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特許6222399ハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222399
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20171023BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20171023BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20171023BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20171023BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20171023BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B60W20/50
   B60K6/48ZHV
   B60K6/543
   B60W10/08 900
   B60W10/06 900
   B60R16/02 650J
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-507126(P2017-507126)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2015058401
(87)【国際公開番号】WO2016151657
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柴 健二
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武男
(72)【発明者】
【氏名】川島 英樹
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057131(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/077161(WO,A1)
【文献】 特開2012−86738(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/056862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータとを備えた動力源と、
前記モータと駆動輪との間に設けられた変速機と、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられて、前記エンジンと前記モータとを断接する第1クラッチと、
前記モータと前記変速機との間に設けられて、前記モータと前記変速機とを断接する第2クラッチと、
前記第2クラッチの接続解除できないオン故障を検知するクラッチ故障判定手段と、
前記第1クラッチおよび前記第2クラッチの制御により、前記エンジンと前記モータとを駆動源とするHEVモードと、前記モータのみを駆動源とするEVモードとを切り替えるコントローラと、
を備えたハイブリッド車両のフェイルセーフ制御であって、
前記コントローラは、前記HEVモードによる走行中において、前記クラッチ故障判定手段が前記第2クラッチのオン故障を検知した場合に、前記HEVモードから前記EVモードへの移行を禁止することを特徴とするハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において、
前記第1クラッチの断接を調節する第1アクチュエータと、
前記第2クラッチの断接を調整する第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータおよび前記第2アクチュエータに給電する電力源と、
前記電力源の故障を検知する電力源故障判定手段と、
をさらに備え、
前記コントローラは、前記電力源故障判定手段が前記電力源の故障を検知した場合に、前記エンジンと前記モータとを強制的に停止することを特徴とするハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において、
前記クラッチ故障判定手段は、前記第1クラッチのオン故障と前記第2クラッチの前記オン故障とを個別に検知可能であり、
前記電力源故障判定手段は、前記クラッチ故障判定手段が前記第1クラッチ及び前記第2クラッチのオン故障を同時に検知した場合に、前記電力源の故障を検知することを特徴とするハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において、
前記第2アクチュエータとして、バルブ開度が大きいほど前記第2クラッチを接続側に動作させる第2クラッチソレノイドバルブを備え、
前記クラッチ故障判定手段が、前記第2クラッチソレノイドバルブのバルブ開度が通常の制御で使用する開度範囲よりも大きな第1所定開度以上の開度を所定時間以上検知した時、前記第2クラッチがオン故障であると判定することを特徴とするハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において、
前記第2クラッチソレノイドバルブは、指令電流が小さいほど前記バルブ開度を大きくする構成であり、
前記クラッチ故障判定手段は、前記第2クラッチソレノイドバルブへの前記指令電流が前記第2クラッチソレノイドバルブのバルブ開度が通常の制御で使用する開度範囲よりも大きな第1所定開度となる第1所定電流以下の場合に、前記バルブ開度が前記第1所定開度以上と判定することを特徴とするハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源としてエンジンを有する車両は、駆動軸上に摩擦要素を設けて、この摩擦要素に供給される作動圧を制御して、摩擦要素の締結及び解放を切り替えていた。これにより、摩擦要素においては、運転状態に応じた所望の締結状態を実現されていた。
また、上述のような摩擦要素を備えた車両には、摩擦要素の故障状態を検出する手段を設けたものがあって、この検出手段が、摩擦要素の接続を解除できないオン故障や、係合ができないオフ故障を判断していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−280886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来においては、エンジンとモータとの間に第1クラッチ、モータと変速機との間に第2クラッチを備えたハイブリッド車両が知られている。このハイブリッド車両では、モータの駆動力で走行するEVモードから、エンジンとモータとの駆動力で走行するHEVモードに切り替える際に、第2クラッチを滑動させながら第1クラッチを接続し、エンジンをクランキングさせてHEVモードに移行していた。
そのため、HEVモードで走行していた時にEVモードからHEVモードへの移行が難しくなった場合は、HEVモードからEVモードへの移行をさせず、出来るだけHEVモードを継続する必要があった。
しかしながら、従来のハイブリッド車両では、この場合にHEVモードの走行を継続するようになっていなかったため、第2クラッチを故障したとしてもEVモードに移行するようになっていた。即ち、従来のハイブリッド車両は、第2クラッチが故障してもEVモードに移行するため、それ以降においては、HEVモードに再移行するのが難しくEVモードでの走行に限定されていた。したがって、EVモードに限定されたハイブリッド車両は、それ以降の航続可能距離がバッテリ残量に応じて決まるため、HEVモードで走行する場合に比べて航続可能距離が短くなるといった課題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、第2クラッチのオン故障時の車両走行距離の延長を図ることが可能なハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
ハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置に関するものであって、エンジンとモータとによる動力源と、モータと駆動輪との間に設けられた変速機とを備えている。この変速機とエンジンとの間には、エンジンとモータとを断接する第1クラッチを備え、さらに、モータと変速機との間には、モータと変速機とを断接する第2クラッチを備えている。また、このフェイルセーフ制御装置は、第2クラッチの接続解除できないオン故障を検知するクラッチ故障判定手段と、エンジンとモータとを駆動源とするHEVモードと、前記モータのみを駆動源とするEVモードとを切り替えるコントローラを備えている。本発明においては、コントローラが、HEVモードによる走行中に第2クラッチのオン故障を検知した場合に、HEVモードからEVモードへの移行を禁止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置では、HEVモードでの走行中に、第2クラッチがオン故障した場合、コントローラは、EVモードへの移行を禁止する。
したがって、本発明は、第2クラッチのオン故障時にEVモードへの移行を許可するものと比較して、燃料を使用してエンジンを駆動する分だけ、走行距離の延長を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1のフェイルセーフ制御装置を備えたハイブリッド車両の全体構成の概略を示す全体システム図である。
図2】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置の統合コントローラの構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置におけるクラッチ故障判定部のON故障判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において統合コントローラが実行するフェイルセーフ制御のメイン処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において統合コントローラが実行する車両起動処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において統合コントローラが実行するクラッチ故障監視走行処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置におけるフェイルセーフ処理の態様を一覧表示する制御一覧図である。
図8】実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置およびその比較例の第2クラッチON故障時の動作の一例を示すタイムチャートである。
図9】実施の形態2のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置におけるクラッチ故障判定部のOFF故障判定処理の流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態2のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置において統合コントローラが実行するクラッチ故障監視走行処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置の構成を説明する。
実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、左右前輪を駆動輪とし、変速機としてベルト式無段変速機を搭載したFFハイブリッド車両(以下、単にハイブリッド車両と称する)に適用したものである。
以下、実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置の構成を、「ハイブリッド車両の全体システム構成」、「ハイブリッド車両の制御系」[統合コントローラによる制御] [クラッチ故障判定部][フェイルセーフ制御]に分けて説明する。
【0010】
[ハイブリッド車両の全体システム構成]
図1は、実施の形態1の漏電検出装置が適用されたハイブリッド車両の全体システムを示す。以下、図1に基づいて、ハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
【0011】
ハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMG(以下、モータMGという)と、第2クラッチCL2と、無段変速機CVTと、を備えている。
【0012】
すなわち、ハイブリッド車両の駆動系は、駆動源としてのエンジンEngとモータMGとの出力が無段変速機CVTにより所定の変速比に変速されて駆動輪としての左右前輪FL,FRへ伝達可能に構成されている。
【0013】
また、このハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngとモータMGとの間に、駆動伝達を断接可能な第1クラッチCL1が設けられているとともに、モータMGと無段変速機CVTとの間に駆動伝達を断接可能な第2クラッチCL2が設けられている。したがって、両クラッチCL1、CL2を締結してエンジンEngとモータMGとの駆動力により走行するHEVモードを形成することができる。また、第1クラッチCL1を解放する一方で、第2クラッチCL2を締結して、モータMGのみの駆動力により走行するEVモードを形成することができる。
【0014】
エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
【0015】
なお、エンジンEngは、第1クラッチCL1を滑り締結しながらモータMGによりクランキングして始動可能である。また、低温時条件、高温時条件などでは図示を省略したスタータモータによる始動を可能とすることもできる。
【0016】
第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータMGとの間に介装された摩擦締結要素である。この第1クラッチCL1として、後述する油圧制御回路110から供給される第1クラッチ油圧に基づくストローク制御より、完全締結、半締結、解放に切り替え可能なものを用いている。
【0017】
モータMGは、走行駆動源になる交流同期モータ構造であり、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うとともに、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギの強電バッテリBATへの回収を行なうものである。
なお、このモータMGと強電バッテリBATとの間には、力行時に直流を三相交流に変換し、回生時に三相交流を直流に変換するインバータINVが介在されている。
【0018】
第2クラッチCL2は、モータMGと駆動輪である左右前輪FL,FRとの間に介装された摩擦締結要素である。この第2クラッチCL2も、油圧制御回路110から供給される第2クラッチ油圧によるストローク制御により、完全締結/スリップ締結/解放に制御される。
【0019】
無段変速機CVTは、図示は省略するがプライマリプーリと、セカンダリプーリと、両プーリに掛け渡されたベルトと、を有する周知のものである。そして、この無段変速機CVTは、油圧制御回路110からプライマリ油室とセカンダリ油室へ供給されるプライマリ圧とセカンダリ圧により、ベルトの巻き付き径を変えることで無段階の変速比を得る変速機である。
【0020】
なお、油圧制御回路110は、油圧源として、メインオイルポンプMOP(メカ駆動)と、サブオイルポンプSOP(モータ駆動)と、を有する。
メインオイルポンプMOPは、モータMGのモータ軸(=変速機入力軸)により回転駆動される。また、サブオイルポンプSOPは、内蔵のモータにより駆動され、主に潤滑冷却用油を作り出す補助ポンプとして用いられる。なお、サブオイルポンプSOPは、後述するDC/DCコンバータ80からの給電により駆動する。
【0021】
油圧制御回路110は、第1クラッチソレノイドバルブ111、第2クラッチソレノイドバルブ112、変速制御バルブ機構113を備えている。
第1クラッチソレノイドバルブ111および第2クラッチソレノイドバルブ112は、それぞれ、油圧源からのポンプ吐出圧を調圧することで生成したライン圧PLを元圧とし、そのストローク量に基づいて第1クラッチ圧および第2クラッチ圧を形成する。
【0022】
変速制御バルブ機構113は、図示を省略したシフトレバーにより切り替えられるマニュアルバルブ113aと、変速機コントローラ11により作動される変速ソレノイドバルブ113bと、を備えている。
【0023】
マニュアルバルブ113aは、シフトレバーの走行レンジ(いわゆるドライブレンジとリバースレンジを含む(D/R))、ニュートラルレンジ(N)、パーキングレンジ(P)へのシフトに応じて位置を切り替えられる。そして、マニュアルバルブ113aは、走行レンジ(D/R)で、ライン圧PLを無段変速機CVTに供給する一方、ニュートラルレンジ(N)およびパーキングレンジ(P)ではライン圧PLをドレーンさせる。
【0024】
変速ソレノイドバルブ113bは、マニュアルバルブ113aから供給されるライン圧PLを元圧とし、そのストローク量によりプライマリ圧とセカンダリ圧を作り出す。
また、前述した第2クラッチソレノイドバルブ112は、マニュアルバルブ113aの下流に配置されている。すなわち、第2クラッチCL2は、無段変速機CVTの締結要素を兼用することが可能である。よって、第2クラッチCL2には、マニュアルバルブ113aから無段変速機CVTへ油圧供給を行う走行レンジ(D/R)で油圧が供給され、ニュートラルレンジ(N)およびパーキングレンジ(P)では油圧が供給されない構造としている。
【0025】
また、本実施の形態1では、両クラッチソレノイドバルブ111,112は、非通電時に両クラッチCL1、CL2の締結作動を行い、通電時に両クラッチCL1、CL2の解放作動を行うものを用いている。
【0026】
すなわち、両クラッチソレノイドバルブ111,112は、非通電時に、図示を省略したスプールをリターンスプリングなどの弾性部材の付勢力により、ライン圧PLを両クラッチCL1、CL2を締結作動側に供給するバルブ開度を開く方向に移動させる。
一方、両クラッチソレノイドバルブ111,112は、通電時のソレノイドの電磁力により、スプールを、両クラッチCL1、CL2締結側に作用していた液圧をドレーンさせる側のバルブ開度を開く方向に移動させ、両クラッチCL1,CL2を解放作動させる。
【0027】
したがって、配線の断線などの故障で各クラッチソレノイドバルブ111,112に通電されない場合、各クラッチCL1,CL2は、締結状態に固定されるON故障状態となる。
逆に、配線のショートなどの故障で各クラッチソレノイドバルブ111,112に通電されっぱなしになった場合は、各クラッチCL1,CL2は、解放状態に固定されるOFF故障状態となる。
【0028】
ハイブリッド車両は、上述のように、1モータ・2クラッチと呼ばれるハイブリッド駆動システムが構成され、主な運転モードとして、「EVモード」、「HEVモード」、「(HEV)WSCモード」を有する。
【0029】
「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2を締結してモータMGのみを駆動源に有する電気自動車モードである。
「HEVモード」は、両クラッチCL1,CL2を締結してエンジンEngとモータMGを駆動源に有するハイブリッド車モードである。
「WSCモード」は、「HEVモード」において、モータMGを回転数制御し、第2クラッチCL2を要求駆動力相当の締結トルク容量にてスリップ締結するCL2スリップ締結モードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」での停車からの発進域や低速からの停車域において、エンジンアイドル回転数以上で回転するエンジンEngと左右前輪FL,FRの回転差を、CL2スリップ締結により吸収するために選択される。なお、「WSCモード」が必要な理由は、駆動系にトルクコンバータのような回転差吸収継手を持たないことによる。
【0030】
[ハイブリッド車両の制御系]
次に、ハイブリッド車両の制御系について説明する。
このハイブリッド車両の制御系は、インバータINVと、強電バッテリBATと、統合コントローラ10と、変速機コントローラ11と、クラッチコントローラ12と、エンジンコントローラ13と、モータコントローラ14と、バッテリコントローラ15と、ACコントローラ16と、を備えている。
【0031】
ハイブリッド車両の電源系は、モータジェネレータ電源としての強電バッテリBATと、12V系負荷電源としての12Vバッテリ(図示省略)と、を備えている。
【0032】
インバータINVは、直流/交流の変換を行い、モータMGの駆動電流を生成する。また生成する駆動電流の位相を逆転することでモータMGの出力回転を反転する。
強電バッテリBATは、モータMGの電源として搭載された二次電池であり、例えば、多数のセルにより構成したセルモジュールを、バッテリパックケース内に設定したリチウムイオンバッテリが用いられる。なお、本実施の形態では、リチウムイオンに限らず、ニッケル水素電池などの蓄電手段であっても良い。
【0033】
インバータINVは、モータコントローラ14による力行/回生制御により、強電バッテリBATの放電によりモータMGを駆動する力行時、強電バッテリBATからの直流電力を三相交流に変換してモータMGに供給する。また、モータMGでの発電により強電バッテリBATを充電する回生時、モータMGからの三相交流電力を直流電力に変換する。
【0034】
統合コントローラ10は、マイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU)により構成され、バッテリ残量(バッテリSOC)、アクセル開度APO、車速VSPなどから目標駆動トルクなどを演算する。そして、統合コントローラ10は、その演算結果に基づいて、各アクチュエータ(モータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ11〜15へと送信する。
【0035】
なお、バッテリSOCは、バッテリコントローラ15から入力する。アクセル開度APOは、アクセル開度センサ21により検出する。車速VSPは、変速機出力回転数に同期した値であって、変速機出力回転数センサ22により検出する。
また、この統合コントローラ10は、メインオイルポンプMOPの吐出流量と、サブオイルポンプSOPの吐出流量、ライン圧PLの制御を行う。
【0036】
変速機コントローラ11は、統合コントローラ10からの変速指令を達成するように変速制御を行なう。この変速制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、変速制御バルブ機構113の制御に基づいて無段変速機CVTのプライマリプーリに供給する油圧と、セカンダリプーリに供給する油圧をそれぞれ制御することで行われる。
そして、ライン圧PLからプライマリプーリに供給する油圧と、セカンダリプーリに供給する油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0037】
クラッチコントローラ12は、第2クラッチ入力回転数、第2クラッチ出力回転数、クラッチ油温などを入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令および第2クラッチ制御指令を達成するように、第1クラッチ制御、第2クラッチ制御を行う。
【0038】
この第1クラッチ制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第1クラッチソレノイドバルブ111の制御に基づいて第1クラッチCL1に供給される油圧を制御することで行われる。
【0039】
また、第2クラッチ制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第2クラッチソレノイドバルブ112の制御に基づいて第2クラッチCL2に供給される油圧を制御することで行われる。
【0040】
そして、ライン圧PLから第1クラッチCL1に供給される油圧と、第2クラッチCL2に供給される油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0041】
エンジンコントローラ13は、エンジン回転数センサ23が検出するエンジン回転数や統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令値などを入力する。そして、エンジンコントローラ13は、始動制御や燃料噴射制御や点火制御や燃料カット制御などを行って目標エンジントルク指令値を達成するようにエンジントルクを制御する。
【0042】
モータコントローラ14は、統合コントローラ10からの目標モータトルク指令値、モータ回転数指令値や、モータ回転数センサ24が検出するモータ回転数などを入力する。そして、モータコントローラ14は、目標モータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するようにモータMGの力行制御や回生制御、モータクリープ制御、モータアイドル制御などの制御を行なう。
【0043】
バッテリコントローラ15は、バッテリ電圧センサ25や、バッテリ温度センサ26などからの入力情報に基づき、強電バッテリBATの残量であるバッテリSOCやバッテリ温度などを管理し、その情報を統合コントローラ10へと送信する。
【0044】
ACコントローラ16は、各種車室温度に関係する環境因子を検出するセンサ(図示省略)の検出に基づいて、電動エアコン70の作動を制御する。この電動エアコン70は、強電バッテリBATからの給電により作動し、車内温度を調整するもので、この電動エアコン70には、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ71が設けられている。この電動コンプレッサ71は、インバータ(図示省略)を内蔵し、強電バッテリBATから供給される直流電力を交流電力に変換し、モータ(図示省略)により駆動する。なお、強電バッテリBATには、電動エアコン70と並列にDC/DCコンバータ80が接続されている。このDC/DCコンバータ80は、強電バッテリBATの電圧を変圧した上で、サブオイルポンプSOPなどの車載の電気機器に直流電力を供給する。
【0045】
[統合コントローラによる制御]
次に、統合コントローラ10による制御について簡単に説明する。
統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標充放電出力演算部300と、動作点指令部400と、を備えている。
【0046】
目標駆動トルク演算部100では、アクセル開度APOと車速VSPなどを入力し、目標定常トルクマップ(エンジントルクマップの一例)とアシストトルクマップ(モータジェネレータトルクマップの一例)とから、目標駆動トルクtTd(目標車両トータルトルク)を算出する。
【0047】
モード選択部200では、目標とする運転モード、すなわち、HEVモードとEVモードとのいずれの運転モードとするかを演算する。なお、このモード選択部200による運転モードの設定は、例えば、予め設定されたモード遷移マップに基づいて車速VSPとアクセル開度APOとに応じて、EVモードとHEVモードとを選択することができるが、詳細は省略する。
【0048】
目標充放電出力演算部300では、バッテリSOCが低いときは発電量を増加させ、バッテリSOCが高いときは発電量を絞り、モータアシストを増やすように目標充放電電力tPを演算する。
【0049】
動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標駆動トルクtTdと運転モードと車速VSPと目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標を演算し、指令値として出力する。この動作点到達目標としては、目標エンジントルク、目標モータトルク、目標CL2トルク容量、目標変速比、第1クラッチソレノイド電流指令、第2クラッチソレノイド電流指令を演算する。なお、本実施例では、動作点司令部が、目標エンジントルク、目標モータトルク、目標CL2トルク容量、目標変速比、第1クラッチソレノイド電流指令、第2クラッチソレノイド電流指令を統合して演算しているが、指令値を算出する手段を各々に設けるようにしても良い。
【0050】
[クラッチ故障判定部]
次に、図1に示すクラッチ故障判定部30について説明する。
クラッチ故障判定部30は、第1クラッチCL1および第2クラッチCL2への指令電流値に基づいて、各クラッチCL1、CL2のON故障の有無を判定する。
【0051】
このON故障は、両クラッチCL1、CL2がそれぞれ接続状態に固定された状態を指し、各ソレノイドバルブ111、112の指令電流値が、非通電時のように所定値となることなどで生じる。すなわち、指令電流値が通常の制御値よりも低下した場合には、スプール(図示省略)を移動させるソレノイドの励磁力を十分に得ることができない。このため、スプール(図示省略)を弾性部材の付勢力に抗して十分に移動することができず、クラッチ締結作動側とライン圧側とを連通するバルブ開度が所定位置以上となり供給圧が所定値を超えることにより生じる。
【0052】
そこで、クラッチ故障判定部30は、各ソレノイドバルブ111,112への指令電流値を入力し、この指令電流値が、通常の制御値よりも低い予め設定された異常判定電流値の状態が、予め設定された異常判定時間以上継続した場合にON故障と判定する。
【0053】
図3は、クラッチ故障判定部30におけるON故障判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、このON故障判定は、図外のイグニッションスイッチをONとしたときに開始し、各クラッチCL1、CL2に対して、それぞれ、独立して実行する。
まず、ステップS301では、各ソレノイドバルブ111、112へのバルブ開度(各クラッチCL1、CL2の締結状態)を制御する指令電流値を読み込み、ステップS302に進む。
【0054】
そして、ステップS302では、指令電流値が異常判定電流値になったか否か判定し、異常判定電流値の場合、ステップS303に進み、異常判定電流値より高い場合はステップS301に戻る。なお、異常判定電流値は、各ソレノイドバルブ111,112のクラッチ締結作動側とライン圧側とを連通するバルブ開度が、通常の制御で使用する開度範囲よりも大きな予め設定された異常開度を越えた開度となる電流値に設定されている。
【0055】
指令電流値が異常判定電流値になった場合に進むステップS303では、指令電流値が異常判定電流値の状態の継続時間が、予め設定した異常判定時間を超えたか否か判定する。そして、異常判定時間を超えた場合はステップS304に進み、異常判定時間を超えない場合はステップS302に戻る。なお、異常判定時間は、正常作動時にオーバシュートにより異常開度を超える場合を排除可能な時間に設定されている。
そして、指令電流値が異常判定電流値未満の状態の継続時間が、予め設定した異常判定時間を超えた場合に進むステップS304においてON故障と判定する。また、本実施の形態1では、故障判定時には、警告灯を点灯させる。
【0056】
[フェイルセーフ制御]
次に、統合コントローラ10が実行する、両クラッチCL1、CL2のON故障に対応するフェイルセーフ制御を図4図6のフローチャートに基づいて説明する。
図4は統合コントローラ10が実行するフェイルセーフ制御のメイン処理を示す。
【0057】
まず、ステップS100では、車両起動処理を実行し、後述する通常走行を開始した場合、ステップS200に進んで、クラッチ故障監視走行処理を実行する。
【0058】
なお、車両起動処理は、イグニッションスイッチ(図示省略)のOFFからONの切り替えにより開始し、クラッチ非故障時は、通常走行を許可し、クラッチ故障時には、走行は禁止しつつも、エンジンEngの始動を許可するフェイルセーフ処理を実行する。
クラッチ故障監視走行処理は、走行中、両クラッチCL1、CL2の故障の有無を判定し、故障の有無、故障状態および走行状態に応じたフェイルセーフ処理を実行する。
【0059】
以下に、図5図6のフローチャートに基づいて、車両起動処理およびクラッチ故障監視走行処理について説明する。
[車両起動処理]
まず、車両起動処理を図5により説明する。
この車両起動処理は、運転者が図示を省略したイグニッションスイッチをOFFからONに切り替えた後、図示を省略したスタータスイッチのON操作を行った際に実行する。
【0060】
ステップS101では、クラッチ故障か否かをクラッチ故障フラグfCLFAILがセット(=1)であるか否かにより判定し、クラッチ故障時にはステップS102に進み、クラッチ非故障時はステップS105に進む。なお、このクラッチ故障を示すクラッチ故障フラグfCLFAILのセットは、前回の走行時に、後述するクラッチ故障監視走行処理において各クラッチCL1、CL2のON故障を検出したことにより成されるもので、その詳細は後述する。
【0061】
クラッチ故障時に進むステップS102では、クラッチ故障修理完了か否か判定し、故障修理完了の場合はステップS103に進み、故障修理が非完了の場合はステップS105に進む。なお、このクラッチ故障修理は、工場などにおいて人の作業により行うものであり、その修理完了時には、作業者が統合コントローラ10に対して故障修理完了を示す所定の情報入力操作を行う。
そして、故障修理完了の場合に進むステップS103では、クラッチ故障フラグfCLFAILをリセット(=0)し、ステップS104に進む。
【0062】
さらに、ステップS104では、次回走行禁止フラグfINHDRIVEをリセット(=0)する。なお、次回走行禁止フラグfINHDRIVEのセットは、前回の走行時に、後述するクラッチ故障監視走行処理においてクラッチ故障を検出したことにより行われるもので、その詳細は後述する。
【0063】
ステップS105〜S108では、HEVシステムを起動できる状態であることを判別し、HEVシステムの起動を行う。なお、HEVシステムの起動では、強電バッテリBATを電力供給可能とし、モータMGを駆動させて必要なライン圧PLを形成するとともに、システム要求に応じてエンジンEngを駆動させる。また、システム要求としては、バッテリSOCの低下に対応して発電を行うための要求や、エンジン冷却水やオイルなどの温度上昇要求などがある。
まず、ステップS105では、運転者が起動要求を行ったか否か判定し、起動要求時にはステップS106に進み、起動要求が無ければステップS101に戻る。なお、起動要求は、図示を省略したイグニッションスイッチのON操作および、図示を省略したスタートスイッチのON操作とするが、いずれか一方あるいは他の操作としてもよい。
【0064】
運転者の起動要求が有った場合に進むステップS106では、シフトポジションがパーキングレンジ(P)であるか否か判定し、パーキングレンジ(P)の場合はステップS107に進み、パーキングレンジ(P)以外ではステップS101に戻る。
【0065】
パーキングレンジ(P)の場合に進むステップS107では、車両が停車状態であるか否か判定し、停車状態であれば、ステップS108に進み、停車状態でなければステップS101に戻る。そして、ステップS108では、HEVシステムを起動する。
【0066】
ステップS108にてHEVシステム起動の後に進むステップS109では、シフトポジションがパーキングレンジ(P)に維持されているか否か判定する。そして、シフトレバーがパーキングレンジ(P)に維持されている間、ステップS108に戻ってHEVシステム起動状態を維持し、シフトレバーがパーキングレンジ(P)以外のポジションに切り替えられ、運転者に発進意図がある場合はステップS110に進む。
【0067】
なお、シフトレバーがパーキングレンジ(P)の場合は、油圧制御回路110から無段変速機CVTおよび第2クラッチCL2への油圧供給路はドレーン側に連通されるため、第2クラッチCL2は、指令電流値に関わらず解放されており、接続されることは無い。
また、第1クラッチCL1は、油圧供給路が異なるため、このHEVシステム起動時には、締結可能となっている。
【0068】
シフトレバーがパーキングレンジ(P)以外のレンジに切り替えられて運転者に発進意図がある場合に進むステップS110では、次回走行禁止フラグfINHDRIVEがセットされている(=1)か否か判定する。そして、次回走行禁止フラグfINHDRIVEがセットされている場合は、ステップS111に進んで、HEVシステムを停止し走行不可能な状態とし、次回走行禁止フラグfINHDRIVEがセットされていない(=0)場合は、ステップS112に進んで通常走行を行う。
【0069】
以上のように、車両起動処理では、運転者が起動操作を行った際に、次回走行禁止フラグfINHDRIVEがセットされている場合は、パーキングレンジ(P)でのみHEVシステムの起動を許可する。また、次回走行禁止フラグfINHDRIVEがセットされていない場合には、通常走行を許可する。なお、次回走行禁止フラグfINHDRIVEは、前回の走行時に両クラッチCL1、CL2のいずれか一方、あるいは両方のON故障を検出した後、停車した際に、セットされる。
【0070】
[クラッチ故障監視走行処理]
次に、図6のフローチャートに基づいて、クラッチ故障監視走行処理を説明する。
このクラッチ故障監視走行処理では、両クラッチCL1、CL2のON故障の有無を監視しながら、ON故障発生時には、車両状態に応じて所定のフェイルセーフ処理を実行する。
【0071】
このクラッチ故障監視走行処理は、前述の車両起動処理により通常走行を開始した時点から実行される。
まず、ステップS201では、第2クラッチCL2がON故障しているか否か判定し、故障時にはステップS204に進み、ON故障が生じていない場合は、ステップS202に進む。
第2クラッチCL2がON故障していない場合に進むステップS202では、通常走行を行う。なお、この通常走行時は、HEVシステムは、通常の指令通りの作動を行う。
さらに、通常走行の場合に進むステップS203では、運転者の遮断要求があるか否か判定し、遮断要求が有ればクラッチ故障監視走行処理を終了し、遮断要求が無ければステップS201に戻ってクラッチ故障監視走行処理を継続する。なお、遮断要求は、イグニッションスイッチ(図示省略)のONからOFFへの切替操作により遮断要求有りと判定する。
【0072】
ステップS201において第2クラッチCL2にON故障が生じた場合に進むステップS204では、第1クラッチCL1がON故障しているか否か判定する。そして、第1クラッチCL1がON故障している場合には、ステップS209に進み、ON故障していない場合はステップS205に進む。
【0073】
ここで、ステップS201およびS204では、電力源の故障判定を兼ねている。すなわち、前述のようにON故障判定は、各クラッチソレノイドバルブ111,112への指令電流値が異常判定電流値よりも低下しているか否かにより行っている。したがって、両クラッチソレノイドバルブ111,112の指令電流値が同時に異常判定電流値よりも低下し、ステップS201とS204との両方でYES判定される場合は、電力源故障と見做し、ステップS209に進む。
【0074】
ステップS204において第1クラッチCL1が故障していない場合は、車両の走行状態によってフェイルセーフ走行を切り替える。
すなわち、ステップS205では、現在の走行モードがHEVモードで、かつ、第2クラッチCL2をロックアップ状態としてLU走行中か否か判定する。そして、HEVモードかつLU走行中では、ステップS206に進み、それ以外はステップS207に進む。
【0075】
ステップS205においてHEVモードで、かつLU走行中の場合に進むステップS206では、HEVモードでの走行に固定するとともに、第2クラッチCL2をロックアップとしてLU走行を継続した上で、ステップS204に戻る。これにより、HEVモードで走行を継続できる。
【0076】
ステップS205においてHEVモードかつLU走行中ではない場合に進むステップS207では、現在の走行モードがEVモードで、かつ、第2クラッチCL2をロックアップ状態としてLU走行中か否か判定する。そして、EVモードかつLU走行中の場合は、ステップS208に進み、それ以外はステップS209に進む。
【0077】
ステップS207においてEVモードかつLU走行中の場合に進むステップS208では、EVモードでの走行に固定するとともに、第2クラッチCL2をロックアップしたLU走行を継続した上で、ステップS204に戻る。これにより、EVモードにより、強電バッテリBATの電力供給が続く間、走行可能とする。
【0078】
両クラッチCL1、CL2がON故障した場合、あるいは、第2クラッチCL2をロックアップせずにスリップさせている場合に進むステップS209では、クラッチ故障フラグfCLFAILをセットし、ステップS210に進む。
なお、ステップS205、S207にてNO判定されるのは、第2クラッチCL2をスリップさせている場合であって、これは、例えば、HEVモードでの走行中に、車速VSPが低下し、WSCモードに遷移する場合などに生じる。
【0079】
その後、ステップS210で、駆動力停止(エンジン出力、モータ出力停止)し、ステップS211に進む。
ステップS211では、車両停止を判定し、車両停止までステップS210に戻り、車両が停止したらステップS212に進む。
【0080】
ステップS212では、次回走行禁止フラグfINHDRIVEをセット(=1)し、続くステップS213にて、HEVシステムを停止した後、クラッチ故障監視走行を終了する。
【0081】
以上説明したフェイルセーフ制御の実行時の故障状態および車両状態に応じたフェイルセーフ処理を図7の制御一覧図に示す。
この一覧図を上から順に説明する。
(a)第1クラッチCL1が非故障、第2クラッチCL2がON故障、シフトポジションが走行レンジ(D/R)で、車両状態が、HEVモードで第2クラッチロックアップの場合は、HEVモードに固定する。これは、ステップS201→S204→S205→S206の処理による。
【0082】
(b)第1クラッチCL1が非故障、第2クラッチCL2がON故障、シフトポジションが走行レンジ(D/R)で、車両状態が、EVモードで第2クラッチロックアップか、HEVモードロックアップからEVモードロックアップへの遷移中は、EVモードに固定する。これは、ステップS201→S204→S205→S207→S208の処理による。
【0083】
(c)第1クラッチCL1が非故障、第2クラッチCL2がON故障、シフトポジションが走行レンジ(D/R)で、車両状態が、上記(a)(b)以外の場合は、駆動力停止し、停車後、HEVシステム停止(READY−OFF)する。これは、ステップS201→S204→(S205→S207→)S209→S210→S211→S212→S213の処理による。また、車両起動時には、ステップS101→S102→S105→S106→→S101の処理による。
【0084】
(d)第1クラッチCL1が非故障、第2クラッチCL2がON故障、シフトポジションがニュートラルレンジ(N)の場合は、車両状態に関わらず、駆動力停止し、停車後、HEVシステム停止(READY−OFF)する。これは、上記(c)と同様の処理による。また、ニュートラルレンジ(N)では、第2クラッチCL2は、マニュアルバルブ113aの位置(P)に応じ、ドレーン圧しか供給されないことからON故障にも関わらず解放される。
【0085】
(e)第1クラッチCL1が非故障、第2クラッチCL2がON故障、シフトポジションがパーキングレンジ(P)の場合は、HEVシステム起動(READY−ON)する。これは、ステップS101→S102→S105→S106→S107→S108の処理による。また、パーキングレンジ(P)では、マニュアルバルブ113aの位置(P)に応じ、ドレーン圧しか供給されないことからON故障にも関わらず解放される。
【0086】
(f)第1クラッチCL1、第2クラッチCL2共にON故障、シフトポジションが走行レンジ(D/R)の場合、車両状態に関わらず、駆動力停止し、停車後、HEVシステム停止(READY−OFF)する。これは、ステップS201→S204→S205→S207→S209〜S213の処理による。また、車両起動時には、ステップS101→S102→S105→S106→S101の処理による。
【0087】
(g)第1クラッチCL1、第2クラッチCL2共にON故障、シフトポジションが走行レンジ(D/R)の場合、車両状態に関わらず、駆動力停止し、停車後、HEVシステム停止(READY−OFF)する。これは、ステップS201→S204→S205→S207→S209〜S213の処理による。また、車両起動時には、ステップS101→S102→S105→S106→S101の処理による。
(h)第1クラッチCL1、第2クラッチCL2共にON故障、シフトポジションがパーキングレンジ(P)の場合は、起動許可し、HEVシステム起動(READY−ON)する。これは、ステップS101→S102→S105→S106→S107→S108の処理による。また、第2クラッチCL2は、マニュアルバルブ113aの位置(P)に応じ、ドレーン圧しか供給されないことからON故障にも関わらず解放される。
【0088】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1において第2クラッチCL2にON故障が生じた場合の動作を、図8のタイムチャートに基づいて説明する。
この図8の動作例では、t00の時点では、HEVモードで走行し、t1の時点で、第2クラッチCL2の故障が生じた場合の動作例である。
【0089】
ここで、まず、実施の形態1の動作を説明する前に、比較例の動作を説明する。
この比較例は、第2クラッチCL2のON故障検知時には、即座にエンジンEng、モータMGの駆動を停止させ、その後も、エンジンEng、モータMGの駆動を禁止するようにした例である。
この比較例の場合、第2クラッチCL2のON故障を検知したt1の時点で、エンジンEng、モータMGの駆動を停止させる。よって、車両は惰性走行により、車速VSPを点線により示すように低下する。
【0090】
その後、そして、車速VSPが予め設定されたロックアップ車速(L/U車速)よりも低下した後のt2の時点でREADY−OFF状態とし、t3の時点で停車する。この停車時には、エンジンEngおよびモータMGが停止したシャットダウン状態とする。
【0091】
この場合、t7の時点で、パーキングレンジ(P)で起動させようとしても、READY−OFF状態のままで起動できない。
【0092】
以上のように、比較例では、第2クラッチCL2のON故障検知時点から惰性走行でした走行させることができない。よって、退避行動などに制限を与える。また、仮に、EVモードによる走行を許可したとしても、その走行可能な距離は、強電バッテリBATのバッテリ残量(バッテリSOC)により制限される。
加えて、この停車状態ではREDY−OFF状態としており、レッカー移動などを待つ間、強電バッテリBATの電力を使用できないため、電動エアコン70を暖房運転や冷房運転させることができない。よって、車両の外部温度が高かったり低かったりした場合、運転者に負担を与えるおそれがある。
【0093】
次に、本実施の形態1の場合の動作を説明する。
本実施の形態1では、HEVモード走行中の第2クラッチCL2のON故障検出時であるt2の時点で、HEVモードに固定する。なお、この動作は、ステップS201→S204→205→S206に基づく。
よって、t1の時点以降も、HEVモードで走行を継続することができ、比較例よりも長い走行可能距離を確保できる。
【0094】
その後、運転者の要求駆動力の低下に伴って車速VSPを図において実線により示すように低下させ、ロックアップ車速(L/U車速)以下に低下したt4の時点で、エンジンEngおよびモータMGの駆動を停止させる。これは、ステップS205→S207→S209→S210の処理に基づく。
これにより、t5の時点で停車し、この停車時に、READY−OFF状態とする(ステップS210→S211→S212→S213の処理に基づく)。
この停車時に、運転者は、t6の時点でシフトポジションをパーキングレンジ(P)としている。さらに、運転者は、t7の時点で、起動操作(イグニッションスイッチをONとしスタートスイッチを押込操作)を行っている。
【0095】
このとき、本実施の形態1では、パーキングレンジ(P)であり、停車中であることから、HEVシステム起動を行う。よって、REASY−ONとし、モータMGを駆動させて図において一点鎖線により示すようにモータ回転数を上昇させ、第1クラッチCL1を接続してエンジンEngを始動させる(ステップS105→S106→S107の処理に基づく)。
【0096】
すなわち、この場合、図7の制御一覧図では(e)の状態に該当し、第1クラッチCL1は、制御指令に応じて締結させてモータMGの駆動によりエンジンEngを始動させることができる。また、マニュアルバルブ113aの位置に応じて、第2クラッチCL2への油圧供給路は、ドレーン側に連通されることから、ON固着されていても解放され、車両が走行することは無い。
【0097】
したがって、t7の時点から、その後、運転者が走行レンジ(D/R)へのシフトチェンジを行うt8の時点までの間、電動エアコン70の使用が可能であり、かつ、強電バッテリBATへの充電も可能である。この図8の動作例では、t7の時点から充電を行ってバッテリSOCが増加している。
【0098】
よって、車外環境が厳しい場所などにおいて、運転者が、或る程度の時間、レッカー車などを待つ間も、電動エアコン70の使用を可能として、運転者、乗員の負担を軽減することができる。特に、エンジンEngの駆動が可能であり、強電バッテリBATがバッテリSOCが枯渇するのを抑制し、より長時間の電力使用を可能とする。
その後、運転者がシフトポジションを走行レンジ(D/R)にシフトしたt8の時点では、HEVシステム停止する(ステップS109→S110→S111の処理による)。よって、第2クラッチCL2のON故障状態で、HEVシステムを起動させていても、車両が走行することは無い。
【0099】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置の効果を列挙する。
1)実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
エンジンEngとモータMGとを備えた動力源と、
モータMGと駆動輪としての左右前輪FL,FRとの間に設けられた無段変速機CVTと、
エンジンEngとモータMGとの間に設けられて、エンジンEngとモータMGとを断接する第1クラッチCL1と、
モータMGと無段変速機CVTとの間に設けられて、モータMGと無段変速機CVTとを断接する第2クラッチCL2と、
第2クラッチCL2の締結状態故障であるON故障を検知するクラッチ故障判定手段としてのクラッチ故障判定部30と、
第1クラッチCL1および第2クラッチCL2の制御により、エンジンEngとモータMGとを駆動源とするHEVモードと、モータMGのみを駆動源とするEVモードとを切り替える統合コントローラ10と、
を備えたハイブリッド車両のフェイルセーフ制御であって、
統合コントローラ10は、HEVモードによる走行中において、クラッチ故障判定部30が第2クラッチCL2のオン故障を検知した場合に、HEVモードからEVモードへの移行を禁止することを特徴とする。
したがって、第2クラッチCL2のON故障時に、EVモードへの移行を許可するものと比較して、燃料を使用してエンジンEngを駆動させて走行する分だけ、電力使用量を抑え、走行距離の延長が可能となる。
【0100】
2)実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
第1クラッチCL1の断接を調節する第1アクチュエータとしての第1クラッチソレノイドバルブ111と、
第2クラッチCL2の断接を調整する第2アクチュエータとしての第2クラッチソレノイドバルブ112と、
両クラッチソレノイドバルブ111,112に給電する電力源と、
電力源の故障を検知する電力源故障判定手段(統合コントローラ10の一部)と、
をさらに備え、
統合コントローラ10は、電力源故障判定手段が電力源の故障を検知した場合に、エンジンEngとモータMGとを強制的に停止することを特徴とする。
したがって、電力源が故障した時は、正確な情報を取得することができなくなり、車両を安定して走行することができない。
よって、電力源が故障した時にエンジンEngとモータMGとを強制的に停止させることにより、電力源故障により車両が不安定走行を継続するのを抑制できる。
【0101】
3)実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
クラッチ故障判定部30は、第1クラッチCL1のオン故障と第2クラッチCL2のオン故障とを個別に検知可能であり、
電力源故障判定手段は、クラッチ故障判定手段が第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2を同時に検知した場合(ステップS201、S204でのYES判定時)に、電力源の故障を検知することを特徴とする。
すなわち、両クラッチCL1、CL2が同時にON故障する場合というのは、機械的な故障発生よりも、電気的な異常が生じた可能性が高い。
よって、電力源側に電気的に異常を検知する構成を追加することなく、電源故障の検知が可能である。
【0102】
4)実施の形態1のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
第2アクチュエータとして、バルブ開度が大きいほど第2クラッチCL2を接続側に動作させる第2クラッチソレノイドバルブ112を備え、
クラッチ故障判定部30が、第2クラッチソレノイドバルブ112の第1所定開度以上のバルブ開度を所定時間としての異常判定時間以上検知した時、第2クラッチCL2がON故障であると判定することを特徴とし、
さらに、クラッチ故障判定手段は、指令電流が小さいほどバルブ開度を大きくする第2クラッチソレノイドバルブ112への指令電流が第1所定電流としての異常判定電流値以下の場合に、バルブ開度が第1所定開度以上と判定することを特徴とする。
したがって、第2クラッチソレノイドバルブ112がオーバシュートしてバルブ開度が一時的に大きくなったときに、ON故障と誤検出するのを抑制し、ON故障検出精度を向上できる。
加えて、第2クラッチソレノイドバルブ112への指令電流値をバルブ開度として見做して検出するため、スプールの位置などを検出する手段を設けることなくON故障時のバルブ開度の検出が可能となり、構成の簡略化やコストダウンを図ることができる
【0103】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置について説明する。
なお、他の実施の形態は、実施の形態1の変形例であるため、実施の形態1と共通する構成には実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点のみ説明する。
【0104】
(実施の形態2)
実施の形態2のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、第2クラッチCL2が、遮断状態のままとなったOFF故障を検出し、これに応じたフェイルセーフ処理を実行するようにした例である。
【0105】
すなわち、実施の形態2では、クラッチ故障判定部30は、ON故障判定処理と並行して図9に示すOFF故障判定処理を実行する。
ステップS401では、第2クラッチソレノイドバルブ112へのバルブ開度(各クラッチCL1、CL2の締結状態)を制御する指令電流値を読み込み、ステップS402に進む。
【0106】
そして、ステップS402では、指令電流値がOFF異常判定電流値を越えたか否か判定し、OFF異常判定電流値を越えた場合、ステップS403に進み、OFF異常判定電流値以下の場合はステップS401に戻る。なお、OFF異常判定電流値は、第2クラッチソレノイドバルブ112のクラッチ締結作動側とドレーン側とを連通するバルブ開度が、通常の制御で使用する開度範囲よりも大きな予め設定された異常開度を越えた開度となる電流値に設定されている。
【0107】
指令電流値がOFF異常判定電流値を越えた場合に進むステップS403では、指令電流値がOFF異常判定電流値を越えた状態の継続時間が、予め設定した異常判定時間を超えたか否か判定する。そして、異常判定時間を超えた場合はステップS404に進み、異常判定時間を超えない場合はステップS402に戻る。なお、異常判定時間は、正常作動時にオーバシュートにより異常開度を超える場合を排除可能な時間に設定されている。
【0108】
次に、図10のフローチャートにより、実施の形態2におけるクラッチ故障監視走行処理について説明する。
なお、実施の形態2では、実施の形態1においての一部を変更しているため、その変更箇所のみ説明する。
ステップS201において第2クラッチCL2がON故障していない場合に進むステップS500では、第2クラッチCL2がOFF故障しているか否か判定する。そして、OFF故障している場合はステップS209に進み、OFF故障していない場合はステップS202に進む。
【0109】
次に、実施の形態2の作用を説明する。
実施の形態2では、第2クラッチCL2のOFF故障を検知したときには、クラッチ故障フラグfCLFAILをセットし、エンジンEngおよびモータMGの駆動を停止させる。さらに、その後、車両が停止したら次回走行禁止フラグfINHDRIVEをセットし、HEVシステムを停止させる。以上、ステップS201→S500→S209〜S213の処理に基づく。
【0110】
実施の形態2では、第2クラッチCL2への指令電流系統が、ショートするなどして過大な電流が流れた場合、第2クラッチCL2は、解放状態に固定される。
このような場合には、エンジンEngおよびモータMGの駆動を停止させ、車両を停止させる。
【0111】
すなわち、第2クラッチCL2が解放状態に固定された場合、駆動源としてのエンジンEngおよびモータMGの駆動力を駆動輪である左右前輪FL,FRに伝達することができない。よって、車両の走行を継続させることができないとともに、エンジンEngおよびモータMGの駆動力が無駄に消費されることになる。
【0112】
したがって、このような場合には、エンジンEngおよびモータMGを停止させるフェイルセーフ処理を行うことで、無駄なエネルギ消費を抑制することができる。
【0113】
以下に、実施の形態2の効果を説明する。
2-1)実施の形態2のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
クラッチ故障判定部30は、第2クラッチCL2の遮断状態に固定されたOFF故障をさらに検知し、
統合コントローラ10は、第2クラッチCL2のOFF故障検知時、エンジンEngおよびモータMGを停止させることを特徴とする。
したがって、第2クラッチCL2のOFF故障時に、無駄なエネルギ消費を抑制することができる。
【0114】
2-2)実施の形態2のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置は、
バルブ開度が大きいほど第2クラッチCL2を接続側に動作させる第2クラッチソレノイドバルブ112を備え、
クラッチ故障判定部30が、第2クラッチソレノイドバルブ112の第2クラッチCL2の作動圧をドレーンさせる側のバルブ開度が異常判定開度以上の状態を異常判定時間以上検知した時、第2クラッチCL2がOFF故障であると判定することを特徴とし、
さらに、クラッチ故障判定手段は、指令電流が大きいほどドレーン側のバルブ開度を大きくする第2クラッチソレノイドバルブ112への指令電流がOFF異常判定電流値よりも大きいときバルブ開度が異常判定開度以上と判定することを特徴とする。
したがって、第2クラッチソレノイドバルブ112がオーバシュートしてバルブ開度が一時的に大きくなったときに、OFF故障と誤検出するのを抑制し、OFF故障検出精度を向上できる。
加えて、第2クラッチソレノイドバルブ112への指令電流値をバルブ開度としと見做して検出するため、スプールの位置などを検出する手段を設けることなくOFF故障時のバルブ開度の検出が可能となり、構成の簡略化やコストダウンを図ることができる
【0115】
以上、本発明のハイブリッド車両のフェイルセーフ制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0116】
例えば、実施の形態では、モータとして、力行と回生とが可能なモータジェネレータを示したが、これに限定されず、力行のみが可能なモータを用いてもよい。
また、実施の形態では、変速機として無段変速機を用いた例を示したが、変速機としては、無段変速機に限らず、手動、自動の他の変速機を用いてもよい。
【0117】
また、実施の形態では、バルブ開度の検出を指令電流値により検出するものを示したが、これに限定されず、各ソレノイドバルブのスプール位置を検出するストロークセンサを設け、この検出位置に基づいてバルブ開度を検出するようにしてもよい。
【0118】
また、実施の形態では、第2クラッチのON故障時に、EVモード走行中は、EVモードに走行に固定するようにした例を示したが、車両によっては、エンジンとモータとを強制的に停止させるようにしてもよい。
すなわち、エンジン負圧によりブレーキ踏力をアシストするブレーキアシスト装置を搭載している車両が知られている。このような車両では、EVモード時に、有る程度負圧を貯留する手段を備えているものの、その貯留量に限りがある。
よって、このような車両では、EVモードでの走行中に、第2クラッチのON故障を検出した場合には、エンジンとモータとを強制的に停止させる。
これにより、第2クラッチのON故障で、EVモード走行を継続した場合のように、エンジン負圧が生じないことによりブレーキアシスト機能が損なわれて、運転者に制動時に違和感を与えることを防止できる。
【0119】
また、実施形態では、コントローラ110〜118をそれぞれ設けるように記載したが、必ずしもこれに限らず、各コントローラは、1つのコントローラにまとめたものでも良い。
図1
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図10