【実施例1】
【0034】
図2から
図5において、凝集沈殿槽103cに設置される油分除去装置1の実施例1が示されている。この実施例1に示される油分除去装置1は、軸棒2と、アーム部3と、軸棒2を回転させる回転機構4と、軸棒2を凝集沈殿槽103cに設置するための台部5とで基本的に構成されている。凝集沈殿槽103cは、この実施例では四角形状で上方に開口し、凝集沈殿槽103cの側壁の内側面は、垂直に立設したものとなっている。
【0035】
軸棒2は、
図2(c)に示されるように、真円の円柱状のもので、凝集沈殿槽103cに貯められた排水の水面からその一部又は全部が立設するように、凝集沈殿槽103cの側壁の内側面に沿って上下方向(鉛直方向)に延出するかたちで下記する台部5を介して凝集沈殿槽103cに対し回転自在に取り付けられる。
【0036】
アーム部3は、
図2(a)、
図2(c)及び
図4に示されるように、油分回収部31と、連結部32とで基本的に構成されている。連結部32は、
図2(c)に示されるように、筒状のもので、軸棒2の外径寸法よりわずかに大きな内径寸法の通孔32aを有しており、軸棒2に外装することが可能となっている。そして、連結部32は、軸棒2の長手方向(軸棒2の上下方向乃至鉛直方向)に沿って変位し、且つ任意の箇所で止まることができるようになっている。これにより、アーム部3は、
図2(a)の白抜き矢印に示されるように、上下動することができ、凝集沈殿槽103cに貯められた排水の水位の上下方向の変化に対応することが可能である。
【0037】
油分回収部31は、
図2(a)、
図2(b)及び
図4に示されるように、基本的には上方に開口し内部に空間31aを有する長尺の直方体の箱状のもので、連結部32とは長手方向の一方端にて一体的に連接されている。油分回収部31の上部の開口は、図示しない蓋体を着脱自在に装着可能として、この蓋体の装着により閉塞されるようにしても良い。
【0038】
油分回収部31の凝集沈殿槽103cの排水の水面から立設した側部には、特に
図2(c)、
図4に示されるように、空間31aと連通する開口部31bが設けられている。開口部31bの数は、1つでも複数でも良く、この実施例では3つの開口部31bを有している。そして、連結部32の軸棒2に対する位置を調整することで、開口部31bは、下端が凝集沈殿槽103cの排水の水面より僅かに低くなるように設定される。これにより、凝集沈殿槽103cの排水の水面に浮く油分、特に油膜を開口部31bから油分回収部31の空間31a内に取り込むことができる。
【0039】
そして、この実施例1では、
図2及び
図4に示されるように、各開口部31bの軸棒2側の開口縁にガイド部33が設けられている。ガイド部33は、肉厚の薄い板状のもので、連結部32側から連結部32とは反対側に進むに従い油分回収部31の側部外面から暫時離れるように斜めに延出している。ガイド部33は、この実施例1では、平板形状をなしている。
【0040】
このように、ガイド部33を有することで、凝集沈殿槽103cの排水の水面に浮く油分を、開口部31bから油分回収部31の空間31aに回収しやすくすることが可能となると共に、油分回収部31の空間31a内に流入した油分を含む排水が空間31aの軸棒2側に向けて流れる水流が形成されるので、油分は空間31aの軸棒2側に集められ、作業員が桶や杓子等の汲み上げ具でこの集められた油分を汲み取って、外部に排出することが可能となる。
【0041】
尚、開口部31bは、凝集沈殿槽103cの排水の水面から立設した側部のうち、例えば
図5の矢印に示されるように、水流発生装置123が時計回りに回転し、これに伴い、凝集沈殿槽103cの排水も時計回りに回転する場合には、この水流が当たる側部側に設けられる。これにより、開口部31bから排水の水面に浮く油分が油分回収部31の空間31aに入りやすくなる。
【0042】
また、この実施例1では、
図2(b)及び
図2(c)に示されるように、油分回収部31の空間31aに入った油分を捕獲する油捕獲機器34が空間31a内に配置されている。油捕獲機器34は、この実施例1では、肉厚の薄い板状の油吸着シートが用いられており、この油吸着シートは油分回収部31の開口部31bを有する側部とは反対側の側部の内側面に設けられた鉤爪状の係止部35a、35bに係止されている。もっとも、図示しないが、油吸着シートをビス等の固定具により油分回収部31の側部の内側面に固定するようにしても良い。油吸着シートとしては、オイルシートやオイルキャッチャー等とも呼ばれる市販されている公知の油吸着部材を用いることができる。
【0043】
このように、油捕獲機器34を油分回収部31の空間31a内に配置することで、作業員が汲み取り作業をしなくても、油分を油捕獲機器34で捕獲することができ、油捕獲機器34を取り出して廃棄することで、油分の除去も行うことができる。そして、油捕獲機器34たる油吸着シートを係止部35a、35bに係止させることで、油吸着シートの取り外しや新規な油吸着シートの取り付けが容易で、油吸着シートの交換作業を円滑に行うことが可能となる。
【0044】
台部5は、この実施例1では、
図2(a)及び
図4に示されるように、軸棒2が回転自在に挿入される内径寸法を有し、例えば有底である挿入孔51aを備えた筒部51と、凝集沈殿槽103cの側壁の内側面が直交する角部に対し、その直交する両内側面に当接することが可能な2つの外側面を有する略L字形状の当接部52と、筒部51と当接部52とを連接する連接部53とで構成されている。当接部52には、特に
図4に示されるように、当接部52を構成する2つの板状部のそれぞれについて内側面から外側面にかけて貫通した通孔54が形成されている。これにより、当接部52を構成する2つの板状部の通孔54に対し、内側面から外側面に向けて螺子55を挿入し、凝集沈殿槽103cの側壁に螺止めさせることにより、台部5は凝集沈殿槽103cの側壁の角部に固定される。そして、台部5の筒部51の挿入孔51aに軸棒2の長手方向の一方端側部位を挿入することにより、軸棒2は、凝集沈殿槽103cに対し回転自在に立設した状態となる。
【0045】
回転機構4は、
図2(a),(b)及び
図4に示されるように、台部5の筒部51に挿入された軸棒2に対しその上端側に配置されるもので、この実施例1では、
図3に示されるように、2つの歯車41、42と、ハンドル43と、少なくとも歯車41、42を収納する箱体44とで基本的に構成されている。
【0046】
歯車41、42は、それぞれ相互に歯同士が噛み合う傘歯車であり、歯車41は軸棒2の長手方向のうち台部5とは反対側の端と箱体44内で連結され、歯車42はハンドル43の基部43a側の端と箱体44内で連結されている。そして、軸棒2と箱体44との間、及び、ハンドル43の基部43aと箱体44との間には、それぞれ軸受45、46が介在して、歯車41と歯車42とがずれないように軸棒2、ハンドル43の基部43aとが保持されている。
【0047】
このような油分除去装置1とすることにより、油分除去装置1は簡易な構成となり、その製造コストが高くなることが防止される。そして、台部5を凝集沈殿槽103cの側壁の角部に螺子55で固定し、台部5の筒部51の挿入孔51aにアーム部3や回転機構4を備えた軸棒2を装着すれば、油分除去装置1を凝集沈殿槽103cに設置することができるので、既存の凝集沈殿槽103cを改変せずとも、凝集沈殿槽103cに油分除去装置1を設置することが可能である。
【0048】
そして、油分除去装置1による油分の回収操作も、ハンドル43の持ち手43bを持って、
図3(a)の実線から想像線に示されるように時計回りに回転させたり、
図3(a)とは逆に反時計回りに回転させたりすることで、アーム部3を、
図5に示されるように略90度の範囲内で上方から見て時計回り又は反時計回りに回転させることができる。
【0049】
よって、
図5に示されるように、凝集沈殿槽103cの水面を時計回りに回転している油膜等の油分に対し、例えば開口部31bとは反対側の側部が凝集沈殿槽103cの側壁に隣接した状態のアーム部3を時計回りに、凝集沈殿槽103cの側壁の他方側まで回転させることで、油分をガイド部33で開口部31b側に導き、開口部31bから空間31a内に回収していった後、アーム部3を反時計回りに回転させて元の位置まで戻す作業を行うことで、排水からの油分の回収・除去作業を行うことが可能であり、その作業も高度な技術を不要とすることができる。
【実施例2】
【0050】
図6から
図8において、この発明に係る油分除去装置1の実施例2が示されている。以下、この油分除去装置1に基づいて説明する。但し、実施例1と同様の構成は、基本的には実施例1と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
油分除去装置1は、回転機構4を有さずともアーム部3を変位させるためのもので、その一例が
図6及び
図7に示されており、このうち、軸棒2は、この実施例2では、アーム部3の油分回収部31の長手方向の一方端が一体的に連結されたものとなっている。
【0052】
また、油分回収部31は、この実施例2では、軸棒2側の基端側部分36と、軸棒2とは反対側の先端側部分37とを備え、基端側部分36と先端側部分37とは自在に伸縮し且つ左右方向に曲がることが可能なフレキシブル部38を介して連結されたものとなっている。そして、基端側部分36、先端側部分37は、実施例1と同様に上方に開口し開口部31bと連通した空間(図示せず。)を有し、この空間の上方の開口は着脱自在な蓋体36a、37aにより閉塞されている。更に、先端側部分37は、長手方向の端部に円弧状の窪み39を有し、この窪み39の内面は螺子溝が切られている。
【0053】
台部5は、凝集沈殿槽103cの側壁の内側面が直交する角部に対し、その直交する両内側面のいずれか一方に当接することが可能な外側面を有する略平板状の2つの当接部52a、52bを備え、これらの当接部52a、52bは筒部51の外面に連接されている。
【0054】
そして、この実施例2では、凝集沈殿槽103cに対し
図8に示されるように斜めに回転棒6が架設されている。この回転棒6は、アーム部3の先端側部分37の窪み39の螺子溝と噛み合うことができる螺子山が形成されたもので、長手方向の一方端近傍部位が凝集沈殿槽103cの開口縁に固定された台座7aに回転自在に装着され、長手方向の他方端近傍部位が凝集沈殿槽103cの開口縁に固定された台座7bに回転自在に装着されて、回転棒6がずれたりしないようになっている。更に、回転棒6の一方端側(この実施例2では台座7b側)にはハンドル6aが設けられており、このハンドル6aを時計回り又は反時計回りに回転させることで回転棒6も同方向に回転するようになっている。
【0055】
このような油分除去装置1とすることによっても、油分除去装置1は簡易な構成となり、その製造コストが高くなることが防止される。そして、台部5を凝集沈殿槽103cの側壁の角部に螺子55で固定し、台部5の筒部51の挿入孔51aにアーム部3や回転機構4を備えた軸棒2を装着し、台座7a、7bを凝集沈殿槽103cの開口の周縁に固定し、これに回転棒6を装着すれば、油分除去装置1を凝集沈殿槽103cに設置することができるので、既存の凝集沈殿槽103cをさほど改変せずとも、凝集沈殿槽103cに油分除去装置1を設置することが可能である。
【0056】
そして、油分除去装置1による油分の回収操作も、アーム部3の先端側部分37の窪み39を回転棒6に窪み39の螺子溝と回転棒6の螺子山とが噛み合うように装着した後、ハンドル6aを持って、時計回りに回転させたり、反時計回りに回転させたりすることで、回転棒6も同じ方向に回転し、これにより、
図8に示されるように、油分回収部31の先端側部分37が回転棒6の軸方向に沿って台座7a側又は台座7b側に変位し、油分回収部31の基端側部分36が先端側部分37に引っ張られ、このときフレキシブル部38が適宜伸縮し、所定の方向に曲がるので、軸棒2を中心として、
図8に示されるように略90度の範囲内で上方から見て時計回り又は反時計回りに回転させることができる。
【0057】
よって、
図8に示されるように、実施例2でも、凝集沈殿槽103cの水面を時計回りに回転している油膜等の油分に対し、例えば開口部31bとは反対側の側部が凝集沈殿槽103cの側壁に隣接した状態のアーム部3を時計回りに、凝集沈殿槽103cの側壁の他方側まで回転させることで、油分をガイド部33で開口部31b側に導き、開口部31bから空間31a内に回収していった後、アーム部3を反時計回りに回転させて元の位置まで戻す作業を行うことで、排水からの油分の回収・除去作業を行うことが可能であり、その作業も高度な技術を不要とすることができる。