(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
棒状の磁心と前記磁心に巻回されたコイルとを有し、前記磁心の端部を測定対象物に接近させた際に前記コイルを貫く磁束の変化に基づき膜厚を測定する膜厚計のプローブに装着して用いる測定治具であって、
前記プローブをその内部空間に収容する際の挿入口となる開口側面を有する筒体状のスライド部材と、
前記プローブが固定された前記スライド部材をその内部空間に収容する際の挿入口となる開口端面を有し、前記プローブが固定された前記スライド部材を、前記磁心の軸方向にスライド可能な状態で支持する構造を有する、筒体状のガイド部材と、
を含み、
前記ガイド部材は、前記磁心の測定対象物に接近させる側に、前記磁心の軸に対して直角となる平坦な外表面を有する、
膜厚計の測定治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載されているように、膜厚計(電磁式(電磁誘導式)膜厚計、渦電流式膜厚計)は、十分な測定精度を得るために、
図22に示すように、測定時にプローブ52を測定対象物2の表面に対して垂直に(プローブの中心軸が測定対象物2の表面に対して垂直になるように)押し当てる必要がある。そのため、例えば、実験室系等においては、測定治具等(例えば、株式会社ケツト科学研究所の膜厚計用スタンド(LW−990)等)を用いて測定精度の確保を図っている。
【0006】
ところで、例えば、電力会社においては、電力設備の点検に際し、膜厚計を用いて電力設備の表面に施されているめっき膜厚の測定を行っているが、鉄塔の塔上や狭隘な場所等においては、プローブ52を測定対象物2の表面に対して垂直に押し当てることが必ずしも容易でなく、測定精度の確保が困難な場合がある。
【0007】
上記特許文献2には、測定精度を向上させる目的で構成された治具について記載されている。しかし上記治具は、撚り線を挟持する挟持部を有して対象となる測定物が撚り線である場合に特化したものである。また上記治具は、案内部の内側面にプローブを密着させて挿入することにより検出部を測定対象物の表面に垂直に当接させる構成であるため、適用可能なプローブの種類は限定される。
【0008】
本発明は、こうした課題を解決すべくなされたものであり、膜厚計を用いた膜厚の測定における作業効率を向上するとともに測定精度を確保することが可能な、膜厚計の測定治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、棒状の磁心と前記磁心に巻回されたコイルとを有し、前記磁心の端部を測定対象物に接近させた際に前記コイルを貫く磁束の変化に基づき膜厚を測定する膜厚計のプローブに装着して用いる測定治具であって、前記プローブが固定されるスライド部材と、前記プローブが固定された前記スライド部材を、前記磁心の軸方向にスライドさせるように支持するガイド部材と、を含み、前記ガイド部材は、前記磁心の測定対象物に接近させる側に、前記磁心の軸に対して直角な平坦面を有する。
【0010】
本発明によれば、ガイド部材の平坦面を、測定対象物の表面に面的に接触させつつスライド部材をガイド部材に沿ってスライドさせることで、プローブの磁心の軸を測定対象物の表面に対して直角に維持した状態で、磁心の端部を測定対象物に接近させることができる。そのため、ユーザは簡単な操作で精度よく膜厚を測定することができる。また本発明の測定治具は、プローブをスライド部材を介してガイド部材に支持する構成であるので、プローブの形態に合わせてスライド部材を用意することで、様々な形態のプローブに広く適用することができる。
【0011】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記ガイド部材は筒状体であり、前記平坦面は前記ガイド部材の前記筒状体の端面を構成し、前記スライド部材は、前記ガイド部材の前記筒状体の内部空間に密着してスライド可能な外形を有する。
【0012】
このように、ガイド部材を筒体状とすることで、ユーザは、測定作業時にガイド部材を手でホールドし易く、スライド部材を容易かつ確実にスライドさせることができ、測定時の作業性も確保される。
【0013】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記スライド部材は、前記プローブを、前記プローブの前記磁心の軸方向が前記スライド部材がスライドする方向に一致するように固定する構造を有する。
【0014】
このようにスライド部材は、プローブを、プローブの磁心の軸方向とスライド部材がスライドする方向に一致するように固定する構造を有するので、ユーザは、プローブをスライド部材に取り付けるだけで、プローブの磁心の軸方向とスライド部材がスライドする方向とを容易に一致させることができる。
【0015】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記スライド部材は、前記スライド部材を測定対象物の方向にスライドさせた際、前記プローブの外周に突出している凸部に当接して前記プローブを前記測定対象物の方向に移動させるように作用する構造を有する。
【0016】
本発明によれば、スライド部材を測定対象物の方向にスライドさせた際、プローブを容易かつ確実に測定対象物に接近させることができる。
【0017】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記スライド部材は、前記スライド部材を測定対象物から離れる方向にスライドさせた際、前記プローブの外周に突出している凸部に当接して前記プローブを前記測定対象物から離れる方向に移動させるように作用する構造を有する
。
【0018】
本発明によれば、スライド部材を測定対象物から離れる方向にスライドさせた際、プローブを容易かつ確実に測定対象物から離間させることができる。
【0019】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記平坦面は、前記磁心の軸方向に沿って前記スライド部材を前記測定対象物の方向にスライドさせた際、前記プローブの端部を貫通させる貫通孔を有する。
【0020】
本発明によれば、プローブが、例えば、膜厚の測定に際して当該プローブの先端を測定対象物に接触させる必要がある場合に対応することができる。
【0021】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記プローブは、
当該プローブの先端部が前記測定対象物に接触又は押圧されることにより膜厚を測定するタイミングを示す信号を生成する機構を有する。
【0022】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記膜厚計は、電磁誘導式膜厚計又は渦電流式膜厚計である。
【0023】
本発明の他の一つは、上記測定治具であって、前記ガイド部材は、角筒状又は円筒状である。
【0024】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、膜厚計を用いた膜厚の測定における作業効率を向上するとともに測定精度を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、以下の説明において、同一又は類似する構成について同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0028】
まず本発明の測定治具が適用される膜厚計の原理並びに構成について説明する。以下では電磁誘導式の膜厚計を例として説明するが、本発明の測定治具は、測定対象物(素地、被膜)との間の電磁的な相互作用を利用して膜厚を測定するタイプの膜厚計、例えば、渦電流式膜厚計(渦電流振幅感応式膜厚計)、渦電流位相式膜厚計(渦電流位相変位感応式膜厚計)等に広く適用することができる。
【0029】
<膜厚計の測定原理>
まず
図1とともに電磁誘導式膜厚計の測定原理について説明する。膜厚計は、例えば、素地21の表面に被膜22が施された測定対象物2の膜厚の測定に用いられる。ここで素地21は、例えば、鉄、鋼、フェライト系ステンレス等の磁性体であり、被膜22は、例えば、メッキ(亜鉛メッキ等)、ペイント、樹脂膜等の非磁性被膜である。
【0030】
同図に示すように、膜厚計のプローブ52は、鉄等の強磁性体からなる棒状の磁心520に一次コイル31及び二次コイル32を同軸に巻回した構造を呈する。一次コイル31に交流電流を流しつつプローブ52(磁心520)の端部(磁心520の二次コイル32側の端部)を測定対象物2の表面に接近させると、プローブ52(磁心520)の端部と測定対象物2との間の距離に応じて二次コイル32を貫く磁束4の数が変化し、二次コイル32に誘起される電圧Vが変化する。この電圧変化ΔVを、例えば、電流変化ΔIとして取得し、取得した電流変化ΔIを予め作成しておいた校正データ(測定値と膜厚値との換算データ)と対照することで、被膜22の厚さ、即ち膜厚を求めることができる。
【0031】
<膜厚計>
図2に電磁誘導式膜厚計(以下、膜厚計5と称する。)の外観を示している。膜厚計5は携帯型であり、ユーザが現場に持ち込んで使用することができる。同図に示すように、膜厚計5は、本体装置51、プローブ52、及びケーブル53(コード)を備える。プローブ52は、ケーブル53(コード)を介して本体装置51と電気的に接続される。
【0032】
本体装置51は、膜厚の測定に際してユーザが操作入力や測定結果の確認等を行うためのユーザインタフェースを備える。ケーブル53は、例えば、本体装置51からプローブ52の一次コイル31に交流電流を供給するための配線、二次コイル32を流れる電流(又は二次コイル32に誘起される電圧)の計測値を含んだ信号(以下、計測信号と称する。)を本体装置51に伝えるための配線、上記計測値を取得するタイミングを示す信号(以下、トリガ信号と称する。)を伝えるための配線等を含む。
【0033】
図3に本体装置51の構成を示している。同図に示すように、本体装置51は、プロセッサ511、記憶装置512、電源回路513、入力装置514、出力装置515、及びA/Dコンバータ516を備える。
【0034】
プロセッサ511は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を用いて構成されている。記憶装置512は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile RAM)等を用いて構成されている。
【0035】
電源回路513は、バッテリ(一次電池、二次電池)、DC/DCコンバータ、DC/ACインバータ等を含み、本体装置51やプローブ52を動作させるのに必要な電力(一次コイル31に供給する交流電力を含む。)を生成する。
【0036】
入力装置514は、ユーザから情報の入力を受け付けるユーザインタフェースであり、キーパッド、タッチパネル等である。出力装置515は、ユーザに情報を提供するユーザインタフェースであり、LCD(Liquid Crystal Display)、印字装置、音声出力装置等である。
【0037】
A/Dコンバータ516は、プローブ52からアナログ値として入力される信号をデジタル値に変換する。
【0038】
図4に本体装置51が備える機能及び本体装置51が記憶するデータを示している。同図に示すように、本体装置51は、校正処理部521、測定処理部522、膜厚算出部523、及び結果出力部524の各機能を備える。これらの機能は、本体装置51のプロセッサ511が、記憶装置512に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、本体装置51が備えるハードウェアにより実現される。同図に示すように、本体装置51は、校正データ531や測定値532を記憶する。
【0039】
上記機能のうち、校正処理部521は、例えば、同質の素地21に異なる厚さ(≧0)で被膜22を施したいくつかの標準板について膜厚を測定することにより得られる、二次コイル32の電流変化ΔI(又は電圧変化ΔV)と膜厚との関係に基づき、校正データ531(校正曲線)を生成する。
【0040】
測定処理部522は、プローブ52から入力される計測信号に基づき二次コイル32の電流変化ΔI(又は電圧変化ΔV)を求め、求めた値を測定値532として記憶する。
【0041】
図5に校正データ531(校正曲線)の一例を示す。同図において、縦軸は測定値532(電流変化ΔI)であり、横軸は膜厚である。尚、校正データ531は、測定対象物2の材質(素地21や被膜22の材質)に応じて異なるので、校正データ531は測定対象物2の異なる材質ごとに用意される。
【0042】
図4に戻り、膜厚算出部523は、測定値532を校正データ531と対照することにより測定対象物2の膜厚を求める。尚、膜厚算出部523は、例えば、複数回の測定を実施することにより取得される複数の測定値532の平均値を求め、求めた平均値に対応する膜厚を校正データ531から取得する。結果出力部524は、膜厚算出部523によって求められた膜厚を出力装置515に出力する。
【0043】
尚、校正処理部521、測定処理部522、膜厚算出部523、及び結果出力部524は、以上の機能に加えて、入力装置514を介して本体装置51に対する設定や指示をユーザから随時受け付ける機能、出力装置515を介してユーザに情報を随時提供する機能を有する。
【0044】
図6Aにプローブ52の側面図を、
図6Bにプローブ52の断面図(
図6AのX−X’線における断面図)を、夫々示す。
【0045】
図6A又は
図6Bに示すように、プローブ52の外観は略円筒状である。プローブ52は、その表面の少なくとも一部にローレット加工が施され、プローブ52の先端から長手方向に沿って所定長さの部分を構成するプローブ本体61と、プローブ本体61のケーブル53側に設けられるキャップ62(
図6Bを参照)、及びキャップ62及びケーブル53の端部を保護する、樹脂等の素材からなるキャップカバー63とを有する。プローブ本体61の外周には、プローブ本体61と同心の円環状の凸部617が形成されている。
【0046】
図6Bに示すように、プローブ本体61は、略円筒状の外筒体611と、外筒体611の内部に外筒体611と同軸(プローブ52の中心軸Cと同軸)に収容される略円筒状の内筒体612とを有する。プローブ本体61(内筒体612)の先端付近には、内筒体612と同軸に配置された筒状のコイルボビン613が収容されている。コイルボビン613の、プローブ本体61の先端寄りの位置には、二次コイル32が巻回される第2ボビン6132が設けられている。コイルボビン613の、第2ボビン6132よりもケーブル53寄りの位置には、一次コイル31が巻回される第1ボビン6131が設けられている。尚、同図では一次コイル31及び二次コイル32は省略している。
【0047】
コイルボビン613の中心部分には、コイルボビン613の中心軸(プローブ52の中心軸Cと同軸)に沿って、所定径を有する通し孔6135が形成されている。この通し孔6135には、鉄等の強磁性体からなる棒状(円柱状等)の磁心520が、その中心軸がプローブ52の中心軸Cと同軸に挿入されている。
【0048】
内筒体612のコイルボビン613よりもケーブル53寄りの位置には、ケーブル53の配線631の端部が接続されるコネクタ615が設けられている。一次コイル31及び二次コイル32とケーブル53の配線631とは、コネクタ615を介して電気的に接続されている。
【0049】
内筒体612と外筒体611との間にはスプリング機構64が設けられている。内筒体612は、このスプリング機構64によってプローブ52の先端方向に付勢されている。これにより、内筒体612の端面及び磁心520の先端は、外筒体611の端面6111から中心軸Cに沿って若干(例えば数mm程度)突出した状態に保持される。
【0050】
内筒体612のキャップ62側には、スイッチ65(電気接点)が設けられている。スイッチ65は、スプリング機構64の付勢力に逆らって内筒体612が外筒体611に押し込まれることによりその接点状態(オン又はオフ)が反転するように構成されている。スイッチ65は前述したトリガ信号を生成する。スイッチ65は、ケーブル53の配線631を介して本体装置51と電気的に接続されている。尚、スイッチ65と同等の機能を、例えば、圧電素子等の他の種類の素子を用いて実現することもできる。
【0051】
図7にプローブ52の先端(プローブ52から突出する磁心520の先端)を測定対象物2の表面に押し当てている様子を示す。同図に示す如く、プローブ52の先端(内筒体612の端面)をスプリング機構64の付勢力に抗して測定対象物2の表面に押し当てるとスイッチ65の接点状態が反転し、トリガ信号が生成されて本体装置51に入力される。本体装置51はトリガ信号が入力されたタイミングでプローブ52から二次コイル32の電流値を取り込む。
【0052】
<測定治具の構成>
続いて、膜厚計5のプローブ52に装着して用いる測定治具1について説明する。測定治具1は、
図8に示すスライド部材11と、
図9に示すガイド部材12とを含む。スライド部材11にはプローブ52が固定される。ガイド部材12は、プローブ52が固定されたスライド部材11が、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)の方向にスライド(摺動)可能に支持する。スライド部材11及びガイド部材12は、例えば、硬質の樹脂や金属等を素材として構成される。尚、外部から内部の様子を視認し易くするため、スライド部材11やガイド部材12を例えば透明の素材で構成してもよい。
【0053】
図8にスライド部材11の構成(斜視図)を示している。スライド部材11の全体は略直方体状を呈する。同図に示すように、上記直方体の4つの側面111a〜111dのうちの一つ(側面)は開口面111aになっている。また上記直方体の2つの端面112a,112bの夫々には、上記開口面111a側に、プローブ52の外径が丁度収容される程度の形態(形状、大きさ)の切り欠き1121a,1121bが形成されている。2つの切り欠き1121a,1121bは、ユーザがプローブ52をこれらにしっかりと嵌め込むことにより、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)がスライド部材11の長手方向と平行になるように、即ち、中心軸Cが端面112bの平坦な外表面(−z側の表面)と垂直(直角)になるように形成されている。このためユーザは、プローブ52を2つの切り欠き1121a,1121bに嵌め込むことで、容易にプローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)が端面112bの外表面(−z側の表面)と垂直(直角)になるようにすることができる。尚、同図においては、切り欠き1121a,1121bはいずれも半円(奥側)と矩形(手前側)とを組み合わせた形状としているが、切り欠き1121a,1121bの態様はこれに限られない。
【0054】
図9にガイド部材12の構成(斜視図)を示している。ガイド部材12の全体は略直方体状を呈する。同図に示すように、上記直方体の4つの側面121a〜121dによって構成される筒体の内部空間は、スライド部材11の外形が丁度収まる形態(形状、大きさ)になっている。このため、スライド部材11は、その3つの側面111b〜111dの外周面をガイド部材12の内周面に密着させながらガイド部材12に対してスライドさせることができる。
【0055】
同図に示すように、上記直方体の2つの端面122a,122bのうちの一つ(端面122a)は開口面122aになっている。また上記直方体の他方の端面122bには、プローブ52の外径が丁度収容される程度の形態(形状、大きさ)の貫通孔1221が形成されている。そしてこの端面122bの外表面(−z側の表面)は平坦面になっており、当該平坦面は上記直方体の長手方向に対して垂直(直角)になっている。
【0056】
図10にスライド部材11にプローブ52を取り付けた状態を示す。同図に示すように、前述したように、プローブ52は、スライド部材11の2つの端面112a,112bの夫々に設けられている切り欠き1121a,1121bに嵌め込むことによりスライド部材11に取り付けられる。
【0057】
プローブ52は、例えば、プローブ52の一方の切り欠き1121aの付近の周囲にスライド部材11に固定された帯状の部材115(例えば、ゴム、針金、結束バンド等)で締め付けることによりスライド部材11に固定される。尚、プローブ52をスライド部材11に固定する方法は必ずしもこの方法に限られない。例えば、プローブ52は他の嵌合形態やネジ止め等によってスライド部材11に固定してもよい。
【0058】
プローブ52は、他方の切り欠き1121bの周辺において、プローブ52の外周に突出している凸部617がスライド部材11の端面112bの外表面と接触するように、即ち、スライド部材11が凸部617の上(凸部617のケーブル53側の面上)に載置されるように、スライド部材11に取り付けられる。このため、ユーザが、プローブ52を測定対象物2の方向に近づけようとしてスライド部材11を測定対象物2の方向にスライドさせた際、プローブ52に確実に力を作用させることができ、プローブ52を容易かつ確実に測定対象物2に接近させることができる。
【0059】
前述したように、ガイド部材12の他方の端面122bの外表面(−z側の表面)は平坦面になっており、上記平坦面は、ガイド部材12の上記直方体の長手方向に対して垂直(直角)の関係になっている。そのため、プローブ52をスライド部材11に固定した状態において、プローブ52の中心軸Cとガイド部材12の端面122bの外表面とは垂直(直角)の関係になる。
【0060】
<膜厚の測定方法>
続いて、以上の構成からなる測定治具1を用いて、膜厚計5により測定対象物2の膜厚を測定する手順について説明する。
【0061】
図11に示すように、ユーザは、まずプローブ52を固定したスライド部材11をガイド部材12の開口面122aからガイド部材12の内部に挿入し、スライド部材11にガイド部材12を取り付ける。尚、前述したように、ガイド部材12の内部空間は、スライド部材11が丁度収まる形態(形状、大きさ)になっているので、ユーザは、スライド部材11の側面をガイド部材12に沿ってスライドさせるだけで、スライド部材11にガイド部材12を容易に取り付けることができる。
【0062】
図12にスライド部材11にガイド部材12を取り付けた(挿入した)状態を示す。この状態において、ガイド部材12の貫通孔1221はプローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)上に位置している。また貫通孔1221の径はプローブ52の径よりも大きい。そのため、ユーザは、スライド部材11をガイド部材12の端面122bの方向にスライドさせることで、プローブ52の先端を端面122bの外表面(平坦面)から−z側に突出させることができる。
【0063】
続いて、
図13Aに示すように、ユーザは、測定対象物2の表面とガイド部材12の端面122bの外表面(平坦面)とを面的に接触させる。前述したように、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)と、ガイド部材12の端面122bの外表面(平坦面)とは垂直(直角)の関係になっているので、ユーザは、測定対象物2の表面とガイド部材12の端面122bの外表面(平坦面)とを面的に接触させることで、測定対象物2の表面とプローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)とを、容易に垂直(直角)の関係にすることができる。
【0064】
続いて、
図13Bに示すように、ユーザは、測定対象物2の表面とガイド部材12の端面122bの外表面(平坦面)とを面的に接触させた状態を維持しつつ、スライド部材11を測定対象物2の方向にスライドさせてプローブ52の先端を測定対象物2の表面の方向に押し込む。これによりプローブ52の内筒体612は、スプリング機構64の付勢力に抗して外筒体611に押し込まれ、その結果、スイッチ65の接点状態が反転してトリガ信号が本体装置51に入力される。
【0065】
尚、同じ測定対象物2の表面について連続して繰り返し測定を行うような場合(例えば、複数の測定値の平均値を求める場合)、ユーザは、一方の手でガイド部材12を測定対象物2の表面に押し当てたまま他方の手でスライド部材11を上方にスライドさせてプローブ52の先端を測定対象物2の表面から10mm程度引き上げ、再び前述した手順を行うことにより測定を繰り返す。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態の測定治具1によれば、ユーザは、ガイド部材12の外表面(平坦面)を測定対象物2の表面に面的に接触させつつスライド部材11をガイド部材12に沿ってスライドさせることで、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)を測定対象物2の表面に対して垂直(直角)の関係に維持しつつ磁心520の先端を測定対象物2に接近させることができる。そのため、ユーザは簡単な操作で容易かつ高精度で測定対象物2の表面の膜厚を測定することができる。
【0067】
また測定治具1は、プローブ52がスライド部材11を介してガイド部材12に支持される構成になっているため、プローブ52の形態に合わせたスライド部材11を用意することで様々な形態のプローブ52に広く適用することができる。
【0068】
またガイド部材12が筒状になっているため、ユーザは、測定時にガイド部材12を手で容易にホールドすることができ、本実施形態の測定治具1は作業性にも優れる。
【0069】
またスライド部材11は、プローブ52を、プローブ52の磁心520の中心軸の方向とスライド部材11がスライドする方向に一致するように固定する構造になっているので、ユーザはプローブ52をスライド部材11に取り付けるだけで、プローブ52の磁心520の中心軸の方向とスライド部材11がスライドする方向とを容易に一致させることができる。
【0070】
<測定治具の他の例>
以上、測定治具1の一例を示したが、他にも様々な構成が考えられる。例えば、測定治具1の他の構成として、スライド部材11を
図14に示すような構成とし、またガイド部材12を
図15に示すような構成としてもよい。
図14に示すように、スライド部材11は円筒状の筒体141を備える。筒体141の上端面142a(+z側の端面)には、筒体141の中心軸と同軸に円環状(低背筒状)のグリップ部1421aが形成されている。また筒体141の下端面142b(−z側の端面)には、筒体141の中心軸と同軸に円形の開口部1421bが形成されている。
【0071】
グリップ部1421a及び開口部1421bの内周側は、いずれもプローブ52の外径が丁度収容される程度の形態(形状、大きさ)になっている。グリップ部1421a及び開口部1421bは、ユーザがプローブ52をこれらに嵌め込むことにより、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)がスライド部材11の長手方向と平行になるように形成されている。
【0072】
同図に示すように、筒体141は、蝶番機構145を介して、当該筒体141の中心軸を含む平面で2つ割りすることにより開閉可能な構造になっている。ユーザは、筒体141にプローブ52を取り付ける際、まず筒体141を開いて筒体141の内部空間にプローブ52をセットし、その後、筒体141を閉じる。
【0073】
図15に示すように、ガイド部材15は、円筒状の筒体151と、筒体151の下端面152b(−z側の端面)に面的に接合された略正方形状の底板153とを有する。底板153の面積は筒体151の下端面152bの面積よりも大きく、底板153の周縁部分は下端面152bの周囲から鍔状に延出している。筒体151の上端面152a(+z側の端面)は開口面152aになっている。また筒体151の下端面152b(−z側の端面)及び底板153には、筒体151の中心軸と同軸に、下端面152b及び底板153の双方を貫通する円形の開口部1521が形成されている。ガイド部材12の底板153の外表面(−z側の面)は平坦面になっており、当該平坦面は、上記直方体の長手方向に対して垂直(直角)になっている。
【0074】
筒体151の内部空間は、
図14に示したスライド部材11の外形が丁度収まる形態(形状、大きさ)になっている。そのため、
図14に示したスライド部材11は、その外周面を
図15に示すガイド部材12の内周面に密着させながらガイド部材12に対してスライドさせることができる。
【0075】
図16にスライド部材11をガイド部材12の筒体151の内部空間に挿入した状態を示す。この状態でガイド部材12の開口部1521はプローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)上に位置しており、スライド部材11をガイド部材12の底板153の方向にスライドさせることで、プローブ52の先端を底板153の外表面(平坦面)から−z方向に突出させることができる。
【0076】
プローブ52は、プローブ52の外周に突出している凸部617が、スライド部材11の下端面142bの外表面と接触するように、即ち、スライド部材11が凸部617の上(ケーブル53側の面)に載置されるように、スライド部材11に取り付けられる。この構成により、ユーザは、スライド部材11を測定対象物2の方向に容易かつ確実にスライドさせてプローブ52を測定対象物2に接近させることができる。
【0077】
ユーザは、ガイド部材12の底板153の外表面(平坦面)を測定対象物2の表面に面的に接触させつつ、スライド部材11をガイド部材12に沿ってスライドさせることで、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)を測定対象物2の表面に対して垂直(直角)の関係に維持しつつ磁心520の先端を測定対象物2に接近させることができる。また測定治具1を以上のような略円筒状の構成とすることで、測定治具1のグリップ性が高まり(力を入れやすくなり)、ユーザは測定時に測定治具1を確実に把持することができる。
【0078】
図17に測定治具1の更に他の一例を示す。同図に示すように、この測定治具1は、略円筒状のスライド部材11と、略馬蹄形状の台座部174を有するガイド部材12とを備える。
【0079】
ガイド部材12は、台座部174から上方に延出する半アーチ状のアーム部175を介して支持される筒状孔部176を有する。筒状孔部176の内部空間はスライド部材11の外形が丁度挿入可能な形態(形状、大きさ)(本例では円筒状)になっている。そのため、スライド部材11は、その外周面を
図15に示すガイド部材12の内周面に密着させながらガイド部材12に対してスライドさせることができる。尚、スライド部材11の外周面と筒状孔部176の内周面との間の摩擦力が適切に調節されているため、作業中にスライド部材11からガイド部材12が外れてしまうようなことはない。
【0080】
スライド部材11の内部空間は、プローブ52の外径が丁度収容される程度の形態(形状、大きさ)になっている。スライド部材11は、スライド部材11の中心軸を含む平面で2つ割りして開閉可能な構造になっている。スライド部材11にプローブ52を取り付ける際、ユーザは、まずスライド部材11を開き、スライド部材11の内部にプローブ52をセットする。続いて、ユーザは、スライド部材11を閉じ、ネジ穴171に挿入されたネジを締め付ける。これによりプローブ52はスライド11の内部空間に挟持される。尚、スライド部材11の内部空間は、これにユーザがプローブ52を挟持させることにより、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)がスライド部材11の長手方向(スライド部材11の中心軸)と平行になるように形成されている。
【0081】
台座部174の2つの脚部1741a,1741bはいずれも平板状であり、いずれも底面(−z側の面)側は平坦面になっている。そして上記平坦面は、いずれもガイド部材12の筒状孔部176の内部空間の中心軸に対して垂直(直角)になっている。2の脚部1741a,1741bは略平行に延出し、両者の間隔は、両者の間にプローブ52を通すことができるようにプローブ52の端面の径よりも大きく設定されている。
【0082】
プローブ52は、プローブ52の外周に突出している凸部617が、スライド部材11の下端面142bの外表面と接触するように、即ち、スライド部材11が凸部617の上(ケーブル53側の面)に載置されるように、スライド部材11に取り付けられる。
【0083】
プローブ52を取り付けたスライド部材11をガイド部材12の筒状孔部176の内部空間に挿入した状態において、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)は、ガイド部材12の台座部174の2つの脚部1741a,1741bの間を通る。そのため、ユーザは、スライド部材11をガイド部材12に沿って下方(−z方向)にスライドさせることで、プローブ52の先端を台座部174よりも下方(−z方向)に突出させることができる。
【0084】
ユーザは、ガイド部材12の脚部1741a,1741bの底面(平坦面)を測定対象物2の表面に面的に接触させつつスライド部材11をガイド部材12に沿ってスライドさせることで、プローブ52の中心軸C(磁心520の中心軸)を測定対象物2の表面に対して垂直(直角)の関係に維持しつつ磁心520の先端を測定対象物2に接近させることができる。この測定治具1を用いることで、ユーザはスライド部材11の状態(とくにスライド部材11の先端の状態)を容易に視認することができ、測定作業を効率よく進めることができる。
【0085】
<プローブの他の構成>
図18にプローブ52の他の構成を示している。同図に示すように、このプローブ52は、外筒体611に複数の同心円環状の凸部617を有している。これら複数の凸部617のうち、最下部の凸部617aについては他の凸部617bに比べてその外径がやや大きくなっている。
【0086】
図18において、符号Aで示すラインは外筒体611の端面(即ち外筒体611と内筒体612の境界)になっており、当該ラインよりも上(+z側)の部分では内筒体612の表面が露出している。また同図において、外筒体611の下端面から長さdで突出する部分は外筒体611の内側において内筒体612に連続している。
【0087】
図19は、
図18に示したプローブ52の先端を測定対象物2の表面に押し当てている様子を示す図である。同図に示すように、プローブ52の先端(磁心520の先端)を測定対象物2の表面に押し当てることにより、プローブ52の先端(内筒体612の先端)が外筒体611の内部に引っ込み、同図においてA−A’で示す間隙(長さはd)が形成される。
【0088】
図20及び
図21は、
図18に示したプローブ52を
図8に示したスライド部材11に取り付けた状態を示す図であり、
図20はその斜視図、
図21は
図20に示したスライド部材11を−y方向から眺めた図である。
【0089】
これらの図に示すように、プローブ52は、切り欠き1121bの周辺において、プローブ52の外周に突出している凸部617aがスライド部材11の端面112bの外表面と接触するように、即ち、スライド部材11が凸部617aの上(ケーブル53側の面)に載置されるようにスライド部材11に取り付けられる。このため、ユーザが、プローブ52を測定対象物2の方向に近づけようとしてスライド部材11を測定対象物2の方向にスライドさせた際、プローブ52に確実に力を作用させることができ、プローブ52を容易かつ確実に測定対象物2に接近させることができる。
【0090】
またこれらの図に示すように、切り欠き1121bの周辺において、プローブ52の外周に突出している凸部617bのうち最下部の凸部617bがスライド部材11の端面112bの内表面と接触するように、即ち、当該凸部617bがスライド部材11の上(端面112bのケーブル53側の面の上)に載置されるようにスライド部材11に取り付けられる。このため、ユーザが、プローブ52を測定対象物2から引き離そうとしてスライド部材11を測定対象物2から離れる方向にスライドさせた際、プローブ52に確実に力を作用させることができ、プローブ52を容易かつ確実に測定対象物2から引き離すことができる。
【0091】
以上、発明を実施するための形態について説明したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
棒状の磁心520と磁心520に巻回されたコイル521,522とを有し、磁心520の先端を測定対象物2に接近させた際の磁束の変化に基づき膜厚を測定する膜厚計5のプローブ52に装着して用いる測定治具1を提供する。測定治具1は、プローブ52が固定されるスライド部材11と、プローブ52が固定されたスライド部材11を、磁心520の軸方向にスライドさせるように支持するガイド部材12とを含む。ガイド部材12は、磁心520の測定対象物2に接近させる側に、磁心520の軸に対して直角な平坦面を有する。以上の構成からなる測定治具1を用いることで、膜厚計5を用いた膜厚の測定における作業効率を向上するとともに測定精度を確保することができる。