特許第6222432号(P6222432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222432
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20060101AFI20171023BHJP
   B60W 30/16 20120101ALI20171023BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20171023BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20171023BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20171023BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20171023BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20171023BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20171023BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20171023BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171023BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   B60W30/12ZYW
   B60W30/16
   B60W10/00 120
   B60W10/00 134
   B60W10/06
   B60W10/20
   B60W10/18
   B62D6/00
   B62D101:00
   B62D111:00
   B62D113:00
   B62D137:00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-156986(P2013-156986)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-24795(P2015-24795A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】礒本 和典
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−191831(JP,A)
【文献】 特開平11−321690(JP,A)
【文献】 特開2005−141484(JP,A)
【文献】 特開2008−120288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 − 50/16
B62D 6/00
B60R 21/00
G08G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車線から逸脱しないように車両を制御する車両用走行制御装置であって、
自車両が走行している走行車線を検出する車線検出手段と、
自車両が上記車線検出手段により検出された走行車線から逸脱することを防止する車線逸脱防止制御手段と、
自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、上記車線逸脱防止制御手段による制御を抑制する制御抑制手段と、
を有し、
上記車線逸脱防止制御手段は、上記車線検出手段により検出された走行車線の区画線と自車両との距離が所定の横方向距離以下の場合に、自車両が上記走行車線から逸脱しないようにステアリングホイールに操舵力を付与し、
上記制御抑制手段は、上記所定の横方向距離を、自車両と先行車両との上記所定の車間距離に関わらず一定とし、自車両と先行車両との上記所定の車間距離が小さくなるほど、上記車線逸脱防止制御手段がステアリングホイールに付与する操舵力を小さくすることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段を有し、
上記所定の車間距離は、上記車間距離検出手段により検出された先行車両との車間距離である請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【請求項3】
自車両と先行車両との車間距離を予め設定された設定車間距離に保つように車速を制御する車速制御手段を有し、
上記所定の車間距離は、上記設定車間距離である請求項1に記載の車両用走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用走行制御装置に係わり、特に、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御する車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御する車線逸脱防止装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車線逸脱防止装置と、先行車両との車間距離を所定の設定車間距離に保つように車速制御する車速制御装置とを有する車両の走行制御装置が開示されている。この走行制御装置は、走行車線に対して自車両が逸脱傾向にあるとき、自車両にヨーモーメントを付与することにより、自車両が走行車線から逸脱することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−30849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自車両と先行車両との車間距離が小さくなった場合、車線逸脱防止装置の作動中においても、ドライバは、その先行車両を追い越すために車線変更をしようとすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の走行制御装置においては、車線逸脱防止装置の作動中に車線変更をしようとすると、車線逸脱防止装置が車線逸脱防止のために自車両にヨーモーメントを付与するので、車線変更をしようとしているドライバのステアリング操作に反する力がステアリングホイールに加わり、ドライバは煩わしさを感じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる車両用走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の車両用走行制御装置は、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御する車両用走行制御装置であって、自車両が走行している走行車線を検出する車線検出手段と、自車両が車線検出手段により検出された走行車線から逸脱することを防止する車線逸脱防止制御手段と、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御手段による制御を抑制する制御抑制手段とを有し、車線逸脱防止制御手段は、車線検出手段により検出された走行車線の区画線と自車両との距離が所定の横方向距離以下の場合に、自車両が走行車線から逸脱しないようにステアリングホイールに操舵力を付与し、制御抑制手段は、所定の横方向距離を、自車両と先行車両との所定の車間距離に関わらず一定とし、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御手段がステアリングホイールに付与する操舵力を小さくすることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、制御抑制手段は、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、自車線逸脱防止制御手段による制御を抑制するので、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなり、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線逸脱防止制御手段の制御を抑制することができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
また、制御抑制手段は、自車両と先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御手段がステアリングホイールに付与する操舵力を小さくするので、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなり、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線変更をしようとするドライバのステアリング操作に反して付与される操舵力を小さくすることができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、車両用走行制御装置は、自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離検出手段を有し、所定の車間距離は、車間距離検出手段により検出された先行車両との車間距離である。
このように構成された本発明においては、制御抑制手段は、車間距離検出手段により検出された先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御手段の制御を抑制するので、自車両が先行車両に接近し、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線逸脱防止制御手段の制御を抑制することができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、車両用走行制御装置は、自車両と先行車両との車間距離を予め設定された設定車間距離に保つように車速を制御する車速制御手段を有し、所定の車間距離は、設定車間距離である。
このように構成された本発明においては、制御抑制手段は、車速制御手段における設定車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御手段の制御を抑制するので、設定車間距離を小さくすることにより自車両が先行車両に接近することを許容するドライバに対しては、車線逸脱防止制御手段の制御を抑制することができ、これにより、先行車両に接近した後にその先行車両を追い越すために車線変更をする可能性の高いドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による車両用走行制御装置によれば、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による車両用走行制御装置を備えた車両の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態による車両用走行制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態による車両用走行制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による車両用走行制御装置の車線逸脱防止制御の強度と、先行車両からの所定の車間距離との関係を示す線図である。
図5】本発明の実施形態による車両用走行制御装置による車線逸脱防止制御の強度設定の例を説明するための線図である。
図6】本発明の実施形態の変形例による車両用走行制御装置の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用走行制御装置を説明する。
まず、図1及び図2により、本発明の実施形態による車両用走行制御装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置を備えた車両の概略構成を示す図であり、図2は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0016】
まず、図1に示すように、符号1は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置を示し、この車両用走行制御装置1は、ステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に操舵のアシスト力を与えるステアリングアクチュエータ6と、このステアリングアクチュエータ6にアシスト力の大きさの指示を与えるステアリングトルクコントローラ8とを有する。ステアリングシャフト4には、ラックアンドピニオン式ステアリングギア装置10が連結され、左右の操舵輪12が操舵される。
本実施形態では、ステアリングトルクコントローラ8は、ステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に必要なトルク(操舵力)が付与されるように、所定のトルク信号をステアリングアクチュエータ6に与えるようになっている。
【0017】
次に、図2に示すように、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1は、ステアリングホイール2の操舵角を検出する操舵角センサ14と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ16と、車両の車幅方向の加速度を検出する横加速度センサ18と、車速を検出する車速センサ20と、自車両と先行車両との車間距離を検出する車間距離センサ22と、自車両が走行している走行車線を検出する車線センサ24とを有する。
車間距離センサ22は、車両前方の物体を検出するミリ波レーダを備え、先行車両の存在及びその先行車両と自車両との車間距離を検出する。
車線センサ24は、車両前方の路面を撮像するカメラを備え、撮像した路面の画像から、走行車線の区画線を識別することにより、走行車線を検出する。
【0018】
また、車両用走行制御装置1は、ドライバの意思により自車両と先行車両との車間距離を予め設定された設定車間距離に保つように車速を制御する車間自動制御(ACC:Adaptive Cruise Control)のオン又はオフの切り替え及び設定車間距離の設定を行うACCスイッチ26と、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御する車線逸脱防止制御(LKA:Lane Keeping Assist)のオン又はオフをドライバの意思により切り替えるLKAスイッチ28と、車両前方の障害物との衝突による被害を軽減する衝突被害軽減制御(SBS:Smart Brake Support)のオン又はオフをドライバの意思により切り替えるSBSスイッチ30とを有する。
【0019】
さらに、車両用走行制御装置1は、ステアリングトルクコントローラ8を含む走行制御ユニット32を有し、各センサ14〜24及びスイッチ26〜30からの信号が入力されるようになっている。走行制御ユニット32は、各センサ14〜24及びスイッチ26〜30から入力された信号に基づき、ステアリングアクチュエータ6、エンジン34、ブレーキ36又は警報装置38に与える制御信号を演算し、車間自動制御、車線逸脱防止制御又は衝突被害軽減制御を実行する。この走行制御ユニット32は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0020】
次に、図3及び図4により、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1の制御内容を説明する。図3は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1の制御内容を示すフローチャートであり、図4は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1の車線逸脱防止制御の強度と、先行車両からの所定の車間距離との関係を示す線図である。この車両用走行制御装置1による走行制御処理は、車線逸脱防止制御の強度を設定するための処理であり、車両のイグニッションがオンにされ、車両用走行制御装置1に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。
【0021】
なお、車両のイグニッションがオンにされたとき、初期設定により、車間自動制御及び車線逸脱防止制御はオフ、衝突被害軽減制御はオンになっており、その後のドライバによるACCスイッチ26、LKAスイッチ28又はSBSスイッチ30の操作により、これらの車間自動制御、車線逸脱防止制御及び衝突被害軽減制御のオン又はオフが切り替えられる。走行制御ユニット32は、図5に示す走行制御処理と並行して、オンにされている車間自動制御、車線逸脱防止制御及び/又は衝突被害軽減制御の各処理を適宜実行しているものとする。
【0022】
具体的には、ACCスイッチ26がオンである場合、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との車間距離を、ACCスイッチ26により予め設定された設定車間距離(例えば、100m、70m、50m又は40m)に保つように、エンジン34及びブレーキ36を制御して車速を調節する。
また、LKAスイッチ28がオンである場合、走行制御ユニット32は、車線センサ24により検出された走行車線の区画線と自車両との横方向距離が所定の横方向距離(以下、「逸脱防止制御距離」という)以下の場合に、自車両が走行車線から逸脱しないように、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与する。
また、SBSスイッチ30がオンである場合、走行制御ユニット32は、車間距離センサ22により検出された先行車両との車間距離が所定値以下の場合に、警報装置38により接近警報を出力させ、さらに自車両が先行車両に接近した場合には、エンジン34及びブレーキ36を制御して車両を減速させる。
【0023】
まず、図3に示すように、車両用走行制御処理が開始されると、ステップS1において、走行制御ユニット32は、ACCスイッチ26又はSBSスイッチ30がオンであるか否かを判定する。その結果、ACCスイッチ26又はSBSスイッチ30がオンではない(何れもオフである)場合、車線逸脱防止制御の強度を設定する前提となる先行車両との車間距離が検出されないので、走行制御ユニット32は、以降の処理を行わず、ステップS1に戻る。
【0024】
一方、ACCスイッチ26又はSBSスイッチ30がオンである場合、ステップS2に進み、走行制御ユニット32は、LKAスイッチ28がオンであるか否かを判定する。その結果、LKAスイッチ28がオンではない(オフである)場合、車線逸脱防止制御の強度を設定する必要がないので、走行制御ユニット32は以降の処理を行わず、ステップS1に戻る。
【0025】
一方、LKAスイッチ28がオンである場合、ステップS3に進み、走行制御ユニット32は、車間距離センサ22から入力された信号に基づき、自車両と先行車両との車間距離を検出する。
【0026】
次に、ステップS4に進み、走行制御ユニット32は、ステップS3において検出された先行車両との車間距離に基づき、車線逸脱防止制御の強度を設定する。
このステップS4では、図4に示すように、先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制する(制御の強度を弱める)。このとき、図4(a)に示すように、先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を連続的に抑制するようにしてもよく、図4(b)に示すように、先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を段階的に抑制するようにしてもよい。
このステップS4の後、走行制御ユニット32は、ステップS1に戻る。
【0027】
次に、図5により、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1による車線逸脱防止制御の強度設定の例を説明する。図5は、本発明の実施形態による車両用走行制御装置1による車線逸脱防止制御の強度設定の例を説明するための線図である。この図5において、横軸は、走行車線における車両と左右の区画線との横方向距離を示し、縦軸は、走行制御ユニット32からのトルク信号に基づき、ステアリングアクチュエータ6がステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に付与する逸脱防止トルクの大きさを示している。また、図5における一点鎖線は、自車両と先行車両との車間距離が相対的に大きい場合の逸脱防止トルクを示し、実線は、自車両と先行車両との車間距離が相対的に小さい場合の逸脱防止トルクを示している。
【0028】
上述したように、走行制御ユニット32は、LKAスイッチ28がオンである場合、車線センサ24により検出された走行車線の区画線と自車両との横方向距離が逸脱防止制御距離以下の場合に、自車両が走行車線から逸脱しないように、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与する。走行制御ユニット32は、走行車線の区画線と自車両との横方向距離が小さくなるほど、即ち、車両が区画線に接近するほど、ステアリングアクチュエータ6がステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に付与する逸脱防止トルクを大きくする。
【0029】
図5(a)に示す例では、自車両と先行車両との車間距離が相対的に小さい場合の逸脱防止制御距離d1は、自車両と先行車両との車間距離が相対的に大きい場合の逸脱防止制御距離d2よりも小さい。即ち、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との車間距離が小さくなるほど、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与させる逸脱防止制御距離を小さくすることにより、車線逸脱防止制御を抑制する。
【0030】
また、図5(b)に示す例では、自車両と先行車両との車間距離が相対的に小さい場合の逸脱防止トルクの最大値T1は、自車両と先行車両との車間距離が相対的に大きい場合の逸脱防止トルクの最大値T2よりも小さい。即ち、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との車間距離が小さくなるほど、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に付与させる逸脱防止トルクを小さくすることにより、車線逸脱防止制御を抑制する。
【0031】
また、図5(c)に示す例では、自車両と先行車両との車間距離が相対的に小さい場合の逸脱防止制御距離d1及び逸脱防止トルクの最大値T1は、自車両と先行車両との車間距離が相対的に大きい場合の逸脱防止制御距離d2及び逸脱防止トルクの最大値T2よりも小さい。即ち、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との車間距離が小さくなるほど、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与させる逸脱防止制御距離及び逸脱防止トルクを小さくすることにより、車線逸脱防止制御を抑制する。
【0032】
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した本発明の実施形態では、走行制御ユニット32は、車間距離センサ22により検出された先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制すると説明したが、ACCスイッチ26により予め設定された設定車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制するようにしてもよい。
【0033】
ここで、図6により、本発明の実施形態の変形例による車両用走行制御装置1の制御内容を説明する。図6は、本発明の実施形態の変形例による車両用走行制御装置1の制御内容を示すフローチャートである。
この図6に示すように、本変形例による車両用走行制御処理が開始されると、ステップS11において、走行制御ユニット32は、ACCスイッチ26がオンであるか否かを判定する。その結果、ACCスイッチ26がオンではない(オフである)場合、車線逸脱防止制御の強度を設定する前提となる設定車間距離が設定されていないので、走行制御ユニット32は、以降の処理を行わず、ステップS11に戻る。
【0034】
一方、ACCスイッチ26がオンである場合、ステップS12に進み、走行制御ユニット32は、ACCスイッチ26により設定された設定車間距離を取得する。
【0035】
次に、ステップS13に進み、走行制御ユニット32は、LKAスイッチ28がオンであるか否かを判定する。その結果、LKAスイッチ28がオンではない(オフである)場合、車線逸脱防止制御の強度を設定する必要がないので、走行制御ユニット32は以降の処理を行わず、ステップS11に戻る。
【0036】
一方、LKAスイッチ28がオンである場合、ステップS14に進み、走行制御ユニット32は、ステップS12において取得した設定車間距離に基づき、車線逸脱防止制御の強度を設定する。
このステップS14では、設定車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制する。このとき、設定車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を連続的に抑制するようにしてもよく、設定車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を段階的に抑制するようにしてもよい。
このステップS14の後、走行制御ユニット32は、ステップS11に戻る。
【0037】
また、SBSスイッチ30がオンである場合において、衝突被害軽減制御を実行する条件が満たされた場合(先行車両との車間距離が所定値以下となり、警報装置38により接近警報を出力させる場合、又は、さらに自車両が先行車両に接近し、エンジン34及びブレーキ36を制御して車両を減速させる場合)、走行制御ユニット32は、車線逸脱防止制御を強制的にオフにし、ステアリングアクチュエータ6によりステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクが付与されないようにしてもよい。
【0038】
次に、上述した本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例による車両用走行制御装置1の作用効果を説明する。
【0039】
まず、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制するので、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなり、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線逸脱防止制御を抑制することができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0040】
特に、走行制御ユニット32は、車間距離センサ22により検出された先行車両との車間距離が小さくなるほど、車線逸脱防止制御を抑制するので、自車両が先行車両に接近し、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線逸脱防止制御を抑制することができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0041】
あるいは、走行制御ユニット32は、車間自動制御における設定車間距離が小さくなるほど、自車両の挙動に対する車線逸脱防止制御を抑制するので、設定車間距離を小さくすることにより自車両が先行車両に接近することを許容するドライバに対しては、車線逸脱防止制御を抑制することができ、これにより、先行車両に接近した後にその先行車両を追い越すために車線変更をする可能性の高いドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0042】
また、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、スタリングアクチュエータがステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に付与する逸脱防止トルクを小さくするので、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなり、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、車線変更をしようとするドライバのステアリング操作に反する逸脱防止トルクを小さくすることができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【0043】
また、走行制御ユニット32は、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなるほど、ステアリングアクチュエータ6がステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与する逸脱防止制御距離を小さくするので、自車両と先行車両との所定の車間距離が小さくなり、ドライバが車線変更を行う可能性が高くなるほど、ステアリングアクチュエータ6が自車両が走行車線から逸脱しないようにステアリングホイール2及びステアリングシャフト4に逸脱防止トルクを付与する走行車線内の範囲を狭めることができ、これにより、先行車両を追い越すために車線変更をしようとするドライバに煩わしさを感じさせることなく、走行中の車線から逸脱しないように車両を制御することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用走行制御装置
2 ステアリングホイール
4 ステアリングシャフト
6 ステアリングアクチュエータ
8 ステアリングトルクコントローラ
22 車間距離センサ
24 車線センサ
32 走行制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6