特許第6222450号(P6222450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222450
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両のシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B60R22/46
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-251348(P2013-251348)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107724(P2015-107724A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮之
(72)【発明者】
【氏名】荻野 貴士
(72)【発明者】
【氏名】荘司 馨
(72)【発明者】
【氏名】成田 新助
(72)【発明者】
【氏名】小椋 英司
(72)【発明者】
【氏名】志村 信之
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−221733(JP,A)
【文献】 特開2003−285719(JP,A)
【文献】 実開昭60−102568(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0217882(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0029774(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0218803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された乗降口を開閉するドアと、
前記ドアに設けられたリトラクタ装置とを有し、
前記リトラクタ装置は、ドアに取着されるフレームと、同フレームに組み付けられシートベルトが引出可能に収容されたリトラクタと、所定以上の衝撃力が車体に加わると、前記リトラクタから引き出されたシートベルトを引き込むプリテンショナとを有し、
前記プリテンショナは、一端部が前記リトラクタに接続され、他端部が周囲に延び、前記シートベルトを引込む引込み力を発生可能なチューブ部材を有し、
前記フレームと前記チューブ部材との間は、前記ドアの開閉方向における前記チューブ部材の振れを抑える振れ抑制部を有し、
前記振れ抑制部は、前記フレームから前記ドアの開閉方向に沿って前記チューブ部材へ延びるアーム部と、前記アーム部の先端部と前記チューブ部材との間に介在された緩衝材とを有して構成される
ことを特徴とする車両のシートベルト装置。
【請求項2】
車体に形成された乗降口を開閉するドアと、
前記ドアに設けられたリトラクタ装置とを有し、
前記リトラクタ装置は、ドアに取着されるフレームと、同フレームに組み付けられシートベルトが引出可能に収容されたリトラクタと、所定以上の衝撃力が車体に加わると、前記リトラクタから引き出されたシートベルトを引き込むプリテンショナとを有し、
前記プリテンショナは、一端部が前記リトラクタに接続され、他端部が周囲に延び、前記シートベルトを引込む引込み力を発生可能なチューブ部材を有し、
前記フレームと前記チューブ部材との間は、前記ドアの開閉方向における前記チューブ部材の振れを抑える振れ抑制部を有し、
前記振れ抑制部は、前記フレームから前記ドアの開閉方向に沿って前記チューブ部材へ延びるアーム部と、前記アーム部の先端部に前記チューブ部材の外周面を囲むように設けられたチューブ保持部とを有して構成される
ことを特徴とする車両のシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアにリトラクタ装置を設けた車両のシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピックアップトラックには、車体に形成された乗降口に、二枚のドアで中央から開閉する横開き式のドア、いわゆる観音開き式のドアが装備されたものがある。
観音開き式ドアを有する車両は、一般に乗降口にセンタピラーが無いため、フロントシートに着座した乗員を拘束するシートベルト装置は、リヤドアに内蔵される。具体的には、特許文献1に開示されている三点式シートベルト装置のようにリトラクタ装置は、ドアに取着されるフレームに、シートベルトを引出可能に収容したリトラクタを組み付けた構造が用いられる。そして、リトラクタ装置をドアに設け、リトラクタから引き出されるシートベルトの先端部をドア下部に設けたアンカ部に固定し、ラップベルト部分とショルダベルト部分との境界にタングを設けている。つまり、シートベルトをリトラクタから引き出し、タングをフロントシート脇のバックルへ差し込んで接続すると、ラップベルト部分は乗員の腰部を跨り、ショルダベルト部分は乗員の肩部を跨り、フロントシートに乗員を拘束する。
【0003】
ところで、近時、シートベルト装置では、特許文献2のように安全性を一層高めるために、リトラクタにプリテンショナを装備することが行われている。
プリテンショナは、所定以上の衝撃力が加わると、リトラクタから引き出されたシートベルトを引き込んで、シートに着座している乗員を抑え付ける働きをもつ。具体的にはプリテンショナは、一般に火薬などのガス発生剤、点火部をもち、内部に多くのボールを移動可能に収めたチューブ部材を有している。そして、チューブ部材の一端部は、シートベルト装置のリトラクタに接続され、ガスの発生でボールを変位させることによって、シートベルトを巻回しているスプールを巻き取り方向へ回動変位させ、リトラクタから引き出されたシートベルトを引き込む構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011− 16531号公報
【特許文献2】特開2010− 69900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リトラクタに装備されるプリテンショナのチューブ部材は、ボールの移動が内部でスムーズに行われるよう、チューブ部材を変形させるような据付けは禁じられる。このため、プリテンショナのチューブ部材は、一端部だけを支持させて、他端部を周囲に延ばして配設するという片側支持の構造が用いられる。
ところで、ドアに、プリテンショナを装備したリトラクタを配置する場合、車体にプリテンショナを装備したリトラクタを配置したときとは異なり、ドアの開閉時、過大な衝撃力がプリテンショナのチューブ部材に加わりやすい。特に観音ドアの場合、プリテンショナは、リトラクタと共にドアの自由端へ寄せて配置されるので、過大な衝撃力が加わりやすい。
【0006】
ところが、リトラクタに装備されるプリテンショナのチューブ部材は、一端部だけが支持される部品のため、衝撃力が加わると、 チューブ部材の他端側がドア開閉方向に過大に振れて、チューブ部材の一端部に過大な応力させ、チューブ部材を損傷させるおそれがある。このため、リトラクタに装備されるプリテンショナのドアへの採用は難しいとされていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、リトラクタに装備されるプリテンショナのチューブ部材の過大な振れが抑えられる車両のシートベルト装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る態様は、車体に形成された乗降口を開閉するドアと、ドアに設けられたリトラクタ装置とを有し、リトラクタ装置は、ドアに取着されるフレームと、同フレームに組み付けられシートベルトが引出可能に収容されたリトラクタと、所定以上の衝撃力が車体に加わると、リトラクタから引き出されたシートベルトを引き込むプリテンショナとを有し、プリテンショナは、一端部が前記リトラクタに接続され、他端部が周囲に延びて配置され、前記シートベルトを引込む引込み力を発生可能なチューブ部材を有し、フレームとチューブ部材との間は、ドアの開閉方向における前記チューブ部材の振れを抑える振れ抑制部を有し、振れ抑制部は、フレームからドアの開閉方向に沿ってチューブ部材へ延びるアーム部と、アーム部の先端部とチューブ部材との間に介在された緩衝材とを有して構成されるものとした。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る態様は、振れ抑制部は、フレームからドアの開閉方向に沿ってチューブ部材へ延びるアーム部と、アーム部の先端部にチューブ部材の外周面を囲むように設けられたチューブ保持部とを有して構成されるものとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および請求項2の発明によれば、リトラクタに装備されるプリテンショナのチューブ部材は、振れ抑制部により、ドア開閉方向の過大な振れを抑えることができる。
それ故、ドア開閉時、過大な衝撃力が、片側支持となるチューブ部材に加わることがあっても、チューブ部材には過大な応力が発生せずにすみ、プリテンショナ付リトラクタのドアへの採用が実現できる。
【0011】
しかも、簡単な構造で、チューブ部材における、ドア開閉方向の過大な振れ抑えることができる。特に緩衝材を用いると、チューブ部材に加わる衝撃力が吸収されるので、一層、効果的にチューブ部材の過大な振れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る態様となる観音開き式ドアを有した車両を示す斜視図。
図2】同リヤドアの内面に装備されているシートベルト装置を示す正面図。
図3図2中のリトラクタ装置を拡大して示す斜視図。
図4図3中の矢視Aから見たときのリトラクタ装置の斜視図。
図5図3中のB線に沿う断面図。
図6図4中のC線に沿う振れ抑制部の断面図。
図7】本発明の第2の実施形態に係る態様の異なる振れ抑制部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図1から図6に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用した車両、例えばピックアップトラックを示している。
同トラックの概略を説明すると、図1中1は車体である。車体1は、前部にキャビン3を有し、後部に荷台5を有している。キャビン3のフロア3aには、フロントシート7、リヤシート9が据え付けられている。ちなみにフロントシート7,リヤシート9は、いずれもシートクッション8aとシートバック8bと有して構成される。
【0014】
キャビン3の車幅方向側部には、フロントシート7からリヤシート9の有る地点までを開口した乗降口11が形成されている。ちなみに乗降口11には、センタピラーは無い。乗降口11には、フロントシート7に着座する乗員用となるフロントドア13、リヤシート9に着座する乗員用となるリヤドア15が設けられている。このうちフロントドア13の前部は、ヒンジ(図示しない)を介して、乗降口11の前部に回動自在に支持される。これにより、フロントドア13は、後側から開閉される。リヤドア15の後部は、ヒンジ(図示しない)を介して、乗降口11の後部に回動自在に支持される。これにより、リヤドア15は、前側から開閉される。つまり、二枚のドア13,15は、中央から開閉する観音ドアとなる。
【0015】
フロントドア13、リヤドア15は、いずれもドアアウタパネル13a,15aとドアインナパネル13b,15bとを組み合わせて構成されるドア本体13c、15cと、ドア本体13c、15cの上部に設けたドアウインド13d、15dと、ドアインナパネル13b,15bの内面を覆い隠すように設けたドアトリム13e,15eを有している。
リヤドア15には、フロントシート7に着座される乗員用シートベルト装置、例えば三点式のシートベルト装置21が組み込まれている。図示はしないがリヤシート9に着座される乗員用のシートバルト装置は、リヤピラー1aに設けられる。
【0016】
図2には、このフロントシート用のシートベルト装置21が示されている。図2は、リヤドア15の正面、さらに述べればドアトリム15eを取り外して、ドアインナパネル15bのパネル面を露出させた状態を示している。
図2を参照して、シートベルト装置21の各部の構造を説明すると、25はドアインナパネル15bの前部下段に位置するドアインナパネル部分に据付けられたリトラクタ装置、27は同リトラクタ装置25の上段に位置するドアインナパネル部分に据付けられたインナハンドル構造部(例えばインナハンドル27a、ハンドル変位をドアロックへ伝えるレバー機構27bなどを有する)、30はドアインナパネル15bの前部上段に位置するドアインナパネル部分から、アジャスタ機構部30a(例えばガイドレールを用いたスライド構造)を介して、吊り下げられたベルトガイドを示している。
【0017】
図3には、このうちのリトラクタ装置25の外観を拡大した斜視図が示されている。また図4には、異なる方向となる図3中の矢視A方向から見たリトラクタ装置25の外観が斜視図で示されている。
リトラクタ装置25を説明すると、リトラクタ装置25は、フレーム70、リトラクタ80、プリテンショナ90などといった部品の組み合わせから構成される。
【0018】
各部品を説明すると、例えばフレーム70は、上下方向に帯形に延び、上部がL形に曲成したプレート部材で形成されるドア取着用フレーム部71(以下、単にフレーム部71という)と、同フレーム部71の一側面に組み付く枠形のメインフレーム部72とを有して構成される。フレーム部71の上部のうち、メインフレーム部72側へL形に張り出るプレート部分には、ベルトガイド口73が設けられ、フレーム部71の最上部には上部ステー74が設けられ、上部ステー74には取付孔74a(図4)が設けられている。フレーム部71の最下部には、下部ステー75が設けられ、下部ステー75には取付孔75aが設けられている。そして、上部ステー74は、メインフレーム部72をドアインナパネル15bに向けた姿勢で、図5に示されるようにドアインナパネル15bから隆起したパネル部分16に配置され、ボルト固定されている。ここでは、上部ステー74は、上部ステー74とパネル部分16との間に環状の緩衝部材77を介在させて、取付孔74aからボルト部材78を、ドアインナパネル15bの裏面に取着したナット部材79へねじ込むという締結構造で、パネル部分16に固定されている。下部ステー75も、図示はしないが、同じ構造でパネル部分16に固定される。同構造によって、リヤドア15からリトラクタ装置25へ入力される衝撃を緩衝する構造としてある。
【0019】
リトラクタ80は、図3および図4に示されるようにメインフレーム部72内に組み付けられたスプールユニット81と、メインフレーム部72の一側壁72aに組み付けられた巻戻しユニット82とを有している。スプールユニット81は、シートベルト33を巻回したスプール35を有して構成される。巻戻しユニット82は、図示はしないがシートベルト33の巻戻しを行うばね機構など各種機器を収めて構成される。この巻戻しユニット82とスプール35との相互が連結され、リトラクタ80の上部から、シートベルト33が引き出せるようにしている。
【0020】
このリトラクタ80から引き出されたシートベルト33の先端部は、図2に示されるようにベルトガイド口73、インナハンドル構造部27とドアインナパネル部分との間の間隙、ベルトガイド30を通り、例えばラッププリテンショナ39を介して、リヤドア15の下部側に設けてあるアンカ部32に連結されている。引き出されたシートベルト33のうち、ラップベルト部分33aとショルダベルト部分33bとの境界には、タング41が組み付けられている。これにより、リトラクタ80からシートベルト33を引き出しながら、タング41を、フロントシート7のシートクッション8aの側部、具体的には乗降口11と反対側となるクッション側部に配置したバックル43(図1)へ差し込み接続すると、ラップベルト部分33aが、フロントシート7に着座した乗員の腰部を跨るように配置され、ショルダベルト部分33bが、同じく乗員の肩部を跨るように配置され、フロントシート7に着座した乗員を拘束する。
【0021】
プリテンションナは、図3および図4に示されるようにリトラクタ80の上部とベルトガイド口73との間を利用して、リトラクタ80に組み付けられている。プリテンショナ90は、所定以上の衝撃力が加わると、スプール35を巻き込み方向に強制的に変位させるインフレータ式の機器が用いられている。
例えばプリテンショナ90は、図4に示されるように例えば金属管で形成され、内部に多数個のボール91(中継部材)が変位可能に収められ、一端部にボール出口をなす切欠き部92aが形成された細長のチューブ部材92と、チューブ部材92の他端部に収められたガス発生部94a(火薬などのガス発生剤で構成)と、ガス発生剤を点火する点火部94と、ガス発生部94aとボール列端との間に介在されたピストン部(図示しない)などを有して構成される。
【0022】
ここでは、チューブ部材92は、切欠き部92aの有る一端側が上側から下側に向かうL形に曲成され、それに続く管部分がC形に曲成されている。このうちチューブ部材92の一端側は、メインフレーム部72のうち、メインフレーム部72を挟んだ巻戻しユニット82とは反対側の他側壁72bの外面に沿わせられている。さらに述べれば、チューブ部材92の一端側は、フレーム部71側で上下方向に沿って配置され、切欠き部92aが他側壁72bの中央側に向けて配置されている。この切欠き部92aを有する端部分は、他側壁72bの外面全体に据付けた変換機構部93を介して、スプール35に接続されている。ちなみにチューブ部材92の端部と変換機構部93との間は、ブラケット95で固定されている。
【0023】
変換機構部93は、例えばスプール35の回転方向沿いにボール路を形成する回動変位可能なリングギヤ93a(図4中に一点鎖線で概略に図示)、リングギヤ93aの回動変位をスプール35へ伝えるピニオンギヤ93b(図4中に一点鎖線で概略に図示)を有して構成される。残るチューブ部材92の他端側は、メインフレーム部72の直上に配置される。例えばチューブ部材92の他端側は、メインフレーム部72の平面形状にならい配置されている。具体的にはチューブ部材92の他端側は、メインフレーム部72の他側壁72b、端壁72cおよび一側壁72aにならって周囲に延びるように配置され、他端側の全体をリトラクタ80の上方に配置している。
【0024】
このプリテンショナ90は、衝突などにより車体1に所定以上の衝撃力が加わると、チューブ部材92の内部でガスが発生し、このガス発生でピストン部(図示しない)を介してボール91を変位させる。このボール91が、切欠き部92aを通じ、変換機構部93のボール路へ移動し、スプール35を、リングギヤ93aおよびピニオンギヤ93bを介して、巻き取り方向に変位させる。つまり、ボール91の変位が、引き込み力として、スプール35に伝達され、引き出されたシートベルト33を引き込む。これにより、車体1に所定以上の衝撃力が加わると、フロントシート7に着座している乗員は、プリテンショナ90により、シートベルト33で、フロントシート7に抑え付けられる。
【0025】
また図4に示されるようにチューブ部材92には、振れ抑制構造60(本願の振れ抑制部に相当)が設けられている。
すなわち、プリテンショナ90は、リヤドア15の開閉時、ドア開閉方向から衝撃力が加わる。特にチューブ部材92は、ボール91の導出する側だけを支持させる片側支持で、他端側が振れやすい構造なので、リヤドア15の開閉操作によっては、過度な衝撃力がチューブ部材92へ加わり、チューブ部材92が、一端側を支点としてドア開閉方向に過度に振れるおそれがある。
【0026】
そのため、本実施形態のチューブ部材92の自由端側(他端側)には、チューブ部材92の振れを抑える振れ抑制構造60が設けられている。この振れ抑制構造60には、例えば図4および図6に示されるようなアーム部61と緩衝材65とを組み合わせた構造が用いられている。
すなわち、アーム部61は、例えば、ベルトガイド口73を有する壁部71aのチューブ部材92の自由端寄りの部位から、リヤドア15の開閉方向に沿って、チューブ部材92へ一体に延ばした帯板部61aと、この帯板部61aの先端部から下側のチューブ部材92の外周面と向き合うように配置される座板部61bとを有している。具体的には座板部61bは、チューブ部材92を挟んでフレーム部71とは反対側の外周面と対向するように配置される。
【0027】
緩衝材65は、この座板部61bの先端部の内面に取着されている。緩衝材65は、例えばスポンジゴムなどで構成された板形の部材が用いられる。この取着にて、緩衝材65を、チューブ部材92の他端側(自由端側)と座板部61bとの間に介在させている。さらに述べると、緩衝材65は、チューブ部材92の外周面と当接、又は若干に押し付けられている。
【0028】
こうしてフレーム部71とチューブ部材92との間に設けられた振れ抑制構造60にて、チューブ部材92のドア開閉方向の振れは抑えられる。
それ故、リヤドア15の開閉時、ドア開閉方向に過大な衝撃力が生じたとしても、振れ抑制構造60にてチューブ部材92の自由端側(他端側)における過大な振れを抑えることができる。特にチューブ部材92に加わる衝撃力は、緩衝材65により緩衝され、チューブ部材92を衝撃力から保護するから、効果的にチューブ部材92の振れが防げ、振れを要因としたチューブ部材92の損傷を防ぐことができる。しかも、振れ抑制構造60は、アーム部61と緩衝材65を組み合わせた簡単な構造ですむ。
【0029】
図7は、本発明の第2の実施形態を示している。
本実施形態は、緩衝材を用いない振れ抑制構造100を用いたものである。
これには、図3,4と同様、壁部71aのチューブ部材92の自由端寄りの部位から、リヤドア15の開閉方向に沿って、チューブ部材92へ一体に延ばした帯板部101の先端部に、環状のチューブ支え部102を設けた構造が用いられている。具体的には、チューブ支え部102は、チューブ部材92を取り囲むようにU形に曲成し、U形部103の先端部をボルト部材104で帯板部101の先端部に固定して、チューブ部材92を、U形部103と帯板部101の先端部とで挟み付けるようにしたものである。
【0030】
このようにしても簡単な構造で、チューブ部材92のドア開閉方向の振れを抑えることができる。ちなみに、チューブ部材92と環状のチューブ支え部102との間に緩衝材を介在させてもよい(図示しない)。
但し、図7において第1の実施形態と同じ部分には、同一符号を付してその説明を省略した。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば実施形態では、観音式ドアを一例に挙げたが、これに限らず、二枚のドアが同一方向に開く横開き式のドアにも適用してもよい。むろん、発明を二点式シートベルト装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 車体
11 乗降口
15 リヤドア(ドア)
25 リトラクタ装置
33 シートベルト
60,100 振れ抑制構造(振れ抑制部)
70 フレーム
80 リトラクタ
90 プリテンショナ
92 チューブ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7