特許第6222364号(P6222364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222364
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20171023BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61B6/00 350A
   A61B6/12
   A61B6/00 370
   A61B6/00 350P
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-535927(P2016-535927)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2015070615
(87)【国際公開番号】WO2016013531
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-149804(P2014-149804)
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】筒井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敬一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴則
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−131371(JP,A)
【文献】 特開2014−50747(JP,A)
【文献】 特開2014−83230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0267475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過してきた放射線を検出する検出手段と、
前記検出手段が出力する検出信号を元に元フレームを生成する元フレーム生成手段と、
連続的に生成される前記元フレームに写り込んでいる物体の位置を示す複数の特徴点を認識して、対応する特徴点同士が互いに重なり合うように元フレーム同士の位置合わせする位置合わせ処理手段と、
前記位置合わせ処理がされた元フレーム同士を重ね合わせることにより前記物体の像が互いに重なり合った重合フレームを繰り返し生成する重合フレーム生成手段と、
連続的に生成される前記重合フレームに写り込む特徴点のうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を前記重合フレームの各々について繰り返し実行する編集手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記編集手段は、前記重合フレームに写り込む特徴点のうち編集の基準となるものを特徴点の位置関係または術者の指示に基づいて決定することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記編集手段は、前記物体を含む矩形の領域を残すようにトリミング処理を前記重合フレームの各々に施すことにより前記物体が大きく写り込んだトリミングフレームを前記重合フレームごとに繰り返し生成することにより動作することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合フレームに写り込む物体の上端および下端がフレームの上下左右のいずれに現れるかを定めることで編集の向きを決める上下基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線撮影装置において、
前記上下基準モードが選択された場合における前記編集手段は、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における上側の端がフレームの上端に現れ、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における下側の端がフレームの下端に現れるように編集の向きを決めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合フレームに写り込む物体の右端および左端がフレームの上下左右のいずれに現れるかを定めることで編集の向きを決める左右基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線撮影装置において、
前記左右基準モードが選択された場合における前記編集手段は、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における右側の端がフレームの上端に現れ、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における左側の端がフレームの下端に現れるように編集の向きを決めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項8】
請求項6に記載の放射線撮影装置において、
前記左右基準モードが選択された場合における前記編集手段は、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における右側の端がフレームの右端に現れ、前記重合フレームに写り込んだ前記物体における左側の端がフレームの左端に現れるように編集の向きを決めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち術者が指定したものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める特徴点指定モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち前記重合フレーム上の基準点に近いものおよび遠いものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める基準点基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち前記重合フレーム上に定められた範囲に属するものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める領域基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記物体は、ステントであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記元フレームにより構成される動画であるライブ像と編集後のフレームにより構成される動画とを並べて表示する表示手段を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に放射線を照射して画像を取得する放射線撮影装置に関し、特にステントを導入する手術用の放射線撮影装置に係る。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や狭心症に対して行われる治療である冠動脈インターベンション(PCI)は、内部にガイドワイヤーを備えたカテーテルを太ももの付け根等から血管内に挿入し、そのカテーテルを血管を介して心臓の冠動脈まで到達させて治療を行うものである。そして、この冠動脈インターベンション治療用のデバイスとして、ステントが使用される。このステントは、ステンレス等の金属で作成された医療器具であり、風船を利用して拡張された冠動脈の狭窄部分に留置して血管を内腔から保持することで、カテーテル治療の治療効果を向上させるためのものである。この場合に、例えば、以前に留置したステントと新しく留置するステントとの間にわずかな隙間が生じた場合等においては、その隙間が血管狭窄の原因となる可能性があることから、ステントの位置を正確に認識することは、冠動脈インターベンション治療において極めて重要な要素となっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そこで、従来の構成によれば、ライブ像を形成する各放射線撮影像(フレーム)をステントマーカを基準に重ね合わせることによりステントとその近傍の様子が明確となった画像を生成するようにしている。この画像は、各フレームよりもより明確に被検体のステントとその近傍が写り込んでいる。
【0004】
この合成画像の生成方法について具体的に説明する。ライブ像を構成する各フレームは、画像解析され、各フレーム上のステントマーカの位置が特定される。そして、各フレームに写り込むステントマーカ同士が同じ位置に来るように各フレームが移動処理および回転処理される。ステントマーカを基準に位置と傾斜が調整された各フレームは重ね合わせられ、重合フレームが生成される。この重合フレームには、各フレーム上のステントが重ねられてより鮮明となったステントが写り込んでいる。この重合フレームはより見やすくする目的で拡大されるので表示の前にトリミング処理を施す必要がある。すなわち、重合フレームにおけるステントが写り込んでいる部分がトリミングされてトリミングフレームが生成される。このトリミングフレームは、重合フレームに小さく写り込むステントを重合フレームから抜き出して大きく表示したような画像となっている。
【0005】
このトリミングフレームは、ライブ像を撮影または、透視している間に逐次更新され、トリミングフレームを表示するモニタは、常に最新のトリミングフレームを表示する構成となっている。したがって、モニタは、動画を構成するフレームとしてこのトリミングフレームを扱って表示する。このトリミングフレームに係る動画は、ライブ像に小さく写り込むステントを鮮明かつ大きくしたものを経時的に追跡するような動画となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−022733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には、次のような問題がある。
すなわち、従来装置によればステントとその周辺部を抜き出した動画の表示(向き)が安定せず、術者の混乱を招来してしまう。
【0008】
ステントは、写り込む位置と方向を変えながらライブ像に写り込んでいる。このステントは、たいていは被検体の鼓動に合わせてライブ像の中を平行移動するのみであり、ステントの位置さえ分かれば、各フレームに写り込むステントを位置合わせして重ね合わせる画像処理はそれほど困難ではない。
【0009】
しかし、ステントの向きを正確に把握した上で各フレームの重ね合わせができるかというと、これは必ずしも容易とは言えない。この問題について説明する。図26では、ライブ像を構成する3つのフレームF1,F2,F3に基づいてトリミングフレームが生成される様子を示している。従来装置によれば、各フレームF1,F2,F3に写り込むステントの両端に注目してフレームの移動および回転動作を実行するようにしている。ステントの両端のうち、動脈側の端を端Aとし、静脈側にある一端を端Bとする。したがって、ステントが設けられている血管の血液は端Aから端Bに向けて流れる。
【0010】
各フレームF1,F2,F3には、このステントが位置を変えながら写り込んでいる。従来装置は、フレームに写り込むステントの両端のうち上側に位置する端同士、下側に位置する端同士がそれぞれ重なり合うように各フレームF1,F2,F3の位置と傾斜を揃えて重合フレームを生成する。図26の場合、各フレームF1,F2,F3に写り込むステントの上端は、全て動脈側の端Aとなっているので、各フレーム上のステントは端A同士が重ねられて重合フレームが生成される。また、各フレームF1,F2,F3に写り込むステントの下端は、全て静脈側の端Bとなっているので、各フレーム上のステントは端B同士が重ねられて重合フレームが生成される。この重合フレームに写り込むステントは、各フレームと同じく上側が端A,下側が端Bとなっている。なお、説明を簡単にするため、図26においては、重合フレームの生成にはフレームの回転動作を必要しないものとする。
【0011】
こうして生成された重合フレームは、トリミング処理を受けることになる。トリミング処理により得られるトリミングフレームは、例えば縦長の画像となっており、中央に縦方向に伸びたステントが写り込んでいる。このとき、ステントの両端のうちどちらをトリミングフレームの上に持って行くかという問題がある。従来装置によれば、例えば、トリミングフレームにおけるステントの方向は、重合フレームに写り込むステントの両端のうち、重合フレームの上側に位置するものがトリミングフレームの上になるように決定される。図26の場合、重合フレームに写り込むステントは、上側が端Aとなっている。したがって、トリミングフレームにおけるステントの方向は、端Aが上側となり端Bが下側となるように決定される。トリミングフレームのステントは、図26中の矢印が示すように血流が上方向から下方向に向けて流れる方向に写り込んでいる。
【0012】
ここで、ライブ像に係る撮影方向を術者が調整したとする。そして、ライブ像に写り込む被検体がこの調整によって回転したものとする。すると、図27に示すように、回転前にライブ像の上側に位置していたステントの端Aが回転により下側に移動し、回転前にライブ像の下側に位置していたステントの端Bが回転により上側に移動するような変化が起こりえる。
【0013】
図27のようなステントの写り方の変化があった後に生成された図28に示す各フレームF4,F5,F6に基づいてどのようなトリミングフレームが生成されるかを考える。従来装置は、フレームに写り込むステントの両端のうち上側に位置する端同士、下側に位置する端同士がそれぞれ重なり合うように各フレームF4,F5,F6の位置と傾斜を揃えて重合フレームを生成する。図28の場合、各フレームF4,F5,F6に写り込むステントの上端は、全て静脈側の端Bとなっているので、各フレーム上のステントは端B同士が重ねられて重合フレームが生成される。また、各フレームF4,F5,F6に写り込むステントの下端は、全て動脈側の端Aとなっているので、各フレーム上のステントは端A同士が重ねられて重合フレームが生成される。この重合フレームに写り込むステントは、各フレームと同じく上側が端B,下側が端Aとなっている。
【0014】
こうして生成された重合フレームは、トリミング処理を受けることになる。トリミング処理により得られるトリミングフレームは、上述のように縦長の画像である。従来装置によれば、トリミングフレームにおけるステントの方向は、重合フレームに写り込むステントの両端のうち、重合フレームの上側に位置するものがトリミングフレームの上になるように決定される。図28の重合フレームに写り込むステントは、上側が端Bとなっているので、トリミングフレームにおけるステントの方向は、端Bが上側となり端Aが下側となるように決定される。トリミングフレームのステントは、図28中の矢印が示すように血流が下方向から上方向に向けて流れる方向に写り込んでいる。
【0015】
ここで、図26に係るトリミングフレームと図28に係るトリミングフレームは、一方のトリミングフレームを180°回転させるともう一方のトリミングフレームになるという互いにひっくり返し(逆転)の関係になっていることに気が付く。図26のトリミングフレームと、図28のトリミングフレームは、一見同じようなものに見えるが、実はトリミングフレームに写り込むステントの上端は、図26図28とで同じものではない。図26における上端は、端Aであり、図28における上端は端Bである。つまり、各トリミングフレームを動画のフレームとして表示している間に図29に示すようなステントの向きが逆になってしまうことがある。
【0016】
このように動画が表示中にトリミングフレーム上のステント像が逆転してしまうことを許容するような構成は、術者の作業をやりにくくする。ステントの静脈側について作業をすべく、術者は動画の上側を見ていたのに、ある時から動画に写り込むステントの向きが逆転し動画の下側を見ながら作業を行わなければならないからである。動画の逆転が起こると、これに伴い左右の関係もあべこべになるので、術者はさらに混乱する。
【0017】
この様なトリミングフレームに係る動画(トリミング像)の逆転は、ライブ像に係る撮影方向を術者が調整したときのみに生じるとは限らない。図30に示すように、ステントがライブ像に横向きに写り込んでいる場合、トリミング像の逆転が起こることがある。この逆転が起こる原理について説明する。ステントは、ライブ像において傾斜角度を僅かに変化させながら写り込んでいる。このとき、図30に示すように、動画におけるステントの右端が上側になったり下側になったりする。この様なライブ像におけるステントの上下関係が安定しない場合、トリミングフレームに係る動画の表示も安定せず、動画の逆転が度々起こることになる。
【0018】
つまり、従来装置では、トリミングフレームを生成する際、重合フレームを回転させるような編集が必要となる。重合フレームに写りこむステントが真横を向いている場合、およびステントが左下から右上に延びるように写りこんでいる場合は、重合フレームは、時計まわりに回転される。一方、ステントが左上から右下に延びるように写りこんでいる場合は、重合フレームは、反時計まわりに回転される。したがって、ステントがどの方向に傾いて写りこんでいるかで、トリミングフレームで上にくるステントの端が血管の上流側であったり下流側であったりする。つまり、トリミングフレームに係る動画は写りこむステントが再生の途中から表示が逆さまになることになり、視認性が低いものとなってしまう。
【0019】
また、重合フレームに写りこむステントの形状によっては、どちらの端がステントにおける血管の上流側でどちらが血管の下流側であるかは判断できない。ステントは左右対称である場合がほとんどだからである。
【0020】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ライブ像に写り込むステント像を拡大表示した動画において、ステント像が逆転する現象を防止することにより視認性が改善された放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過してきた放射線を検出する検出手段と、検出手段が出力する検出信号を元に元フレームを生成する元フレーム生成手段と、連続的に生成される元フレームに写り込んでいる物体の位置を示す複数の特徴点を認識して、対応する特徴点同士が互いに重なり合うように元フレーム同士の位置合わせする位置合わせ処理手段と、位置合わせ処理がされた元フレーム同士を重ね合わせることにより物体の像が互いに重なり合った重合フレームを繰り返し生成する重合フレーム生成手段と、連続的に生成される重合フレームに写り込む特徴点のうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を重合フレームの各々について繰り返し実行する編集手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]本発明によれば、ライブ像に写り込むステント像を拡大表示した動画において、ステント像が逆転する現象を防止することにより視認性が改善された放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明は、ライブ像の元となる元フレームを重合して生成した重合フレームに写り込む物体の位置を示す複数の特徴点のうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を実行する編集手段を備えている。この編集手段により連続的に生成される重合フレームを編集していけば、編集後のフレームには物体が常に同じ向きに写り込むことになる。従って、従来で見られたような動画再生中に表示対象の物体が反転してしまうことが起こらない。
本発明は、表示対象の反転を防止することができるので、血管造影に向いている。血管造影では重合フレームに血管を写し出すことになる。従来構成のように重合フレームの表示が反転すると、重合フレームに写り込む血管も反転し、重合フレームに写り込む血管の下流と上流とが入れ替わる。この様な事態となれば、重合フレームのどちらが心臓側なのか分からなくなり、施術がしにくい。本発明によれば、重合フレームの表示が反転することがないので、重合フレームに写り込む血管の上流と下流が入れ替わることがなく、施術は行いやすいものとなる。
【0023】
また、上述の放射線撮影装置において、編集手段は、重合フレームに写り込む特徴点のうち編集の基準となるものを特徴点の位置関係または術者の指示に基づいて決定すればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。すなわち、重合フレームに写り込む特徴点のうち編集の基準となるものを特徴点の位置関係または術者の指示に基づいて決定すれば、編集手段は、より確実に動作することができる。
【0025】
また、上述の放射線撮影装置において、編集手段は、物体を含む矩形の領域を残すようにトリミング処理を重合フレームの各々に施すことにより物体が大きく写り込んだトリミングフレームを重合フレームごとに繰り返し生成することにより動作すればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。編集手段がトリミングフレームを生成するように動作すれば、物体を視認するときに不必要な周辺部がトリミングされるので、物体の視認性はさらによくなる。
【0027】
また、上述の放射線撮影装置において、重合フレームに写り込む物体の上端および下端がフレームの上下左右のいずれに現れるかを定めることで編集の向きを決める上下基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていればより望ましい。
【0028】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。上述の構成によれば、重合フレームの編集の向きの決定の様式が物体の上下の位置関係に注目した上下基準モードを選べるようになっている。物体の左右関係が頻繁に逆転するライブ像においては、物体の上下関係は安定している。この場合、上下基準モードを選べばフレーム上の物体は反転しない。
【0029】
また、上述の放射線撮影装置において、上下基準モードが選択された場合における編集手段は、重合フレームに写り込んだ物体における上側の端がフレームの上端に現れ、重合フレームに写り込んだ物体における下側の端がフレームの下端に現れるように編集の向きを決めるようにしてもよい。
【0030】
また、上述の放射線撮影装置において、重合フレームに写り込む物体の右端および左端がフレームの上下左右のいずれに現れるかを定めることで編集の向きを決める左右基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていればより望ましい。
【0031】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。上述の構成によれば、重合フレームの編集の向きの決定の様式が物体の左右の位置関係に注目した左右基準モードを選べるようになっている。物体の上下関係が頻繁に逆転するライブ像においては、物体の左右関係は安定している。この場合、左右基準モードを選べばフレーム上の物体は反転しない。
【0032】
また、上述の放射線撮影装置において、左右基準モードが選択された場合における編集手段は、重合フレームに写り込んだ物体における右側の端がフレームの上端に現れ、重合フレームに写り込んだ物体における左側の端がフレームの下端に現れるように編集の向きを決めるようにしてもよい。
【0033】
また、上述の放射線撮影装置において、左右基準モードが選択された場合における編集手段は、重合フレームに写り込んだ物体における右側の端がフレームの右端に現れ、重合フレームに写り込んだ物体における左側の端がフレームの左端に現れるように編集の向きを決めるようにしてもよい。
【0034】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。すなわち、本発明の上下基準モードをフレーム上の向きを物体の上端および下端がフレーム上の上側および下側のそれぞれに現れるように設定することができる。また、本発明の左右基準モードをフレーム上の向きを物体の右端および左端がフレーム上の右側および左側のそれぞれに現れるように設定することができる。同様に、本発明の左右基準モードをフレーム上の向きを物体の右端および左端がフレーム上の上側および下側のそれぞれに現れるように設定することができる。いずれのフレーム上の向きの決め方がよいかは、フレームを表示するときの画面上のレイアウトによって変わる。術者は、最も視認がしやすいフレームの向きの決め方を選択することができる。
【0035】
また、上述の放射線撮影装置において、重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち術者が指定したものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める特徴点指定モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていればより望ましい。
【0036】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。上述の構成によれば、重合フレームの編集の向きの決定の様式が術者指定の特徴点に注目した特徴点指定モードとの間で選べるようになっている。特徴点指定モードを選択するとフレーム上の物体は反転しない。
【0037】
また、上述の放射線撮影装置において、重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち重合フレーム上の基準点に近いものおよび遠いものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める基準点基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていればより望ましい。
【0038】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。上述の構成によれば、重合フレームの編集の向きの決定の様式が重合フレーム上の基準点と特徴点との距離に注目した基準点基準モードを選べるようになっている。このモードによれば、物体が回転してもフレーム上の物体は反転しない。
【0039】
また、上述の放射線撮影装置において、重合フレームに写り込む複数の特徴点のうち重合フレーム上に定められた範囲に属するものがフレームの上下左右のいずれかに現れるかを定めることで編集の向きを決める領域基準モードを選ぶ術者の選択を入力させる入力手段を備えていればより望ましい。
【0040】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。上述の構成によれば、重合フレームの編集の向きの決定の様式が重合フレームにおける特徴点の位置に注目した領域基準モードを選べるようになっている。このモードによれば、重合フレームに複数の物体が写り込んでいてもフレーム上の物体は反転しない。
【0041】
また、上述の放射線撮影装置において、物体は、ステントであればより望ましい。
【0042】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。物体がステントであれば、本発明に係る編集後のフレームは元フレームのごく一部に写り込んだステントを抜き出したフレームとなる。この様なフレームは術者の操作を効果的に手助けするものである。したがって、上述の構成によれば、術者の操作がしやすくなるように改良された放射線撮影装置が提供できる。
【0043】
また、上述の放射線撮影装置において、元フレームにより構成される動画であるライブ像と編集後のフレームにより構成される動画とを並べて表示する表示手段を備えればより望ましい。
【0044】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な構成を表したものとなっている。元フレームにより構成される動画であるライブ像と編集後のフレームにより構成される動画であるトリミング像とが並べられて表示手段に表示されれば、術者はどちらの像も参照しながら操作を行うことができる。したがって、上述の構成によれば、術者の操作がしやすくなるように改良された放射線撮影装置が提供できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、ライブ像に写り込むステント像を拡大表示した動画において、ステント像が逆転する現象を防止することにより視認性が改善された放射線撮影装置が提供できる。すなわち、本発明は、ライブ像の元となる元フレームを重合して生成した重合フレームに写り込む物体の位置を示す複数の特徴点のうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を実行する編集手段を備えている。この編集手段により連続的に生成される重合フレームを編集していけば、編集後のフレームには物体が常に同じ向きに写り込むことになる。従って、従来で見られたような動画再生中に表示対象の物体が反転してしまうことが起こらない。
本発明は、表示対象の反転を防止することができるので、血管造影に向いている。血管造影では重合フレームに血管を写し出すことになる。従来構成のように重合フレームの表示が反転すると、重合フレームに写り込む血管も反転し、重合フレームに写り込む血管の下流と上流とが入れ替わる。この様な事態となれば、重合フレームのどちらが心臓側なのか分からなくなり、施術がしにくい。本発明によれば、重合フレームの表示が反転することがないので、重合フレームに写り込む血管の上流と下流が入れ替わることがなく、施術は行いやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施例1に係るX線撮影装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
図2】実施例1に係るライブ像を説明する模式図である。
図3】実施例1に係る元フレームの位置合わせを説明する模式図である。
図4】実施例1に係る元フレームの位置合わせを説明する模式図である。
図5】実施例1に係る重合フレームの生成を説明する模式図である。
図6】実施例1に係るトリミングフレームの生成を説明する模式図である。
図7】実施例1に係る上下基準モードを説明する模式図である。
図8】実施例1に係る左右基準モードを説明する模式図である。
図9】実施例1に係る左右基準モードを説明する模式図である。
図10】実施例1に係る各フレームが経時的に生成されていく様子を説明する模式図である。
図11】実施例1に係る上下基準モードの有効性を説明する模式図である。
図12】実施例1に係る左右基準モードの有効性を説明する模式図である。
図13】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
図14】実施例1に係る表示部について説明する模式図である。
図15】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図16】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図17】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図18】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図19】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図20】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図21】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図22】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図23】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図24】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図25】本発明の1変形例の構成を説明する模式図である。
図26】従来構成の放射線撮影装置について説明する模式図である。
図27】従来構成の放射線撮影装置の問題点について説明する模式図である。
図28】従来構成の放射線撮影装置の問題点について説明する模式図である。
図29】従来構成の放射線撮影装置の問題点について説明する模式図である。
図30】従来構成の放射線撮影装置の問題点について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、発明を実施するための形態について、実施例を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0048】
以降、本発明における最良の形態について説明する。実施例におけるX線は、本発明の放射線に相当する。また、FPDは、フラット・パネル・ディテクタの略である。本発明のX線撮影装置1は、血管狭窄治療用であるものである。本発明の特徴を効果的に説明するには、以前の手術で血管内に置かれたステントを動画で観察する場合を考えるのが適切であるので、本実施例では、この場合について説明する。
【0049】
<X線撮影装置の全体構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように被検体Mを載置する天板2と、天板2の上側に設けられたX線を被検体Mに向けて照射するX線管3と、天板2の下側に設けられた被検体Mを透過してきたX線を検出するFPD4とを備えている。FPD4は、被検体Mの体軸方向Aまたは体側方向Sのいずれかに沿った4つの辺を有する矩形となっている。また、X線管3は、放射状に広がる四角錐状のX線ビームをFPD4に向けて照射する。FPD4は、X線ビームを全面で受光することになる。FPD4のX線を検出する検出面4aには、X線検出素子が体軸方向Aおよび体側方向Sに2次元的に配列されている。X線管3は、本発明の放射線源に相当する。FPD4は、本発明の検出手段に相当する。
【0050】
X線管制御部6は、所定の管電流、管電圧、パルス幅でX線管3を制御する目的で設けられている。X線管制御部6は、X線管3にX線の照射を繰り返し行うように制御する。FPD4は、X線管3がX線を発する度に被検体Mを透過したX線を検出して検出信号を生成する。この検出信号は、元フレーム生成部11に送出される。元フレーム生成部11は、本発明の元フレーム生成手段に相当する。
【0051】
元フレーム生成部11は、FPD4が出力する検出信号を元に動画の元となる元フレームFを生成する。元フレームFとは、動画を構成する1コマのことであるのでこれ自体は静止画である。この元フレームFは、被検体Mの心臓を全体的に写し込むものであり、前回の手術で被検体Mの冠動脈などに置かれたステントの像(ステント像S)が図2に示すように小さく写り込んでいる。元フレームFから構成される動画をライブ像VLと呼ぶことにする。ライブ像VLは、被検体Mの透視像が動いているように見える動画である。元フレーム生成部11は、X線の照射の度に送られてくる検出信号に基づいて、元フレームFを連続的に生成する。ステント像Sは、本発明の物体に相当する。なお、元フレームFおよびライブ像VL上のステント像Sの両端には、図2に示すような黒い点が写り込んでいる。この2つの黒い点は、画像上におけるステントの位置を示すステントマーカである。このステントマーカは、装置が各種の画像処理を行う時の基準となる。ステントマーカは、本発明の特徴点に相当する。
【0052】
位置合わせ処理部12には、元フレーム生成部11より連続的に生成された元フレームFが送出されている。位置合わせ処理部12は、各元フレームFに写り込んでいる細長状のステント像Sの両端に存在するステントマーカを認識する。そして、各元フレームFにわたって写り込んでいる2つのステントマーカのうち同じもの同士(対応するもの同士)が互いに重なり合うように元フレームF同士の位置合わせする。つまり、位置合わせ処理部12は、元フレームF1,F2,F3……の各々に写り込んでいるステントマーカの位置を特定し、各元フレーム相対的に平行移動および回転させることにより、各元フレーム上のステントの位置を一定にする構成である。この位置合わせ処理部12の動作について説明する。図3は、位置合わせ処理部12が行う動作のうち、各元フレームFの平行移動について説明している。フレームの平行移動動作とは、フレームの傾斜を変更させないで、フレームを基準となるフレームに対して移動させるような動作をいう。また、実際のフレームは画像データなので、物理的に平行移動できるような性質のものではない。フレームの平行移動とは、具体的にはフレームを構成する画素の各々を構成する位置データを書き換えるデータ演算で実現される平行移動である。位置合わせ処理部12は、本発明の位置合わせ処理手段に相当する。
【0053】
位置合わせ処理部12が4つの元フレームF1,F2,F3,F4に対して位置合わせ処理を行うときは、各元フレームFの中で最も後に撮影された元フレームF4を基準のフレームとする。位置合わせ処理部12は、各元フレームFに写り込むステント像Sの両端に位置するステントマーカが基準の元フレームF4からどの程度位置ズレを起こしているかを算出し、この算出結果に基づいて元フレームF1,F2,F3の平行移動を行う。図3では、平行移動後の元フレームFを符号F1p,F2p,F3pで表している。
【0054】
この平行移動により、元フレームF1,F2,F3におけるステント像Sが写り込む位置は、元フレームF4上のステント像Sが写り込む位置に一致するように変更される。
【0055】
図4は、位置合わせ処理部12が行う動作のうち、各元フレームFの回転について説明している。フレームの回転動作とは、フレームの重心の位置を変更させないで、フレームを基準となるフレームに対して回転させるような動作をいう。また、実際のフレームは画像データなので、物理的に回転できるような性質のものではない。フレームの回転とは、具体的にはフレームを構成する画素の各々を構成する位置データを書き換えるデータ演算で実現される回転移動である。
【0056】
位置合わせ処理部12が4つの元フレームF1,F2,F3,F4に対して位置合わせ処理を行うときは、各元フレームFの中で最も後に撮影された元フレームF4を基準のフレームとする。位置合わせ処理部12は、各元フレームFに写り込むステントマーカ像が基準の元フレームF4からどの程度回転しているかを算出し、この算出結果に基づいて元フレームF1,F2,F3の回転を行う。図4では、回転後の元フレームFを符号F1p,F2p,F3pで表している。
【0057】
この回転により、元フレームF1,F2,F3に写り込むステント像Sの傾斜は、元フレームF4上に写り込むステント像Sの傾斜に一致するように変更される。
【0058】
実際の位置合わせ処理部12は、元フレームF1,F2,F3の平行移動と回転とを同じ処理の中で実行する。位置合わせ処理部12は、各フレームを画像解析して、ステント像Sの両端の位置を各フレームのそれぞれについて算出する。ステントの両端には、X線を透過しにくいステントマーカが設けられているので、各フレーム上のステントの両端の位置は容易に算出できる。また、ステントマーカを設けていないステントであっても、特徴点の抽出処理により比較的容易に各フレーム上のステントの両端の位置を算出できる。ステントは金属などを含んでおり、それ自体がX線を透過しにくい性質がある。したがって、各フレームには、ある程度はっきりとステントが写り込んでいるのである。
【0059】
位置合わせ処理部12は各フレームに写り込むステント像Sの両端の位置の算出結果から、両端を結ぶ線分の位置と傾斜角度を求め、これらが元フレームF4とその他の元フレームF1,F2,F3との間でどの程度異なるかを算出する。位置合わせ処理部12はこの算出結果に基づき、元フレームF1,F2,F3を元フレームF4に対し平行移動および回転させる。
【0060】
位置合わせ処理部12の算出結果は、重合フレーム生成部13に送出される。重合フレーム生成部13は、位置合わせ処理がされた元フレームF同士を重ね合わせることにより物体の像(ステント像S)が互いに重なり合った重合フレームFgを繰り返し生成する。すなわち、重合フレーム生成部13は、図5に示すように元フレームF4と位置合わせがされた元フレームF1p,F2p,F3pとの4枚のフレームを互いに重ね合わせて元フレームF1に係る重合フレームFg1を生成する。元フレームF1p,F2p,F3p,F4のそれぞれには、同じ位置に同じ傾斜のステント像Sが写り込んでいる。したがって、重合フレームFg1には、元フレームFに写り込む4つのステント像Sが重ねられたステント像Sが写り込む。このステント像Sは、元フレームF上のステント像SよりもS/N比が改善された視認性に優れたものとなっている。重合フレーム生成部13は、本発明の重合フレーム生成手段に相当する。
【0061】
重合フレームFg1は、トリミング部14に送出される。トリミング部14は、重合フレームFg1に画像解析を施して、重合フレームFg1におけるステント像Sの両端の位置を認識する。そしてトリミング部14は、図6の左側に示すように、ステント像Sを含むように矩形の領域Rを重合フレームFg1上に設定する。この矩形の領域Rは、細長状のステント像Sの伸びる方向に細長状となっており、ステント像Sと同じだけ傾斜している。また、矩形の領域Rは、ステント像Sが矩形の領域Rの中央に位置するように設定される。重合フレームFg1に写り込むステント像Sの両端の位置は、上述の位置合わせ処理部12でも説明したように、画像解析により比較的容易に取得できる。このとき用いられる画像解析としては具体的にはエッジ強調処理による特徴点抽出法などがある。トリミング部14は、本発明の編集手段に相当する。
【0062】
トリミング部14は、この矩形の領域Rを取り出すようなトリミング処理を重合フレームFg1に施し、取り出した矩形の領域Rを新たにトリミングフレームFtr1として独立させる。このように、トリミング部14は、重合フレームFgの各々に写り込んでいる細長状の物体(ステント像S)の両端を認識して、物体の像を含む矩形の領域を残すようにトリミング処理を重合フレームFgの各々に施すことにより物体が大きく写り込んだトリミングフレームFtrを重合フレームFgごとに繰り返し生成する。このとき、図6の左側に示す斜め方向を向いている矩形の領域Rの傾斜をキャンセルして図6の右側に示すようなステント像Sが画像の上下に伸びるように写り込んだトリミングフレームFtr1を生成する必要がある。その際、領域Rのどの部分をトリミングフレームFtr1の上とするかが問題となる。トリミング部14は、トリミングフレームFtr1の向きを決めてフレームの生成を行う必要がある。
【0063】
<本発明の最も特徴的な構成>
ここで、本発明の最も特徴的な構成について説明する。本発明のトリミング部14は、トリミングフレームFtr1の向きの決め方に特徴がある。すなわち、トリミング部14は、3つのモードのうちのいずれかによりトリミングフレームFtr1の向きを決める。この3つのモードとは、上下基準モードMVと左右基準モードMHおよびステントマーカ指定モードのことであり、術者は、この3つのモードから1つを選択することができる。トリミング部14はこの術者のモード選択に基づいていずれかのモードで動作する。
【0064】
<上下基準モードMV>
トリミング部14がトリミングフレームFtr1の向きを決める方法の1つである上下基準モードMVについて説明する。図7は、このモードによりトリミング部14が動作する様子を示している。トリミング部14は、重合フレームFg1上の領域Rに写り込むステント像Sの両端A,Bのうち、どちらが上側にあり、どちらが下側にあるかを判定する。図7の場合、重合フレームFg1においてフレームの上側にあるのは、端Aであり、下側にあるのは端Bである。トリミング部14は、上側の端AがトリミングフレームFtr1の上側に、下側の端BがトリミングフレームFtr1の下側になるようにトリミングフレームFtr1の向きを決定する。こうして、縦長のトリミングフレームFtr1が生成される。この上下基準モードMVは、重合フレームFgに写り込むステントマーカ像に基づいて、ステントの上端および下端がトリミングフレームFtrの上下左右のいずれに現れるかを定めることでトリミングフレームFtrの向きを決めるモードである。
【0065】
<左右基準モードMH>
トリミング部14がトリミングフレームFtr1の向きを決める方法の1つである左右基準モードMHについて説明する。図8は、このモードによりトリミング部14が動作する様子を示している。トリミング部14は、重合フレームFg1上の領域Rに写り込むステント像Sの両端A,Bのうち、どちらが右側にあり、どちらが左側にあるかを判定する。図8の場合、重合フレームFg1においてフレームの右側にあるのは、端Aであり、左側にあるのは端Bである。トリミング部14は、右側の端AがトリミングフレームFtr1の右側に、左側の端BがトリミングフレームFtr1の左側になるようにトリミングフレームFtr1の向きを決定する。こうして、横長のトリミングフレームFtr1が生成される。この左右基準モードMHは、重合フレームFgに写り込むステントマーカ像に基づいて、ステントの右端および左端がトリミングフレームFtrの上下左右のいずれに現れるかを定めることでトリミングフレームFtrの向きを決めるモードである。
【0066】
上述の左右基準モード選択時におけるトリミング部14は、次のように動作することも可能である。図9は、図8とは異なる様式の左右基準モードMHによりトリミング部14が動作する様子を示している。トリミング部14は、重合フレームFg1上の領域Rに写り込むステント像Sの両端A,Bのうち、どちらが右側にあり、どちらが左側にあるかを判定する。図9の場合、重合フレームFg1においてフレームの右側にあるのは、端Aであり、左側にあるのは端Bである。ここまでは、図8の説明と同様である。トリミング部14は、右側の端AがトリミングフレームFtr1の上側に、左側の端BがトリミングフレームFtr1の下側になるようにトリミングフレームFtr1の向きを決定する。こうして、図8とは異なり、縦長のトリミングフレームFtr1が生成されることになる。
【0067】
<ステントマーカ指定モード>
トリミング部14がトリミングフレームFtr1の向きを決める方法の1つであるステントマーカ指定モードについて説明する。これは、現在表示中のトリミングフレームに写りこむステントマーカ像のいずれかを術者が選択し、選択されたステントマーカを常にトリミングフレームの上側または下側に表示させるような構成である。術者にステントマーカを選択させるときのトリミングフレームは、現在表示中のものでなくてもよく、過去に得られたトリミングフレームであってもよい。この場合、表示部25にステントマーカを選択させる目的で過去のトリミングフレームが別ウィンドウで表示されることになる。ステントマーカの選択は、操作卓26に付属のマウス、キーボードで行うようにすることもできれば、操作卓26に付属のタッチパネルで行うようにすることもできる。なお、選択されたステントマーカをトリミングフレームのどちらに表示させるかは、術者が操作卓26を通じた操作により選択することができる。
【0068】
従って、このモードによれば、トリミングフレームの生成は、はじめは従来装置と同様な方法または、上述の上下基準モードMV,左右基準モードMHで生成される。ステントマーカ像の選択後、表示部25の表示は、ステントマーカ指定モードに移行する。
【0069】
ステントマーカ指定モードによりトリミングフレームを生成する場合、元となる重合フレームFgに写り込む2つのステントマーカ像のうちどちらが術者の指定したものなのかを決定する必要がある。この決定をどのように行うかについて説明する。ステントマーカを選択した際に用いられたトリミングフレームには元になった重合フレームがある。この重合フレームを基準重合フレームと呼ぶことにする。そして、術者の選択の後、重合フレームが新たに得られたものとする。この新たな重合フレームに基づいてトリミングフレームを生成する場合を考える。基準重合フレームと新たな重合フレームとには、いずれにも2つのステントマーカ像が写り込んでいる。このうち、基準重合フレームに写り込むステントマーカ像のうち術者が選択したものをAとし選択しなかったものをBとする。両重合フレームにはいずれも同じステントマーカが写り込んでいるには違いないが、写り込む位置は異なる。
【0070】
新たな重合フレームに写り込むステントマーカのうちどちらかがAでどちらかがBのはずである。トリミング部14は、新たな重合フレームに写り込むステントマーカの一方がAで他方がBである場合と、ステントマーカの一方がBで他方がAである場合との2通りを仮定する。そして、トリミング部14は、どちらの仮定のほうが基準重合フレーム上のステントマーカがより移動しないで実現できるかをステントマーカA,Bの移動距離の和を各仮定について算出することで選択する。そして、トリミング部14は、選択された仮定に基づいて新たな重合フレームに写り込むステントマーカの特定を行い、この結果に基づいてトリミングフレームの方向を決定する。
【0071】
上述のトリミング部14は、術者になされたモードの選択に従い、トリミングフレームFtrの向きを決めながら重合フレームFgの各々についてトリミングフレームFtrの生成を繰り返すことになる。例えば、図9で説明した左右基準モードMHが選択された場合におけるトリミング部14は、重合フレームFgに写り込んだ物体における右側の端がトリミングフレームFtrの右端に現れ、重合フレームFgに写り込んだ物体における左側の端がトリミングフレームFtrの左端に現れるようにトリミングフレームFtrの向きを決める。
【0072】
このように、トリミング部14は、連続的に生成される重合フレームFgに写り込むステントマーカのうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を重合フレームFgの各々について繰り返し実行することによりトリミングフレームFtrを生成する。このときのトリミング部14は、重合フレームFgに写り込むステントマーカのうち編集の基準となるものをステントマーカ同士の位置関係または術者の指示に基づいて決定する。
【0073】
<本発明の効果>
この様にトリミングフレームFtr1の向きの決定に関し3つのモードを選べる構成とすれば、トリミングフレームFtrで構成される動画であるトリミング像VTの視認がしやすくなるのでこの点について説明する。
【0074】
まずは、トリミング像VTについて説明する。トリミング像VTとは、連続的に生成されるトリミングフレームFtrから構成される動画である。上述の図3図4図5に係る重合フレームFg1は、実は、元フレームFが新しく作られる度に繰り返されている。トリミングフレームFtrも重合フレームFgが生成される度に繰り返されるので、トリミングフレームFtrは、元フレームFの生成が止むまで連続的に生成される。トリミング像VTは、得られたトリミングフレームFtr時系列順に結合して作られた動画であり、ステント像Sやステント像Sの周縁部が変化する様子を写し込んだ動画となっている。
【0075】
図10は、トリミング像VTの生成方法について説明した図である。元フレームFは、F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7の順に連続的に生成されていくものとする。図10の上段は、元フレームF4まで生成された時点を表しており、元フレームF5は生成中である。この時点で重合フレームFg1が4枚の元フレームF1,F2,F3,F4を重合することで生成される。トリミングフレームFtr1は、この重合フレームFg1にトリミング処理を施すことで生成される。なお、図10において、重合フレームFg1が4枚の元フレームFを重ね合わせて生成されるように説明なされている。この様に説明することにより同じく4枚の元フレームFを重ね合わせて重合フレームFg1が生成されるとした図2図3図4図5に係る説明との間で整合がとられている。重合フレームFg1に写り込むステント像Sの向きは、重合フレームFg1生成当時最新の元フレームF4におけるステント像Sの向きに依存する。
【0076】
また、図10の中段は、元フレームF5まで生成された時点を表しており、元フレームF6は生成中である。この時点で重合フレームFg2が4枚の元フレームF2,F3,F4,F5を重合することで生成される。トリミングフレームFtr2は、この重合フレームFg2にトリミング処理を施すことで生成される。重合フレームFg2に写り込むステント像Sの向きは、重合フレームFg2生成当時最新の元フレームF5におけるステント像Sの向きに依存する。
【0077】
そして、図10の下段は、元フレームF6まで生成された時点を表しており、元フレームF7は生成中である。この時点で重合フレームFg2が4枚の元フレームF3,F4,
F5,F6を重合することで生成される。トリミングフレームFtr3は、この重合フレームFg3にトリミング処理を施すことで生成される。重合フレームFg3に写り込むステント像Sの向きは、重合フレームFg3生成当時最新の元フレームF6におけるステント像Sの向きに依存する。
【0078】
この様に、重合フレーム生成部13は、最近撮影された4枚の元フレームFを重ね合わせることで、重合フレームFgを連続的に生成する。トリミング部14は、最近生成された1枚の重合フレームFgにトリミング処理を施すことでトリミングフレームFtrを生成する。
【0079】
続いて、上下基準モードMVと左右基準モードMHがどのように選択すればよいかという点について説明する。本発明によれば、重合フレームFgに写り込むステント像Sに適したモードを術者が選択可能となっている。上下基準モードMVが有利となるステント像Sの具体例と左右基準モードMHが有利となるステント像Sの具体例とのそれぞれについて説明する。
【0080】
<上下基準モードMVが有利な場合>
図11は、上下基準モードMVが有利となるステント像Sについて説明している。図11の上段に示すように、重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが縦向きに写り込んでいる場合、上下基準モードMVに従ってトリミングフレームFtr1〜Ftr5を生成した方が有利である。この理由について説明する。重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが縦向きに写り込んでいる場合、ステント像Sの両端は、重合フレームFg1〜Fg5の間で多少揺れ動くように写り込んではいる。しかし、ステントの両端の位置が上下に逆転することはない。すなわち、重合フレームFg1〜Fg5を通じてステント像Sの端Aは、常にフレームの上側にあり、ステント像Sの端Bは、常にフレームの下側にある。
【0081】
上下基準モードMVが選択された場合におけるトリミング部14は、重合フレームFgに写り込んだ物体における上側の端がトリミングフレームFtrの上端に現れ、重合フレームFgに写り込んだ物体における下側の端がトリミングフレームFtrの下端に現れるようにトリミングフレームFtrの向きを決める。
【0082】
したがって、上下基準モードMVによれば、重合フレームFg1〜Fg5に写り込んだステント像Sの両端A,Bのうち、上側の端がトリミングフレームFtrの上側に、下側の端がトリミングフレームFtrの下側になるようにフレームの向きが決められる。したがって、上下基準モードMVの基で生成されたトリミングフレームFtr1〜Ftr5には、図11の中段に示すように、ステント像Sの端Aが常に上側にあり、端Bが常に下側にある。つまり、トリミングフレームFtr1〜Ftr5に基づいて生成されるトリミング像VTは、ステント像Sが逆転することがない。
【0083】
一方、左右基準モードMHによれば、重合フレームFg1〜Fg5に写り込んだステント像Sの両端A,Bのうち、右側の端がトリミングフレームFtrの例えば上側に、左側の端がトリミングフレームFtrの例えば下側になるようにフレームの向きが決められる。図11の上段を参照すると、重合フレームFg1〜Fg3は、端Aがフレームの右側に端Bがフレームの左側にあったのに、重合フレームFg4〜Fg5は、端Aがフレームの左側に端Bがフレームの右側に位置が変更している。このように、重合フレームFgに縦向きにステント像Sが写り込んでいる場合は、ステント像Sの右端と左端の関係は逆になりやすいのである。重合フレームFgにおけるステント像Sが僅かに傾斜するだけで、ステント像Sの両端が持っていたどちらが左でどちらが右かであるかの関係は簡単に崩れてしまう。
【0084】
したがって、左右基準モードMHの基で生成されたトリミングフレームFtr1〜Ftr3にはステント像Sが、図11の下段に示すように、端Aが上側に位置し、端Bが下側に位置するように写り込んでいる。一方、トリミングフレームFtr4〜Ftr5にはステント像Sが、端Aが下側に位置し、端Bが下側に位置するように写り込んでいる。つまり、トリミングフレームFtr1〜Ftr5に基づいて生成されるトリミング像VTは、時折ステント像Sが逆転してしまう。
【0085】
以上のように、重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが縦向きに写り込んでいる場合、上下基準モードMVに従ってトリミングフレームFtr1〜Ftr5を生成した方が有利である。トリミングフレームFtr1〜Ftr5の中のステント像Sが逆転しないからである。
【0086】
<左右基準モードMHが有利な場合>
図12は、左右基準モードMHが有利となるステント像Sについて説明している。図12の上段に示すように、重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが横向きに写り込んでいる場合、左右基準モードMHに従ってトリミングフレームFtr1〜Ftr5を生成した方が有利である。この理由は、上述の上下標準モードが縦方向のステント像Sに適していた場合と同様である。重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが横向きに写り込んでいる場合、ステント像Sの両端は、重合フレームFg1〜Fg5の間で多少揺れ動くように写り込んではいる。しかし、ステントの両端の位置が左右に逆転することはない。すなわち、重合フレームFg1〜Fg5を通じてステント像Sの端Aは、常にフレームの右側にあり、ステント像Sの端Bは、常にフレームの左側にある。
【0087】
左右基準モードMHが選択された場合におけるトリミング部14は、重合フレームFgに写り込んだ物体における右側の端がトリミングフレームFtrの上端に現れ、重合フレームFgに写り込んだ物体における左側の端がトリミングフレームFtrの下端に現れるようにトリミングフレームFtrの向きを決める。
【0088】
したがって、左右基準モードMHによれば、重合フレームFg1〜Fg5に写り込んだステント像Sの両端A,Bのうち、右側の端がトリミングフレームFtrの例えば上側に、左側の端がトリミングフレームFtrの例えば下側になるようにフレームの向きが決められる。したがって、左右基準モードMHの基で生成されたトリミングフレームFtr1〜Ftr5には、図12の下段に示すように、ステント像Sの端Aが常に上側にあり、端Bが常に下側にある。つまり、トリミングフレームFtr1〜Ftr5に基づいて生成されるトリミング像VTは、ステント像Sが逆転することがない。
【0089】
一方、上下基準モードMVによれば、重合フレームFg1〜Fg5に写り込んだステント像Sの両端A,Bのうち、上側の端がトリミングフレームFtrの上側に、下側の端がトリミングフレームFtrの下側になるようにフレームの向きが決められる。図12の上段を参照すると、重合フレームFg1〜Fg3は、端Aがフレームの上側に端Bがフレームの下側にあったのに、重合フレームFg4〜Fg5は、端Aがフレームの下側に端Bがフレームの上側に位置が変更している。このように、重合フレームFgに横向きにステント像Sが写り込んでいる場合は、ステント像Sの上端と下端の関係は逆になりやすいのである。重合フレームFgにおけるステント像Sが僅かに傾斜するだけで、ステント像Sの両端が持っていたどちらが上でどちらが下であるかの関係は簡単に崩れてしまう。
【0090】
したがって、上下基準モードMVの基で生成されたトリミングフレームFtr1〜Ftr3にはステント像Sが、図12の中段に示すように、端Aが上側に位置し、端Bが下側に位置するように写り込んでいる。一方、トリミングフレームFtr4〜Ftr5にはステント像Sが、端Aが下側に位置し、端Bが下側に位置するように写り込んでいる。つまり、トリミングフレームFtr1〜Ftr5に基づいて生成されるトリミング像VTは、時折ステント像Sが逆転してしまう。
【0091】
以上のように、重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが横向きに写り込んでいる場合、左右基準モードMHに従ってトリミングフレームFtr1〜Ftr5を生成した方が有利である。トリミングフレームFtr1〜Ftr5の中のステント像Sが逆転しないからである。
【0092】
また、重合フレームFgにおけるステント像Sの向きが、縦向きと横向きの中間の向き(45°傾斜した向き)となっている場合は、どちらのモードもトリミング像撮影に適している。なお、図11,12においては、ステントは矢印として表していたが、これは、説明の便宜のためである。実際のステント像Sは棒状の像である。
【0093】
<X線撮影装置1が有するその他の構成>
X線撮影装置1が有するその他の構成について説明する。表示部25は、X線撮影により取得された各画像を表示する目的で設けられている。操作卓26は、術者によるX線照射開始の指示や、上述の3つのモードのうちの1つを選ぶ術者の選択などを入力させる目的で設けられている。また、主制御部27は、各制御部を統括的に制御する目的で設けられている。この主制御部27は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することによりX線管制御部6および各部11,12,13,14を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。記憶部28は、画像処理に用いられるパラメータ、画像処理に伴って生成される中間画像等のX線撮影装置1の制御に関するパラメータの一切を記憶する。表示部25は、本発明の表示手段に相当し、操作卓26は、本発明の入力手段に相当する。
【0094】
<X線撮影装置の動作>
つづいて、実施例1に係るX線撮影装置の動作について図13のフローチャートを参照しながら説明する。実施例1に係るX線撮影装置で被検体Mの撮影を行うには、まず、被検体Mが天板2に載置される(被検体載置ステップS1)。術者が操作卓26を通じてライブ像VLの撮影の開始の指示を装置に対して行うと、X線管制御部6は、X線の照射をX線管3に開始させる(ライブ像撮影開始ステップS2)。このとき照射されるX線は、連続照射またはパルスの繰り返しとなっており、元フレームFは、連続的に繰り返し取得される。表示部25は、最新の元フレームFを連続的に表示し、X線像を動画として術者に表示する。このとき表示される動画がライブ像VLである。このライブ像VLには、被検体内のステント像Sが写り込んでいるものとする。図14の左側は、表示部25にライブ像VLが写り込んでいる様子を表している。
【0095】
このライブ像VLにステント像Sは、小さく不鮮明に写り込んでおり、しかも、ライブ像VLの中を動き回る。そこで、術者は、ステント像Sをより正確に視認する必要があるものと判断し、操作卓26を通じて、装置にトリミング像VTを表示するよう指示する。すると、操作卓26は、トリミングフレームFtrを上下基準モードMVおよび左右基準モードMHのどちらのモードで生成するかを術者に選択させる表示を付属の操作パネルに表示する。術者は、操作卓26に提示された上下基準モードMV,左右基準モードMH,ステントマーカ指定モードの3つのモードのうちのいずれか1つを選択して、選択結果を操作卓26を通じて装置に入力する(モード入力ステップS3)。
【0096】
図14の左側の場合、ライブ像VL内のステント像Sは、縦方向を向いているので、上下基準モードMVを選択した方が、トリミング像VTにおけるステント像Sの逆転が起こりにくくステント像Sの正確な観察に有利である。ちなみに、ライブ像VL内のステント像Sが横方向を向いている場合は、上下基準モードMVよりも左右基準モードMHを選択した方が、トリミング像VTにおけるステント像Sの逆転が起こりにくくステント像Sの正確な観察に有利である。
【0097】
術者が左右基準モードMHの選択を操作卓26に入力したとすると、重合フレームFgの生成と、これに伴うトリミングフレームFtrの生成が開始され、これが表示部25に表示される(トリミング像表示開始ステップS4)。このとき、トリミング部14は、トリミングフレームFtrの向きを術者の選択したモードに従って決定する。このトリミングフレームFtrは、元フレームFが生成され続けている間は連続的に生成される。これらトリミングフレームFtrの各々についての向きは、全て術者の選択したモードに従って決定されている。表示部25は、最新のトリミングフレームFtrを連続的に表示し、ステント像Sを動画として術者に表示する。このとき表示される動画がトリミング像VTである。トリミング像VTは、中央にステント像Sが写り込んでいる動画となっている。したがって、トリミング像VTには、ステント像Sが曲がるなど形状に変化が見られたり、ステント像Sの周りの血管像に変化が見られたりする。
【0098】
図14の右側は、表示部25にトリミング像VTが写り込んでいる様子を表している。図14の右側が示すように、表示部25はライブ像撮影開始ステップS2からライブ像VLの表示を続けている。表示部25は、トリミング像VTの表示に際し、トリミング像VTとライブ像VLとを重ならないように互いを離した状態で追加的に表示する。ライブ像VLとトリミング像VTとは、互いに同じ時点(現在)のX線像の様子を表したものとなっている。ただし、トリミングフレームFtrは、生成に複数の元フレームFが必要であり、最新の元フレームFのみでは生成できない。したがって、トリミング像VTは、現在のステント像Sに過去のステント像Sが重ね込まれたような像となってはいる。ではあるものの、撮影時刻が近い元フレームF同士にはステント像Sが似たような形状で写り込んでいるので、トリミング像VTは、ほぼ現状のステント像Sを写し込んでいると扱うことができる。
【0099】
このように、表示部25は、元フレームFにより構成される動画であるライブ像VLとフレームの重ね合わせによりS/N比が改善したトリミングフレームFtrにより構成される動画であるトリミング像VTとを並べて表示する。この際、表示部25は、ライブ像VLに写り込むステント像Sよりもトリミング像VTに写り込むステント像Sの方が大きくなるようにライブ像VLよりもトリミング像VTを拡大して表示する。トリミング像VTは、ライブ像VLよりも鮮明な動画であり、拡大表示に耐えうるグレードを有している。
【0100】
術者がライブ像VLの撮影を中止する旨の指示を操作卓26を通じて装置に行うと、X線の照射が止んでライブ像VLの撮影が中止され、トリミング像VTの生成も終了する。これで、本発明に係るX線撮影装置の動作は終了となる。
【0101】
以上のように、本発明によれば、ライブ像VLに写り込むステント像Sを拡大表示した動画において、ステント像Sが逆転する現象を防止することにより視認性が改善されたX線撮影装置1が提供できる。すなわち、本発明は、ライブ像VLの元となる元フレームFを重合して生成した重合フレームFgに写り込む細長上のステント像の位置を示す2つのステントマーカのうちの特定の1つがフレーム上で常に同じ方向に向くようにする編集を実行するトリミング部14を備えている。このトリミング部14により連続的に生成される重合フレームFgを編集していけば、編集後のフレームには物体が常に同じ向きに写り込むことになる。従って、従来で見られたような動画再生中に表示対象の物体が反転してしまうことが起こらない。
【0102】
本発明は、表示対象の反転を防止することができるので、血管造影に向いている。血管造影では重合フレームFgに血管を写し出すことになる。従来構成のように重合フレームFgの表示が反転すると、重合フレームFgに写り込む血管も反転し、重合フレームFgに写り込む血管の下流と上流とが入れ替わる。この様な事態となれば、重合フレームFgのどちらが心臓側なのか分からなくなり、施術がしにくい。本発明によれば、重合フレームFgの表示が反転することがないので、重合フレームFgに写り込む血管の上流と下流が入れ替わることがなく、施術は行いやすいものとなる。
【0103】
本発明によれば、上述のように、本発明の上下基準モードMVをトリミングフレームFtrの向きを物体の上端および下端がトリミングフレームFtrの上側および下側のそれぞれに現れるように設定することができる。また、本発明の左右基準モードMHをトリミングフレームFtrの向きを物体の右端および左端がトリミングフレームFtrの右側および左側のそれぞれに現れるように設定することができる。同様に、本発明の左右基準モードMHをトリミングフレームFtrの向きを物体の右端および左端がトリミングフレームFtrの上側および下側のそれぞれに現れるように設定することができる。いずれのトリミングフレームFtrの向きの決め方がよいかは、トリミングフレームFtrを表示するときの画面上のレイアウトによって変わる。術者は、最も視認がしやすいトリミングフレームFtrの向きの決め方を選択することができる。
【0104】
また、上述のように、元フレームFにより構成される動画であるライブ像VLとトリミングフレームFtrにより構成される動画であるトリミング像VTとが並べられて表示部25に表示されれば、術者はどちらの像も参照しながら操作を行うことができる。したがって、上述の構成によれば、術者の操作がしやすくなるように改良されたX線撮影装置1が提供できる。
【0105】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のように変形実施できる。
【0106】
(1)上述の上下基準モードMVは、重合フレームFgに写り込んだ物体における上側の端がトリミングフレームFtrの上端に現れ、重合フレームFgに写り込んだ物体(ステント像S)における下側の端がトリミングフレームFtrの下端に現れるようにトリミングフレームFtrの向きを決めるようなモードとなっていたが、本発明の構成はこの構成には限られない。上下基準モードMVを重合フレームFgに写り込んだステント像Sにおける上側の端がトリミングフレームFtrの右端に現れ、重合フレームFgに写り込んだ物体における下側の端がトリミングフレームFtrの左端に現れるようにトリミングフレームFtrの向きを決めるようなモードとしてもよい。
【0107】
更に言えば、上下基準モードMVにおける重合フレームFgに写り込んだ物体(ステント像S)における上側の端および下側の端がトリミングフレームFtrの上下左右のどれに位置するかは、トリミング像VTの表示様式に合わせて適宜変更が可能である。この際、ステント像Sの一方の端をトリミングフレームFtrの上または下と定めると、もう一方の端はフレームの下または上に位置することになる。また、ステント像Sの一方の端をトリミングフレームFtrの右または左と定めると、もう一方の端はフレームの左または右に位置することになる。
【0108】
(2)同様に、左右基準モードMHおよびステントマーカ指定モードにおける重合フレームFgに写り込んだ物体における右側の端および左側の端がトリミングフレームFtrの上下左右のどれに位置するかは、トリミング像VTの表示様式に合わせて適宜変更が可能である。この際、ステント像Sの一方の端をトリミングフレームFtrの上または下と定めると、もう一方の端はフレームの下または上に位置することになる。また、ステント像Sの一方の端をトリミングフレームFtrの右または左と定めると、もう一方の端はフレームの左または右に位置することになる。
【0109】
(3)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0110】
(4)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0111】
(5)上述した実施例は、血管狭窄の治療を意識した説明となっていたが、本発明は人工の心臓弁の挿入手術にも適用できる。また、本発明は、すでに体内に挿入されたデバイスの状態を確認をする目的にも用いることができる。
【0112】
(6)上述した実施例では、4枚の元フレームを重合して重合フレームを生成する構成となっていたが、本発明は重合フレームを生成するのに必要な元フレームの枚数を4枚から適宜増減することができる。例えば、重合に必要な元フレームの枚数を8枚とすることができる。
【0113】
<その他のモード>
上述の構成によれば、上下基準モードMV,左右基準モードMH,ステントマーカ指定モードとが説明されていたが、本発明は、これらとは異なる別のモードを設けて動作するように構成してもよい。以下、基準点基準モードMPと領域基準モードMRという新たな2つのモードについて説明する。
【0114】
<基準点基準モードMP>
図15左側は、本発明の基準点基準モードMPについて説明している。基準点基準モードMPは、重合フレームFgに基準点sを決めておいて、この基準点sを基準にトリミングフレームFtrの表示方向を決めるというものである。図15左側における基準点sは、重合フレームFgの左上端部に位置しており、次々と生成される重合フレームFg1,Fg2,…の間で位置に変化はない。
【0115】
図15右側は、術者が基準点sを設定する様子を示している。ライブ像撮影中の表示部25には、ライブ像VLが表示されている。術者は、表示部25上のカーソルを操作卓26に付属のマウスを通じて移動させることができる。術者は、カーソルをライブ像VLの基準点にしたい場所まで移動させることができる。術者がマウスボタンをクリックすると、重合フレームFg上の基準点sが設定される。すなわち、トリミング部14は、術者が指定したライブ像VL上の位置に対応する重合フレームFg上の位置を基準点sと認識して動作することになる。
【0116】
基準点sの設定は、術者が手動で行う必要はない。図16に示すように、基準点sの位置が予め設定されていてもよい。X線撮影装置1の記憶部28には、撮影目的ごとにプリセットデータが対応づけられたテーブルTを有している。このプリセットデータは、管電圧、管電流、パルス幅、パルス間隔などX線管3の制御に関するデータを含んでいる。術者が操作卓26を通じて撮影目的を指定すると、X線管制御部6は、指定された撮影目的に対応するX線管3の制御条件を記憶部28から読み出して動作する。このテーブルTに基準点sの位置に関する項を設け、撮影目的と基準点sの位置とを関連づけるようにすれば、術者が撮影目的を指定するだけで自動的に重合フレームFg上の基準点sの位置が決定される。例えば、術者が操作卓26を通じて撮影目的として右冠動脈撮影を指定すると、トリミング部14は、指定された撮影目的に対応する基準点の位置を記憶部28から読み出し、基準点sが右上端にあるものと認識して動作する。
【0117】
トリミング部14は、図15左側に示すように重合フレームFgに写り込むステント像Sの両端に位置するステントマーカの位置を認識して、基準点sから一方のステントマーカまでの距離L1と基準点sからもう一方のステントマーカまでの距離L2とを算出する。そして、図17に示すように、ステント像の両端のうち基準点sから近い方の端がトリミングフレームFtrの上側、遠い方の端がトリミングフレームFtrの下側になるようにトリミングフレームの向きを決定する。図17においては、ステント像Sの端Aから基準点sまでの距離を示す距離L1がステント像Sの端Bから基準点sまでの距離を示す距離L2よりも短いので、ステント像Sの端Aが上、端Bが下に来るようにトリミングフレームFtrが表示部25に表示される。この様に基準点基準モードMPは、重合フレームFgに写り込むステント像Sの両端のうち重合フレームFg上に定められた基準点sに近い側の端および遠い側の端がトリミングフレームFtrの上下左右のいずれに現れるかを定めることでトリミングフレームFtrの向きを決めるモードである。
【0118】
図18図19は、基準点基準モードMPが有利となるステント像Sの挙動について説明している。図12の上段に示すように、重合フレームFg1〜Fg5の各々にステント像Sが揺動するように写り込んでいる場合、基準点基準モードMPに従ってトリミングフレームFtr1〜Ftr5を生成した方が有利である。重合フレームFg1〜Fg5の間でステント像Sが激しく回転するような場合、図18に示すように上下基準モードMVおよび左右基準モードMHでは、トリミングフレームFtrの逆転を十分に防ぐことはできないことがある。また、ステントマーカ指定モードにおいても、回転するステント像Sの端部を正確に追跡するのは難しい。
【0119】
特に、冠動脈内にステントを挿入している場合、生成された重合フレームFgを順に見ていくと、フレームに写り込むステント像Sは、ある定まった運動をすることが分かる。これは、心臓の拍動に伴って冠動脈が定まった動き方を繰り返すことに由来している。重合フレームFg内のステント像Sの両端部は、それぞれある定まった行動パターンを繰り返すことになる。また、冠動脈の伸び方、および心臓の動き方に起因して、重合フレームFg上のステント像Sは、一端に対して他端が回転するような動きになりやすい。このように、各重合フレームFgの間で見られるステント像Sの両端部の行動パターンは相当限定されたものとなる。従って、ステント像Sが各重合フレームFg内で回転したとしても、ステント像Sの一端は、常に重合フレームFg上の場所の近傍に位置し、ステント像Sの他端は、常にその場所に近づくことができない。したがって、図19に示すように基準点基準モードMPを採用してトリミングフレームFtrの方向を決めるようにすれば、トリミングフレームFtrの反転を抑制することができる。
【0120】
<領域基準モードMR>
最後に、領域基準モードMRについて説明する。領域基準モードMRは、複数のステント像Sが重合フレームFgに写り込んでいる場合に特に有効である。図20は、冠動脈についての手術が行われている様子を示している。図20左側に示すように2本に枝分かれした動脈の片方が狭窄してしまっている場合、枝分かれの2本ともにステントを配置するような措置がとられる(図20右側参照)。狭窄に係る血管のみにステントを配置すると、狭窄していない枝分かれの血流が悪くなってしまうことがあるからである。
【0121】
この様な手術の場合、重合フレームFgには図21に示すように2つのステント像S1,S2が同時に写り込むことになる。このうちステント像S1を抜き出したトリミングフレームFtrが必要であるとする。トリミングフレームFtrの基になる重合フレームFgに複数のステント像が写り込んでいると、トリミングフレームFtr上のステント像の逆転が起こりやすくなる。図22図23はこの事情を説明している。図22は、ステント像S1のみが重合フレームFgに写り込んでいる場合を示している。この重合フレームFgからトリミングフレームFtrを生成する場合、左右基準モードMHが選択されていたとすると、フレーム右側に位置するステント像S1の端AがトリミングフレームFtrの上側、フレーム左側に位置するステント像S1の端BがトリミングフレームFtrの下側にくるようにトリミングフレームFtrの向きが決定されることになる。
【0122】
ところが、図23に示すようにステント像S1,S2が重合フレームFgに写り込んでいると、フレーム右側に位置するステント像S1の端AがトリミングフレームFtrの上側、フレーム左側に位置するステント像S1の端BがトリミングフレームFtrの下側にくるようにトリミングフレームFtrの向きが決定される必要があるところ、ステント像S1の端Aがステント像S2の端Dよりも左側にあるという理由で端AがトリミングフレームFtrの下側にくるようにトリミングフレームFtrの向きが決定されてしまう可能性が出てくる。一方、ステント像S2の端Dが重合フレームFgからフレームアウトすると、ステント像S1の端Aがステント像S1の端Bよりも右側にあるという理由で端AがトリミングフレームFtrの上側にくるようにトリミングフレームFtrの向きが決定される。このように、重合フレームFgに写り込む複数のステント像は、トリミングフレームFtrの逆転を引き起こしてしまう。
【0123】
領域基準モードMRは図21のように重合フレームFgに複数のステント像が写り込んでいる場合でもトリミングフレームFtrが逆転しないように工夫されている。記憶部28には、重合フレームFg上における範囲である探索範囲RAと、探索範囲RBとを規定するデータが記憶されている。領域基準モードMRが選択された場合のトリミング部14は、これらデータを記憶部28から読み出して図24に示す重合フレームFg上における探索範囲RAと、探索範囲RBとを認識して動作することになる。
【0124】
トリミング部14は、重合フレームFg上に設定された探索範囲RA内に位置するステント像S1の端AがトリミングフレームFtrの上側、探索範囲RB内に位置するステント像S1の端BがトリミングフレームFtrの下側にくるようにトリミングフレームFtrの向きが決定される。
【0125】
探索範囲RAは、重合フレームFg上におけるステント像S1の端Aの移動可能範囲を示し、重合フレームFg上におけるステント像S1の端Bの移動可能範囲を示している。冠動脈内にステントを挿入している場合、生成された重合フレームFgを順に見ていくと、フレームに写り込むステント像Sは、ある定まった運動をすることが分かる。これは、心臓の拍動に伴って冠動脈が定まった動き方を繰り返すことに由来している。重合フレームFg内のステント像Sの両端部は、それぞれある定まった行動パターンを繰り返すことになる。このように、各重合フレームFgの間で見られるステント像Sの両端部の行動パターンは相当限定されたものとなる。したがって、重合フレームFg内におけるステント像S1の端Aの動ける範囲と、端Bの動ける範囲とは決まっているのである。
【0126】
なお、図25においては探索範囲RAと探索範囲RBとが重複なかったが、探索範囲RAと探索範囲RBとが部分的に重複するように設定することもできる。また、探索範囲RAと探索範囲RBとを同じ範囲に設定することもできる。また、本変形例においては、探索範囲RAおよび探索範囲RBのうちのいずれか1つのみを設定するような構成とすることもできる。
【0127】
図25に示すトリミングフレームFtrの向きの決め方によれば、図23においてトリミングフレームFtrの逆転の原因となっていたステント像S2の端Dは、トリミングフレームFtrの向きの決定に考慮されない。したがって、領域基準モードMRによれば、重合フレームFgに複数のステント像が写り込んでいても、トリミングフレームFtrが逆転することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0128】
F フレーム
Fg 重合フレーム
3 X線管(放射線源)
4 FPD(検出手段)
11 フレーム生成部(フレーム生成手段)
12 位置合わせ処理部(位置合わせ処理手段)
13 重合フレーム生成部(重合フレーム生成手段)
14 トリミング部(編集手段)
25 表示部(表示手段)
26 操作卓(入力手段)
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明は医用分野に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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