(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動機制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0018】
電動機制御装置1は、入力された周波数指令f
refに基づき、電動機2が所望の速度で回転するよう電力を供給する装置である。ここでは、電動機制御装置1は、いわゆるインバータ制御装置(単にインバータともいう。)であるが、必ずしもこれに限定されず、例えば、サーボ制御装置やサイクロコンバータなどの制御装置であってもよい。電動機2は、交流電動機であるが、その形式は特に限定されず、各種の誘導機であっても、同期機であってもよい。ここでは、電動機2は一例として、3相永久磁石同期電動機である。電動機2には、図示しない任意の負荷が接続されている。この負荷は、特に限定はされないが、ここでは、電動機2の一回転中にトルク変動の大きい機構として、圧縮機を例示する。
【0019】
<電動機制御装置>
図2に示すように、電動機制御装置1は、基本的な構成として、ソフトスタータ10、速度制御部11、電流制御部12、電圧指令演算部13、インバータ回路14、モータオブザーバ15、電流検出器16及び、振動抑制部17を有している。ソフトスタータ10は、電動機2の起動時に、過負荷を避けスムースに電動機2が所定の速度まで加速するよう、指令角周波数ω
comを徐々に増加させる。十分な時間の経過後は、ω
comは2πf
refに一致する。指令角周波数ω
comからは速度フィードバック角周波数ω
FBが減算されていわゆる速度フィードバックが構成され、差分角周波数Δωが速度制御部11に入力される。
【0020】
速度制御部11は、速度制御器とも言い、差分角周波数Δωから、指令トルクT
comを出力する。指令トルクT
comには、トルク補償値T
cが加算されて振動抑制が行われ、補償後指令トルクT(補償後トルク指令に相当)が電流制御部12に入力される。
【0021】
電流制御部12は、電流制御器とも言い、補償後指令トルクTに基いて、所望のトルクを電動機2が出力するようインバータ回路14への指令値を出力するものであり、ここでは、インバータ回路14は電圧型であるので、d−q平面上の電圧指令V
dqを出力している。電圧指令V
dqはさらに、電圧指令演算部13により例えばPWM変調されてインバータ回路14に印加される。なお、インバータ回路14が電流型である場合には、電流制御部12からの出力は電流指令であってよく、その場合は電圧指令演算部13に変えて電流指令演算部を設けるようにしてよい。
【0022】
電流制御部12からの電圧指令V
dqと、インバータ回路14と電動機16間に設けられた電流検出器16から検出された電流値I
dq−obsから、モータオブザーバ15は、電動機の推定機械位置θ
obsと、電動機の推定角周波数である速度フィードバック角周波数ω
FBを求める。推定機械位置θ
obsは、d−q平面上での電流値である電流値I
dq−obsを得るため、電流検出器16で使用されるが、これは必ずしも必須ではなく、電流検出器16や電動機2の形式により、電流値I
dq−obsが得られればよい。
【0023】
振動抑制部17は、電動機の振動を抑制するため、指令トルクT
comに加算するべきトルク補償値T
cを出力する。振動抑制部17は、指令角周波数ω
comと、速度フィードバック角周波数ω
FBの差を用いるため、ここでは指令角周波数ω
comと速度フィードバック角周波数ω
FBが入力されているが、出力値であるトルク補償値T
cの値の大きさ(振幅)と指令角周波数ω
comと速度フィードバック角周波数ω
FBの差の値の大きさとの間に直接の関係はなく、振動抑制部17はいわゆるフィードバックループを構成しない。このため、指令トルクT
comへのトルク補償値T
cの加算は、フィードフォワード補償と考えることができる。
【0024】
なお、以上説明した電動機制御装置1の構成において、電流制御部12と振動抑制部17については、その詳細を後ほど説明する。その他の構成、すなわち、ソフトスタータ10、速度制御部11、電圧指令演算部13、モータオブザーバ15及び電流検出器16は、任意の公知の構造を採用してよく、その詳細は本発明の技術的主題でないため、その詳細の説明は割愛する。
【0025】
さらに、モータオブザーバ15及び電流検出器16は、ここでは、速度フィードバック角周波数ω
FBが得られるものであればどのような構成であってもよく、モータオブザーバ15及び電流検出器16による構成に変えて、ロータリエンコーダ又はレゾルバのような、電動機2の機械位置を連続的に検出するセンサを設けるようにしてもよいし、電動機2にホール素子等の機械位置を部分的に検出するセンサを設けて、機械位置を推定する公知の構成を設けるようにしてもよい。ただし、
図1に示したように、モータオブザーバ15及び電流検出器16による構成であれば、電動機2に特別のセンサを設ける必要がなく、電動機制御装置1を含む電動機2の制御システムの低コスト化・小型化を図ることができる。
【0026】
<電流制御部>
図2は、電流制御部12のより詳細な構成を示す図である。
図2に示すように、電流制御部12は、一例として、トルク制限回路120、Iq指令演算回路121、Id指令演算回路122、出力電圧制限制御回路123、非干渉制御回路124及び、電流制御回路125を有している。電流制御部12の構成は公知のものであり、特殊なものではない。
【0027】
電流制御部12に入力された補償後指令トルクTは、トルク制限回路120により過大なトルク指令とならないよう、その上限が制限され、そののちIq指令演算回路121及びId指令演算回路122によりd−q平面上の電流値Idqへと変換される。なお、インバータ回路14で出力できる電圧には限界があるため、本例では、必要に応じて、出力電圧制限制御回路123をトルク制限回路120と切り替えてId指令演算回路122と接続し、電流値Idqのd成分を制限できるようになっている。
【0028】
本例ではインバータ回路14は電圧型であるため、電流値I
dqは、電流制御回路125により電圧値に変換され、また、非干渉制御回路124により非干渉化がなされ、電圧指令V
dqがえられる。ここで、トルク制限回路120、出力電圧制限制御回路123、非干渉制御回路124はいずれも必須のものではなく、任意構成である。また、電流制御部12を構成する各機能は、公知の構成を適宜採用すればよいため、それぞれの詳細の説明は割愛する。
【0029】
<振幅抑制部>
図3は、振動抑制部17のより詳細な構成を示す図である。
図3に示すように、振動抑制部17は、ハイパスフィルター170、位相同期回路171、並びに、周期関数演算部177及び振幅変化部178を含むトルク補償値生成部179を有している。
【0030】
振動抑制部17は、速度フィードバック角周波数ω
FBと指令角周波数ω
comとの差から、ハイパスフィルター170により直流成分を除去して交流成分である速度リップル成分Δω
rを抽出する。なお、ハイパスフィルター170は、速度フィードバック角周波数ω
FBと指令角周波数ω
comとの差から、速度リップル成分を抽出する速度リップル成分抽出部の一例としての構成である。
【0031】
なお、速度リップル成分抽出部の具体的構成は、ここで上げたハイパスフィルター170に限定されない。例えば、入力信号の平均値をオンラインで計測し、その計測値を入力信号から差し引く構成であってもよい。この場合、オンライン計測された入力信号の平均値が直流成分に該当すると考えられる。あるいは、入力信号をFFT(Fast Fourier Transform)等の周波数変換をし、低周波成分(これが直流成分に該当すると考えられる)を除去したのち、逆変換する構成であってもよい。さらにその他の構成であっても差し支えない。
【0032】
振動抑制部17は、この速度リップル成分Δω
rから、位相同期回路171により、速度リップル成分Δω
rの位相θを同期させ、抽出する。位相同期回路171の構成は必ずしも限定されず、公知のものを適宜採用しても差し支えないが、本例では、まず、速度リップル成分Δω
rかそれ自体をα相、オールパスフィルタ172を通過させて位相を90度ずらしたものをβ相として、α相とβ相から振幅演算173にて速度リップル成分Δω
rの振幅を得るとともに、d−q変換174にて座標変換を行い、α−β平面からd−q平面への速度リップル成分Δω
rの座標変換を行う。
【0033】
オールパスフィルタ172にて位相を90度ずらすのは、この後d−q変換を行って、位相θを同期させるためである。この同期演算については後述する。また、オールパスフィルタ172には、離散化演算による位相ずれを補償するため、プリワーピング175より補償を行ってよい。また、振幅演算173で得られた振幅は、ローパスフィルタ176により離散化演算等に起因するノイズを除去してよい。
【0034】
ここで、d−q変換174により得られたd軸成分に対し、d軸成分の目標指令値d
*として、0を入力してPI制御を行っている。その結果得られる速度リップル成分の位相差分Δθが遅延素子Z
−1を介して、次回演算時の位相差分Δθに加算されることで、積分演算が行われ、オフセット前位相θ
preが得られる。同時に、オフセット前位相θ
preは、d−q変換174に入力され、d−q変換時に用いられる。この構成は、すなわち、d−q変換174により得られたd軸成分が0となるようにオフセット前位相θ
preを求めるということである。換言するならば、d−q変換の際に、d軸成分を0に拘束してオフセット前位相θ
preを求めていることになる。
【0035】
そして、このオフセット前位相θ
preが速度リップル成分Δω
rの位相をおおむね示している。このように、速度リップル成分Δω
rと(α相)、速度リップル成分Δω
rの位相を90°ずらせた成分から(β相)、d−q変換を用いてオフセット前位相θ
preを求めることで、電動機2の機械位置を検出せずとも、速度リップル成分Δω
rの位相を求めることができる。
【0036】
得られたオフセット前位相θ
preは、速度リップル成分Δω
rの速度自体に対する位相であるから、オフセット値θ
offsを加算してトルク補償に適した位相θを得る。オフセット値θ
offsは速度に対するトルクの位相差であるからおおむね90度であるが、電動機2の慣性質量や負荷により若干の変動があるため、所与の指定値としてあらかじめ与えておく。
【0037】
得られた位相θは、周期関数演算部177により、所与の関数の位相に応じた値に変換される。ここで、周期関数演算部177は、所与の関数として、周期2πの任意の関数f(θ)を使用するが、電動機2に生じる速度振動の波形に応じた任意の周期関数を用意してよい。本例では、電動機2に使用する速度振動は、ほぼ正弦波関数にて近似できるため、周期関数演算部177は、正弦波関数を使用する。
【0038】
また、周期関数演算部177には、振幅変化部178より振幅A(所与の振幅に相当)が与えられ、乗算される。こうして得られたAf(θ)がトルク補償値T
cとなり、指令トルクT
comに加算され、補償後指令トルクTが算出される。従って、周期関数演算部177と振幅変化部178により、周期関数fの位相θに応じた値f(θ)と、所与の振幅Aを乗算してトルク補償値T
cを生成するトルク補償値生成部179が構成される。
【0039】
ここで、振幅変化部178より出力する振幅Aは、一定の固定値として与えてもよいが、種々の条件により変化させてもよい。以下、振幅変化部178が出力する振幅Aの制御について説明する。
【0040】
<振動抑制の動作>
図4は、振動抑制部17による振動抑制の動作を説明する波形図である。同図は、横軸を時間に取り、上段からそれぞれ、速度リップル成分Δω
r、位相θ、振幅演算173により得られた速度リップル成分の振幅、振幅変化部178から出力される振幅A、トルク補償値T
cを示している。
【0041】
まず、時刻t
0〜t
1の区間は、電動機2を起動してから速度が安定するまでを示している。そして、電動機2の速度が安定するまでは、振動抑制のための補償を行ったとしても、速度のずれが生じるため、必ずしも振動の抑制ができるとは限らず、場合によってはかえって振動を増幅させる可能性もあるため、そもそも振動抑制を行わない。本例では、振動抑制部17自体の動作を止め、何もしない区間となっている。時刻t
0に起動された電動機2が時刻t
1に安定するまでの時間時刻t
initは、適宜定めておいてよい。負荷の大きさにもよるが、t
1は数秒から数十秒程度であり、特に大型の機械の場合には、数分程度としてよい。
【0042】
続いて、時刻t
1〜t
2の区間は、振動抑制部17自体を起動してから、位相同期回路が安定するまでを示している。この区間では、
図3に示したd−q変換174により求められるΔθの値が安定するまで、
図4に示すように、θの値及び、速度リップル成分の振幅の値は不安定である。この区間で振動抑制のための補償を行ったとしても、θの値が必ずしも正確でないため、振動抑制が十分でないか、または増幅する恐れがある。そこで、振幅変化部178は、この区間においては振幅Aを0または十分に低い値として、トルク補償値T
cを0又はほぼ0に保ち、実質的に振動抑制を行わないようにしている。時刻t
1〜t
2までの時間t
stもまた適宜定めてよく、1〜数秒程度である。
【0043】
さらに、時刻t
2〜t
3の区間は、振動抑制部17による振動抑制が行われつつある区間である。この区間では、位相同期回路は安定しており、振幅θが正しく得られている。この時、振幅変化部178は、振幅Aの値を徐々に増加させていく。これに伴い、トルク補償値T
cの振幅も徐々に増加していく。これは、電動機2の挙動に対して急減な変化を与えず、徐々に変化を与えることで、機構的なショックを避ける目的である。振幅Aの値の最大値A
maxは、あらかじめ与えておいてよい。また、振幅Aの変化時間t
trも任意である。おおむね、数秒〜数十秒程度としてよい。さらに、振幅Aを増加させていくパターンは、本例では図示のように直線状に増加させているが、これを任意の曲線に沿って増加させるものとしても差し支えない。
【0044】
最後に、時刻t
3以降の区間は、振動抑制部17による振動抑制が安定して行われている区間である。この区間では、同図に示した要素に大きな時間的変化はなく、速度リップル成分Δω
r、振幅演算173により得られた速度リップル成分の振幅がともに小さく抑えられており、電動機2の振動が抑制されていることがわかる。
【0045】
<振幅変化時の振動抑制動作>
さらに、振幅変化部178は、電動機2の速度に応じて振幅Aを変化させてよい。
図5は、電動機2の速度として周波数指令f
refを用いた時の振幅変化部178による振動抑制の動作を説明する波形図である。なお、ここでは電動機2の速度は速やかに周波数指令f
refに追従するものとして、周波数指令f
refを用いているが、これに変えて速度フィードバック角周波数ω
FBを用いても同様である。あるいは、指令角周波数ω
comを用いてもよい。
【0046】
図5に示した例では、周波数指令f
refが運転の途中で変化する場合が示されている。同図に示した最初の状態(時刻t
4より前)では、周波数指令f
refは比較的高い値に保たれており、振幅Aも最大値A
maxとなっている。その後、周波数指令f
refが低下し始め、電動機2の速度の変化が検出されると、振幅変化部178は、振幅Aを徐々に減少させる。この検出は、電動機2の速度が、その検出された安定値からある一定の範囲を超えた場合に変化ありと検出するようにしている。より具体的には、
図5に示した、周波数指令f
refがその安定値から±dの範囲を逸脱した時刻t
4において、速度変化ありと検出され、振幅Aを徐々に減少させる。
【0047】
一方で、一定の時間の間、電動機2の速度に変化がない場合には、電動機2の速度が安定したものと検出される。その場合には、今度は振幅変化部178は、振幅Aを徐々に増加させる。
図5では、時刻t
5にて、周波数指令f
refの値の変化がなくなり安定している。本例では、一定の時間として、
図4の時刻t
1〜t
2の区間の時間t
stを用いている。これは、先に説明したようにd−q変換174により求められるΔθの値が安定するまでの時間であり、安定した振動抑制のために必要なためである。そして、振幅変化部178は、この時間t
stが経過した時刻t6より、振幅Aを徐々に増加させている。
【0048】
周波数指令f
refの値が増加する場合にも同様である。時刻t
8で電動機2の速度変化が検出され、やはり振幅Aは減少させられる。時刻t
9で周波数指令f
refの値の変化が止まり、この時間t
st経過後の時刻t
10から時刻t
11まで、振幅Aは再び増加され、振動抑制が行われる。
【0049】
この振幅変化部178の動作は、基本的に、電動機2の速度が変化している場合には、振動抑制が必ずしも効果的でないため、振動抑制を行わず、電動機2の速度が安定して変化していない場合に振動抑制を行うものである。そして、振動抑制を行うか、行わないかを急激に切り替えるのでなく、振幅Aを徐々に変化させることでなだらかに振動抑制の入切を行って、機構的なショックを避けるようにしている。
【0050】
さらに、振幅変化部178は、速度フィードバックの振幅に応じて、振幅Aを決定するようにしてもよい。
図4に戻り、上の説明では、振幅Aの最大値A
maxはあらかじめ与えておいてよいものとして説明した。しかしながら、A
maxをユーザ、あるいは電動機2を用いた機器(例えば圧縮機)の製造時で定めるのは、試運転と計測による調整が必要であり、また、負荷変動や経年変化があると、最初に与えたA
maxの値が常に最適であるとは限らない。そして、A
maxの値に不足があると、振動抑制が十分にできず、また、A
maxの値が過大であると、振動を抑制するばかりか、かえって逆向きの振動を助長することとなってしまう。
【0051】
そこで、振幅変化部178は、速度フィードバックの振幅と所定の閾値thとを比較し、速度フィードバックの振幅が閾値thを下回り、十分に振動が抑制されたと判断した時点で振幅Aの増加を止めるようにして、かかる値を振幅Aの値として用いてもよい。
図4では、速度フィードバックの振幅として、振幅演算173により得られた速度リップル成分の振幅を用いることができ、参考として示した閾値thをこの値が下回って時点で、A
maxに関わらず、振幅Aの値の増加を止め、振幅Aの値として決定してよい。このようにすることで、A
maxの値をあらかじめ決める手間を軽減し、負荷の変動や経年変化があった場合にも、適切な振幅Aの値を自動的に得ることができる。
【0052】
<動作フロー>
図6は、振動抑制部17の動作を示すフロー図である。まず、振動抑制部17は初期状態では起動されておらず、電動機2の起動から時間t
init経過したかを判断する(ステップST1)。経過していなければ(ST1:N)、時間t
init経過して電動機2の速度が安定するまで待ち、経過していれば(ST1:Y)、振動抑制部17を起動する(ステップST2)。
【0053】
振動抑制部17は、起動されると、指令角周波数ω
comと、速度フィードバック角周波数ω
FBの差から速度リップル成分Δωを抽出する(ステップST3)。また、さらに、速度リップル成分Δωから位相同期回路171により、位相θを生成する(ステップST4)。このとき、すでに説明したとおり、速度リップル成分Δωと、速度リップル成分Δωの位相を90度ずらした成分からd−q変換を用いて位相θを生成している。
【0054】
つづけて、振動抑制部17は、電動機速度が時間t
stの間継続的に安定しているか否かを判断する(ステップST5)。この判断は、安定した電動機速度から所定の範囲(±d)を電動機速度が逸脱するか否かにより判断してよい。また、電動機速度としては、周波数指令f
ref、速度フィードバック角周波数ω
FB、指令角周波数ω
comのいずれを用いてもよい。
【0055】
電動機速度が時間t
stの間継続的に安定している場合(ステップST5:Y)、速度フィードバックの振幅が閾値thを下回っており、すでに十分に振動抑制が行われているか、又は振幅Aがその最大値A
maxに到達しているかを判断する(ステップST6)。速度フィードバックの振幅が閾値thを下回っておらず、かつ振幅Aがその最大値A
maxに到達していない場合(ステップST6:N)、振幅変化部178は、振幅Aの値を徐々に増加する(ステップST7)。そして、得られた振幅Aを用いて、トルク補償値T
cは、周期関数f(θ)を用いてAf(θ)として求められ、トルク補償がなされて振動抑制が行われる(ステップST8)。
【0056】
速度フィードバックの振幅が閾値thを下回っているか、又は振幅Aがその最大値A
maxに到達している場合には(ステップST6:Y)、振幅Aを増加させる必要はないので、振幅Aの値は変化させることなく、ステップST8へと進み振動抑制が行われる。
【0057】
一方で、電動機速度が時間t
stの間継続的に安定していない場合(ステップST5:N)、すなわち、電動機速度が変化しているか、電動機速度が安定してから時間t
st経過していない場合には、振幅Aがすでに0であるか、あるいは、振幅Aの最小値Aminに到達しているかを判断する(ステップST9)。なお、ここで振幅Aの最小値Aminは必ずしも設定しなくともよく、0としてもよい。
【0058】
振幅Aが0でなく、振幅Aの最小値Aminにも到達していない場合(ステップST9:N)は、振幅変化部178は、振幅Aを徐々に減少させる(ステップST10)。その後、ステップST8へと進み振動抑制が行われる。振幅Aが0であるか、又は振幅Aの最小値Aminに到達している場合(ステップST9:Y)は、ただちにステップST8へと進み、振幅Aを変化させることなく振動抑制が行われる。この時、振幅Aが0であると、振動抑制は全く行われないことになる。
【0059】
振動抑制が行われると(ステップST8)、再度ステップST3へと戻り、電動機2が回転している間は、振動抑制が行われる。そして、
図6に示したフローによれば、点同期2の速度が運転途中で変化した場合にも、速度変化中は振動抑制を行わず、速度が安定している間は振動抑制を行え、かつ、両者間の変化をなだらかなものとして機構へのショック等を軽減できる。また、振幅Aの値は振動抑制が十分になしうる値へと自動調整される。
【0060】
なお、以上の説明では、振動抑制部17に、指令角周波数ω
comと、速度フィードバック角周波数ω
FBがそれぞれ独立に入力され、これを振動抑制部17内で差し引くことにより速度リップル成分Δω
rを求めていたが、電動機制御装置1の構成によっては、速度リップル成分Δω
rを直接振動抑制部17に入力するようにしてもよい。
図1に示した例では、差分角周波数Δωの符号を反転させたものは速度リップル成分Δω
rに等しいから、振動抑制部17に差分角周波数Δωまたはその符号を反転させたものを直接入力するようにしてもよい。あるいは、電動機制御装置1の構成として、例えばロバスト性を付与する目的で速度補償器や、位相補償器を備えたものである場合に、速度リップル成分Δω
rを使用している場合があるため、これを直接振動抑制部17に入力するようにしてもよい。
【0061】
<効果の例>
以上説明したように、本実施形態に係る電動機制御装置1によれば、速度リップル成分Δω
rを抽出した後、位相同期回路171により、その速度リップル成分Δω
rの位相θを生成し、その位相θからトルク補償値T
cを生成して、トルク指令T
comを補償することができる。したがって、電動機2で生じる実際の速度変動の位相にあわせて、その速度変動を抑制することが可能である。したがって、電動機2の機械角度を測定する必要がなく、当然に機械角度に応じた補正量のマップをも必要とせずに、電動機2の速度変動を抑制することができる。更に、一旦速度リップル成分Δω
rの位相θを生成後に、トルク補償値T
cを生成することで、トルク補償値T
cの演算遅れを抑えることができるため、速度変動の抑制効果を高めることができる。更に、トルク補償値T
cの演算を、速度制御部11とは独立して行い、トルク補償値T
cをフィードフォワードすることが可能であるため、速度制御部11の出力であるトルク指令T
comが急変した場合であっても、トルク補償値T
cの演算が影響されずに済み、速度変動の抑制を継続する事が可能である。
【0062】
また、電動機制御装置1によれば、位相同期回路171が、速度リップル成分Δω
rと、その位相を90°ずらせた成分とから、d−q変換により位相θを生成する。したがって、この位相θの生成においても、機械角度を測定する必要がなく、かつ、演算におけるローパスフィルターなどの遅延が生じる処理を最小限に抑えることができる。また、位相θの生成において、入力された周波数指令f
refを用いずにd−q変換により位相θを生成ので、指令トルクT
comが安定していない場合でも、独立してトルク補償値T
cを算出できる。
【0063】
また、電動機制御装置1によれば、位相同期回路171において、予め定められたオフセット値θ
offを考慮して、位相θを生成することができる。したがって、例えば、予め慣性質量や負荷、PIループやローパスフィルタ176等の遅れを、予めオフセット値θ
offとして設定しておくことで、速度変動の抑制効果を迅速かつ確実に効かせることが可能である。
【0064】
更に、電動機制御装置1によれば、周期関数演算部177によるトルク補償値T
cの振幅Aは、振幅変化部178により、設定されるため、電動機2などの機械諸元やそれに伴うパラメータ等を事前に設定する必要がない。また、振幅変化部178は、振幅Aを変化させることにより、急激な速度の変化を伴わずに速度変動を抑制することができる。
【0065】
この際、振幅変化部178により、電動機2の速度が安定した後に、振幅Aを徐々に増加させることができるため、電動機2の加速時などの速度変化中に、速度変動の抑制を開始してしまうことによる誤動作、例えば、かえって速度変化が増幅してしまうなどの不具合を防止しつつ、速度変動を抑制することができる。
【0066】
また、振幅変化部178は、速度フィードバックの振幅に応じて、振幅Aを決定することも可能であり、この場合、速度変動の大きさ(振動の大きさなど)に応じて、振幅Aを自動生成することにより、速度変動をより効果的に抑制することも可能である。更に、振幅変化部178は、電動機2の速度に変化があった場合に、振幅Aを徐々に減少させることもでき、この場合、速度変動の抑制機能をオフするなどの際に、急激に速度が変化することを抑制することができる。
【0067】
以上説明した実施形態の構成は具体例として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成そのものに限定することは意図されていない。当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形を加えてもよく、また、フロー図に示した制御は、同等の機能を奏する他の制御に置き換えてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【0068】
また、上記実施形態で説明した一連の処理の少なくとも一部は、専用のハードウエアにより実行させてもよいが、ソフトウエアにより実行させてもよい。一連の処理をソフトウエアにより行う場合、電動機制御装置には汎用又は専用のコンピュータが含まれ、当該コンピュータがプログラムを実行させることにより、上記の一連の処理の少なくとも一部を実現することができる。
【0069】
図7は、そのようなコンピュータ100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。コンピュータは、CPU101(Central Processing Unit)と、HDD(Hard Disk Drive)・ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)等の記録装置102と、LAN(Local Area Network)・インターネット等のネットワークに接続された通信装置103と、マウス・キーボード等の入力装置104と、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、各種のCD(Compact Disc)・MO(Magneto Optical)ディスク・DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体等を読み書きするドライブ105と、モニタなどの表示装置・スピーカやヘッドホンなどの音声出力装置などの出力装置106等と、を有してもよい。これらコンピュータ100を構成する機器は、データバス107により接続され、互いに情報通信可能に統合されてよい。また、このコンピュータ100は、CPU101に加えて又は換えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有してもよい。そして、このコンピュータ100は、記録装置102・リムーバブル記憶媒体に記録されたプログラム、又はネットワークを介して取得したプログラムを実行することにより、上記一連の処理の少なくとも一部を実行してもよい。
指令角周波数と、速度フィードバック角周波数の差から、速度リップル成分を抽出する速度リップル成分抽出部と、前記速度リップル成分から前記速度リップル成分の位相を生成する位相同期回路(171)と、周期関数の前記位相に応じた値と、所与の振幅を乗算してトルク補償値を生成するトルク補償値生成部(179)と、前記指令角周波数と、前記速度フィードバック角周波数の差から、トルク指令値を演算する速度制御部(11)と、前記トルク指令値に、前記トルク補償値を加算して得られる補償後トルク指令に基いて、電動機に出力する電流を制御する電流制御部(12)と、を有する電動機制御装置(1)。