(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222350
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電動洗浄機
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
B08B3/02 E
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-516369(P2016-516369)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2015062677
(87)【国際公開番号】WO2015166905
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92875(P2014-92875)
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】須藤 智明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕太
【審査官】
大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−320121(JP,A)
【文献】
特開平07−259746(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/099843(WO,A1)
【文献】
特開平10−205456(JP,A)
【文献】
特開2009−052403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで駆動されるポンプで加圧された液体をノズルから噴射させる電動洗浄機であって、前記ポンプと前記ノズルとの間における前記液体の圧力を調整するために前記モータのオン及びオフを自動的に切り替える制御部を有し、前記圧力が連続して設定圧力値以下となった後に前記圧力が前記設定圧力値を超えるまでの時間が予め定められた第1の時間以内の状態が前記第1の時間よりも長い第2の時間内で複数回繰り返された場合に、前記モータへの給電を停止するように構成されたことを特徴とする電動洗浄機。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の時間以内の状態が前記第2の時間内で複数回繰り返された場合に、前記モータをオフし、以降は前記モータをオンしない制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動洗浄機。
【請求項3】
前記設定圧力値は、第1の設定圧力値と、前記第1の設定圧力値よりも大きい第2の設定圧力値とを有し、前記制御部は、前記圧力が前記第1の設定圧力値以下となった場合に前記モータをオンさせ、前記圧力が前記第2の設定圧力値以上となった場合に前記モータをオフさせる制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動洗浄機。
【請求項4】
前記圧力が前記第1の設定圧力値以下となった後に前記第2の設定圧力値以上となるまでの時間が前記第1の時間を超えた場合には前記モータへの給電を継続することを特徴とする請求項3に記載の電動洗浄機。
【請求項5】
モータで駆動されるポンプで加圧された液体をノズルから噴射させる電動洗浄機であって、前記ポンプと前記ノズルとの間における前記液体の圧力を調整するために前記モータのオン・オフを制御する調圧制御部と、前記圧力が連続して設定圧力値以下となった後に前記圧力が前記設定圧力値を超えるまでの時間が予め定められた第1の時間を超えた場合に、前記圧力が連続して前記設定圧力値以下となった期間を使用期間と認識し、予め定められ前記第1の時間よりも長い第2の時間内において前記使用期間が認識されなかった場合に、前記ポンプをオフさせた状態で前記調圧制御部への給電を停止する制御を行うオートパワーオフ制御部と、を具備することを特徴とする電動洗浄機。
【請求項6】
前記調圧制御部は、前記圧力が一定の範囲の下限値以下となった場合に前記ポンプをオンさせ、かつ前記圧力が前記範囲の上限値以上となった場合に前記ポンプをオフさせる制御を行い、前記設定圧力値は、前記下限値とされたことを特徴とする請求項5に記載の電動洗浄機。
【請求項7】
前記圧力が前記設定圧力値以下となった際に電気的スイッチとして機能する圧力スイッチを、前記ノズルとホースを介して接続され、かつ前記ポンプと一体化された洗浄機本体に具備することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の電動洗浄機。
【請求項8】
前記ポンプ及び前記制御部の電源として蓄電池が用いられたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の電動洗浄機。
【請求項9】
前記ポンプ及び前記調圧制御部の電源として蓄電池が用いられたことを特徴とする請求項5又は6に記載の電動洗浄機。
【請求項10】
前記ノズルには、前記液体の噴射を機械的に制御するトリガが装着されたことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の電動洗浄機。
【請求項11】
前記液体は水であることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電動洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動のポンプで加圧された液体を噴射する電動洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧された水をノズルの先端から噴射させて洗浄を行う洗浄機においては、モータやエンジンがポンプを駆動する動力源として使用される。このうち、モータを動力源とするものは、静粛性等の観点から好ましい。この場合、電源としては、商用交流電源と、バッテリ(蓄電池)の2種類を用いることができる。商用交流電源を用いた場合には、電源の供給が可能な場所においてのみ使用が可能となり、屋外等での使用が困難であるため、バッテリを電源とする洗浄機が特に好ましい。洗浄機においては、水を噴射するノズルにトリガが設けられ、作業者は、このノズルを把持し、洗浄する対象にノズルの先端を向けた状態でトリガを操作することによって、ポンプによって加圧された水をトリガの先端から噴射させ、洗浄作業を行うことができる。
【0003】
一方、連続して電力の供給が可能である商用交流電源とは異なり、バッテリを用いた場合には、連続して使用できる時間が制限され、この時間を超えた場合には、バッテリを再充電する、あるいは充電済みのものに交換する、等の作業が必要になる。このため、バッテリを用いた場合には、洗浄機における消費電力の低減が特に重要となる。こうした状況は、洗浄機に限らず、バッテリを電源とする電動工具等についても同様である。
【0004】
通常の電動工具等は、使用時にモータに通電がなされモータが回転することによって動作するが、その制御に用いられる制御回路(マイコン)等にも給電される。ここで、電動工具には主電源スイッチ、モータの起動スイッチの2種類のスイッチが設けられるものがある。主電源スイッチがオンとされた場合には、制御回路には給電されるがモータには通電されないスタンバイ状態とされ、この状態で更に起動スイッチがオンとされることにより、モータが回転し、この電動工具が動作する。こうした2種類のスイッチを設けることによって、モータのオン・オフを頻繁に制御する場合でも、適切な動作が可能となる。
【0005】
スタンバイ状態においては、モータは駆動されないために消費電力は動作時と比べて大幅に低いものの、制御回路に給電されることよって消費電力が発生する。このため、起動スイッチが長時間操作されない場合には、この電動工具を用いた作業は行われていないとみなし、主電源スイッチを実質的にオフし、制御回路への給電を自動的にオフ(オートパワーオフ)する設定とすれば、消費電力を大きく低減することができる。これによって、バッテリによる動作を長期間行わせることができる。作業者が再びこの電動工具を使用する場合には、主電源スイッチを再度オンすればよい。こうした制御は、オートパワーオフ制御として知られており、このための構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
上記のとおり、オートパワーオフ制御においては、この電動工具を用いた作業は行われていないとみなされる期間を認識することが重要であり、この期間が長い場合にオートパワーオフが行われる。この期間は、主電源スイッチがオンとされた状態においてモータの起動スイッチが連続してオフとされた期間、あるいは連続してモータがオフとされた期間として認識される。これにより、この期間が所定時間を超えた場合には、この電動工具が使用されていないと判定され、オートパワーオフが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−198690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のオートパワーオフの制御を同様に電動洗浄機に適用した場合には、以下の問題があった。
【0009】
電動洗浄機が使用されている状態とは、ノズルから水が噴射されている状態を意味する。電動洗浄機において、加圧された水をノズルから瞬時に噴射させるためには、ポンプ内の水の圧力を常時高めておくことが必要であり、ポンプ内(ポンプからノズルまでの間)における水圧は、常に所定の範囲の圧力に自動的に保たれている。このため、電動洗浄機においては、水の噴射という動作とモータのオン・オフの動作は必ずしも直結せず、水圧が低下した場合にポンプがオンするという動作が自動的に行われている。水を噴射させた場合には水圧が低下するためにポンプは自動的にオンとされる。ただし、水を噴射させない場合(スタンバイ状態)でも、ある程度の時間が経過した場合にはポンプ内の水圧は自然に低下するため、この場合にもポンプはオンとなるように自動的に制御される。このように、水を噴射しない状態においても、通常はモータのオン・オフは自動的に繰り返されており、モータのオン・オフを制御するための起動スイッチは洗浄機には設けられていない。
【0010】
このため、洗浄機においては、モータのオン・オフの情報のみから、この洗浄機が使用されているか否かを判定することは困難であり、この情報を基にしてオートパワーオフ制御を行うことは困難であった。
【0011】
水の噴射のオン・オフはノズルに装着されたトリガによって操作されるため、オートパワーオフ制御を行うために、モータのオン・オフの代わりにトリガが操作されたか否かを基準とすることも不可能ではない。この場合、例えばトリガが操作されない期間を、この洗浄機が使用されていない期間と認識し、この期間が長くなった場合にオートパワーオフを行うことができる。しかしながら、トリガは、一般には、水の噴射を制御する弁を機械的に操作する機能のみをもち、電気的なスイッチとなってはいない。トリガを電気的なスイッチとする、あるいはトリガに何らかの電気的なスイッチを接続し、このオン・オフを検出することも不可能ではないが、トリガが装着されるノズルは特に水で濡れやすい箇所であり、この観点から、こうした電気的なスイッチをノズルに設けることは好ましくない。また、ポンプや制御回路等が内蔵された本体と、トリガが設けられたノズルとの間に電気的な配線を設けることも好ましくなく、通常は本体とノズルとの間には、水を流通させるホースのみが設けられている。
【0012】
このため、長時間使用されていないことを洗浄機において電気的に判定することは困難であり、洗浄機においてオートパワーオフ制御を単純な構成で行うことは困難であった。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電動洗浄機は、モータで駆動されるポンプで加圧された液体をノズルから噴射させる電動洗浄機であって、前記ポンプと前記ノズルとの間における前記液体の圧力を調整するために前記モータのオン及びオフを自動的に切り替える制御部を有し、前記圧力が連続して設定圧力値以下となった後に前記圧力が前記設定圧力値を超えるまでの時間が予め定められた第1の時間以内の状態が前記第1の時間よりも長い第2の時間内で複数回繰り返された場合に、前記モータへの給電を停止するように構成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の電動洗浄機において、前記制御部は、前記第1の時間以内の状態が前記第2の時間内で複数回繰り返された場合に、前記モータをオフし、以降は前記モータをオンしない制御を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の電動洗浄機において、前記設定圧力値は、第1の設定圧力値と、前記第1の設定圧力値よりも大きい第2の設定圧力値とを有し、前記制御部は、前記圧力が前記第1の設定圧力値以下となった場合に前記モータをオンさせ、前記圧力が前記第2の設定圧力値以上となった場合に前記モータをオフさせる制御を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の電動洗浄機は、前記圧力が前記第1の設定圧力値以下となった後に前記第2の設定圧力値以上となるまでの時間が前記第1の時間を超えた場合には前記モータへの給電を継続することを特徴とする。
【0021】
本発明の電動洗浄機は、モータで駆動されるポンプで加圧された液体をノズルから噴射させる電動洗浄機であって、前記ポンプと前記ノズルとの間における前記液体の圧力を調整するために前記モータのオン・オフを制御する調圧制御部と、前記圧力が連続して設定圧力値以下となった後に前記圧力が前記設定圧力値を超えるまでの時間が予め定められた第1の時間を超えた場合に、前記圧力が連続して前記設定圧力値以下となった期間を使用期間と認識し、予め定められ前記第1の時間よりも長い第2の時間内において前記使用期間が認識されなかった場合に、前記ポンプをオフさせた状態で前記調圧制御部への給電を停止する制御を行うオートパワーオフ制御部と、を具備することを特徴とする。
【0022】
本発明の電動洗浄機において、前記調圧制御部は、前記圧力が一定の範囲の下限値以下となった場合に前記ポンプをオンさせ、かつ前記圧力が前記範囲の上限値以上となった場合に前記ポンプをオフさせる制御を行い、前記設定圧力値は、前記下限値とされたことを特徴とする。
【0023】
本発明の電動洗浄機は、前記圧力が前記設定圧力値以下となった際に電気的スイッチとして機能する圧力スイッチを、前記ノズルとホースを介して接続され、かつ前記ポンプと一体化された洗浄機本体に具備することを特徴とする。
【0024】
本発明の電動洗浄機は、前記ポンプ及び前記制御部の電源として蓄電池が用いられたことを特徴とする。
【0025】
本発明の電動洗浄機は、前記ポンプ及び前記調圧制御部の電源として蓄電池が用いられたことを特徴とする。
【0026】
本発明の電動洗浄機において、前記ノズルには、前記液体の噴射を機械的に制御するトリガが装着されたことを特徴とする。
【0027】
本発明の電動洗浄機において、前記液体は水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明は以上のように構成されているので、洗浄機においてオートパワーオフ制御を単純な構成で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電動洗浄機の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電動洗浄機において、調圧制御、オートパワーオフ制御に関わる制御回路の接続を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電動洗浄機において、調圧制御とオートパワーオフ制御とが行われる際の水圧の時間経過を示す一例である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電動洗浄機におけるオートパワーオフ制御の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態となる電動洗浄機について説明する。
図1は、この電動洗浄機(洗浄機)1全体の構成を模式的に示す図である。この洗浄機1においては、洗浄機本体10に設けられたタンク11に溜められた水が、ポンプ12によって汲み出され加圧され、可撓性のホース13の内部を通りノズル14に導かれる。ノズル14には、水の流れの開閉を行う弁141が設けられ、この開閉の制御はトリガ142で機械的に制御される。このため、作業者は、ノズル14内に加圧された水が存在する状態でトリガ142を引く(オンする)ことによって、ノズル14の先端から加圧された水を噴射させることができる。ノズル14は、作業者に把持され、携帯することが容易となる形状とされるため、作業者は、洗浄する対象にノズル14の先端を向け、トリガ142をオンすることによって、洗浄作業を行うことができる。
【0031】
洗浄機本体10には、上記のタンク11、ポンプ12の他に、ポンプ12を動作させるための機構が内蔵されている。まず、ポンプ12は、モータ(ブラシレスモータ)15で駆動される。このため、実質的にポンプ12のオン・オフはモータ15のオン・オフと等価であり、モータ15がオンされた場合にポンプ12とノズル14の間の水は加圧される。このモータ15は、制御回路16を用いて駆動され、電源としては、電池17が用いられる。電池17としては、充電が可能な蓄電池(バッテリ)が特に好ましく用いられる。この電池17は、モータ15を直接駆動する電源、及び制御回路16を駆動する電源となる。電池17の電圧は電源回路20を介して制御回路16等の電源電圧に変換されて制御回路16(マイコン161)に供給される。電池17(電源回路20)による制御回路16への給電は、主電源スイッチ18で制御される。主電源スイッチ18がオンされると、そのオン信号が電源回路20に入力されることで電源回路20が起動し、制御回路16の電源電圧を生成する。洗浄機本体10とノズル14との間は、ホース13のみによって接続され、これらの間に電気的な配線は設けられていない。
【0032】
モータ15への給電は、主電源スイッチ18では直接制御されず、制御回路16によって自動的に行われる。この制御は、ポンプ12に装着されポンプ12とノズル14の間における水圧を検知する圧力スイッチ19を用いて行われる。圧力スイッチ19においては、P1(第1の設定圧力値)、P2(第2の設定圧力値、P1<P2)の2種類の圧力が設定され、検出された水圧がP1以下に減少した場合、P2以上に増加した場合に、それぞれ出力信号を発する。制御回路16は、この水圧がP1以下になるとモータ15をオンさせ、水圧がP2以上となった場合にモータ15をオフさせる制御を行う。P1は例えば2MPa程度とすることができ、P2はこれよりも大きな範囲で適宜設定され、例えば2.5MPa程度とされる。
【0033】
このようにノズル14(ホース13)における水圧がP1以上となるべく制御されるために、作業者がトリガ142を操作した場合には、モータ15のオン・オフに関わらず瞬時にノズル14の先端から加圧された水が噴射する。上記のようにノズル14(ポンプ12)内の水圧を高くする制御を行わず、単なるモータ15のオン・オフによって水の噴射のオン・オフを行う場合には、水圧が上昇するまでの間の水勢が弱くなるために、洗浄作業を効率的に行うことができない。上記の構成においては、ノズル14における水圧を高く保つための動作が圧力スイッチ19、制御回路16によって自動的に行われるために、洗浄作業を効率的に行うことができる。このため、水の噴射のオン・オフは作業者がトリガ142を操作することによって行われ、モータ15のオン・オフは制御回路16によって自動的に行われる。このように、制御回路16は、調圧制御を行う調圧制御部として機能する。
【0034】
また、
図2は、上記の構成における、制御回路16と、電池17、主電源スイッチ18(タクトスイッチ)、電源回路20、圧力スイッチ19、モータ15との間の関係を示す図である。ここで、上記の制御回路16はマイコン161とインバータ回路162で構成される。3相駆動のブラシレスモータであるモータ15の電源は、電池17からインバータ回路162を介して供給され、そのオン・オフはマイコン161によって制御される。この制御に際しては、マイコン161は、上記のように、圧力スイッチ19によって、現在の水圧とP1、P2の上下関係を参照する。
【0035】
また、上記の制御回路16(マイコン161)は、圧力スイッチ19において、水圧がP1以下となった際に、水圧がP1以下となってから再びP1より大きいP2を超えるまでの時間を認識する。この時間が予め設定された第1の時間(T1)を超えた場合において、この洗浄機1を用いた作業が行われたと判定する。その後、モータ15がオフとされてから再びモータ15がT1を超えてオンされた場合がなく、予め設定された第2の時間T2を経過した場合に、電池17から制御回路16への電流の供給が自動的にオフ(オートパワーオフ)される。モータ15のオン・オフは、前記の通り圧力スイッチ19を用いて制御されるが、この制御も圧力スイッチ19を用いて行われる。すなわち、制御回路16は、オートパワーオフ制御を行うオートパワーオフ制御部としても機能する。
【0036】
図3は、この制御回路16による調圧制御とオートパワーオフ制御が行われた際に圧力スイッチ19で検出される水圧の時間変化とモータ15のオン・オフの状況を模式的に示す。ここで、P1は2.0MPa、P2は2.5MPaとされている。前記の通り、水圧がP1以下となった場合にはモータ15がオンされるために水圧は上昇するが、ノズル14から水が噴射されている場合には水圧は大きく低下するために、モータ15がオンとされた場合でも、水圧はP1を超えるまで上昇するとは限らない。一方、ノズル14から水が噴射されていない場合には、モータ15がオンされた場合には速やかに水圧は上昇するため、水圧はP1〜P2の範囲に維持され、P1がこの範囲の下限値、P2がこの範囲の上限値となる。この状態で作業者がトリガ142を操作した場合には、ノズル14から下限値である2.0MPa以上の高圧の水が噴射される。
【0037】
図3において、ノズル14から水が噴射される時間(トリガ142が操作された期間)は、図示されたTjの期間のみであり、Tjの期間の前後においては、この洗浄機1は使用されない(ノズル14から水が噴射されない)ものとする。まず、この使用されない状態におけるモータ15のオン・オフの動作について説明する。
【0038】
この状態においては、ポンプ12からノズル14の間にある水は噴出されないが、水の微少な漏れ等の要因によって、モータ15がオフの状態では、徐々に減少する。
図3におけるT00の期間は、モータ15がオフとされ水圧がP2からP1まで減少する期間である。水圧がP1まで減少したら、モータ15がオンとされ、再び水圧は上昇する。ただし、水が噴射されていない場合には、この際の水圧の上昇速度は速く、短時間で再び水圧はP2にまで上昇し、モータ15はオフとなる。この際のモータ15がオンとされた期間(水圧がP1からP2まで上昇する時間)がT01であり、T00に対して極短時間(T01<<T00)となる。この場合において、水圧がP1以下となっている時間は、モータ15がオンとされた期間であるT01と比べても無視できる程度に短い。このため、T00、T01の期間の大部分において水圧はP1〜P2の範囲に維持される。
【0039】
その後、前記と同様に水圧はP2から再び徐々に減少してP1に達し、同様の動作が繰り返し行われる。T00やT01はP1、P2の設定値や状況に応じて変化することもあるため必ずしも一定ではないが、例えばT00は3分程度、T01は1秒以下である。
【0040】
一方、ノズル14から水が噴射された場合には、ポンプ12内の水圧は大きく減少しP1を下回るため、やはりモータ15はオンとなる。ただし、上記の水が噴射されていない場合と異なり、水が噴射され続けている間は、水圧は直ちに上昇しない、あるいは上昇する場合でも上記の場合と比べてその上昇の速度は遅い。このため、
図3におけるTjの期間においては、水圧はP1以下となる。すなわち、水が噴射されていない場合には、モータ15がオンとされた際に水圧が速やかにP1から上昇したのに対し、水が噴射された場合には、モータ15がオンされた場合でも水圧は少なくとも瞬時にはP1から上昇しない。図示されるように、この場合にモータ15がオンされる時間をTj1とすると、Tj1>>T01となる。Tjの期間が終了したら(作業者がトリガ142から手を離したら)、水圧は速やかに上昇し、P2に達する。
【0041】
このため、上記の調圧制御が自動的かつ定常的に行われている場合でも、水圧がP1以下となる時間を元にして、ノズル14から水が噴射された状態があったかどうかを判定することができる。この判定のために、第1の時間T1を設定し、水圧が設定圧力値(P1)以下となった時間がT1以上であればノズル14から水が噴射されたと判定し、この時間がT1未満であれば、ノズル14から水が噴射されていないと判定することができる。前記の通り、T01が1秒程度であり、T01の期間内において水圧がP1以下となる時間はこれよりも更に短い。また、洗浄作業を行う場合には、作業者は一般に数秒以上連続して水を噴射させる。このため、T1を例えば1秒程度と設定することができる。水圧が連続してP1以下となった時間TjがT1を超えた場合には、ノズル14から水が噴射された(この洗浄機1が使用された)と判定し、期間Tjの間はこの洗浄機1が作業者によって使用された使用期間であると認識することができる。
【0042】
図3の例においては、この使用期間が終了してから、水圧がP1以下となる場合はT01の期間内においては短時間内に存在するものの、T1を超えて連続して水圧がP1以下となる期間(使用期間と認識される期間)は存在しない。このように使用期間と認識されたTjの期間が終了してから再び使用期間が認識されなければ、この洗浄機1はTjの期間において使用されたが、その後では使用されなかったと判定することができる。
【0043】
このため、第2の時間T2(T2>>T00、T1)を設定し、T2の期間内に使用期間が認識されなければ、長時間この洗浄機1が使用されなかったと推定することができ、制御回路16(マイコン161)は、モータ15がオフの状態で制御回路16に対する電流の供給をオフ(オートパワーオフ)することができる。作業者が再びこの洗浄機1を使用する場合には、主電源スイッチ18を再びオンすればよい。T2としては、T00が3分程度である場合には、T2は10分程度とすることができる。この場合には、この洗浄機1は、10分間使用されなければ自動的にオフされる。
【0044】
このため、例えば作業者がこの洗浄機1を主電源スイッチ18をオンして放置した場合における電力消費を低減することができる。これによって、電池17による連続使用可能時間を長くすることができる。また、上記の構成においては、調圧制御に用いられる圧力スイッチ19と制御回路16を、オートパワーオフ制御にも用いることができる。このため、単純な構成で調圧制御と共にオートパワーオフ制御も行うことができる。調圧制御部とオートパワーオフ制御部とを分離して設けた場合には、オートパワーオフに際しては、調圧制御部のみへの電力供給をオフすることができる。ただし、オートパワーオフ制御部への電力供給のオフも同時に行ってもよい。
【0045】
また、
図3の特性より、制御回路16(マイコン161)は、オートパワーオフをするために、他の基準を用いることもできる。例えば、ノズル14から水が噴射されていることを上記の圧力スイッチ19以外の何らかの手段で検知できる場合には、ノズル14から水が噴射されていない状態でモータのオン・オフが複数回繰り返された場合には、オートパワーオフする(モータ15への給電を停止する)ことができる。この場合、制御部16は、調圧制御のためにモータ15が再びオンされることがないように制御することができる。また、上記と同様に、制御部16に対する電力の供給もオフすることができる。
【0046】
また、上記と同様にT1、T2が設定された場合にも、これを用いて上記とは異なる基準でオートパワーオフ制御を行うことができる。例えば、水圧がP1以下となった時間(モータ15がオンされた時間)がT1以下であった状態が、モータ15がオフされた時間を挟んでT2の時間内において複数回繰り返された場合に、オートパワーオフすることができる。この制御を行う場合には、T2を長めに設定した場合であっても、実際にはこれよりも短い時間でオートパワーオフが行われるために、節電の効果はより高くなる。この場合には、水圧がP1以下となってからその後にP2以上となるまでの時間がT1を超えた場合には、逆に、オートパワーオフとはしない(モータ15への給電を継続する、あるいは制御部16に対する電力の供給を継続する)設定とすることが好ましい。
【0047】
図4は、この洗浄機1におけるオートパワーオフ制御の動作の一例を示すフローチャートである。まず、主電源スイッチ18がオンされる(S1)ことにより、電源回路20にスイッチオン信号が入力される。電源回路20が起動することで制御回路16に電圧が印加され制御回路16が起動する。制御回路16は圧力スイッチ19からの出力を参照して、調圧制御が行われる(S2)。この調圧制御においては、前記の通り、水圧がP1以下となった場合にはモータ15をオンし、水圧がP2以上となった場合にはモータ15をオフする制御が行われる。
【0048】
この調圧制御の際に、圧力スイッチ19で検出された圧力がP1以下又はP2以上になるとモータ15の制御が切り替わるため、S3においては圧力に基づいてモータ15が回転しているか否かを判断する。モータ15が回転している場合(S3)には、モータ15が回転を開始した瞬間からの経過時間(Tj)が認識され、この時間Tjが連続してT1以上となった場合(S4)には、このTjの期間は使用期間(使用中)であったと認識される(S5)。その後、引き続き調圧制御(S2)が行われる。
【0049】
一方、この時間TjがT1未満であった場合(S4)、又はモータ15が回転していない場合(S3)には、使用期間でない(未使用)と認識される(S6)。この場合には、使用期間が経過してから時間T2が経過したか否かが判定される(S7)。この経過時間がT2以上となった場合(S7)には、長時間未使用であったと認識されるため、モータ15がオフされた状態で、制御回路16への給電も中止される(S8)。すなわち、制御回路16(マイコン161)から電源回路20にオートパワーオフ信号が出力されて電源回路20が停止する。電源回路20が停止すると制御回路16(マイコン161)への給電が停止するためインバータ回路162も停止しモータ15への給電が停止する。この状態は、主電源スイッチ18がオフされた状態と等価である。このため、調圧制御(S2)は、主電源スイッチ18が再度操作されない限り、行われない。
【0050】
この経過時間がT2を超えない場合(S7)には、引き続き調圧制御(S2)が行われる。
【0051】
上記の制御はトリガ142の操作とは無関係に行われる。モータ15が回転しているか否か(S3)、及び水圧が連続してP1以下となった時間がT1を超えたか否か(S4)の情報によって、使用期間が推定される。
【0052】
上記の動作においては、制御回路16が制御の際に参照するのは、洗浄機本体10に設けられた圧力スイッチ19でのみである。このため、トリガ142を初めとするノズル14側には、電気的なスイッチを設ける必要はなく、ノズル14と洗浄機本体10との間に電気配線を設ける必要はない。
【0053】
なお、上記の構成においては、調圧制御は水圧がP1、P2の範囲で行われ、使用期間であるか否かの判定(S3)の基準となる設定圧力値として、調圧制御の下限値としても設定されたP1、上限値として設定されたP2が用いられた。しかしながら、調圧制御の下限又は上限の水圧と使用期間であるか否かの判定の基準に用いる設定圧力値とが等しい必要はない。例えば、モータ15が回転しているか否か(S3)の代わりに、水圧がP2〜P3(P1<P2<P3<P4)の範囲であるか否かの判定を用いることができる。こうした場合であっても、同様に使用期間を推定することができることは、
図3の特性より明らかである。ただし、こうした場合には、調圧制御に用いる圧力スイッチ19の他に、P3、P4が設定された専用の圧力スイッチが別途必要となるため、P1、P2を使用期間であるか否かの判定の基準に用いる上記の構成が最も好ましい。なお、所定の圧力値が設定されている圧力スイッチを用いず、圧力を検出する圧力センサを設け、マイコン161に設定圧力値を記憶させる構成とすれば、部品点数を増やすことなく上記の制御を実現することができる。
【0054】
また、上記の構成においては、制御回路16が調圧制御部かつオートパワーオフ制御部として機能していた。しかしながら、調圧制御部とオートパワーオフ制御部とを分離して設けることもできる。
【0055】
また、上記の構成においては、洗浄機1の電源が電池17(蓄電池)であるものとしたが、商用交流電源が電源として用いられる場合であっても、上記の動作によって低消費電力化がなされることは明らかであるため、上記の構成が有効であることは明らかである。
【0056】
また、上記の構成においては、ノズルから水が噴出されるものとしたが、水以外の液体(洗浄液)が用いられる場合であっても、上記の構成が有効であることは明らかである。
【符号の説明】
【0057】
1…電動洗浄機(洗浄機)、10…洗浄機本体、11…タンク、12…ポンプ、13…ホース、14…ノズル、15…モータ、16…制御回路(調圧制御部、オートパワーオフ制御部)、17…電池、18…主電源スイッチ、19…圧力スイッチ、20…電源回路、141…弁、142…トリガ、161…マイコン、162…インバータ回路