特許第6222369号(P6222369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222369電動機の駆動制御を行う駆動装置の試験を行うための試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222369
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】電動機の駆動制御を行う駆動装置の試験を行うための試験装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02P29/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-546209(P2016-546209)
(86)(22)【出願日】2014年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2014072959
(87)【国際公開番号】WO2016035126
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝雄
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−312894(JP,A)
【文献】 特開平7−222489(JP,A)
【文献】 特開2014−50137(JP,A)
【文献】 特開2003−259688(JP,A)
【文献】 特開2002−223585(JP,A)
【文献】 特開2005−6450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の仕様と前記電動機の駆動状態を検出するためのセンサの仕様の少なくとも一方に応じて定まる項目毎に設定される値であって、項目毎に定められた基準値に対する相対値として設定される値を参照して前記電動機の駆動制御を行う駆動装置、と通信する通信インタフェース部と、
前記各項目を一意に示す識別子に対応付けて当該識別子の示す項目に設定されている相対値と物理量との相互変換を行うための変換情報が書き込まれた変換定義ファイル、を記憶した記憶部と、
前記通信インタフェース部を介して前記駆動装置から取得した相対値を前記変換定義ファイルの格納内容を参照して物理量に変換して表示装置に表示させる一方、物理量で前記駆動装置への設定を指示された項目の値を前記変換定義ファイルの格納内容を参照して相対値に変換し前記通信インタフェース部を介した通信により前記駆動装置に送信し記憶させる制御部と、
を有することを特徴とする電動機の駆動制御を行う駆動装置の試験装置。
【請求項2】
前記変換定義ファイルには、各項目を物理量で前記表示装置に表示させる際の単位を表す単位情報が当該項目を示す識別子に対応付けて書き込まれており、
前記制御部は、前記通信インタフェース部を介して前記駆動装置から取得した相対値を前記変換定義ファイルの格納内容を参照して物理量に変換して前記表示装置に表示させる際に、当該相対値に対応する項目の識別子に対応付けて前記変換定義ファイルに格納されている単位情報の示す単位に換算して前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記変換定義ファイルの編集を試験担当者に行わせるための画面を前記表示装置に表示させる処理を実行する一方、試験担当者により行われた編集操作に応じて前記変換定義ファイルを更新する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機の駆動制御を行う駆動装置の試験技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴い、車載電池に充電された電力により走行する電気自動車(Electric Vehicle、以下、「EV」)が注目を集めている。EVには、車載電池の他に、三相交流電動機などの電動機と、電動機の駆動制御を行う駆動装置と、駆動装置の制御を行う制御装置とが搭載されている。制御装置は例えばVCU(Vehicle Control Unit)である。制御装置は信号線を介して駆動装置に接続されている。制御装置は運転者の運転操作に応じてトルク指令や回転数指令などの各種指令を生成し駆動装置に与える。トルク指令とは電動機の出力トルクを指定する指令であり、回転数指令とは電動機の回転数を指定する指令である。駆動装置は、車載電池から供給される直流電力を交流電力に変換して電動機に供給するインバータである。駆動装置は電動機に与える交流電力の振幅や周波数を制御装置から与えられる各種指令に応じて調整する。これにより、当該電動機のトルク或いは回転速度が変化し、運転操作に応じた走行制御が実現される。
【0003】
この種の駆動装置には、モータ定数などの項目毎に駆動制御の対象の電動機の仕様や電動機の駆動状態(出力トルクや回転数等)を検出するための各種センサの仕様に応じた値が設定され、駆動装置は当該値を参照しつつ電動機の駆動制御を行う。EVに搭載される電動機の仕様やセンサの仕様はEVの車種に応じて異なる可能性がある一方、上記各項目の値がこれらの仕様に応じて適切に設定されていないと電動機の駆動制御に支障が生じる可能性がある。このため、EVの製造元ではEVに搭載される電動機の仕様やセンサの仕様に応じて上記各項目の値を最適化するための試験が行われる。具体的には、上記制御装置の代わりにパーソナルコンピュータなどの試験装置を駆動装置に接続し、この試験装置から各種指令を駆動装置に与える。そして、電動機に流れる電流や電動機に印加される電圧、或いは電動機の出力トルク等の基本特性の計測を行いながら、各項目の値を調整することで最適な値を探し出す、といった具合である。この種の試験に関する先行技術文献としては例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−116044号公報
【特許文献2】特開2012−14258号公報
【特許文献3】特開平10−143214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試験装置を用いて駆動装置の試験を行う試験担当者の立場から見れば、上記各項目の値を物理量([N・m]や[A]、[V]などの単位を伴う値)で設定したり、閲覧したりできることが好ましいことは言うまでもない。しかし、駆動装置の中には、各項目の値をその項目について予め定められた基準値(物理量)に対する相対値(例えば、基準値の何倍であるかを示す値)として記憶し駆動制御に使用するものがある。このため、この種の駆動装置の試験を行う際には、相対値として駆動装置に記憶されている値を物理量に変換して試験装置へ送信する一方、試験装置から与えられる物理量を相対値に変換して記憶する変換処理を駆動装置の制御部に実行させることが一般的である。具体的では、上記変換処理をCPU(Central Processing Unit)などのコンピュータに実行させるプログラムを駆動装置の制御プログラムに含めておき、この制御プログラムにしたがって駆動装置の制御部を作動させる、といった具合である。
【0006】
しかし、上記変換処理を駆動装置の制御部に実行させる態様には以下のような問題がある。第1に、変換処理の実行の分だけ駆動装置の制御部に余分な負荷がかかり、電動機の駆動制御といった駆動装置本来の機能に支障が生じる虞がある、といった問題である。第2に、試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除を簡単には行えないという問題である。試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除を実現するには、駆動装置の制御プログラム(或いは、上記変換処理を実現するプログラム)の入れ替えが必要になるからである。
【0007】
本発明は以上に説明した課題に鑑みて為されたものであり、相対値として設定された値を参照しつつ電動機の駆動制御を行う駆動装置について、各項目の値を最適化するための試験を行う際に、駆動装置の制御部に余分な負荷を掛けることなく、各項目の値を物理量で試験担当者が扱えるようにするとともに、値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除を容易に行えるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、以下の通信インタフェース部と記憶部と制御部とを有する試験装置を提供する。通信インタフェース部は、試験対象の駆動装置に接続され、当該駆動装置と通信する。この駆動装置には、その駆動装置により駆動制御される電動機の仕様と当該電動機の駆動状態を検出するためのセンサの仕様の少なくとも一方に応じて定まる項目毎に予め値が設定され、当該駆動装置は当該値を参照して上記電動機の駆動制御を行う。本発明では上記各項目の値として、項目毎に予め定められた基準値に対する相対値が設定される。記憶部には、変換定義ファイルが予め記憶されている。この変換定義ファイルには、駆動装置に相対値として値が設定されている項目を一意に示す識別子に対応付けて当該相対値と当該相対値に対応する物理量とを相互変換するための変換情報が書き込まれている。そして、制御部は、通信インタフェース部を介して駆動装置から取得した相対値を変換定義ファイルの格納内容を参照して物理量に変換し表示装置に表示させる一方、駆動装置への設定を指示された物理量を変換定義ファイルの格納内容を参照して相対値に変換し通信インタフェース部を介した通信により駆動装置に設定する処理を実行する。
【0009】
本発明によれば、試験担当者は、駆動装置の試験行程においてその駆動装置に設定されている各項目の値を物理量で閲覧したり、物理量で更新したりすることができる。本発明では、相対値と物理量の相互変換は試験装置側で行われるため、この相互変換により駆動装置に余分な負荷がかかることはなく、駆動装置本来の機能に支障が生じることはない。加えて、本発明によれば、変換定義ファイルの内容を更新することで、駆動装置の試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除を容易に行うこともできる。特許文献2には、センサ等のデバイスから得られたサンプリングデータをそのサンプリングデータのデータ形式(16ビット(ワード)、32ビット(ワード)、ビット、文字列等)に適した表示形式で表示する技術が開示されている。一方、特許文献3には、数値制御装置にて主軸の回転、工具の選択等の補助機能を表す補助機能文字列とそれに続く指令を表す補助機能データとを工作機械製作者に変更させることを可能にする技術が開示されている。しかし、特許文献2に開示の技術と特許文献3に開示の技術は、何れも物理量と相対値との相互変換に関する技術ではなく、本願とは全く異なる技術である。
【0010】
より好ましい態様においては、前記変換定義ファイルには、各項目の値を物理量で前記表示装置に表示させる際の単位を表す単位情報が当該項目を示す識別子に対応付けて書き込まれており、前記制御部は、前記通信インタフェース部を介して前記駆動装置から取得した相対値を前記変換定義ファイルの格納内容を参照して物理量に変換して前記表示装置に表示させる際に、前記変換定義ファイルに格納されている単位情報の示す単位の物理量に換算して前記表示装置に表示させることを特徴とする。例えば、ある項目について変換定義ファイルの格納内容にしたがって変換処理を実行することで得られた物理量がCGS単位系の値であり、当該項目の識別子に対応付けて変換定義ファイルに記憶されている単位情報がMKS単位系を表す場合には、上記制御部は、当該項目の値をCGS単位系の物理量に変換し、さらに当該CGS単位系の物理量をMKS単位系の物理量に換算して表示装置に表示させるといった具合である。また、別の好ましい態様においては変換定義ファイルの編集(項目および当該項目についての変換情報の追加、削除、変更など)を試験担当者に行わせるための画面を表示装置に表示させる処理を上記制御部に実行させるとともに、試験担当者により行われた編集操作に応じて変換定義ファイルを更新する処理を上記制御部に実行させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、相対値として設定された値を参照しつつ電動機の駆動制御を行う駆動装置について、各項目の値を最適化するための試験を行う際に、駆動装置の制御部に余分な負荷を掛けることなく、各項目の値を物理量で試験担当者に扱わせることが可能になるとともに、試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の試験装置10を含む試験システム1の構成例を示す図である。
図2】同試験装置10の構成例を示す図である。
図3】同試験装置10のユーザインタフェース部120の表示部に表示される項目調整支援画面の一例を示す図である。
図4】同試験装置10の不揮発性記憶部144に記憶されている変換定義ファイル144bの一例を示す図である。
図5】同試験装置10のユーザインタフェース部120の表示部に表示される変換定義ファイル編集画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態の試験装置10を含む試験システム1の構成例を示す図である。この試験システム1は、電動機30とともにEVに搭載される駆動装置20の試験を行うためのものである。この試験の一例としては、EVの出荷に先立ってEVの製造元で行われる試験や保守点検の際の試験が挙げられる。図1に示すように、試験システム1は、試験の対象となる駆動装置20と、駆動装置20により駆動制御される電動機30と、試験行程において駆動装置20に対する制御装置の役割を果たす試験装置10とを含んでいる。
【0014】
電動機30は三相交流電動機である。駆動装置20は、直流電源(図1では図示略)から供給される直流電力を三相交流電力に変換して電動機30に与えるインバータである。駆動装置20は、直流電力を交流電力に変換する電力変換部と、電力変換部の作動制御を行う制御部と、記憶部と、を有している(図1では、何れも図示略)。記憶部には、電動機30に与える三相交流電圧の各相の振幅等を制御装置(実運用の際にはVCU、本実施形態では試験装置10)から与えられる各種指令に応じて制御する処理を制御部に実行させるための制御プログラムが記憶されている。また、記憶部には、電動機30の仕様と電動機30の駆動状態を検出するための各種センサ(図1では図示略)の仕様の何れか一方に応じて定まる項目(例えば、モータ定数など)毎に予め設定された値が記憶されている。これら各項目の値は制御プログラムの実行過程で制御部によって適宜参照される。
【0015】
駆動装置20の記憶部に値が記憶されている項目の具体例としては、電動機30の出力トルク、同電動機30の回転速度(単位時間当たりの回転数)、電動機30に供給する交流電力の周波数、同電圧(以下、「電圧(Motor)」)、および同電流(以下、「電流(Motor)」)、直流電源から供給される直流電力の電圧(以下、「電圧(Batt)」)および同電流(以下、「電流(Batt)」)、駆動装置20内部電圧(以下、「電圧(Inv)」)および同内部電流(以下、「電流(Inv)」)などが挙げられる。これら項目毎に駆動装置20の記憶部に記憶されている値は、項目毎に定められた正規化係数により規格化された値であり、その項目に応じて定まる基準値の何%の物理量であるかを意味する(上記正規化係数と等しい場合に基準値の100%を意味する)相対値である。例えば、トルク、電圧、および電流についての正規化係数は2の13乗値(すなわち、8192)であり、回転速度についての正規化係数は20000であり、周波数についての正規化係数は2の12乗値(すなわち、4096)である。この場合、駆動装置20に記憶されている出力トルクの値が8192であれば、その時点の出力トルクはトルク基準値「N・m」であること(換言すれば、100%の出力トルク)を意味する、といった具合である。本実施形態では、制御装置から駆動装置20に与える各種指令の指令値も上記相対値(前述した正規化係数に等しい場合に100%を意味する値)である。
【0016】
試験装置10は、例えばパーソナルコンピュータであり、ツイストペアケーブルなどの信号線を介して駆動装置20に接続されている。本実施形態では、当該信号線を介して試験装置10から駆動装置20に各種指令を与えて電動機30の動作の変化を観察したり、駆動装置20の記憶部に項目毎に記憶されている上記値(以下、設定値)を試験装置10に読み出して確認したりすることで、各項目の最適な値を見つけ出す試験が進められる。本実施形態の試験装置10と駆動装置20との間で行われるデータ通信は全て相対値で行われる。本実施形態では、これら相対値から物理量への変換処理、或いはこれら相対値から基準値の何%に相当するかを示す百分率への変換は試験装置10において行われ、この点に本実施形態の特徴がある。以下、本実施形態の特徴を顕著に示す試験装置10を中心に説明する。
【0017】
図2は、試験装置10の構成例を示す図である。
図2に示すように試験装置10は、制御部110、ユーザインタフェース(以下、「I/F」と略記する)部120、通信I/F部130、記憶部140、外部機器I/F部150およびこれら構成要素間のデータ授受を仲介するバス160を有している。
【0018】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部110は記憶部140(より正確には不揮発性記憶部144)に記憶されている試験プログラム144aを実行することで試験装置10の制御中枢として機能する。制御部110が試験プログラム144aにしたがって実行する処理の詳細については後に明らかにする。
【0019】
ユーザI/F部120は、表示部と操作部とを含んでいる(図2では何れも図示略)。表示部は液晶ディスプレイとその駆動回路により構成されている。表示部には、制御部110による制御の下、駆動装置20の試験を試験担当者に行わせるための各種画面が表示される。操作部はマウスなどのポインティングデバイスやキーボードにより構成されている。操作部は、駆動装置20の試験を遂行するための各種入力操作を試験担当者に行わせるためのものであり、ポインティングデバイス等に対して為された操作の内容に応じたデータを制御部110に与える。これにより、上記試験担当者の操作内容が制御部110に伝達される。
【0020】
通信I/F部130は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、信号線を介して駆動装置20に接続されている。通信I/F部130は、上記信号線を介して駆動装置20から受信したデータを制御部110に与える一方、制御部110から与えられたデータを上記信号線を介して駆動装置20に送信する。外部機器I/F部150は、例えばUSBインタフェースやパラレルインタフェースなど、他の機器を試験装置10に接続するためのインタフェースの集合体である。
【0021】
記憶部140は、図2に示すように、揮発性記憶部142と不揮発性記憶部144を含んでいる。揮発性記憶部142は、例えばRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリにより構成されている。揮発性記憶部142は、試験プログラム144aを実行する際のワークエリアとして制御部110によって利用される。不揮発性記憶部144は、例えばハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリにより構成されている。不揮発性記憶部144には、試験プログラム144aと変換定義ファイル144bとMAPファイル144cが予め格納されている。不揮発性記憶部144には、試験プログラム144a、変換定義ファイル144bおよびMAPファイル144cの他にOS(Operating System)を実現するOSソフトウェアも記憶されているが、本発明との関連が薄いため、図示を省略した。
【0022】
制御部110は、試験装置10の電源(図示略)の投入を契機としてOSソフトウェアを不揮発性記憶部144から揮発性記憶部142に読み出し、その実行を開始する。この状態において、制御部110は、ユーザI/F部120の操作部を介して試験プログラム144aの実行指示を与えられると、試験プログラム144aを不揮発性記憶部144から揮発性記憶部142に読み出し、その実行を開始する。試験プログラム144aにしたがって作動している制御部110は、駆動装置20の試験の遂行を支援する各種画面をユーザI/F部120の表示部に表示させる表示制御処理を実行する。
【0023】
より詳細に説明すると、制御部110は、まず、MAPファイル144cを参照し、駆動装置20に設定されている各項目の値を取得する。MAPファイル144cには、駆動装置20に値が設定されている全ての項目について、各項目を一意に示す識別子(例えば、各項目の名称を表す文字列、以下、項目識別子)と対応付けて、駆動装置20の記憶部における当該項目の値を示すデータの格納先アドレス、当該データのデータサイズが予め書き込まれている。なお、データサイズに代えて(或いはデータサイズに加えて)、整数型や実数型などの項目の値のデータ型を示す情報をMAPファイル144cに格納しておいても良い。制御部110は、上記MAPファイル144cを参照して特定した格納先アドレス等を通信I/F部130を介して駆動装置20に与える。駆動装置20は、記憶部から当該格納先アドレスの示す記憶領域に格納されているデータ(以下、参照データ)を読み出して試験装置10へ返信する。試験装置10の制御部110は、駆動装置20から返信されてくる参照データをその参照データの格納先を示す格納先アドレスに対応する項目識別子と対応付けて揮発性記憶部142に書き込む。
【0024】
上記表示制御処理によりユーザI/F部120の表示部に表示される画面の一例としては、各項目の設定値の閲覧および更新を試験担当者に促す項目調整支援画面が挙げられる。図3は、項目調整支援画面の一例を示す図である。図3に示すように、項目調整支援画面には、駆動装置20に値が記憶されている各項目を示す項目識別子、当該項目識別子の示す項目の値を表す参照データの格納先アドレス、データサイズおよび当該項目の値(物理量または百分率)、単位情報の示す単位がリスト形式で表示される。上記各項目の値を物理量と百分率の何れで表示するのかについては項目毎に予め定めておけば良い。前述したように本実施形態では、駆動装置20に記憶されている各項目の値は正規化係数に等しい場合に基準値と等しいことを意味する相対値である。制御部110は、各項目の項目識別子と対応付けて揮発性記憶部142に書き込んだ参照データの表す値を物理量または百分率に変換する変換処理を変換定義ファイル144bの格納内容にしたがって項目毎に実行し、その変換結果を項目調整支援画面に表示する。
【0025】
図4は、変換定義ファイル144bの一例を示す図である。図4に示すように、変換定義ファイル144bには、項目識別子に対応付けて、その項目を物理量で表示する際の単位を表す単位情報と、その項目の参照データを百分率または物理量に変換する際の変換式を表す変換情報と、が予め書き込まれている。以下では、上記参照データを百分率に変換する際の変換式を「第1の変換式」と呼び、上記参照データを物理量に変換する際の変換式を「第2の変換式」と呼ぶ。変換定義ファイル144bには、駆動装置20に値が設定されている全ての項目について、項目識別子および変換情報が格納されている訳ではなく、駆動装置20の試験の際の閲覧および更新対象として予め定められた項目に関する情報のみが格納されている。
【0026】
項目調整支援画面を表示させる際には、制御部110は、変換定義ファイル144bに情報が格納されている項目について、当該項目の項目識別子と対応付けて揮発性記憶部142に書き込んだ参照データの各々を、その項目識別子に対応付けて変換定義ファイル144bに格納されている変換情報を参照して百分率または物理量に変換し、項目調整支援画面に表示させる。例えば、出力トルクについて取得された参照データが4096であったとする。この場合、出力トルクを百分率で表示することが定められていた場合には、制御部110は、当該出力トルクを示す値として50%を表示する。これに対して、出力トルクを物理量で表示することが定められていた場合には、制御部110は、当該出力トルクを示す値として、トルク基準値の半分の値を表示する。なお、上記第2の変換式にしたがって算出される物理量の単位と単位情報の表す単位とが異なる場合には、後者の表す単位となるように当該物理量を換算して表示するようにすれば良い。また、格納先アドレスおよびデータサイズについては、MAPファイル144cの格納内容を参照して項目調整支援画面に表示する処理を制御部110に実行させるようにすれば良い。
【0027】
図3に示す項目調整支援画面を視認した試験担当者は当該画面の表示内容から各項目の値を百分率或いは物理量で把握することができる。そして、試験担当者によって各項目の値が更新され、さらに設定指示を与えられると、制御部110は、項目調整支援画面に表示されている各項目の百分率または物理量をその項目の正規化係数を用いて相対値に変換する。より詳細に説明すると、百分率が項目調整支援画面に表示されている項目については、制御部110は当該項目の項目識別子に対応付けて変換定義ファイル144bに格納されている変換情報の示す第1の変換式の逆演算(すなわち、当該項目の表示値を100で除算し当該項目の正規化係数を乗算する演算)を行って相対値に変換する。同様に、物理量が項目調整支援画面に表示されている項目については、制御部110は当該項目の項目識別子に対応付けて変換定義ファイル144bに格納されている変換情報の示す第2の変換式の逆演算(すなわち、当該項目の表示値を当該項目の基準値で除算し当該項目の正規化係数を乗算する演算)を行って相対値に変換する。制御部110は、上記の要領で算出した各相対値を、その相対値に対応する項目の項目識別子に対応付けてMAPファイル144cに格納されている格納先アドレスの示す格納先へ書き込む。これにより、駆動装置10に設定されている各項目の参照データが更新される。
【0028】
ここで注目すべき点は、本実施形態では、百分率或いは物理量と駆動装置20に記憶される相対値との相互変換を実現する変換処理は試験装置10において実行され、駆動装置20に余分な負荷がかかることはないという点である。加えて、本実施形態では、変換定義ファイル144bの編集(すなわち、項目識別子と項目識別子に対応付けられた単位情報および変換情報の追加および削除)を行うだけで、試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加および削除を行うことができる。変換定義ファイル144bの編集については例えばテキストエディッタなどを用いて編集する態様が考えられる。他の態様としては、変換定義ファイル144bの編集専用の画面(以下、変換定義ファイル編集画面)をユーザI/F部120の表示部に表示させ、この画面に対して行われる操作に応じて変換定義ファイル144bの格納内容を更新する処理を制御部110に実行させる態様が考えられる。試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除がさらに容易になるからである。
【0029】
変換定義ファイル編集画面の一例としては、図5に示すように、変換定義ファイル144bの格納内容(項目識別子、単位情報および変換情報)をリスト形式で表示する画面が挙げられる。ただし、試験行程にて簡便に値の閲覧や更新を行う項目の追加を行えるようにするめに、例えばリストの末尾に1または複数項目分の空白行を設けて置くことが考えられる。これら空白行に項目識別子等を入力することで値の閲覧や更新を行う項目を追加できるからである。また、項目識別子の入力については上記空白行の該当領域に対してマウスクリック等が為されたことを契機として、MAPファイル144cに格納されており、かつ変換定義ファイル144bには格納されていない項目識別子をリスト表示するプルダウンメニュを表示し、当該プルダウンメニュに表示された項目識別子のなかから追加を所望する項目の項目識別子をマウスクリック等で試験担当者に指定させることで実現しても良い。
【0030】
単位情報や変換情報の入力についても同様にプルダウンメニュに対する選択により実現しても良い。具体的には、項目の種別(トルク、電流、電圧等の種別)毎に分類して単位情報と変換情報を登録したファイルを用意しておき、空白行の該当領域に対してマウスクリック等が為されたことを契機としてこのファイルの格納内容に応じたプルダウンメニュを表示して試験担当者に入力を促すようにすれば良い。このようにプルダウンメニュにより各情報の入力を促すようにすれば、項目識別子を表す文字列や変換情報を表す数式等をキーボードで入力する態様に比較して、試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除がさらに容易になるからである。なお、単位情報や変換情報を項目の種別(トルク、電流、電圧等の種別)毎に分類してテーブルに格納しておく態様においては、項目識別子と対応付けてその項目識別子の示す項目の種別を示す情報を変換定義ファイル144bに格納しておき、項目調整支援画面においても当該種別を示す情報を表示するようにしても良い。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、相対値として設定された値を参照しつつ電動機30の駆動制御を行う駆動装置20の試験を行う際に、駆動装置20の制御部に余分な負荷を掛けることなく、かつ試験担当者には試験対象の駆動装置に設定されている各項目の値を物理量や百分率で扱わせることが可能になるとともに、試験行程において値を閲覧したり更新したりする項目の追加や削除が容易になる、といった効果が奏される。なお、本実施形態では、駆動装置20に項目毎に記憶されている相対値を百分率または物理量に変換する場合について説明したが、物理量への変換のみをサポートしても良く、この場合は、変換情報として第2の変換式にのみを表す情報を用いるようにすれば良い。
【0032】
以上本発明の一実施形態について説明したが、この実施形態を以下のように変形しても良い。
(1)上記実施形態の変換定義ファイル144bには、試験対象の駆動装置20に相対値として値が設定されている項目を一意に示す項目識別子に対応付けて、単位情報と変換情報とが予め書き込まれていた。しかし、単位情報および変換情報に加えて、項目識別子の示す項目の取り得る値の範囲を示す範囲情報、その項目の値の更新に伴う駆動装置20の再起動の要否を示す再起動要否フラグ(再起動が必要であれば“1”が、再起動の必要が無ければ“0”が夫々セットされるフラグ)、その項目についての駆動装置20の工場出荷時の初期設定値を表す初期値情報、および前回の試験の際にその項目に設定した値を示す前回値情報のうちの任意の1つまたは複数を上記項目識別子と対応付けて変換定義ファイル144bに格納しておいても良い。
【0033】
例えば、範囲情報を変換定義ファイル144bに格納しておけば、各項目について値の取り得る範囲を当該範囲情報にしたがって試験担当者に報知することで、範囲外の値が誤って設定されるといった入力ミスを防止することが可能になる。また、再起動要否フラグを変換定義ファイル144bに格納しておけば、項目毎に値の変更に伴う再起動の要否を当該再起動要否フラグにしたがって試験担当者に報知することで、このような項目の値を変更したにも拘らず再起動をし忘れるといった操作ミスを防止することが可能になる。また、初期値情報を変換定義ファイル144bに格納しておけば、各項目の初期設定値を上記初期値情報にしたがって試験担当者に報知することで、初期設定値から値を変更された項目の把握が容易になる。そして、前回値情報を変換定義ファイル144bに格納しておけば、各項目の前回値を当該前回値情報にしたがって試験担当者に報知することで、前回値を参照しながら試験を行うことが可能になり、試験効率が向上する。
【0034】
また、項目識別子に対応付けてその項目識別子の示す項目の値の表示形式(10進数表示や16進数表示、リスト表示等)を示す情報を対応づけておき、項目調整支援画面では当該情報の示す表示形式で参照データの示す値を表示するようにしても良い。
【0035】
(2)上記実施形態の試験プログラム144aと変換定義ファイル144bとをインターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布しても良い。このようにして配布されるプログラムにしたがって一般的なコンピュータを作動させることで、当該コンピュータを本実施形態の試験装置10として機能させることが可能になるからである。
【符号の説明】
【0036】
1…試験システム、10…試験装置、20…駆動装置、30…電動機、110…制御部、120…ユーザI/F部、130…通信I/F部、140…記憶部、142…揮発性記憶部、144…不揮発性記憶部、144a…試験プログラム、144b…変換定義ファイル、144c…MAPファイル、150…外部機器I/F部、160…バス。
図1
図2
図3
図4
図5