(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプロペラシャフトでは、薄肉リングと継手との圧入によって、薄肉リングの外周面が繊維強化プラスチック製本体筒の内面に食い込むため、本体筒における繊維強化プラスチック内の繊維が切断される虞がある。繊維が切断されると、本体筒と継手との連結部の強度が低下する虞がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、炭素繊維強化樹脂製のパイプと金属部品とを締結することでバー状部品を構成する場合において、炭素繊維の切断を防止して、パイプと金属部品との連結部における強度の向上を図ることができるバー状部品の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、炭素繊維強化樹脂製のパイプ(10)と、前記パイプの軸方向(X)における端部(10A,10B)に締結される金属部品(17,18)とを含むバー状部品(22)の製造方法であって、前記軸方向に延びる金属製のマンドレル(24)に対して、粗面加工が施された外周面(16A)を有する金属円環(16)を外嵌することによって、前記マンドレルと前記金属円環とを含む芯材(23)を準備する工程と、炭素繊維に樹脂(28)を含浸させたプリプレグシート(26)を、前記芯材の外周面(23A)に巻き付ける工程と、前記芯材の外周面に巻き付けられたプリプレグシートを焼成硬化させることによって、前記金属円環の外周面に対して前記端部が外嵌固定された前記パイプを形成する工程と、前記芯材のうち前記マンドレルだけを前記パイプから引き抜く工程と、前記金属部品と前記金属円環の内周面(16B)とをねじ締結させる工程と、を含
み、前記プリプレグシートを前記芯材の外周面に巻き付ける工程は、前記プリプレグシートと前記金属円環の外周面との間に、熱接着フィルム(30)を、前記金属円環の外周面に設けられた粗面部に沿うように介在させる工程を含むことを特徴とする、バー状部品の製造方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記金属部品に設けられた雄ねじ部(20)にねじ締結される雌ねじ部(19)を、前記金属円環の内周面に形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1記載のバー状部品の製造方法である
。
【0009】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、バー状部品は、炭素繊維強化樹脂製のパイプと、パイプの軸方向における端部に締結される金属部品とを含んでいる。また、バー状部品の製造の際に準備される芯材は、軸方向に延びる金属製のマンドレルと、外周面に粗面加工が施され、マンドレルに外嵌される金属円環とを含んでいる。バー状部品の製造方法において、パイプは、炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグシートが芯材の外周面に巻き付けられた後に焼成硬化されることで形成される。
【0011】
焼成硬化後には、芯材のうちマンドレルだけがパイプから引き抜かれ、パイプの端部には、金属円環が内嵌された状態になっている。この状態では、金属円環において粗面加工(凹凸加工)が施された外周面の凹部に、プリプレグシートから染み出した樹脂が進入している。これにより、パイプの端部は、炭素繊維が切断されていない状態で、金属円環の外周面に対して密着し、強固に固定されている。
【0012】
そして、金属部品と金属円環とは、ねじ締結されているため、金属部品が金属円環に圧入される場合とは異なり、金属円環に余計な力を加えることなく、パイプの端部と金属部品とを確実かつ強固に締結させることができる。そのため、圧入の場合とは異なり、金属円環の外周面がパイプに食い込むことがなく、パイプにおける炭素繊維は切断されることはない。
【0013】
以上の結果、パイプにおける炭素繊維の切断を防止して、パイプと金属部品との連結部における強度の向上を図ることができる。
また、プリプレグシートと金属円環の外周面との間に熱接着フィルムを介在させることによって、金属円環の外周面とパイプとが、プリプレグシートの樹脂だけでなく熱接着フィルムによっても接着される。そのため、金属円環とパイプとをより強固に固定することができる。
請求項2記載の発明のように、金属部品と金属円環の内周面とのねじ締結に関し、金属部品に設けられた雄ねじ部が、金属円環の内周面に形成された雌ねじ部にねじ締結される。雌ねじ部を金属円環の内周面に形成する工程は、金属円環がマンドレルに外嵌される前に行われてもよいし、マンドレルがパイプから引き抜かれた後に行われてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるバー状部品22を備えるステアリング装置1の概略正面図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、操舵部材2と、ステアリングシャフト3と、自在継手4と、中間軸5と、自在継手6と、ピニオンバー7と、ラックバー8と、ハウジング9とを主に含んでいる。
【0019】
操舵部材2として、たとえば、ステアリングホイールを用いることができる。操舵部材2には、ステアリングシャフト3の一端が連結されている。ステアリングシャフト3の他端と中間軸5の一端とが自在継手4によって連結されている。また、中間軸5の他端とピニオンバー7の一端とが自在継手6によって連結されている。ステアリングシャフト3と、中間軸5と、ピニオンバー7とは、同一直線上に存在しなくてもよい。
【0020】
ピニオンバー7の他端の外周面にはピニオン歯14が一体的に設けられている。ラックバー8は、車両の幅方向(
図1の左右方向)に延びる略円柱状である。ここで、ラックバー8が延びる方向を軸方向Xとする。軸方向Xは、車両の幅方向(
図1の左右方向)と同じである。また、紙面手前側は、車両の前側であり、紙面奥側は、車両の後側である。
ラックバー8の外周面の周上1箇所には、ピニオン歯14と噛み合うラック歯15が形成されている。ピニオンバー7のピニオン歯14およびラックバー8のラック歯15は、互いに噛み合うことでラックアンドピニオン式の転舵機構Aを構成している。
【0021】
ラックバー8は、ハウジング9に収容されている。ハウジング9は、車体に固定される略円筒体である。ラックバー8は、ハウジング9と同軸状に配置されている。ラックバー8の両端部は、ハウジング9の両側へ突出し、各端部にはそれぞれ継手11を介してタイロッド12が結合されている。各タイロッド12は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪13に連結されている。
【0022】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン歯14およびラック歯15によって、軸方向Xに沿ったラックバー8の直線運動に変換される。これにより、転舵輪13の転舵が達成される。このように、ラックバー8は、操舵部材2の操舵に応じて軸方向Xに移動することによって転舵輪13を転舵させることができる。
【0023】
ラックバー8は、一端部(
図1における軸方向Xの左側の端部)8Aと他端部(
図1における軸方向Xの右側の端部)8Bとを含んでいる。ラックバー8は、パイプ10と、金属円環16と、2つの金属部品である第1金属部品17および第2金属部品18とを主に含んでいる。第2金属部品18にラック歯15が設けられている。
パイプ10は、炭素繊維強化樹脂製であり、軸方向Xに延びる略円筒状である。パイプ10は、たとえばラックバー8においてラック歯15よりも一端部8A側に設けられており、軸方向Xにおいて第1金属部品17と第2金属部品18との間に配置されている。パイプ10の一端部(
図1における軸方向Xの左側の端部)に、符号「10A」を付し、他端部(
図1における軸方向Xの右側の端部)に符号「10B」を付し、パイプ10の内周面に、符号「10C」を付すことにする。
【0024】
金属円環16は、軸方向Xに延びる円環状である。金属円環16は、パイプ10の一端部10Aおよび他端部10Bに応じて1つずつ(合計2つ)存在する。以下では、各金属円環16について、金属円環16の外周面に、符号「16A」を付し、金属円環16の内周面に、符号「16B」を付すことにする。金属円環16は、パイプ10の一端部10Aおよび他端部10Bのそれぞれに対して1つずつ挿通(内嵌)されている。言い換えると、パイプ10の一端部10Aおよび他端部10Bは、金属円環16の外周面16Aに対して外嵌されている。そのため、一端部10Aおよび他端部10Bにおいて、内周面10Cは、金属円環16の外周面16Aとほぼ同じ大きさまで拡径されている。金属円環16の内周面16Bの直径は、一端部10Aと他端部10Bとの間の領域におけるパイプ10の内周面10Cの径とほぼ等しい。
【0025】
第1金属部品17は、ラックバー8の一端部8Aとして、一端部8A側の継手11に隣接している。第1金属部品17は、パイプ10の一端部10Aに対してラックバー8の一端部8A側から隣接している。第1金属部品17においてパイプ10の一端部10A側の端部には、小径部21が一体的に設けられている。小径部21は、ラックバー8の他端部8B側へ向けて軸方向Xに延びる円柱状である。小径部21は、第1金属部品17よりも小径である。
【0026】
第2金属部品18は、ラックバー8の他端部8Bとして、他端部8B側の継手に隣接している。第2金属部品18は、たとえば、焼き入れ処理した炭素鋼で形成されている。第2金属部品18は、パイプ10の他端部10Bに対してラックバー8の他端部8B側から隣接している。前述した小径部21は、第2金属部品18においてパイプ10の他端部10B側の端部にも一体的に設けられている。第2金属部品18の小径部21は、ラックバー8の一端部8A側へ向けて軸方向Xに延びる円柱状である。ただし、第2金属部品18の小径部21と、第2金属部品18の小径部21とは、寸法(直径や軸方向Xにおける長さ)が異なっていてもよい。詳しくは後述するが、第1金属部品17および第2金属部品18は、それぞれの小径部21においてパイプ10の端部(一端部10Aまたは他端部10B)に締結されており、連結状態のパイプ10、第1金属部品17および第2金属部品18は、全体として軸方向Xに延びるバー状部品22を構成している。このバー状部品22が、ラックバー8を構成している。ラックバー8では、炭素繊維強化樹脂製のパイプ10で一部を構成しているので、ラックバー8全体を金属で構成する場合と比べて、大幅な軽量化を図ることができる。
【0027】
次に、このようなバー状部品22の製造方法について説明する。
図2は、バー状部品22の製造工程を示す模式的な断面図である。
図2における各部材の姿勢は、
図1と一致している(後述する
図3〜
図7においても同様)。
図2を参照して、バー状部品22の製造の初期段階として、芯材23が準備される。芯材23は、円筒状のパイプ10を形成するために必要な部材である。芯材23は、マンドレル24と、前述した金属円環16とを含んでいる。マンドレル24は、金属製であり、軸方向Xに延びる円柱状である。金属円環16の外周面16Aには、事前に粗面加工が施されている。そのため、外周面16Aは、多数の凹凸部27を有している。ここでの粗面加工としては、たとえば、アヤメローレット加工、キー溝加工、スプライン加工、ショットブラスト加工、酸によるエッチング、レーザーエッチング等が挙げられるが、加工コストを考慮するとアヤメローレット加工が望ましい。
【0028】
図2に示す工程では、マンドレル24の軸方向Xにおける両側の端部に対して金属円環16を外嵌することにより芯材23が準備される。芯材23の外周面23Aは、各金属円環16の外周面16Aと、マンドレル24の外周面24Aにおいて金属円環16からはみ出た部分とを含んでいる。
図3は、
図2の次の工程を示す模式的な断面図である。
【0029】
図3を参照して、前述したパイプ10の材料となるプリプレグシート26が準備される。プリプレグシート26は、たとえば一方向(Uni-Direction)に引き揃えられた多数の炭素繊維(図示せず)に樹脂28を含浸させたシート状である。プリプレグシート26には、“トレカ” (商標登録)T300や“トレカ”(商標登録)T700に代表されるあらゆる炭素繊維を用いることができる。また、樹脂28には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂および不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。ラックバー8は、車両のエンジンルーム内で使用されるため、樹脂28の硬化温度は、130℃以上であることが望ましい。
【0030】
図3に示す工程において、プリプレグシート26は、たとえばシートワインディング法によって芯材23の外周面23Aに対して1重または2重以上に巻き付けられる。巻き付け後の状態では、
図3に示すように、プリプレグシート26がマンドレル24と各金属円環16とに跨っている。また、プリプレグシート26は、マンドレル24の外周面24Aおよび金属円環16の外周面16Aに対して密着して、芯材23を取り囲んでいることから、全体として略円筒状になっている。巻き付け後の状態におけるプリプレグシート26の軸方向Xにおける両端部は、金属円環16の厚さ分だけ、プリプレグシート26の軸方向Xにおける両端部以外の部分よりも大径である。一方、当該部分におけるプリプレグシート26の内径は、各金属円環16の内径とほぼ等しい。
【0031】
次に、芯材23の外周面23Aに巻き付けられた状態のプリプレグシート26を焼成硬化させる。ここでの焼成硬化により、プリプレグシート26の形状は、芯材23の外周面23Aに巻き付けられたときの略円筒状のままで固定される。その後、プリプレグシート26は、常温での冷却を経てパイプ10となる。つまり、パイプ10は、外周面23Aに巻き付けられたプリプレグシート26を焼成硬化させることによって形成される。この状態で、パイプ10は、端部10Aおよび10Bにおいて金属円環16の外周面16Aに対して外嵌(詳しくは、後述するように外嵌固定)されている。
【0032】
なお、プリプレグシート26は、炭素繊維の延びる方向を軸方向Xに向ける巻き方(いわゆるヘリカル巻き)を主な巻き方として、芯材23の外周面23Aに巻き付けられる。そのため、パイプ10では、内部の炭素繊維が軸方向Xに引き揃えられているので、軸方向Xに対する強度が高い。
次に、芯材23のうちマンドレル24だけをパイプ10から引き抜く。このとき、マンドレル24を、円滑に引き抜くために、冷却によって収縮させてもよい。その場合、マンドレル24をパイプ10から引き抜く際に必要な力が低減される。
【0033】
マンドレル24がパイプ10から引き抜かれた状態では、各金属円環16が、パイプ10の一端部10Aおよび他端部10Bにおいて対応する方に対して内嵌された状態になっている。また、各金属円環16は、その一部(たとえば、軸方向Xにおける端部の2mm程度)がパイプ10の一端部10Aおよび他端部10Bから軸方向Xにおける外側へはみ出すようにしておくと好ましい。そのためには、プリプレグシート26を芯材23の外周面23Aに巻き付ける工程において、各金属円環16の当該一部には、プリプレグシート26を巻き付けないようにすればよい。
【0034】
図4は、
図3の次の工程を示す模式的な断面図である。
図4を参照して、次に、金属円環16の内周面16Bに雌ねじ部19を形成する。雌ねじ部19は、内周面16Bの全域に亘って形成されている。
本実施形態とは異なり、金属円環16を用いない比較例の場合、雌ねじ部19は、パイプ10の内周面10Cに形成される。比較例の場合においてプリプレグシート26をヘリカル巻きによって芯材23に巻き付けると、ねじ形成の際にプリプレグシート26内の炭素繊維が切断される虞がある。炭素繊維が切断されると、パイプ10の強度が著しく低下する。比較例において炭素繊維の切断を防止するためには、少なくとも最内層(最も芯材23側)のプリプレグシート26は、芯材23の周方向に炭素繊維が延びるような巻き方(いわゆるフープ巻)で芯材23に巻き付けられる必要がある。
【0035】
一方、本実施形態であれば、雌ねじ部19が形成される金属円環16を用いていることにより、パイプ10がヘリカル巻きのみ(またはヘリカル巻きの割合を高めて)で作成できる。つまり、本実施形態では、比較例と比べて、一種類の巻き方によって作成することができる分だけ、プリプレグシート26の(芯材23への)巻き数を減らすこともでき、軸方向Xにおける強度を高めることができる。つまり、金属円環16によって、パイプ10のコストの低減と軽量化と強度向上とを図ることができる。
【0036】
図5は、
図4の次の工程を示す模式的な断面図である。
図5を参照して、第1金属部品17の小径部21の外周面には、雄ねじ部20が設けられている。第1金属部品17の雄ねじ部20には、
図5における軸方向Xの左側(パイプ10の一端部10A側)の金属円環16の雌ねじ部19がねじ締結される。これにより、第1金属部品17は、この金属円環16の内周面16Bとねじ締結され、この金属円環16を介してパイプ10の一端部10Aに締結された状態になる。
【0037】
一方、第2金属部品18の小径部21の外周面にも、雄ねじ部20が設けられている。第2金属部品18の雄ねじ部20には、
図5における軸方向Xの右側(パイプ10の他端部10B側)の金属円環16の雌ねじ部19がねじ締結される。これにより、第2金属部品18は、この金属円環16の内周面16Bとねじ締結され、この金属円環16を介してパイプ10の他端部10Bに締結された状態になる。
【0038】
以上により、パイプ10は、軸方向Xにおける両端部10Aおよび10Bにおいて、第1金属部品17および第2金属部品18に締結された状態になり、バー状部品22の製造が完了する。
完成したバー状部品22において、金属円環16の一部は、前述したように、パイプ10から軸方向Xにおける外側へはみ出している。そのため、パイプ10が第1金属部品17および第2金属部品18に対して曲がろうとしたときに、第1金属部品17および第2金属部品18は、パイプ10ではなく金属円環16に接触することになるので、パイプ10の端部10Aおよび10Bのそれぞれが第1金属部品17および第2金属部品18において対応する方に接触することを防止できる。これにより、第1金属部品17および第2金属部品18との接触によるパイプ10の破損を防止することができる。
【0039】
図6は、
図5においてVIで示した部分を拡大した図である。
図6を参照して、完成したバー状部品22において、パイプ10の内周面10Cと金属円環16の外周面16Aとの間には、プリプレグシート26から染み出た樹脂28が介在されている。樹脂28は、前述した芯材23へのプリプレグシート26の巻き付け工程およびその後の焼成硬化の工程において(
図3参照)、外周面16Aに形成れた凹凸部27における各凹部29に進入して硬化する。樹脂28が凹部29に進入し
て硬化した状態では、凹凸部27の凸部35は、パイプ10の内周面10Cに対して噛み合うように密着しているものの、プリプレグシート26内の炭素繊維には接触していない。よって、パイプ10の端部10Aおよび10Bは、内部の炭素繊維が切断されていない状態で、対応する金属円環16の外周面16Aに対して、外嵌固定(抜け止め)されている。なお、この状態の金属円環16は、パイプ10の端部10Aおよび10Bに対して軸方向Xにずれないし、周方向にもずれないように位置決めされている。
【0040】
また、第1金属部品17および第2金属部品18と金属円環16とは、ねじ締結されているため、第1金属部品17および第2金属部品18が金属円環16に圧入される場合とは異なり、金属円環16に余計な力を加えることなく、パイプ10(厳密には端部10Aおよび10B)と第1金属部品17および第2金属部品18のそれぞれとを確実かつ強固に締結させることができる。つまり、圧入の場合とは異なり、金属円環16の外周面16Aがパイプ10に食い込むことがなく、パイプ10における炭素繊維は切断されることはない。
【0041】
以上の結果、パイプ10における炭素繊維の切断を防止して、パイプ10と第1金属部品17および第2金属部品18との連結部における強度の向上を図ることができる。
次に、本発明の第1変形例について説明する。
図7は、
図6に第1変形例を適用した図である。また、
図7において、上記に説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図7を参照して、第1変形例における金属円環16の外周面16Aには、凹凸部27に沿うように熱接着フィルム30が設けられている。一例として、熱接着フィルム30は、粗面加工が施された外周面16Aに取り付けられた後に、金属円環16がマンドレル24に対して外嵌され、前述した芯材23が準備される(
図2参照)。または、マンドレル24に対して外嵌された状態の金属円環16の外周面16Aに熱接着フィルム30を取り付けてもよい。
【0043】
金属円環16に熱接着フィルム30が取り付けられた芯材23が準備された後に、前述したように芯材23の外周面23Aにプリプレグシート26を巻き付ける(
図3参照)。これにより、熱接着フィルム30は、プリプレグシート26と外周面16Aとの間に介在された状態になる。つまり、プリプレグシート26を芯材23の外周面23Aに巻き付ける工程は、プリプレグシート26と外周面16Aとの間に熱接着フィルム30を介在させる工程を含んでいる。プリプレグシート26を芯材23の外周面23Aに巻き付ける工程によって、熱接着フィルム30は、芯材23の径方向に沿って外周面16Aとプリプレグシート26とに挟まれ、外周面16Aとプリプレグシート26とに接着される。次に、プリプレグシート26を焼成硬化することで、熱接着フィルム30は、プリプレグシート26と外周面16Aとに一層強固に接着される。これにより、金属円環16とパイプ10とをより強固に固定することができる。なお、当該強度向上のために、熱接着フィルム30の厚みTは、凹凸部27における凸部35の高さH(凹部29の深さ)を超えない程度であることが望ましい。
【0044】
熱接着フィルム30としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂を含む熱接着フィルムが適用可能である。その中でも、エポキシ樹脂を含む熱接着フィルム30を使用することが望ましい。エポキシ樹脂を含む熱接着フィルム30を使用すれば、エポキシ樹脂を含むプリプレグシート26との接着強度がより一層高くなり、耐熱性も向上される。
【0045】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、本実施形態では、第1金属部品17および第2金属部品18に設けられた雄ねじ部20にねじ締結される雌ねじ部19を金属円環16の内周面16Bに設ける工程は、マンドレル24からパイプ10が引き抜かれた後に行われているが、当該工程は、金属円環16がマンドレル24に外嵌される前に行われてもよい。
【0046】
また、前述した実施形態のバー状部品22は、パイプ10の両端部(一端部10Aおよび他端部10Bの両方)に金属部品(第1金属部品17および第2金属部品18)を締結する構成であったが、当該両端部の一方だけに金属部品が締結される構成でも構わない。
また、前述した実施形態のバー状部品22は、ラックバー8であったが、ラックバー8以外のバー状部品(たとえば各種シャフト、ロッド、パイプ状部品)として構成してもよい。