(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンから流出した冷媒の熱を放熱するラジエーターと、エンジンへの冷媒入口とラジエーターとを連結するインレットパイプと、エンジンからの冷媒出口とラジエーターとを連結するアウトレットパイプとを有するエンジンの冷却回路であって、
上記インレットパイプ又は上記アウトレットパイプの管壁に開口が形成されており、
上記インレットパイプ又は上記アウトレットパイプの開口から上方に延びるように形成され、この開口から冷媒と共に流入した空気を貯留する貯留部と、
上記貯留部の上部に取り付けられ、この貯留部に貯留された空気を排出する空気抜き弁と、を有し、
上記貯留部は、この貯留部の内部を、上記インレットパイプ又は上記アウトレットパイプの開口と上記空気抜き弁とを連通させる第1の貯留室と、この第1の貯留室に隣接する第2の貯留室とに区画する隔壁を備え、この隔壁には、上記第1の貯留室と上記第2の貯留室とを連通させる連通口が形成され、
上記インレットパイプ又は上記アウトレットパイプの開口は、これらのインレットパイプ又はアウトレットパイプの管壁の側面に形成され、
上記開口から上記冷媒の流れに対して後方に延びるように形成され、この開口から流入した冷媒を滞留させる滞留部を有し、
上記貯留部はこの滞留部の上方に設けられており、上記貯留部の第1の貯留室は、この滞留部を介して上記インレットパイプ又は上記アウトレットパイプの開口と上記空気抜き弁とを連通させ、上記貯留部の第2の貯留室は、この滞留部に対して閉じられていることを特徴とするエンジンの冷却回路。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃エンジンを冷却するために、エンジンの内部に冷媒を循環させる冷却回路が用いられている。この冷却回路では、エンジンの内部を通過することで高温となった冷媒がラジエーターで冷却され、再びエンジンの内部に還流するようになっている。
また、エンジンで温められた冷媒の一部を、カーヒーター等の暖房の熱源として利用することも行なわれている。この場合、エンジンで温められた冷媒の一部がカーヒーターに供給され、このカーヒーターで熱を取り出された後にエンジンに還流する。
【0003】
ところで、エンジンの製造時や冷媒の交換時に、この冷却回路に冷媒を注入する際、冷媒と共に空気が冷却回路内に混入する。この空気が気泡となって冷媒と共にカーヒーターに流れ込むと、カーヒーターの内部で気泡に起因する水流音が発生することがある。
また、冷却回路内に混入した空気がラジエーターに流れ込んだ場合には、冷媒自体がラジエーターの管壁と直接接触して熱を伝達する伝熱面積が減少するので、冷媒の熱がラジエーターで十分に放熱されず、エンジンの冷却効率が低下する可能性がある。
【0004】
そこで、従来のエンジンの冷却回路では、冷却回路において水位が高く空気が溜まりやすい位置、具体的にはラジエーターの上部タンクに、所定以上の圧力で開く空気抜き弁が設けられている。冷媒を注入した後、エンジンに負荷をかけて冷却回路内に冷媒を循環させると、この冷媒に混入していた空気は、ラジエーターの上部タンクまで送り込まれ、空気抜き弁から冷却回路外へ放出される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、冷却回路内に混入した空気を抜くための空気抜き弁は、冷却回路において高い水位位置にあるラジエーターの上部タンクに設けられることが多い。しかしながら、例えばスポーツ車のようにエンジンの搭載スペースに制約がある場合には、ラジエーターを、エンジンからの冷媒出口(アウトレット)よりも低い水位位置に配置せざるを得ないこともある。この場合には、空気抜き弁をラジエーターの上部タンクに設けたとしても、この上部タンクに空気が溜まらないので、空気抜きを効果的に行なうことができない。そこで、水位位置の高いエンジンのアウトレット近傍に空気抜き弁を設けることが考えられる。
【0007】
しかしながら、エンジンのアウトレット近傍に空気抜き弁を設けようとしても、エンジンの搭載スペースの制約から、冷却回路内に混入した空気を溜めるためにラジエーターの上部タンクと同程度の容量の空間を空気抜き弁の下方に設けることが困難な場合がある。この場合、空気抜き弁の下方に空気が溜まり難いので、空気抜きを効果的に行なうことができない。
また、エンジンのアウトレット近傍では、冷却回路を流れる冷媒の流速が速いので、空気抜き弁の下方に溜まった空気が冷媒に巻き込まれて冷却回路内に再び混入してしまう可能性もある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、冷却回路内に混入した空気を空気抜き弁の下方に確実に溜めることができ、これにより、冷却回路に混入した空気を空気抜き弁から確実に排出することができるエンジンの冷却回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のエンジンの冷却回路は、エンジンから流出した冷媒の熱を放熱するラジエーターと、冷媒を貯留するリザーブタンクと、エンジンへの冷媒入口とラジエーターとを連結するインレットパイプと
、エンジンからの冷媒出口とラジエーターとを連結するアウトレットパイプとを有するエンジンの冷却回路であって、インレットパイプ又はアウトレットパイプの管壁に開口が形成されており、ラジエーター及びリザーブタンクよりも高い水位位置において、インレットパイプ又はアウトレットパイプの開口から上方に延びるようにこのインレットパイプ又はアウトレットパイプに設けられ、開口から冷媒と共に流入した空気を貯留する貯留部と、貯留部の上部に取り付けられ、この貯留部に貯留された空気をリザーブタンクへ排出する空気抜き弁と、を有し、貯留部は、この貯留部の内部を、インレットパイプ又はアウトレットパイプの開口と空気抜き弁とを連通させる第1の貯留室と、この第1の貯留室に隣接する第2の貯留室とに区画する隔壁を備え、この隔壁には、第1の貯留室と第2の貯留室とを連通させる連通口が形成されていることを特徴とする。
このように構成された本発明においては、インレットパイプ又はアウトレットパイプから開口を介して冷媒と共に貯留部の第1の貯留室に流入した空気は、第1の貯留室の中に貯留されると共に、隔壁の開口を介して第2の貯留室に流入し、この第2の貯留室の中に貯留される。そして、第1の貯留室と第2の貯留室との間は隔壁によって区画されているので、この隔壁により、開口から第1の貯留室に流れ込んだ冷媒の流れが直接的に第2の貯留室に流れ込むことが阻害され、これにより、第2の貯留室の中に貯留された空気が、開口から第1の貯留室に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路内に再び流れ出してしまうことが抑制される。従って、冷却回路内に混入した空気を、空気抜き弁の下方に配置された貯留部に確実に溜めることができ、これにより、冷却回路に混入した空気を空気抜き弁から確実に排出することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、隔壁の連通口は、この隔壁の上端から下端まで延びるスリットである。
このように構成された本発明においては、第1の貯留室に流れ込んだ冷媒の流れが直接的に第2の貯留室に流れ込むことを効果的に阻害することができ、これにより、第2の貯留室の中に貯留された空気が、開口から第1の貯留室に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路内に再び流れ出してしまうことを確実に抑制できる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、インレットパイプ又はアウトレットパイプの開口は、これらのインレットパイプ又はアウトレットパイプの管壁の側面に形成されている。
このように構成された本発明においては、開口は、インレットパイプ又はアウトレットパイプの管中央と比較して冷媒の流速が低い管壁の側面に形成されているので、貯留部の中に貯留されている空気が、開口から貯留部に流れ込んだ流速の高い冷媒に巻き込まれて冷却回路内に再び流れ出してしまうことを効果的に抑制できる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、開口から冷媒の流れに対して後方に延びるように形成され、この開口から流入した冷媒を滞留させる滞留部を有し、貯留部はこの滞留部の上方に設けられており、貯留部の第1の貯留室は、この滞留部を介してインレットパイプ又はアウトレットパイプの開口と空気抜き弁とを連通させ、貯留部の第2の貯留室は、この滞留部に対して閉じられている。
このように構成された本発明においては、滞留部は、開口から冷媒の流れに対して後方に延びるように形成されており、貯留部はこの滞留部の上方に設けられているので、インレットパイプ又はアウトレットパイプを流れる冷媒が流速を保持したまま開口から第1の貯留室に流れ込むことを防止でき、これにより、第1の貯留室及び第2の貯留室に貯留されている空気が、流速の高い冷媒に巻き込まれて冷却回路内に再び流れ出してしまうことを効果的に抑制できる。特に、第2の貯留室は滞留部に対して閉じられているので、第2の貯留室の中に貯留された空気が、滞留部に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路内に再び流れ出してしまうことが確実に抑制される。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、貯留部は、エンジンの冷却回路における最高水位位置に配置されている。
このように構成された本発明においては、冷却回路の中に混入している空気は、その浮力により貯留部に集まり易くなっており、これにより、冷却回路内に混入した空気を空気抜き弁の下方に確実に溜めることができ、冷却回路に混入した空気を空気抜き弁から確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるエンジンの冷却回路によれば、冷却回路内に混入した空気を空気抜き弁の下方に確実に溜めることができ、これにより、冷却回路に混入した空気を空気抜き弁から確実に排出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの冷却回路を説明する。
まず、
図1により、本発明の実施形態によるエンジンの冷却回路の全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンの冷却回路のシステム構成図である。
【0017】
まず、
図1において符号1は、本発明の実施形態によるエンジンの冷却回路を示す。この
図1に示すように、エンジン2の内部を冷媒が循環して冷却することにより、エンジン2の各部を適切な温度範囲内に維持するようになっている。エンジン2の上部には、エンジン2の内部を循環して温められた冷媒が流出する冷媒出口4が設けられ、この冷媒出口4にアウトレットハウジング6が取り付けられている。また、エンジン2の下部には、エンジン2の内部への冷媒入口8が設けられ、この冷媒入口8にインレットハウジング10が取り付けられている。
【0018】
アウトレットハウジング6にはアウトレットホース12が接続されており、このアウトレットホース12のエンジン2とは反対側の端部は、ラジエーター14のアッパータンク16に接続されている。即ち、エンジン2の冷媒出口4から流出した冷媒は、アウトレットハウジング6からアウトレットホース12を介してラジエーター14に流れ込む。ラジエーター14に流れ込んだ冷媒は、このラジエーター14の表面に供給される冷却風との間で熱交換を行うことにより冷却される。
【0019】
インレットハウジング10にはインレットホース18が接続されており、このインレットホース18のエンジン2とは反対側の端部は、ラジエーター14のロアタンク20に接続されている。即ち、ラジエーター14を通過することにより冷却された冷媒は、ラジエーター14からインレットホース18及びインレットハウジング10を介してエンジン2の内部へと還流する。
【0020】
また、アウトレットハウジング6及びインレットハウジング10には、ヒーターホース22、24を介してヒーター26が接続されている。エンジン2の冷媒出口4から流出した冷媒の一部は、アウトレットハウジング6からヒーターホース22を介してヒーター26に流れ込み、暖房の熱源として利用される。ヒーター26を通過して冷却された冷媒は、ヒーターホース24とインレットハウジング10を経由してエンジン2の内部へと還流する。
【0021】
さらに、インレットハウジング10にはウォーターポンプ28が設けられている。このウォーターポンプ28は、エンジン2から取り出された動力により駆動され、冷媒をエンジン2、ラジエーター14及びヒーター26の間で循環させる。
【0022】
上述したアウトレットハウジング6は、エンジン2の冷却回路1における最高水位位置に配置されている。また、アウトレットハウジング6の上部には空気抜き弁30が設けられており、この空気抜き弁30には、オーバーフローパイプ32を介してリザーブタンク34が接続されている。冷却回路1内の圧力が所定圧力を超えると空気抜き弁30が開放され、空気抜き弁30の下方に溜まっていた空気が冷媒と共にオーバーフローパイプ32を介してリザーブタンク34に排出される。また、エンジン2の停止時等において、冷却回路1内の冷媒の体積が冷媒の温度低下に伴って減少し、冷却回路1内の圧力が低下した場合には、リザーブタンク34内に貯留している冷媒がオーバーフローパイプ32及びアウトレットハウジング6を介して冷却回路1内に戻り、これにより、冷却回路1における冷媒の水位を維持する。
【0023】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6の構造を説明する。
図2は、エンジン2に取り付けられたアウトレットハウジング6の斜視図であり、
図3(a)はアウトレットハウジング6を上方から見た平面図であり、
図3(b)はアウトレットハウジング6の正面図である。
【0024】
図2及び
図3に示すように、アウトレットハウジング6は、エンジン2に連結されるパイプ部36(アウトレットパイプ)と、このパイプ部36の上方に設けられた貯留部38とを備えており、この貯留部38の上方には、空気抜き弁30が取り付けられている。
図2に示すように、パイプ部36には、アウトレットホース12及びヒーターホース22が接続されている。また、空気抜き弁30には、オーバーフローパイプ32が接続されている。
【0025】
次に、
図3乃至
図5により、本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6のパイプ部36について説明する。
図4は本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6のパイプ部36を上方から見た平面図であり、
図5は
図4に示したパイプ部36のV−V矢視図である。
【0026】
まず、
図3に示すように、アウトレットハウジング6のパイプ部36におけるエンジン2側の端部にはフランジ40が設けられており、このフランジ40により、パイプ部36がエンジン2に連結される。このフランジ40から斜め上方に延びるように管状の上流部42が形成されており、この上流部42の上端から水平方向に延びるように管状の下流部44が形成されている。この下流部44の端部には、アウトレットホース12が接続される。また、上流部42の中間部分には、ヒーターホース22が接続される接続部46が形成されている。
エンジン2の冷媒出口4から流出した冷媒は、上流部42の下端からパイプ部36の中に流れ込み、その一部は接続部46からヒーターホース22へと流れ、残りは下流部44を経由してアウトレットホース12へと流れる。
【0027】
また、
図4及び
図5に示すように、下流部44の上流部42側の端部において、その管壁の側面上部(即ち、管壁の側面の高さ方向中央部から管壁の上面までの範囲)に開口48が形成されている。そして、この開口48から冷媒の流れに対して後方に(
図4及び
図5では右向きに)延びるように、上面が開いた凹部形状の滞留部50が形成されている。即ち滞留部50は、開口48を介して下流部44の内部と連通している。
さらに、滞留部50の上面の周囲には、平板状の接合部52が設けられており、この接合部52の上面に、貯留部38の下面が接合されるようになっている。
【0028】
続いて、
図3、
図6及び
図7により、本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6の貯留部38及び空気抜き弁30について説明する。
図6(a)は本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6の貯留部38を上方から見た平面図であり、
図6(b)は本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6の貯留部38の正面図であり、
図6(c)は本発明の実施形態によるアウトレットハウジング6の貯留部38を下方から見た底面図である。また、
図7は、
図6に示した貯留部38のVII−VII矢視図である。
【0029】
まず、
図3及び
図6に示すように、貯留部38は、パイプ部36の接合部52の上面に接合される平板状のベース部54を備えている。そして、このベース部54から上方に延びるように、底面が開いた逆凹部形状の貯留室56が形成されている。この貯留室56は、底面から見てL字形の断面を有するように形成されており、この貯留室56の高さ方向(
図6(b)における上下方向)に延びる2つの隔壁58、60により、L字形の角部に位置する第1の貯留室62と、この第1の貯留室62の両側に位置する第2の貯留室64及び第3の貯留室66とに区画されている。
【0030】
貯留部38のベース部54をパイプ部36の接合部52に接合した場合における滞留部50の上面の内周を、
図6(c)に仮想線で示す。この
図6(c)に示すように、上述した3つの貯留室62、64、66のうち、第1の貯留室62と第3の貯留室66は滞留部50の上方に位置しており、これらの第1の貯留室62及び第3の貯留室66の底面を介して滞留部50と連通している。一方、第2の貯留室64は、平面視で滞留部50の外側に位置しており、この第2の貯留室64の底面はパイプ部36の接合部52の上面により塞がれる。即ち、第2の貯留室64は、滞留部50に対して閉じられている。
【0031】
空気抜き弁30の下端の外周を、
図7に仮想線で示す。この
図7に示すように、第1の貯留室62の上端は、空気抜き弁30の下端に連結されている。即ち、第1の貯留室62は、滞留部50を介してパイプ部36の開口48と空気抜き弁30とを連通させている。
一方、第2の貯留室64の上端及び第3の貯留室66の上端は、貯留部38の上面により閉じられており、空気抜き弁30とは直接的には連通していない。
【0032】
さらに、
図6(c)及び
図7に示すように、第1の貯留室62と第2の貯留室64とを区画する隔壁58、及び、第1の貯留室62と第3の貯留室66とを区画する隔壁60には、それぞれ、これらの隔壁58、60の上端から下端まで延びるスリット68、70(連通口)が形成されている。これらのスリット68、70を介して、第1の貯留室62と第2の貯留室64とが連通していると共に、第1の貯留室62と第3の貯留室66とが連通している。
【0033】
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、エンジンの冷却回路1における最高水位位置に配置されたアウトレットハウジング6に貯留部38が設けられているが、アウトレットホース12、インレットホース18、又はインレットハウジング10に貯留部38を設けてもよい。この場合、冷却回路1の中に混入している空気が集まり易い位置、例えば、上方に突出するように屈曲したアウトレットホース12やインレットホース18の屈曲部に貯留部38を設けることにより、冷却回路1の中に混入している空気が貯留部38に集まり易くすることができる。
【0034】
次に、上述した本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例によるエンジンの冷却回路1の作用効果を説明する。
【0035】
まず、アウトレットハウジング6は冷却回路1における最高水位位置に配置されているので、冷却回路1の中に混入している空気は、その浮力によりアウトレットハウジング6に集まり易くなっている。即ち、冷却回路1の中に混入している空気は、気泡となって冷媒と共にエンジン2の冷媒出口4からアウトレットハウジング6のパイプ部36に流入する。パイプ部36に流入した冷媒は、このパイプ部36の上流部42に沿って斜め上方に流れ、上流部42と下流部44との接続部分において下流部44に向かって水平方向に旋回する。
【0036】
パイプ部36の上流部42から下流部44に流入した冷媒の一部は、気泡を伴ってこの下流部44の開口48から滞留部50の中に流れ込む。この開口48は、下流部44の管中央と比較して冷媒の流速が低い管壁の側面に形成されているので、流速の高い冷媒が滞留部50に入った気泡を巻き込んで冷却回路1内に再び流れ出してしまうことが抑制される。
また、滞留部50は、開口48から冷媒の流れに対して後方に延びているので、下流部44を流れる冷媒が流速を保持したまま滞留部50に流れ込むことが防止され、これにより、流速の高い冷媒が滞留部50に入った気泡を巻き込んで冷却回路1内に再び流れ出してしまうことが抑制される。
【0037】
滞留部50の中に流れ込んだ気泡は、滞留部50から上方に浮上し、この滞留部50に連通している第1の貯留室62及び第3の貯留室66に流入し、これらの第1の貯留室62及び第3の貯留室66の中に空気が貯留される。
さらに、第1の貯留室62に貯留された空気の一部は、スリット68を介して第2の貯留室64に流入し、この第2の貯留室64の中に貯留される。第2の貯留室64は滞留部50に対して閉じられているので、第2の貯留室64の中に貯留された空気が、滞留部50に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路1内に再び流れ出してしまうことが抑制される。また、第2の貯留室64と第1の貯留室62との間は隔壁58によって区画されているので、この隔壁58により、開口48から滞留部50を介して第1の貯留室62に流れ込んだ冷媒の流れが直接的に第2の貯留室64に流れ込むことが阻害され、これにより、第2の貯留室64の中に貯留された空気が、開口48から第1の貯留室62に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路1内に再び流れ出してしまうことが抑制される。
特に、第1の貯留室62と第2の貯留室64は、隔壁58の上端から下端まで延びるように形成されたスリット68を介して連通しているので、第1の貯留室62に流れ込んだ冷媒の流れが直接的に第2の貯留室64に流れ込むことが効果的に阻害されており、これにより、第2の貯留室64の中に貯留された空気が、開口48から第1の貯留室62に流れ込んだ冷媒の流れに巻き込まれて冷却回路1内に再び流れ出してしまうことが確実に抑制される。
【0038】
このように、第1の貯留室62、第2の貯留室64、及び、第3の貯留室66の中に空気が貯留されている状態において、冷却回路1内の圧力が所定圧力を超えると、空気抜き弁30が開放される。これにより、空気抜き弁30の下方にある第1の貯留室62の中に貯留されていた空気が、オーバーフローパイプ32を介してリザーブタンク34に排出される。また、第2の貯留室64及び第3の貯留室66の中に貯留されていた空気は、スリット68、70を介して第1の貯留室62に流入し、この第1の貯留室62から空気抜き弁30及びオーバーフローパイプ32を介してリザーブタンク34に排出される。
【0039】
このように、本発明の実施形態によるエンジンの冷却回路1によれば、冷却回路1内に混入した空気を空気抜き弁30の下方に配置された貯留部38に確実に溜めることができ、これにより、冷却回路1に混入した空気を空気抜き弁30から確実に排出することができる。