(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の車両制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置の構成を説明する。
実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、左右前輪を駆動輪とし、変速機としてベルト式無段変速機を搭載したFFハイブリッド車両(以下、単にハイブリッド車両と称する)に適用したものである。
以下、実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置の構成を、「ハイブリッド車両の全体システム構成」、「ハイブリッド車両の制御系」[統合コントローラによる制御][強電系統の構成] [漏電判定制御]に分けて説明する。
【0010】
[ハイブリッド車両の全体システム構成]
図1は、実施の形態1の車両制御装置が適用されたハイブリッド車両の全体システムを示す。以下、
図1に基づいて、ハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
【0011】
ハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMG(以下、モータMGという)と、第2クラッチCL2と、無段変速機CVTと、を備えている。
【0012】
すなわち、ハイブリッド車両の駆動系は、駆動源としてのエンジンEngとモータMGとの出力が無段変速機CVTにより所定の変速比に変速されて駆動輪としての左右前輪FL,FRへ伝達可能に構成されている。
【0013】
また、このハイブリッド車両の駆動系は、エンジンEngとモータMGとの間に、駆動伝達を断接可能な第1クラッチCL1が設けられているとともに、モータMGと無段変速機CVTとの間に駆動伝達を断接可能な第2クラッチCL2が設けられている。したがって、両クラッチCL1、CL2を締結してエンジンEngとモータMGとの駆動力により走行するHEVモードを形成することができる。また、第1クラッチCL1を解放する一方で、第2クラッチCL2を締結して、モータMGのみの駆動力により走行するEVモードを形成することができる。
【0014】
エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
【0015】
なお、エンジンEngは、第1クラッチCL1を滑り締結しながらモータMGによりクランキングして始動可能である。また、低温時条件、高温時条件などでは図示を省略したスタータモータによる始動を可能とすることもできる。
【0016】
第1クラッチCL1は、エンジンEngとモータMGとの間に介装された摩擦締結要素である。この第1クラッチCL1として、後述する油圧制御回路110から供給される第1クラッチ油圧に基づくストローク制御より、完全締結、半締結、解放に切り替え可能なものを用いている。
【0017】
モータMGは、走行駆動源になる交流同期モータ構造であり、発進時や走行時に駆動トルク制御や回転数制御を行うとともに、制動時や減速時に回生ブレーキ制御による車両運動エネルギの強電バッテリBATへの回収を行なうものである。
なお、このモータMGと強電バッテリBATとの間には、力行時に直流を三相交流に変換し、回生時に三相交流を直流に変換するインバータINVが介在されている。
【0018】
第2クラッチCL2は、モータMGと駆動輪である左右の前輪FR,FLとの間に介装された摩擦締結要素である。この第2クラッチCL2も、油圧制御回路110から供給される第2クラッチ油圧によるストローク制御により、完全締結/スリップ締結/解放に制御される。
【0019】
無段変速機CVTは、図示は省略するがプライマリプーリと、セカンダリプーリと、両プーリに掛け渡されたベルトと、を有する周知のものである。そして、この無段変速機CVTは、油圧制御回路110からプライマリ油室とセカンダリ油室へ供給されるプライマリ圧とセカンダリ圧により、ベルトの巻き付き径を変えることで無段階の変速比を得る変速機である。
【0020】
なお、油圧制御回路110は、油圧源として、メインオイルポンプMOP(メカ駆動)と、サブオイルポンプSOP(モータ駆動)と、を有する。
メインオイルポンプMOPは、モータMGのモータ軸(=変速機入力軸)により回転駆動される。また、サブオイルポンプSOPは、内蔵のモータにより駆動され、主に潤滑冷却用油を作り出す補助ポンプとして用いられる。なお、サブオイルポンプSOPは、後述するDC/DCコンバータ80からの給電により駆動する。
【0021】
油圧制御回路110は、第1クラッチソレノイドバルブ111、第2クラッチソレノイドバルブ112、変速制御ソレノイドバルブ113を備えている。
第1クラッチソレノイドバルブ111および第2クラッチソレノイドバルブ112は、それぞれ、油圧源からのポンプ吐出圧を調圧することで生成したライン圧PLを元圧とし、そのストローク量に基づいて第1クラッチ圧および第2クラッチ圧を形成する。
変速制御ソレノイドバルブ113は、ライン圧PLを元圧とし、そのストローク量によりプライマリ圧とセカンダリ圧を作り出すもので、複数のソレノイドバルブから構成されている。
【0022】
ハイブリッド車両は、上述のように、1モータ・2クラッチと呼ばれるハイブリッド駆動システムが構成され、主な運転モードとして、「EVモード」、「HEVモード」、「(HEV)WSCモード」を有する。
【0023】
「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2を締結してモータMGのみを駆動源に有する電気自動車モードである。
「HEVモード」は、両クラッチCL1,CL2を締結してエンジンEngとモータMGを駆動源に有するハイブリッド車モードである。
「WSCモード」は、「HEVモード」において、モータMGを回転数制御し、第2クラッチCL2を要求駆動力相当の締結トルク容量にてスリップ締結するCL2スリップ締結モードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」での停車からの発進域や低速からの停車域において、エンジンアイドル回転数以上で回転するエンジンEngと左右前輪FL,FRの回転差を、CL2スリップ締結により吸収するために選択される。なお、「WSCモード」が必要な理由は、駆動系にトルクコンバータのような回転差吸収継手を持たないことによる。
【0024】
[ハイブリッド車両の制御系]
次に、ハイブリッド車両の制御系について説明する。
このハイブリッド車両の制御系は、インバータINVと、強電バッテリBATと、統合コントローラ(モードコントローラ)10と、変速機コントローラ11と、クラッチコントローラ12と、エンジンコントローラ13と、モータコントローラ14と、バッテリコントローラ15と、ACコントローラ16と、を備えている。なお、本実施例においては、各種コントローラを個別に備えて制御系を構成しているが、1つのコントローラにまとめて制御系を構成するようにしても良い。
【0025】
ハイブリッド車両の電源系は、モータジェネレータ電源としての強電バッテリBATと、12V系負荷電源としての12Vバッテリ(図示省略)と、を備えている。
【0026】
インバータINVは、直流/交流の変換を行い、モータMGの駆動電流を生成する。また生成する駆動電流の位相を逆転することでモータMGの出力回転を反転する。
強電バッテリBATは、モータジェネレータMGの電源として搭載された二次電池であり、例えば、多数のセルにより構成したセルモジュールを、バッテリパックケース内に設定したリチウムイオンバッテリが用いられる。なお、本実施の形態では、リチウムイオンに限らず、ニッケル水素電池などの蓄電手段であっても良い。
また、強電バッテリBATは、車両のメンテナンス時等に安全確保のために、電池システム4からの高電圧直流電圧の出力を遮断するサービスディスコネクトスイッチSDSWを備える。
【0027】
インバータINVは、モータコントローラ14による力行/回生制御により、強電バッテリBATの放電によりモータMGを駆動する力行時、強電バッテリBATからの直流電力を三相交流に変換してモータMGに供給する。また、モータMGでの発電により強電バッテリBATを充電する回生時、モータMGからの三相交流電力を直流電力に変換する。
【0028】
統合コントローラ10は、マイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU)により構成され、バッテリ残量(バッテリSOC)、アクセル開度APO、車速VSPなどから目標駆動トルクなどを演算する。そして、統合コントローラ10は、その演算結果に基づいて、各アクチュエータ(モータMG、エンジンEng、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、無段変速機CVT)に対する指令値を演算し、各コントローラ11〜15へと送信する。
【0029】
なお、バッテリSOCは、バッテリコントローラ15から入力する。アクセル開度APOは、アクセル開度センサ21により検出する。車速VSPは、変速機出力回転数に同期した値であって、変速機出力回転数センサ22により検出する。
また、この統合コントローラ10は、メインオイルポンプMOPの吐出流量と、サブオイルポンプSOPの吐出流量、ライン圧PLの制御を行う。
【0030】
変速機コントローラ11は、統合コントローラ10からの変速指令を達成するように変速制御を行なう。この変速制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、変速制御ソレノイドバルブ113の制御に基づいて無段変速機CVTのプライマリプーリに供給する油圧と、セカンダリプーリに供給する油圧をそれぞれ制御することで行われる。
そして、ライン圧PLからプライマリプーリに供給する油圧と、セカンダリプーリに供給する油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0031】
クラッチコントローラ12は、クラッチの入力及び出力回転数、第2クラッチ出力回転数、クラッチ油温などを入力とし、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令および第2クラッチ制御指令を達成するように、第1クラッチ制御、第2クラッチ制御を行う。
【0032】
この第1クラッチ制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第1クラッチソレノイドバルブ111の制御に基づいて第1クラッチCL1に供給される油圧を制御することで行われる。
【0033】
また、第2クラッチ制御は、油圧制御回路110を介して供給されたライン圧PLを元圧として、第2クラッチソレノイドバルブ112の制御に基づいて第2クラッチCL2に供給される油圧を制御することで行われる。
【0034】
そして、ライン圧PLから第1クラッチCL1に供給される油圧と、第2クラッチCL2に供給される油圧を作り出した際に生じた余剰圧は、第1クラッチCL1や第2クラッチCL2の冷却や潤滑に回される。
【0035】
エンジンコントローラ13は、エンジン回転数センサ23が検出するエンジン回転数や統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令値などを入力する。そして、エンジンコントローラ13は、始動制御や燃料噴射制御や点火制御や燃料カット制御などを行って目標エンジントルク指令値を達成するようにエンジントルクを制御する。
【0036】
モータコントローラ14は、統合コントローラ10からの目標モータトルク指令値、モータ回転数指令値や、モータ回転数センサ24が検出するモータ回転数などを入力する。そして、モータコントローラ14は、目標モータトルク指令値やモータ回転数指令値を達成するようにモータMGの力行制御や回生制御、モータクリープ制御、モータアイドル制御などの制御を行なう。
【0037】
バッテリコントローラ15は、バッテリ電圧センサ25や、バッテリ温度センサ26などからの入力情報に基づき、強電バッテリBATの残量であるバッテリSOCやバッテリ温度などを管理し、その情報を統合コントローラ10へと送信する。
【0038】
ACコントローラ16は、各種車室温度に関係する環境因子を検出するセンサ(図示省略)の検出に基づいて、電動エアコン70の作動を制御する。この電動エアコン70は、強電バッテリBATからの給電により作動し、車内温度を調整するもので、この電動エアコン70には、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ71が設けられている。この電動コンプレッサ71は、インバータinv2を内蔵し(
図3参照)、強電バッテリBATから供給される直流電力を交流電力に変換し、モータ71m(
図3参照)により駆動する。なお、強電バッテリBATには、電動エアコン70と並列にDC/DCコンバータ80が接続されている。このDC/DCコンバータ80は、強電バッテリBATの電圧を変圧した上で、サブオイルポンプSOPなどの車載の電気機器に直流電力を供給する。
【0039】
[統合コントローラによる制御]
次に、統合コントローラ10による制御について簡単に説明する。
統合コントローラ10は、
図2に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標充放電出力演算部300と、動作点指令部400と、を備えている。
【0040】
目標駆動トルク演算部100では、アクセル開度APOと車速VSPなどを入力し、目標定常トルクマップ(エンジントルクマップの一例)とアシストトルクマップ(モータジェネレータトルクマップの一例)とから、目標駆動トルクtTd(目標車両トータルトルク)を算出する。
【0041】
モード選択部200では、目標とする運転モード、すなわち、HEVモードとEVモードとのいずれの運転モードとするかを演算する。なお、このモード選択部200による運転モードの設定は、例えば、予め設定されたモード遷移マップに基づいて車速VSPとアクセル開度APOとに応じて、EVモードとHEVモードとを選択することができるが、詳細は省略する。
【0042】
目標充放電出力演算部300では、バッテリSOCが低いときは発電量を増加させ、バッテリSOCが高いときは発電量を絞り、モータアシストを増やすように目標充放電電力tPを演算する。
【0043】
動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標駆動トルクtTdと運転モードと車速VSPと目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標を演算し、指令値として出力する。この動作点到達目標としては、目標エンジントルク、目標モータトルク、目標CL2トルク容量、目標変速比、第1クラッチソレノイド電流指令、第2クラッチソレノイド電流指令を演算する。なお、本実施例では、動作点司令部が、目標エンジントルク、目標モータトルク、目標CL2トルク容量、目標変速比、第1クラッチソレノイド電流指令、第2クラッチソレノイド電流指令を統合して演算しているが、指令値を算出する手段を各々に設けるようにしても良い。
【0044】
[強電系統の構成]
上述の統合コントローラ10は、さらに強電バッテリBATに接続された強電系統90の漏電判定制御を実行する。
そこで、この漏電判定制御の説明にあたり、まず、漏電判定の対象である強電系統90の構成を説明する。
【0045】
図3は強電系統90を示す回路図であり、強電系統90は、強電バッテリBATから、モータMG、電動エアコン70、DC/DCコンバータ80へ電力供給を行う。この電力供給を行う配線として、
図3に示すように、モータMGおよび電動コンプレッサ71に接続された第1強電系統91と、DC/DCコンバータ80に接続された第2強電系統92と、を備えている。また、第1強電系統91は、分岐部91cで、モータMGとの間に介在されたインバータINVに接続されたモータ分岐線部91aと、電動コンプレッサ71に内蔵されたインバータinv2に接続されたエアコン分岐線部91bとに並列に分岐されている。
【0046】
さらに、強電系統90の途中には、強電リレースイッチ93が設けられている。この強電リレースイッチ93は、強電バッテリBAT内に配置され、モータ断接部およびエアコン断接部を兼ねて、強電バッテリBATとモータMGおよび電動エアコン70との間の給電を断接する。さらに、強電リレースイッチ93は、強電バッテリBATとDC/DCコンバータ80との間の給電も断接する。
【0047】
抵抗検出部95は、強電系統90の強電リレースイッチ93よりも強電バッテリBAT側に接続されて、強電系統90の絶縁抵抗(図において点線により示す強電系統90と対地との間の浮遊抵抗である)を検出している。尚、抵抗検出部95は、強電バッテリBATの低電位側系統に接続されているが、高電位側系統に接続されるものであっても良く、強電系統の絶縁抵抗値が検知できる部位であれば、接続される場所は問われない。
また、強電系統90は、リレースイッチ上流領域A、リレースイッチ下流領域B、エアコン領域Cの、3つの領域に分けられている。
リレースイッチ上流領域Aは、強電系統90において強電リレースイッチ93よりも上流(強電バッテリBAT)側の領域である。
また、エアコン領域Cは、第1強電系統91のエアコン分岐線部91bにおいて電動エアコン70を含む領域である。
また、リレースイッチ下流領域Bは、強電系統90の強電リレースイッチ93よりも下流側の領域において、エアコン領域Cを除く領域である。
【0048】
[漏電判定制御]
次に、抵抗検出部95の検出に基づいて統合コントローラ10が実行する漏電判定制御を、
図4にフローチャートに基づいて説明する。
この漏電判定制御は、図示を省略したイグニッションスイッチをONとして走行可能なREADY-ON状態になって実行する。
【0049】
まず、ステップS101では、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗が、予め設定された漏電判定閾値未満の状態が予め設定された第1判定時間than1を越えて継続しているか否かを判定する。絶縁抵抗が漏電判定閾値未満の状態が第1判定時間than1を越えて継続している場合はステップS102に進み、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上であるか、漏電判定閾値未満であるがその継続時間が第1判定時間than1を越えない場合はスタートに戻る。
【0050】
すなわち、強電系統90において漏電が発生していない場合、強電系統90は接地側に対して各絶縁抵抗体94a〜94eが介在されており、絶縁性が確保され絶縁抵抗は極めて高い値となっている。
それに対して、漏電発生時には、各絶縁抵抗体94a〜94eのいずれかを介在させない通電が生じていることから、絶縁抵抗は大幅に低下する。したがって、漏電判定閾値は、このような漏電発生時の絶縁抵抗相当の値に予め設定しておく。
【0051】
また、強電系統90においてモータMGなどに給電を行っている場合、電圧や電流値が変動する。よって、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗も、このような電圧や電流値の変動の影響により変動する。したがって、第1判定時間than1の継続を待つことにより、このような変動の影響による誤検出を排除している。
【0052】
以上のように、ステップS101の判定は、強電系統90に、漏電が発生しているか否かの第1段階の判定である。したがって、絶縁抵抗が漏電判定閾値未満の状態が第1判定時間than1を越えて継続している場合は、第1段階の漏電発生検出であり、ステップS102以降の処理は、漏電判定中の処理であって、漏電部位を特定するための処理である。
【0053】
漏電発生時に進むステップS102では、絶縁抵抗低下検知と判定し、後述する電圧抵抗低下異常フラグ(
図5参照))をセット(ON)した後、ステップS103に進む。
ステップS103では、ステップS101において漏電発生との判定を行った時点で電動エアコン70が作動していたか否か判定し、作動していた場合はステップS104に進み、作動していない場合は、ステップS110に進む。
【0054】
ステップS103において電動エアコン70が作動していた場合に進むステップS104では、漏電部位が第1強電系統91において電動エアコン70側のエアコン領域C(
図3参照)であるか否かの判定処理を開始する。
すなわち、ステップS104〜ステップS108の処理は、漏電部位が第1強電系統91において電動エアコン70側のエアコン領域C(
図3参照)であるか否かを判定する処理である。
【0055】
ステップS104に続くステップS105aでは、現在の走行モードがEVモードであるか否か判定し、EVモードの場合はステップ105bに進んでエンジンEngを始動させてHEVモードに遷移させるとともに、エンジン停止禁止要求を出力する。また、現在の走行モードがHEVモードの場合はステップS105bに進んでHEVモードに維持するとともに、エンジン停止禁止要求を出力する。
【0056】
すなわち、ステップS105b、S105cでは、HEVモードに維持するべくエンジン停止禁止要求を出力した後、ステップS106に進む。
【0057】
したがって、後述するステップS109、S110において、漏電部位の特定を行うまでの間、エンジン停止禁止要求により、EVモードへの遷移を禁止しHEVモードに維持する。なお、エンジン停止禁止要求時は、統合コントローラ10は、エンジン停止禁止要求フラグ(
図5、
図6参照)をセットし、エンジンコントローラ13は、このエンジン停止禁止要求フラグのセット中は、エンジンEngの停止を禁止する。この場合、例えば、統合コントローラ10が、周知のアイドルストップ制御を実行するような場合でも、エンジンEngの駆動を停止させることなく、駆動状態を維持する。
【0058】
ステップS105b,S105cによりHEVモードに維持した後に進むステップS106では、電動エアコン70の停止要求を出力した後、ステップS107に進む。なお、統合コントローラ10は、電動エアコン70の停止要求として、エアコン停止要求フラグ(
図5、
図6参照)をセット(OFFからON)する。また、ACコントローラ16は、このエアコン停止要求フラグによる停止要求を受けて、電動エアコン70(電動コンプレッサ71のモータ71m)を停止させるのと同時に、エアコン作動フラグ(
図5、
図6参照)を、作動から非作動に切り替える。
【0059】
電動エアコン70の停止後に進むステップS107では、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗が、漏電判定閾値以上の状態が予め設定された第2判定時間than2を越えて継続しているか否かを判定する。絶縁抵抗が漏電判定閾値以上の状態が第2判定時間than2を越えて継続した場合は、ステップS109に進み、それ以外(絶縁抵抗が漏電判定閾値未満、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上の継続時間が第2判定時間than2以下)の場合はステップS108に進む。なお、このステップS107において用いる漏電判定閾値は、ステップS101と同じ値にしてもよいし、このステップS101で用いた値よりも高い値を用いてもよい。また、第2判定時間than2は、ステップS101で用いた漏電判定時間と同値としてもよいし、異なる値を用いてもよい。
【0060】
すなわち、ステップS107では、電動エアコン70の停止により、ステップS101で判定した漏電状態が解消されたか否かを判定している。そして、電動エアコン70の停止により漏電状態が解消された場合は、ステップS109に進んで、漏電個所がエアコン領域Cであると判定する。また、ステップS109では、ステップS105にて出力したエンジン停止禁止要求を停止する。具体的には、エンジン停止禁止要求フラグをリセット(OFF)する。
【0061】
一方、ステップS107において、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上の状態が第2判定時間than2を越えて継続しない場合に進むステップS108では、電動エアコン70の停止から、予め設定した第3判定時間than3(
図6参照)が経過したか否か判定する。そして、第3判定時間than3が経過するまではステップS107に戻ってこのステップS107の処理を繰り返す。また、第3判定時間than3が経過しても、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上の状態が第2判定時間than2を越えて継続しない場合は、ステップS110に進む。
そして、ステップS110では、漏電個所がエアコン領域C以外の領域であると判定する。
【0062】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の作用を、
図5、
図6のタイムチャートに基づいて説明する。
図5のタイムチャートに基づいて、エアコン領域Cに漏電が生じた場合の動作を説明する。なお、
図5および
図6の動作例では、図示を省略したイグニッションスイッチをONとして、運転者は図示を省略したアクセルペダルを踏み込んで車両を走行させている。したがって、車両は走行可能なREADY-ON状態であり、かつ、ドライバ要求駆動力が発生(ON)した状態となっている。
【0063】
そして、この動作例は、t11の時点で、漏電が発生した場合の動作を示している。
この漏電発生により、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗が低下し、漏電判定閾値未満の状態が第1判定時間than1を越えて継続すると、統合コントローラ10は、絶縁抵抗低下検知(漏電検知)とし電圧抵抗低下異常フラグをセット(ON)する。なお、以上の処理はステップS101→S102の処理による。
【0064】
さらに、統合コントローラ10は、電圧抵抗低下異常フラグをセットと同時に、t11の時点でエンジン始動要求およびエンジン停止禁止要求を出力し、エンジン停止禁止要求フラグをセットする。これにより、ハイブリッド車両は、HEVモードに維持される。
【0065】
その後、漏電を検知したt11の時点で、電動エアコン70が作動していた(エアコン作動フラグON)ことから、統合コントローラ10は、漏電部位特定用のエアコン停止要求フラグをセット(ON)し、電動エアコン70を停止する(t12の時点)。なお、以上の処理はステップS104〜S106の処理による。
【0066】
エアコン領域Cの漏電時には、上述の電動エアコン70の停止により、エアコン領域Cの漏電が一時的に解消され、絶縁抵抗が漏電判定閾値よりも上昇し、この状態が、電動エアコン70を停止させている間、継続する。よって、この絶縁抵抗が漏電判定閾値よりも高い状態が、第2判定時間than2を越えて継続した時点(t13の時点)で、エアコン領域Cの漏電と判定し、エアコン領域漏電異常フラグをセット(ON)する(ステップS107→S109の処理に基づく)。なお、このエアコン領域漏電異常フラグのセットに応じて、エンジン停止禁止要求フラグをリセット(OFF)する。
【0067】
また、上記のt12の時点からt13の時点の間の漏電個所の判定中(絶縁抵抗が漏電判定閾値よりも高い状態が、第2判定時間than2を越えて継続するか否かを判定している間)、車両の運転モードはHEVモードに維持している。このため、モータMGによりエンジン始動を行うなどのモード遷移を行った場合と比較して、強電系統90の電圧が安定し、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗が安定し、漏電検出精度を高く維持できる。加えて、絶縁抵抗が漏電判定閾値よりも高い場合に、瞬時に漏電個所をエアコン領域Cと判定するのではなく、その状態が、第2判定時間than2を越えて継続するか否かで、漏電個所の特定を行っている。よって、モータMGその他の強電バッテリBATの電力を使用する機器の駆動状態変動による一時的な絶縁抵抗変動による誤検出の発生を抑制することができる。
【0068】
しかも、この判定の直前にEVモードであれば、強制的にHEVモードにモード遷移した上で、モードの切り替えを禁止して、HEVモードを維持している。
【0069】
これは、漏電を検知している際中において、EVモードで走行中に、運転者からの加速要求を受けた場合、加速要求に応じてHEVモードに切り替えてしまえば、上記のようにエンジン始動に伴う絶縁抵抗変動により、漏電の誤検出を行うおそれがある。そこで、このように漏電検知する前にHEVモードに遷移させておけば、漏電検知中にドライバからの加速要求があっても、EVモードからHEVモードに遷移することはなくなるため、誤検出を抑制することができる。
【0070】
また、それに加えて、漏電検知前にHEVモードに切り替えることで、漏電検知中の走行において、エンジンとモータとの両方で駆動力を確保することができるため、車両の走行性を犠牲にせずに済む。
してみれば、本実施の形態1では、HEVモードとした上で、EVモードへの切り替えを禁止するため、上記のように漏電検出の精度を高めることができるとともに、運転者の要求駆動力に応じた駆動が可能で十分な走行性を確保することができる。
なお、
図5のタイムチャートでは、その後、t14の時点で、運転者が図示を省略したイグニッションスイッチをOFFとし、統合コントローラ10は、電動エアコン70を停止させるとともに、車両を、走行できないREADY-OFF状態とする。
【0071】
次に、
図6のタイムチャートに基づいて、エアコン領域C以外の領域に漏電が生じた場合の動作を説明する。
【0072】
この
図6の動作例は、t21の時点で、エアコン領域C以外の領域で漏電が発生した場合の動作を示している。
この漏電発生により、抵抗検出部95が検出する絶縁抵抗が漏電判定閾値未満に低下した状態が第1判定時間than1を越えると、統合コントローラ10は、漏電検出として、電圧抵抗低下異常フラグをセット(ON)する(t21の時点)。なお、この処理は、ステップS101→S102の処理に基づく。
【0073】
そして、統合コントローラ10は、t21の時点の電圧抵抗低下異常フラグのセットと同時に、エンジン停止禁止要求フラグをセットし、HEVモードに維持する。
【0074】
次に、統合コントローラ10は、t22の時点で、エアコン停止要求フラグをセット(ON)し、これにより、電動エアコン70を停止させる。
この電動エアコン70を停止するまでの処理は、ステップS101〜S106の処理に基づいており、
図5の動作例と同様の処理である。
【0075】
次に、エアコン領域C以外の領域に漏電が発生している
図6の動作例では、電動エアコン70を停止させても、漏電状態が継続し、絶縁抵抗が低下した状態が継続する。
したがって、ステップS107、S108の処理に基づいて、第3判定時間than1が経過しても絶縁抵抗は漏電判定閾値よりも低い状態に維持される。
このため、電動エアコン70の停止要求出力からの経過時間が第3判定時間than3を越えたt23の時点で、エアコン領域C以外の領域の漏電と判定し、エアコン領域漏電異常フラグをセット(ON)する(ステップS108→S109の処理に基づく)。
また、このエアコン領域漏電異常フラグのセットに応じて、エンジン停止禁止要求フラグをリセット(OFF)する。
なお、
図6のタイムチャートでは、その後、t24の時点で、運転者が図示を省略したイグニッションスイッチをOFFとし、統合コントローラ10は、電動エアコン70を停止させるとともに、車両を、走行できないREADY-OFF状態とする。
【0076】
以上のように、
図6の動作例にあっても、t22の時点からt23の時点における漏電個所の判定中に、車両の運転モードをHEVモードに維持し、EVモードへの切り替えを禁止している。したがって、上記のように検出精度を向上させることが可能である。
【0077】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置の効果を列挙する。
1)実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、
エンジンEngとモータMGとを備えた動力源と、
モータMGへ給電する強電バッテリBATと、
強電バッテリBATからモータMGに配索された強電系統90の漏電発生を検知する漏電検知手段として統合コントローラ10において
図4の処理を実行する部分と、
漏電検知手段の漏電検知中に、エンジンEngとモータMGとの駆動力により走行するHEVモードと、モータMGのみの駆動力により走行するEVモードと、の間のモード切替を禁止するモードコントローラとしての統合コントローラ10と、
を備えていることを特徴とする。
したがって、漏電検知を行っている際中に、HEVモードとEVモードとを切り替えることによる絶縁抵抗変動を抑制し、漏電の誤検知を抑制し、漏電検出精度を向上することができる。
【0078】
2)実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電系統90に、強電バッテリBATからの給電により車内温度を調整する電動エアコン70をさらに備えていることを特徴とする。
したがって、強電系統90にさらに電動エアコン70を備え、絶縁抵抗変動が生じるおそれが高い構成であるにも関わらず、上記1)の運転モード切替に伴う絶縁抵抗変動を抑制し、漏電の検出精度を向上できる。
【0079】
3)実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、
モードコントローラとしての統合コントローラ10は、漏電検知手段の漏電発生判定時に、前もって前記HEVモードとした上で、モード切替を禁止するステップS105の処理を実行することを特徴とする。
したがって、上記1)のようにHEVモードとEVモードとを切り替えることによる絶縁抵抗変動を抑制して漏電検出精度を向上しながらも、運転者の要求駆動力が大きい場合に、漏電検知中にモード切替を行うことなく要求駆動力の出力が可能である。
【0080】
4)実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、強電系統90と対地との絶縁抵抗の検出に基づいて、絶縁抵抗が予め設定された漏電判定閾値未満に低下した場合に、漏電発生と判定するステップS101の処理を行うことを特徴とする。
絶縁抵抗は、強電系統90においても比較的容易に検出することができるため、強電系統90における漏電を、容易に判定できる。
加えて、実施の形態1では、絶縁抵抗が予め設定された漏電判定閾値未満に低下した状態が第1判定時間than1を越えて継続して漏電と判定するため、一瞬の漏電判定閾値未満の低下で漏電判定を行うものと比較して、いっそう検出精度を向上できる。
【0081】
5)実施の形態1のハイブリッド車両の車両制御装置は、
前記強電系統90に、前記強電バッテリBATからの給電により車内温度を調整する電動エアコン70をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、強電系系統の漏電発生を検知した後における電動エアコン70への給電停止(S106)により、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上に増加した場合に、電動エアコン70で漏電発生と検知する(S107)ことを特徴とする。
したがって、強電系統90全体の絶縁抵抗を検出しながらも、単に電動エアコン70を停止させることで、漏電個所にエアコン領域Cが含まれるか否かを検出できる。
さらに、これにより、漏電個所に応じてフェイルセーフ制御性能も向上可能となる。例えば、電動エアコン70で漏電が発生した場合には、次の起動時には、電動エアコン70の作動を禁止した状態で、車両の起動を許可することが可能である。
加えて、漏電個所がエアコン領域Cか否かを判定する際に、絶縁抵抗が漏電判定閾値以上の状態が第2判定時間than2を越えて継続するのを待つため、一瞬の漏電判定閾値以上の増加で判定を行うものと比較して、いっそう検出精度を向上できる。
【0082】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態のハイブリッド車両の車両制御装置について説明する。
なお、他の実施の形態は、実施の形態1の変形例であるため、実施の形態1と共通する構成には実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態1との相違点のみ説明する。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2のハイブリッド車両の車両制御装置は、実施の形態1の変形例であり、実施の形態1においてステップS110の処理でエアコン領域C以外の漏電と判定した場合に、さらに、漏電部位の特定を行うようにした例である。
【0084】
すなわち、統合コントローラ10は、漏電個所が、強電リレースイッチ93よりも上流(強電バッテリBAT)側のリレースイッチ上流領域Aと、強電リレースイッチ93の下流(モータMG)側のリレースイッチ下流領域Bのいずれであるかを判定する。
【0085】
図7はこのリレースイッチ上流領域Aと、リレースイッチ下流領域Bとの漏電判定処理を示すフローチャートである。
この処理は、走行を終了して運転者が図外のイグニッションスイッチ(IGN)をOFFとし、READY-OFF状態とする処理を実行した時点から開始する。
【0086】
ステップS201では、イグニッションスイッチ(IGN)のOFFに応答して、強電バッテリBATと、モータMGおよびDC/DCコンバータ80と、の間を断接する強電リレースイッチ93が遮断されたか否かを判定する。
【0087】
続くステップS202では、図外のイグニッションスイッチ(IGN)をOFFとする前の走行中に絶縁抵抗の低下(漏電判定)があった(電圧抵抗低下異常フラグセット)か否か判定する。そして、絶縁抵抗が低下して電圧抵抗低下異常フラグがセット(S102)されている場合は、ステップS203に進み、電圧抵抗低下異常フラグがセットされていない場合はステップS207に進む。なお、このステップS207では、「漏電部位無し」と判定した後、処理を終了する。
【0088】
走行中に絶縁抵抗の低下(漏電検知)があった場合に進むステップS203では、現在、絶縁抵抗が復帰した(少なくとも漏電判定閾値よりも大)か否か判定し、復帰した場合はステップS204に進み、復帰していない場合はステップS206に進む。そして、ステップS206では、リレースイッチ上流領域Aの漏電と判定する。
【0089】
すなわち、リレースイッチ上流領域Aに漏電が発生している場合、イグニッションスイッチ(IGN)をOFFとすることで強電リレースイッチ93を遮断しても漏電状態は継続する。
したがって、ステップS203では、走行中に絶縁抵抗が漏電判定閾値未満となって電圧抵抗低下異常フラグがセットされた後、強電リレースイッチ93の遮断で絶縁抵抗が復帰した場合、リレースイッチ上流領域Aの漏電と判定する。
【0090】
一方、リレースイッチ下流領域Bとエアコン領域Cとのいずれか一方、あるいは両方に漏電が生じている場合、強電リレースイッチ93を遮断すると、漏電は解消され、絶縁抵抗が復帰する。よって、この場合、走行中に、ステップS109によるエアコン領域Cの漏電判定がなされていない場合は、リレースイッチ下流領域Bにおいて漏電が発生していることになる。
【0091】
したがって、ステップS203において絶縁抵抗が復帰しない場合に進むステップS204では、走行中にエアコン領域Cの漏電との判定があったか否か判定する。そして、エアコン領域Cの漏電判定があれば、本処理を終了し、エアコン領域Cの漏電判定が無ければステップS205に進み、リレースイッチ下流領域Bの漏電と判定する。
【0092】
以上のように、実施の形態2のハイブリッド車両の車両制御装置は、漏電が生じた場合、漏電個所を、リレースイッチ上流領域Aと、リレースイッチ下流領域Bと、エアコン領域Cのいずれかを特定することができる。
したがって、漏電の発生部位に応じたフェイルセーフ制御を行うことも可能である。例えば、エアコン領域Cのみに漏電が生じ、リレースイッチ上流領域Aおよびリレースイッチ下流領域Bに漏電が生じていない場合は、電動エアコン70の作動を禁止した上で、強電リレースイッチ93を接続して、走行を許可することができる。
【0093】
なお、実施の形態2では、漏電が、エアコン領域Cとリレースイッチ下流領域Bとに同時に発生した場合、漏電発生後のイグニッションスイッチ(IGN)のOFF時には、ステップS204の処理ではYESと判定する。したがって、リレースイッチ下流領域Bの漏電と判定することはできない。
【0094】
しかしながら、エアコン領域Cの漏電発生と判定したとき、あるいは、この漏電判定後である次回の走行時に、電動エアコン70の作動を禁止することにより、この次回の走行終了時に、リレースイッチ下流領域Bで漏電発生と判定することができる。
【0095】
すなわち、この次回走行時には、ステップS101→S102により絶縁抵抗低下(漏電)を検出し、電動エアコン70は停止していることから、エアコン領域Cの漏電判定がなされない。
よって、この次回の走行終了時に、
図7の処理を実行した際には、ステップS204においてNOと判定し、ステップS205に進んでリレースイッチ下流領域Bで漏電発生と判定する。
【0096】
(実施の形態2の効果)
以下に、実施の形態2のハイブリッド車両の車両制御装置の効果を説明する。
2-1)実施の形態2のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATとモータMGとの間の強電系統90に、強電バッテリBATとモータMGとの間の給電を断接するモータ断接部としての強電リレースイッチ93をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、強電系統の漏電発生を検知した(ステップS101、S102)後における強電リレースイッチ93の遮断により、強電リレースイッチ93より強電バッテリBAT側の絶縁抵抗が前記漏電判定閾値以上に増加した場合に、強電リレースイッチ93よりもモータMG側であるリレースイッチ下流領域Bでの漏電発生と検知することを特徴とする。
したがって、漏電個所をより正確に特定することが可能であり、漏電検出性能を向上できる。
また、これにより、フェイルセーフ制御性能も向上可能となる。
【0097】
2-2)実施の形態2のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATとモータMGとの間の強電系統90に、強電バッテリBATとモータMGとの間の給電を断接するモータ断接部としての強電リレースイッチ93をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、絶縁抵抗が漏電判定閾値未満に低下した(ステップS101、S102)後、強電リレースイッチ93を遮断しても、強電リレースイッチ93の前記強電バッテリBAT側の絶縁抵抗が漏電判定閾値未満の場合に、強電系統90の強電リレースイッチ93よりも強電バッテリBAT側であるリレースイッチ上流領域Aで漏電発生と検知することを特徴とする。
したがって、漏電個所をより詳細に特定することが可能であり、漏電検出性能を向上できる。
【0098】
(実施の形態3)
実施の形態3のハイブリッド車両の車両制御装置は、実施の形態1の変形例であり、
図8に示すように、強電系統90のエアコン分岐線部91bに、電動エアコン70への給電を断接するエアコン断接部としてのエアコンリレースイッチ393を設けた例である。
【0099】
この実施の形態3では、実施の形態1においてステップS106の処理により電動エアコン70の停止要求の際に、エアコンリレースイッチ393を遮断する。そして、S107の処理では、抵抗検出部95が、エアコンリレースイッチ393の強電バッテリBAT側の絶縁抵抗を検出する。このとき、強電バッテリBAT側の絶縁抵抗が漏電判定閾値以上に増加した場合に、強電系統90のエアコンリレースイッチ393よりも電動エアコン70側で漏電発生と判定する
また、ステップS109の処理によりエアコン領域漏電判定を行った際にも、エアコンリレースイッチ393を遮断して電動エアコン70の作動を停止させるようにしてもよい。
【0100】
以下に、実施の形態3のハイブリッド車両の車両制御装置を説明する。
3-1)実施の形態3のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATと電動エアコン70との間の強電系統90に、強電バッテリBATから電動エアコン70への給電を断接するエアコン断接部としてのエアコンリレースイッチ393をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、絶縁抵抗が漏電判定閾値未満に低下して強電系統の漏電発生を検知した後におけるエアコンリレースイッチ393の遮断により、エアコンリレースイッチ393より強電バッテリBAT側の絶縁抵抗が漏電判定閾値以上に増加した場合に、強電系統90の前記エアコンリレースイッチ393よりも電動エアコン70側での漏電発生と検知することを特徴とする。
したがって、モータMGの他に、強電バッテリBATからの給電により動作する電動エアコン70を備えた車両においては、漏電箇所に対するフェイルセーフ制御の実行要求からも、漏電個所の正確な判定が求められる。
本実施の形態3では、強電系統90が、モータMGのみならず、電動エアコン70にも給電を行うものにおいて、漏電個所がエアコン領域Cかそれ以外かを判定することで、単に漏電の有無を判定するものよりも、より高精度の漏電判定が可能となる。
【0101】
(実施の形態4)
実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、実施の形態1の変形例であり、強電系統490に、モータMGへの給電とは独立して、電動エアコン70に給電を行うエアコン強電系統496を設けた例である。
図9は実施の形態4の漏電検出装置を適用したハイブリッド車両の強電系統490を示す回路図である。
この強電系統490は、強電リレースイッチ93の下流に、強電バッテリBATとモータMGとの間で給電を行う第1強電系統491と、強電バッテリBATとDC/DCコンバータ80との間で給電を行う第2強電系統492と、を備えている。
【0102】
また、強電系統490は、強電リレースイッチ93の上流で強電バッテリBATと電動エアコン70との間で給電を行うエアコン強電系統496を備えている。そして、このエアコン強電系統496は、強電バッテリBATから電動エアコン70への給電を断接するエアコンリレースイッチ(エアコン断接部)493を備えている。なお、実施の形態4では、このエアコンリレースイッチ493よりも電動エアコン70側がエアコン領域Cである。
【0103】
この実施の形態4にあっては、ステップS101の絶縁抵抗による漏電判定は、実施の形態1と同様に、抵抗検出部95によりエアコン強電系統496を含む強電系統490の絶縁抵抗を検出してもよい。あるいは、エアコン強電系統496の絶縁抵抗は、
図9に示す第2抵抗検出部495を設け、この第2抵抗検出部495により検出してもよい。この第2抵抗検出部495を用いる場合は、漏電判定閾値としてエアコン強電系統496の絶縁抵抗に応じた値であるエアコン漏電判定閾値を用いる。 また、実施の形態1と同様に抵抗検出部95の検出する場合も、漏電判定閾値は、実施の形態4に応じて設定されたエアコン漏電判定閾値を用いる。
【0104】
また、実施の形態1にて説明したステップS106において電動エアコン70の停止要求時には、エアコンリレースイッチ493を切断する。そして、その後のステップS107の処理において、絶縁抵抗が漏電判定閾値(エアコン漏電判定閾値)以上に復帰した場合、エアコン領域Cで漏電発生と判定する。
【0105】
また、実施の形態4では、実施の形態2と同様に、リレースイッチ上流領域Aの漏電の有無を判定する場合、ステップS201の処理では、強電リレースイッチ93とエアコンリレースイッチ493とを遮断する。
この時に、絶縁抵抗が復帰し、かつ、エアコン領域Cにおいて漏電してなかった場合に、モータMG側の領域であるリレースイッチ下流領域Bの漏電と判定する。また、絶縁抵抗が復帰しなかった場合は、リレースイッチ上流領域Aの漏電と判定する。
【0106】
(実施の形態4の効果)
以下に、実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置の効果を列挙する。
4-1)実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATと電動エアコン70との間の強電系統490であるエアコン強電系統496に、強電バッテリBATから電動エアコン70への給電を断接するエアコン断接部としてのエアコンリレースイッチ493をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、絶縁抵抗が漏電判定閾値未満に低下して強電系統の漏電発生を検知した後におけるエアコンリレースイッチ493の遮断により、エアコンリレースイッチ493より強電バッテリBAT側の絶縁抵抗が漏電判定閾値以上に増加した場合に、強電系統490のエアコンリレースイッチ493よりも電動エアコン70側での漏電発生を検知することを特徴とする。
したがって、モータMGの他に、強電バッテリBATからの給電により動作する電動エアコン70を備えた車両においては、漏電箇所に対するフェイルセーフ制御の実行要求からも、漏電個所の正確な判定が求められる。
本実施の形態4では、強電系統490が、モータMGのみならず、電動エアコン70にも給電を行うものにおいて、漏電個所がエアコン領域Cかそれ以外かを判定することで、単に漏電の有無を判定するものよりも、より高精度の漏電判定が可能となる。
【0107】
4-2)実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATから直接配索されるエアコン強電系統496に、強電バッテリBATからの給電により車内温度を調整する電動エアコン70を備え、
モードコントローラとしての統合コントローラ10は、漏電検知手段がモータMGへの強電系統である第1強電系統491とエアコン強電系統496との何れかの漏電判定中にモード切替を禁止することを特徴とする。
したがって、漏電判定を行っている際中に、HEVモードとEVモードとを切り替えることによる絶縁抵抗変動を抑制し、漏電の誤検知を抑制し、漏電検出精度を向上することができる。
【0108】
4-3)実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、
エアコン強電系統496と対地との絶縁抵抗が予め設定されたエアコン漏電判定閾値未満に低下した場合に、エアコン強電系統496(エアコン領域C)での漏電発生と検知するエアコン漏電検知手段としての統合コントローラ10を備えることを特徴とする。
したがって、モータMGと接続する強電系統である第1強電系統491とは異なるエアコン強電系統496を備えるものにおいて、エアコン強電系統496の絶縁抵抗を検知することにより、エアコン強電系統496での漏電を容易に検出することができる。
【0109】
4-4)実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、
エアコン強電系統496に、強電バッテリBATから前記電動エアコン70への給電を断接するエアコン断接部としてのエアコンリレースイッチ493をさらに備え、
エアコン漏電検知手段としての統合コントローラ10は、絶縁抵抗がエアコン漏電判定閾値未満に低下した後におけるエアコンリレースイッチ493の遮断により、エアコンリレースイッチ493よりも強電バッテリBAT側の絶縁抵抗がエアコン漏電判定閾値以上に増加した場合に、エアコン強電系統496のエアコンリレースイッチ493よりも電動エアコン70側であるエアコン領域Cでの漏電発生を検知することを特徴とする。
したがって、モータMGに給電を行う第1強電系統491の他に、強電バッテリBATからエアコン強電系統496での給電により動作する電動エアコン70を備えた車両にあっても、電動エアコン70側の漏電を検出することができる。
そして、このように漏電個所を正確に検出することにより、漏電個所に応じたフェイルセーフ制御を実行することも可能となる。
【0110】
4-5)実施の形態4のハイブリッド車両の車両制御装置は、
強電バッテリBATとモータMGとの間の強電系統である第1強電系統491に、強電バッテリBATからの給電を断接するモータ断接部としての強電リレースイッチ93をさらに備え、
漏電検知手段としての統合コントローラ10は、絶縁抵抗が強電系漏電判定閾値未満に低下した後における強電リレースイッチ93の遮断により、絶縁抵抗が強電系漏電判定閾値以上に増加した場合に、強電系統490の強電リレースイッチ93よりもモータMG側のリレースイッチ下流領域Bでの漏電発生を検知することを特徴とする。
したがって、絶縁抵抗の検出と、強電リレースイッチ93の切替との簡単な構成により、漏電部位を正確に特定することができる。
また、このように漏電部位の特定が可能なことから、漏電部位に応じたフェイルセーフ制御が可能となる。例えば、モータMG側で漏電していた場合には、モータMGの駆動を禁止するなどのフェイルセーフ制御が可能である。
【0111】
以上、本発明のハイブリッド車両の車両制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0112】
例えば、実施の形態では、ハイブリッド車両として、エンジンとモータとの間で駆動力の伝導を断接する駆動力断接手段としての第1クラッチを設けた例を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、このような駆動力の断接を行うことなく、EVモードとHEVモードとに遷移可能なものを用いてもよい。あるいは、駆動力断接手段を設ける場合も、図示のようなクラッチを用いる以外にも、遊星歯車などの他の手段を用いることもできる。
また、実施の形態では、モータとして、力行と回生とが可能なモータジェネレータを示したが、これに限定されず、力行のみが可能なモータを用いてもよい。
また、実施の形態では、変速機として無段変速機を用いた例を示したが、変速機としては、無段変速機に限らず、手動、自動の他の変速機を用いてもよい。
【0113】
また、実施の形態では、モータ断接部として、DC/DCコンバータへの給電の断接や、さらに加えて、電動エアコンへの給電の断接と共用するものを示したが、これに限定されない。例えば、モータ、DC/DCコンバータ、電動エアコンへの給電を、それぞれ、独立して断接するリレースイッチを設けた構成としてもよい。この場合、漏電発生時に、各スイッチを独立して、断接することにより、それぞれの強電系統の漏電を特定可能である。