(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電流を検出するためのシャント抵抗器であって、第1の導電部と、第2の導電部と、前記第1の導電部と前記第2の導電部との間に設けられる中央導電部と、前記第1の導電部と前記中央導電部との間に設けられる第1の抵抗体と、前記第2の導電部と前記中央導電部との間に設けられ、前記第1の抵抗体よりも抵抗値が大きい第2の抵抗体と、を含む前記シャント抵抗器と、
前記第1の導電部と前記中央導電部の電位に基づいて第1の検出信号を取得し、前記第2の導電部と前記中央導電部の電位に基づいて第2の検出信号を取得する信号出力部と、
前記第1の検出信号から前記第1の推定電流値を推定し、前記第2の検出信号から前記第2の推定電流値を推定する推定部と、
前記第1の推定電流値と前記第2の推定電流値を比較して前記シャント抵抗器の異常を判定する判定部と、を備える電流検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に基づいて本発明の実施の形態の概要を述べる。
図1は、本発明の第1の実施形態である電流検出装置1の概要を模式的に示す図である。電流検出装置1は、複数の通電端子および複数の検出端子を有するシャント抵抗器10と、シャント抵抗器10の複数の検出端子から電位を取得し、複数の検出信号を出力する信号出力部20と、信号出力部20が出力する複数の検出信号に基づいて、シャント抵抗器10の通電端子間を流れる電流に対して複数の推定電流値を推定する推定部31と、を備える。また、電流検出装置1は、推定部31が推定する複数の推定電流値を比較して、シャント抵抗器10の異常を判定する判定部32を備える。
【0013】
図2には、シャント抵抗器10を実現する一つの具体例として、シャント抵抗器10Aの構成を例示している。シャント抵抗器10Aは、複数の導電部と複数の抵抗体からなり、一方向に延在する扁平な平板状に形成されている。以下、シャント抵抗器10Aが延在する面内において、シャント抵抗器10Aの長手方向を第1の方向D1とすると共に、シャント抵抗器10Aの短手方向を第2の方向D2とする。
【0014】
図2に示すように、シャント抵抗器10Aは、具体的には、第1の方向D1におけるシャント抵抗器10Aの両端に位置する第1の導電部11と第2の導電部12とを備える。また、シャント抵抗器10Aは、第1の導電部11と第2の導電部12の間に位置する中央導電部13を備える。第1の導電部11、第2の導電部12および中央導電部13は、銅などの導電性材料で形成されることが好ましい。
【0015】
第1の導電部11と中央導電部13の間には、第1の抵抗体14が配置され、第1の導電部11と中央導電部13は、第1の抵抗体14を介して接続される。第2の導電部12と中央導電部13の間には、第2の抵抗体15が配置され、第2の導電部12と中央導電部13は、第2の抵抗体15を介して接続される。第1の抵抗体14および第2の抵抗体15は、銅、マンガンを主成分とする合金であるマンガニンなどの温度による抵抗値変化が小さく、銅に対する熱起電力が小さい導電性材料で形成されることが好ましい。
【0016】
また、第2の抵抗体15は、第1の抵抗体14よりも抵抗値が大きくなるように構成されている。例えば、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15が同一の材料で形成される場合、シャント抵抗器10Aを流れる通電電流に対して、断面積を小さくすることで抵抗値が増加し、通電電流の方向に対する寸法を長くすることで抵抗値が増加させることができる。
図2に図示するシャント抵抗器10Aでは、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15は、第1の方向D1の寸法を異ならせることで、第2の抵抗体15の抵抗値が、第1の抵抗体14の抵抗値よりも大きくなるように構成している。なお、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15は、それぞれ、製造工程において抵抗体の抵抗値を調整するために形成される切り欠き18a、18bを有している。
【0017】
第1の導電部11および第2の導電部12には、通電端子や検出端子を形成するための複数の貫通孔が設けられている。具体的には、第1の導電部11は、通電端子が設けられる第1の通電端子部16aと、検出端子が設けられる第1の検出端子部17aとを含んでいる。第2の導電部12は、通電端子が設けられる第2の通電端子部16bと、検出端子が設けられる第2の検出端子部17bとを含んでいる。中央導電部13は、検出端子を形成するための一つの貫通孔が設けられており、検出端子が設けられる第3の検出端子部17cを含んでいる。第1の検出端子部17a、第2の検出端子部17bおよび第3の検出端子部17cは、上述の信号出力部20に接続される。この構成により、信号出力部20は、各々の検出端子部を介して、第1の導電部11、第2の導電部12および中央導電部13の電位を取得できるようになっている。
【0018】
上述の通り、シャント抵抗器10の抵抗体には、抵抗体の抵抗値を調整するための切り欠きが設けられている。上述の構成のシャント抵抗器10Aは、通電端子部や検出端子部に形成される貫通孔に挿通されるネジを備えており、ネジによって締結することで信号出力部20へ接続される配線を電気的に接続するようになっている。また、貫通孔に螺合されるネジは、シャント抵抗器10Aが配置されるケースなどの部材にも締結され、シャント抵抗器10Aを固定できるようになっている。そのため、シャント抵抗器10Aに振動が加わると、第1の抵抗体14や第2の抵抗体15は、切り欠き18a、18bの近傍に応力が集中する場合がある。
【0019】
図3には、シャント抵抗器10を実現する他の具体例として、シャント抵抗器10Bの構成を例示している。シャント抵抗器10Bは、以下の構成とすることで、上述のシャント抵抗器の固定に起因する応力によるシャント抵抗器の変形を抑制できるようになっている。なお、シャント抵抗器10Bにおいて、上述のシャント抵抗器10Aを構成する構成要素と同じ構成要素については、同一の符号を附して説明を省略する。
【0020】
図3に示すように、第1の検出端子部17aおよび第2の検出端子部17bは、第2の方向D2におけるシャント抵抗器10Bの両端に設けられる。また、シャント抵抗器10Bの中央導電部13は、第3の検出端子部17cに加えて、第4の検出端子部17dを含んでいる。第3の検出端子部17cは、第2の方向D2において、第1の検出端子部17a側の端部に設けられる。第4の検出端子部17dは、第2の方向D2において、第3の検出端子部17c側の端部に設けられる。信号出力部20は、第1の検出端子部17aおよび第3の検出端子部17cを介して、第1の検出信号を取得し、第2の検出端子部17bおよび第4の検出端子部17dを介して、第2の検出信号を取得するように構成される。
【0021】
以上の構成によると、シャント抵抗器10Bに対して、複数の検出端子部が比較的均等な位置に設けられる。上述の通り、検出端子部は、シャント抵抗器を固定する固定部を兼ねているため、検出端子部が均等な位置に設けられることで、応力の集中を抑制することができる。また、中央導電部13の電位を取得するための電流検出経路を二重化することもできるので、断線等の故障が生じても、第1の検出信号または第2の検出信号のいずれか一方の検出信号は取得することができる。
【0022】
上述の通り、シャント抵抗器10Aの構成によると、中央導電部13に設けられる第3の検出端子部を介して、第1の検出信号および第2の検出信号の両方を取得することができるので、部品の共通化により、部品点数を削減することができる。一方、シャント抵抗器10Bの構成によると、検出端子部近傍に発生する応力の集中を抑制することができるので、応力によるシャント抵抗器の故障を防止することができる。上述のシャント抵抗器10Aおよびシャント抵抗器10Bは、目的に応じて選択することが好ましい。
【0023】
図5は、電流検出装置1の回路構成を説明するための図である。
図5に示すように、信号出力部20は、シャント抵抗器10の検出信号が入力される複数の差動アンプと、複数の差動アンプの出力信号をデジタル信号へ変換するA/Dコンバータ22とで構成されている。
図5に示す信号出力部20は、複数の差動アンプとして、第1の検出端子部17aおよび第3の検出端子部17cの電位が入力される第1の差動アンプ21aと、第2の検出端子部17bおよび第3の検出端子部17cから取得される電位が入力される第2の差動アンプ21bを備えている。第1の差動アンプ21aは、入力された信号から第1の抵抗体14の両端電圧に対応する第1の検出信号を出力し、この第1の検出信号をA/Dコンバータ22へ入力する。第2の差動アンプ21bは、入力された信号から第2の抵抗体15の両端電圧に対応する第2の検出信号を出力し、この第2の検出信号をA/Dコンバータ22へ入力する。A/Dコンバータ22は、入力されるアナログ信号をデジタル信号へ変換し、上述の判定部32や推定部31を含む演算回路30へ入力する。演算回路30は、入力されたデジタル信号を用いてシャント抵抗器10の通電端子間を流れる電流の推定電流値を推定したり、シャント抵抗器10の異常を判定したりできるように構成される。
【0024】
なお、第1の差動アンプ21aおよび第2の差動アンプ21bは、同じ増幅率の差動アンプが用いられている。また、信号出力部20は、さらに、第1の差動アンプ21aや第2の差動アンプ21bが出力する検出信号の出力範囲を変えるレベルシフト回路を含むように構成することもできる。
【0025】
以上の構成により、信号出力部20は、取得した電位から第1の抵抗体14の両端電圧に対応する第1の検出信号と、第2の抵抗体15の両端電圧に対応する第2の検出信号を取得し、第1の検出信号および第2の検出信号を推定部31へ出力することができる。また、演算回路30に含まれる推定部31は、信号出力部20が出力する第1の検出信号および第2の検出信号に基づいて、シャント抵抗器10を流れる通電電流の複数の推定電流値を推定することができる。具体的には、推定部31は、第1の検出信号に基づいて第1の推定電流値を推定し、第2の検出信号に基づいて第2の推定電流値を推定する。
【0026】
一般的に、A/Dコンバータは、入力可能な電圧範囲が決まっており、この入力可能な電圧範囲内のアナログ信号をデジタル信号へ変換する構成となる。また、A/Dコンバータは、使用する回路素子によって分解能が決まっている。例えば、12bitのA/Dコンバータを使用する場合には、最大分解能は4096分の1となり、A/Dコンバータの入力可能な電圧範囲に対応する電圧値の約0.0244%が識別可能な最小の電圧変動となる。
【0027】
電流検出装置において、A/Dコンバータを用いる場合、通電電流に応じて、シャント抵抗器が検出信号を出力し、差動アンプを介して増幅して、A/Dコンバータへ入力されるので、A/Dコンバータに入力される検出信号の大きさは、シャント抵抗器を流れる電流の大きさと、シャント抵抗器の抵抗値と、差動アンプの増幅率と、によって決まる。従って、差動アンプの増幅率が同じであれば、シャント抵抗器の抵抗値が大きいほど、推定電流の識別可能な電流変動が小さくなるが、一方で、A/Dコンバータの入力可能な電圧範囲によって、検出可能な電流範囲が制限されることになる。すなわち、シャント抵抗器の抵抗値を小さくすると、検出する推定電流値の精度は低下するが、検出可能な電流範囲は大きくすることができる。
【0028】
電流検出装置1では、上述の通り、二つの抵抗体を有するシャント抵抗器を用いて構成されており、第1の抵抗体14の抵抗値が第2の抵抗体15の抵抗値よりも小さい値となっている。また、第1の差動アンプ21aおよび第2の差動アンプ21bは、同じ増幅率の差動アンプが用いられている。そのため、同じ電流に対応して出力される第1の検出信号と第2の検出信号を比較した場合、第2の抵抗体15の両端電圧に基づいて出力される第2の検出信号のほうが高い電圧の信号となる。従って、第1の検出信号に基づいて推定される第1の推定電流値は、第2の推定電流値と比較して、検出可能な電流範囲が広いが、識別可能な電流変動は小さいという特徴を有する。すなわち、この構成の電流検出装置では、第2の推定電流値は、検出可能な電流範囲は狭いが、精度の高い推定値となる。
【0029】
そのため、電流検出装置1において、推定部31は、第1の検出信号および第2の検出信号の両方が入力される場合は、第2の検出信号に基づいて推定される第2の推定電流値を出力し、第1の検出信号のみが入力され、第2の検出信号がA/Dコンバータの入力可能な電圧範囲外となる場合は、第1の検出信号に基づいて推定される第1の推定電流値を出力するように構成される。この構成により、電流検出装置1は、電流検出装置の検出電流範囲を広くすると共に、電流検出の精度を向上させることができるようになっている。
また、電流検出装置1は、断線等により、第1の検出信号および第2の検出信号のうちの一方が推定部31へ入力されない状態となっても、入力された検出信号に基づいてシャント抵抗器10に流れる通電電流を推定することができる。
【0030】
一方で、電流検出装置1は、二つの抵抗体を一体構造として構成したシャント抵抗器を用いているため、二つの抵抗体は、同じ環境下に配置されることになる。この構成の電流検出装置では、シャント抵抗器の二つの抵抗体に、共通の原因による異常が発生するおそれがある。具体的には、中央導電部13の検出端子部の接続不良による過熱や、シャント抵抗器の腐食、応力集中によるシャント抵抗器の変形などが共通の原因として想定される。これらの共通の原因によって異常が発生する場合、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15は、同じような抵抗値変化が生じるおそれがある。具体的には、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15がともに、実質的な抵抗値が0.05mΩ増加するなどの異常が発生することがある。
【0031】
電流検出装置1は、上述の通り、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15の抵抗値が異なっており、第1の抵抗体14から推定される第1の推定電流値と、第2の抵抗体15から推定される第2の推定電流値の検出可能な電流範囲も異なるように構成されている。第1の抵抗体14と第2の抵抗体15の抵抗値が異なっている場合、それぞれの抵抗体の実質的な抵抗値に同じ抵抗値変化が生じたとしても、その抵抗値変化が影響を与える推定電流値の変化量には違いを生じさせることができる。
【0032】
例えば、第1の抵抗体の抵抗値を0.15mΩ、第2の抵抗体の抵抗値を0.25mΩとした場合を想定すると、正常な状態において、シャント抵抗器に40Aの電流が流れた場合、第1の抵抗体14の両端電圧は6mVとなり、第2の抵抗体15の両端電圧は10mVとなる。推定部31は、A/Dコンバータ等を介して、第1の検出信号に基づいて、第1の抵抗体の両端電圧6mVから第1の推定電流値を40Aと推定する。また、第2の検出信号に基づいて、第2の抵抗体の両端電圧10mVから第2の推定電流値を40Aと推定する。ここで、共通の原因によってそれぞれの抵抗体に0.05mΩの抵抗増加が生じたと仮定すると、シャント抵抗器に40Aの電流が流れた場合、第1の抵抗体14の両端電圧は8mVとなり、第2の抵抗体15の両端電圧は12mVとなる。推定部31は、共通の原因に起因する0.05mΩの抵抗値増加を認識できないので、そのまま正常な状態と同じように電流値へ換算することになる。具体的には、第1の検出信号から推定される第1の推定電流値は、約53.3A、第2の検出信号から推定される第2の推定電流値は、約48.0Aとなる。つまり、共通原因が生じ、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15の両方に抵抗値異常が生じると、第1の推定電流値と、第2の推定電流値の値が乖離することになる。
【0033】
電流検出装置1は、抵抗値が異なる第1の抵抗体14と第2の抵抗体15を有するシャント抵抗器10Aと、それぞれの抵抗体から推定される第1の推定電流値と第2の推定電流値を比較する判定部32とを備えているため、判定部32を介して、シャント抵抗器10Aの故障を検出することができる。具体的には、判定部32は、予め設定される閾値を記憶する記憶部33と、第1の推定電流値および第2の推定電流値の差分△Iを演算し、この差分△Iと記憶部33が記憶している閾値αとを比較する比較部34と、を含んでいる。判定部は、比較部34の演算結果において、第1の推定電流値および第2の推定電流値の差分△Iが閾値αよりも小さい場合、シャント抵抗器が正常であると判定し、差分△Iが閾値αよりも大きい場合、シャント抵抗器が異常であると判定する。
【0034】
特に、高温多湿の環境下では、シャント抵抗器を構成する金属に腐食が発生することがあるが、このような場合、シャント抵抗器の表面が全体的に腐食されることになる。つまり、腐食が発生した場合には、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15の抵抗値が変化することになり、シャント抵抗器の二つの出力が共に異常となる。シャント抵抗器の表面が腐食すると、抵抗体の表面に高抵抗層が形成され、実質的な抵抗体の抵抗値が増加する。第1の抵抗体および第2の抵抗体は、同一環境下に配置されるので、基本的には同じように腐食し、同じような抵抗値変化が生じると想定される。
【0035】
上述の通り、本発明の実施形態では、抵抗値が異なる第1の抵抗体14と第2の抵抗体15を有するシャント抵抗器10Aと、それぞれの抵抗体から推定される第1の推定電流値と第2の推定電流値を比較する判定部32とを備えているため、判定部32を介して、シャント抵抗器10Aに共通の原因による異常が発生した場合にも、シャント抵抗器10Aの故障を検出することができる。
【0036】
加えて、電流検出装置1は、第1の抵抗体または第2の抵抗体のいずれか一方に、防腐処理を行う構成とすることもできる。いずれかの抵抗体のみを防腐処理することで、腐食の進行度を異ならせることができるので、腐食による異常が発生した際に、第1の推定電流値と、第2の推定電流値の乖離を促進させることができる。なお、抵抗値変化に対する推定電流値の誤差は、第1の抵抗体14から推定される第1の推定電流値のほうが大きいため、第2の抵抗体15の表面を防腐処理する構成とすることが好ましい。この構成によると、防腐処理をしない構成と比較して、早期にシャント抵抗器の異常を検出することができ、共通の原因によるシャント抵抗器の故障のうち、特に腐食によるシャント抵抗器の異常に対する検出の精度を向上させることができる。
【0037】
上述の実施形態では、第1の抵抗体14や第2の抵抗体15に、切り欠き18a、18bを形成する構成としているが、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15のうち、いずれか一方のみに切り欠きを形成する構成とすることもできる。上述の通り、切り欠きを形成すると、シャント抵抗器10に外力が加わった際、切り欠きの近傍に応力が集中する。第1の抵抗体14と第2の抵抗体15のうち、いずれか一方のみに切り欠きを形成する構成とすると、切り欠きが形成される抵抗体に応力が集中するので、切り欠きが形成されていない抵抗体の変形を抑制することができる。
【0038】
また、
図4に示すように、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15に、大きさの異なる切り欠きを設ける構成とすることもできる。この構成では、大きい切り欠きが形成されるほうの抵抗体に応力が集中するので、小さい切り下記が形成されている抵抗体の変形を抑制することができる。加えて、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15の両方に切り欠きを形成することができるので、製造工程における抵抗値の調整が容易となり、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15の抵抗値の精度を向上させることができる。
【0039】
以上の構成によると、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15のいずれか一方に応力を集中させることができ、第1の抵抗体14と第2の抵抗体15の変形による抵抗値変化を異ならせることができる。すなわち、これらの構成によると、外力によるシャント抵抗器10の変形が発生した際に、第1の推定電流値と、第2の推定電流値の乖離を促進させることができる。なお、抵抗値変化に対する推定電流値の誤差は、第1の抵抗体14から推定される第1の推定電流値のほうが大きいため、第1の抵抗体14に応力が集中するように構成することが好ましい。
【0040】
以上の構成の電流検出装置は、二つの抵抗体を一体構造としたシャント抵抗器を用いて取得される二つの検出信号に基づいて、通電電流を推定できることに加え、同一環境下に配置される二つの抵抗体に共通の原因に起因する異常が生じてシャント抵抗器が故障した場合にも、判定部32の判定によりシャント抵抗器の故障を検出することができる。特に、二つの抵抗体を一体構造とすることで部品点数を削減しながら、一体構造としたことで生じる共通の原因に起因する異常の発生を検出することができるので、インレンジ故障が生じた状態のまま機器が使用されることを防止することができる。
【0041】
また、電流検出装置1は、電流検出のための配線の断線を検出するために、第1の電圧供給回路40aと第2の電圧供給回路40bとを備える構成とすることもできる。
図5に示すように、第1の電圧供給回路40aは、第1の電源ライン41aと、第1の電源ライン41aに接続され、接続される第1の電源ライン41aの電圧にプルアップされる第1の分圧抵抗43aと、第1の分圧抵抗43aと第1の差動アンプ21aの一方の入力端子とを接続する第1のスイッチ42aとで構成される。第1の差動アンプ21aの他方の入力端子には、グランドが接続される。また、第1のスイッチ42aは、第1の差動アンプ21aとシャント抵抗器10の第1の導電部11とを接続する電流経路上にノードが設けられており、第1のスイッチ42aがオン状態に制御されることで、第1の分圧抵抗43aと第1の抵抗体14に第1の電源ライン41aの電圧を印加できるようになっている。
【0042】
また、第2の電圧供給回路40bは、第2の電源ライン41bと、第2の電源ライン41bに接続され、接続される第2の電源ライン41bの電圧にプルアップされる第2の分圧抵抗43bと、第2の分圧抵抗43bと第2の差動アンプ21bの一方の入力端子とを接続する第2のスイッチ42bとで構成される。第2の差動アンプ21bの他方の入力端子には、グランドが接続される。また、スイッチ42bは、第2の差動アンプ21bとシャント抵抗器10の第2の導電部12とを接続する電流経路上にノードが設けられており、第2のスイッチ42bがオン状態に制御されることで、第2の分圧抵抗43bと第1の抵抗体14に第2の電源ライン41bの電圧を印加するようになっている。第1の電圧供給回路40aと第2の電圧供給回路40bは、断線を検出する電流経路が異なるだけであるので、以下、第1の電圧供給回路を例にとって説明する。
【0043】
第1の電圧供給回路40aは、第1のスイッチ42aをオン状態に制御すると、第1の分圧抵抗43aと第1の抵抗体14には、電源ライン41aの電圧、例えば5Vの電圧が印加される。なお、断線検出は、第1の電圧供給回路40a以外の電源からは電力が供給されない無負荷の状態で行われる。例えば、車両に搭載される電源装置の充放電電流を監視するように電流検出装置1が設けられる場合には、車両が停車した状態などのタイミングで断線検出が行われる。
【0044】
第1の電圧供給回路40aが電圧を供給する電流経路において断線が生じていない通常の状態の場合、第1の分圧抵抗43aと第1の抵抗体14には、互いの抵抗値に応じた電圧が生じる。つまり、5Vの電圧が第1の抵抗体14の抵抗値と第1の分圧抵抗43aの抵抗値によって分圧される。第1の抵抗体14の抵抗値は、第1の分圧抵抗43aの抵抗値に対して無視できるほど小さいため、この状態では、第1の差動アンプ21aには、グランドの電位が入力され、実質的には第1の検出信号は0Vとなる。
【0045】
一方、第1の電圧供給回路40aが電圧を供給する電流経路において断線が生じると、第1の差動アンプ21aの二つの入力端子に対して、第1の電圧供給回路40aが接続されているほうの入力端子には、電源ライン41aの電圧である5Vが入力され、他方の入力端子には、グランドの電位が入力され、第1の差動アンプ21aは、オーバーシュートした電圧の検出信号を出力する。
【0046】
また、完全な断線ではなく高抵抗で接続されている状態の場合には、増加した抵抗値に応じた電位の検出信号が出力される。本発明の実施形態では、第1の抵抗体14は、0.1〜0.5mΩの抵抗器、第1の分圧抵抗43aは、1〜10kΩの抵抗器を用いる構成とすることが好ましいが、例えば、第1の抵抗体14の抵抗値を0.15mΩ、第1の分圧抵抗43aの抵抗値を10kΩとした場合について考える。ここで、接触不良などが生じて第1の電圧供給回路40aが電圧を供給する電流経路の抵抗値が100mΩ増加したとすると、第1の差動アンプ21aに入力される電圧は、5Vを100.15mΩと10kΩとで分圧した値となる。第1の差動アンプ21aが出力する検出信号は、A/Dコンバータ22を介して演算回路30に入力される。
【0047】
以上の構成により、電流検出装置1では、第1の差動アンプ21aの出力が入力される演算回路30を介して、第1のスイッチ42aの作動状態と、推定部31が推定する第1の推定電流とを判定することで、対応する電流経路の断線を検出することができる。なお、第2の電圧供給回路40bについても同様である。具体的には、電圧供給回路が電圧を供給する電流経路において断線や接触不良が生じると、上述の異常判定の検査を行った際、所定の電圧値以上の電圧が検出される。本発明の実施形態では、第1の差動アンプ21aや第2の差動アンプ21bから入力される検出信号に基づいて推定される推定電流値を使って演算することで、各電流経路の断線や接触不良を検出するように構成される。
【0048】
上述のような測定線の接触不良は、直接的にはシャント抵抗器の抵抗体の抵抗値に影響を与えるわけではないが、接触不良部分の発熱などに起因して、電流検出装置の測定値に影響を与え、インレンジ故障となるおそれがある。特に、中央導電部13の検出端子部の接続不良による過熱は、第1の検出信号および第2の検出信号の両方に影響を与える共通原因となる。本発明の電流検出装置では、上述の断線検出の検査を行うように構成することで、測定線の接続部分の接触不良による電流検出装置の異常を検出することができる。
【0049】
また、上述の通り、シャント抵抗器10は、第1の導電部11、第2の導電部12および中央導電部13を銅で形成し、第1の抵抗体14および第2の抵抗体15をマンガニンで形成することができる。この構成によると、抵抗値の精度が要求される第1の抵抗体14や第2の抵抗体15の温度依存性を小さくすることができるので、電流検出の精度を向上させることができる。つまり、精度の高い電流検出装置を構成するためには、抵抗体をマンガニン等の温度依存性の低い特殊な合金を使用する構成となる。
【0050】
しかしながら、このような導電部を構成する金属と抵抗体を構成する金属が異なる金属とした場合、シャント抵抗器10の発熱に起因して熱起電力が発生するおそれがある。具体的には、異種金属を接続した金属体に温度差が生じると、金属間に電圧が発生する(ゼーベック効果)。銅に対するマンガニンの熱起電力係数は、2μV/Kであり、比較的小さな値ではあるが、発生する温度差によっては、電流検出に影響を与える。特に、中央導電部の検出端子部の過熱が発生した場合、第1の抵抗体と中央導電部の間および第2の抵抗体と中央導電部の間でゼーベック効果が生じる。つまり、中央導電部の検出端子部の過熱は、第1の検出信号および第2の検出信号に影響を与える共通原因に起因する異常となる。
【0051】
上述の構成において、例えば、100℃(373.15K)の温度差が生じた場合、ゼーベック効果によって、約0.75mVの起電圧が発生する。これは、測定電流を100A、第1の抵抗体の抵抗値を0.15mΩ、第2の抵抗体の抵抗値を0.25mΩとした場合を想定すると、それぞれに対して、約5%、約3%の誤差に相当する。シャント抵抗器の製造誤差は、大きくても3%程度であるため、この熱起電力の影響は無視できない。
【0052】
一方、上述の構成では、第1の抵抗体と第2の抵抗体の抵抗値を異ならせることで、共通原因に起因する影響を異ならせることができる。上述の想定では、第1の検出信号に基づく推定電流は105A、第2の検出信号に基づく推定電流は103Aとなるが、これは、明らかにA/Dコンバータの分解能による誤差以上の相違である。従って、第1の検出信号から推定される第1の推定電流値と第2の検出信号から推定される第2の推定電流値を比較することで、共通原因によってインレンジ故障が発生した場合にも電流検出装置の故障を検出することができる。つまり、上述の判定部32を備えることで、中央導電部の検出端子部の過熱による異常によるシャント抵抗器の故障を検出することができる。
【0053】
図6に基づいて本発明の他の実施の形態の概要を述べる。
図6は、本発明の第2の実施形態である電源装置5の概要を模式的に示す図である。なお、上述の第1の実施形態の電流検出装置において説明した構成要素と同じ構成要素については、同一の符号を附して説明を省略する。電源装置5は、複数の電池セルからなる組電池50と、組電池50に対して直列に接続されるシャント抵抗器10と、組電池50の状態を監視する状態監視部60と、を備える。状態監視部60は、シャント抵抗器10を介して、組電池50の充放電電流を推定する電流推定部610と、組電池50を構成する複数の電池セルの端子間電位から電池セルの電圧を検出する電圧検出部650と、電流推定部610および電圧検出部650の検出結果が入力される制御部660と、を含む。電流推定部610は、第1の実施形態における信号出力部20、推定部31および判定部32を含む。第2の実施形態において、判定部32は、第1の検出信号に基づく推定電流値と第2の検出信号に基づく推定電流値を比較し、判定結果に対応する信号を制御部660へ出力する。
【0054】
図7は、
図6の電源装置5を車両に搭載する場合の回路図である。組電池50の出力は、リレー70を介して、車両のインバータ80に供給される。また、車両には、車両ECU90が搭載されており、車両の制御やインバータ80の制御等を行うようになっている。制御部660は、判定部32がシャント抵抗器の異常を検出すると、リレー70のオン作動を禁止したり、車両ECU90にシャント抵抗器が異常であることを通知したりするように構成される。車両ECU90は、制御部660から異常信号が入力された際に、車両のディスプレイの警告ランプを点灯するように構成することもできる。この構成により、電流検出装置が異常な状態のまま、電源装置5が使用されることを防止することができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各々の構成要素や各々の処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。