(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222386
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】粉末状乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A23C 11/10 20060101AFI20171023BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20171023BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20171023BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
A23C11/10
A23L9/20
A23D7/00 508
A23D9/00 514
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-574017(P2016-574017)
(86)(22)【出願日】2016年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2016070685
(87)【国際公開番号】WO2017010513
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-140105(P2015-140105)
(32)【優先日】2015年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本山 貴康
(72)【発明者】
【氏名】桂 敦也
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 嵩志
【審査官】
野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−153755(JP,A)
【文献】
特表2006−500955(JP,A)
【文献】
米国特許第06426110(US,B1)
【文献】
特開2014−117159(JP,A)
【文献】
特表2000−516096(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073575(WO,A1)
【文献】
特開2013−013395(JP,A)
【文献】
SHEN, J.L. et al.,"Functional soy proteins designed as casein and egg white replacers.",CEREAL FOODS WORLD,1991年 5月,Vol.36, No.5,pp.431-433,ISSN 0146-6283
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00
A23L 2/00−35/00
A23D 7/00
A23J 1/00−7/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が0.01重量%以上1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれ、該大豆蛋白質素材と糖類の比率が重量比で、大豆蛋白質素材:糖類=1:7〜60の粉末状乳化組成物であって、2gのインスタントコーヒーを80℃、150mlの水に溶解させたコーヒーに5g分散させた際に、明度(L*値)が35以上であることを特徴とする粉末状乳化組成物。
【請求項2】
乾燥重量当たり緩衝塩が0.01重量%以上0.5重量%以下である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項3】
2gのインスタントコーヒーを80℃、150mlの水に溶解させたコーヒーに5g分散させた際に、明度(L*値)が37以上である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項4】
緩衝塩がリン酸塩である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項5】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が20重量%以下である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項6】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が10重量%以下である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項7】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が0重量%である、請求項1記載の粉末状乳化組成物。
【請求項8】
乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が0.01重量%以上1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれ、該大豆蛋白質素材と糖類の比率が重量比で、大豆蛋白質素材:糖類=1:7〜60の粉末状乳化組成物の製造方法であって、大豆蛋白質素材、緩衝塩、糖類及び乳化剤を水系にて混合し、これに油脂を混合した後均質化して得られる水中油型乳化組成物を110〜150℃、1〜10秒間加熱殺菌処理した後、乾燥することを特徴とする、粉末状乳化組成物の製造方法。
【請求項9】
乾燥重量当たり緩衝塩が0.01重量%以上0.5重量%以下である、請求項8記載の粉末状乳化組成物の製造方法。
【請求項10】
緩衝塩がリン酸塩である、請求項8記載の粉末状乳化組成物の製造方法。
【請求項11】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が20重量%以下である、請求項8記載の粉末状乳化組成物の製造方法。
【請求項12】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が10重量%以下である、請求項8記載の粉末状乳化組成物の製造方法。
【請求項13】
大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合が0重量%である、請求項8記載の粉末状乳化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーに添加してマイルド感を与える粉末状ホワイトナーには、コーヒーに添加した場合にコーヒーの風味を損なわず、また乳化安定性が良く、コーヒー中において上手く分散できることから、その原料としてカゼインナトリウムが使用されてきた。しかし近年においては、ホワイトナーの原料となるカゼインナトリウムの需要が世界的に高まっていることから、その代替として、また、コレステロールがたまる等の健康上の問題で動物性原料が避けられている風潮から、植物性原料が多く配合されたインスタントクリーミングパウダー(ICP)の要請が高まっている。
【0003】
これまでにも、大豆たん白組成物を利用しての粉末状ホワイトナーの製造が試みられてきた。しかし、粉末状ホワイトナー中の蛋白質の30重量%程度が大豆たん白組成物となると、コーヒーへの使用時にフェザーリングが発生し、ホワイトナーとして使用に耐えないことが判っている。特許文献1には、分離大豆たん白をカゼインナトリウムと併用することで、コーヒーに添加した場合のフェザーリングが抑制されることが開示されているが、大豆たん白組成物のみで構成されるホワイトナーを製造するに至っていない。
【0004】
また、特許文献2や3で例示されるように、大豆たん白組成物として豆乳を使用したホワイトナーの製造が試みられているが、特許文献2では、そもそもカゼインナトリウムとの併用系であり豆乳のみを使用してホワイトナーを製造できておらず、特許文献3では、豆乳のみを利用したホワイトナーの製造が提案されているが、コーヒーに添加した際に豆乳由来の風味がコーヒー本来の風味を損なってしまいカゼインナトリウムを代替しうるホワイトナーを製造できていない。
【0005】
さらに、特許文献4では分離大豆たん白を利用したホワイトナーの製造が試みられているが、ホワイトナー製造時に必ず実施される殺菌工程を含む検討がなされておらず、且つコーヒーに添加した際に求められるホワイトニング効果が弱く、カゼインナトリウムを使用したホワイトナーを代替するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2009/084529号公報
【特許文献2】特開2009−232754号公報
【特許文献3】特開2006−158295号公報
【特許文献4】特開平6−303901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粉末状乳化組成物を構成する蛋白素材として大豆蛋白質素材を使用し、例えば、コーヒーに添加した際にフェザーリングやオイルオフが起こらず、且つ良好な色調を持つ粉末状乳化組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれた粉末状乳化組成物であって、2gのインスタントコーヒーを80℃、150mlの水に溶解させたコーヒーに5g分散させた際に、明度(L*値)が35以上であることを特徴とする粉末状乳化組成物が、コーヒーに添加した際のフェザーリング、オイルオフを起こさず、また、色調を良好にできることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が0.01重量%以上1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれた粉末状乳化組成物であって、2gのインスタントコーヒーを80℃、150mlの水に溶解させたコーヒーに5g分散させた際に、明度(L*値)が35以上であることを特徴とする粉末状乳化組成物、
(2)乾燥重量当たり緩衝塩が0.01重量%以上0.5重量%以下である、(1)記載の粉末状乳化組成物、
(3)乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が0.01重量%以上1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれる粉末状乳化組成物の製造方法であって、大豆蛋白質素材、緩衝塩、糖類及び乳化剤を水系にて混合し、これに油脂を混合した後均質化して得られる水中油型乳化組成物を110〜150℃、1〜10秒間加熱殺菌処理した後、乾燥することを特徴とする、粉末状乳化組成物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、例えば、コーヒーに添加した際にフェザーリングやオイルオフが起こらず、且つ良好なホワイトニング効果を持つ粉末状乳化組成物を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(粉末状乳化組成物)
本発明の粉末状乳化組成物は、乾燥重量当たり、大豆蛋白質素材が0.3〜7.0重量%、油脂が10〜40重量%、緩衝塩が0.01重量%以上1.0重量%未満、糖類が40〜70重量%、乳化剤が0.8〜5.0重量%の割合で含まれていることを特徴とする。本発明の粉末状乳化組成物を例えば、コーヒーに添加した際フェザーリングやオイルオフを起こさない。さらに、ホワイトニング効果にも優れており、具体的には、2gのインスタントコーヒーを80℃、150mlの水に溶解させたコーヒーに5g分散させた際に、明度(L*値)が35以上という非常に高いホワイトニング効果を付与することができる。
【0013】
(大豆蛋白質素材)
本発明における大豆蛋白質素材として、分離大豆蛋白,アルカリ土類金属結合分離大豆蛋白,濃縮大豆蛋白,全脂豆乳,全脂豆乳粉末,脱脂豆乳,脱脂豆乳粉末,脱脂豆乳又は脱脂豆乳粉末のアルカリ土類金属結合物、糖類等が含有された大豆蛋白等が例示できる。
分離大豆蛋白を使用する場合には、一態様として粗蛋白質含量が固形分全量に対して80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上のような粗蛋白質含量が高いものを使用することができ、粗蛋白質含量が高いものを用いる方が好ましい場合がある。
一方、糖類等が含有された大豆蛋白や豆乳粉末等のように粗蛋白質含量が低めのものを用いる方が好ましい場合もある。
また、別の態様として大豆蛋白質素材を酵素分解したものを使用することができ、酵素分解したものを用いる方が好ましい場合がある。酵素分解したものを用いる場合は、例えば、0.22モルのトリクロロ酢酸(TCA)可溶性蛋白率が好ましくは3〜50重量%、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは15〜30重量%になるように酵素分解したものを用いることができる。
【0014】
例えば、糖類等が含有された大豆蛋白を使用する場合には、大豆蛋白に含有する糖類の量を考慮して本発明の粉末状ホワイトナー中の糖類の配合量の範囲に入るように糖類を添加すればよい。
【0015】
本発明の粉末状乳化組成物に使用する蛋白として植物性の大豆蛋白質素材を使用し、植物性原料を多く配合する観点から、カゼインナトリウム等の動物性蛋白は大豆蛋白に対して少ないことが好ましい。例えば大豆蛋白質素材の固形分に対する動物性蛋白の固形分の割合は20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、0重量%が最も好ましい。
【0016】
粉末状乳化組成物の乾燥重量当たりの大豆蛋白質素材の配合量は0.3〜7.0重量%である。大豆蛋白質素材の配合量が粉末状乳化組成物の乾燥重量当たり0.3重量%よりも少ないと、例えば、コーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪くなり、粘度が急激に上昇してボテ状態が生じる場合がある。また、大豆蛋白質素材の配合量が粉末状乳化組成物の乾燥重量当たり7.0重量%より多いと、コーヒーに添加した場合にフェザーリングを形成してしまう場合がある。
【0017】
(油脂)
この発明において使用する油脂としては、植物性、動物性問わず使用しても良い。植物性油脂としては、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油など、動物性油脂としては、乳脂、魚油、ラードなどから1種類、若しくは複数組み合わせて使用する事が出来る。
コレステロールがたまる等の健康上の問題で動物性原料を避けた方が良いという場合には、植物性油脂を使用することが好ましい。
【0018】
粉末状乳化組成物の乾燥重量当たりの油脂の配合量は10〜40重量%である。油脂の配合量が乾燥重量当たり10重量%より少ないと、コーヒーに添加した場合にホワイトナーがコーヒー中にうまく乳化分散されなくなる場合があり、油脂の配合量が乾燥重量当たり40重量%より多いとホワイトナーの乳化安定性が悪くなる場合がある。
【0019】
(緩衝塩)
緩衝塩としては、リン酸塩、クエン酸塩等が挙げられる。リン酸塩としては、ヘキサメタリン酸塩、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、ポリリン酸ナトリウムなどが例示される。また、クエン酸塩として、クエン酸二ナトリウム、クエン酸ニカリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム等が例示される。
緩衝塩として、リン酸塩を使用することが好ましい。
【0020】
緩衝塩の乾燥重量当たりの配合量は0.01重量%以上1.0重量%未満である。配合量が1.0重量%以上であると、大豆蛋白質素材を主体とするホワイトナーの場合、カゼインナトリウムを主体とするホワイトナーと異なり、調液時に顕著な増粘が認められるため、例えば、コーヒーにホワイトナーを添加した場合うまく分散できず、フェザーリングやオイルオフを引き起こす場合がある。また、緩衝塩の乾燥重量当たりの配合量が0.01重量%より低いと本発明の効果が低くなる場合がある。更に乾燥重量当たりの添加量は0.01重量%以上0.5重量%以下であることが好ましく、0.05重量%以上0.5重量%以下がより好ましい。
【0021】
(糖類)
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)等を上げることができる。
【0022】
粉末状乳化組成物の乾燥重量当たりの糖類の配合量は40〜70重量%である。糖類の配合量が乾燥重量当たり40重量%よりも少ないと、コーヒーに添加した場合のホワイトニング効果が弱くなる場合がある。また、糖類の配合量が乾燥重量当たり70重量%よりも多いと、配合に含まれる油脂含量が少なくなりコーヒーに添加した場合のホワイトニング効果が同様に弱くなる場合がある。
糖類の含量は粉末状乳化組成物中の炭水化物量で求められる。糖類が含有された大豆蛋白質素材を用いる場合には、該蛋白質素材中の糖類(炭水化物)の量を含めて糖類の含量が算出される。
【0023】
粉末状乳化組成物に使用する大豆蛋白質素材と糖類の比率は重量比で、好ましくは大豆蛋白質素材:糖類=1:7〜60、より好ましくは1:8〜40、更に好ましくは1:10〜30である。大豆蛋白質素材と糖類の比率をこのような範囲にすることで、ホワイトニング効果をより高めることができる。
【0024】
(乳化剤)
乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリソルベート、レシチンなどが例示される。これら乳化剤は単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良い。HLBが12以上の乳化剤を使用するとホワイトナーの安定性が向上し、フェザーリングやオイルオフの発生を抑制することが出来る。特にHLB12以上のシュガーエステルとHLBが7以上の有機酸モノグリセリドを併用すると、更にコーヒーホワイトナーの乳化安定性が良くなり、凝集物の形成がより一層抑制されるとともに、調液時のホワイトナーの粘度が急激に上昇しにくくなる。
粉末状乳化組成物の乾燥重量当たりの乳化剤の配合量は、0.8〜5.0重量%である。乳化剤の添加量が乾燥重量当たり0.8重量%よりも少ないと、コーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪くなり、コーヒーに添加した際にホワイトナーがうまく乳化分散されずに凝集物が形成されやすくなる場合がある。また、乳化剤の配合量を乾燥重量当たり5.0重量%より多くすると、乳化剤の味が強くなりコーヒーの風味を損なう場合がある。
【0025】
(甘味料)
また、現在公知若しくは将来知られ得る甘味成分も本発明の粉末状乳化組成物に配合することもできる。具体的にはアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物などの甘味料を用いても良い。
【0026】
(粉末状乳化組成物の調製)
粉末状乳化組成物を調製するには、大豆蛋白質素材、緩衝塩、糖類、乳化剤を水系にて混合し、さらにこれらと油脂を混合した後、均質化する。均質化とは、水と油を含む混合液を水中油型乳化組成物とし、さらに水中油型乳化組成物の液滴を微細化することである。微細化の一つの方法としては乳化機などの装置を用いる方法がある。乳化機としては、例えば、回転羽を有する撹拌機、高速回転するディスクやローターと固定ディスクを有するコロイドミル,超音波式乳化機,一種の高圧ポンプである均質機(ホモジナイザー)などが挙げられ、中でも均質機(ホモジナイザー)が好ましい。均質化工程としては例えば、上記原料を含む水中油型乳化組成物を、ホモジナイザーで30〜200kg/cm
2の圧力で均質化した後、110〜150℃、好ましくは120〜140℃で、1〜10秒間、好ましくは3〜7秒間で加熱殺菌処理を行い、さらにホモジナイザーを用いて150〜500kg/cm
2の圧力で均質化する方法が挙げられる。均質化した水中油型乳化組成物を冷却し、噴霧乾燥する事で粉末状乳化組成物を得ることが出来る。
【0027】
上述の方法により得られた粉末状乳化組成物は良好なホワイトニング効果を有するため、典型的にはコーヒーに添加する事により、良好な色調を示すコーヒーを得ることができる。
粉末状乳化組成物のホワイトニング効果について、本発明ではインスタントコーヒーを用いて色調を測定することにより評価する。
具体的には、2gのインスタントコーヒー(ネスカフェ ゴールドブレンド:ネスレ社製)を80℃、150mlのお湯に分散させたコーヒーを調製し、これに5gの粉末状乳化組成物を添加し、分散する。このコーヒーを25℃に冷却後、測色色差計(Color meter ZE6000:日本電色工業(株)製)により測定する。
L*値が35以上である場合ホワイトニング効果が高く良好なものとする。また、L*値は37以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましい。
【0028】
以上の方法により得られた粉末状乳化組成物は、良好な乳化安定性と色調を示すため様々な食品にも応用することができる。例えば、クリーミングパウダー、濃厚流動食、水中油型乳化物、油中水型乳化物、マーガリン、乳化調味料、デザート、菓子類、栄養補助剤及び飲料などの、様々な形態の飲食品にも応用することができる。また、粉末状乳化組成物を液状にし、コーヒーホワイトナーとして使用することもできる。
この中でも、フェザーリング、オイルオフを起こさず良好なホワイトニング効果を示すことから、本発明の粉末状乳化組成物はクリーミングパウダーの用途に特に適している。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例中の%は重量基準を意味する。
【0030】
(実施例1〜5)
表1記載の配合で、水を70℃に加熱しながら、リン酸2カリウム、分離大豆蛋白(フジプロ-CLE、粗蛋白質含量(固形物換算):91.3%、炭水化物量(固形物換算):3.7%、0.22モルのトリクロロ酢酸(TCA)可溶性蛋白率:24%、不二製油株式会社製)、乳化剤、糖類(ハイフラクトM75C(固形分含量:75%、日本コーンスターチ社製)を添加し撹拌して溶解させる。更に80℃に加温した油脂(菜種硬化油、不二製油株式会社製)を加え更に撹拌する。次に高圧ホモゲナイザーを用いて30〜150kg/cm
2の圧力で均質化した後、121℃で3秒間加熱殺菌を行った。なお、表1の水以外の原料の配合は、乾燥重量に換算した値であり、各原料中の水分は水の配合量に加算したものである。
【0031】
殺菌処理された各水中油型乳化物を、再度高圧ホモゲナイザーを用いて200〜500kg/cm
2の圧力で更に均質化させた後、これらを冷却後噴霧乾燥して各実施例の粉末状乳化組成物を得た。
【0032】
(比較例1〜3)
表1記載の配合で、実施例と同様の操作を行い、各比較例の粉末状乳化組成物を得た。
【0033】
(表1)
【0034】
○粉末状乳化組成物の評価法
<フェザーリング及びオイルオフの評価>
市販のインスタントコーヒー(ネスカフェ ゴールドブレンド:ネスレ社製)2gを熱湯150ml(80℃)で溶解し、調製した粉末状乳化組成物 5gを添加し、30秒後に撹拌して目視にてフェザーリングの程度及びオイルオフの程度を確認した。表中「無し」を「−」、「少ない」を「±」、「多い」を「+」で表記した。
また、オイルオフについても確認し、表中「無し」を「−」、「少ない」を「±」、「多い」を「+」で表記した。
いずれも、目視で「−」または「±」のものを合格とした。
<粉末状乳化組成物の調液時の粘度および乳化粒子径>
粉末状乳化組成物の調液時の粘度は25℃にてB型粘度計(TOKIMEC社製)で測定した。
<乳化粒子径>
粉末状乳化組成物の調液時及びコーヒーに添加後の乳化粒子径はレーザー粒度分布計(島津製作所社製)で測定した。
<色調評価>
色調の測定は、フェザーリング評価時に調製した各サンプルについて、測色色差計(Color meter ZE6000:日本電色工業(株)製)を用いてにより測定し、L*値(JIS Z 8729)を測定する。
L*値が35以上のものを合格とした。
【0035】
上記のフェザーリング、オイルオフ及び色調評価が合格の場合、品質が良好で、総合評価を「○」とし合格とした。フェザーリング、オイルオフ、色調評価のうち1つ以上が不合格のものは総合評価で、「△」または「×」とし、不合格とした。
【0036】
得られた各実施例、及び各比較例の評価結果を表2にまとめた。特許文献4に記載の配合と同じ配合で調製した比較例1は記載の通り、コーヒーに添加した際のフェザーリングやオイルオフは認められなかったが、コーヒー添加後のL*値が21程度と非常に暗かった。一方で、比較例1の配合に更に糖を配合中30重量%添加した実施例1では、粉末状乳化組成物自身の粒子径も小さくなり、コーヒー添加後のL*値も35以上と高く、カゼインナトリウムを使用した市販品と比較しても同程度の明るさを示した。糖の添加量を減らした実施例2においてもややL*値は下がるものの35以上を保っており良好だった。一方で、添加量を10重量%まで落とした比較例2はL*値が35を下回っており不適であった。
【0037】
添加するリン酸塩の影響についても評価した結果、カゼインナトリウムは高いミネラル耐性を示すために問題にはならないが、リン酸塩に対して反応性を示す分離大豆蛋白はリン酸塩の量は実施例3〜5、及び比較例3の結果からも分かる通り、配合中0.5重量%以下が粉末状乳化組成物として好ましいことが確認された。
【0038】
(表2)