特許第6222479号(P6222479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222479定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222479
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-264644(P2014-264644)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126052(P2016-126052A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 賢
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−103552(JP,A)
【文献】 特開2010−276823(JP,A)
【文献】 特開2011−186001(JP,A)
【文献】 特開2010−266694(JP,A)
【文献】 特開2010−276971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0217056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と、該加熱手段により加熱される定着ベルトと、該定着ベルトの内周面に当接する当接部材と、該当接部材に対して上記定着ベルトを挟んで圧接されると共に該圧接した状態で回転駆動されることで上記定着ベルトを回転駆動させる加圧ローラーとを備え、上記定着ベルトと上記加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を定着させる定着装置であって、
上記加圧ローラーの周面は、該加圧ローラーの軸方向の両端部のそれぞれに形成されて該加圧ローラーの回転駆動力を上記定着ベルトに伝達する一対の駆動伝達面部と、該一対の駆動伝達面部の間に位置し、該一対の駆動伝達面部に比べて上記定着ベルトに対する動摩擦係数が低い通紙面部とを有しており、
上記駆動伝達面部に対向して配置され、該駆動伝達面部の温度を検出する第一温度センサーと、
上記通紙面部に対向して配置され、該通紙面部の温度を検出する第二温度センサーと、
上記第一及び第二温度センサーによる検出温度の温度差を基に、上記加圧ローラーに対する上記定着ベルトのスリップが発生しているか否かを判定するスリップ判定部と、を備えた定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
上記第一及び第二温度センサーは互いに隣接して配置されている、定着装置。
【請求項3】
加熱手段と、該加熱手段により加熱される定着ベルトと、該定着ベルトの内周面に当接する当接部材と、該当接部材に対して上記定着ベルトを挟んで圧接されると共に該圧接した状態で回転駆動されることで上記定着ベルトを回転駆動させる加圧ローラーとを備え、上記定着ベルトと上記加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を定着させる定着装置であって、
上記加圧ローラーの周面は、該加圧ローラーの軸方向の両端部のそれぞれに形成されて該加圧ローラーの回転駆動力を上記定着ベルトに伝達する一対の駆動伝達面部と、該一対の駆動伝達面部の間に位置し、該一対の駆動伝達面部に比べて上記定着ベルトに対する動摩擦係数が低い通紙面部とを有しており、
上記加圧ローラーの周面に対向して配置され、該周面の温度を検出する温度センサーと、
上記温度センサーを、上記駆動伝達面部に対向して該駆動伝達面部の温度を検出可能な第一位置と上記通紙面部に対向して該通紙面部の温度を検出可能な第二位置とに、所定時間置きに切換える位置切換機構と、
上記温度センサーの上記第一位置における検出温度と上記第二位置における検出温度との温度差を基に、上記加圧ローラーに対する上記定着ベルトのスリップが発生しているか否かを判定するスリップ判定部と、を備えている定着装置
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置において、
上記スリップ判定部は、上記温度差が所定閾値を超えた場合に上記スリップが発生していると判定し、該温度差が上記所定閾値以下である場合には、上記スリップが発生していないと判定するように構成されている、定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の定着装置において、
上記駆動伝達面部はシリコンゴム又はウレタンからなり、
上記通紙面部はPFAチューブからなる、定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の定着装置において、
上記スリップ判定部により上記スリップが発生していると判定された場合にその旨をユーザーに報知する報知部をさらに備えている、定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置として、無端状の定着ベルトと加熱体と加圧ローラーとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。加熱体は定着ベルトの内周面に当接し、加圧ローラーは定着ベルトの外周面に当接している。加圧ローラーは、加熱体に対して定着ベルトを挟んで圧接されている。そして、この状態で加圧ローラーがモーターにより駆動されることで定着ベルトが回転するようになっている。定着装置は、この定着ベルトと加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を定着させる。これによれば、用紙にトナーを定着させる定着部材が肉厚の薄いベルト部材で構成されているので、定着部材の放熱性を高めてトナーのオフセット現象を防止することができるとされている。
【0003】
この種の定着装置では、定着ベルトが加圧ローラーに対してスリップすることで、定着ベルトの回転速度が低下したり定着ベルトが停止したりする場合がある。この結果、定着ベルトの所定箇所が加熱体により局所的に加熱されてベルトが破損するという問題がある。
【0004】
これに対して、例えば特許文献2に示す定着装置では、定着ベルトの温度をサーミスタにより検出して、該検出したベルト温度の時間経過に対する変化率が所定閾値を越える場合にスリップ異常と判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−002350号公報
【特許文献2】特開2010−266694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、定着ベルトがスリップしたとしても、定着ベルトがある程度回転している限り、定着ベルトの温度はそれほど急激に上昇しない。このため、上記特許文献2に示すように定着ベルトの温度を基にスリップ判定を行う方法では、定着ベルトが完全に停止するような大きなスリップは検出できても、定着ベルトがある程度回転し続けるような小さなスリップは検出し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、定着ベルトが完全に停止して加熱手段からの熱で破損する前に、定着ベルトの僅かなスリップも見逃さず確実に検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る定着装置は、加熱手段と、該加熱手段により加熱される定着ベルトと、該定着ベルトの内周面に当接する当接部材と、該当接部材に対して定着ベルトを挟んで圧接されると共に該圧接した状態で回転駆動されることで上記定着ベルトを回転駆動させる加圧ローラーとを備え、上記定着ベルトと上記加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を定着させるものである。
【0009】
そして、上記加圧ローラーの周面は、該加圧ローラーの軸方向の両端部のそれぞれに形成されて該加圧ローラーの回転駆動力を上記定着ベルトに伝達する一対の駆動伝達面部と、該一対の駆動伝達面部の間に位置し、該一対の駆動伝達面部に比べて上記定着ベルトに対する動摩擦係数が低い通紙面部とを有しており、上記駆動伝達面部に対向して配置され、該駆動伝達面部の温度を検出する第一温度センサーと、上記通紙面部に対向して配置され、該通紙面部の温度を検出する第二温度センサーと、上記第一及び第二温度センサーによる検出温度の温度差を基に、上記加圧ローラーに対する上記定着ベルトのスリップが発生しているか否かを判定するスリップ判定部と、を備えている。
【0010】
この構成によれば、加圧ローラーに対して定着ベルトがスリップし始めると、加圧ローラーの周面の温度が摩擦により上昇し始める。ここで、駆動伝達面部の動摩擦係数は通紙面部の動摩擦係数よりも高い(通紙面部の動摩擦係数は駆動伝達面部よりも低い)ので、駆動伝達面部の方が通紙面部に比べてスリップ発生時の摩擦熱が多くなり該2つの面部の温度差が次第に大きくなる。本発明では、この点に着目して、スリップ判定部において第一及び第二温度センサーの検出温度の差(上記2つの面部の温度差)を基に上記スリップが発生しているか否かを判定するようにした。これによれば、定着ベルトがスリップして完全に停止する前の僅かなスリップも見逃さずに確実に検出することができる。よって、ユーザーは、スリップ判定部において上記スリップが発生していると判定された場合に加熱手段の電源をオフする等して定着ベルトの破損を回避することができる。
【0011】
ここで、駆動伝達面部及び通紙面部の一方の温度のみに基づいてスリップ判定を行うことも考えられるが、この場合、単に加熱手段の加熱温度が上昇した場合でもスリップが発生していると誤判定してしまう虞がある。これに対して本発明では、駆動伝達面部と通紙面部との温度差に基づいてスリップ判定を行うようにしているので、このような誤判定を防止することができる。すなわち、単に加熱手段の加熱温度が上昇した場合には、駆動伝達面部及び通紙面部の双方の温度が同じように上昇して第一及び第二温度センサーの検出温度差が変化しない。したがって、本発明のように、第一及び第二温度センサーの検出温度差を基にスリップ判定を行うようにすれば上記誤判定を防止することができる。
【0012】
上記第一及び第二温度センサーは互いに隣接して配置されていることが好ましい。
【0013】
これにより、定着ベルトのスリップにより生じる駆動伝達面部と通紙面部との温度差を精度良く検出することができる。すなわち、例えば第二温度センサーが第一温度センサーから離れて配置されていると、各温度センサーの周囲に存在する熱源類も異なってくるため、両センサーの温度差が定着ベルトのスリップに起因するものか又は周囲の熱源類の影響によるものかを区別できなくなる。このため、スリップ判定部におけるスリップ判定精度が低下してしまう。これに対して上記構成では、第一及び第二温度センサーを互いに隣接して配置することで両温度センサーの周囲の熱源環境を同じにして、上記スリップ判定精度の低下を防止することができる。
【0014】
本発明の他の局面に係る定着装置は、加熱手段と、該加熱手段により加熱される定着ベルトと、該定着ベルトの内周面に当接する当接部材と、該当接部材に対して定着ベルトを挟んで圧接されると共に該圧接した状態で回転駆動されることで上記定着ベルトを回転駆動させる加圧ローラーとを備え、上記定着ベルトと上記加圧ローラーとの間に用紙を通過させることで当該用紙にトナー像を定着させるものである。
【0015】
そして、上記加圧ローラーの周面は、該加圧ローラーの軸方向の両端部のそれぞれに形成されて該加圧ローラーの回転駆動力を上記定着ベルトに伝達する一対の駆動伝達面部と、該一対の駆動伝達面部の間に位置し、該一対の駆動伝達面部に比べて上記定着ベルトに対する動摩擦係数が低い通紙面部とを有しており、上記加圧ローラーの周面に対向して配置され、該周面の温度を検出する温度センサーと、上記温度センサーを、上記駆動伝達面部に対向して該駆動伝達面部の温度を検出可能な第一位置と上記通紙面部に対向して該通紙面部の温度を検出可能な第二位置とに、所定時間置き切換える位置切換機構と、上記温度センサーの上記第一位置における検出温度と上記第二位置における検出温度との温度差を基に、上記定着ベルトに対する上記加圧ローラーのスリップが発生しているか否かを判定するスリップ判定部と、を備えている。
【0016】
この構成によれば、上述のように第一温度センサーと第二温度センサーとの2つの温度センサーを用いるのではなく、1つの温度センサーを使用してそのセンサー位置を位置切換機構により、駆動伝達面部の温度を検出する第一位置と通紙面部の温度を検出する第二位置とに切替えるようにした。これによれば、2つの温度センサーの検出精度を一致させるための校正作業等が不要になるのでメンテナンス性を向上させることができる。
【0017】
上記スリップ判定部は、上記温度差が所定閾値を超えた場合に上記スリップが発生していると判定し、該温度差が上記所定閾値以下である場合には上記スリップが発生していないと判定するように構成されていることが好ましい。
【0018】
この判定方法により上記定着ベルトのスリップを確実に検出することができる。
【0019】
上記駆動伝達面部はシリコンゴム又はウレタンからなり、上記通紙面部はPFAチューブからなることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、駆動伝達面部と通紙面部とで動摩擦係数を大きく異ならせることができる。これにより、定着ベルトのスリップが発生した際、駆動伝達面部及び通紙面部間の温度差を生じ易くして、スリップ判定部におけるスリップ判定精度を向上させることができる。
【0021】
上記スリップ判定部により上記スリップが発生していると判定された場合にその旨をユーザーに報知する報知部をさらに備えていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、スリップ判定部において定着ベルトのスリップが発生していると判定された場合には、その旨が報知部によりユーザーに報知される。したがって、ユーザーは、報知部からの報知情報を基に、定着ベルトが加圧ローラーに対してスリップしていることを容易に認識して対策を講じることができる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備えている。
【0024】
この構成によれば、定着ベルトのスリップを極力回避して、定着ベルトのスリップに起因する印刷画像の画質低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、定着ベルトが完全に停止して加熱手段からの熱で破損する前に、定着ベルトの僅かなスリップも見逃さず確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態における定着装置を備えた画像形成装置の内部構造を示す概略図である。
図2図2は、定着装置の内部構造を示す概略図である。
図3図3は、定着ベルト及び加圧ローラーを示す上側から見た概略図である。
図4図4は、加圧ローラーの軸方向の一端部を拡大して示す拡大斜視図である。
図5図5は、コントローラーにおけるスリップ判定制御を説明するための説明図である。
図6図6は、実施形態2を示す図4相当図である。
図7図7は、位置切換機構の動作を説明するための説明図である。
図8図8は、他の実施形態を示す図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
《実施形態》
図1は、本実施形態における画像形成装置1を示している。画像形成装置1は、本実施形態ではモノクロレーザープリンターからなる。以下の説明において、「前側」、「後側」は、画像形成装置1の前側、後側(図1の紙面垂直方向の手前側、奥側)を意味し、「左側」「右側」は、画像形成装置1を前側から見たときの「左側」、「右側」を意味する。
【0029】
この画像形成装置1は、給紙部10、作像部20、定着部40、排紙部50、及び筐体60を有している。給紙部10から排紙部50に至る用紙搬送経路Tには、用紙Pを挟持して搬送する複数の搬送ローラー対11〜13が配置されている。上記給紙部10は、筐体60内の下部に配置されている。給紙部10は、シート状の用紙Pが収容される給紙カセット10aと、該給紙カセット10a内の用紙Pを取り出して該カセット外に送り出すためのピックアップローラー10bとを有している。給紙カセット10aよりカセット外に送り出された用紙Pは、搬送ローラー対11を介して作像部20に供給される。
【0030】
作像部20は、感光体ドラム21、帯電器23、露光装置25、現像装置27、転写器29、及びトナーコンテナ(図示省略)を有している。作像部20では、帯電器23によって感光体ドラム21の周面を帯電させた後、露光装置25によって感光体ドラム21の表面に原稿画像データ(例えば、外部端末より受信した原稿画像の画像データ)に基づくレーザー光を照射することで静電潜像を形成する。感光体ドラム21の表面に形成(担持)された静電潜像は、現像装置27によりトナー像として現像される。現像装置27によって現像されたトナー像は、転写器29によって、給紙部10から供給される用紙Pに対して転写される。該転写後の用紙Pは、転写器29の転写ローラー29aと感光体ドラム21とよって定着部40に供給される。
【0031】
定着部40は、上記作像部20より供給される用紙Pを定着ベルト42及び加圧ローラー43間で加圧及び加熱することにより、当該用紙Pにトナー像を定着させる。そして、定着部40にてトナー像が定着された用紙Pは、定着ベルト42及び加圧ローラー43の回転に伴って下流側へと送り出される。この送り出された用紙Pは、複数の搬送ローラー対12,13によって、筐体60の上面に形成された排紙部50に排出される
図2及び図3に示すように、定着部40は、定着ベルト42と加圧ローラー43とこれらを収容するハウジング44とを有している。定着ベルト42は、前後方向に長い略円筒状に形成されている。定着ベルト42は、可撓性を有しており、周方向において無端状に形成されている。定着ベルト42の前後方向の両端部は挿入支持部41によって支持されている。挿入支持部41は、前後方向から見て円弧状(右向きC字状)に形成されている。挿入支持部41は側板49(図3参照)から突出していて、該側板49を介してハウジング44に固定されている。
【0032】
定着ベルト42の径方向内側には、一対のヒーター45、反射板46、支持部材47及び当接部材48が設けられている。上記一対のヒーター45はハロゲンヒーターによって構成されている。上記反射板46はヒーター45の右側に配置されている。反射板46は、右側に開放する断面コ字状に形成されていて、支持部材47に取付けられている。反射板46は、ヒーター45から放射される輻射熱を定着ベルト42の内周面に向けて反射する。ヒーター45からの熱は定着ベルト42の内周面から外周面に伝達される。これにより、定着ベルト42の外周面が加熱される。ヒーター45は後述のコントローラー100(図4参照)により制御される。コントローラー100は、定着ベルト42の近傍に配置されたベルト温度検知センサー(図示省略)からの温度情報を基に、45への供給電力を制御することで、定着ベルト42の外周面の温度を目標温度に制御する。
【0033】
上記支持部材47は、前後方向に延びて断面コ字状をなす一対の板金47a,47bを組み合わせることで形成されている。上記当接部材48は、支持部材47における反射板46が取付けられる側とは反対側に取付けられている。当接部材48は前後方向に長い平板状に形成されている。当接部材48の右側面の上端部は、下側から上側に向かって右側(用紙搬送方向の上流側から下流側に向かって加圧ローラー43側)に湾曲するR曲面状に形成されていてもよい。上記定着ベルト42は該当接部材48と加圧ローラー43との間に挟まれて変形する。そうして当接部材48の右側面の略全体に定着ベルト42の内周面が当接する。
【0034】
加圧ローラー43は、前後方向に延びる円柱状に形成されていて、該ローラー43と同軸に配置された支持軸52を介してハウジング44に支持されている。加圧ローラー43の外周面は、定着ベルト42の外周面に当接している。加圧ローラー43は、当接部材48に対して定着ベルト42を挟んで圧接されている。加圧ローラー43は、不図示のモーターにより回転駆動される駆動ローラーである。定着ベルト42は、加圧ローラー43の回転に従動して回転する。そして、この定着ベルト42と加圧ローラー43との間に形成されるニップ部を、作像部20から搬送されてきた用紙Pが通過することで当該用紙にトナー像が定着される。
【0035】
上記加圧ローラー43の外周面は、図3に示すように、一対の駆動伝達面部43aと通紙面部43bとを有している。一対の駆動伝達面部43aは、加圧ローラー43の回転駆動力を該定着ベルト42に伝達する機能を有している。一対の駆動伝達面部43aは、加圧ローラー43の軸方向の両端部のそれぞれに形成されている。各駆動伝達面部43aは、例えばウレタンやシリコンゴム等の弾性部材で構成されている。これにより、駆動伝達面部43aの動摩擦係数を十分に高めて、加圧ローラー43の回転駆動力を定着ベルト42に確実に伝達することができる。
【0036】
通紙面部43bは、用紙Pが通過する面部であって、加圧ローラー43の外周面における上記一対の駆動伝達面部43aの間に形成されている。通紙面部43bの定着ベルト42に対する動摩擦係数は、駆動伝達面部43aの定着ベルト42に対する動摩擦係数に比べて十分に小さい。これにより、用紙Pの離型性を高めることができる。通紙面部43bは、例えばPFAチューブにより構成される。
【0037】
図4に示すように、上記加圧ローラー43の周面近傍には、第一及び第二温度センサー61,62が加圧ローラー43の軸方向において互いに隣接して配置されている。第一及び第二温度センサー61,62は、例えば非接触式のサーミスタからなり、端子ボックス71,72を介してコントローラー100に接続されている。第一温度センサー61は、加圧ローラー43の軸方向の一端側の駆動伝達面部43aに対向して配置されている。第一温度センサー61は、当該駆動伝達面部43aの温度を検出してその検出温度信号をコントローラー100に出力する。第二温度センサー62は、通紙面部43bおける上記駆動伝達面部43aに隣接する部分に対向して配置されている。第二温度センサー62は、通紙面部43bの温度を検出してその検出温度信号をコントローラー100に出力する。
【0038】
コントローラー100は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータからなる。コントローラー100は、第一及び第二温度センサー61,62の検出温度の差を算出して、該算出した検出温度差を基に、定着ベルト42が加圧ローラー43に対してスリップしているか否かを判定する。コントローラー100は、定着ベルト42がスリップしていると判定した場合には、報知部101に対して報知指令を行う。報知部101は、コントローラー100からの指令を受けて、ユーザーに対してその旨(つまり定着ベルト42が加圧ローラー43に対してスリップしている旨)をユーザーに報知する。報知部101は、例えば警告音を発するスピーカーや警告ランプを点灯させる点灯装置によって構成される。
【0039】
次に、図5を参照しながら、コントローラー100におけるスリップ判定方法について説明する。図5は、第一及び第二温度センサー61,62による検出温度の差の時間的変化を模式的に示したグラフである。定着ベルト42が加圧ローラー43に対してスリップしていない状態では、検出温度差は多少の変動はあっても略一定に維持される。しかし、定着ベルト42が加圧ローラー43に対してスリップし始めると、加圧ローラー43の周面の温度が摩擦により上昇し始める。ここで、駆動伝達面部43aの動摩擦係数は通紙面部43bの動摩擦係数よりも高いので、駆動伝達面部43aの方が通紙面部43bに比べてスリップ発生時の摩擦熱が多くなり該2つの面部43a,43bの温度差が時間の経過と共に次第に大きくなる。本実施形態では、この点に着目して、コントローラー100において、第一及び第二温度センサー61,62の検出温度の差(駆動伝達面部43a及び通紙面部43bの温度差)が所定閾値Taを越えるか否かを判定し、越えると判定した場合には上記スリップが発生していると判定する一方、上記検出温度差が所定閾値Ta以下であると判定した場合には、上記スリップが発生していないと判定するようにした。尚、この所定閾温度Taは、上記スリップが開始し始めたときに生じると予測される第一及び第二温度センサー61,62の検出温度差と同じか又はそれよりもやや大きめの温度であって、予め実験等により設定される。
【0040】
これによれば、定着ベルト42がスリップにより完全に停止する前の僅かなスリップも見逃さずに確実に検出することができる。よって、ユーザーは、例えばコントローラー100により上記スリップが発生していると判定された場合にハロゲンヒーター42aの電源をオフにする等して、定着ベルト42の破損を防止することができる。
【0041】
ここで、駆動伝達面部43a及び通紙面部43bの一方の温度のみに基づいてスリップ判定を行うことも考えられるが、この場合、単にハロゲンヒーター42aの加熱温度が上昇した場合でもスリップが発生していると誤判定してしまう虞がある。これに対して上記実施形態では、駆動伝達面部43aと通紙面部43bとの温度差に基づいてスリップ判定を行うようにしているので、このような誤判定を防止することができる。すなわち、単にハロゲンヒーター42aの加熱温度が上昇した場合には、駆動伝達面部43a及び通紙面部43bの双方の温度が同じように上昇して第一及び第二温度センサー61,62の検出温度差が変化しない。したがって、本実施形態のように、第一及び第二温度センサー61,62の検出温度差を基にスリップ判定を行うようにすれば、かかる状況をスリップが発生しているものと誤判定することはない。
【0042】
また、上記実施形態では、上記第一及び第二温度センサー61,62は互いに隣接して配置されているので、定着ベルト42のスリップにより生じる駆動伝達面部43aと通紙面部43bとの温度差をコントローラー100により精度良く検出することができる。すなわち、例えば第二温度センサー62が第一温度センサー61から離れて配置されていると、各温度センサー61,62の周囲に存在する熱源類も異なってくるため、両温度センサー61,62の温度差が定着ベルト42のスリップに起因するものか又は周囲の熱源類の影響によるものかを区別できなくなる。このため、コントローラー100におけるスリップ判定精度が低下してしまう。これに対して上記実施形態では、第一及び第二温度センサー61,62を互いに隣接して配置することで両温度センサー61,62の周囲の熱源環境を同じにして、上記スリップ判定精度の低下を防止することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、駆動伝達面部43aはシリコンゴム又はウレタンにより構成され、駆動伝達面部43aはPFAチューブにより構成されている。
【0044】
この構成によれば、駆動伝達面部43aと通紙面部43bとで動摩擦係数を大きく異ならせることができる。これにより、定着ベルト42のスリップが発生した際、駆動伝達面部43a及び通紙面部43b間の温度差を生じ易くして、コントローラー100におけるスリップ判定精度を向上させることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、コントローラー100によって定着ベルト42がスリップしていると判定されると、報知部101によってその旨がユーザーに報知される。したがって、ユーザーは、報知部101からの報知情報を基に定着ベルト42がスリップしていることを認識して適切な対策を講じることができる。
【0046】
そして、上記画像形成装置1は上述の定着部40を備えているので、定着ベルト42のスリップを極力回避して、定着ベルト42のスリップに起因する画像品質の低下や、定着ベルト42の破損による画像形成装置1の故障を防止することができる。
【0047】
《実施形態2》
図6は実施形態2を示す。この実施形態は、駆動伝達面部43a及び通紙面部43bの温度を1つの温度センサー63で検出する点で上記実施形態1とは異なる。尚、図4と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
すなわち、本実施形態では、温度センサー63は、駆動伝達面部43aと通紙面部43bとの境界部に1つだけ設けられている。温度センサー63は、端子ボックス73を介してコントローラー100に接続されている。端子ボックス73の上面の中央部には回動軸73aが垂直に固定されている。回動軸73aは、不図示の固定ブラケットに対して回動可能に支持されている。端子ボックス73の側面には略扇型状のギア板74が取付けられている。ギア板の周面にはウォームギア部が形成されている。
【0049】
本実施形態の定着部40は、温度センサー63を、駆動伝達面部43aに対向する第一位置と通紙面部43bに対向する第二位置とに所定時間置きに切換える位置切換機構90を備えている。位置切換機構90は、センサー駆動モーター80と、該モーター80の出力軸に固定されると共に上記ギア板74のウォームギア部に噛合するピニオンギアー81とを有している。センサー駆動モーター80によりピニオンギアー81が回転駆動されると、ギア板74が回動軸73aを支点に回動する。この結果、端子ボックス73が温度センサー63と共に回動軸73aを支点に回転して、温度センサー63の位置が変化する(図7参照)。センサー駆動モーター80は、コトローラー100からの指令を受けて、ピニオンギアー81の回転方向を所定時間置き切換えることで、温度センサー63の位置を所定時間置きに第一位置と第二位置とに切換える。
【0050】
そして、コントローラー100では、温度センサー63の第一位置における検出温度と第二位置における検出温度との温度差を基に、定着ベルト42が加圧ローラー43に対してスリップしているか否かを判定する。この判定方法は、上記実施形態1と同様であるためその説明を省略する。
【0051】
以上説明したように、上記実施形態2では、実施形態1のように2つの温度センサー61,62を用いるのではなく、1つの温度センサー63を使用してそのセンサー位置を位置切換機構90により一位置と二位置とに切替えるようにした。これにより、2つの温度センサー61,62の検出精度を一致させるための校正作業等が不要になるのでメンテナンス性を向上させることができる。
【0052】
《他の実施形態》
上記実施形態では、当接部材48は平板状の固定部材により構成されているが、これに限ったものではなく、例えば図8に示すように当接部材48を回転自在な支持ローラー32によって構成するようにしてもよい。この図8の例では、定着ベルト42は、支持ローラー32と該支持ローラー32の左側に設けられた加熱ローラー33とに巻き掛けられている。加熱ローラー33にはヒーター45が内蔵されている。定着ベルト42の外周面は、ヒーター45から加熱ローラー33を介して伝達される熱により加熱される。本発明はこのような定着装置40に対しても適用することができる。
【0053】
上記各実施形態では、駆動伝達面部43aは弾性部材で構成されている、これに限ったものではなく、通紙面部43bに比べて高い動摩擦係数を有するものであれば、如何なる形状又は材質であってもよい。
【0054】
上記各実施形態では、画像形成装置1がプリンターである例について説明したが、これに限ったものではなく、画像形成装置1は、複写機や複合機等であってもよい。
【0055】
また、本発明は上記各実施形態に限定されるものでなく、本発明には、各実施形態を適宜組み合わせた構成が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、定着装置及び該定着装置を備えた画像形成装置について有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
32 支持ローラー(当接部材)
40 定着部
42 定着ベルト
43 加圧ローラー
43a 駆動面部
43b 通紙面部
45 ヒーター(加熱手段)
61 第一温度センサー
62 第二温度センサー
63 温度センサー
90 位置切換機構
100 コントローラー(スリップ判定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8