(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の液体吐出装置及び媒体の前処理方法について、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明では、実施形態1〜5の5つの実施形態を例にとり、最初に実施形態1に基づいて、本発明の液体吐出装置の概略の構成と、本発明の特徴的構成である加圧ローラーと前処理液の付着部の具体的な構成と作用態様について説明する。次に、前記実施形態1との差異を中心に実施形態2に係る液体吐出装置の構成と作用態様と、実施形態3に係る液体吐出装置の構成と作用態様と、を順番に説明する。
更に、実施形態4と5を例にとって本発明の媒体の前処理方法について具体的に説明する。
【0019】
[実施形態1](
図1〜
図3参照)
本発明に係る実施形態1の液体吐出装置1は、表面の粘着層7に媒体Mを貼り付けて搬送する搬送ベルト9を備える媒体搬送部3と、搬送ベルト9に媒体Mを貼り付ける加圧ローラー15と、搬送ベルト9の移動経路5における加圧ローラー15の上流位置に設けられ、搬送ベルト9に前処理液Lを付着させる付着部17とを備えている。そして、前処理液Lが付着された状態の搬送ベルト9に加圧ローラー15により媒体Mが貼り付けられるように構成されている。
【0020】
(1)液体吐出装置の全体の概略構成(
図1参照)
最初に、
図1に基づいて本実施形態1に係る液体吐出装置1Aの概略の構成について説明する。
図1に示す液体吐出装置1Aは、布帛を媒体Mとして使用するインクジェット記録装置である。尚、ここで「布帛」とは、綿、麻、絹等の天然繊維やナイロン、ポリエステル等の化学繊維、またはこれらを混合したもの等を原糸とする布や織物等の繊維製品である。
【0021】
また、この液体吐出装置1Aには、前述した構成部材の他に、搬送ベルト9の移動経路5における液体吐出領域11には、該液体吐出装置11に送られた媒体Mの被吐出面に液体の一例であるインクを吐出して記録を実行する液体吐出部である液体吐出ヘッド19と、該液体吐出ヘッド19を一例として下面に搭載した状態でキャリッジガイド軸21に沿って媒体Mの搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動するキャリッジ23とが設けられている。更に、液体吐出領域11の下流には、前記記録の実行後、搬送ベルト9から剥離された媒体Mを巻き取る巻取り部25と、該巻取り部25の上流位置に案内ローラー27が配置されている。
【0022】
また、搬送ベルト9の移動経路5における洗浄領域13には、洗浄容器35に貯溜された洗浄液Wを使用して搬送ベルト9の表面に付着したインク等を除去する洗浄ブラシ37と、洗浄液Wの液滴を搬送ベルト9の表面からかき取るためのブレード39と、該ブレード39によって液滴がかき取られた搬送ベルト9の表面を更に拭き取る拭取りローラー41とが、ベルト移動方向における上流から下流に向けて順番に配置されている。
尚、拭取りローラー41に代えて搬送ベルト9の表面を乾燥させるヒーターを配置することも可能である。
【0023】
媒体搬送部3は、液体吐出領域11を通るように循環して搬送される無端帯状の搬送ベルト9と、搬送ベルト9に一例として回転方向Cの駆動力を伝達する駆動ローラー31と、駆動ローラー31に対して離間配置され、駆動ローラー31と共に搬送ベルト9が巻回された状態で搬送ベルト9を張設保持する従動ローラー33とを備えることによって構成されている。
尚、図示の実施形態1では、媒体Mの搬送方向Aの下流位置に駆動ローラー31を一例として配置し、媒体Mの搬送方向Aの上流位置に従動ローラー33を一例として配置している。また、前記無端帯状の搬送ベルト9の駆動ローラー33と反対側となる表面には、媒体Mを貼り付けるための前述した粘着層7が設けられている。
【0024】
(2)加圧ローラーと前処理液の付着部の具体的な構成と作用態様(
図2及び
図3参照)
加圧ローラー15は、搬送ベルト9の表面に媒体Mを貼り付けるのに使用される。この加圧ローラー15は、所定の加圧力(例えば搬送ベルト9のベルト幅1mに対して約98Nの力)で搬送ベルト9に押し付けられている。そして、該加圧力を利用して両者の間に供給される媒体Mの搬送ベルト9の表面への貼り付けと、媒体Mに対する前処理液Lの付着及び含浸とを実行している。
尚、前記加圧ローラー15の加圧力は、搬送ベルト9のベルト幅等に応じて適宜変更する調整が可能である。
【0025】
付着部17は、前処理液Lを貯溜しておく貯溜容器43と、該貯溜容器43内の前処理液Lにその一部を含浸させると共に、前記搬送ベルト9の表面に接触し、従動回転可能な状態で設けられている塗付ローラー45とを備えることによって一例として構成されている。
そして、本実施形態1では、付着部17は、
図2に示すように前述した媒体搬送部3の従動ローラー33が配置されている位置において、搬送ベルト9を塗付ローラー45と従動ローラー33との間に挟持する状態で設けられている。
【0026】
また、本実施形態1では、
図1及び
図2に示すように搬送ベルト9の移動経路5における付着部17と加圧ローラー15との間に、搬送ベルト9の表面に摺接するブレード47が設けられている。
尚、このブレード47は、塗付ローラー15の全長に亘る一本の長尺なブレードで構成してもよいし、
図3に示すように、使用する媒体Mの幅寸法等に対応した必要な個所(図示の実施形態では搬送ベルト9の左右の側縁を含んだ所定の長さの範囲の2ヶ所)のみに配置される一本または複数本のブレード(47L、47R)で構成することも可能である。
【0027】
また、このブレード47先端の接触片63と搬送ベルト9の表面の間隙Tにより前処理液Lの塗工厚さが設定でき、該間隙Tを調整することによって、使用する媒体Mに合わせた適切な前処理液Lの塗工厚さが得られるようになっている。
【0028】
更に、本実施形態1では、加圧ローラー15と液体吐出ヘッド19との間に、媒体Mに付着し含浸された前処理液Lを加熱して乾燥するためのヒーター49が設けられており、該ヒーター49により、媒体Mに対する前処理液Lの定着を促し、液体吐出領域11において良好な記録の実行ができるようにしている。
【0029】
このように構成される本実施形態1に係る液体吐出装置1Aによれば、ループ状に形成されている搬送ベルト9の移動経路5に沿って、付着部17、ブレード47、加圧ローラー15、ヒーター49、液体吐出ヘッド19等の各構成部材が効率良く配置されているので、装置の長大化を防止してコンパクトな液体吐出装置1を提供することが可能になる。
そして、本発明の特徴的構成である加圧ローラー15と付着部17の作用により、媒体Mの内部まで深く前処理液Lを浸透させることができ、以って良好な記録品質を安定して保つことが可能になる。
【0030】
[実施形態2](
図4参照)
実施形態2に係る液体吐出装置1Bは、付着部17とブレード47の配置を異ならせただけで、その他の構成については、前述した実施形態1に係る液体吐出装置1Aと同様である。従って、ここでは前記実施形態1と同様の構成については説明を省略し、実施形態2において新たに採用した構成とその作用、効果を中心に説明する。
【0031】
即ち、本実施形態2では、前記付着部17の配置を媒体搬送部3における従動ローラー33の近傍領域から加圧ローラー15の近傍領域に移している。従って、付着部17の貯溜容器43内に貯溜されている前処理液Lは、塗布ローラー45によって加圧ローラー15の周面に最初に付着する。
そして、加圧ローラー15により搬送ベルト9の表面に媒体Mを貼り付ける際、加圧ローラー15に付着した前処理液Lが媒体Mに付着し、加圧ローラー15の加圧力によって媒体Mの内部に浸透して含浸されるように構成されている。
【0032】
また、加圧ローラー15の周面における前処理液Lの付着位置と、媒体Mの貼付け位置との間に、加圧ローラー15の表面に摺接するブレード47が設けられている。
そして、このように構成される本実施形態2に係る液体吐出装置1Bによっても、前述した実施形態1に係る液体吐出装置1Aと同様の作用、効果を享受でき、更に本実施形態2にあっては、前処理液Lを浸透液としてだけでなく、コート液としても使用でき、前処理液Lとしてコート液を使用した場合には、媒体Mに吐出されたインクの発色が良くなり、鮮明な記録画像を形成することが可能になる。
【0033】
[実施形態3](
図5及び
図6参照)
実施形態3に係る液体吐出装置1Cは、加圧ローラー15の加圧力を調整可能にし、ブレード47の作用位置を調整可能にすると共に、これらの調整を制御する制御部29を備えた構成になっている。尚、その他の構成については、前述した実施形態1に係る液体吐出装置1Aと同様である。
従って、ここでは前記実施形態1と同様の構成については説明を省略し、実施形態3において新に採用した構成とその作用、効果を中心に説明する。
【0034】
即ち、本実施形態3では、加圧ローラー15の加圧力が加圧力調整機構51によって調整可能に構成されている。尚、加圧ローラー15の加圧力は、媒体Mの幅寸法が1mの時で約98N、媒体Mの幅寸法が1.6mの時で約157Nというように媒体Mの幅寸法の違いや媒体Mの厚みの違い等に応じて適宜調整することが可能である。
加圧力調整機構51としては種々の機構が採用でき、予め径寸法を変えた複数の加圧ローラー15を準備しておき、これらを使用する媒体Mに応じて手動で付け替えたり、自動的に切り替えることが可能である。
【0035】
また、加圧ローラー15の径寸法を変える態様として、
図6(A)に示すように加圧ローラー15の周囲に所定厚さのシート53を巻いて加圧ローラー15の径寸法を変えることが可能である。また、加圧ローラー15の位置を変えて搬送ベルト19に対して接近離間させることによって加圧ローラー15の加圧力を調整することも可能である。この場合には、例えば
図6(B)に示すようなカム機構55等を利用した加圧力調整機構51を採用することが可能である。
【0036】
また、本実施形態3では、前記左右のブレード47L、47R(
図3)の作用位置がブレード作用位置調整機構57によって調整可能に構成されている。ブレード作用位置調整機構57としても種々の機構が採用でき、
図6(C)に示すようなラック・ピニオン機構59等を利用したも機構57Aが一例として採用可能である。尚、この機構57Aの場合には、左右のブレード47L、47Rの幅方向Bの位置を、媒体Mの幅寸法等に対応させて同時に接近離間させることで前処理液Lの塗工幅を調整するような場合に使用できる。
【0037】
また、
図6(D)に示すようにブレード47を回動支点61を中心にして所定角度の範囲で回動できるようにしたブレード作用位置調整機構57Bも採用可能である。尚、この機構57Bの場合には、ブレード47の先端の接触片63と搬送ベルト9の表面との間隙Tを変えることによって前処理液Lの塗工厚さを調整するような場合に使用できる。
そして、使用する媒体Mの入力情報等に基づいて制御部29において、加圧ローラー15の適切な加圧力とブレード47の適切な作用位置を決定し、加圧力調整機構51とブレード作用位置調整機構57とを駆動して所望の加圧ローラー15の加圧力とブレード47の作用位置とが設定されるようになっている。
【0038】
そして、このように構成される本実施形態3に係る液体吐出装置1Cによっても、前述した実施形態1に係る液体吐出装置1Aと同様の作用、効果を享受できる。
更に、本実施形態3にあっては、媒体Mの種類や厚み等の違いに応じて加圧ローラー15の加圧力を調整することで、媒体Mの内部への前処理液Lの浸透の度合等を調整することが可能になる。また、媒体Mの幅寸法や厚み等の違いに応じてブレード47の作用位置を調整することで、前処理液Lの塗工幅と塗工厚さを媒体Mに合わせることが可能になり、適切な前処理を行うことが可能になる。
【0039】
[実施形態4](
図7参照)
本発明の実施形態4となる媒体の前処理方法は、搬送ベルト9の表面に貼り付けた媒体Mを搬送して液体吐出領域11に供給するに際し、前処理液Lが付着された状態の搬送ベルト9に加圧ローラー15により媒体Mを貼り付ける工程を有することを特徴とする。即ち、搬送ベルト9の表面に媒体Mを貼り付ける際に搬送ベルト9上の前処理液Lを媒体Mに付着させ、該前処理液Lが付着された媒体Mに対して、加圧ローラー15から加圧力を加えることによって前処理液Lを媒体M中に含浸させるようにしたものである。
【0040】
本実施形態4は、前述した実施形態1に係る液体吐出装置1Aを使用した場合に実行される媒体の前処理方法に対応しており、一例として
図7に示すブロック図の各工程の流れに従って、各工程の処理が順次実行されるように構成されている。
即ち、前処理液付着工程P1を始発点とすると、本工程P1で搬送ベルト9の表面に前処理液Lが付着され、次のブレード処理工程P2で、搬送ベルト9の表面に前処理液Lを押し付けて広める。
【0041】
次に、搬送ベルト9は表面に媒体Mが貼り付けられる貼付け位置に移動し、加圧ローラ15の加圧力を受けて搬送ベルト貼付工程P3と前処理液含浸工程P4が同時に実行される。従って、ここでの2工程P3、P4によって、媒体Mは搬送ベルト9に貼り付けられることで位置ずれが防止された状態で搬送ベルト9の表面に確実に保持され、前処理液Lが媒体Mの内部に深く浸透して、前処理液Lの作用、効果が十分に発揮される状態になる。
次に、前処理液加熱工程P5に移行して、前処理液Lの加熱が実行されることによって本実施形態の媒体の前処理方法を構成する一連の工程が終了する。そして、搬送ベルト9と媒体Mは、次工程の記録実行工程P6で媒体Mに記録が実行され、媒体剥離工程P7で媒体Mは搬送ベルト9から剥離されて次工程の媒体巻取り工程P11において巻取り部25に巻き取られる。
【0042】
一方、媒体Mが剥離された搬送ベルト9は、搬送ベルト洗浄工程P8に向い、洗浄ブラシ37による搬送ベルト洗浄工程P8、ブレード39による搬送ベルト9表面の液滴除去工程P9及び拭取りローラー41などによる搬送ベルト乾燥工程P10を経て、再び前記始発点の前処理液付着工程P1に至る。
以後は、前記工程P1〜P11の流れで各工程での処理を繰り返し実行することによって媒体Mの全長ないし必要な長さの記録が継続される。
【0043】
そして、このように構成される本実施形態4に係る媒体の前処理方法によれば、前処理液Lが媒体Mの内部に深く浸透して前処理液Lの作用、効果が十分に発揮される状態で、当該媒体Mは記録実行工程P6に供給されるので、良好な品質の記録が安定して実行されるようになる。
従って、前記前処理液Lとして浸透液を使用した場合に従来問題になっていた媒体Mの裏面までインクが行き渡らない表面記録等を効果的に防止することが可能になる。
【0044】
[実施形態5](
図7参照)
本発明の実施形態4となる媒体の前処理方法は、搬送ベルト9の表面に貼り付けた媒体Mを搬送して液体吐出領域11に供給するに際し、前処理液Lが付着された状態の加圧ローラー15により搬送ベルト9に媒体を貼り付ける工程を有することを特徴とする。即ち、搬送ベルト9の表面に媒体Mを貼り付ける際に加圧ローラー15上の前処理液Lを媒体Mに付着させ、該前処理液Lが付着された媒体Mに対して、加圧ローラー15から加圧力を加えることによって前処理液Lを媒体M中に含浸させるようにしたものである。
【0045】
[他の実施形態]
本発明に係る液体吐出装置1及び媒体の前処理方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、実施形態1または実施形態3において、搬送ベルト9の表面に前処理液Lを塗布していた塗布ローラー45に代えて、刷毛やブラシあるいはスポンジ状の板材等を使用して前処理液Lを塗布したり、エア圧等を利用して前処理液Lを吹き付ける構成とすることも可能である。
【0046】
また、付着部17において、前処理液Lの塗工幅や塗工厚さを調整できる機能を備えている場合には、ブレード47を省略することが可能である。また、媒体Mの上下両面に同一種類または異なる種類の前処理液Lを同時にあるいは連続して付着させて含浸させたい場合には、実施形態1で述べた位置と実施形態2で述べた位置の両方に付着部17を一組ずつ配置することが可能である。
また、液体吐出部19としてキャリッジ23を有しない、いわゆるラインヘッドを備える液体吐出装置に対して本発明を適用することも可能である。ここで「ラインヘッド」とは、媒体Mの搬送方向Aと交差する幅方向Bに沿ってノズル列が形成されているものである。
【0047】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0048】
以上、本発明について具体的な実施例に基づいて詳述した。ここで、本発明について、もう一度まとめて以下に説明する。
本発明の第1の態様の液体吐出装置1は、表面の粘着層7に媒体Mを貼り付けて搬送する搬送ベルト9と、搬送ベルト9に媒体Mを貼り付ける加圧ローラー15と、搬送ベルト9の移動経路5における加圧ローラー15の上流位置に設けられ、搬送ベルト9に前処理液Lを付着させる付着部17とを備え、前処理液Lが付着された状態の搬送ベルト9に加圧ローラー15により媒体Mが貼り付けられることを特徴とする。
【0049】
本態様によれば、前処理液Lが付着された状態の搬送ベルト9に加圧ローラー15により媒体Mが貼り付けられるので、媒体Mが搬送ベルト9に張り付けられる際に加圧ローラー15から受ける加圧力によって搬送ベルト9上の前処理液Lが媒体Mに浸透しやすくなる。
これにより、例えば当該前処理液Lが媒体M中への液体の浸透を促進させる浸透液である場合には、当該浸透液としての効果が十分に発揮されて媒体Mの表面のみに吐出された液体が留まって、媒体Mの裏面まで液体が行き渡らない表面記録等の発生を低減することができる。
【0050】
また、当該液体吐出装置1は、搬送ベルト9に前処理液Lを付着させる付着部17が、搬送ベルト9の移動経路5における加圧ローラー15の上流位置に設けられているので、装置全体の長大化を抑制しコンパクト化を実現することができる。
【0051】
本発明の第2の態様の液体吐出装置1は、表面の粘着層7に媒体Mを貼り付けて搬送する搬送ベルト9と、搬送ベルト9に媒体Mを貼り付ける加圧ローラー15と、加圧ローラー15に前処理液Lを付着させる付着部17とを備え、前処理液Lが付着された状態の加圧ローラー15により搬送ベルト9に媒体Mが貼り付けられることを特徴とする。
【0052】
本態様によれば、前処理液Lは、搬送ベルト9の表面に媒体Mを貼り付ける前の段階で加圧ローラー15の周面に付着され、更に、搬送ベルト9に媒体Mを貼り付ける際に媒体Mの上面(液体が吐出される側の面)に付着される。このときに加圧ローラー15からの加圧力が媒体Mに作用することによって、媒体Mの上面に付着した前処理液Lが媒体Mの表面に広く行き渡りつつ媒体M中に浸透するようになる。
例えば、当該前処理液Lがコート液である場合には、媒体Mに吐出された液体の発色が良くなり、鮮明な画像が形成されるようになる。一方、当該前処理液Lが浸透液である場合には、前記第1の態様で述べた作用、効果が得られる。
【0053】
本発明の第3の態様の液体吐出装置1は、前記第1の態様において、搬送ベルト9の移動経路5における付着部17と加圧ローラー15との間には、該搬送ベルト9の表面に摺接するブレード47が設けられていることを特徴とする。
【0054】
本態様によれば、ブレード47が搬送ベルト9の表面に摺接するので、搬送ベルト9に付着した前処理液Lは、搬送ベルト9の表面全体に一様に行き渡るようになる。この状態で媒体Mが搬送ベルト9に張り付けられる際に加圧ローラー15から加圧力を受けることで、搬送ベルト9上の前処理液Lが媒体Mの全体に亘って斑なく浸透しやすくなる。
【0055】
本発明の第4の態様の液体吐出装置1は、前記第2の態様において、加圧ローラー15の周面における前処理液Lの付着位置と媒体Mの貼り付け位置との間に、加圧ローラー15に摺接するブレード47が設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、前記第2の態様の液体吐出装置に対して、ブレード47の加圧ローラー15に対する摺接により前記第3の態様と同様の作用、効果を得ることができる。
【0056】
本発明の第5の態様の液体吐出装置は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、搬送ベルト9の移動経路5における加圧ローラー15の下流位置に、媒体Mに液体を吐出する液体吐出部19が設けられており、加圧ローラー15と液体吐出部19との間には、媒体Mに付着した前処理液Lを加熱するヒーター49が設けられていることを特徴とする。
【0057】
本態様によれば、加圧ローラー15が媒体Mと接触する位置で媒体M中に含浸された前処理液Lは、液体を吐出する液体吐出部19の存する液体吐出領域11に到達するまでの間に加熱されて媒体M中に定着する。これにより、前処理液Lとしての機能が効果的に発揮されるようになる。
【0058】
本発明の第6の態様の液体吐出装置は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、加圧ローラー15の加圧力は調整可能であることを特徴とする。
本態様によれば、媒体Mの種類や厚み等の違いに応じて加圧ローラー15の加圧力を調整することができ、以って媒体M中への前処理液Lの浸透の度合い等を調整することが可能になる。
【0059】
本発明の第7の態様の液体吐出装置は、前記第3の態様または第4の態様において、ブレード47の作用位置は調整可能であることを特徴とする。
本態様によれば、媒体Mの幅寸法や厚み等の違いに応じてブレード47の作用位置を調整することができ、以って前処理液Lの塗工幅や塗工厚さ等を媒体Mに合わせることが可能になる。
【0060】
本発明の第8の態様の媒体の前処理方法は、搬送ベルト9の表面に貼り付けた媒体Mを搬送して液体吐出領域11に送るに際し、前処理液Lが付着された状態の搬送ベルト9に加圧ローラー15により媒体Mを貼り付ける工程を有することを特徴とする。
【0061】
本態様によれば、媒体Mが搬送ベルト9に張り付けられる際に加圧ローラー15から受ける加圧力によって搬送ベルト9上の前処理液Lが媒体Mに浸透しやすくなる。
【0062】
本発明の第9の態様の媒体の前処理方法は、搬送ベルト9の表面に貼り付けた媒体Mを搬送して液体吐出領域11に送るに際し、前処理液Lが付着された状態の加圧ローラー15により搬送ベルト9に媒体Mを貼り付ける工程を有することを特徴とする。
【0063】
本態様によれば、媒体Mが搬送ベルト9に張り付けられる際に加圧ローラー15からの加圧力が媒体Mに作用することによって、加圧ローラー15を介して媒体Mの上面に付着した前処理液Lが媒体Mの表面に広く行き渡りつつ媒体M中に浸透するようになる。
【符号の説明】
【0064】
1 液体吐出装置、3 媒体搬送部、5 移動経路、7 粘着層、
9 搬送ベルト、11 液体吐出領域、13 洗浄領域、15 加圧ローラー、
17 付着部、19 液体吐出ヘッド、21 キャリッジガイド軸、
23 キャリッジ、25 巻取り部、27 案内ローラー、29 制御部、
31 駆動ローラー、33 従動ローラー、35 洗浄容器、37 洗浄ブラシ、
39 ブレード、41 拭取りローラー、43 貯溜容器、45 塗布ローラー、
47 ブレード、49 ヒーター、51 加圧力調整機構、53 シート、
55 カム機構、57 ブレード作用位置調整機構、59 ラック・ピニオン機構、
61 回動支点、63 かき取り片、
M 媒体、A 搬送方向、B 幅方向、C 回転方向、L 前処理液、W 洗浄液、
T 間隙、
P1 前処理液付着工程、P2 前処理液かき取り工程、P3 搬送ベルト貼付工程、
P4 前処理液含浸工程、P5 前処理液乾燥工程、P6 記録実行工程、
P7 媒体剥離工程、P8 搬送ベルト洗浄工程、P9 搬送ベルトかき取り工程、
P10 搬送ベルト乾燥工程、P11 媒体巻取り工程