特許第6222355号(P6222355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222355マザーセラミック基板、セラミック基板、マザーモジュール部品、モジュール部品およびマザーセラミック基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222355
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】マザーセラミック基板、セラミック基板、マザーモジュール部品、モジュール部品およびマザーセラミック基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20171023BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20171023BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20171023BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H05K1/02 G
   H05K3/00 X
   H05K1/16 A
   H05K1/03 610D
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-523362(P2016-523362)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058859
(87)【国際公開番号】WO2015182229
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-109395(P2014-109395)
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】松原 正志
(72)【発明者】
【氏名】松原 大悟
(72)【発明者】
【氏名】假谷 正敏
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−71374(JP,A)
【文献】 特開2001−58874(JP,A)
【文献】 特開2006−303056(JP,A)
【文献】 特開2014−11421(JP,A)
【文献】 特開2007−95973(JP,A)
【文献】 特開2006−324617(JP,A)
【文献】 特開2014−232747(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/078349(WO,A1)
【文献】 特開2004−63803(JP,A)
【文献】 特開2004−253463(JP,A)
【文献】 特開平6−209058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
H01C17/00−17/30
H01F17/00
H01G4/12,4/30,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置で分割して、複数個の個基板に分けることができるように構成されたマザーセラミック基板であって、
一方側主面に、分割位置を規定する分割溝が形成され、
他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成されていること
を特徴とするマザーセラミック基板。
【請求項2】
分割後に得られる前記個基板がそれぞれ内部導体を備えた構成となるような態様で、内部導体を備えていることを特徴とする請求項1記載のマザーセラミック基板。
【請求項3】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板を前記分割溝に沿って分割することにより得られる前記個基板であることを特徴とするセラミック基板。
【請求項4】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板の、分割後に個基板となる領域のそれぞれに表面実装部品が搭載されていること
を特徴とするマザーモジュール部品。
【請求項5】
請求項4記載のマザーモジュール部品を、前記マザーセラミック基板の前記分割溝に沿って分割することにより得られるものであることを特徴とするモジュール部品。
【請求項6】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
表面に凸条部が形成された第1の金型と、表面の前記第1の金型の前記凸条部と正対する位置に溝部が形成された第2の金型を用い、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、前記第1の金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に、前記第2の金型の前記溝部が形成された面を当接させ、前記第1の金型と前記第2の金型とによりプレス加工を行うことにより、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴とするマザーセラミック基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、凸条部が形成された金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を当接させた状態で静水圧プレスを行い、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴とするマザーセラミック基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、凸条部が形成された金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を介して剛体を配設した状態でプレス加工を行い、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴とするマザーセラミック基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2記載のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、溝部が形成された金型の前記溝部が形成された面を当接させ、プレス加工を行うことにより、前記未焼成のマザーセラミック基板の前記一方側主面に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記未焼成のマザーセラミック基板の他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記凸条が形成された位置に対応する位置に前記分割溝を形成するための加工を行う工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴とするマザーセラミック基板の製造方法。
【請求項10】
平面形状が方形であり、一方側主面と他方側主面とを有するセラミック基板であって、
前記他方側主面の4辺のうち、少なくとも1辺は、当該セラミック基板自体が突出した凸条を有し、
前記一方側主面の4辺のうち、前記セラミック基板を厚み方向からみた場合に前記他方側主面の前記凸条が形成された位置に対応する位置の辺は、稜部が面取りされていること
を特徴とするセラミック基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の位置で分割して、複数個の個基板に分けることができるように構成されたマザーセラミック基板、該マザーセラミック基板を分割することにより得られるセラミック基板、該マザーセラミック基板を用いたマザーモジュール部品、該マザーモジュール部品を分割することにより得られるモジュール部品、およびマザーセラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板を製造するにあたっては、焼成後にマザーセラミック基板を分割して、個々のセラミック基板に分割する方法が広く用いられている。
【0003】
そして、焼成後のマザーセラミック基板を、所定の寸法の個々のセラミック基板に分割する方法として、例えば、特許文献1には、分割位置に格子状に連続した突起部を有するプレス板を用いて加圧することによりマザーセラミック積層体の分割位置に格子状に溝を形成し、焼成後に、この溝に沿って焼成後のマザーセラミック積層体を分割して、積層セラミック基板を得る方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、一方の表面に粘着材層を設けた焼結フェライト基板に、少なくとも1つの連続する溝を設け、上記の連続する溝を起点として分割可能な焼結フェライト基板を形成し、これを分割することにより、個々のセラミック基板に分割する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、複数の基板用グリーンシートを積層してなる積層体の両面に、収縮抑制用グリーンシートを配するとともに、収縮抑制用グリーンシートの少なくとも一方には、表面に分割溝の形成位置の基準となる分割溝形成パターンを形成した収縮抑制用グリーンシートを用い、収縮抑制用グリーンシートの上記分割溝形成パターンを利用して上記積層体の表面に基板分割用の分割溝を形成し、焼成した後、分割溝に沿って分割することにより多層セラミック基板を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1〜3に開示されている方法では、図22(a),(b)に示すように、マザー基板300の一方側の表面300aに、ブレイク用の分割溝301を形成し、この分割溝を起点としてマザー基板300をブレイクするように構成されており、マザー基板の片側表面にしかブレイクの起点がないため、意図したとおり、分割端面302がマザー基板300の表面300aに垂直になるようにマザー基板300を分割することは困難で、図23に模式的に示すように、分割端面302が主面に垂直にはならずに、斜めになってしまう場合がある。
【0007】
その結果、分割することにより得られる個々のセラミック基板の外観や寸法に不良が生じたり、セラミック基板が、例えば、内部電極を有する多層セラミック基板などである場合には、内部電極の露出などの致命欠陥が生じたりするという問題点がある。
【0008】
また、ブレイクの起点となる分割溝が浅いほど、斜めに割れるおそれが増え、逆に分割溝が深すぎると、取り扱いの際にセラミック基板が意図せずに割れてしまうというようなトラブルを招く場合がある。
【0009】
また、近年、マザーセラミック基板状態の板状のフェライト焼結体(フェライトシート)を多数個の個片に分割したものが、電磁波の遮断・吸収を行うための電磁波遮断・吸収材や、RFIDやNFCのアンテナ装置などに用いられている。なお、このようなフェライトシートは、必要に応じてその片側ないし両側に保持シートを貼り付けて用いられることがある。保持シートは1つの個片について1つ貼り付けられる場合のほか、複数の個片について1つ貼り付けられているものも存在する。
上述の板状のフェライト焼結体(フェライトシート)を多数個の個片に分割することができるようにするために、その片面に分割溝を形成することが行われている。
【0010】
しかし、近年、このような用途に用いられるフェライト焼結体(フェライトシート)の薄型化(例えば200μm厚み以下)が進行しており、適正な深さの分割溝を形成することが困難になっており、分割溝が深すぎると、焼成前にフェライトシートが分割されてしまい、浅すぎると、分割溝に沿って正しくブレイクすることができず、例えば、ブレイク時に細かく割れてしまい特性が低下するというような問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−338832号公報
【特許文献2】特開2005−15293号公報
【特許文献3】特開2007−165540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものであり、分割して、個々の基板(セラミック基板)としたときの、分割端面が個々の基板の主面に垂直になるように分割することが可能で、形状精度の高いセラミック基板を得ることが可能なマザーセラミック基板、それを分割することにより得られる個々のセラミック基板、該マザーセラミック基板を用いたマザーモジュール部品、それを分割することにより得られるモジュール部品、および、マザーセラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明のマザーセラミック基板は、
所定の位置で分割して、複数個の個基板に分けることができるように構成されたマザーセラミック基板であって、
一方側主面に、分割位置を規定する分割溝が形成され、
他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成されていること
を特徴としている。
【0014】
また、本発明のマザーセラミック基板においては、分割後に得られる前記個基板がそれぞれ内部導体を備えた構成となるような態様で、内部導体を備えていることが好ましい。
【0015】
上述のように、分割後に得られる個基板がそれぞれ内部導体を備えた構成となるようにした場合、内部に回路や電極などの導体を備えたセラミック基板を効率よく製造することが可能になる。
【0016】
また、本発明のセラミック基板は、上記本発明のマザーセラミック基板を前記分割溝に沿って分割することにより得られる前記個基板であることを特徴としている。
【0017】
また、本発明のマザーモジュール部品は、上記本発明のマザーセラミック基板の、分割後に個基板となる領域のそれぞれに表面実装部品が搭載されていること
を特徴としている。
【0018】
また、本発明のモジュール部品は、上記本発明のマザーモジュール部品を、前記マザーセラミック基板の前記分割溝に沿って分割することにより得られるものであることを特徴としている。
【0019】
また、本発明のマザーセラミック基板の製造方法は、
上記本発明のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
表面に凸条部が形成された第1の金型と、表面の前記第1の金型の前記凸条部と正対する位置に溝部が形成された第2の金型を用い、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、前記第1の金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に、前記第2の金型の前記溝部が形成された面を当接させ、前記第1の金型と前記第2の金型とによりプレス加工を行うことにより、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の他のマザーセラミック基板の製造方法は、
上記本発明のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、凸条部が形成された金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を当接させた状態で静水圧プレスを行い、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明のさらに他のマザーセラミック基板の製造方法は、
上記本発明のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、凸条部が形成された金型の前記凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を介して剛体を配設した状態でプレス加工を行い、前記未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に前記分割溝を形成するとともに、他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明のさらに他のマザーセラミック基板の製造方法は、
上記本発明のマザーセラミック基板を製造するための方法であって、
未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、溝部が形成された金型の前記溝部が形成された面を当接させ、プレス加工を行うことにより、前記未焼成のマザーセラミック基板の前記一方側主面に、当該マザーセラミック基板自体が突出した凸条を形成する工程と、
前記未焼成のマザーセラミック基板の他方側主面の、該マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に前記一方側主面の前記凸条が形成された位置に対応する位置に前記分割溝を形成するための加工を行う工程と、
前記分割溝および前記凸条が形成された前記未焼成のマザーセラミック基板を焼成する工程と
を備えていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明のセラミック基板は、
平面形状が方形であり、一方側主面と他方側主面とを有するセラミック基板であって、
前記他方側主面の4辺のうち、少なくとも1辺は、当該セラミック基板自体が突出した凸条を有し、
前記一方側主面の4辺のうち、前記セラミック基板を厚み方向からみた場合に前記他方側主面の前記凸条が形成された位置に対応する位置の辺は、稜部が面取りされていること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明のマザーセラミック基板は、一方側主面に分割位置を規定する分割溝が形成され、他方側主面の、マザーセラミック基板を厚み方向からみた場合に一方側主面の分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成されているので、以下のような作用効果を奏する。
【0025】
分割溝に沿って分割する際に、マザーセラミック基板の主面に対してほぼ垂直に分割することができる。
マザーセラミック基板を分割する際には、一方側主面に形成された分割溝がブレイクの起点となるようにマザーセラミック基板を湾曲させる力が加えられる。
このとき、他方側主面に形成された凸条(山部)の裾に応力を集中させることができる。その結果、マザーセラミック基板を分割する際に、一方側主面の分割溝から進展するクラックが、他方側主面の対向位置にある凸条(山部)の裾に導かれる。
そして、凸条の幅は、マザーセラミック基板の厚みに比べて小さいので、図5(a)に示すように、クラックCが伸びることにより分割されたマザーセラミック基板1の分割端面(分割後のセラミック基板の端面でもある)31aは、マザーセラミック基板の主面に対してほぼ垂直になる。
【0026】
なお、本発明のマザーセラミック基板においては、一方側主面に分割溝を形成し、他方側主面に凸条を設けているので、分割溝の深さと、凸条の高さが数μm程度であっても(すなわち、分割溝の深さに依存することなく)、確実にマザーセラミック基板の主面に対してほぼ垂直に分割(破断)することができる。
【0027】
また、分割溝を浅くすることができるため、焼成前の取り扱いの際に、マザーセラミック基板が意図せずに分割されてしまうことを防止することができる。
【0028】
また、マザーセラミック基板が、例えば、電磁波の遮断・吸収を行うための電磁波遮断・吸収材や、RFIDやNFCのアンテナ装置に用いられるフェライトシートとしてのセラミック基板(フェライト個基板)に用いられるものである場合にも、分割端面が垂直になるため、分割後集合状態でハンドリングする際などにフェライト個基板の端面どうしがこすれて、フェライト粉末が発生する(粉落する)ことによる粉塵の発生を招くことがない。
また、例えば、凸条が形成された他方側主面を保持フィルム(粘着テープ)に貼り付けて用いる場合、凸条がアンカーとして保持フィルムに食い込むことから、分割されたフェライト個基板が、保持フィルムの屈曲時に脱落することを抑制して、信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明のセラミック基板は、上記本発明のマザーセラミック基板を分割溝に沿って分割することにより得られる個基板(セラミック基板)であり、分割端面がマザーセラミック基板の主面(=個々のセラミック基板の主面)に垂直で、形状精度が高く、種々の用途に広く用いることができる。
【0030】
また、本発明のマザーモジュール部品は、上記本発明のマザーセラミック基板の、分割後に個基板となる領域のそれぞれに表面実装部品が搭載されているため、分割溝に沿って分割するだけで、容易かつ確実に、信頼性の高いモジュール部品を得ることができる。
【0031】
また、本発明のマザーセラミック基板の製造方法は、表面に凸条部が形成された第1の金型と、表面の第1の金型の凸条部と正対する位置に溝部が形成された第2の金型を用い、未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、第1の金型の凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に、第2の金型の溝部が形成された面を当接させ、第1の金型と第2の金型とによりプレス加工を行うようにしているので、一方側主面に分割溝が形成され、他方側主面の、上記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成された未焼成のマザーセラミック基板を確実に作製することができる。
そして、この未焼成のマザーセラミック基板を焼成することにより、焼結済みで、一方側主面に分割溝を備え、他方側主面に凸条を備えたマザーセラミック基板を効率よく、しかも確実に製造することができる。
【0032】
また、本発明の他のマザーセラミック基板の製造方法のように、未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に金型の凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を当接させた状態で静水圧プレスを行うようにした場合にも、一方側主面に分割溝が形成され、他方側主面の、上記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成された未焼成のマザーセラミック基板を確実に作製することが可能になり、これを焼成することにより、焼結済みで、一方側主面に分割溝を備え、他方側主面に凸条を備えたマザーセラミック基板を効率よく、しかも確実に製造することができる。
なお、他方側主面の、上記分割溝が形成された位置に対応する位置に凸条が形成されるのは、金型の凸条部からマザーセラミック基板に加わる圧力により、一方側主面には分割溝が形成されるとともに、他方側主面にまでその力が伝わり、凸条部が形成されることによる。
【0033】
また、本発明のさらに他のマザーセラミック基板の製造方法のように、未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、凸条部が形成された金型の凸条部が形成された面を当接させ、他方側主面に弾性体を介して剛体を配設した状態でプレス加工を行うようにした場合にも、一方側主面に分割溝が形成され、他方側主面の、上記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成された未焼成のマザーセラミック基板を確実に作製することが可能になり、これを焼成することにより、焼結済みで、一方側主面に分割溝を備え、他方側主面に凸条を備えたマザーセラミック基板を効率よく、しかも確実に製造することができる。
【0034】
また、本発明のさらに他のマザーセラミック基板の製造方法のように、未焼成のマザーセラミック基板の一方側主面に、溝部が形成された金型の溝部が形成された面を当接させてプレス加工を行い、マザーセラミック基板の一方側主面に凸条を形成した後、他方側主面に分割溝を形成するための加工(溝形成加工)(例えば、切削加工など)を行うようにした場合にも、一方側主面に分割溝が形成され、他方側主面の、上記分割溝が形成された位置に対応する位置に、当該マザーセラミック基板自体を突出させた凸条が形成された未焼成のマザーセラミック基板を確実に作製することが可能になり、これを焼成することにより、焼結済みで、一方側主面に分割溝を備え、他方側主面に凸条を備えたマザーセラミック基板を効率よく、しかも確実に製造することができる。
【0035】
なお、本発明において、分割溝や凸条はV字形状(逆V字形状)であることが好ましいが、U字形条(逆U字形状)などの他の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態(実施形態1)において、マザーセラミックグリーンシート(未焼成のマザーセラミック基板)を第1の金型と第2の金型の間に位置させた状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態1において、未焼成のマザーセラミック基板を第1の金型と第2の金型によりプレスしている状態を示す図である。
図3】(a)本発明の実施形態1において、プレス後のマザーセラミック基板から、第1の金型と第2の金型を分離した状態を示す図、(b)はプレス後のマザーセラミック基板の平面図である。
図4A】本発明の実施形態1において用いた第1の金型を示す図である。
図4B】本発明の実施形態1において用いた第2の金型を示す図である。
図5】(a)は本発明の実施形態1において、マザーセラミック基板が分割溝に沿って、かつ、分割端面が主面に垂直になるような態様で分割されるメカニズムを説明する図、(b)はマザーセラミック基板が個々のセラミック基板に分割された状態を示す図である。
図6】(a)はマザーセラミック基板の凸条が形成された他方側主面に保持フィルムを貼り付けた状態を示す図、(b)は(a)の状態のマザーセラミック基板を分割溝に沿って分割した状態を示す図、(c)は保持フィルム上に保持された集合体としてのセラミック基板を保持フィルムごと湾曲させた状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態3で作製した、内部電極を備えたマザーセラミック基板を示す断面図である。
図8】本発明の他の実施形態(実施形態2)において、プレス後のマザーセラミック基板から、第1の金型と第2の金型を分離した状態を示す図である。
図9】実施形態2において、マザーセラミック基板が個々のセラミック基板に分割された状態を示す図である。
図10】本発明の実施形態3にかかるモジュール部品の製造方法により製造したモジュール部品の構成を示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態3において、セラミックグリーンシートに、導体パターンを配設したパターン形成シートを示す斜視図である。
図12図11のパターン形成シートを所定の順序で積層した状態を示す斜視図である。
図13図12のパターン形成シートを積層した積層体を圧着することにより得た積層体(未焼成マザーセラミック基板)を示す斜視図である。
図14図13の未焼成マザーセラミック基板を第1の金型と第2の金型によりプレスして、一方側主面に分割溝、他方側主面に凸条を形成した状態を示す斜視図である。
図15図14の、一方側主面に分割溝、他方側主面に凸条を形成したマザーセラミック基板に表面実装部品を搭載した状態を示す斜視図である。
図16】焼成後のマザーセラミック基板をブレイクして、個々のモジュール部品に分割した状態を模式的に示す斜視図である。
図17】本発明において、溝および凸条を形成するための他の第1の方法を示す図である。
図18】本発明において、溝および凸条を形成するための他の第2の方法を示す図である。
図19】本発明において、溝および凸条を形成するための他の第3の方法の一工程を示す図である。
図20】本発明において、溝および凸条を形成するための他の第3の方法において、マザーセラミック基板の一方の主面に凸条を形成した状態を示す図である。
図21】本発明において、溝および凸条を形成するための他の第3の方法において、マザーセラミック基板の他方の主面に分割溝を形成した状態を示す図である。
図22】(a)は従来のマザー基板の分割方法を示す正面図、(b)は平面図である。
図23】従来のマザー基板の分割方法の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0038】
[実施形態1]
この実施形態1では、セラミック材料として、磁性体セラミックを用いたセラミック基板(フェライト基板)の製造方法について説明する。
【0039】
(1)まず、磁性体セラミック粉末(この実施形態1ではフェライト粉末)とバインダー樹脂と有機溶剤とを混合して、溶解、分散させた後、脱泡することにより、セラミック原料スラリーを作製した。
【0040】
それから、このセラミック原料スラリーを、ドクターブレード法などの公知の方法により、シート状に成形し、乾燥することにより、厚さ200μmのマザーセラミックグリーンシートを作製した。
なお、マザーセラミックグリーンシートは、複数枚のセラミックグリーンシートが積層された積層体であってもよい。
【0041】
それから、得られたマザーセラミックグリーンシートを所定の大きさにカットすることにより、本発明における未焼成のマザーセラミック基板である、カット済みのマザーセラミックグリーンシートを得た。
【0042】
(2)次に、図1に示すように、所定の大きさにカットされたマザーセラミックグリーンシート(未焼成のマザーセラミック基板)1を、表面10aに凸条部11が形成された第1の金型10と、表面20aに溝部21が形成された第2の金型20の間に位置させ、図2に示すように、第1の金型10および第2の金型20によりプレスした。これにより、一方側主面2aに分割溝3が形成され、他方側主面2bに凸条4が形成されたプレス後のマザーセラミック基板1(1A)(図3)を得た。
【0043】
なお、この実施形態では、第1の金型10として、図4Aに示すように、表面10aに、高さが約5μmで、幅が約20μmの山形の凸条部11が、格子状に形成された構造のものを用いた。
【0044】
また、第2の金型20として、図4Bに示すように、表面20aに、深さが約5μmで、幅が約20μmのV字状の溝部21が、格子状に形成された構造のものを用いた。
【0045】
第1の金型10と第2の金型20を用いてプレスを行うにあたっては、マザーセラミック基板1を厚み方向からみた場合に、第1の金型10の表面10aに形成された凸条部11が形成された位置に対応する位置に、第2の金型20の表面20aに形成されたV字状の溝部21が位置するように、第1の金型10と第2の金型20の位置関係を調節してプレスを行った(図2参照)。
【0046】
(3)それから、プレス後のマザーセラミック基板1(1A)を、950℃で焼成することで、焼結済みのマザーセラミック基板(フェライト焼結基板)1(1B)を得た。
【0047】
(4)次に、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)を、例えば、ローラーブレイクなどの方法で分割処理を施し、分割溝3に沿って分割した。このとき、図5(a)に示すように、一方側主面2aの分割溝3において発生したクラックCは、他方側主面2bの凸条4の裾に向かって伸びる。
【0048】
そして、凸条4の幅は、マザーセラミック基板1(1B)の厚みに比べて小さいので、クラックCが伸びることにより分割された後に得られるセラミック基板31の分割端面31aは、セラミック基板31の主面(=マザーセラミックグリーンシートの一方側主面2a,他方側主面2b)に対してほぼ垂直になる。
【0049】
その結果、マザーセラミック基板1(1B)を分割溝3に沿って分割することにより、分割端面31aがセラミック基板31の主面(=マザーセラミックグリーンシートの一方側主面2a,他方側主面2b)に対してほぼ垂直なセラミック基板31が得られる(図5(b)参照)。
【0050】
このとき、図5(b)に示すセラミック基板31は、一方側主面(上面)の左右の稜部が、上述の分割溝3a(図5(a))が最深部で分割されることにより形成される面取りされた形状となり、また、他方側主面(下面)の一方側の端部(図5(b)では左側の端部)には、上述の凸条4が存在している。なお、一方側の端部(図5(b)では左側の端部)にのみ、上述の凸条4が存在するのは、上述のように、一方側主面2aの分割溝3において発生したクラックCが、他方側主面2bの凸条4の裾に向かって伸びることによるものである。
ただし、凸条4が、主要部と残りの一部とに分割されるような態様で上記クラックCが伸びた場合には、他方側主面(下面)の一方側の端部と他方側の端部のそれぞれに、分割された上記凸条4の一部が存在することもある。
【0051】
なお、本発明のマザーセラミック基板1(1B)においては、一方側主面2aに分割溝3を形成し、他方側主面2bに凸条4を設けているので、分割溝3の深さと、凸条4の高さが数μm程度であっても、確実にマザーセラミック基板1(1B)の主面(一方側主面2a、他方側主面2b)に対してほぼ垂直に分割(破断)することができる。
【0052】
このように、マザーセラミック基板1(1B)を分割することにより得られるセラミック基板31は、分割端面31aが個々のセラミック基板31の主面に垂直で、形状精度が高く、種々の用途に広く用いることができるものである。
【0053】
また、図6(a)に示すように、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)の凸条4が形成された面である他方側主面2bに、例えば、保持フィルムとして機能する粘着テープ5を貼り付けた状態で、例えば、ローラーブレイクなどの方法で分割処理を施し、分割溝3に沿って分割し(図6(b))、その後粘着テープ5を剥がすことにより、分割端面31aが主面に垂直なセラミック基板31を得るようにすることもできる。このようなセラミック基板31のそれぞれ(個基板)は、RFIDやNFCのアンテナ装置用の磁性体セラミック基板として好適に用いることができる。
なお、保持フィルムとして機能する粘着テープ5を剥がさずに貼り付けたまま用いることも可能である。その場合、複数個が集合状態で保持フィルム5上に保持され、全体として柔軟性を備えたフェライトシートとして使用することが可能なセラミック基板31を得ることができる。このようなフェライトシートとしてのセラミック基板31は電磁波の遮断・吸収を行うための電磁波遮断・吸収材として好適に用いることができる。
上記のいずれの場合においても、複数個が集合状態で保持フィルム5上に保持された集合体としてのセラミック基板31は、例えば集合状態でハンドリングする際に図6(c)に示すように、意図的にまたは意図せず全体を湾曲したり、球面状に変形したりすることが考えられる。その場合にも、保持フィルム5の屈曲時に個々のセラミック基板(フェライト基板)31の端面(分割端面)どうしがこすれて、フェライト粉末が発生する(粉落する)ことによる粉塵の発生を招くことがない。これにより、電磁波遮断・吸収材や、RFIDやNFCのアンテナ装置などに好適に用いることができる。
【0054】
[実施形態2]
この実施形態2では、セラミック材料として、低温焼結セラミックを用いたセラミック基板(多層セラミック基板)の製造方法について説明する。
【0055】
(1)まず、ガラスセラミック粉末(低温焼結セラミック粉末)とバインダー樹脂と有機溶剤とを混合して、溶解、分散させた後、脱泡することにより、セラミック原料スラリーを作製した。
【0056】
それから、このセラミック原料スラリーを、ドクターブレード法などの公知の方法により、シート状に成形し、乾燥することにより、厚さ50μmのマザーセラミックグリーンシートを複数枚作製した。
【0057】
次に、このセラミック原料スラリーを、ドクターブレード法などの公知の方法により、シート状に成形し、乾燥することにより、厚さ50μmの単一マザーセラミックグリーンシートを複数枚作製した。
【0058】
それから、得られたマザーセラミックグリーンシートを所定の大きさにカットし、それぞれに内部電極形成用の導電性ペースト(Agペースト)をスクリーン印刷して、内部電極パターンを形成した。なお、必要に応じてマザーセラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、導電性ペーストを充填することによりビア導体(内部電極の1種)を備えたマザーセラミックグリーンシートとすることも可能である。
【0059】
続いて、この内部電極パターンを備えたマザーセラミックグリーンシートを所定の順序で積層することにより、図7に示すように、内部電極6を備えた未焼成のマザーセラミック基板(マザーセラミックグリーンシートの積層体)1を得た。
【0060】
(2)それから、このマザーセラミック基板1を、上記実施形態1の場合と同じ金型を用い、同じ方法でプレスして、図8に示すように、一方側主面2aに分割溝3が形成され、他方側主面2bに凸条4が形成されたプレス後のマザーセラミック基板1(1A)を得た。図8はプレス後に、第1の金型10と第2の金型20を、マザーセラミック基板1(1A)から分離した状態を示している。
【0061】
(3)それから、プレス後のマザーセラミック基板1(1A)を、900℃で焼成することにより、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)を得た。
【0062】
(4)次に、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)を、例えば、ローラーブレイクなどの方法で分割処理を施し、分割溝3に沿って分割することにより、図9に示すような、個々のセラミック基板(多層セラミック基板)31を得た。
なお、上述のマザーセラミック基板1(1B)を分割することにより得られるセラミック基板(多層セラミック基板)31は、図9に示すように、分割端面(セラミック基板31の端面)31aが個々のセラミック基板31の主面に垂直で、形状精度が高く、種々の用途に広く用いることができるものである。
【0063】
[実施形態3]
この実施形態3では、図10に示すように、表面導体、内部導体、ビア導体などを備えたセラミック基板(多層セラミック基板)1に表面実装部品151を搭載してなるモジュール部品150の製造方法について説明する。
【0064】
(1)まず、上記実施形態2の場合と同様の方法でセラミックグリーンシート(低温焼結セラミックグリーンシート)1を作製し、得られたセラミックグリーンシート1に、例えば、表面導体や内部導体となる導体パターンの形成、ビアホールの形成および該ビアホールへのビア導体となる導体材料の充填などを行って、図11に示すように、必要な導体パターン140を備えたパターン形成シート101aを作製する。
【0065】
(2)それから、導体パターン140を備えたパターン形成シート101aを所定の順序で積層し(図12)、得られた積層体を袋に入れて、脱気した後、密閉し、所定の温度に加熱した後、静水圧プレスを行うことにより、図13に示すように、各パターン形成シート101aが圧着された積層体(未焼成のマザーセラミック基板)1を得た。
【0066】
(3)それから、図14に示すように、未焼成のマザーセラミック基板1を、上記実施形態1および2の場合と同じ金型を用い、同じ方法でプレスして、一方側主面2aに分割溝3が形成され、他方側主面2bに凸条4が形成されたプレス後のマザーセラミック基板1(1A)を得た。
【0067】
(4)次に、プレス後のマザーセラミック基板1(1A)を、900℃で焼成することで、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)を得た。
【0068】
(5)それから、焼結済みのマザーセラミック基板1(1B)(図15)の、焼成後に個々のセラミック基板31となる各領域上に、各表面実装部品151を搭載した。
なお、表面実装部品151として、例えば、ICチップ、積層セラミックコンデンサ、チップインダクタ、チップ抵抗などが搭載される。
【0069】
(6)そして、各セラミック基板上に表面実装部品151が搭載されたマザーセラミック基板1(1B)を、分割溝3に沿って分割した(図16)。これにより、分割端面31aがその主面に垂直な、寸法精度、形状精度の高い、各セラミック基板(多層セラミック基板)31上に表面実装部品151が搭載された個々のモジュール部品150が得られる。
【0070】
なお、図16に示すセラミック基板(多層セラミック基板)31の場合も、一方側主面(上面)の左右の稜部が、上述の分割溝3a(図5(a)参照)が最深部で分割されることにより形成される面取りされた形状となり(図5(b)参照)、また、他方側主面(下面)の一方側の端部(図5(b)では左側の端部)には、上述の凸条4が存在しているが、図16では、稜部の面取りされた形状や他方側主面(下面)の凸条の図示は省略している。
【0071】
また、上記実施形態3では多層セラミック基板上に表面実装型電子部品が搭載されたモジュール部品を例にとって説明したが、本発明は、単層のセラミック基板上に表面実装型電子部品が搭載されたモジュール部品を製造する場合にも適用することが可能である。
【0072】
この実施形態3の方法によれば、寸法精度、形状精度の高いセラミック基板上に表面実装部品が搭載されたモジュール部品を効率よく製造することができる。
【0073】
[実施形態4]
上記の実施形態1,2,3においては、凸条部が形成された第1の金型と、溝部が形成された第2の金型を用いて、マザーセラミック基板の一方側主面に分割溝を、他方側主面に凸条を形成するようにしているが、以下に説明する方法によっても、マザーセラミック基板の一方側主面に分割溝を、他方側主面に凸条を形成することが可能である。
【0074】
(1)溝および凸条を形成するための他の第1の方法
図17に模式的に示すように、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに、凸条部51が形成された金型50の、該凸条部51が形成された面を当接させ、他方側主面2bに静水圧プレス用弾性体52を当接させた状態で全体を袋状部材53に収容し、水中にて加圧する静水圧プレスを行う。これにより、凸条部51によるプレス圧力により、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aの凸条部51に対応する位置に分割溝3が形成されるとともに、未焼成のマザーセラミック基板1の他方側主面2bに凸条4が形成される。
なお、袋状部材53に静水圧プレス用弾性体52の機能を兼ねさせて、静水圧プレス用弾性体52を使用せずに静水圧プレスを行うことも可能であり、静水圧プレスの具体的な方法に特に制約はない。
【0075】
この方法の場合にも、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに、分割位置を規定する分割溝3を形成するとともに、他方側主面2bの、未焼成のマザーセラミック基板1を厚み方向からみた場合に一方側主面2aの分割溝3が形成された位置に対応する位置に凸条4を備えたマザーセラミック基板1を形成することができる。
【0076】
(2)溝および凸条を形成するための他の第2の方法
図18に模式的に示すように、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに、凸条部51が形成された金型50の、該凸条部51が形成された面を当接させ、他方側主面2bに弾性体62を介して剛体63を配設した状態でプレス加工を行う。
【0077】
この方法の場合にも、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに、分割位置を規定する分割溝3を形成するとともに、他方側主面2bの、未焼成のマザーセラミック基板1を厚み方向からみた場合に一方側主面2aの分割溝3が形成された位置に対応する位置に凸条4を備えたマザーセラミック基板1を形成することができる。
【0078】
(3)溝および凸条を形成するための他の第3の方法
図19に示すように、平坦な剛体体63上に載置した未焼成のマザーセラミック基板1の他方側主面2bに、溝部61が形成された金型60の、該溝部61が形成された面を当接させ、プレス加工を行うことにより、図20に示すように、未焼成のマザーセラミック基板1の他方側主面2bに、凸条4を形成する。
【0079】
それから、図21に示すように、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに溝形成加工を行って、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aの、未焼成のマザーセラミック基板1を厚み方向からみた場合に他方側主面2bの凸条4が形成された位置に対応する位置に分割溝3を形成する。
溝形成加工には、切削加工、レーザー加工などの方法を適用することが可能である。
【0080】
この方法の場合にも、未焼成のマザーセラミック基板1の一方側主面2aに、分割位置を規定する分割溝3を形成するとともに、他方側主面2bの、未焼成のマザーセラミック基板1を厚み方向からみた場合に一方側主面2aの分割溝3が形成された位置に対応する位置に凸条4を備えたマザーセラミック基板1を形成することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、分割溝および凸条がV字形状(逆V字形状)である場合を例にとって説明したが、分割溝および凸条は、U字形条(逆U字形状)などの他の形状とすることも可能である。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、製造するセラミック基板の寸法や形状、製造工程で未焼成マザーセラミック基板に溝および凸条を形成する方法やそれに用いる装置の種類、焼結済みのマザーセラミック基板をブレイクする方法などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 マザーセラミック基板
1(1A) 分割溝と凸条を備えたマザーセラミック基板
1(1B) 焼結済みのマザーセラミック基板
2a マザーセラミック基板の一方側主面
2b 他方側主面
3 分割溝
4 凸条
5 粘着テープ(保持フィルム)
6 内部電極
10 第1の金型
10a 第1の金型の表面
11 凸条部
20 第2の金型
20a 第2の金型の表面
21 溝部
31 セラミック基板
31a 分割端面(セラミック基板の端面)
50 金型
51 凸条部
52 静水圧プレス用弾性体
53 袋状部材
60 金型
61 溝部
62 弾性体
63 剛体
101a パターン形成シート
140 導体パターン
150 モジュール部品
151 表面実装部品
C クラック
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23