(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の単セルが互いに略平行な状態でマニホールドの上面に立設配置されており、隣り合う単セル同士が導電部材によって接続された構成の燃料電池装置においては、作動中、単セルとマニホールドとの接続部分に応力が集中し、当該部分が破損してしまうという問題が生じる場合がある。
【0005】
これは、複数の単セルを配列したセルスタックにおいては、配列の周囲よりも中央部分の方が高温となる傾向があるため、導電部材によって互いに接続(拘束)された状態のままで各単セルの熱膨張量に差が生じる結果、各単セルとマニホールドとの接続部分(単セルの下端)を中心に単セルが揺動してしまうことによるものである。当該揺動によって、単セルとマニホールドとの間に配置されたシール材が破損してしまうと、内部の燃料ガスが漏洩し、燃料電池装置の発電性能が低下してしまう。
【0006】
上記のようなセルの揺動を防止するためには、導電部材によるセルの拘束が弱くなるように、導電部材の形状を容易に弾性変形し得るような形状(例えば、屈曲した板形状や蛇腹形状)とすることも考えられる。しかし、その場合には導電部材の電気抵抗が大きくなってしまうため、燃料電池装置の発電効率が低下してしまうという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電効率を低下させることなく、シール材の破損を防止することのできる燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る燃料電池装置は、固体酸化物形の燃料電池装置であって、互いに略平行な状態で立設配置された複数の燃料電池セルと、それぞれの前記燃料電池セルの下端が固定されており、当該下端から前記燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、前記燃料電池セルと前記マニホールドとの間に配置された、脆性材料からなるシール材と、前記燃料電池セルの下端よりも上方側に配置され、隣り合う前記燃料電池セル同士を接続する導電部材と、前記導電部材の熱膨張に伴って前記燃料電池セルと前記マニホールドとの接続部分に生じる応力を緩和するための応力吸収部材と、を備え、前記応力吸収部材は、前記燃料電池セルと前記シール材との間、又は、前記シール材と前記マニホールドとの間のうち少なくとも一方に配置されており、高温時においては、前記燃料電池セルと前記マニホールドとの間における気密性を保ちながら、前記燃料電池セルが前記マニホールドに対して揺動することを許容するように変形するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る燃料電池装置は、固体酸化物形の燃料電池装置であって、燃料電池セルとマニホールドとを備えている。
【0010】
燃料電池セルは複数備えられており、互いに略平行な状態で、後述のマニホールドの上に立設配置されている。燃料電池セルは所謂単セルと称されるものであって、それぞれが燃料ガスと酸化剤ガスの供給を受けて発電する。
【0011】
マニホールドは、燃料電池セルに燃料ガスを供給するための容器である。マニホールドは、その上面にそれぞれの燃料電池セルの下端が固定されており、当該下端から各燃料電池セルに燃料ガスを供給する。また、各燃料電池セルとマニホールドとの間には、脆性材料からなるシール材が配置されている。このようなシール材としては、例えばガラスやセラミックスが用いられる。
【0012】
隣り合う燃料電池セル同士は、導電部材によって接続されている。導電部材は、燃料電池セルの下端よりも上方側に配置されており、燃料電池セル同士を機械的に且つ電気的に接続している。導電部材によって燃料電池セル同士が電気的に接続されているため、燃料電池セル全体(セルスタック)から高電圧の電力を出力することが可能となっている。
【0013】
ところで、このような構成の燃料電池装置においては、作動中、燃料電池セル毎の温度がばらつく結果、各燃料電池セルの熱膨張量に差が生じる。しかし、隣り合う燃料電池セル同士は導電部材によって互いに接続(拘束)された状態となっているため、熱膨張に伴って燃料電池セルが揺動し、燃料電池セルとマニホールドとの接続部分に応力が生じてしまうことがある。そこで、本発明に係る燃料電池装置では、このような応力を緩和するための応力吸収部材を更に備えている。
【0014】
応力吸収部材は、燃料電池セルとシール材との間、又は、シール材とマニホールドとの間のうち少なくとも一方に配置されている。高温時(燃料電池装置の作動中)において、応力吸収部材は、燃料電池セルとマニホールドとの間における気密性を保ちながら、燃料電池セルがマニホールドに対して揺動することを許容するように変形する。
【0015】
上記のように、熱膨張量の差に起因して燃料電池セルが揺動した場合には、当該揺動を許容するように応力吸収部材が変形するため、燃料電池セルとマニホールドとの接続部分における応力が確実に緩和される。その結果、シール材が破損して燃料ガスが漏洩してしまうようなことを防止することができる。
【0016】
また、導電部材の形状を、容易に弾性変形し得るような形状とする必要はなく、例えば単純な平板状とすることができる。このため、導電部材の電気抵抗が大きくなってしまうことはなく、燃料電池装置の発電効率が低下してしまうという問題が生じることはない。
【0017】
また、本発明に係る燃料電池装置では、前記シール材と前記応力吸収部材とが上下方向に積層されており、その積層面が水平となっていることも好ましい。
【0018】
シール材や応力吸収部材は、燃料電池セルを下方から支えており、これらには鉛直方向に沿った力(重力)が常に加えられている。このため、燃料電池装置の作動中、応力吸収部材が高温である状態が長時間継続された場合には、応力吸収部材が重力の影響によって次第に変形してしまうことが考えられる。
【0019】
特に、シール材と応力吸収部材との積層面が水平面に対して傾斜している場合(又は垂直な場合)には、応力吸収部材には積層面に沿ったせん断力が加わるため、燃料電池セルが少しずつ下方に沈み込んでしまうことが考えられる。
【0020】
そこで、この好ましい態様では、シール材と応力吸収部材とが上下方向に積層されており、その積層面が水平となっている。このため、応力吸収部材に加えられる重力の方向は、積層面に対して垂直となる。すなわち、応力吸収部材には重力による(積層面に沿った)せん断力が殆ど加えられない。その結果、燃料電池セルが少しずつ下方に沈み込んでしまうような現象が生じることもない。
【0021】
また、本発明に係る燃料電池装置では、前記燃料電池セルの下端には金属部材が接続されており、前記金属部材のうち、前記応力吸収部材又は前記シール材に対して接合される部分の面積は、前記燃料電池セルの下端面の面積よりも大きいことも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、燃料電池セルの下端には金属部材が接続されている。この金属部材のうち、応力吸収部材又はシール材に対して接合される部分の面積、すなわち、金属部材に対して下方側から接合される部材との接合面積は、燃料電池セルの下端面の面積よりも大きい。燃料電池セルの下端がより広い面積で支えられるため、燃料電池セルを安定させることができ、燃料電池セルの揺動に伴うシール不良(シール材の破損等)を更に抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係る燃料電池装置では、前記金属部材は、下方に向かって延びるように形成された延長部を有しており、前記マニホールドの上面には、ぞれぞれの前記燃料電池セルに対応した開口が形成されており、前記燃料電池セルは、前記延長部が前記開口に挿入された状態で前記マニホールドに固定され、前記延長部の側面と前記開口の縁との間には隙間が形成されていることも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、金属部材が、下方に向かって延びるように形成された延長部を有している。また、マニホールドの上面には、ぞれぞれの燃料電池セルに対応した開口が形成されている。燃料電池セルは、金属部材の延長部がマニホールドの開口に挿入された状態で、マニホールドに固定される。
【0025】
このような構成により、燃料電池装置の内部が高温になり、燃料電池セルや導電部材等が熱膨張した場合であっても、燃料電池セルの下端位置が水平方向に大きく変位してしまうこと(位置ずれ)が防止される。
【0026】
また、延長部の側面と開口の縁との間には隙間が形成されている。燃料電池セルがある程度揺動するための自由度が確保されるため、高温時における金属部材やマニホールドの破損が防止される。
【0027】
また、本発明に係る燃料電池装置では、前記応力吸収部材は銀であることが好ましい。
【0028】
応力吸収部材として銀を用いた場合には、SOFCの運転温度である700℃近傍でも応力吸収部材が融解してしまうことはなく、燃料電池セルとマニホールドとの間における気密性を保つことができる。また、燃料電池セルがその下端を中心に揺動した場合であっても、応力吸収部材は(銀の延性により)容易に変形するため、シール材が破損して燃料ガスが漏洩してしまうようなことがない。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、発電効率を低下させることなく、シール材の破損を防止することのできる燃料電池装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0032】
最初に、
図1を参照しながら、本発明の実施形態である燃料電池装置について説明する。
図1に示す燃料電池装置2は、固体酸化物形燃料電池ユニットの一部を構成するものである。この固体酸化物形燃料ユニットは、燃料電池装置2と、補機ユニット(図示せず)とを備える。
【0033】
図1においては、燃料電池装置2の高さ方向をy軸方向としている。このy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定義し、燃料電池装置2の短手方向に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池装置2の長手方向に沿った方向をz軸方向としている。
図2以降において図中に記載しているx軸、y軸、及びz軸は、
図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。また、z軸の負方向に沿った方向をA方向とし、x軸の正方向に沿った方向をB方向としている。
【0034】
燃料電池装置2は、燃料電池セル(詳細は後述する)を収容するケーシング56と、ケーシング56の上部に設けられている熱交換器22とを備える。ケーシング56の内部は密封空間となっている。ケーシング56には、被改質ガス供給管60と、水供給管62とが繋げられている。一方、熱交換器22には、発電用空気導入管74と、燃焼ガス排出管82とが繋げられている。
【0035】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガスといった改質用の被改質ガスを供給する管路である。水供給管62は、被改質ガスを水蒸気改質する際に用いられる水を供給する管路である。発電用空気導入管74は、改質後の燃料ガスと発電反応を起こさせるための発電用空気(酸化剤ガス)を供給する管路である。燃焼ガス排出管82は、発電反応後の燃料ガスが燃焼した結果生じる燃焼ガスを排出する管路である。
【0036】
続いて、
図2〜
図4を参照しながら、燃料電池装置2の内部について説明する。
図2は、燃料電池装置2をその中央近傍において
図1のA方向から見た断面図である。
図3は、燃料電池装置2をその中央近傍において
図1のB方向から見た断面図である。
図4は、
図1に示す燃料電池装置2から燃料電池セル集合体を覆うケーシング56の一部を取り外した状態を示す斜視図である。
【0037】
図2〜
図4に示すように、燃料電池装置2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56により全体が覆われている。
図4に示すように、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状であり、改質器20側の上面、燃料ガスタンク68(ガスマニホールド)側の下面、
図4のA方向に沿って延びる長辺側面と、
図4のB方向に沿って延びる短辺側面と、を備えている。
【0038】
本実施形態の場合、水供給管62から供給される水を蒸発させるための蒸発混合器(図に明示しない)は、改質器20の内部に設けられている。蒸発混合器は、燃焼ガスにより加熱され、水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)と空気とを混合するためのものである。
【0039】
被改質ガス供給管60及び水供給管62は、ケーシング56の内部に導かれた後、共に改質器20に繋がれている。より具体的には、
図3に示すように、改質器20の上流端である図中右側の端部に繋がれている。
【0040】
改質器20は、燃料電池セル集合体12の上方に形成された燃焼室18の更に上方に配置されている。したがって、改質器20は、発電反応後の残余の燃料ガス及び空気による燃焼熱によって熱せられ、蒸発混合器としての役割と、改質反応を起こす改質器としての役割とを果たすように構成されている。
【0041】
改質器20の下流端(
図3の左端)には、燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に入り込むように配置されている。
【0042】
図2〜
図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。燃料ガスタンク68は、以下のようにして各燃料電池セルに燃料ガスを分配供給する。燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に均一に供給されるようになっている。燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料ガスタンク68の一部である保持部30の開口を通過した後、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0043】
続いて、
図5を参照しながら、燃料電池セルユニット16について説明する。
図5は、本実施形態の燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。
【0044】
図5に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0045】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
【0046】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、下端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の下部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと下端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の下端面90cと直接接触することで内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。内側電極端子86及び導電性のシール材96により、燃料電池セル84の端部を覆う導電性のキャップ部36を構成する。
【0047】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
【0048】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0049】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0050】
続いて、
図6を参照しながら、燃料電池セルスタック14について説明する。
図6は、本発実施形態の燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。
【0051】
図6に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、金属製の燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100により支持されている。これらの燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴(開口)がそれぞれ形成されている。
【0052】
さらに、燃料電池セルユニット16のうち上方側の部分には、集電体102が取り付けられている。この集電体102は、隣り合う燃料電池セルユニット16同士を電気的且つ機械的に接続するものである。集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面と、を電気的且つ機械的に接続している。
【0053】
さらに、燃料電池セルスタック14の端に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外側電極層92に接続されている。その結果、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0054】
このように、燃料電池セルユニット16の下端(燃料ガスタンク68との接続部)よりも上方側には、集電体102及び外部端子104が配置されており、これらによって、隣り合う燃料電池セルユニット16同士が電気的且つ機械的に接続されている。すなわち、集電体102及び外部端子104は、本発明の導電部材に該当する。
【0055】
燃料電池セルユニット16は、燃料ガスタンク上板68a上に配置された保持部30に対して、その下端が固定されている。保持部30には、上下方向に貫く貫通孔が形成されており、当該貫通孔を介して、燃料ガスタンク68の内部空間と燃料ガス流路98とが連通している。
【0056】
保持部30は、燃料電池セルユニット16の内側電極端子86を燃料ガスタンク上板68aの貫通穴に挿入して固定する際に用いる部材である。つまり、保持部30は、燃料電池セルユニット16を燃料ガスタンク68に保持する部材として用いられる。
【0057】
図7を参照しながらキャップ部36及び保持部30について説明する。
図7は、本発実施形態のキャップ部36及び保持部30を示す部分断面図である。キャップ部36を含む燃料電池セルユニット16と保持部30とにより、燃料電池セルモジュール17を構成する。
【0058】
図7に示すように、キャップ部36と保持部30との間には、シール部32が配置される。シール部32は、燃料ガスの漏洩を防止するために、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との間をシールする(気密にする)ものである。シール部32の材料としては、ガラスやセラミックス等の脆性材料を用いることができる。ここで、「ガラス」とは、非晶質ガラス、結晶化ガラス、及び非晶質と結晶質が混在したガラスを含む概念である。また、「非晶質ガラス」とは、ガラス転移を示す(ガラス転移Tgを有する)非晶質(狭義のガラス)のみならず、ガラス転移を示さない非晶質のものも含む概念である。
【0059】
ところで、以上のような構成の燃料電池装置2においては、作動中、燃料電池セルユニット16毎の温度がばらつく結果、各燃料電池セルユニット16の熱膨張量に差が生じる。しかし、隣り合う燃料電池セルユニット16同士は導電部材(集電体102、外部端子104)によって互いに接続(拘束)された状態となっているため、熱膨張に伴って燃料電池セルユニット16が揺動し、燃料ガスタンク68との接続部分(燃料電池セルユニット16の下端)を中心に燃料電池セルユニット16が揺動してしまう場合がある。その結果、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との接続部分に応力が集中して、当該接続部分(特にシール部32)が破損してしまい、内部から燃料ガスが漏洩してしまうことが考えられる。
【0060】
また、シール部32の材料となるガラスやセラミックスは、キャップ部36の材料となる金属に比べて熱膨張係数が小さく、ヤング率も小さいという特性がある。そのため、キャップ部36と保持部30との間をシール部32のみでシールした場合には、燃料電池の運転時等における高温下でシール部32とキャップ部36との熱膨張差が大きくなり、シール部32とキャップ部36との間に発生する応力が更に大きくなってしまう。
【0061】
そこで、燃料電池装置2では、シール部32とキャップ部36との間に緩衝部34を配置することにより、上記のような応力の発生を抑制している。
図7に示したように、シール部32と緩衝部34とは上下方向に積層されており、その積層面は水平となっている。
【0062】
緩衝部34は、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との接続部分に生じる応力を吸収するために、シール部32とキャップ部36との間に配置された金属部材である。緩衝部34の材料としては、銀、銀を主成分とする合金、銀や銀を主成分とする合金に金属酸化物を少量(数質量%)添加した材料、金、白金のように延性の高い金属を適用することができる。このような材料を用いることで、運転温度の高い固体酸化物型燃料電池装置2の運転時の温度分布においても、安定して、シール部32に発生した応力を吸収することができる。
【0063】
高温時(燃料電池装置2の作動中)において、緩衝部34は、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との間における気密性を保ちながら、燃料電池セルユニット16が燃料ガスタンク68に対して揺動することを許容するように変形する。
【0064】
上記のように、熱膨張量の差に起因して燃料電池セルユニット16が揺動した場合には、当該揺動を許容するように緩衝部34が変形するため、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との接続部分における応力が確実に緩和される。その結果、シール部32が破損して燃料ガスが漏洩してしまうようなことが防止される。
【0065】
また、導電部材(集電体102、外部端子104)の形状を、容易に弾性変形し得るような形状とする必要はなく、
図6に示したような単純な平板状とすることができる。このため、導電部材(集電体102、外部端子104)の電気抵抗が大きくなってしまうことはなく、燃料電池装置2の発電効率が低下してしまうという問題が生じることはない。
【0066】
緩衝部34の材料としては、キャップ部36の材料となる金属やシール部32の材料となるガラスよりも柔らかい材料であって、高温時にキャップ部36とシール部32とが熱膨張しても、双方の熱膨張に追従しながら変形可能な材料(緩衝材)から選定されるのが望ましい。
【0067】
キャップ部36の下面のうち、緩衝部34と接合される部分である被接合部37の面積は、燃料電池セル84の下端面90cの面積よりも大きくなっている。このため、燃料電池セル84の下端面90cからシール部32へと伝わる力が分散される。また、燃料電池セル84の下端がより広い面積で支えられるため、燃料電池セル84を安定させることができ、燃料電池セル84の揺動に伴うシール不良(シール部32の破損等)が更に抑制されている。
【0068】
キャップ部36は、下方に向かって延びるように形成された延長部38を有している。延長部38は円筒形状であって、その中心軸が燃料電池セル84の中心軸と一致している。また、延長部38の直径(外径)は、保持部30に形成された開口の直径(内径)よりも僅かに小さい。燃料電池セルユニット16は、延長部38が保持部30の開口内に挿入された状態で、燃料ガスタンク68の上面に固定されている。
【0069】
このような構成により、燃料電池装置2の内部が高温になり、燃料電池セルユニット16や導電部材(集電体102、外部端子104)等が熱膨張した場合であっても、燃料電池セルユニット16の下端位置が水平方向に大きく変位してしまうこと(位置ずれ)がない。
【0070】
また、延長部38の側面と保持部30の開口の縁(内側面)との間には不図示の隙間が形成されている。このような構成により、燃料電池セルユニット16がある程度揺動するための自由度が確保されるため、高温時におけるキャップ部36や燃料ガスタンク68(保持部30)の破損が防止される。
【0071】
また、例えば、運転中にセルスタック内に温度分布が発生して燃料電池セル84が応力を受け、燃料電池セル84が傾いたり、動いたりした際に、キャップ部36は燃料電池セル84に固定されているため、燃料電池セル84の姿勢の変化とともにキャップ部36の延長部38も傾こうとするが、延長部38は保持部30の開口に嵌合されているため、保持部30によって延長部38の姿勢の変化が妨げられる。さらに、延長部38の根元側(燃料電池セル84側)よりも先端側(保持部30側)の方が燃料電池セル84の姿勢の変化に伴う変化が大きく影響するが、姿勢の変化が大きい先端側は保持部30で保持されており、姿勢の変化が小さい根元側にシール部32が配置されているため、シール部32には応力がかからず、燃料電池セル84の姿勢の変化は、保持部30で抑えることができる。このようにして、燃料電池セル84の姿勢の変化を抑制することができるため、シール部32に発生する応力を抑制し、シール部32の破損を防ぐことができる。
【0072】
燃料電池セルモジュール17を製造する際に、緩衝部34を形成する方法について、以下に説明する。
【0073】
最初に、キャップ部36に銀ペーストを塗布する等して緩衝部34としての層を形成する。続いて、緩衝部34としての層を挟むようにキャップ部36とシール部32とを配置して接合する。これにより、
図7で示す本実施形態のように、キャップ部36とシール部32との間に緩衝部34を形成することができる。
【0074】
ところで、緩衝部34を形成する際に、シール部32側ではなく、キャップ部36側に銀ペーストを塗布することで、キャップ部36とシール部32との間の接着強度を高めることができる。これは、金属製のキャップ部36の表面粗さが、ガラス製のシール部32の表面粗さよりも大きいことによる。
【0075】
より詳細に説明すると、シール部32側に銀ペーストを塗布してからキャップ部36を接合した場合には、
図8に示すように、キャップ部36と緩衝部34とが対向する領域に、キャップ部36と緩衝部34とがキャップ部36表面上の凸凹の頂点で接触する点接触領域が形成される。
【0076】
これに対して、キャップ部36側に銀ペーストを塗布してからシール部32を接合した場合には、キャップ部36表面上の凸凹を、柔らかい銀ペーストで埋めながら緩衝部34を形成することができる。したがって、この場合には、
図9に示すように、キャップ部36と緩衝部34とが対向する領域に、キャップ部36と緩衝部34とがしっかりとくっつく密着領域を形成することができる。
【0077】
また、キャップ部36側に銀ペーストを塗布してからシール部32を接合することで、シール部32と緩衝部34との間に点接触領域が形成されたとしても、燃料電池運転時における高温により、シール部32が軟化するため、シール部32と緩衝部34との間に、シール部32と緩衝部34とがしっかりとくっつく密着領域を形成することができる。
【0078】
このようにキャップ部36と緩衝部34とがしっかりとくっつく密着領域を形成することにより、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との間の気密性をしっかりと保持することができる。
【0079】
また、
図12(A)のように、保持部30の上面に銀ペーストを塗布する等して緩衝部34としての層を形成し、続いて、緩衝部34としての層を挟むように保持部30とシール部32とを配置して接合するようにしてもよい。これにより、保持部30とシール部32との間に緩衝部34を形成することができる。この場合にも上述した実施形態において説明したのと同様、保持部30の表面粗さが、ガラス製のシール部32の表面粗さよりも大きいため、保持部30と緩衝部34との間に密着領域を形成することができる。密着領域を形成することにより、燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との間の気密性をしっかりと保持することができる。
【0080】
さらに、
図12(B)で示すように、キャップ部36の下面と保持部30の上面の両方に銀ペーストを塗布する等して、それぞれ緩衝部34としての層を形成し、続いて緩衝部34としての層を挟むようにキャップ部36とシール部32と保持部30との間に緩衝部34を形成することもできる。この場合には、キャップ部36と緩衝部34との間と、保持部30と緩衝部34との間と、の両側にそれぞれ密着領域を形成することができるため、より一層燃料電池セルユニット16と燃料ガスタンク68との間の気密性をしっかりと保持することができる。
【0081】
続いて、
図2〜
図4及び
図10、
図11を参照しながら、発電用空気を燃料電池装置2の内部へ供給するための構造を説明する。
図10は、
図2に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。
図11は、
図3に対応する模式図であって、同様に発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。これらの図に示すように、改質器20の上方に、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、この燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72とが設けられている。
【0082】
熱交換器22の上面における一端側(
図3及び
図11における右端)には、発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット(図示しない)から、発電用空気が、熱交換器22内に導入されるようになっている。
【0083】
熱交換器22の上側の他端側(
図3及び
図11における左端)には、
図2に示すように、発電用空気流路72の出口ポート76aが一対形成されている。この出口ポート76aは、一対の連絡流路76につながっている。さらに、燃料電池装置2のケーシング56の幅方向(B方向:短辺側面方向)の両側の外側には、発電用空気供給路77が形成されている。
【0084】
したがって、発電用空気供給路77には、発電用空気流路72の出口ポート76a及び連絡流路76から、発電用空気が供給されるようになっている。この発電用空気供給路77は、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って形成されている。さらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置に、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78a,78bが形成されている。これらの吹出口78a,78bから吹き出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、上方側に流れる。
【0085】
続いて、燃料ガスと発電用空気とが燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造を説明する。燃料電池セルユニット16の上方で発生した燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、整流板21に至る。整流板21には、開口21aが設けられており、開口21a内に燃焼ガスが導かれる。この開口21aを通った燃焼ガスは、熱交換器22の他端側に至る。熱交換器22内には、燃焼室18で燃料ガスと発電用空気が燃焼して生成された燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられている。これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0086】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。