ21,24が開状態であり、スイッチ22,23が閉状態である。
【0043】
図4に示すように、EPB500の作動解除状態では、スイッチ21,24が閉状態であり、スイッチ22,23が開状態である。
【0044】
つまり、スイッチ回路100では、EPB操作スイッチ200の操作結果に応じて、スイッチ21,24が一組のスイッチ群として互いに同期して開閉するとともに、スイッチ22,23が別の組のスイッチ群として互いに同期して開閉する。
【0045】
(スイッチ回路の状態変化に対するECUでの信号検出について)
図5に示すように、ECU端子5〜8には、それぞれ、ECU300の内部で、信号入力端子5a〜8a及び信号検出端子5b〜8bが接続されている。
【0046】
各端子の接続関係を、ECU端子5と信号入力端子5a、及び信号検出端子5bとを例にとって説明する。
【0047】
信号入力端子5aには、スイッチング素子であるNPNトランジスタ55のベースが接続され、信号検出端子5bにはNPNトランジスタ55のコレクタが接続されている。NPNトランジスタ55のエミッタはグランド(以下、GNDという)電位に接続されており、エミッタ接地回路を構成している。また、信号検出端子5bには、保護抵抗65を介して車両に搭載された電源であるバッテリー(図示せず)より所定の電圧(+12V)が印加されている。
【0048】
ECU端子6〜8に接続される信号入力端子6a〜8aと信号検出端子6b〜8bも上記と同様である。
【0049】
上記の構成を取ることにより、NPNトランジスタ55〜58を介して、信号入力端子5a〜8aからSW端子1〜4にそれぞれ入力された信号が、スイッチ回路100内の導通経路を経由して、信号検出端子5b〜8bで検出される。また、スイッチ回路100内の導通経路の変化に応じて、検出される信号は変調を受ける。
【0050】
図6に示すように、EPB操作スイッチ200の操作に基づき発生する信号V1及びV2により、EPB500の作動状態が切り替えられる。
【0051】
V1,V2ともLow電位であると、スイッチ回路100は中立状態である。V1がHigh電位で、V2がLow電位のとき、スイッチ回路100は作動状態となり、V1がLow電位で、V2がHigh電位のとき、スイッチ回路100は作動解除状態となる。
【0052】
各々の場合において、スイッチ回路100内の導通経路が異なるため、ECU300の信号入力端子5a〜8aの電位を、一定周期T毎に、順番に変化させると、ECU300の信号検出端子5b〜8bでは、スイッチ回路100の内部の導通経路の変化に応じて、異なる電位が検出される。
【0053】
この電位変化を計測することにより、スイッチ回路100の内部導通状態、すなわち、EPB操作スイッチ200での操作結果をECU300で検出することができる。また、後述するように、スイッチ回路100内部での故障が検出可能となる。
【0054】
なお、本実施形態では、周期Tは20msecに設定しているが、特にこれに限定されない。スイッチ回路100やECU300の設計仕様や、実使用条件等により適宜変更可能である。
【0055】
まず、スイッチ回路100の作動状態での、ECU300の信号検出端子5b〜8bの電位変化について説明する。
【0056】
図6における期間Iでは、信号入力端子5aからNPNトランジスタ55に入力される電位はHigh電位であり、それ以外の信号入力端子から各々の端子に接続されたNPNトランジスタに入力される電位はLow電位である。
【0057】
この場合には、抵抗43、スイッチ23及び、ダイオード33を介して、SW端子1とSW端子3との間の経路が導通状態となる。NPNトランジスタ55がオンとなっているため、信号検出端子5bは、NPNトランジスタ55を介してGND電位に接続される。よって、信号検出端子7bから、SW端子3、スイッチ回路100内の導通経路及びSW端子1を経由して、GND電位に電流が流れる。
【0058】
このとき、信号検出端子5bは、Low電位よりも高い電位Aとなる。Low電位はGND電位とほぼ同じである。電位AがGND電位と異なる理由は、NPNトランジスタ55の内部電圧の影響である。
【0059】
また、信号検出端子7bは、電位Bとなる。電位Bは、NPNトランジスタ55のC−E間内部電圧とダイオード33の順方向電圧、及び経路内での抵抗成分による電圧降下とに応じて得られる値である。
【0060】
ここで、スイッチ22が閉状態であるから、SW端子2とSW端子4との間の経路はつながっている。また、信号入力端子6a,8aから出力されるのは、どちらもLow電位であるため、NPNトランジスタ56,58は動作せず、信号検出端子6b,8bは、それぞれGND電位には接続されていない。
【0061】
この場合、ダイオード32の両端の電位がほぼ同じであるため、ダイオード32が導通せず、信号検出端子6bと8bとの間には電流が流れない。
【0062】
従って、信号検出端子6b,8bは電位Cとなる。電位Cは、電源であるバッテリーのプラス端子電位とほぼ同じである。
【0063】
図6における期間IIでは、信号入力端子6aから出力される電位はHigh電位であり、それ以外の信号入力端子から出力される電位はLow電位である。
【0064】
スイッチ21〜24の開閉状態は、期間Iと変わらないが、期間Iに示した状態と異なり、SW端子2,4が導通状態となる。よって、信号検出端子8bから、SW端子4、スイッチ回路100内の導通経路及びSW端子2を経由して、GND電位に電流が流れる。
【0065】
このとき、信号検出端子6bは、電位Aとなり、信号検出端子8bは、電位Bとなる。
【0066】
これらの電位が定まる理由は上記の通りである。
【0067】
また、スイッチ23が閉状態であるから、SW端子1とSW端子3との間の経路はつながっているが、上記と同じ理由で、信号検出端子5bと7bとの間には電流が流れない。
【0068】
従って、信号検出端子5b,7bは電位Cとなる。
【0069】
図6に示す期間IIIでは、信号入力端子7aから出力される電位はHigh電位であり、それ以外の信号入力端子から出力される電位はLow電位である。
【0070】
この場合は、ダイオード32,33の両方とも導通しない。よって、信号検出端子7bの電位は電位Aに、それ以外の信号検出端子の電位は電位Cとなる。
【0071】
図6に示す期間IVでは、信号入力端子8aから出力される電位はHigh電位であり、それ以外の信号入力端子から出力される電位はLow電位である。
【0072】
この場合も、ダイオード32,33の両方とも導通しない。よって、信号検出端子8bの電位は電位Aに、それ以外の信号検出端子の電位は電位Cとなる。
【0073】
以上、スイッチ回路100が作動状態であるときを例にとって、説明したが、中立状態や作動解除状態のときも、上記の通り、一定周期T毎に、信号入力端子5a〜8aから入力される信号の電位を変化させることで、信号検出端子5b〜8bでの電位変化を読み取って、スイッチ回路100の状態、すなわち、EPB500の操作状態を検出できる。
【0074】
また、正常動作時と比較して、検出される信号検出端子電位が異なっていれば、スイッチ回路100の内部故障に起因したものとみなせるため、信号検出端子の電位計測により、故障検出を行うことができる。
【0075】
なお、ECU300から送られる信号自体の不良、例えば、High電位を出すべきところLow電位を出力している場合や、High電位とLow電位との間の電位しか出力できていないような場合は、信号入力端子5a〜8aの電位をモニターしておくことで、検出可能である。
【0076】
本実施形態によれば、片切スイッチを用いることにより、スイッチ回路100におけるスイッチの接点は、常時閉端子の数と同じであるから4つであり、例えば、特許文献1に開示された従来の構成に比べて半分の個数で済む。
【0077】
また、スイッチ回路100の故障原因の一つとして、スイッチの接点故障が挙げられる。
【0078】
本実施形態によれば、片切スイッチを用いているため、電流が流れる経路にある接点数が少なく、検出すべき故障モードが少なくて済み、故障検出及び解析時間を短縮できる。
【0079】
また、本実施形態によれば、スイッチ回路100の4つの端子に対し、同数の配線、スイッチ、ダイオードを各配線の経路中に配置する簡便な構成であり、部品数が少なくて済むため、検出すべき故障モードが少なくて済み、故障検出及び解析時間を短縮できる。
【0080】
また、2組のスイッチ群内のスイッチを互いに同期させて開閉するとともに、スイッチ群の開閉状態を互いに異ならせてEPB500の操作切り替えを行うため、スイッチ回路100を動作させる信号数が少なくて済み、制御が簡単である。
【0081】
(実施形態2)
図7は、本実施形態に係る、スイッチ回路内での電流の流れを示し、実施形態1に示した構成とでは、以下の3点で異なる。
【0082】
第1には、スイッチ24が3路スイッチであること、第2には、スイッチ24の常時開端子24cとSW端子1とが、配線15及び配線11を介して接続されていること、第3には、SW端子3とECU300のウェイクアップポート9とが接続されていること、である。
【0083】
このような構成とすることで、イグニッションがオフとなって、ECU300がスリープ状態(低消費電力状態)にあるときでも、EPB500を作動させる操作を検出することができる。
【0085】
図7に示すように、スイッチ回路100が作動状態にあるとき、SW端子1とSW端子3とがスイッチ24、配線15及び配線11を介して接続され、2つの端子間は導通状態となる。配線15は、スイッチ24の常時開端子24cと、配線11のうち、SW端子1とダイオード31のカソードとの間の部分を接続している。
【0086】
ここで、SW端子3は、ECU300内の起動端子であるウェイクアップポート9に接続されている。
【0087】
ECU300がスリープ状態のときは、信号入力端子5a〜8bには信号が入力されず、NPNトランジスタ55〜58はオフ状態である。
【0088】
この場合、ダイオード32は導通しないので、SW端子2とSW端子4との間に電流は流れない。
【0089】
また、ECU300がスリープ状態のときにも、信号検出端子5bには、バッテリーのプラス端子電圧が印加されるように設定されている。なお、他の信号検出端子には、この電圧は印加されていない。
【0090】
SW端子1とSW端子3とは導通状態であり、SW端子1が高電位側にあるため、SW端子1からSW端子3に向かって電流が流れる。SW端子3に流れ込んだ電流は、直接、ウェイクアップポート9に入力され、ECU300がスリープ状態から通常の動作状態に復帰する。
【0091】
以上、説明したように、本実施形態によれば、他のSW端子よりも低電位である所定のSW端子が接続された配線の経路中で開状態にあるスイッチの開端子と、他のSW端子のいずれかが接続された配線とを接続することで、ECU300側での操作を行うことなく、SW端子を介してECU300に電流を流すことが可能となる。このことにより、ECU300をスリープ状態から通常状態に復帰することができる。
【0092】
また、EPB操作スイッチ200の操作により、スイッチ回路100が作動状態になったときに、開状態にあるスイッチの常時開端子を他のSW端子と接続することで、ECU300がスリープ状態のときにも、EPB500に作動操作がなされているかどうかを検出することが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態では、スイッチ24を3路スイッチとしたが、スイッチ21を3路スイッチとしてもよい。その場合は、配線15は、スイッチ21の常時開端子21cと、配線12のうち、SW端子2とダイオード32のカソードとの間の部分を接続するように配置される。また、この場合は、信号検出端子6bにバッテリーのプラス端子電圧が印加され、ウェイクアップポート9はSW端子4に接続されることになる。
【0094】
(実施形態3)
本実施形態では、スイッチ回路100の故障検出について説明する。
【0095】
ここで、検討されるスイッチ回路100及びECU300とスイッチ回路100との接続関係は、実施形態2で開示した構成を用いる。また、スイッチ回路100が中立状態にある場合について説明するが、故障モードによっては、別の状態での故障検出について説明する。
【0096】
(第1故障モード −断線故障−)
図9に示すように、SW端子4とECU端子8との間のハーネスが断線した場合、SW端子4に電流は流れなくなる。なお、スイッチ回路100内で配線11が断線した場合も同様である。
【0097】
この場合、信号検出端子8bの電位は、スイッチ回路100内での導通状態の変化とは無関係に、信号入力端子8aの電位に追随するだけである。
【0098】
図10において、点線で囲まれた箇所が、正常動作時の電位変化(
図8参照)と異なっており、両者の電位変化パターンの比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0099】
また、
図8及び
図10に示すように、中立状態、作動状態、作動解除状態のいずれの場合も、信号入力端子5a〜7aの電位変化に対する、信号検出端子5b〜7bの電位変化は、正常動作時と同じである。
【0100】
従って、断線故障を検出し、その故障箇所が特定できれば、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0101】
(第2故障モード −配線地絡故障−)
通常、GNDは、車両のボディーと同電位であり、バッテリーのマイナス端子もGND電位に接続されている。
【0102】
よって、
図11に示すように、SW端子4とECU端子8との間のハーネスが地絡した場合、SW端子4とECU端子8とはGND電位となる。なお、スイッチ回路100内で配線11が地絡した場合も同様である。
【0103】
図12に示すように、信号検出端子8bの電位は、信号入力端子8aの電位変化やスイッチ回路100内での導通状態の変化とは無関係に、GND電位に固定されているため、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0104】
また、
図8及び
図12に示すように、中立状態、作動状態、作動解除状態のいずれの場合も、信号入力端子5a〜7aの電位変化に対する、信号検出端子5b〜7bの電位変化は、正常動作時と同じである。
【0105】
従って、地絡故障を検出し、その故障箇所が特定できれば、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0106】
(第3故障モード −配線天絡故障−)
天絡故障とは、SW端子が、バッテリーのプラス端子電位と接触し、SW端子がバッテリーのプラス端子電位に固定されてしまう故障をいう。
【0107】
よって、
図13に示すように、SW端子4とECU端子8との間のハーネスが天絡した場合、SW端子4とECU端子8との電位はバッテリーのプラス端子電位に固定される。
【0108】
なお、スイッチ回路100内で配線11が天絡した場合も同様である。
【0109】
図14に示すように、信号検出端子8bの電位は、信号入力端子8aの電位変化やスイッチ回路100内での導通状態の変化とは無関係に、バッテリーのプラス端子電位に固定されているため、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0110】
なお、
図8及び
図14に示すように、中立状態、作動状態、作動解除状態のいずれの場合も、信号入力端子5a〜7aの電位変化に対する、信号検出端子5b〜7bの電位変化は、天絡の影響を受けて、正常動作時とは異なっている。
【0111】
しかし、天絡故障時の電位変化パターンがわかれば、正常動作時の電位変化パターンとの比較からEPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0112】
(第4故障モード −スイッチ固着故障−)
スイッチ固着故障とは、スイッチ回路100内のスイッチが、開状態または閉状態のまま固着し、操作切り替え信号が入力されても、スイッチの開閉が切り替えられない故障をいう。
【0113】
ここでは、
図15に示すように、スイッチ21が閉状態のまま固着した場合を考える。
【0114】
この場合、
図2ないし
図4を参照すると、スイッチ21が開状態にある場合、つまり、スイッチ回路100が作動状態であるときにのみ、信号検出端子の電位変化に異常が現れる。
【0115】
図16において、点線で囲まれた箇所が、正常動作時の電位変化(
図8参照)と異なっており、両者の電位変化パターンの比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0116】
この場合であれば、信号入力端子5aをLow電位にしても、本来は、SW端子4に電流は流れないので、信号検出端子8bの電位は電位Cとなるはずである。
【0117】
しかし、実際には、スイッチ21が閉状態であるため、スイッチ21と配線1とを介して、SW端子4とSW端子1との間に電流が流れてしまい、信号検出端子8bの電位は電位Bとなる。
【0118】
また、信号入力端子7aをLow電位にした場合、本来は、SW端子4に電流は流れないので、信号検出端子8bの電位は電位Cとなるはずである。
【0119】
しかし、実際には、スイッチ21が閉状態であるため、スイッチ21と配線1とを介して、SW端子4とSW端子1との間に電流が流れてしまい、信号検出端子8bの電位は電位Bとなる。
【0120】
これらの電位変化を、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0121】
また、
図8及び
図16に示すように、中立状態、作動状態、作動解除状態のいずれの場合も、信号入力端子5a〜7aの電位変化に対する、信号検出端子5b〜7bの電位変化は、正常動作時と同じである。
【0122】
従って、スイッチ固着故障を検出し、その故障箇所が特定できれば、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0123】
(第5故障モード −ダイオード開放故障−)
ダイオード開放故障とは、スイッチ回路100内のダイオードが、整流性を失い、非導通となる故障をいう。
【0124】
ここでは、
図17に示すように、ダイオード31が故障した場合、この場合は開放故障した場合を考える。
【0125】
この場合、
図18において、点線で囲まれた箇所に示すように、スイッチ回路100が中立状態の場合と作動解除状態の場合とで、正常動作時の電位変化(
図8参照)と比較して、信号検出端子8bの電位変化に異常が現れる。
【0126】
中立状態あるいは作動解除状態において、信号入力端子5aをLow電位にすると、本来は、SW端子4からSW端子1に向けて電流が流れるので、信号検出端子8bの電位は電位Bとなるはずである。
【0127】
しかし、実際には、ダイオード31が非導通であるため、SW端子4とSW端子1との間には電流が流れず、信号検出端子8bの電位は電位Cとなる。
【0128】
これらの電位変化を、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0129】
また、
図8及び
図18に示すように、中立状態、作動状態、作動解除状態のいずれの場合も、信号入力端子5a〜7aの電位変化に対する、信号検出端子5b〜7bの電位変化は、正常動作時と同じである。
【0130】
従って、ダイオード開放故障を検出できれば、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0131】
なお、スイッチ21が開状態に固着した場合にも、
図18に示すのと同じ電位変化となるため、詳細な故障箇所の検出には、別途、物理的な解析が必要となる。
【0132】
(第6故障モード −ダイオード短絡故障−)
ダイオード短絡故障とは、スイッチ回路100内のダイオードが、整流性を失い、導通となる故障をいう。
【0133】
ここでは、
図17に示すように、ダイオード31が故障した場合、この場合は短絡故障した場合を考える。
【0134】
この場合、
図19において、点線で囲まれた箇所に示すように、スイッチ回路100が中立状態の場合と作動解除状態の場合とで、正常動作時の電位変化(
図8参照)と比較して、信号検出端子の電位変化に異常が現れる。
【0135】
ここでは、中立状態の場合を例にとって説明する。
【0136】
ダイオード31に短絡故障が無い場合、信号入力端子5aをLow電位にすると、SW端子4からSW端子1に向けて電流が流れるので、信号検出端子8bの電位は電位Bに近い値となる。
【0137】
次に、信号入力端子6aをLow電位にすると、SW端子4からSW端子2に向けて電流が流れるため、信号検出端子8bの電位は電位Bとなる。
【0138】
一方、ダイオード31の短絡故障が無い場合は、SW端子4からSW端子1に向けて電流は流れないので、信号検出端子5bの電位は電位Cとなるはずである。
【0139】
しかし、実際には、ダイオード31が短絡しているため、SW端子1とSW端子4との電位はほぼ同じとなる。よって、信号検出端子5bの電位は電位Bに持ち下げられる。
【0140】
信号入力端子8aをLow電位にした場合、本来、ダイオード31の整流作用により、SW端子4からSW端子1に向けて電流は流れないので、信号検出端子5bの電位は電位Cとなるはずである。
【0141】
しかし、実際には、ダイオード31が短絡しているため、SW端子1からSW端子4に向けて電流が流れて、信号検出端子5bの電位は、電位Aとなる。
【0142】
そうすると、SW端子3の電位よりもSW端子1の電位が下がるため、SW端子3からSW端子1に向けて電流が流れ、信号検出端子7bも電位Bとなる。
【0143】
これらの電位変化を、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0144】
ダイオード短絡故障時の電位変化パターンがわかれば、正常動作時の電位変化パターンとの比較から、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0145】
(第7故障モード −端子間短絡−)
ここでは、
図20に示すように、SW端子1とSW端子2とが短絡した場合について説明する。
【0146】
図21に示すように、信号検出端子5bと6bとは同じ電位変化を示す。
【0147】
中立状態の場合、信号入力端子5aまたは6aがLow電位となる場合は、信号検出端子5b,6bは、どちらも電位Aとなる。
【0148】
いずれの場合も、SW端子3,4に対してSW端子1,2が低電位となるため、高電位側の端子から低電位側の端子に電流が流れる。その結果、信号検出端子7b,8bの電位は電位Bとなる。
【0149】
作動状態においても、信号入力端子5aまたは6aがLow電位となる場合は、信号検出端子5b,bは、どちらも電位Aとなるとともに、信号検出端子7b,8bの電位が電位Bとなる。
【0150】
信号入力端子7aがLow電位となる場合は、配線15を介して、SW端子1とSW端子3とが接続されているため、電位をバランスするように信号検出端子5bの電位が引き下げられる。これに応じて、信号検出端子6bも引き下げられ、SW端子2の電位がSW端子4の電位よりも低くなる。そうすると、SW端子4からSW端子2に向けて電流が流れるため、信号検出端子8bの電位も引き下げられ電位Bとなる。
【0151】
作動解除状態において、端子間短絡により電位変化パターンは通常動作時と異なるが、説明は省略する。
【0152】
これらの電位変化を、正常動作時の電位変化(
図8参照)との比較から故障発生を検出し、また、故障モードを特定することが可能となる。
【0153】
端子間短絡故障時の電位変化パターンがわかれば、正常動作時の電位変化パターンとの比較から、EPB500に対する操作状態を推定することができる。
【0154】
なお、上記の場合において、スイッチ回路100の構成が、
図2から
図4に示すように、配線15を設けていない場合、つまり、ECU300の強制起動に対応していない場合には、端子間短絡故障を検出することはできるが、中立状態、作動状態、作動解除様態のいずれも同じ電位変化パターンとなるため、EPB500に対する操作状態を推定することはできない。
【0155】
(第8故障モード −コネクタ抜け−)
図22に示すように、スイッチ回路100とECU300との間が接続されていない場合、例えば、コネクタが抜けていた場合は、スイッチ回路100に対してECU300から信号を送ることはできない。
【0156】
従って、
図23に示すように、ECU300の信号入力端子5a〜8aの電位が順次、変化した場合、信号検出端子5b〜8bの電位も同様に変化するのみである。
【0157】
よって、コネクタが抜けているという故障検出は可能であるが、中立状態、作動状態、作動解除様態のいずれも同じ電位変化パターンとなるため、EPB500に対する操作状態を推定することはできない。
【0158】
(ワーニングランプ点灯による電気的故障通知)
法規上の要請から、車両のブレーキ部において、電気的故障が起こった場合は、ワーニングランプを点灯して、運転者及び外部に通知する必要がある。
【0159】
電気的故障には、例えば、上記の第1〜第8故障モードに現れる故障が含まれる。
【0160】
本実施形態によれば、スイッチ回路の故障モードを特定できるため、ワーニングランプを点灯させて、外部に故障を容易に通知できる。
【0161】
図24は、本実施形態に係る、電気的故障検出時の通知フローチャートである。
【0162】
例えば、中立状態で、ECU300の信号検出端子の電位を順次、変化させて、故障の有無を検出する(ステップS1)。故障が検出されると、それが電気的故障であるかどうかを判定する(ステップS2)。なお、電気的故障かどうかに関わらず、運転者には、故障があることを通知する(ステップS4)。通知方法は、インストルメンタルパネルに設けられた多目的ディスプレイやヘッドアップディスプレイ等に文字か画像として表示されるか、または、音声で通知されるか、あるいは、それらの併用であってもよい。
【0163】
検出された故障が電気的故障であれば、ECU300からワーニングランプコントローラ600に信号を送り、ワーニングランプ700を点灯する(ステップS3)。点灯と同時に、あるいは前後して、運転者には、故障があることを通知する(ステップS4)。
【0164】
以上説明したように、本実施形態によれば、ECU300からスイッチ回路100の4つのSW端子に対し、順次、信号を送り、応答パターンを計測することで、スイッチ回路100またはスイッチ回路100とECU300との接続部の故障の有無を検出できる。
【0165】
また、ECU300側で正常時の電位変化パターンとの比較により、EPB500への操作状態を検出しつつ、故障モード及び故障箇所の特定が可能となる。
【0166】
このことにより、スイッチ回路100で故障が発生したとしても、EPB500を誤操作するおそれがなくなる。
【0167】
なお、ECU300が通常状態であれば、ECU300からの出力信号は、EPB500の操作状態に関わらず、常時、スイッチ回路100に対して出力され、その応答信号がECU300で検出される。
【解決手段】スイッチ回路100は、SW端子1〜4の4つの端子を有する入出力端子部101と、これらの端子間を接続する配線1〜14と、各配線の経路に配置されたスイッチ21〜24と、各配線の経路に配置されたダイオード31〜34と、を有している。スイッチ21〜24は片切スイッチである。ダイオード31〜34は、スイッチ21〜24の常時閉端子21b〜24bにそれぞれ接続されている。