(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロータに相対回転可能に設けられて、当該ロータに非接触又は接触するアーマチュアと、磁力を発生するためのコイルと、前記コイルが内蔵されたヨークとを有し、前記アーマチュアの前記ロータに対する非接触又は接触により、前記ロータと断続する電磁クラッチと、
前記アーマチュア、前記ヨークおよび前記ロータを含む領域の少なくとも一部に流れる磁束を検出する磁気センサであって、前記磁気センサは、ヨークに固定されたホルダに支持された状態で、前記ロータと前記アーマチュアとの間において前記ロータおよび前記アーマチュアの双方と非接触の状態で配置されている磁気センサと、
前記磁気センサにより検出された磁束の大きさに基づいて、前記磁束の大きさが所定の閾値を超える場合には、前記電磁クラッチが接続状態であると判定し、前記磁束の大きさが所定の閾値以下である場合には、前記電磁クラッチが切断状態であると判定する断続判定手段とを含む、電磁クラッチ装置。
前記操作軸は、シフトレバーが連結されて、軸まわりに回転させることで前記シフトレバーをシフト動作させるとともに軸方向移動させることで前記シフトレバーをセレクト動作させるためのシフトセレクト軸を含み、
前記伝達機構は、
前記電動モータによって発生される回転トルクを、前記シフトセレクト軸を軸まわりに回転させる力に変換して、前記シフトセレクト軸に伝達するシフト変換機構と、
前記電動モータによって発生される回転トルクを、前記シフトセレクト軸を軸方向移動させる力に変換して、前記シフトセレクト軸に伝達するセレクト変換機構とを含み、
前記電磁クラッチは、
前記電動モータによって発生される回転駆動力を前記伝達軸から前記シフト変換機構に伝達又は遮断するシフト電磁クラッチと、
前記電動モータによって発生される回転駆動力を前記伝達軸から前記セレクト変換機構に伝達又は遮断するセレクト電磁クラッチとを含む、請求項3に記載の電動アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータ21が組み込まれた変速装置の概略構成を示す分解斜視図である。
変速装置1は、変速機2と、変速機2を変速駆動する変速駆動装置3とを備えている。
変速機2は、公知の常時かみ合い式の平行歯車式変速機であり、乗用車やトラックなどの車両に搭載される。変速機2は、ギヤハウジング7と、ギヤハウジング7内に収容される常時かみ合い式の平行歯車式変速機構(図示せず)とを備えている。
【0019】
変速駆動装置3は、変速機2の前記変速機構(図示せず)にシフト動作またはセレクト動作を行わせるシフトセレクト軸15と、シフトセレクト軸15をシフト動作またはセレクト動作させるための共通の駆動源として用いられる電動アクチュエータ21とを含む。なお、
図1は、各部材を簡略化して示した図なので、各部材の詳しい構成(特に電動アクチュエータ21について)は、後述する
図2以降に図示されている。
【0020】
シフトセレクト軸15は、所定方向(図示されたM4の方向)に長手の軸状体であり、鋼材を用いて形成されている。シフトセレクト軸15の途中部には、ギヤハウジング7内に収容されるシフトレバー(操作レバー)16の一端16Aが固定されている。シフトレバー16は、シフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに、シフトセレクト軸15と同伴回転する。シフトセレクト軸15の先端側(
図1に示す右奥側)は、ギヤハウジング7外に突出している。ここで、シフトレバー16は、シフトセレクト軸15が軸回りに回転したり、軸方向M4に移動したりすることに応じて、実際のシフト動作やセレクト動作を行う。具体的には、電動アクチュエータ21は、シフトセレクト軸15を回転させることでシフトレバー16をシフト動作させ、シフトセレクト軸15をスライドさせることでシフトレバー16をセレクト動作させる。
【0021】
ギヤハウジング7内には、互いに平行に延びる複数のシフトロッド10A,10B,10Cが収容されている。各シフトロッド10A,10B,10Cには、シフトレバー16の他端16Bと係合可能なシフトブロック12A,12B,12Cが固定されている。また、各シフトロッド10A,10B,10Cには、変速機2内のクラッチスリーブ(図示せず)と係合するシフトフォーク11が設けられている。なお、
図1では、シフトロッド10Aに設けられたシフトフォーク11のみを示している。
【0022】
電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が、その軸方向M4に移動(スライド)されると、シフトレバー16が軸方向M4に移動される。その結果、シフトレバー16の他端16Bがシフトブロック12A,12B,12Cのいずれかに対して選択的に係合し、これによりセレクト動作が達成される。
一方、電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15がその中心軸線17まわりに回転されると、シフトレバー16が中心軸線17まわりに揺動する。その結果、シフトレバー16と係合しているいずれかのシフトブロック12A,12B,12Cが、シフトロッド10A,10B,10Cの軸方向M1,M2,M3に移動し、これにより、シフト動作が達成される。なお、このシフト動作のために必要なシフトセレクト軸15の回転角度は360°(シフトセレクト軸15一周分)よりも著しく小さい(たとえば120°程度)。
【0023】
図2は、
図1に示す変速装置における変速駆動装置3の構成を示す斜視図である。
図3は、変速駆動装置3の構成を示す底面図である。
図4は、変速駆動装置3の構成を示す断面図である。
図5は、
図4のA−A線に沿う断面図である。
以下では、
図2〜
図5を参照して、変速駆動装置3、特に、電動アクチュエータ21の構成について説明する。
【0024】
電動アクチュエータ21は、ギヤハウジング7(
図1参照)の外表面に固定されている。
図4に示すように、電動アクチュエータ21は、その外郭をなしてシフトセレクト軸15等を収容するボックス状の本体ハウジング22を備えている。
具体的には、電動アクチュエータ21は、本体ハウジング22の他に、
図2に示す取付ステー18を備えている。取付ステー18は、本体部19と、延設部20とを一体的に備えている。
【0025】
本体部19は、平面視(底面視)で矩形形状の輪郭を有するブロック形状である(
図3も併せて参照)。本体部19の一側面には、凹状に窪む平面視矩形状の中空部分19Aが形成されている。
延設部20は、円管状であり、本体部19から本体ハウジング22側へ延びている。延設部20において本体ハウジング22側(
図3における下側)の端部には、延設部20の径方向へ張り出すフランジ部20Aが一体的に設けられている。延設部20の延びる方向から見たときのフランジ部20Aの輪郭は、略矩形状をなしている。フランジ部20Aが本体ハウジング22に接触した状態で、フランジ部20A(四隅の部分)および本体ハウジング22に対して共通の複数(ここでは4本)のボルト14(
図2参照)が組み付けられている。これにより、取付ステー18が本体ハウジング22に対して固定されている。
【0026】
そして、延設部20の延びる方向から見た場合において、本体部19で延設部20の中空部分の円中心と一致する部分には、本体部19を貫通して中空部分19Aに連通する丸い挿通孔19Bが形成されている。
図2では、挿通孔19Bは、本体部19において延設部20側に形成されている。
取付ステー18では、本体部19がギヤハウジング7(
図1参照)に対してボルト(図示せず)によって組み付けられている。これによって、電動アクチュエータ21(換言すれば、変速駆動装置3全体)は、ギヤハウジング7の外表面に固定されている。この状態で、シフトセレクト軸15では、シフトレバー16側の部分が、本体ハウジング22の外にはみ出ている。シフトセレクト軸15における本体ハウジング22の外にはみ出た部分は、延設部20の内部および本体部19の中空部分19A内に配置されている。この状態で、当該部分は、本体部19の挿通孔19Bに対して挿通されているとともに、本体部19の中空部分19Aから外部に露出している。
【0027】
シフトレバー16は、本体部19の中空部分19Aに配置されており、本体ハウジング22の外にはみ出ている。そして、シフトレバー16の他端16Bは、中空部分19Aから本体部19の外側へはみ出ており、前述したシフトブロック12A,12B,12C(
図1参照)のいずれかに係合している。
図4を参照して、電動アクチュエータ21は、電動モータ23と、シフト変換機構24と、セレクト変換機構25と、切換ユニット26とを備えている。
【0028】
電動モータ23は正逆回転可能に設けられており、この電動モータ23としてたとえばブラシレスモータが採用されている。電動モータ23は、その本体ケーシングが本体ハウジング22外に露出するように取り付けられている。
シフト変換機構24は、電動モータ23の回転トルクを、シフトセレクト軸15を中心軸線17まわり(軸回り)に回転させる力に変換してシフトセレクト軸15に伝達するためのものである。セレクト変換機構25は、電動モータ23の回転トルクを、シフトセレクト軸15をその軸方向M4(
図4における紙面に直交する方向)へ移動(スライド)させる力に変換してシフトセレクト軸15に伝達するためのものである。切換ユニット26は、電動モータ23の回転トルクの伝達先を、シフト変換機構24とセレクト変換機構25との間で切り換えるためのものである。電動モータ23が本体ハウジング22に対して外から取り付けられているのに対し、シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26は、本体ハウジング22内に収容されている。
【0029】
本体ハウジング22では、電動モータ23側(
図4における左側)に、モータ用開口部(図示しない)が形成されている。モータ用開口部13は、略板状の蓋27によって閉塞されている。蓋27は、本体ハウジング22の一部である。これらの本体ハウジング22および蓋27は、それぞれたとえば鋳鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いて形成されており、蓋27の外周が本体ハウジング22のモータ用開口部13に嵌め合わされている。蓋27には、その内面(
図4に示す右面)と外面(
図4に示す左面)とを貫通する円形の貫通孔29が形成されている。また、蓋27の外面には、電動モータ23のモータハウジング133(
図2参照)が固定されている。電動モータ23は、モータケース134(
図2参照)およびモータハウジング133が本体ハウジング22外に露出するように取り付けられている。電動モータ23の出力軸40は、シフトセレクト軸15と、平面視(
図4において上方から見た場合)における食い違い角が90°の食い違い角の関係をなして配置されている。そのため、出力軸40は、軸方向M4と直交する所定の方向(
図4に示す左右方向)に沿って延びている。出力軸40(電動モータ23からはみ出した部分)は、蓋27の貫通孔29を介して本体ハウジング22の内部に臨んでおり、切換ユニット26に対向している。
【0030】
本体ハウジング22は、前述したようにボックス状であり、シフトセレクト軸15における先端側(
図1に示す右奥側)の領域や、シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26の各構成部品を主に収容する。詳しくは、
図5に示すように、本体ハウジング22は、側方(
図5における右側)に底を有する箱状をなしている。本体ハウジング22は、底壁111と、底壁111の一端部(
図5に示す上端部)と、他端部(
図5に示す下端部)とからそれぞれ、互いに平行に立ち上がる一対の側壁112,113とを主に備えている。本体ハウジング22には、側壁112,113の先端部(
図5に示す左端部)などによって区画された開口部115が形成されている。開口部115は平板状の蓋114によって閉塞されている。蓋114は、本体ハウジング22の一部をなしている。
【0031】
図5に示すように、底壁111の内側の底面111Aは、平坦面によって形成されている。底壁111には、シフトセレクト軸15の途中部(後述するスプライン部120およびラック部122よりも基端(
図5における右端)寄り)を支持するため軸ホルダ116が形成されている。軸ホルダ116は、底壁111と一体的に形成されており、底壁111の外壁面(底面111Aとは反対側の面)よりも外方に膨出してたとえば直方体状をなしている(
図2も併せて参照)。底壁111および軸ホルダ116には、断面円形の(丸い)通過孔104が形成されている。通過孔104は、軸ホルダ116および底壁111を、それらの厚み方向(
図5に示す左右方向。底面111Aと直交する方向)に貫通している。通過孔104には、シフトセレクト軸15が挿通されている。通過孔104は、シフトセレクト軸15(通過孔104を塞いでいる部分)よりも若干大径である。そのため、底壁111および軸ホルダ116において通過孔104を区画する内周面とシフトセレクト軸15の外周面との間には、本体ハウジング22の内外を連通させる隙間が形成されている。
【0032】
通過孔104の内周面には、すべり軸受101が内嵌固定されている。すべり軸受101は、通過孔104に挿通されているシフトセレクト軸15の途中部(後述する閉塞部150)の外周を取り囲み、当該シフトセレクト軸15の閉塞部150の外周を摺接支持している。
軸ホルダ116において、厚み方向(
図5に示す左右方向)における途中には、ロックボール106が配設されている。具体的には、通過孔104の内周面と、軸ホルダ116の外周面とを貫通する貫通孔105内にロックボール106が収容されている。ロックボール106は、通過孔104の中心軸線(すなわちシフトセレクト軸15の中心軸線17)と直交する方向に延びる略円筒状をなすとともに、当該方向に沿って移動可能に設けられている。ロックボール106の先端部は半球状をなしており、次に述べる係合溝107に係合する。
【0033】
ここで、シフトセレクト軸15において通過孔104をちょうど塞ぐ部分(軸方向M4において通過孔104と一致する位置にある部分)を閉塞部150ということにする。閉塞部150は、シフトセレクト軸15に対して同軸状で一体化された円筒体であって、通過孔104を塞ぐ位置に配置されている。閉塞部150の外周には、軸方向M4に間隔を空けて、周方向に延びる複数本(たとえば3本)の係合溝107が形成されている。各係合溝107は全周にわたって設定されている。ロックボール106がその長手方向に移動することにより、先端部が通過孔104の内周面よりも中心軸線17側(
図5に示す下方)に突出して、その先端部が係合溝107と係合して、シフトセレクト軸15の軸方向M4における移動を阻止する。これにより、シフトセレクト軸15は、軸方向M4への移動が阻止された状態で、一定力で保持される。ただし、この状態では、シフトセレクト軸15の不意の動きが防止されているだけであるので、この状態でも、シフトセレクト軸15の軸回りの回転および軸方向M4へのスライドは可能である。
【0034】
図5に示すように、シフトセレクト軸15において、通過孔104よりも先端側(本体ハウジング22の内側)の部分には、スプライン部120と、後述するピニオンギヤ36が噛み合うラック部122とが、通過孔104に近い側からこの順で設けられている。つまり、シフトセレクト軸15において、スプライン部120およびラック部122は、本体ハウジング22内側へ通過孔104から離れた位置にあり、特に、ラック部122は、スプライン部120に比べて本体ハウジング22内側へ通過孔104から離れた位置にある。スプライン部120およびラック部122は、いずれも、シフトセレクト軸15に対して同軸状で一体化される円筒体であり、軸方向に所定の長さを有している。スプライン部120およびラック部122は、シフトセレクト軸15の軸部15A(シフトセレクト軸15のうち、スプライン部120およびラック部122を除く領域)よりも大径である。
【0035】
スプライン部120の外周面には、スプライン121(軸方向に延びる筋状の凸部)が周方向に間隔を隔てつつ、全域に亘って形成されている。
ラック部122の外周面には、その周方向における全域に、ラック歯形成領域125が設けられている。ラック歯形成領域125では、ラック部122の軸方向M4の一端(
図5に示す左端)から他端(
図5に示す右端)にわたって、複数のラック歯123がそれぞれ中心軸線17に沿って互いに平行に延びている。ラック歯形成領域125のラック歯123が、後述するピニオンギヤ36と噛み合っている。
【0036】
ここで、シフトセレクト軸15における、本体ハウジング22に収容される部分は、すべり軸受101によって摺接支持されている。なお、シフトセレクト軸15においてラック部122に対してスプライン部120の反対側における先端部(
図5における左端部)は、本体ハウジング22の蓋114を貫通して本体ハウジング22の外に突出している。当該先端部には、円環状のすべり軸受102を介して、円筒状のキャップ100が外嵌されている。シフトセレクト軸15は、すべり軸受102によっても摺接支持されている。
【0037】
図4に示すように、切換ユニット26は、電動モータ23の出力軸40と同軸状の伝達軸41と、伝達軸41と同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた環状の回転体である第1ロータ42と、伝達軸41に同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた環状の回転体である第2ロータ44と、第1ロータ42と第2ロータ44との間で伝達軸41の連結先を切り換えるためのクラッチ機構39とを備えている。出力軸40、伝達軸41、第1ロータ42および第2ロータ44は、共通の回転軸線Cまわりに回転する。
【0038】
伝達軸41は、電動モータ23側に設けられて電動モータ23の出力軸40と一体回転可能に連結される主軸部46と、主軸部46の一端部(第1ロータ42側の端部。
図4に示す右端部)に、主軸部46と一体的に設けられ、主軸部46よりも大径の円板状をなす大径部(円板部)47とを備えている。伝達軸41は、後述するように、電動モータ23側(出力軸40側)とは反対側の大径部47において、電動モータ23の回転トルクをシフト変換機構24およびセレクト変換機構25に伝達するためのものである。
【0039】
第1ロータ42は、伝達軸41に対し電動モータ23側と反対側(
図4における右側)に配置されている。第1ロータ42は、電動モータ23側の軸方向端部(
図4に示す左端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第1アーマチュアハブ54を備えている。第1アーマチュアハブ54は、大径部47の電動モータ23側と反対側の面(
図4に示す右面)に対向して配置されている。
【0040】
第2ロータ44は、伝達軸41の大径部47に対し第1ロータ42と反対側、すなわち電動モータ23側(
図4における左側)に配置されており、伝達軸41の主軸部46の周囲を非接触状態で取り囲んでいる。第2ロータ44は、電動モータ23側と反対側の軸方向端部(
図4に示す右端部)の外周から径方向外方に向けて張り出す第2アーマチュアハブ55を備えている。第2アーマチュアハブ55は、大径部47の電動モータ23側の面(
図4に示す左面)に対向して配置されている。
【0041】
言い換えれば、第1ロータ42(の第1アーマチュアハブ54)および第2ロータ44(の第2アーマチュアハブ55)が、伝達軸41の大径部47を挟むように配置されている。この状態で、第1ロータ42と、第2ロータ44と、伝達軸41とは、同軸状に配置されていて、それぞれが軸回りに回転可能である。
クラッチ機構39は、第1ロータ42と断続して、伝達軸41と第1ロータ42とを連結/解放するシフト電磁クラッチ43と、第2ロータ44と断続して、伝達軸41と第2ロータ44とを連結/解放するセレクト電磁クラッチ45とを備えている。シフト電磁クラッチ43は、電動モータ23からの回転トルクを第1ロータ42に伝達して第1ロータ42を回転させることができる。セレクト電磁クラッチ45は、電動モータ23からの回転トルクを第2ロータ44に伝達して第2ロータ44を回転させることができる。
【0042】
シフト電磁クラッチ43は、第1フィールド48と第1アーマチュア49とを備えている。第1アーマチュア49は、伝達軸41の大径部47の軸方向の他方側の面(一方面。
図4に示す右面)に当該大径部47と同伴回転可能にかつ後述する第1アーマチュアハブ54に対向するように設けられている。第1アーマチュア49は、第1のロータ側対向面201と微小間隔を隔てて配置されている。第1アーマチュア49は、伝達軸41と同軸状をなす略円環円板状をなし、伝達軸41(大径部47)に同伴して回転軸線Cまわりに回転する。第1アーマチュア49は、鉄などの強磁性体を用いて形成されている。
【0043】
第1フィールド48は、周方向から見た断面が横に傾いたU字をなす環状の第1ヨーク(継鉄)170と、第1ヨーク170に収容され、周方向から見た断面がU字をなす環状のボビン31と、ボビン31内(U字の内側)に内蔵され、磁力を発生する第1電磁コイル(コイル、線輪)50とを含む環状体である。換言すると、第1フィールド48は、第1ヨーク170に第1電磁コイル50を内蔵したもののことを指す。第1ヨーク170の外周面が本体ハウジング22の内周面に固定されることによって、第1フィールド48は、本体ハウジング22に固定されている。第1ヨーク170の内周面には、環状の転がり軸受154が嵌め込まれている。転がり軸受154の外輪が第1ヨーク170の内周面に固定(内嵌)され、転がり軸受154の内輪が第1ロータ42に固定(外嵌)されている。これにより、第1ヨーク170は、第1ロータ42を回転可能に支持している。
【0044】
セレクト電磁クラッチ45は、第2フィールド51と、第2アーマチュア52とを備えている。第2アーマチュア52は、伝達軸41の大径部47の軸方向一方側の面(他方面。
図4に示す左面)に当該大径部47と同伴回転可能にかつ後述する第2アーマチュアハブ55に対向するように設けられている。第2アーマチュア52は、第2のロータ側対向面221と微小間隔を隔てて配置されている。第2アーマチュア52は、伝達軸41と同軸状をなす略円環円板状をなし、伝達軸41(大径部47)に同伴して回転軸線Cまわりに回転する。第2アーマチュア52は、鉄などの強磁性体を用いて形成されている。
【0045】
第2フィールド51は、周方向から見た断面が横に傾いたU字をなす環状の第2ヨーク(継鉄)171と、第2ヨーク171に収容され、周方向から見た断面がU字をなす環状のボビン32と、ボビン32内(U字の内側)に内蔵され、磁力を発生する第2電磁コイル(コイル、線輪)53とを含む環状体である。換言すると、第2フィールド51は、第2ヨーク171に第2電磁コイル53を内蔵したもののことを指す。第2ヨーク171の外周面が本体ハウジング22の内周面に固定されることによって、第2フィールド51は、本体ハウジング22に固定されている。第2ヨーク171の内周面には、環状の転がり軸受155が嵌め込まれている。転がり軸受155の外輪が第2ヨーク171の内周面に固定(内嵌)され、転がり軸受155の内輪が第2ロータ44に固定(外嵌)されている。これにより、第2ヨーク171は、第2ロータ44を回転可能に支持している。
【0046】
第1フィールド48および第2フィールド51は、大径部47、第1アーマチュアハブ54および第2アーマチュアハブ55を挟んで、軸方向(第1ロータ42、第2ロータ44および伝達軸41のそれぞれの中心軸の延びる方向であり、
図4では左右方向)に沿って並んで配置されている。
クラッチ機構39には、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45を駆動するためのクラッチ駆動回路205(
図8参照)が接続されている。クラッチ駆動回路205には、配線などを介して電源(図示せず)から電圧供給(給電)されている。クラッチ駆動回路205は、リレー回路などを含む構成であり、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45に対し、それぞれ個別に給電および給電停止を切換え可能に設けられている。なお、クラッチ駆動回路205は、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45の双方を駆動する構成に限られず、シフト電磁クラッチ43を駆動するためのクラッチ駆動回路205と、セレクト電磁クラッチ45を駆動するためのクラッチ駆動回路205とを個別に設けることもできる。
【0047】
シフト電磁クラッチ43に対する給電により、第1アーマチュア49が第1ロータ42の第1アーマチュアハブ54と摩擦接触して伝達軸41が第1ロータ42に連結される。これにより、シフト電磁クラッチ43が接続状態になる。また、シフト電磁クラッチ43に対して給電されない状態では、第1アーマチュア49が第1ロータ42の第1アーマチュアハブ54と接触せず、そのため伝達軸41が第1ロータ42に連結されない。その結果、シフト電磁クラッチ43が切断状態になる。
【0048】
一方、セレクト電磁クラッチ45に対する給電により、第2アーマチュア52が第2ロータ44の第2アーマチュアハブ55と摩擦接触して伝達軸41が第2ロータ44に連結される。これにより、セレクト電磁クラッチ45が接続状態になる。また、セレクト電磁クラッチ45に対して給電されない状態では、第2アーマチュア52が第2ロータ44の第2アーマチュアハブ55と接触せず、そのため伝達軸41が第2ロータ44に連結されない。その結果、セレクト電磁クラッチ45が切断状態になる。
【0049】
電動アクチュエータ21の制御では、通常、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45の一方のみが選択的に接続されるようになっている。すなわち、シフト電磁クラッチ43が接続状態にあるときには、セレクト電磁クラッチ45が切断状態にあり、セレクト電磁クラッチ45が接続状態にあるときには、シフト電磁クラッチ43が切断状態にある。
【0050】
第2ロータ44の外周には、小径の円環状の第1歯車56が外嵌固定されている。第1歯車56は第2ロータ44と同軸に設けられている。第1歯車56は転がり軸受57によって支持されている。転がり軸受57の外輪は、第1歯車56に内嵌固定されている。転がり軸受57の内輪は、伝達軸41の主軸部46の外周に外嵌固定されている。
シフト変換機構24は、回転運動を直線運動に変換する減速機としてのボールねじ機構58と、このボールねじ機構58に備えられるナット59と、ナット59の軸方向移動に伴ってシフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動するアーム60とを主に備えている。
【0051】
ボールねじ機構58は、第1ロータ42と同軸(すなわち伝達軸41と同軸)に延びるねじ軸61と、ねじ軸61にボール(図示せず)を介して螺合する前述したナット59とを備えている。ねじ軸61は、
図4の上方から見た平面視において、シフトセレクト軸15と、食い違い角が90°の食い違い軸の関係をなしている。言い換えれば、ねじ軸61の軸方向およびシフトセレクト軸15の軸方向M4の双方に直交する方向(
図4の上方)から見て、ねじ軸61およびシフトセレクト軸15は互いに直交している。
【0052】
ねじ軸61は、転がり軸受64,67によって軸方向への移動が規制されつつ支持されている。具体的には、ねじ軸61の一端部(
図4に示す左端部)は転がり軸受64によって支持されており、また、ねじ軸61の他端部(
図4に示す右端部)は転がり軸受67によって支持されている。これらの転がり軸受64,67により、ねじ軸61がその中心軸線80(
図4および
図5参照)まわりに回転可能に支持されている。
【0053】
転がり軸受64の内輪は、ねじ軸61の一端部に外嵌固定されている。また、転がり軸受64の外輪は、本体ハウジング22に固定されている。また、転がり軸受64の外輪には、ロックナット66が係合されて、ねじ軸61の軸方向の他方(
図4に示す右方)への転がり軸受64の移動が規制されている。ねじ軸61の一端部における転がり軸受64よりも電動モータ23側(
図4に示す左側)の部分は、第1ロータ42の内周に挿通されて、この第1ロータ42に同伴回転可能に連結されている。転がり軸受67の内輪は、ねじ軸61の他端部に外嵌固定されている。転がり軸受67の外輪は、本体ハウジング22に固定されている。
【0054】
ナット59の一側面(
図4に示す手前側側面。
図5に示す左側側面)、および当該一側面とは反対側の他側面(
図4に示す奥側側面。
図5に示す右側側面)には、それぞれシフトセレクト軸15の軸方向M4に沿う方向(
図4の紙面に直交する方向)に延びる円柱状の突出軸70(
図4では一方のみ図示。
図5を併せて参照)が突出形成されている。一対の突出軸70は、同軸状に配置されている(
図5参照)。ナット59は、アーム60の第1係合部72(後述する)によって、ねじ軸61まわりの回転が規制されている。したがって、ねじ軸61が回転されると、ねじ軸61の回転に同伴して、ナット59がねじ軸61の軸方向に移動する。なお、
図5では、ねじ軸61の軸方向に関し、
図4に示すナット59の位置よりも、第1ロータ42に対し離反する方向(
図4に示す右方)にナット59が位置するときのナット59およびアーム60の断面状態を示している。
【0055】
図4および
図5に示すように、アーム60は、ナット59に係合するための第1係合部72と、シフトセレクト軸15のスプライン部120にスプライン嵌合するための第2係合部73(
図5参照)と、第1係合部72と第2係合部73とを接続する直線状の接続ロッド74とを備えている。接続ロッド74は、たとえば、その全長にわたって断面矩形状をなしている。第2係合部73は、リング状(円環状)をなし、シフトセレクト軸15のスプライン部120に対して外嵌されている。第2係合部73の内周面には、スプライン75が形成されており、第2係合部73のスプライン75とスプライン部120のスプライン121とが噛み合うことで、第2係合部73とスプライン部120とのスプライン嵌合が達成されている。なお、第2係合部73は、円環板状をなしているが、円筒状(軸方向に所定の厚みを有する形状)をなしていてもよい。
【0056】
第1係合部72は、互いに対向する一対の支持板部76(
図4では、一方の支持板部76のみを図示)と、一対の支持板部76の基端辺同士を連結する連結板部77とを備え、側面視で略U字状をなしている。各支持板部76には、各突出軸70の外周と、当該突出軸70の回転を許容しつつ係合するU字係合溝78が形成されている。U字係合溝78は、前記の基端辺と反対側の先端辺(
図4および
図5における上端辺)から切り欠かれている。そのため、第1係合部72は、ナット59に、突出軸70まわりに相対回転可能にかつ、ねじ軸61の軸方向に同行移動可能に係合している。また、各U字係合溝78と各突出軸70との係合により、ナット59では、アーム60の第1係合部72によってねじ軸61まわりの回転が規制されている。したがって、ねじ軸61の回転に伴って、ナット59および第1係合部72がねじ軸61の軸方向に移動する。
【0057】
前述したように、シフトセレクト軸15のスプライン部120の外周と、第2係合部73の内周とはスプライン嵌合している。具体的には、第2係合部73の内周に設けられたスプライン75に、スプライン部120の外周に設けられたスプライン121が噛み合っている。このとき、スプライン121とスプライン75との間には噛合いのための隙間が確保されている。言い換えれば、シフトセレクト軸15のスプライン部120の外周に対して、第2係合部73が、当該シフトセレクト軸15に対して相対回転不能にかつ相対軸方向移動が許容された状態で連結されている。したがって、シフト電磁クラッチ43が接続状態にあって、ねじ軸61が回転し、これに伴ってナット59がねじ軸61の軸方向に移動すると、アーム60がシフトセレクト軸15の中心軸線17まわりに回動し、このアーム60の揺動に同伴してシフトセレクト軸15が、中心軸線17まわりに回転する。つまり、スプライン部120が電動モータ23の回転トルクを第2係合部73から受けることで、シフトセレクト軸15が軸回りに回転する。これにより、前述したシフト動作が達成される。
【0058】
図4に示すように、セレクト変換機構25は、前述した第1歯車56と、伝達軸41と平行に延びた状態で回転可能に設けられたピニオン軸95と、ピニオン軸95の一端部(
図4に示す左端部)寄りの所定位置に同軸に固定されて第1歯車56と噛み合う第2歯車81と、ピニオン軸95の他端部(
図4に示す右端部)寄りの所定位置に同軸に固定された小径のピニオンギヤ36とを備え、全体として減速機を構成している。なお、第2歯車81は、第1歯車56およびピニオンギヤ36の双方よりも大径に形成されている。
【0059】
ピニオン軸95の一端部(
図4に示す左端部)は、本体ハウジング22に固定された転がり軸受96によって支持されている。転がり軸受96の内輪は、ピニオン軸95の一端部(
図4に示す左端部)に外嵌固定されている。また、転がり軸受96の外輪は、蓋27の内面に形成された円筒状の凹部97内に固定されている。また、ピニオン軸95の他端部(
図4に示す右端部)は、転がり軸受84によって支持されている。ピニオンギヤ36とラック部122(
図5参照)とがラック・アンド・ピニオン機構により噛み合っているので、セレクト電磁クラッチ45が接続状態にあって、伝達軸41の回転に伴ってピニオン軸95が回転すると、これに伴って、シフトセレクト軸15が軸方向M4(
図1参照)に移動する。つまり、ラック部122が電動モータ23の駆動力をピニオンギヤ36から受けることで、シフトセレクト軸15が軸方向にスライドする。これにより、前述したセレクト動作が達成される。なお、シフトセレクト軸15がスライドしても、第2係合部73とスプライン部120とのスプライン嵌合は維持されている。
【0060】
ピニオン軸95の他端部82(
図4に示す右端部)に関連して、ピニオン軸95の回転角度を検出するためのピニオン角センサ87が配設されている。ピニオン角センサ87によるピニオン軸95の回転角度検出に基づいて、シフトセレクト軸15の軸方向位置が検出される。
本体ハウジング22の底壁(蓋27とは反対側の壁。
図4に示す右壁)には、その内外面を貫通するセンサ用孔85が形成されている。ピニオン角センサ87は、センサ部(図示しない)と、センサ部に連結された第1センサ軸99とを備えている。第1センサ軸99の先端部は、センサ用孔85を通ってピニオン軸95の他端部82に同伴回転可能に連結されている。ピニオン軸95が回転すると、そのピニオン軸95に同伴して第1センサ軸99がその軸まわりに回転する。ピニオン角センサ87は第1センサ軸99の回転角度に基づいて、ピニオン軸95の回転角度を検出する。
【0061】
また、本体ハウジング22内には、シフトセレクト軸15の回転角度を検出するシフトセレクト角センサ89が設けられている。シフトセレクト角センサ89は、たとえばアナログ電圧出力方式のセンサであり、シフトセレクト軸15の回転角度に対応する検出出力を出力する。
シフトセレクト角センサ89は、センサ部(図示しない)が内蔵された本体90と、本体90のセンサ部に一体回転可能に連結された第2センサ軸94と、第2センサ軸94に外嵌固定されたセクタ歯車91とを備えている。このセクタ歯車91は、シフトセレクト軸15に同伴回転可能に設けられた(外嵌固定された)センサ用歯車92と噛み合っている。シフトセレクト軸15がその軸まわりに回転すると、そのシフトセレクト軸15に同伴してセンサ用歯車92およびセクタ歯車91が回転し、これに伴って第2センサ軸94がその軸まわりに回転する。シフトセレクト角センサ89は、第2センサ軸94の回転角度に基づいてシフトセレクト軸15の回転角度を検出する。
【0062】
ここで、
図2を参照して、前述した本体ハウジング22は、第1本体ハウジング22Aと、第2本体ハウジング22Bとを有している。なお、第1本体ハウジング22Aと第2本体ハウジング22Bとは一体化されていて、これらのハウジングの継ぎ目に隙間は存在しない。そのため、第1本体ハウジング22Aと第2本体ハウジング22Bとの継ぎ目から本体ハウジング22の内外が連通することはない。
【0063】
第1本体ハウジング22Aは、
図2における本体ハウジング22の右側部分をなす略直方体のボックス形状であり、主にシフトセレクト軸15、ボールねじ機構58、アーム60およびピニオンギヤ36(
図4参照)を収容している。第1本体ハウジング22Aは、前述した底壁111、側壁112、側壁113および蓋114(
図5参照)等によって区画されている。
【0064】
第2本体ハウジング22Bは、第1本体ハウジング22Aから、平面視においてシフトセレクト軸15に直交する方向(
図2における左側)へ延び出る中空円筒状である。第2本体ハウジング22Bにおいて第1本体ハウジング22Aとは反対側の端面には、前述したモータ用開口部13が形成されていて、この端面に対して、蓋27を介して電動モータ23(モータハウジング133)が取り付けられている(
図4参照)。
図4を参照して、第2本体ハウジング22B内には、前述した切換ユニット26や第2歯車81等が収容されている。
【0065】
図6は、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45の要部構成を示す拡大断面図である。
図7Aおよび
図7Bはシフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45の要部構成をそれぞれ示す拡大断面図である。
図6は、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45の双方が切断状態にある状態を示し、
図7Aおよび
図7Bは、シフト電磁クラッチ43およびセレクト電磁クラッチ45がそれぞれ接続状態にある状態を示している。
【0066】
本願発明の特徴の1つは、シフト電磁クラッチ43に、第1アーマチュアハブ54(第1ロータ42)と第1アーマチュア49との間を流れる磁束を検出するためのシフト用ホールIC(ホール素子を含むセンサ)182を設けた点である。また、本願発明の他の特徴は、セレクト電磁クラッチ45に、第2アーマチュアハブ55(第2ロータ44)と第2アーマチュア52との間を流れる磁束を検出するためのセレクト用ホールIC(ホール素子を含むセンサ)192を設けた点である。
【0067】
まず、
図6および
図7Aを参照して、シフト電磁クラッチ43の要部構成について説明する。
第1ロータ42の第1アーマチュアハブ54は、大径部47(具体的には第1アーマチュア49)に対向する第1のロータ側対向面54Aを備えている。第1のロータ側対向面54Aは、第1ロータ42の回転軸線C(
図4参照)に直交する平坦面からなる。
【0068】
第1アーマチュア49は、第1のロータ側対向面54Aに対向する第1のアーマチュア側対向面49Aを備えている。第1のアーマチュア側対向面49Aには、第1アーマチュアハブ54において周縁部よりもやや内側寄りの環状領域に対向する領域に、円環状の第1フェーシング49Bが配設されている。第1フェーシング49Bは第1ロータ42と摩擦接触するためのものであり、たとえば不織布やみがき特殊帯鋼(SK5M等)を用いて形成されている。
【0069】
第1ヨーク170は円環状の外周環180を備えている。外周環180の大径部47側の端部(
図6に示す左端部)からは、径方向の内方に向けてセンサ支持環(ホルダ)181が突出している。センサ支持環181は、回転軸線C(
図4参照)に直交する薄板状に形成されている。センサ支持環181の先端縁は、第1フェーシング49Bの外周よりも径方向の外側に位置している。センサ支持環181の第1アーマチュアハブ54側の表面には、シフト用ホールIC182が配設されている。この状態で、シフト用ホールIC182が、第1アーマチュアハブ54と第1アーマチュア49との間において、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49の双方と非接触の状態で配置されている。
【0070】
切断状態にあるシフト電磁クラッチ43を接続状態に切り換える際には、第1電磁コイル50を通電状態にする。これにより、第1電磁コイル50に磁束が発生し、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間に磁気回路が形成される。その結果、第1アーマチュア49が、第1ヨーク170および第1電磁コイル50側に引き寄せられ、第1電磁コイル50側に向けて傾倒し、
図7Aに示すように、第1アーマチュアハブ54の第1フェーシング49Bが、第1のロータ側対向面54Aと摩擦接触する。すなわち、第1電磁コイル50への通電により第1アーマチュア49と第1のロータ側対向面54Aとが接触状態になり、これにより、シフト電磁クラッチ43が接続状態になる。なお、
図6および
図7Aに示すように、シフト電磁クラッチ43の断続の如何によらずに、シフト用ホールIC182は、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49の双方と接触しない。
【0071】
一方、シフト電磁クラッチ43を接続状態から切断状態に切り換える際には、第1電磁コイル50に対する電圧供給が停止される。第1電磁コイル50に電流が流れなくなることにより、第1電磁コイル50に生じていた磁束が消滅し、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間に磁気回路が形成されなくなる。これにより、第1アーマチュア49が元の形状に復帰し、第1フェーシング49Bと第1のロータ側対向面54Aとの接触が解除される。
【0072】
このようなシフト電磁クラッチ43では、シフト用ホールIC182が、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間を流れる磁束を検出し、その大きさを示す信号を後述する制御部88に向けて出力する。シフト電磁クラッチ43の断続検出のためのセンサとしてホールICを採用することにより、リミットスイッチのような可動部を有するセンサを採用する場合と比較して、センサの長寿命化を図ることができる。
【0073】
また、シフト用ホールIC182が非接触センサであるので、シフト用ホールIC182を、それぞれ回転する第1ロータ42や第1アーマチュア49に取り付ける必要はなく、ハウジング22に対して固定的な第1ヨーク170に、シフト用ホールIC182を支持させることができる。そのため、配線構成の簡略化を図りつつ、シフト用ホールIC182をシフト電磁クラッチ43に装着することができる。
【0074】
次に、
図6および
図7Bを参照して、セレクト電磁クラッチ45の要部構成について説明する。
第2ロータ44の第2アーマチュアハブ55は、大径部47(具体的には第2アーマチュア52)に対向する第2のロータ側対向面55Aを備えている。第2のロータ側対向面55Aは、第2ロータ44の回転軸線C(
図4参照)に直交する平坦面からなる。
【0075】
第2アーマチュア52は、第2のロータ側対向面55Aに対向する第2のアーマチュア側対向面52Aを備えている。第2のアーマチュア側対向面52Aには、第2アーマチュアハブ55において周縁部よりもやや内側寄りの環状領域に対向する領域に、円環状の第2フェーシング52Bが配設されている。第2フェーシング52Bは第2ロータ44と摩擦接触するためのものであり、たとえば不織布やみがき特殊帯鋼(SK5M等)を用いて形成されている。
【0076】
第2ヨーク171は円環状の外周環190を備えている。外周環190の大径部47側の端部(
図6に示す右端部)からは、径方向の内方に向けてセンサ支持環(ホルダ)191が突出している。センサ支持環191は、回転軸線C(
図4参照)に直交する薄板状に形成されている。センサ支持環191の先端縁は、第2フェーシング52Bの外周よりも径方向の外側に位置している。センサ支持環191の第2アーマチュアハブ55側の表面には、セレクト用ホールIC192が配設されている。この状態で、シフト用ホールIC192が、第2アーマチュアハブ55と第2アーマチュア52との間において、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52の双方と非接触の状態で配置されている。
【0077】
切断状態にあるセレクト電磁クラッチ45を接続状態に切り換える際には、第2電磁コイル53を通電状態にする。これにより、第2電磁コイル53に磁束が発生し、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間に磁気回路が形成される。その結果、第2アーマチュア52が、第2ヨーク171および第2電磁コイル53側に引き寄せられ、第2電磁コイル53側に向けて傾倒し、
図7Bに示すように、第2アーマチュアハブ55の第2フェーシング52Bが、第2のロータ側対向面55Aと摩擦接触する。すなわち、第2電磁コイル53への通電により第2アーマチュア52と第2のロータ側対向面55Aとが接触状態になり、これにより、セレクト電磁クラッチ45が接続状態になる。なお、
図6および
図7Bに示すように、セレクト電磁クラッチ45の断続の如何によらずに、セレクト用ホールIC192は、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52の双方と接触しない。
【0078】
一方、セレクト電磁クラッチ45を接続状態から切断状態に切り換える際には、第2電磁コイル53に対する電圧供給が停止される。第2電磁コイル53に電流が流れなくなることにより、第2電磁コイル53に生じていた磁束が消滅し、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間に磁気回路が形成されなくなる。これにより、第2アーマチュア52が元の形状に復帰し、第2フェーシング52Bと第2のロータ側対向面55Aとの接触が解除される。
【0079】
このようなセレクト電磁クラッチ45では、セレクト用ホールIC192が、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間を流れる磁束を検出し、その大きさを示す信号を次に述べる制御部88に向けて出力する。セレクト電磁クラッチ45の断続検出のためのセンサとしてホールICを採用することにより、リミットスイッチのような可動部を有するセンサを採用する場合と比較して、センサの長寿命化を図ることができる。
【0080】
また、セレクト用ホールIC192が非接触センサであるので、セレクト用ホールIC192を、それぞれ回転する第2ロータ44や第2アーマチュア52に取り付ける必要はなく、ハウジング22に対して固定的な第2ヨーク171に、セレクト用ホールIC192を支持させることができる。そのため、配線構成の簡略化を図りつつ、セレクト用ホールIC192をセレクト電磁クラッチ45に装着することができる。
【0081】
図8は、電動アクチュエータ21の電気的構成を示すブロック図である。電動アクチュエータ21はマイクロコンピュータを含む構成の制御部88を備えている。制御部88の一例としてECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)を挙げることができる。なお、制御部88、シフト電磁クラッチ43およびシフト用ホールIC182によって、本願特許請求の範囲の電磁クラッチ装置が構成されている。また、制御部88、セレクト電磁クラッチ45およびセレクト用ホールIC192によって、本願特許請求の範囲の電磁クラッチ装置が構成されている。
【0082】
制御部88には、車両の変速操作用の変速操作レバー93の位置情報が入力されるようになっている。また、制御部88には、シフト回転角センサ89およびセレクト回転角センサ87の検出出力がそれぞれ入力されるようになっている。さらに、制御部88には、シフト用ホールIC182およびセレクト用ホールIC192の検出出力がそれぞれ入力されるようになっている。
【0083】
制御部88は、シフト用ホールIC182によって検出される磁束の大きさが予め定める閾値を超える場合には、シフト電磁クラッチ43が接続状態であると判定し、またシフト用ホールIC182によって検出される磁束の大きさが閾値以下である場合には、シフト電磁クラッチ43が切断状態であると判定する。
また、制御部88は、セレクト用ホールIC192によって検出される磁束の大きさが予め定める閾値を超える場合には、セレクト電磁クラッチ45が接続状態であると判定し、またセレクト用ホールIC192によって検出される磁束の大きさが閾値以下である場合には、セレクト電磁クラッチ45が切断状態であると判定する。
【0084】
また、制御部88には、これらのシフト電磁クラッチ43、セレクト電磁クラッチ45および電動モータ23がそれぞれ制御対象として接続されている。制御部88は、所定のプログラムに応じた自動変速指令や、操作者(ドライバー)による変速操作レバー93の操作、電磁クラッチ43,45の接続状態/切断状態の判定結果に基づいて、モータドライバ(図示しない)を介して電動モータ23を駆動させたり、クラッチ駆動回路205を介してシフト電磁クラッチ43またはセレクト電磁クラッチ45を駆動させたりする。
【0085】
以上によりこの実施形態によれば、第1電磁コイル50への通電により第1電磁コイル50に磁力が発生し、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間に磁気回路が形成される。そして、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間を、大きな磁束が流れる。第1ヨーク170に引き付けられた第1アーマチュア49が第1アーマチュアハブ54に接触することにより、シフト電磁クラッチ43が接続状態にされる。一方、シフト電磁クラッチ43の切断状態では、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間に磁気回路が形成されないので、第1ヨーク170、第1アーマチュアハブ54および第1アーマチュア49間に磁束が流れない。
【0086】
そのため、第1アーマチュアハブ54と第1アーマチュア49との間を流れる磁束を、シフト用ホールIC182によって検出することにより、シフト電磁クラッチ43の断続を検出することができる。
また、第2電磁コイル53への通電により第2電磁コイル53に磁力が発生し、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間に磁気回路が形成される。そして、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間を、大きな磁束が流れる。第2ヨーク171に引き付けられた第2アーマチュア52が第2アーマチュアハブ55に接触することにより、セレクト電磁クラッチ45が接続状態にされる。一方、セレクト電磁クラッチ45の切断状態では、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間に磁気回路が形成されないので、第2ヨーク171、第2アーマチュアハブ55および第2アーマチュア52間に磁束が流れない。
【0087】
そのため、第2アーマチュアハブ55と第2アーマチュア52との間を流れる磁束を、セレクト用ホールIC192によって検出することにより、セレクト電磁クラッチ45の断続を検出することができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
【0088】
たとえば、前述の実施形態では、ホールIC182,192を、アーマチュアハブ54,55とアーマチュア49,52との間に配設する場合を例に挙げて説明したが、ホールIC182,192をアーマチュアハブ54,55およびアーマチュア49,52の少なくとも一方に埋設することもできる。この場合、ホールIC182への給電構造として、ブラシ構造等を採用することができる。
【0089】
また、磁気センサとして、ホール素子と、その出力信号をデジタル信号に変換するICとを1パッケージ化した素子であるホールICを採用する場合を例に挙げて説明したが、ICを有さないホール素子のみを磁気センサとして採用することもできる。また、磁気センサとして、その他の非接触式の磁気センサを採用することもできる。
また、シフトおよびセレクト電磁クラッチ43,45の双方に、その断続を検出するための磁気センサ(ホールIC182,192)を内蔵させたが、シフトおよびセレクト電磁クラッチ43,45の一方のみに磁気センサを内蔵させてもよい。
【0090】
さらに、前述の実施形態のような電磁クラッチを2つ備えた電動アクチュエータに限られず、電磁クラッチを1個のみ有する電動アクチュエータに本願発明を適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。