(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222463
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/48 20060101AFI20171023BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20171023BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20171023BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20171023BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
C08F2/48
C08F2/44 C
C08L33/00
C08L27/18
C08L25/04
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-33724(P2014-33724)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157912(P2015-157912A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 勇人
(72)【発明者】
【氏名】中村 萌子
【審査官】
柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−169463(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/161402(WO,A1)
【文献】
特開2011−052134(JP,A)
【文献】
特開2005−302564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(A)〜(D)成分を少なくとも含む硬化性樹脂組成物。
(A)主鎖の炭素数が5〜18である単官能鎖状アルキル骨格構造のアクリルモノマー100質量部
(B)PTFEフィラー 15〜45質量部
(C)光開始剤 0.01〜5質量部
(D)熱可塑性エラストマー 1〜10質量部
ただし、前記 (D)成分が、構造中にスチレン骨格を有する熱可塑エラストマーを含んでなるものである。
【請求項2】
前記請求項1に記載の(B)成分が、破砕形状のPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の(B)成分の粒径が、4〜10μmのPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の(B)成分の粒径が、5〜7μmのPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の(A)成分の炭素数が7〜15である単官能鎖状アルキル骨格構造のアクリルモノマーを含んでなる硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物が、現場形成ガスケットに用いられるものである硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記請求項6に記載の現場形成ガスケットが、ハードディスクドライブの筐体を封止するために、予め該筐体の内面に塗布、硬化されてなる現場形成ガスケットである、硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素原子を含んでなる高分子重合体を含有する硬化性樹脂組成物に関するものであり、特に未硬化時の流動特性に優れた、より具体的には、粘度の増大を最小限に留めた上で揺変性を付与することができる硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より部材間のシール用途として、硬化性樹脂組成物を用いたシール材が知られている。該シール材は、部材間に塗布適用した後硬化させることによりシール材としての用を成すもの(接着シール)と、一方の部材のみに先に適用塗布し、これを硬化させ、然る後他方の部材を重畳することでシール材としての用を成すもの(現場形成ガスケット)に大別できる。
【0003】
部材間に適用塗布する接着シールの場合では、硬化性樹脂組成物が加熱により硬化する場合や、複数の材料を混合することで硬化する場合に用いることができる。他方で加熱硬化の場合は、被塗布部材に対して熱による負荷が加わることになり、複数の材料を混合する硬化の場合は、材料を適切な混合条件で混合する手間などが余計に掛かることとなる。
【0004】
このような負担を低減する目的で、活性エネルギー線照射による反応や、空気中の湿気と反応して硬化する反応形態の現場形成ガスケットが用いられてきている。これらのうち、ラインタクト等の生産性の観点から、活性エネルギー線硬化型の硬化性樹脂組物が好適に利用されている。
【0005】
上記のような活性エネルギー線硬化型の硬化性樹脂組物材料は、被塗布部材表面に露出した状態で塗布され、これが硬化するまでの間はビードが所定の形状を保っている必要がある。これを実現するために例えば、硬化性樹脂組成物の未硬化時の粘度を高める、という手法が考えられる。しかしながら粘度が高くなると、塗布工程において正確な塗布の制御が困難となり、塗布装置による自動塗布ができなくなってしまい、却って生産性の低下に繋がってしまう。
【0006】
これを解消するため、硬化性樹脂組成物の未硬化時の揺変性を高める、という手法を採ることができる。揺変性とは、チクソトロピー、チキソトロピー、チクソ性等とも言い、本発明では低いせん断速度の時と高いせん断速度の時とでの粘度の比率として定義する。この揺変性が大きなものほど、形状維持性が大きくなり、従って光硬化型の現場形成ガスケットとして好適な特性を備えたものたなる。
【0007】
前記揺変性を組成物に付与するため従来、酸化ケイ素(シリカ)、マイカ、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ポリアクリル酸エステルなどの無機、有機化合物粉末を添加するという手法が採られていた。しかしながらこの様な方法では、粘度が急減に上昇することになってしまい、また揺変性の上昇はさほど得られるものではなかった。
【0008】
上記問題を解決するため、引用文献1では揺変性付与成分として脂肪族アミン又は脂環式アミンを微粉末シリカと組み合わせて用いている。しかしながらこの手法では、室温での貯蔵状態における安定性に関する言及が無く、貯蔵時にアクリル官能性化合物と反応することによりゲル化、増粘等の不具合を惹起する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−262813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記課題に鑑みて創出されたものであり、即ち現場形成ガスケットとして活性エネルギー線硬化型の硬化性樹脂組成物を用いるにあたり、過剰な粘度の増大を伴うことなく揺変性を向上でき、なおかつ常温での貯蔵安定性が良好であるという特性を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の構成の硬化性樹脂組成物を用いることでこれを達成できることを見いだした。すなわち、
(A)主鎖の炭素数が5〜18である単官能鎖状アルキル骨格構造のアクリルモノマー 100質量部
(B)PTFEフィラー 15〜45質量部
(C)光開始剤 0.01〜5質量部
(D)熱可塑性エラストマー 1〜10質量部
からなる硬化性樹脂組成物である。
【0012】
また本発明は、以下の実施形態も含む。
第2の実施形態は、前記 (D)成分が構造中にスチレン骨格を有する熱可塑エラストマーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
第3の実施形態は、前記(B)成分が破砕形状のPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
【0013】
第4の実施形態は、前記(B)成分の粒径が4〜10μmのPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
第5の実施形態は、前記(B)成分の粒径が5〜7μmのPTFEフィラーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
第6の実施形態は、前記(A)成分の炭素数が7〜15である単官能鎖状アルキル骨格構造のアクリルモノマーを含んでなる硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより、過剰な粘度の増大を伴うことなく揺変性を向上することができるため、塗布時の作業性、塗布したビードの形状保持性が良好な現場形成ガスケットとして利用することができる。さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、予めハードディスクドライブの筐体の内面に塗布、硬化することにより、ハードディスクドライブの筐体を封止するための現場形成ガスケットとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下より本発明の実施態様について、詳説する。
本発明の硬化性樹脂組成物で用いる(A)主鎖の炭素数が5〜18である単官能鎖状アルキル骨格構造の(メタ)アクリルモノマーは、バインダーとして作用する成分である。該(A)成分に用いる材料としては、公知の単官能鎖状アルキル骨格構造の(メタ)アクリルモノマーを選択できる。例えば、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、およびこれらの構造異性体より適宜選択することができる。なお、本発明の(A)成分で言うところの主鎖とは、アクリル基が結合している化合物の構造体中、原子の数が最も多くなる構造のことを指す。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのことを指す。
【0016】
本発明の(A)成分においては、主鎖の炭素数が5〜18である鎖状アルキル骨格構造を有していれば、(メタ)アクリルモノマーに関して特段制約はないが、前記アルキル骨格が側鎖を有しているようなものであれば、側鎖の数は4以下であり、またそれぞれの側鎖の構造は、炭素数は3以下の炭化水素構造、ハロゲンから選ばれるものであることが好ましい。なお本発明においては、前記(A)成分中には側鎖であってもその構造中に脂環あるいは芳香環を有さない。
【0017】
本発明において特に好ましい(A)成分としては、硬化物の物理特性や原料の入手容易性から、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートである。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いる(B)PTFEフィラーは、組成物に所望の揺変性を与える作用をする成分である。該(B)成分に用いる材料としては、公知のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の市販品を用いることができる。例えば、MP1200(三井デュポンフロロケミカル社製品、長径:4.5μm、短径:1.5μm)、KT−60(喜多村社製品、平均粒径200μm、真球形状)、KT−300、(喜多村社製品、平均粒径10〜20μm、真球形状)、フルオンL1743J(旭硝子社製品、平均粒径7μm、破砕形状)、ルブロンL−5(ダイキン社製品、平均粒径5μm、破砕形状)などより適宜選択することができる。
【0019】
本発明において特に好ましい(B)成分の形状としては、より高い揺変性を発現させる特性から、破砕形状のPTFEである。特に好ましい粒径としては、4〜10μm、さらに好ましくは5〜7μmである。当該粒径範囲にある場合、後述の(D)成分との相互作用が特に良好となり、際立って優れた揺変性を発現する。またその添加量は、前記(A)成分100質量部に対し、15〜45、より好適には20〜40質量部である。
【0020】
前記(B)成分の添加量が15質量部未満であると、硬化性組成物に適切な揺変性を発現することができず、他方45質量部を超えると硬化性組成物の粘度が上がりすぎてしまい、作業性の低下に繋がる。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いる(C)光開始剤は、可視光、紫外線、ガンマ線、電子線等の活性エネルギー光により活性化され、前記(A)成分の化合物中に含まれるアクリル官能性基を重合させることのできる化合物である。当該(C)成分としては公知の物質を用いることができる。特に好適には光ラジカル開始剤であって、公知の市販品としては、イルガキュア184、イルガキュア819、イルガキュア651、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、ルシリンTPO、ダロキュア1173(以上、BASF社製品)。エサキュア1001M、エサキュアKIP150(以上、LAMBERTI社製品)、スピードキュアBEM、スピードキュアMBF、スピードキュアPDO、スピードキュアBMS、スピードキュアPBZ(以上、LAMBSON社製品)、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0022】
本発明において好適な(C)成分の添加量は、前記(A)成分100質量部に対し、0.01〜5質量、より好適には0.1〜3質量部である。前記(C)成分の添加量が0.01質量部未満であると、十分な光硬化性を発現することができず、他方5質量部を超えると硬化後の物性が低下したり、貯蔵時の安定性が低下するといった問題が発生する。なお、本発明の硬化性樹脂組成物を厚膜塗布する場合や、活性光をある程度吸収する材料を介して活性光照射する場合には、さらに光増感剤を添加して光硬化性を向上させてもよい。
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物で用いる(D)熱可塑性エラストマーは、組成物の揺変性を保持する作用をすると考えられる成分である。本発明では、該(D)成分を含ませることで前記(B)成分と共に揺変性を発現する。その作用機序は明確ではないが、前記(B)成分の粒子間で該(D)成分が互いに相互作用することにより、塗布した際の形状を保持するよう作用するものと考えられる。
【0024】
前記(D)成分としては公知の熱可塑性エラストマーを用いることができる。例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ゴム、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、スチレン−イソプレン共重合体(SIP)、スチレン−ブタジエン共重合体(SB)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS)などより適宜選択することができる。
【0025】
本発明において好ましい(D)成分としては、分子構造中にスチレン骨格を有するスチレン系ブロック共重合体であり、より好ましくはスチレン系ジブロック、トリブロック共重合体、特に好適には、スチレン−イソブチレン−スチレンのトリブロック共重合体(SIBS)である。公知の市販品としては、シブスター062T(カネカ社製品、質量平均分子量約60,000、スチレン単位含有量20質量%、ショアA硬度25)、シブスター102T(カネカ社製品、質量平均分子量約100,000、スチレン単位含有量15質量%、ショアA硬度25)などより適宜選択することができる。この様な材料としては、粉体、ペレット、シート、バルク等の形状で提供されるものであるが、本発明においては前記(A)成分に溶解するものであれば特にその形状を問わない。
【0026】
本発明においては、上記(A)〜(D)の他に、必要に応じて硬化性樹脂組成物に適切な特性を付与するための成分をさらに添加しても良い。例えば、反応性または非反応性希釈剤、老化防止剤、増粘剤、界面活性剤、粘着性付与剤、難燃剤、安定剤、顔料などが好適に用いることができる。特に、ヒュームドシリカ等の増粘剤を添加することにより、本発明の硬化性樹脂組成物はより高い揺変性と、所望の粘度を両立させることができる。
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
[評価方法]
実施例にて用いた硬化性樹脂組成物の特性は、以下の方法にてそれぞれ評価を行った。
【0029】
(1)揺変性
25℃、65RH%環境下にて、EH型粘度計(ブルックフィールド社製、PV−II+Pro)を用い、1回転/分、10回転/分それぞれにおける硬化性樹脂組成物の測定値を記録し、その比(1回転/分での測定値/10回転/分での測定値)を「チクソ比」として算出することで揺変性の特性を評価した。
【0030】
(2)硬さ
25℃、65RH%環境下にて、ショアー硬度計(ASKER社製、Type−A)を用い、厚さを1mmとした硬化性樹脂組成物の硬化物試験片の硬度値を測定することで硬さの特性を評価した。なお硬化物の試験片は、平坦なガラス面上に硬化性樹脂組成物を塗布し、ここに搬送装置付き紫外線照射装置(ウシオ社製、UVC−02516S)を用いて、積算光量が30mJ/cm
2となるよう紫外線を照射し、作成した。
【0031】
(3)厚膜硬化性
前記の硬さ特性評価で作成したものと同様の方法で、硬化物の試験片を作成した。この際、硬化性樹脂組成物の塗布厚は5mmとなるよう調整した。紫外線の照射後、未硬化であった部分を除去し硬化部分の膜厚を測定することで、厚膜硬化性を評価した。
【0032】
(4)硬化収縮率
比重カップ法を用いた水中置換法により硬化性樹脂組成物の比重を測定することで硬化収縮率の評価を行った。なお、硬化物の試験片は前記の硬さ特性評価で作成したものと同様の方法で作成したものを用いた。硬化収縮率の算定式は以下の通り。
Sg2=WA/(WA−WB)
ΔV=(Sg2−Sg1)/Sg2×100
ΔV:硬化収縮率
Sg1:硬化性組成物の比重
Sg2:硬化物の比重
WA:硬化物の空気中の質量
WB:硬化物の水中の質量
【0033】
[硬化性樹脂組成物の調製]
実施例に用いた硬化性樹脂組成物は、表1に記載の成分を予め均一に混合、攪拌することによりマスター液を用意し、これに表2〜3に記載の成分を添加の後混合、攪拌を行うという手順で調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
・シブスター062T:スチレン−イソブチレン−スチレントリブロックコポリマー、カネカ社製品、質量平均分子量60,000、スチレン単位含有量20質量%、ショアA硬度25
・KIP.150:高分子量タイプ開裂型光ラジカル発生剤、LAMBERTI CHEMICAL SPECIALTIES社製品、商品名エサキュアKIP150
【0036】
実施例、比較例に用いた各硬化性樹脂組成物の組成と併せ、上記評価方法によるそれぞれの評価結果を表2〜3に記載する。なお表中の配合組成は、全て質量部での表記である。
【0037】
本発明の(B)成分の種類、添加量を各種変更した組成における各特性の評価結果
【表2】
【0038】
・Aerosil#200:Evonic社製品、商品名アエロジル、BET比表面積が200±25[m
2/g]の親水性フュームドシリカ
・L1743J:旭硝子社製品、商品名FluonL1743j、平均粒径が7μmの破砕形状PTFE粒子
・KT−60:喜多村社製品、平均粒径が200μmの真球形状PTFE粒子
・KT−300:喜多村社製品、平均粒径が10〜20μmの真球形状PTFE粒子
・L−5:ダイキン社製品、商品名ルブロン、平均粒径が5μmの破砕形状PTFE粒子
・GR−800:根上工業社製品、商品名アートパールGR−800透明、平均粒径が6μmの真球状アクリル微粒子
・GR−200:根上工業社製品、商品名アートパールGR−200透明、平均粒径が32μmの真球状アクリル微粒子
【0039】
本発明の(B)成分の添加量を各種変更した組成における各特性の評価結果
【表3】
【0040】
マスター液中に含まれる(A)成分の種類を変更した組成を用いた揺変性の評価結果
【表4】
【0041】
・INAA:イソノニルアクリレート
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・IBXA:イソボルニルアクリレート
・ACMO:4−アクリロイルモルホリン
【0042】
上記表2より、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)アクリルモノマーと組み合わせる(B)成分としてPTFEフィラーを用いることにより、良好な揺変性を発現することが確認できる。なかでも、平均粒径が4〜10μm、さらには5〜7μmのPTFE、また真球状より破砕形状のPTFEを選択することで、際立って良好な揺変特性を発現していることが認められた。なおいずれの場合においても、添加成分であるヒュームドシリカを併用することで、粘度特性だけでなく揺変特性も向上していることが認められる。なお参考例1,2にて、(B)に平均粒径が6、32μmのアクリル微粒子を用いた評価では、ある程度の揺変性は発現するものの、経時で増粘、ゲル化してしまい、実用的なものではなかった。
【0043】
表3の比較例1は、本発明の特徴成分である(B)成分を用いず、周知の揺変性付与剤であるヒュームドシリカのみを用いて所望の揺変特性を発現させることを目的とした評価である。当該評価結果によると、一定の揺変性を発現させるには、同時に粘度も非常に上昇させることとなり、塗布時の作業性が著しく低下することとなる。
【0044】
比較例2〜7は、(B)成分の添加量が本発明の請求の範囲で特定した範囲外のものでの評価である。上限を超過したものは、光の透過性が低減することに起因する厚膜硬化性の低下、粘度上昇に伴う作業性の低下、という弊害が生じ、さらに揺変性も十分なものではなかった。一方下限未満のものは、好適な揺変性を発現することができなかった。
【0045】
表4の比較参考例1は、本発明の(D)成分を用いなかった場合の評価である。この結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は(D)を含まないと十分な揺変性を発現できないことが確認できた。
【0046】
比較参考例2〜4は、(A)アクリルモノマーとして本発明の請求の範囲で特定したもの以外を用いたものでの評価である。これらはいずれの場合においても、十分な揺変性を発現することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上の結果より、本発明の硬化性樹脂組成物は、特に良好な揺変性を備えたものであり、接着剤やシール剤、ポッティング剤、コーティング剤等の塗布適用する用途に良好に利用でき、更には塗布時のビードの形状保持性が特に重要な現場形成ガスケット、特には少量で塗布するため低粘度であることが望まれるハードディスクのカバーシールに用いるための現場形成ガスケットに好適に利用することができる。