(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の走行ライン生成装置を説明する。
まず、
図1により、本発明の実施形態による車両の走行ライン生成装置を搭載する車両について説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両の走行ライン生成装置を搭載した車両の電気的構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、符号1は、本実施形態による車両の走行ライン生成装置を搭載した車両を示す。この車両1は、車両1の前方を撮影する車外カメラ2、道路の平面形状及び勾配に関する形状情報を格納した地図データベース4、GPS6(Global Positioning System)、車速を検出する車速センサ8、車両1の進行方向の加速度を検出する加速度センサ10、及び、車両1のヨーレートを検出するヨーレートセンサ12を有する。車外カメラ2が撮影した画像データ、地図データベース4から取得された道路の形状情報、GPS6により取得された位置情報、及び各センサにより検出された検出データは、ECU14(車両の走行ライン生成装置)に出力される。
【0014】
ECU14は、カーブの平面形状及び勾配に関する形状情報を取得するカーブ形状情報取得部16と、車両1が旋回中に発生させることのできる最大横加速度を取得する最大横加速度取得部18と、カーブの開始位置と終了位置との間における車両1の進行方向の目標加減速度を設定する目標加減速度設定部20と、カーブの開始位置と終了位置との間における車両1の目標ヨーレートを設定する目標ヨーレート設定部22と、目標ヨーレート設定部22により設定された目標ヨーレートを補正する目標ヨーレート補正部24と、生成された走行ラインを評価する生成ライン評価部26と、目標加速度に従って車両1のエンジン28及びブレーキ30を制御する加減速制御部32と、目標加速度及び目標ヨーレートに従って車両1の電動パワーステアリング34を制御するステアリングトルクコントローラ36とを備える。
【0015】
これらのカーブ形状情報取得部16、最大横加速度取得部18、目標加速度設定部、目標ヨーレート設定部22、目標ヨーレート補正部24、生成ライン評価部26、加減速制御部32、及びステアリングトルクコントローラ36は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0016】
次に、
図2乃至
図5により、車両1の走行ライン生成装置が行う車両1の進行方向の加減速制御について説明する。
図2は、本発明の実施形態による車両1の走行ライン生成装置が走行ラインを生成するカーブの一例を示す平面図であり、
図3は、本発明の実施形態による車両1の走行ライン生成装置が実行する走行ライン生成処理のフローチャートであり、
図4は、本発明の実施形態による車両1の走行ライン生成装置により設定された加減速度制御曲線及びヨーレート制御曲線を示す線図であり、
図5は、カーブの勾配に応じて補正された
図4のヨーレート制御曲線を示す線図である。
【0017】
まず、
図2に示すように、本実施形態では、車両1の走行ライン生成装置が左カーブ38への進入から脱出に至る車両1の走行ライン40を生成する場合を例として説明する。この
図2に示したカーブ38は、例えばクロソイド曲線、円弧、放物線などを組み合わせて形成されている。
【0018】
次に、
図3に示す走行ライン生成処理は、カーブ38への進入から脱出に至る車両1の走行ライン40を生成する処理であり、車両1のイグニッションスイッチがONにされた後に実行される。
【0019】
図3に示すように、走行ライン生成処理が開始されると、ステップS1において、カーブ形状情報取得部16は、走行ライン40を生成する対象となる道路の形状情報を含む地図データを、地図データベース4から読み込む。この走行ライン40を生成する対象となる道路は、例えば、ナビゲーションシステムにより予め設定された走行経路を構成する道路である。
【0020】
次に、ステップS2において、カーブ形状情報取得部16は、ステップS1において読み込んだ地図データに基づき、走行ライン40を生成するカーブ38の形状を取得する。
例えば、カーブ形状情報取得部16は、ステップS1において読み込んだ地図データから、車両1の走行経路において曲率半径Rが300m以下である範囲を、走行ライン40の生成対象となるカーブ38として特定する。そして、特定したカーブ38の各ノードにおける曲率半径を地図データに基づいて取得する。
【0021】
さらに、ステップS3において、カーブ形状情報取得部16は、ステップS2において特定した走行ライン40の生成対象となるカーブ38における路面勾配を、ステップS1において読み込んだ地図データから取得する。
例えば、カーブ形状情報取得部16は、ステップS2において特定した走行ライン40の生成対象となるカーブ38の各ノードにおける路面勾配を地図データに基づいて取得する。
【0022】
あるいは、上述したステップS1乃至S3に代えて、カーブ形状情報取得部16は、車外カメラ2により撮影された車両1前方の画像データにより、車両1前方の道路の曲率半径Rを特定し、その曲率半径Rが300m以下である場合に、その道路を走行ライン40の生成対象となるカーブ38として特定するようにしてもよい。この場合、カーブ形状情報取得部16は、車外カメラ2により撮影された車両1前方の画像データに基づき、特定したカーブ38の中央線上に一定間隔(例えば5m間隔)でノードを設定し、各ノードにおける曲率半径及び路面勾配を取得する。
【0023】
次に、ステップS4において、目標ヨーレート補正部24は、ステップS3において取得したカーブ38の路面勾配による車両1の前後荷重の変化を推定する。
例えば、目標ヨーレート補正部24は、車両1の重心位置と、ステップS3において取得した走行ライン40の生成対象となるカーブ38の各ノードにおける路面勾配とに基づき、カーブ38の各ノードにおいて車両1の前輪に加わる荷重W
fslopeを、下記式により算出する。
W
fslope=mg(l
rcosθ−hsinθ)/l ・・・(1)
ここで、mは車両重量、gは重力加速度、lは前後軸間距離、l
rは後軸‐重心点間距離、hは重心点の高さ、θは路面勾配である。
【0024】
次に、ステップS5において、目標ヨーレート補正部24は、ステップS4において推定したカーブ38の路面勾配による車両1の前後荷重分布に基づき、目標ヨーレートを補正するときに使用するヨーレート補正係数K
slopeを決定する。
例えば、目標ヨーレート補正部24は、カーブ38の各ノードにおけるヨーレート補正係数K
slopeを、下記式により算出する。
K
slope=(l
rcosθ−hsinθ)/l
r ・・・(2)
即ち、ヨーレート補正係数K
slopeは、路面が上り勾配(θが正)の場合には1未満となり、路面が下り勾配(θが負)の場合には1より大きくなる。
【0025】
次に、ステップS6において、目標加減速度設定部20は、旋回開始位置における車両1の進行方向の加減速度G
xent、旋回終了位置における車両1の進行方向の加減速度G
xext、及び、車両1が旋回中に発生させることのできる最大横加速度G
ymaxを決定する。
例えば、目標加減速度設定部20は、タイヤの摩擦特性の線形領域において一定車速で旋回中に車両1に発生させることのできる横加速度の最大値(例えば4m/s
2)を、最大横加速度G
ymaxとして決定する。また、旋回開始位置における車両1の進行方向の加減速度G
xentを最大横加速度G
ymaxと等しい大きさの最大減速度(例えば4m/s
2)に設定し、旋回終了位置における車両1の進行方向の加減速度G
xextを、車両1が達成可能な最大加速度(例えば2m/s
2)に設定する。
【0026】
次に、ステップS7において、目標加減速度設定部20は、旋回開始位置における車速(初速)V
entと、カーブ38の開始位置と終了位置との間において車両1の進行方向の加減速度G
xを0にする中間位置とを設定する。また、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38の開始位置と終了位置との間における目標ヨーレートの最大値γ
maxを設定する。
例えば、目標加減速度設定部20は、カーブ38の曲率半径最小位置において最大横加速度G
ymaxを発生させた場合の車速を、初速V
entの初期値として設定する。また、目標加減速度設定部20は、カーブ38の曲率半径最小位置を、車両1の進行方向の加減速度G
xを0にする中間位置の初期値として設定する。また、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38の曲率半径最小位置において最大横加速度G
ymaxを発生させた場合のヨーレートを、目標ヨーレートの最大値γ
maxの初期値として設定する。
【0027】
次に、ステップS8において、目標加減速度設定部20は、ステップS2において取得したカーブ38の形状情報、ステップS6において決定した旋回開始位置における車両1の進行方向の加減速度G
xent、旋回終了位置における車両1の進行方向の加減速度G
xext、及び、ステップS7において設定した加減速度G
xを0にする中間位置に基づき、旋回開始位置から旋回終了位置までの加減速度制御曲線を設定する。
具体的には、目標加減速度設定部20は、カーブ38における旋回開始位置から中間位置までの区間において車両1の進行方向の減速度がG
xextから0まで単調減少するように、且つ、カーブ38における中間位置から旋回終了位置までの区間において車両1の進行方向の加速度が0からG
xextまで単調増加するように、加減速度制御曲線を設定する。即ち、車両1が進行方向に加速する場合の加速度を正、減速する場合の加速度を負とした場合、車両1の進行方向の加速度がカーブ38の開始位置から終了位置へ向かうにつれて負の値から正の値へ単調増加するように加減速度制御曲線を設定する。
【0028】
また、ステップS8において、目標ヨーレート設定部22は、ステップS2において取得したカーブ38の形状情報、及び、ステップS7において設定した目標ヨーレートの最大値γ
maxに基づき、旋回開始位置から旋回終了位置までのヨーレート制御曲線を設定する。
具体的には、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38における旋回開始位置から中間位置までの区間において目標ヨーレートが0からγ
maxまで単調増加するように、且つ、カーブ38における中間位置から旋回終了位置までの区間において目標ヨーレートがγ
maxから0まで単調減少するように設定する。
【0029】
続いて、ステップS9において、目標ヨーレート補正部24は、ステップS5において決定したヨーレート補正係数に基づき、ステップS8において設定したヨーレート制御曲線を補正する。
具体的には、目標ヨーレート補正部24は、ステップS8において設定したヨーレート制御曲線に、ステップS5において決定したヨーレート補正係数K
slopeを乗算する。上述したように、ヨーレート補正係数K
slopeは、路面が上り勾配(θが正)の場合には1未満となり、路面が下り勾配(θが負)の場合には1より大きくなっているので、目標ヨーレート補正部24は、カーブ38における上り勾配の区間では、目標ヨーレートを減少させるように補正し、下り勾配の区間では、目標ヨーレートを増加させるように補正することになる。
【0030】
このように、ステップS8において、旋回開始位置から旋回終了位置までの加減速度制御曲線及びヨーレート制御曲線を設定し、ステップS9において、ヨーレート制御曲線を補正することにより、カーブ38への進入から脱出に至る車両1の走行ライン40が生成される。
【0031】
次に、ステップS10において、生成ライン評価部26は、ステップS8において設定した加減速度制御曲線と、ステップS8において設定されステップS9において補正されたヨーレート制御曲線とによって表された車両1の走行ライン40を評価するための評価値を算出する。
例えば、生成ライン評価部26は、下記式により定義される評価関数Jを算出する。
J=(||
RP||−R)
2+(
Oy
ext)
2+(
OΨ
ext)
2
ここで、
RPはカーブ38の車線内側端を形成する円弧の中心から車両1の走行ライン40までの最短距離、Rはカーブ38の車線内側端を形成する円弧の半径、
Oy
(γ=0,t≠0)は旋回終了位置における車線外側端から車両1の走行ライン40までの距離、
OΨ
extは旋回終了位置における車線外側端の方向と車両1の走行ライン40の方向とが成す角度である。
【0032】
次に、ステップS11において、生成ライン評価部26は、ステップS10において算出した評価関数Jが予め設定した目標値未満か否かを判定する。この目標値は、生成した走行ライン40がカーブ38の車線内側端と車線外側端との間に位置する場合に得られる値として設定される。
【0033】
その結果、ステップS10において算出した評価関数Jが予め設定した目標値未満ではない(目標値以上である)場合、ステップ7に戻り、目標加減速度設定部20は、旋回開始位置における初速V
entと、カーブ38の開始位置と終了位置との間において車両1の進行方向の加減速度G
xを0にする中間位置とを、評価関数Jが目標値に近づくように再設定し、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38の開始位置と終了位置との間における目標ヨーレートの最大値γ
maxを、評価関数Jが目標値に近づくように再設定する。
以降、ステップS7からS11までを繰り返すことにより、ステップS11において評価関数Jが予め設定した目標値未満となるように収束演算を行う。
【0034】
ステップS11において、評価関数Jが予め設定した目標値未満となった場合、走行ライン生成装置は走行ライン生成処理を終了する。
【0035】
上述の走行ライン生成処理によって生成した走行ライン40に沿って車両1を走行するように運転支援を行ったり、自動運転を行ったりする場合、加減速制御部32は、走行ライン生成処理のステップS7において決定した初速V
entにてカーブ38に進入するように車両1のエンジン28及びブレーキ30を制御し、車両1がカーブ38に進入した後は、加速度センサ10により検出された車両1の実加速度に基づき、走行ライン生成処理のステップS8において設定した加減速度制御曲線の加減速度を発生させるように、車両1のエンジン28及びブレーキ30を制御する。また、ステアリングコントローラは、ヨーレートセンサ12により検出された車両1の実ヨーレートに基づき、走行ライン生成処理のステップS8において設定されステップS9において補正されたヨーレート制御曲線のヨーレートを発生させるように、車両1の電動パワーステアリング34を制御する。
【0036】
次に、
図4及び
図5により、車両1の走行ライン生成装置により設定された加減速度制御曲線及びヨーレート制御曲線について説明する。
図4は、本発明の実施形態による車両1の走行ライン生成装置により設定された加減速度制御曲線及びヨーレート制御曲線を例示する線図であり、
図4(a)は目標ヨーレート設定部22により設定されたヨーレート制御曲線を示す線図、
図4(b)は目標加減速度設定部20により設定された加減速度制御曲線を示す線図、
図4(c)は車両1が
図4(a)のヨーレート制御曲線及び
図4(b)の加減速度制御曲線に従ってカーブ38を走行した場合にタイヤに発生するコーナリング抵抗を示す線図、
図4(d)は
図4(c)に示したコーナリング抵抗により発生したエネルギーロスを示す線図である。この
図4の各線図において、実線は、走行ライン生成装置により生成された走行ライン40による値を示し、点線は、走行ライン生成装置により生成された走行ライン40による所要時間と同一の所要時間で同じカーブ38を定常円旋回(車速一定且つヨーレート一定)した場合における値を示している。また、
図4の各線図における横軸は、カーブ38における旋回開始位置からの距離を示し、
図4(a)の縦軸は反時計回りのヨーレートを示し、
図4(b)の縦軸は車両1の進行方向の加速度(加速が正、減速が負)を示し、
図4(c)の縦軸はタイヤに発生するコーナリング抵抗を示し、
図4(d)の縦軸はコーナリング抵抗により生じるエネルギーロスを示す。
また、
図5は、カーブ38の勾配に応じて補正された
図4(a)のヨーレート制御曲線を示す線図であり、
図5(a)はカーブ38の勾配を示す線図、
図5(b)はカーブ38の勾配に応じて補正された
図4(a)のヨーレート制御曲線を示す線図である。この
図5の各線図における横軸は、カーブ38における旋回開始位置からの距離を示し、
図5(a)の縦軸はカーブ38の勾配(上りが正、下りが負)を示し、
図5(b)の縦軸は反時計回りのヨーレートを示す。
【0037】
まず、
図4(a)及び(b)に示すように、定常円旋回では、カーブ38における旋回開始位置から旋回終了位置までヨーレートは一定であり、車両1の進行方向の加減速度は0で一定である。この定常円旋回では操舵角が一定であるので、
図4(c)に示すように、旋回開始位置から旋回終了位置まで一定のコーナリング抵抗がタイヤに発生する。この場合、定常円旋回における一定の車速を維持するためには、コーナリング抵抗を相殺する駆動力を発生させる必要があり、これがエネルギーロスとなる。その結果、
図4(d)に示すように、コーナリング抵抗により発生するエネルギーロスは、旋回開始位置から旋回終了位置まで増加し続ける。
【0038】
一方、目標ヨーレート設定部22により設定されたヨーレート制御曲線では、
図4(a)に示すように、カーブ38における旋回開始位置から中間位置までの区間において目標ヨーレートが0からγ
maxまで単調増加し、且つ、カーブ38における中間位置から旋回終了位置までの区間において目標ヨーレートがγ
maxから0まで単調減少する。
また、目標加減速度設定部20により設定された加減速度制御曲線では、
図4(b)に示すように、カーブ38における旋回開始位置から中間位置までの区間において車両1の進行方向の減速度がG
xextから0まで単調減少し、且つ、カーブ38における中間位置から旋回終了位置までの区間において車両1の進行方向の加速度が0からG
xextまで単調増加する。即ち、車両1が進行方向に加速する場合の加速度を正、減速する場合の加速度を負とした場合、車両1の進行方向の加速度がカーブ38の開始位置から終了位置へ向かうにつれて単調増加する。
【0039】
この場合、タイヤに発生するコーナリング抵抗は、目標ヨーレートに対応した操舵角の変化に伴って、旋回開始位置から中間位置までの区間において単調増加し、且つ、且つ、カーブ38における中間位置から旋回終了位置までの区間において単調減少する。
【0040】
ここで、
図4(c)に示したコーナリング抵抗が
図4(b)に示した加減速度制御曲線における減速度を達成するために要求される制動力以下の区間(
図4では旋回開始位置から位置Aまでの区間)では、コーナリング抵抗を車両1の減速に利用することができるので、この区間においてエネルギーロスは発生しない。
また、
図4(c)に示すように、目標ヨーレート設定部22により設定されたヨーレートに応じてタイヤに発生するコーナリング抵抗の最大値は、定常円旋回において発生するコーナリング抵抗より大きいが、
図4(c)に示したコーナリング抵抗が
図4(b)に示した加減速度制御曲線における減速度を達成するために要求される制動力以上又は加減速度制御曲線において加速度が正の区間(
図4では位置Aから旋回終了位置までの区間)においてタイヤに発生するコーナリング抵抗の総量は、定常円旋回の場合に同区間で発生するコーナリング抵抗の総量よりも小さい。従って、
図4(d)に示すように、車両1が走行ライン生成装置により設定された加減速度制御曲線及びヨーレート制御曲線に従ってカーブ38を走行した場合に発生するコーナリング抵抗によるエネルギーロスは、定常円旋回をした場合のエネルギーロスと比較して大幅に低減される。
【0041】
また、
図5に示すように、目標ヨーレート補正部24は、目標ヨーレート設定部22により設定されたヨーレート制御曲線を、カーブ38における上り勾配の区間では、目標ヨーレートを減少させるように補正し、下り勾配の区間では、目標ヨーレートを増加させるように補正する。
即ち、カーブ38における上り勾配の区間では、前輪の荷重が減少することによりタイヤのコーナリングフォースが減少するが、目標ヨーレートが減少側に補正されているので、目標ヨーレートを達成するために必要となる操舵角の増大が抑制され、これにより、コーナリング抵抗の増加が抑制される。
一方、カーブ38における下り勾配の区間では、前輪の荷重が増加することによりタイヤのコーナリングフォースが増大するが、目標ヨーレートが増加側に補正されているので、目標ヨーレートを達成するために必要となる操舵角を維持しつつ、より早い旋回を実現することができ、これにより、上り勾配の区間における目標ヨーレートの減少を補うことができる。
【0042】
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
上述した実施形態においては、車両1の走行ライン生成装置を搭載する車両1は、動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃エンジン28を搭載する場合を例として説明したが、これらのエンジン28に代えて、あるいはこれらのエンジン28と共に、動力源として車両1にバッテリ及びモータを搭載してもよい。この場合、加減速制御部32は、加減速制御処理において設定された加減速度制御曲線に従って、車両1のモータ及びブレーキ30を制御する。
【0043】
上述した実施形態において、目標加減速度設定部20は、加減速度制御曲線が直線状になるように目標加減速度を設定しているが、車両1の進行方向の加速度がカーブ38の開始位置から終了位置へ向かうにつれて単調増加する限りにおいて、加減速度制御曲線が例えばcosカーブのような曲線状に目標加減速度を設定してもよい。
また、上述した実施形態において、目標ヨーレート設定部22は、ヨーレート制御曲線が直線状になるように目標ヨーレートを設定しているが、車両1の進行方向の加速度がカーブ38の開始位置から終了位置へ向かうにつれて単調増加する限りにおいて、加減速度制御曲線が例えばcosカーブのような曲線状に目標加減速度を設定してもよい。
【0044】
次に、上述した本発明の各実施形態及び本発明の実施形態の変形例による車両1の走行ライン生成装置の効果を説明する。
【0045】
まず、目標加速度設定部は、カーブ38の開始位置と終了位置との間における車両1の進行方向の目標加速度を、カーブ38の開始位置から終了位置へ向かうにつれて負の値から正の値へ単調増加するように設定し、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38の開始位置と終了位置との間における車両1の目標ヨーレートを、カーブ38の開始位置からカーブ38の開始位置と終了位置との間にある中間位置へ向かうにつれて単調増加し、この中間位置からカーブ38の終了位置へ向かうにつれて単調減少するように設定するので、車速が高く目標ヨーレートを大きくすると操舵角が増大し易いカーブ38の開始位置及び終了位置の近傍では目標ヨーレートを小さい値に抑えて操舵角の増大を抑制し、車速が低く目標ヨーレートを大きくしても操舵角の増大を抑制できる中間位置近傍では目標ヨーレートを大きい値にすることによって、カーブ38の通過に要する時間を延ばすことなくタイヤに発生するコーナリング抵抗を低減することができると共に、目標加速度が負の値の区間ではタイヤに発生するコーナリング抵抗を車両1の減速に利用することができ、これにより、コーナリング抵抗によるエネルギーロスを低減することができる。従って、カーブ38への進入から脱出に至る燃費に優れた走行ライン40を生成することができる。
【0046】
また、目標ヨーレート設定部22は、カーブ38の曲率半径最小位置を中間位置とするので、カーブ38の形状に合わせて目標ヨーレートを設定することができ、カーブ38をスムーズに旋回しつつコーナリング抵抗によるエネルギーロスを低減することが可能な走行ライン40を生成することができる。
【0047】
また、目標加減速度設定部20は、中間位置における目標加速度を0に設定するので、目標ヨーレートが最大値となる中間位置において車速を最小として操舵角の増大を抑制することができ、カーブ38をスムーズに旋回しつつコーナリング抵抗によるエネルギーロスを低減することが可能な走行ライン40を生成することができる。
【0048】
また、目標ヨーレート補正部24は、カーブ38における上り勾配の区間では、目標ヨーレートを減少させるように補正し、下り勾配の区間では、目標ヨーレートを増加させるように補正するので、カーブ38における上り勾配の区間では、前輪の荷重が減少することによりタイヤのコーナリングフォースが減少するが、目標ヨーレートを減少側に補正することにより、目標ヨーレートを達成するために必要となる操舵角の増大を抑制でき、これにより、コーナリング抵抗の増加を抑制することができる。また、カーブ38における下り勾配の区間では、前輪の荷重が増加することによりタイヤのコーナリングフォースが増大するが、目標ヨーレートを増加側に補正することにより、目標ヨーレートを達成するために必要となる操舵角を維持しつつ、より早い旋回を実現することができ、これにより、上り勾配の区間における目標ヨーレートの減少を補うことができる。従って、カーブ38の通過に要する時間を延ばすことなく、カーブ38への進入から脱出に至る燃費に優れた走行ライン40を生成することができる。