(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または請求項2に記載の記録装置において、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に対し直交する方向において、前記隙間は、前記原稿読み取り領域の全域を含む様に形成される、
ことを特徴とする記録装置。
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の記録装置において、前記原稿読み取り領域と前記隙間との間に位置する、被記録媒体を前記記録部内に供給する為の被記録媒体供給口と、
前記被記録媒体供給口を開閉する開閉体と、を備え、
前記開閉体が閉じた状態において、当該開閉体が、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持する、
ことを特徴とする記録装置。
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の記録装置において、前記原稿読み取り領域を挟んで前記隙間が設けられた側に対し反対側に、前記スキャナー部及び前記記録部の操作部を構成するパネルを備え、
前記パネルが、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持する、
ことを特徴とする記録装置。
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の記録装置において、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に沿って原稿をスライドさせる際に当該原稿のエッジをガイドするガイド部を、前記原稿読み取り領域の外側に有する、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記の様な大きな原稿(原稿読み取り領域の大きさよりサイズの大きい原稿)の読み取りを行う場合、読み取り動作を複数行い(分割読み取り)、得られた画像を記録装置内部で(或いは接続された外部コンピューターで)つなぎ合わせることで原稿全体の画像を得る事も行われている。
【0006】
この様に複数回の原稿読み取り動作を行う際、ユーザーは原稿をスライドさせたり回転させたりする。この様なユーザー操作の操作性については、上記特許文献1記載の複合機をはじめとし、従来の複合機においては必ずしも良好とは言えなかった。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、原稿読み取り領域より大きいサイズの原稿読み取り動作を行う際の操作性に優れたスキャナー付き記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る記録装置は、原稿台に載置された原稿を読み取るスキャナー部と、前記スキャナー部により読み取った情報を被記録媒体に対し記録する記録部と、を備え、前記記録部は、記録可能な最大の被記録媒体サイズが、前記原稿台において原稿を読み取る原稿読み取り領域の大きさより大きく、前記スキャナー部は、前記原稿読み取り領域を開閉するカバーと、前記カバーを回動可能にするヒンジ部と、を有し、前記ヒンジ部は、前記原稿読み取り領域と前記カバーとを結ぶ方向に対し直交する方向において、前記原稿読み取り領域の外側であって、前記原稿読み取り領域に対し両側に設けられ、前記カバーの基端側に、前記原稿読み取り領域からはみ出した、前記原稿読み取り領域の大きさより大きいサイズの原稿を前記スキャナー部の外側に通す隙間を有することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、スキャナー部と記録部とを備えた記録装置において、原稿読み取り領域を開閉するカバーの基端側に、前記原稿読み取り領域からはみ出した、前記原稿読み取り領域の大きさより大きいサイズの原稿を前記スキャナー部の外側に通す隙間を有するので、前記大きいサイズの原稿を読み取る際に当該原稿を折り曲げたり、分割読み取りの際に原稿を回転させたりなどの煩雑な操作を回避でき、操作性が良好となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記隙間は、前記カバーを開いた状態と閉じた状態の双方において形成されることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記隙間は、前記カバーを開いた状態と閉じた状態の双方において形成されるので、読み取り時に前記カバーを閉じることで外部からの光の入り込みを抑制して良好な読み取り結果を得ることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に対し直交する方向において、前記隙間は、前記原稿読み取り領域の全域を含む様に形成されることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に対し直交する方向において、前記隙間は、前記原稿読み取り領域の全域を含む様に形成されるので、より多くのサイズの原稿について、原稿読み取り領域からはみ出した部分を前記スキャナー部の外側に通すことができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記原稿読み取り領域と前記隙間との間に位置する、被記録媒体を前記記録部内に供給する為の被記録媒体供給口と、前記被記録媒体供給口を開閉する開閉体と、を備え、前記開閉体が閉じた状態において、当該開閉体が、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、被記録媒体を前記記録部内に供給する為の被記録媒体供給口を開閉する開閉体が、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持するので、前記開閉体によってより高い位置で原稿を支持することができ、原稿台からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記開閉体が原稿を支持する支持位置は、前記原稿台より高いことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記開閉体が原稿を支持する支持位置は、前記原稿台より高いので、より高い位置で原稿を支持することができ、原稿台からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりをより確実に抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第4のまたは第5の態様において、前記カバーは、回動に際して閉じた状態の前記開閉体を避ける切り欠きを有し、前記カバーが開くとともに前記開閉体が閉じた状態において、前記隙間が、前記切り欠きと前記開閉体との間に形成されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記カバーは、回動に際して閉じた状態の前記開閉体を避ける切り欠きを有し、前記カバーが開くとともに前記開閉体が閉じた状態において、前記隙間が、前記切り欠きと前記開閉体との間に形成されるので、前記開閉体を避ける切り欠きが前記隙間を形成することで、前記隙間を低コストに構成することができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記原稿読み取り領域を挟んで前記隙間が設けられた側に対し反対側に、前記スキャナー部及び前記記録部の操作部を構成するパネルを備え、前記パネルが、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記スキャナー部及び前記記録部の操作部を構成するパネルが、前記原稿読み取り領域からはみ出した原稿を支持するので、原稿台からの原稿の垂れ下がりや滑り落ちを抑制する効果が得られる。
【0022】
本発明の第8の態様は、前記パネルが原稿を支持する支持位置は、前記原稿台より高いことを特徴とする。
本態様によれば、前記パネルが原稿を支持する支持位置は、前記原稿台より高いので、原稿台からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりをより確実に抑制することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、第7のまたは第8の態様において、前記パネルにおける、原稿を支持する支持面が、略水平面を成すことを特徴とする。
本態様によれば、前記パネルにおける、原稿を支持する支持面が、略水平面を成すので、原稿台からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりをより効果的に抑制することができる。
【0024】
本発明の第10の態様は、第1から第9の態様のいずれかにおいて、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に沿って原稿をスライドさせる際に当該原稿のエッジをガイドするガイド部を、前記原稿読み取り領域の外側に有することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、前記原稿読み取り領域と前記隙間とを結ぶ方向に沿って原稿をスライドさせる際に当該原稿のエッジをガイドするガイド部を、前記原稿読み取り領域の外側に有するので、前記原稿読み取り領域より大きいサイズの原稿を分割読み取りする際(スライドさせる際)、原稿のずれや斜行を抑えることができ、良好な読み取り結果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0028】
図1、
図2、
図3は本発明に係るプリンター1を前方側から見た外観斜視図であり、
図1はスキャナーユニット3のカバー4を閉じた状態、
図2は手差しカバー6を開くとともにペーパーサポート15を展開した状態、
図3はスキャナーユニット3のカバー4とチルトパネル5を開くとともに排紙受けトレイ8を突出させた状態を示す図である。
【0029】
また、
図4は
図3の部分拡大図、
図5は
図4において隙間35に原稿を通した状態の図、
図6〜
図8はプリンター1の用紙搬送経路を示す側断面図である。
更に、
図9はスキャナーユニット3の平面図、
図10はスキャナーユニット3の側断面図、
図11はプリンター1の制御系のブロック図、
図12(A)、
図12(B)、
図12(C)は分割読み取りモード実行時の原稿の位置を示す図、
図13は分割読み取りモード実行時の読み取り範囲と繋ぎ合わせ位置を占めす図、
図14〜
図16は分割読み取りモード実行時のガイダンス画面の一例を示す図である。また
図17は他の実施形態に係るスキャナーユニットの平面図である。
【0030】
尚、各図に示すx−y−z直交座標系は、x方向及びy方向が水平方向であり、このうちx方向は記録部3において用紙幅方向であり、また装置左右方向でもある。またy方向は記録部3において用紙搬送方向であり、また装置奥行き方向でもある。更に、z方向は重力方向であり、装置高さ方向でもある。スキャナーユニット2における各方向の定義は、後に説明する。
【0031】
■■■1.プリンターの全体構成■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以下では先ず、本発明の記録装置の一実施形態であるプリンター1の全体構成について概説する。
図1〜
図3においてプリンター1は、被記録媒体の一例としての記録用紙(以下「用紙P」)にインクジェット記録を行う記録部(装置本体)2の上部に、スキャナー部としてのスキャナーユニット3を備えており、即ちインクジェット記録機能に加えてスキャナー機能を備える複合機として構成されている。
【0032】
スキャナーユニット3は、記録部2に対して不図示の回動軸を介して回動可能に設けられており、回動することにより、閉じた状態(
図1)と開いた状態(不図示)とをとり得る。スキャナーユニット3を開くと、記録部2の内部が露呈し、不図示のインクカートリッジ交換作業や紙ジャム処理作業等を行うことができる。
スキャナーユニット3において上部のカバー4は開閉可能なカバーであり、当該カバー4を開放することにより、スキャナーユニット3の原稿台30が表れる様になっている。
【0033】
装置前面において符号5は、電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン等を含む操作部5aと、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示、各種ガイダンス表示などを行う表示部5bと、備えて成るチルトパネルである。チルトパネル5はチルト可能であり、パネル面がほぼ垂直な状態(
図1、
図2)と、ほぼ水平な状態(
図3)との間でチルト可能に設けられ、且つ、チルト可能な範囲の中の任意の姿勢で角度保持できる様に設けられている。
【0034】
記録部2の後方上部において符号6は開閉可能な手差しカバーであり、
図2に示す様にこの手差しカバー6を開くことにより、手差し供給口6aを利用した用紙Pの手差しでの給紙が行える様になっている。また、手差しカバー6を開くと、ペーパーサポート15が展開可能となり、手差し供給口6aから供給される用紙Pは、ペーパーサポート15によって傾斜姿勢で支持される。
【0035】
続いて以下では、
図6〜
図8を参照しつつ記録部2の構成、特に用紙搬送経路について更に詳しく説明する。本実施形態に係るプリンター1は、装置底部に下段側トレイ24及び上段側トレイ26をそれぞれ着脱可能に備え、当該下段側トレイ24或いは上段側トレイ26から記録用紙を1枚ずつ給送する。尚、下段側トレイ24に収容される用紙は符号P1で、上段側トレイ26に収容される用紙は符号P2で、それぞれ示しており、以下では特に区別する必要がない場合は「用紙P」と言う。
【0036】
符号25は下段側トレイ24に設けられた開閉可能なカバーであり、カバー24を開くことにより、下段側トレイ24及び上段側トレイ26が装置前面側に露呈し、着脱可能となる。
【0037】
不図示の駆動モーターによって回転駆動される給送ローラー9は、回動軸11を中心に揺動するローラー支持部材10に設けられており、上段側トレイ26が退避位置(不図示)にあるときは、下段側トレイ24に収容された用紙P1の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P1を下段側トレイ24から送り出す。
また上段側トレイ26が突き当たり位置(
図5〜
図7)にあるとき、給送ローラー9は上段側トレイ26に収容された用紙P2の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P2を上段側トレイ26から送り出す。
【0038】
続いて記録部2において下段側トレイ24及び上段側トレイ26の先端と対向する位置には分離斜面12が設けられており、下段側トレイ24或いは上段側トレイ26から送り出される用紙Pは、その先端が分離斜面12に接しながら下流側に進むことで、給送されるべき最上位の用紙Pと次位以降の用紙Pとの分離が行われる。
【0039】
分離斜面12の先には、不図示のモーターによって回転駆動される中間ローラー13が設けられており、この中間ローラー13によって用紙Pは湾曲反転させられ、装置前方側へと向かう。尚、符号14a、14b、14c、14d、は従動回転可能な従動ローラーであり、少なくとも用紙Pは、従動ローラー14a、14bと中間ローラー13とによってニップされて、下流側へと送られる。
【0040】
尚、従動ローラー14dは、両面印刷の為に搬送駆動ローラー16から上流側(
図6〜
図8において左側)にスイッチバックされる用紙Pを中間ローラー13との間でニップする従動ローラーである。
【0041】
中間ローラー13の先には、図示しないモーターによって回転駆動される搬送駆動ローラー16と、該搬送駆動ローラー16に接して従動回転する搬送従動ローラー17とが設けられており、これらローラーによって用紙Pが、記録手段を構成する記録ヘッド20の下へと送られる。
【0042】
続いてインクを吐出する記録ヘッド20はキャリッジ19の底部に設けられ、当該キャリッジ19は図示しないモーターによって主走査方向(x方向:
図6〜
図8において紙面表裏方向)に往復動する様に駆動される。
【0043】
記録ヘッド20と対向する位置には支持部材18が設けられ、当該支持部材18によって、用紙Pと記録ヘッド20との間の間隔が規定される。そして支持部材18の下流側には、図示しないモーターによって回転駆動される排出駆動ローラー21と、当該排出駆動ローラー21に接して従動回転する排出従動ローラー22とが設けられている。記録ヘッド20によって記録の行われた用紙Pは、これらローラーにより、排紙受けトレイ8へ向けて排出される。
【0044】
上段側トレイ26の上部に位置する排紙受けトレイ8は、図示しないモーターによって記録部2に収納された状態(
図1、
図2)と、記録部2の前方側に突出した状態(
図3及び
図6〜
図8)と、を取りうる様に設けられており、記録部2の前方側に突出した状態となることで、記録が行われて排出される用紙Pを受けることができる。
【0045】
以上が用紙搬送経路上の主な構成要素であるが、用紙搬送経路は上述した下段側トレイ24或いは上段側トレイ26から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送経路(
図6において破線R1)のほか、第1面(おもて面)に記録が行われた用紙Pを反転させる反転搬送路(
図7において破線R2)と、手差し案内部7を介して手差し供給される手差し供給路(
図8において破線R3)と、を有している。
【0046】
反転搬送路R2は、搬送駆動ローラー16を逆転駆動し、記録時に用紙後端だった側を先端にして中間ローラー13と従動ローラー14dとの間に向けて搬送し、そして中間ローラー13により反転させ、再び搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17との間に送る際の搬送路である。
【0047】
手差し供給路R3は、後方上部の手差しカバー6を開放することにより表れる手差し案内面部7と、この手差し案内部7を介して手差し供給される用紙Pを支持するペーパーサポート15と、のこれらにより形成される供給路である。
【0048】
本実施形態では、用紙搬送経路R1及び反転搬送路R2を搬送可能な用紙の幅は、A4サイズ用紙の長手方向を搬送方向として当該A4サイズ用紙の横幅(搬送方向と直交する方向の幅)を最大サイズとする。また、手差し供給路R3を搬送可能な用紙の幅は、A3サイズ用紙の長手方向を搬送方向として当該A3サイズ用紙の横幅(搬送方向と直交する方向の幅)を最大サイズとする。
尚、排紙受けトレイ8は、上記A4サイズ用紙の横幅に合わせて形成されている。即ち、排紙受けトレイ8の幅は、手差し給紙口6aの幅よりも小さい。
【0049】
■■■2.スキャナーユニット3の構成■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
続いて、スキャナーユニット3の構成について詳説する。スキャナーユニット3は、原稿台30と、カバー4とを備えている。カバー4は、スキャナーユニット3の−y方向側の端部にヒンジ29、29を介して回動可能に連結されている。このため本実施例では、カバー4は、閉じた状態における+y方向側の端部を自由端とし、−y方向側の端部を基端として回動することにより、原稿台30(原稿読み取り領域30a)を開閉する。
【0050】
原稿台30の上面は、原稿を載置する載置面を形成し、この原稿台30は透明なガラス板により形成されている。原稿台30の上面周囲には枠状のフレーム31が設けられており、このフレーム31により画設された矩形領域が、原稿読み取り領域(以下符号30aで示す)として形成されている。原稿読み取り領域30aは、枠体としてのフレーム31の上面よりも一段低くなっている(
図9等参照)。
【0051】
本実施形態において原稿読み取り領域30aは後述する読み取りユニット32によって読み取りが可能な領域であるが、原稿台30の大きさ(フレーム31により囲われた領域)と原稿読み取り領域30aの大きさは、本実施形態ではほぼ等しい。
そして本実施形態において原稿読み取り領域30aは、装置幅方向(x方向)において、プリンター1の中央部に位置している。
【0052】
尚、カバー4において原稿読み取り領域30aと対向する側には、弾性材(例えばスポンジ)により形成された原稿押さえマット4bが設けられている。このため原稿読み取り領域30aに載置された原稿は、カバー4に設けられた原稿押さえマット4bにより押圧され、その被読み取り面が原稿台30に密着する。従って原稿押さえマット4bは、原稿読み取り領域30aの大きさと略同じ大きさに形成されている。
【0053】
ここで本実施形態では、原稿読み取り領域30aに対し、カバー4のヒンジ29が設けられた側(y−側)が装置背面側であり、原稿読み取り領域30aを挟んでカバー4のヒンジ29が設けられた側とは反対側(y+側)が装置前面側である。
そして
図9に示す様に原稿読み取り領域30aにおいて装置前面側の角部に、読み取り基準位置Sが設定されている。より具体的には、装置前面側から見て手前右側の角部に、読み取り基準位置Sが設定されている。
【0054】
この読み取り基準位置Sは、原稿の角部を合わせる位置であり、スキャナーユニット3はこの読み取り基準位置Sを原稿の角部と認識して読み取りを行う。読み取り基準位置Sの近傍には、矢印状の基準位置マーク33が設けられており、ユーザーはこの基準位置マーク33によって、装置前面側から見て手前右の角部が読み取り基準位置であることを認識できる。
【0055】
続いて、本実施形態においてスキャナーユニット3はフラットベッド型のスキャナーであり、
図9に示す様に原稿読み取り領域30aに対して移動可能な読み取りユニット32が原稿台30の下側に設けられている。読み取りユニット32は、本実施形態ではx方向に沿って移動する様に設けられている。
【0056】
読み取りユニット32は、原稿台30に載置された原稿に光を照射し、該原稿からの反射光を受光して原稿の情報を読み取る光学ユニットとして構成され、例えばCCD(Charge Coupled Devices)方式或いはCIS(Contact Image Sensor)方式の光学ユニットとして構成される。
【0057】
ここで、スキャナーユニット3と記録部2は、制御部27(
図11)によって制御される。また制御部27は、チルトパネル5の操作部5aから各種操作信号を受信し、また表示部5bに対し信号を送出して表示部5bに各種表示を行う。更に制御部27は、プリンター1に接続された外部コンピューター(PC)100で動作する「スキャナー制御プログラム」としてのプリンタドライバ101との間で信号を送受信する。外部PC100は、プリンター1に接続される場合もあれば、接続されない場合もある。
【0058】
スキャナーユニット3によって読み取られた画像情報は、制御部27において処理され、そして処理した情報に基づき、制御部27が記録部2を制御してインクジェット記録を行う。或いは、外部PC100が接続されていれば、スキャナーユニット3によって読み取られた画像情報は、プリンタドライバ101において処理され、そして処理した情報を制御部27が受け取る。制御部27がプリンタドライバ101から受け取った情報に基づき、記録部2を制御してインクジェット記録を行う。
尚、後述する分割読み取りモードも同様に、制御部27で動作するソフトウェアが実行するか、或いは、外部PC100で動作するプリンタドライバ101が実行する。
【0059】
ここで、本実施形態に係るプリンター1は、記録部2において記録可能な最大の用紙サイズ(例えば、A3サイズ)が、原稿読み取り領域30aの大きさ(例えば、A4サイズ)より大きく設定されている。以下では、原稿読み取り領域30aの大きさよりサイズの大きい原稿を原稿MSと称し、図示するものとする。制御部27は、後述する分割読み取りモード(複数回の原稿読み取り動作)によって原稿MSの全体を読み込み、読み込んだ画像情報を繋ぎあわせて原稿MS全体の画像情報を生成する。
【0060】
そして得られた原稿MS全体の画像情報に基づき、場合により、原稿読み取り領域30aの大きさより大きいサイズの記録用紙に対しインクジェット記録を行う。一例として、原稿MSがA3サイズであれば、当該原稿MSを分割読み取りし、読み込んだ画像情報を繋ぎあわせて原稿MS全体の画像情報を生成し、そしてA3サイズの記録用紙に対し等倍でインクジェット記録を行う。
【0061】
次に、
図4から明かな様に、原稿読み取り領域30aとカバー4とを結ぶ方向(y方向)と直交する方向である装置幅方向(x方向)において、カバー4の回動軸を形成するヒンジ29、29は、原稿読み取り領域30aの両側であって且つ外側に設けられている。そしてカバー4の基端側には、ヒンジ29、29の間に切り欠き4aが形成されている。
【0062】
切り欠き4aは、回動に際して閉じた状態の「開閉体」としての手差しカバー6を避ける機能を有するとともに、更に閉じた状態の手差しカバー6との間に隙間35を形成する機能を果たす。隙間35の詳細については後述するが、この様に手差しカバー6を避ける切り欠き4aが隙間35をも形成することで、隙間35を低コストに構成することができる。
【0063】
次に、隙間35は、カバー4を開いた状態と閉じた状態の双方において形成され、これにより
図5、
図10に示す様に原稿読み取り領域30aからはみ出した、原稿読み取り領域30aの大きさより大きいサイズの原稿MSを、隙間35を介してスキャナーユニット3の外側に通すことができる。
図10において符号MTは、原稿MSにおいてスキャナーユニット3の外側に通された部分を示している。従って原稿読み取り領域30aより大きいサイズの原稿MSを読み取る際に、当該原稿MSを折り曲げたり、分割読み取りの際に原稿MSを回転させたりなどの煩雑な操作を回避でき、操作性が良好となる。
【0064】
また本実施形態において隙間35は、カバー4を開いた状態と閉じた状態の双方において形成されるので、読み取り時にカバー4を閉じることで外部からの光の入り込みを抑制して良好な読み取り結果を得ることができる。但し、これに限られずカバー4が開いた状態においてのみ隙間35が形成される構成であっても良い。
【0065】
また本実施形態において隙間35は、
図4及び
図9から明かな様にx方向において原稿読み取り領域30aの全域を含む様に形成されている。従ってより多くのサイズの原稿について、原稿読み取り領域30aからはみ出した部分をスキャナーユニット3の外側に通すことができる。但し、これに限られず隙間35が原稿読み取り領域30aの少なくとも一部を含む様に形成され、少なくとも一つのサイズの原稿について原稿読み取り領域30aからはみ出した部分をスキャナーユニット3の外側に通すことができれば良い。
尚、
図9では、図示の便宜上隙間35を破線で示している。
【0066】
また、本実施形態では隙間35はヒンジ29、29の間に形成されているが、必ずしもこれに限られず、例えばヒンジ29がx方向において原稿読み取り領域30aの範囲内に形成されていても良い。即ち、カバー4、或いは、スキャナーユニット2の本体とカバー4との間に、原稿を通す隙間35が形成されていれば良い。
【0067】
また本実施形態においては手差しカバー6が、原稿読み取り領域30aからはみ出した原稿MSを支持する様になっている。特に本実施形態では、手差しカバー6が原稿MSを支持する支持位置(閉じた状態の手差しカバー6の上面)は、原稿台30より高い(
図10)。従って原稿MSをより高い位置で支持することができ、原稿台30からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりを抑制することができる。但しこれに限られず、手差しカバー6が原稿MSを支持しない構成であっても良い。
【0068】
加えて本実施形態では、スキャナーユニット3及び記録部2の操作部を構成するチルトパネル5が、原稿読み取り領域30aからはみ出した原稿MSを支持する(
図10、
図12(B)、
図12(C))。従って原稿台30からの原稿MSの垂れ下がりや滑り落ちをより効果的に抑制する効果が得られる。尚、チルトパネル5はチルト可能でなく所定の角度で固定された構成であっても、その様なパネルが原稿MSを支持できる構成であっても良い。或いは、チルトパネル5が原稿MSを支持しない構成であっても構わない。
【0069】
また本実施形態では、チルトパネル5が原稿MSを支持する支持位置は、原稿台30より高い(
図10)。これにより、原稿台30からの原稿MSの滑り落ちや垂れ下がりをより確実に抑制することができる。
【0070】
尚、チルトパネル5はチルト可能に構成されており、最も開いた状態では、その上面(
図10において符号5c)が、略水平面を成す様に構成されている。即ち、原稿MSを支持する支持面が、略水平面を成すことができる。これにより、原稿台30からの原稿MSの滑り落ちや垂れ下がりをより効果的に抑制することができる。
但し、チルトパネル5のパネル面が水平面を形成しない構成であっても、即ち最大開き角においてパネル面が或る程度の下がり傾斜面となる様な構成であっても、原稿MSを支持できる構成であれば良い。
【0071】
また本実施形態では、原稿読み取り領域30aとカバー4とを結ぶ方向(y方向)と直交する方向である装置幅方向(x方向)において、チルトパネル5は、原稿読み取り領域30aの全域を含む幅に形成されている。従って原稿読み取り領域30aからはみ出した原稿MSは、幅方向全体がチルトパネル5によって支持され、原稿台30からの原稿MSの滑り落ちや垂れ下がりがより効果的に抑制される。
但しこれに限られず、チルトパネル5が、原稿読み取り領域30aの少なくとも一部を含む幅に形成されていても良い。
【0072】
尚、他の実施形態として、
図11において符号37で示す駆動源37を用いることもできる。駆動源37はチルトパネル5をチルトさせる駆動源(例えば、モーター)であり、制御部27の制御のもと、チルトパネル5を所定の傾斜角(姿勢)に設定する。そして制御部27は、スキャナーユニット3による原稿読み取りに際し、チルトパネル5において原稿を支持する支持面5cが略水平面を成す様に制御する。これにより、ユーザー操作によることなく、原稿台30からの原稿の滑り落ちや垂れ下がりをより効果的に抑制することができる。但し、チルトパネル5が駆動源によって駆動されず、ユーザー操作によってチルトする構成であっても良い。或いは、開き方向のみ駆動源によって駆動され、閉じる方向はユーザー操作による構成であっても良い。
【0073】
■■■3.分割読み取りモード■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
続いて、分割読み取りモードについて詳説する。既に概説した様に制御部27は、分割読み取りモード(複数回の原稿読み取り動作)によって原稿読み取り領域30aよりサイズの大きい原稿MSの全体を読み込み、読み込んだ画像情報を繋ぎあわせて原稿MS全体の画像情報を生成する。そして得られた原稿MS全体の画像情報に基づき、場合により、原稿読み取り領域30aの大きさより大きいサイズの記録用紙に対しインクジェット記録を行う。
【0074】
図12〜
図16は、一例としてA3サイズの原稿MSを分割読み取りし、読み込んだ画像情報を繋ぎあわせて原稿MS全体の画像情報を生成し、そしてA3サイズの記録用紙に対し等倍でインクジェット記録を行う例を示している。
【0075】
先ず、原稿読み取り領域30aにおける読み取り基準位置Sは、本実施形態においてカバー4の回動軸を構成するヒンジ29から遠い側の角部に設けられている(
図3、
図9)。従って分割読み取りモードを実行する際に、原稿MSをヒンジ29から遠ざける方向にスライドさせる(
図12(A)、(B)、(C)の順)。これにより、原稿MSをスライドさせる際の作業性が向上する。
【0076】
より具体的には、A4サイズの原稿読み取り領域30aによる、A3サイズの原稿MSの分割読み取りは計3回の読み取り動作により行われ、第1回目の読み取り動作に際して原稿MSは、
図12(A)に示す様に原稿MSの角部(読み取り面を表にした場合、原稿右上の角部(
図13において符号T)となる)を読み取り基準位置Sに合わせる。このとき原稿MSは、上述した様に原稿読み取り領域30aからはみ出した部分が隙間35を介してスキャナーユニット3の外側に出た状態となっている。
【0077】
この第1回目の読み取り動作に先立ち、ユーザーが分割読み取りモードを選択した際に制御部27は、原稿MSの載置方法を案内する情報(ガイダンス)を例えば表示部5bに表示する。
図14はそのガイダンス情報の一例であり、
図12(A)に対応している。これによりユーザー側からして操作方法が明確になるととともに、原稿MSが不適切にセットされることを防止できる。
【0078】
原稿MSをセットし、ユーザーによりスキャンボタンが押下されると、制御部27は第1回目の読み取り動作を行う。この分割読み取りモードにおける一回の原稿読み取り動作は、読み取り基準位置S側から開始される。尚、ここでのスキャンボタンとは、プリンター1がスタンドアロンで使用される際には操作部5aに割り当てられた一の操作ボタン、或いは表示部5bに表示されたタッチパネルボタン(GUI)である。或いは、プリンター1に外部PC100(
図11)が接続された場合は、プリンタドライバ101によってディスプレイ上に表示されたボタン(GUI)である。
図13において領域SC1は、1回目の読み取り動作によって読み取られる領域を示している。
【0079】
この1回目の読み取り動作が終わると、制御部27は原稿MSの2回目の載置方法を案内する情報(ガイダンス)を表示部5bに表示する。
図15はそのガイダンス情報の一例であり、
図12(B)に対応している。具体的には、ユーザーは原稿MSを装置手前側(
図12において下側)に所定量スライドさせる。そしてユーザーによりスキャンボタンが押下されると、制御部27は第2回目の読み取り動作を行う。
図13において領域SC2は、2回目の読み取り動作によって読み取られる領域を示している。
【0080】
この2回目の読み取り動作が終わると、制御部27は原稿MSの3回目の載置方法を案内する情報(ガイダンス)を表示部5bに表示する。
図16はそのガイダンス情報の一例であり、
図12(C)に対応している。具体的には、ユーザーは原稿MSを装置手前側(
図12において下側)に所定量スライドさせる。そしてユーザーによりスキャンボタンが押下されると、制御部27は第3回目の読み取り動作を行う。
図13において領域SC3は、3回目の読み取り動作によって読み取られる領域を示している。
【0081】
制御部27は、以上によって得られた各画像(上記実施例では3つの画像)を繋ぎ合わせて原稿MS全体の画像情報を得る際、画像の繋ぎ合わせ方向(y方向:
図13においては上下方向)において一回の原稿読み取り動作によって得られた画像の読み取り終了位置側の所定の画像位置と、次回の原稿読み取り動作によって得られた画像の読み取り開始位置側の所定の画像位置との繋ぎ合わせを順次行うことにより得る。
【0082】
例えば、
図13の位置ST1は、画像の繋ぎ合わせ方向において1回目の原稿読み取り動作(SC1)によって得られた画像の読み取り終了位置側の所定の画像位置と、2回目の原稿読み取り動作(SC2)によって得られた画像の読み取り開始位置側の所定の画像位置との繋ぎ合わせ位置である。同様に
図13の位置ST2は、2回目の原稿読み取り動作(SC2)によって得られた画像の読み取り終了位置側の所定の画像位置と、3回目の原稿読み取り動作(SC3)によって得られた画像の読み取り開始位置側の所定の画像位置との繋ぎ合わせ位置である。尚、
図13の矢印Eは分割読み取り時の原稿MSのスライド方向を示している。
【0083】
即ち、原稿MSを所定の一方向にスライドさせて順次読み取ることができるので、原稿MSを回転させる必要がなく、原稿読み取り領域30aより大きいサイズの原稿読み取り動作を行う際の操作性が向上する。
【0084】
そして例えば、制御部27は、上記分割読み取りモードによって得られた原稿MS全体の画像の大きさが、記録部2において記録が可能な最大サイズの用紙と略同サイズの場合に、前記得られた原稿MS全体の画像情報を、拡大縮小することなく前記最大サイズの用紙に対し記録を行う記録モードを実行可能である。例えば、上記例では原稿MS全体の画像の大きさがA3サイズであり、そして記録部2によって拡大縮小することなくA3サイズの用紙に対して記録が可能である。即ちもとの原稿と同サイズでのコピーを行うことができ、利便性が向上する。
【0085】
以上説明した実施例は、原稿MSがA3サイズであり、読み取った原稿全体の情報を記録部2においてA3サイズ用紙に等倍に記録する例を説明したが、原稿サイズ、分割読み取りモード実行時の分割数(全スキャン回数)、記録を行う際の記録用紙のサイズ、記録時の出力倍率(拡大縮小率)は種々の組み合わせがあり、本発明が以上説明した実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0086】
尚、以上説明した画像の繋ぎ合わせは、プリンター1が備える制御部27が行うものとして説明したが、プリンター1に外部PC100(
図11)が接続されている場合には、外部PC100で動作するプリンタドライバ101によって行われる。また同様に、
図14〜
図16に示されるガイダンス表示は、外部PC100におけるディスプレイ(不図示)に表示される。
【0087】
また、以上説明した実施例は、読み取り基準位置Sが原稿読み取り領域30aにおいて装置手前側にある構成であり、分割読み取り時に原稿MSを装置手前側にスライドさせる例を説明したが、これに限られず、例えば読み取り基準位置Sが原稿読み取り領域30aにおいて装置奥方にあって、分割読み取り時に原稿MSを装置奥方にスライドさせる様にしても構わない。
【0088】
尚、スキャナーユニット2の他の実施形態として
図17に示す様なガイド39を設けることも好適である。
図17においてガイド39は、原稿読み取り領域30aの周囲を形成するフレーム31の上面から高さ方向に突出する様に、フレーム31に一体的に形成されており、y方向すなわち原稿MSのスライド方向に沿って延びる様に形成されている。
図17の例では、ガイド39は、原稿読み取り領域30aの外側であって、y方向においては原稿読み取り領域30aの両側に設けられている。
【0089】
ガイド39は、原稿MSをスライドさせる際に当該原稿MSのエッジ(
図17において右側のエッジ)をガイドする機能を発揮し、これにより原稿読み取り領域30aより大きいサイズの原稿MSを分割読み取りする際(スライドさせる際)、当該原稿MSのずれや斜行を抑えることができ、良好な読み取り結果が得られる。