特許第6222362号(P6222362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222362
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-531206(P2016-531206)
(86)(22)【出願日】2015年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2015065962
(87)【国際公開番号】WO2016002416
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-138253(P2014-138253)
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】國分 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 以久也
(72)【発明者】
【氏名】仲渡 由征
(72)【発明者】
【氏名】木内 忠昭
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−284051(JP,A)
【文献】 特開2014−103748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動回路部から出力される駆動信号により、主回路部を構成する半導体スイッチング素子を制御して負荷に電力を供給する電力変換装置であって、外部からの指令に基づき前記駆動回路部を動作させて前記駆動信号を生成し、かつ、装置内部の故障発生時に前記駆動回路部に遮断信号を送出して前記主回路部の運転を停止する安全回路を備えた電力変換装置において、
前記主回路部の運転・停止を指令するための入力信号を生成する入力部と、前記入力信号を一方の入力とする論理部と、前記論理部の出力信号により前記遮断信号を生成する遮断停止部と、を前記安全回路に設け、
更に、前記遮断信号をフィードバック信号に用いて前記論理部の他方の入力となる遮断指令を生成する診断部と、
前記入力信号と前記遮断指令と前記フィードバック信号とに基づき、前記安全回路及び前記診断部の状態を監視して故障発生の有無を推定し、故障発生と判定した時に遮断信号を生成して前記駆動回路部に送出し、前記主回路部の運転を停止させる監視手段と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電力変換装置において、
前記安全回路は、前記入力部,前記論理部及び前記遮断停止部からなるチャンネルを二組備えて二重化され、
前記診断部には、両チャンネルの前記遮断停止部から前記フィードバック信号がそれぞれ入力されると共に、
前記監視手段には、前記遮断指令のほかに、両チャンネルの前記入力部からの前記入力信号と、両チャンネルの前記遮断停止部からの前記フィードバック信号と、がそれぞれ入力されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載した電力変換装置において、
前記診断部を二組備えて二重化することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載した電力変換装置において、
前記監視手段は、両チャンネルの前記入力信号及び前記フィードバック信号の論理レベルの組み合わせに基づいて故障発生箇所を推定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載した電力変換装置において、
前記監視手段は、少なくとも何れかのチャンネルにおける入力回路または出力回路を故障発生箇所として推定可能であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の工場やビル等に設置された電動機等の負荷を駆動するサーボ装置やインバータ装置において、装置に故障や異常(以下、これらを故障等という)が生じたときに装置の運転を停止するための安全機能を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の工場やビルにおいては、電動機を駆動するサーボ装置やインバータ装置等の電力変換装置を用いたドライブシステムが使用されている。これらのドライブシステムは、ファンやポンプ、エレベータ、各種の製造設備を駆動するために用いられているが、電力変換装置に故障等が発生すると、装置の破損や人体の損傷を招くおそれがある。
【0003】
このような背景から、世界各国では、ドライブシステムが国際標準規格等の各種の規格に基づいた安全機能を備えることを要求している。
しかしながら、この種の安全機能を実現するためには、その安全機能が法令に基づいて各種規格に準拠しているだけでなく、安全機能が確実に果たされているか否かを診断するための診断機能や支援機能が必要となる。
【0004】
ここで、電動機の安全停止を簡単な構成で実現可能とした従来の電力変換装置として、図13に示すものが知られている。なお、この電力変換装置は、特許文献1に記載されている。
図13において、501はインバータ装置、502は電動機であり、この従来技術では、電動機502の安全停止手段が以下のように構成されている。
【0005】
すなわち、通常の運転状態では、安全停止信号503,504がオフしており、PWM生成回路507から出力されたPWM信号が正側ゲート駆動回路508及び負側ゲート駆動回路509に入力される。このため、これらのゲート駆動回路508,509が動作してインバータ装置501の半導体スイッチング素子が制御され、電動機502が駆動される。
【0006】
しかし、装置に故障等が発生して安全停止信号503または504が入力されると、オンゲート電源遮断回路505または506が動作してゲート駆動回路508または509内のフォトカプラへの電源供給が遮断される。これにより、ゲート信号がブロックされ、インバータ装置501が運転を停止することで電動機502をフリーラン状態とし、その後に回転を停止させるものである。
【0007】
また、他の従来技術として、特許文献2に記載された安全制御システムが知られている。
この安全制御システム601は、図14に示すように、ネットワーク606を介して外部コントローラ607に接続された通信装置602と、プロセッサユニット603,604とを備え、これらのプロセッサユニット603,604から、電動機608を駆動する電力変換装置605に制御信号及び安全信号が入力されるようになっている。なお、一方のプロセッサユニット603は制御機能及び安全機能を備え、他方のプロセッサユニット604は安全機能のみを備えている。
【0008】
ここで、プロセッサユニット603は、外部コントローラ607から受信した通信データが制御データである場合には、その制御データに基づき制御指令を生成して電力変換装置605を制御する。また、通信データが安全データである場合には、他方のプロセッサユニット604にも安全データを転送し、両方のプロセッサユニット603,604が、運転停止やメモリ診断を含む安全処理を電力変換装置605に対して実行する。プロセッサユニット603,604による安全データの処理結果は、データ同期手段により一方のプロセッサユニット603にまとめられ、通信データに変換されて外部コントローラ607に送信される。
すなわち、このシステムでは、安全機能が二重化され、制御機能については単一化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−247693号公報(段落[0011]〜[0017]、図1等)
【特許文献2】特許第5494255号公報(段落[0018]〜[0024]、図1図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電力変換装置等の稼働中に故障等が発生した場合には、速やかに動力を遮断して安全状態に移行することが必要である。しかしながら、例えば特許文献1(図13)において、オンゲート電源遮断回路505,506等の安全回路が故障した場合には、これを正確に判定して安全な状態に移行し、動力を遮断することができなくなるおそれがある。
このため、安全回路の正常動作を確認するため、安全回路を定期的に動作させる検査が必要になるが、検査員による手順ミスや見落とし等のヒューマンエラーがあると、安全回路の故障を見過ごしてしまうことになる。
【0011】
一方、特許文献2(図14)によれば、安全機能を二重化しているため、信頼性の向上が可能である。しかし、安全機能を担うプロセッサユニット603,604を冗長化し、両ユニット603,604間で外部割り込み信号線等を用いてデータを同期させる必要がある等、システムの構成やコストの面で改良の余地が残されていた。
【0012】
そこで、本発明の解決課題は、ヒューマンエラーの発生を防ぎ、安全回路の動作を容易かつ低コストにて診断可能とした電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、駆動回路部から出力される駆動信号により、主回路部を構成する半導体スイッチング素子を制御して負荷に電力を供給する電力変換装置であって、外部からの指令に基づき前記駆動回路部を動作させて前記駆動信号を生成し、かつ、装置内部の故障発生時に前記駆動回路部に遮断信号を送出して前記主回路部の運転を停止する安全回路を備えた電力変換装置において、
前記主回路部の運転・停止を指令するための入力信号を生成する入力部と、前記入力信号を一方の入力とする論理部と、前記論理部の出力信号により前記遮断信号を生成する遮断停止部と、を前記安全回路に設け、
更に、前記遮断信号をフィードバック信号に用いて前記論理部の他方の入力となる遮断指令を生成する診断部と、
前記入力信号と前記遮断指令と前記フィードバック信号とに基づき、前記安全回路及び前記診断部の状態を監視して故障発生の有無及び故障発生箇所を推定し、故障発生と判定した時に遮断信号を生成して前記駆動回路部に送出し、前記主回路部の運転を停止させる監視手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電力変換装置において、前記安全回路は、前記入力部,前記論理部及び前記遮断停止部からなるチャンネルを二組備えて二重化され、前記診断部には、両チャンネルの前記遮断停止部から前記フィードバック信号がそれぞれ入力されると共に、前記監視手段には、前記遮断指令のほかに、両チャンネルの前記入力部からの前記入力信号と、両チャンネルの前記遮断停止部からの前記フィードバック信号と、がそれぞれ入力されることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載した電力変換装置において、前記診断部を二組備えて二重化することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載した電力変換装置において、前記監視手段は、両チャンネルの前記入力信号及び前記フィードバック信号の論理レベルの組み合わせに基づいて故障発生箇所を推定することを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載した電力変換装置において、前記監視手段は、少なくとも何れかのチャンネルにおける入力回路または出力回路を故障発生箇所として推定可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安全回路への入力信号、遮断信号のフィードバック信号、及び、診断部からの遮断指令がCPU等の監視手段に入力され、監視手段は、安全回路及び診断部の動作を監視することができる。また、入力信号及び前記フィードバック信号の論理レベルの組み合わせに基づいて故障発生箇所の推定や駆動回路部の遮断処理等を行うことができる。これにより、安全機能の診断に伴うヒューマンエラーをなくし、信頼性の高い電力変換装置を提供することができる。
なお、本発明は、安全機能を実現するためにCPUを二重化するものではないため、前述した特許文献2に係る従来技術と比べて、ハードウェア及びソフトウェアの簡略化によるコストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態を示す機能ブロック図である。
図2図1の主要部を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施形態を示す全体構成図である。
図4図1図3における主要部の回路図である。
図5】本発明の実施形態における駆動回路部の構成図である。
図6】本発明の実施形態における診断部の構成図である。
図7】本発明の実施形態における診断部の動作を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態における正常時の動作を示すタイミングチャートである。
図9】本発明の実施形態における故障発生時の動作を示すタイミングチャートである。
図10】本発明の実施形態における故障発生箇所の判定テーブルを示す図である。
図11】本発明の実施形態における故障発生箇所の判定テーブルを示す図である。
図12】本発明の実施形態における情報表示部の画面例を示す図である。
図13】特許文献1に記載された従来技術の構成図である。
図14】特許文献2に記載された従来技術の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本発明の実施形態を示す機能ブロック図である。
図1において、入力部21には、2チャンネルに冗長化された入力信号A,Bが指令として入力されている。これらの入力信号A,Bは、電力変換装置を運転して負荷としての電動機を駆動する時には「High」レベル、電力変換装置を停止して電動機の駆動を停止する時には「Low」レベルとなるものである。
なお、入力部21は、後述するように入力信号A,Bをフォトカプラにより絶縁したうえ所定のレベルに変換して伝達する機能を備えている。
【0020】
入力部21により絶縁された入力信号A,Bは、論理部22及びCPU10に渡される。
論理部22は、例えばANDゲートにより構成され、この論理部22では、診断部26から出力される遮断指令と入力部21の出力信号(入力信号A,B)との論理積をそれぞれとり、その結果を遮断停止部23に出力する。なお、論理部22は、ANDゲート以外のその他の論理ゲートを組み合わせて構成してもよい。
【0021】
監視手段としてのCPU10は、ソフトウェアの機能により、信号監視部11、故障箇所推定部12及び情報表示部13として動作する。信号監視部11には、入力部21の出力信号のほかに、診断部26からの遮断指令と、遮断停止部23からの二重化された遮断信号(フィードバック(FB)信号)A,Bとが入力されている。この信号監視部11は、入力部21、論理部22及び遮断停止部23からなる安全回路27の状態と診断部26の状態とを監視しており、これらの箇所に故障が発生したことを検出可能である。そして、故障箇所推定部12は、信号監視部11の出力に基づいて故障発生箇所を推定し、情報表示部13は当該箇所を液晶モニタやLED等の表示器に表示するものである。
【0022】
前記遮断停止部23は、論理部22の出力に基づき、二重化された遮断信号A,Bを出力する。この遮断停止部23は、後述するゲート駆動回路が実装される制御基板側に形成されている。
遮断信号A,Bは、駆動回路部24を介して電力変換装置の主回路部25に送られる。駆動回路部24は、後述するようにフォトカプラ及びゲート駆動回路を備えており、電力変換装置の運転時にはフォトカプラの動作電源をオンしてゲート駆動回路を動作させ、電力変換装置の停止時には遮断信号A,Bにより動作電源をオフしてゲート駆動回路の動作を停止させる。
【0023】
主回路部25は、例えばインバータを構成する半導体スイッチング素子のブリッジ回路からなり、その出力側に負荷としての電動機が接続されている。
なお、上述したように、電力変換装置の運転停止時には、遮断信号A,Bを用いて駆動回路部24の動作を停止させるほか、安全機能として、前記故障箇所推定部12から出力させた遮断信号を駆動回路部24に与えてその動作を停止させることが可能となっている。
【0024】
図2は、図1における主要部(安全回路27及びCPU10)を示したものである。
前述したごとく、安全回路27の構成要素は何れも二重化され、入力部21A,21B、論理部22A,22B及び遮断停止部23A,23Bを備えている。診断部26は、遮断停止部23A,23Bから出力される遮断信号A,BをFB信号A,Bとして入力し、これらのFB信号A,Bの一致不一致を判断して故障を診断する。この診断結果(遮断指令)は論理部22A,22Bに送られ、入力部21A,21Bの出力信号との論理積がそれぞれ求められと共に、上記診断結果はCPU10にも送られている。
【0025】
図3は、本発明の実施形態を示す全体構成図である。電力変換装置100は、CPU10及び安全回路・診断部28からなる制御部14と、駆動回路部24と、主回路部25とを備えている。ここで、安全回路・診断部28は、前述した安全回路27及び診断部26によって構成されており、安全回路・診断部28には、外部安全コントローラ50から入力信号(指令)が与えられる。
また、主回路部25には三相交流電源等の電源30及び電動機40が接続され、電動機40に取り付けられた速度/位置センサ41の出力信号がCPU10に入力されている。
【0026】
次に、図4は、図1図3に対応する主要部の回路図であり、詳しくは、図2の機能ブロック図と図1図3における駆動回路部24及び主回路部25の構成を具体化したものである。
図4において、211,212は入力部21A,21Bにそれぞれ設けられたフォトカプラである。また、231〜234は、遮断停止部23A,23Bをそれぞれ構成する半導体スイッチング素子である。
更に、241〜246は駆動回路部24内のフォトカプラであり、251〜256は、主回路部25を構成するIGBT等の半導体スイッチング素子である。
【0027】
図5は、駆動回路部24の構成を詳細に説明したものである。フォトカプラ241〜243には、遮断信号Aと、主回路部25の上アームスイッチング素子251〜253に対するゲート信号U,V,Wとが入力され、フォトカプラ244〜246には、遮断信号Bと、下アームのスイッチング素子254〜256に対するゲート信号X,Y,Zとが入力されている。
この駆動回路部24は、「Low」レベルの遮断信号A,Bにより、フォトカプラ241〜246の電源を遮断すると共に、スイッチング素子251〜256に対するゲート信号U,V,W,X,Y,Zを停止することにより、遮断機能を実現している。
【0028】
図4に戻って、診断部26は、2チャンネル分のFB信号A,Bを遮断停止部23A,23Bから受け取り、これらの信号の一致不一致を監視する。仮に、FB信号A,Bが不一致である場合には、回路内に何らかの部品故障があると判定する。部品故障とは、例えば部品のピンの開放やピン間の短絡、信号の固着(5V電源配線とのショート、GNDとのショートなど)である。
ここで、診断部26は図6に示すごとくロジックIC等により構成されている。図6において、261はXOR(排他的論理和)ゲート、262,265はRCフィルタ、263はNANDゲート、264,266はラッチ回路を構成するNANDゲートである。
【0029】
図7は、診断部26の動作を示すフローチャートである。この診断部26は、XORゲート261がFB信号A,Bを取得し(図7のステップS1)、これらの信号が不一致の場合(ステップS2Yes)には、XORゲート261の出力が「High」レベルとなり、一致する場合(ステップS2 No)には、「Low」レベルとなる。
RCフィルタ262,265は、前述した部品故障とみなすまでに一定時間、例えば100[ms]が経過するのを待つためのもので、その時定数がロジックICの「High」レベルのしきい値に合うように定してある。
【0030】
XORゲート261の出力が「High」レベルの場合(FB信号A,Bが不一致の場合)、RCフィルタ262の出力は上記時定数経過後に「High」レベルとなる。この時点でNANDゲート263の二入力が「High」レベルになり、その出力が「Low」レベルになるので、ラッチ回路を構成するNANDゲート266からは「Low」レベルの遮断指令が出力され、この遮断指令は「Low」レベルにて固定される(ステップS3)。つまり、FB信号A,Bが不一致の場合には、「Low」レベルの遮断指令がアクティブな状態として固定される。
これにより、図4の論理部22A,22Bの出力は「Low」レベルとなり、遮断信号A,Bをアクティブにして駆動回路部24のフォトカプラ241〜246の電源を遮断し、主回路部25による電動機40の運転を停止させる(ステップS4)。
【0031】
また、XORゲート261の出力が「Low」レベルの場合(FB信号A,Bが一致している場合)、NANDゲート263の二入力は「Low」レベルであり、その出力は「High」レベルとなってNANDゲート264の一方の入力端子に入力される。この時、NANDゲート264の他方の入力端子に入力されている遮断指令が「High」レベルであればNANDゲート264の出力は「Low」レベルとなり、この信号がNANDゲート266の一方の入力端子に入力されるが、NANDゲート266の他方の入力端子の信号レベルは「High」レベルとなっており、これにより、NANDゲート266の出力は「High」レベルを維持し続ける。
【0032】
なお、NANDゲート264の一方の入力が「High」レベルである時に遮断指令が「Low」レベルであるとすると、NANDゲート264の出力は「High」レベルとなり、この信号がNANDゲート266の一方の入力端子に入力される。この場合も、NANDゲート266の他方の入力端子の信号レベルは「High」レベルになっているので、NANDゲート266の出力は「Low」レベルを維持し続ける。
つまり、診断部26は、FB信号A,Bが一致している場合には、特に動作せず、もとのままの状態を維持することになる(ステップS5)。
【0033】
次に、図8図9はこの実施形態の動作を示すタイミングチャートである。
図8は、安全回路27の正常時に電力変換装置100の動作により電動機を運転または停止する場合の入力信号A,B及びFB信号A,Bを示し、図9は、例えば入力部21Bに故障が発生した時の入力信号A,B及びFB信号A,Bをそれぞれ示している。これらの図において、「stop」(時刻t),「run」(時刻t)は、電力変換装置100の停止、運転のタイミングである。
【0034】
図8の正常時において、入力信号A,B同士、FB信号A,B同士はそれぞれ一致しており、電力変換装置100の停止期間(t〜t)は、図4の論理部22A,22Bの出力が「Low」レベルになるので、電動機40への電力供給が遮断される。また、時刻t以前及び時刻t以後の電力変換装置100の運転期間では、正常時であるため、安全回路が非アクティブ状態である。
【0035】
一方、図9において、時刻tで例えば入力部21Bのフォトカプラ212に故障が発生したと仮定する。この場合、入力信号A,B同士、FB信号A,B同士がそれぞれ不一致になり、安全回路がアクティブになって電動機40への電力供給が遮断される。なお、前述したように、安全回路が一旦、アクティブになると、診断部26は遮断指令を出力し続けることになる。
【0036】
次いで、図1におけるCPU10内の信号監視部11及び故障箇所推定部12の動作を説明する。
図10は、入力信号A,B及びFB信号A,Bを用いて故障発生箇所(故障の可能性がある箇所)を推定するための判定テーブルである。信号監視部11は入力信号A,B及びFB信号A,BをCPU10のディジタル入力(DI)端子経由で取得し、故障箇所推定部12は、各ケース(No.1〜No.16)について、各信号のレベル(「High」レベル,「Low」レベル)の組み合わせに基づいて故障発生箇所を推定する。なお、この判定テーブルにおいて、「異常」、「故障」の用語は特に意図的に使い分けたものではなく、何れも正常でない状態を意味している。
更に、「Ch(チャンネル)A」は入力信号Aの伝達経路(図1図2における安全回路27内の入力部21A→論理部22A→遮断停止部23Aの経路)であり、「Ch(チャンネル)B」は入力信号Bの伝達経路(同じく安全回路27内の入力部21B→論理部22B→遮断停止部23Bの経路)である。
【0037】
以下、図10におけるいくつかのケースについて説明する。
例えば、No.1,No.2は、入力信号A,B及びFB信号A,Bのレベルが全て一致しているため、故障がなく正常であると判定する。ちなみに、No.1は電力変換装置100の運転時、No.2は同じく停止時に相当する。
【0038】
No.5は、入力信号A,Bのレベルは「Low」レベルで一致しているが、FB信号A,Bのレベルが不一致であり、かつ、FB信号Aのレベルが入力信号A,Bのレベルと不一致であるため、Ch(チャンネル)Aの出力回路(例えば、遮断停止部23A)が異常である可能性が高い。また、No.8は、FB信号A,Bのレベルは「High」レベルで一致しているが、入力信号A,Bのレベルが不一致であり、かつ、入力信号BのレベルがFB信号A,Bのレベルと不一致であるため、Ch(チャンネル)Bの入力回路(例えば、入力部21B)が異常である可能性が高い。
その他のNo.3,4,6,7,9,10についても、同様の手法により、ChAまたはChBの入力回路または出力回路の異常を推定することができる。
【0039】
No.11は、入力信号A,Bのレベルが「Low」レベルで一致し、かつFB信号A,Bのレベルは「High」レベルで一致しているが、入力信号A,BのレベルとFB信号A,Bのレベルとは不一致である。
この場合、ChA,ChBの入力回路が同時に異常となる可能性は低いから、入力信号A,Bの「Low」レベルは正常、つまりChA,ChBの入力回路は正常と考えることができる。すると、入力信号A,Bとは異なるレベルのFB信号A,Bが異常である可能性が高くなり、言い換えれば、ChA,ChBの出力回路(例えば、遮断停止部23A,23B)が異常である可能性が高い。
【0040】
この場合には、診断部26の入力信号(FB信号A,B)が「High」レベルで一致しているから、診断部26の出力信号(遮断指令)は「High」レベルのはずである。しかし、診断部26の故障によってその出力信号(遮断指令)が「Low」レベルになったとすれば、論理部22A,22Bの出力が「Low」レベルとなり、上述したように、ChA,ChBの出力回路(例えば、遮断停止部23A,23B)の異常によりFB信号A,Bが「High」レベルになったと考えることができる。
従って、No.11のケースは、ChA,ChBの出力回路が異常であり、かつ、診断部26が故障している可能性が高い。
【0041】
更に、No.12は、入力信号A,Bのレベルが「High」レベルで一致し、かつFB信号A,Bのレベルは「Low」レベルで一致しているが、入力信号A,BのレベルとFB信号A,Bのレベルとは不一致である。
この場合も、ChA,ChBの入力回路が同時に異常となる可能性は低いから、入力信号A,Bの「High」レベルは正常、つまりChA,ChBの入力回路は正常と考えられる。すると、入力信号A,Bとは異なるレベルのFB信号A,Bが異常である可能性が高くなり、言い換えれば、ChA,ChBの出力回路が異常である可能性が高い。
【0042】
また、診断部26の入力信号(FB信号A,B)が「Low」レベルで一致しているので、診断部26の出力信号(遮断指令)は「High」レベルである。つまり、診断部26の入力信号(FB信号A,B)が「Low」レベル、出力信号(遮断指令)が「High」レベルであるのは、診断部26がラッチ状態であると考えられる。
従って、No.12のケースは、ChA,ChBの出力回路が異常であり、かつ、診断部26がラッチ状態である可能性が高い。
【0043】
更に、No.13,No.14のケースは、入力信号A,Bのレベルが不一致、FB信号A,Bのレベルが不一致であると共に、入力信号AとFB信号Aのレベル、入力信号BとFB信号Bのレベルがそれぞれ一致する場合である。
この場合、ChA,ChBともに入力信号に対するFB信号の関係は妥当であるから、ChA,ChBの出力回路の異常は考えられず、入力信号A,Bのレベルが不一致であることに着目してChA,ChBの入力回路が異常である可能性が高い。
【0044】
また、No.15,No.16のケースは、入力信号A,Bのレベルが不一致、FB信号A,Bのレベルが不一致であると共に、入力信号AとFB信号Aのレベル、入力信号BとFB信号Bのレベルもそれぞれ不一致の場合である。
この場合、ChA,ChBともに入力信号に対するFB信号の関係は異常であり、かつ、入力信号A,Bのレベルも不一致であるため、ChA,ChBの入力回路、出力回路がともに異常である可能性が高い。
【0045】
以上のようにして、信号監視部11及び故障箇所推定部12は、入力信号A,B及びFB信号A,Bのレベルの組み合わせから故障発生箇所を推定する。そして、故障箇所推定部12が図1の情報表示部13を介して、図12に示すごとく、液晶モニタ131等の表示器に故障発生箇所を例えば、「ChA ニュウリョク」のように表示する。
【0046】
次いで、図11は、前述の診断部26も二重化した場合を想定したときの判定テーブルである。
すなわち、図示されていないが、遮断停止部23A,23Bから出力されるFB信号A,Bを二つの同一構成の診断部(診断部A,Bとする)に入力し、これらの診断部A,Bによる診断信号(遮断指令)A,Bを得る。つまり、図11の判定テーブルは、信号監視部11及び故障箇所推定部12が、入力信号A,B及び上記診断信号A,Bを用いて故障発生箇所を推定するためのものである。
【0047】
以下、図11におけるいくつかのケースについて説明する。
例えば、No.21,No.22は、レベルが互いに一致している入力信号A,Bに対して、診断信号A,Bが何れも「High」レベルの場合であり、正常と判定する。
No.23,No.24は、レベルが互いに一致している入力信号A,Bに対して、診断信号A,Bが何れも「Low」レベルの場合である。この場合は、入力信号A,Bのレベルが互いに一致しているにも関わらず、診断信号A,Bが「Low」レベル、つまり遮断指令が出力されていることになるので、安全機能がロック中(自己診断中止)である可能性が高い。
【0048】
また、No.25〜No.28は、入力信号A,Bのレベルが不一致であるため、診断信号A,Bが何れも「Low」レベルとなるべきものが、「High」レベルとなっている場合である。この場合、診断部A,Bの両方が故障している可能性は少ないため、診断信号A,Bの「High」レベルは正常と見なすことができ、結果として、ChAまたはChBの入力回路が異常である可能性が高い。
【0049】
No.29〜No.32は、入力信号A,Bのレベルが一致しているにも関わらず、診断信号A,Bのレベルが互いに不一致の場合である。この場合、入力部21A,21Bの両方が故障している可能性は少ないため、入力信号A,Bのレベルは正常と見なすことができ、結果として、診断部Aまたは診断部Bが故障している可能性が高い。
【0050】
No.33〜No.35は、No.33(No.22と同様に正常と判定されるケース)の状態から入力信号AまたはBのレベルがNo.34またはNo.35のように変化した場合に、それぞれNo.34,No.35に示す診断信号A,Bが得られるか否かによって故障または正常を判定するケースである。
これらのケースNo.33〜No.35は、主として診断信号A,Bの故障判定に有効である。
【0051】
以上説明したように、この実施形態によれば、電力変換装置100の安全機能を担う安全回路27(入力部21A,21B,論理部22A,22B,遮断停止部23A,23B)や診断部26の状態を監視し、異常または故障が発生した箇所をほぼ正確に推定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、装置の故障時に運転を停止する安全機能を備えたインバータ装置、コンバータ装置、チョッパ装置等の電力変換装置、及び、この種の電力変換装置を含む各種のドライブシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:CPU(監視手段)
11:信号監視部
12:故障箇所推定部
13:情報表示部
14:制御部
21,21A,21B:入力部
22,22A,22B:論理部
23,23A,23B:遮断停止部
24:駆動回路部
25:主回路部
26:診断部
27:安全回路
28:安全回路・診断部
30:電源
40:電動機
41:速度/位置センサ
50:外部安全コントローラ
131:液晶モニタ
211,212,241〜246:フォトカプラ
231〜234,251〜256:半導体スイッチング素子
261:XOR(排他的論理和)ゲート
262,265:RCフィルタ
263,264,266:NANDゲート
図1
図2
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